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第五話 ポン太

            第5話 ポン太

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『鬼滝村の五つの物語』ということで、これが最後のお話です。
お灸が話の中心なのは過去これを出したのがその関係だったから。
五つの物語と言っておきながら出さないわけにもいかないので、
これも出しますけど、超駄作ですから、そのおつもりで……。

******** ポン太<あらすじ> **********

 蔵元のぼんぼん明雄は自他ともに認める超マザコン。おかげで
頭はそんなに悪くないのに、友達からは「ポン太」「ポン太」と
少し蔑まれて呼ばれている。
 ただ、当人はいっこうにそれを気にしている様子がない。
 奥さんにもたびたび逃げられ、借金のかたでやっと手に入れた
今の奥さんも彼にしてみれば、おもちゃとしか映らないようで、
今日も今日とて彼女を車の中に閉じこめては悪戯を始める。


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               ポン太
                  「鬼滝村の五つの物語」から

 鬼滝村は農業の他にはこれといって産業のないなの村ですが、
昔から六本松という日本酒を醸造する蔵元が一件だけありました。

 そこのご当主は真蔵さんといって、人はいいのですがヒロポン
に溺れて座敷牢暮らしが長くなっていました。そこでこの蔵元の
実質的な経営はおかみさんにかかっていたのですが、これが大層
なやり手で、身内や商売敵からも、女にしとにはもったいないと
いう声がもっぱらでした。

 ところで、このご夫婦。旦那さんがヒロポン中毒だから子種が
ないのかと思いや、さにあらず。男の子を一人もうけていました。

 明雄といってそりゃあ聡明な子供でした。
 この村で「あいつは明雄だから」と言えば「あいつは頭がいい」
という意味です。
 ところが、そんな明雄も大人になると、周囲からは「ポン太」
「ポン太」と少し侮蔑的な表現で呼ばれるようになります。

 それは彼があることでとてつもなく世間ずれしていたからで、
奥さんをもらってからもそれはちっとも治っていないようでした。

 ある日のことです。家に遊びに行くと奥さんの美加さんの姿が
見えません。どうしたのかと尋ねると、にこにこして天井の方を
指さします。

 「!」

 見上げてビックリしました。
 3mはあろうかという大きな造り付けの戸棚の上に、奥さんが
腰を下ろしているです。

 彼女、高所恐怖症なのか、それとも、あまりの怖さと恥ずかし
さで声をあげられなかったのか、うつろな目をして私の方を眺め
ています。

*********************(1)****

 「どうして、あんな処に?」

 私が尋ねるとポン太曰く、
 「お仕置きだよ。彼女、私とママのどちらが好きかって、しつ
こくきくもんだから……頭にきちゃって……」
 「ふうん……で?どっちだって言ったの?」

 「何言ってるんだ、お前まで……」
 超マザコンのぽん太にそれは愚問だったのです。
 彼はその質問には答えず……
 「だから、ほら、教えてあげたんだよ」

 彼は自慢げに一枚の写真を取り出します。
 そこには彼が赤ん坊の時に使っていたおまると並んで奥さんが
映っていました。私は一瞬考えてあわてて頭の上を仰ぎ見ます。

 やっぱり間違いありません。それは今の風景と同じでした。
 作り戸棚の上には3つのおまるが並んでいて、その端に奥さん
が青い顔をして座っているというわけです。

 私は、恐る恐るポン太に尋ねてみました。というのも、当時は
デジカメはもちろん、ポラロイドさえまだ普及していない時代で
したから、この写真を撮ってから現像ができあがるまでには当然
丸1日以上かかるはずで、彼女はずっとそこに座らされていた事
になります。

 「そうだよ、30時間以上あそこに座ってるんだ。あいつが、
口をきかないのはトイレを我慢しているためさ」
 そう言われてみれば、奥さんは足や腰を微妙に震わせています。

 「彼女の強情っ張りにも困ったもんだよ。だから教えてやろう
と思ってこの写真を撮ったんだ。君は僕にとってはおまると同じ
なんだってね。……でもそのことを理解したくないらしい」

 「おまるって?」
 「だから、おまるだよ。お前だって赤ちゃんの時使っただろう。
『おしっこは、ここでするのよ』ってお母さんに言われて……」

 「…………」
 私は声が出ませんでした。

 「僕にとって、奥さんというのは、大人のおしっこをする為に
お母さんが買ってくれた『おまるさん』だもん」

 「(あのなあ……)」
 私は何か言いかけましたがすぐに諦めます。無駄だと分かって
いるからでした。

 「……左から古い順に並んでるけど、美加ちゃんはその中でも
一番新しいからね。そもそも、おまるの中でも新参者のお前が、
『お母さんとどっち?』なんて聞いちゃいけないよ」
 真顔で言われてしまいます。

 私は明雄と幼馴染だからわかるのですが、彼はこうしたことを
決して奇をてらってやっているのではありません。本心からこう
思っているのでした。

 こうみえても彼、一流大学を出て、定職にも就いています。
 ま、出世に縁はないかもしれませんが一般社会の中で見かける
限り立派な社会人なんです。

 こんな事が災いして友だちからは『ポン太』『ポン太』なんて、
呼ばれていますが、当人がそれを気にしている風はありませんで
した。

 こうした彼の性癖は、勿論、母親によるところが、大きかった
みたいです。離婚を考えていた彼女に、ある日、夫、つまり明雄
の父親が襲いかかって、明雄ができてしまい。離婚話は頓挫して
しまいます。
 すると彼女、今度は大胆に方向転換をして、本来、夫にそそぐ
べき愛情までも、すべて一粒種の明雄に注いでいきます。それも
また異常なものがありました。
 いずれにせよ、その成果がこうした形で現れたのでした。

 そんな母親べったりのポン太にしてみれば、SEXを『大人の
おしっこ』ととらえても何ら不思議のないことだったのです。

*********************(2)****

 そんなポン太も年頃になり、母親はあちこち声をかけてまわり、
お嫁さんを二人ほど世話しましたが、いずれもお嬢様で、こんな
超マザコン亭主を操れる器をもってはいませんでした。

 そうかと言って、明雄が望むように小学生をお嫁さんにすると
いうわけにもいず、母親は思案のあげく、年頃の娘がいて、かつ
事業で借金のある家に狙いを定めたのでした。

 彼女のもくろみは見事にあたり、親から因果を含まされた娘が
送り込まれてきます。それが今の奥さん、美加さんだったのです。

 もともと結納金で家の借金を返した手前もあるのでしょうが、
美加さんはお義母様にも献身的に尽くします。子どもができない
まま3年が過ぎても、二人は表面上とても仲の良い夫婦でした。

 たまにポン太の家へ遊びに行った時も、美加さんは大変に愛想
が良くて、相変わらずお姑さんにも仕えています。そこで、それ
となく水を向けてみますと……、
 「だって、あの人優しいから……」
 という意外な答えでした。

 「確かに、ここでの生活は当初夢見たものとは違っていたかも
しれませんが、夫以外はまともな人たちだし、夫もお義母様さえ
たてていれば安泰ですから……」

 彼女の口からこぼれたのは本音でしょうか、諦めでしょうか、
いずれにしても離婚ということは考えていないみたいでした。

 ただ、どこの夫婦でも喧嘩はつきものです。彼女もつい切れて
家を出ようとしたことは何度かあったようです。その何度目かの
家出の際に、私はポン太の片棒を担ぐことになります。


 「なあ、勉。ものは相談なんだけど、車のドアを一旦閉めたら、
内側から二度と開けられないようにできないかなあ。……おまえ、
修理屋だから構造は分かってるだろう」

 鬼滝村に一件しかないスナックの片隅でこう切り出された時、
私は危険な臭いを感じましたが、それがどのように使われるかは
この時はまだ知らなかったのです。

 それから数日後、私は工具一式を車に積み込むと出張修理へと
ポン太の家へ向かいます。
 車はワーゲンのバンタイプ。決して安い車ではありません。

 「これ、駄目になってもいいのか?あんまりいじると下取りが
きかなくなるぞ」
 「いいさ、それでも」
 彼は悪戯っぽく笑います。何しろお坊ちゃんですからね、悪戯
一つにやるにも、お金に糸目はつけないといった様子でした。

 そして、仕事が終わったので帰ろうとすると、
 「いいじゃないか、どうせ今日は暇なんだろう」
 彼は面白いショウが始まるから私にも見ていけというのです。

 そして、待つこと30分。
 鴨が二階から脱兎のごとく下りてきます。真っ赤な顔をして、
よほど興奮しているのか周りに気を配る様子もなく、すぐそばに
いる私にさえ気がつかず改造したばかりのワーゲンへと乗り込み
ます。

*********************(3)***

 「バタン」
 勢いよくドアが閉まって、彼女の運命は定まってしまったので
した。

 彼女は必死にキーを差して回しますがエンジンが掛かりません。
 そりゃそうです。バッテリーへ接続しているケーブルをポン太
がさっき外してしまったのですから。

 彼女は癇癪を起こしてドアを開けようとしましたが無駄でした。
鍵は私が別のものに付け替えてしまいましたし、内側のレバーも、
窓開けも一切効かない状態にしてあったのです。
 美加さんは慌ててすべてのドアをチェックしましたが、無駄で
した。

 「バン!バン!バン!」
 狂ったように、ドアや窓、はてはフロントガラスまで叩きますが、
無駄でした。

 「あれ、あれ、まだいたの?」
 ポン太がワーゲンのそばへ悠然として現れます。

 「あなたね、こんなことしたの!どこまでも汚いんだから」
 美加さんはカンカンです。でも、すでに勝負はついていました。

 「汚いって?どういうこと?僕の車だもん、どう改造しようと
僕の勝手じゃないか。だいたい実家に帰るのに僕の車を使うこと
ないじゃないか。まったく君ってやつは自分のものと他人のもの
との区別がつかないんだから困ったもんだ」

 夫婦でこんな応酬を繰り返していましたが、そのうち美加さん
の方が不利と感じたのでしょう。

 「謝るから、出してよ。いつまでもこんな狭いところにいられ
ないわ」

 美加さんの言葉にも勝利を確信しているポン太は動じません。
 「べつに謝らなくてもいいよ。どうせ3日もすればお母さんが
旅行から帰ってくるだろうし、お手伝いもその時一緒に出てくる
だろうから飢え死にするってことはないさ。僕としても、君への
お仕置きとしちゃあ3日間もあれば十分だからね」

 彼はそれだけ言い残すと、車庫代わりに使っている煉瓦作りの
倉庫を出て行こうとします。厚い鉄の扉が閉まると中は真っ暗で
した。
 とたんに、一オクターブ高い美加さんの声が中からします。

 「だめえ、行っちゃだめ~~」

 ポン太はあきれ顔の私に囁きました。
 「あいつ高い処だけじゃなくて狭い処や暗い処もだめなんだ。
な、まるで子供みたいだろう」

 確かにそれだけ取ればそうかもしれませんが、こんな事をして
いる方がよほど子供に見られることを彼は認識していないようで
した。

********************(4)****

 「祝勝会だ。地ビールでも飲もうや。今度、うちでもビールを
手がける事になったんだ。試飲してくれよ」
 ポン太はそう言って私の肩を抱きます。
 でも、まだ美加さんの悲鳴が聞こえていましたから……

 「いいのかい、ほっといて」
 と言うと……

 「いいんだよ。あいつ、僕のダンボを腹いせまじりに池に投げ
込んだんだ」
 「ダンボ?……ああ、いつも抱いて寝るぬいぐるみか」

 「あれはね、小学校の入学祝いにママから買ってもらった大事
なやつなんだぜ。あれを池に投げ込むなんて人でなしのやること
だよ。だから、あいつの風呂上がりをねらって、同じように奴を
庭の池へ放り込んでやったら……「出て行く」って息巻いたんだ。
まったく勝手な奴さ」

 彼はまるで政治談義でもしているかのように、滔々として自分
の正当性を私に訴えかけますが、要は象のぬいぐるみ一つのこと
ですからね、中身は小学生の喧嘩です。
 ま、こんな事で夫婦喧嘩ができること自体、羨ましいと言えば
いえなくもありませんが。

 その羨ましい男と四方山の話をして2時間後、再び煉瓦造りの
車庫へ戻ってみると、美加さんが今度は泣いていました。

 さすがに、可哀想になって、
 「もういいかげん許してやれよ」
 と言うと、彼はまんざらでもないといった顔になって……

 「よし、それなら美加。これから私が命じるお仕置きをちゃん
と受けるなら許してやってもいいぞ」

 彼の声を聞いた瞬間、美加さんはこちらに潤んだ目を向けます。
それは本当に恐怖を味わった瞳でした。恐らく、彼女はこうした
ことに何らかのトラウマで耐えられないのでしょう。

 美加さんが小さく頷いたのを見て、ポン太が……
 「じゃあ、ダッシュボードを開けて見ろ」

 ところが、ダッシュボードを開けた美加さんは首を振って従い
ません。
 
 「何だ、嫌なのか。じゃあいいや」
 ポン太はあっさりあきらめて戻ろうとします。しかし、鋼鉄の
扉が閉まって再びあたりが真っ暗になろうとすると……

 「待ってえ~~~」
 美加さんはどうやら観念したようでした。

 そこで、二人が車へ戻ってみると、彼女はすでに毒々しい赤い
インキで印刷された袋を持っています。それは病院でもらう薬袋
みたいな形状でした。

 「今日は、それをお前自身ですえるんだ」
 ポン太の命令で私は薬袋の中身を知ります。『すえる』という
のですから、お灸に違いありません。
 実際、中にはマッチもお線香も用意されていました。

 「………………」
 彼女は渋々でしたが、行動を起こします。ブラウスの裾を少し
だけたくしあげたその時でした。

 「でも、腰にすえるのって一人じゃあ……」
 美加さんがこう言うと、ポン太は少し鼻にかかったように笑って、

 「誰が、腰にすえるって言ったの。昨日、綺麗にしたところが
あるだろう。ちょうどいいから、そこにすえてみろよ」
 こう言われた瞬間、美加さんの顔が真っ赤になります。ですから、
それはおおむね私にも察しのつく場所だったのです。

*********************(5)***

 「………………」
 彼女はとたんに無口になります。そして、ほどなく悲しそうに
私の顔を見つめるのでした。
 そう、それは『私がいなければやってもいい』という意思表示
だったのでしょう。

 けれど、ポン太は無慈悲にそれをはねつけます。
 「だめだぞ、美加。今日は、二人で見学させてもらうからな。
でなきゃ、お仕置きの意味がないじゃないか」

 ポン太の脅迫に、美加さんは下唇を噛んでしまいます。そして
狭い助手席のシートの上で膝をたてると、体を小さくして、何事
か考えている様子でした。

 それって、ポン太の提案に対する拒否の姿勢だと私は思ったの
です。ところが……

 「嫌ならいいよ。そのかわり、今度僕がここへ来るのは3日後
だからね」
 こう言ってポン太が立ち去ろうとします。

 すると……
 「待って!やるから、やればいいんでしょう」

 決心がついたのか、怒ったような美加さんの声がします。
 私にとっては意外な展開でした。

 「よい子は『やればいいんでしょう』なんてご返事しちゃいけ
ないと思うなあ。よい子だったら、ご返事は『やらせてください』
じゃないなあ」
 ポン太は調子に乗って彼のお母さんの口まねを使いながら美加
さんをたしなめます。

 「わかったわ。『やらせてください』……これでいいんでしょう」

 美加さんが言い直してもポン太は渋い顔でした。
 「だめだめ、そんな投げやりじゃだめだよ。君は知らないかも
しれないけど、お母さんにそんな口の利き方すると、たちまち裸
にされて、お尻にお灸だったんだから……」

 「はいはい、またお母さんなのね」
 美加さんは少しくさった様子で囁きます。
 その声は私にさえ聞こえたぐらいでしたから、当然ポン太にも
届いていました。

 「何だって!何て言ったの!」
 ポン太が珍しく凄んで見せます。
 すると、美加さんは口を尖らせたままでしたが妥協したみたい
でした。

 「やらせてください。お願いします」

 「相変わらず芝居のヘタな女だなあ。……でも、まあいいか。
せっかくやる気になったんだから……」
 ポン太は満足気でした。

 そして、車内の様子を見ながら、細々と指示を出します。

 「まず、後ろのシートを倒してそこへ仰向けに寝そべるんだ。
……ほら、艾とお線香を持っていかなくちゃ………馬鹿だなあ、
スカートやショーツを穿いたままできないだろう。…脱ぐんだ。
……嫌じゃないよ。ちゃんとやらないと、出してやらないぞ……
そうだよ、もちろんショーツもに決まってるだろう……えっ、何?
相羽が見てるから嫌だ。…何言ってるの!だからいいんじゃない。
夫婦だけでこんな事やったって、お仕置きにならないでしょうが。
………だめだめ、彼は外さないよ。彼にはこのお仕置きの証人に
なってもらうんだから……左手が邪魔だなあ。いいからどけろよ。
……大丈夫だって、こいつは昔から親友だもん。どこにもお前の
ことなんか漏らしたりしないよ」

********************(6)***

 私は次々に指示をだすポン太を見て、ふと、思ったことがあり
ました。いえ、これほどのマザコンなんですから、さぞや幼い頃
から母親にべったりの生活だったんだろうなあってことは想像が
つきますけれども、もし、それだけなら、今頃ポン太は道を外れ、
ぐれていてもおかしくありません。それが、曲りなりにも旧帝大
を出て定職を持ち、一人前に奥さんだって養ってるわけですから、
母親も時にかなり厳しい事を課してきたはずです。今、こうして、
彼が奥さんに求めている事って、ひょっとしたら、かつてポン太
自身が母親にされたことなんじゃないか。
 そんなふうに思えたのでした。

 「ほら、なかなか可愛いだろう」
 彼の右肩が私の左肩に当たって、はっとして夢想から醒め車内
を見てみると……
 すでに美加さんはショーツを脱ぎ下し、丸めた艾を三角デルタ
に乗せているところでした。

 彼女はお臍から下へ縦に三つ、小さな艾を置いていきます。
 そこには以前すえた痕が点々と残っています。
きっと、夫婦で遊んだ時の痕なんでしょう。

 美加さんは意を決して線香立てから火のついた線香を一本摘み
あげます。
 ところが……

 「だめだめ、そんなんじゃお仕置きにならないでしょう。子供
じゃないんだから。両脇にもう三つずつ乗っけるんだ」
 ポン太の指示で、艾が追加されます。狭いスペースに合計9個。
唾をつけて置いていきますが、体をねじったら床に落ちてしまい
ます。恥ずかしいのと悔しいのとで、美加さんはすでに半べそを
かきながら作業していました。
 そして、それが終わると……、

 「左手は座席の下から出ている手錠に固定するんだ」
 さっきからそれで恥ずかしい処を隠そうとするから、ポン太が、
邪魔だ邪魔だと言っていた左手を、自ら革手錠に固定させます。

 「馬鹿、何泣いてるんだよ。それって、おまえが拘束されてた
方が感じるって言うから取り付けたんだろうが……」

 ポン太の奴、どうやら昔からこの車内で奥さんとこんな遊びを
繰り返していたようでした。それはともかく言われた美加さんは
顔を真っ赤にしてしまいます。
 そりゃそうでしょう。『私たち夫婦はずっとこんなことをして
楽しんでいました』って、宣言したようなものなんですから。
 ただ、ポン太に関して言えば、この男こんなことにはいたって
無頓着でした。彼は女の子の前でも顔色一つ変えずに猥談をする
ようなむっつりスケベタイプだったのです。

 美加さんは自ら左手を革手錠に固定すると、右手一本で、火の
ついたお線香を艾に近づけていきます。

 「………………」
 けれど、それは大変勇気がいるようで、お線香が艾を山を何回
も行きつ戻りつします。

 この村はやいとが今も盛んで、幼い頃には私もお仕置きとして
すえられましたが、どんなに小さな艾でも、すえられれば目の玉
が飛び出るくらい熱いのです。
 いえ、熱いのは通り越して痛いという感じがします。錐で穴を
あけられているようなものすごい痛みです。ですから、私もその
拷問の後は必ず本当に穴があいてないか真っ先に確かめたほどで
した。

********************(7)**

 「さあ、早くしてくださいね。そのくらい、いつも僕がすえて
やってるでしょう」

 ポン太が叱咤するなか、見ればお線香を持つ手も三角デルタも
震えています。小さな胸が浅く早く呼吸し、それとは違う動きが
顎から下唇にかけても見られて、何か譫言を言っているようです。

 これだけ躊躇するのは、夫から相当に熱いお灸を経験していた
からでしょう。そして、自分ですえるのはこれが初めてだったの
かもしれません。

 火のついたお線香を片手に三角デルタを見て思い悩む若妻の姿
は、不思議なエロチシズムに満ちていました。ストリップ劇場で
見るプロのそれとは別種の趣があります。

 「もういい、もういい、どうせやる気がないんだろう」
 突然、ポン太の吐き捨てるような甲高い声がします。彼は美加
さんが自分で点火しないのに業を煮やしたようでした。
 いえ、私だって美加さんのてまえ心配げな顔をしていましたが、
内心は興味津々だったのです。

 ポン太は、まず美加さんのお線香を持った右手に最も近い窓を
ハンマーで叩き割ります。これは万が一を考えて、私が最初から
割れやすいガラスにはめ換えておいたものでした。

 美加さんは、その突然の衝撃に表情はこわばり、肩をすぼめて
固まってしまいます。

 「お線香を渡して……」
 ポン太は美加さんから火のついたお線香を取上げると、やにわ
に美加さんの右手をとって左手と同じように運転席の下から顔を
出す革手錠でその手首を締め上げてしまいます。
 そして、後ろの扉を開けると……

 「やめて!」

 この時やっと我にかえったのでしょう、美加さんの悲鳴が聞こ
えました。彼女としてはこのドアはどうやっても開かないものだ
と錯覚していたのかもしれません。それが、思いもよらず外から
開いて動揺したのでしょうか。

 「相羽、手伝ってくれ」
 ポン太は、そう言い残して車内に躍り込むや美加さんの片足を
取ります。私もここまでくれば彼のやることは分かっていました。

 道は二つに一つなんですが……、
 『しょうがない、やるか』
 とっさの判断を迫られた時、私の理性はstopを決断します。

 両手を固定された女を男二人がかりで取り押さえるのですから、
美加さんがどんなに暴れようとそりゃあ勝負は見えています。
 美加さんは、たちまちフラットシートの上に大の字に固定され
てしまったのでした。

 「まったく世話をやかせてくれるよ。からっきし度胸がないん
だから……」
 ポン太は、美加さんが暴れたために落ちてしまった艾を新たに
作り直して三角デルタに貼り付けます。
 今度は、心なしが一つ一つの艾の山が大きいようでした。

*******************(8)*****

 「こんなのすえて大丈夫かい」

 私が心配して尋ねると、ポン太はにやけた顔をさらにギラつか
せて……
 「大丈夫大丈夫。家では昔からお仕置きはやいとって決まって
るんだ。ほら、もうちゃんと大きいのをすえた痕があるだろう。
聞いたらこの子の実家もそうだったらしいんだ」

 ポン太がそう言って視線を落とした先には、ケロイド状に光る
丸い火傷の痕がありました。私がそこを見つめ続けると、それま
でポン太だけを睨み付けていた美加さんの顔が横を向いてしまい
ます。

 ポン太はその横を向いた美加さんの口に猿轡までをかまそうと
しますから……
 「でも、たかがぬいぐるみ一つでそんなことしなくても」
 と言うと……

 「たかが、なんて軽々しく言わないでくれよ。僕にとっちゃ、
新参者のおまるよりあの子の方が大事なんだぜ」
 「でも、それじゃあ美加さんの立場が……」
 「いいんだ、こいつのことは……俺が嫌なら出ていくだけの事
だし……それに……これは夫婦の問題なんだから……」
 強気のポン太でしたが、ここにきて幾らか罪悪感が出てきたの
か、煩わしそうに私から視線をそらします。
 そして猿轡は諦めたようでした。

 「もともと、こいつは、僕がマザコンだって知らなかったんだ。
お母さんが『マザコンだなんてわかったら誰もお嫁になんか来て
くれませんよ』って言うから、そういう事はカモフラージュして
つき合ったんだ。デートの時は、お母さんが作った想定問答集を
覚えて出かけた。まるっきり学校時代のテスト前日と同じだった」

 「おまえ、そんなことまでしたんだ」

 「前の二人だってそれは同じだよ。……でも、結婚すれば当然、
ばれちゃうだろう。もちろん僕が生き方を変えればいいんだろう
けど、でも、それやっちゃうと、今度は仕事ができなくなっちゃ
うからね。だから美加にも『いつでも実家に帰っていいよ』って
言ってやったんだ。……でも……」

 ポン太はお線香の火を艾に移します。九ついっぺんに火がつき
ましたが、山の頂上が燃えているうちは問題ありませんでした。

 「最初に実家に帰ってここへ戻った時、おまえ言ったよなあ。
あなたについていきます。お義母様、お願いしますって言ったよ
ね。お灸のお仕置きでもなんでも我慢しますって……」

 ポン太は、火のついたお線香を持ったままの右手で、そっぽを
むいてしまった美加さんの顔を元に戻します。美加さんは、再び
横を向こうとしましたが、お線香の赤い頭をこれみよがしに目の
前数センチまで近づけられては、美加さんも観念するしかありま
せんでした。

 「ま、いろいろ事情があるらしけど、結局、実家にも帰らない
し、僕とも別れる気もないらしい。……しまいに『私はお義母様
の次に愛されていればいいですから、あなたのおまると同じ部屋
で寝ますからここにおいてください』って泣きついたんだ。……
きっと、お母さんがまた裏でまた何かしでかしたんだろうけど…」

 ポン太がそこまで言った処で艾の火か麓まで下りてきた。
 となれば当然……

 「いやあ~~~やめてえ~~~取って、お願い。いやだあ~~」
 美加さんは恥も外聞もなく泣き叫び始めます。
 が、ポン太が美加さんのお腹の上に馬乗りになり、私も大の字
になった右足を椅子代わりにしているので、美加さんの細い体で
はどうにもなりません。

 そうこうするうち、ポン太が二回目を用意しますから、慌てた
美加さんが……
 「だめえ、もうやめて~~、そんなに大きいのは耐えられない
から、駄目だってお願い、あああ……(うぐぅ)」

********************(9)****

 ポン太は美加さんの声があまりにうるさいと思ったらしく今度
は本当にタオルで猿轡をしてしまいます。小さなタオルを二枚、
口の中にねじ込み、大判のタオルで鉢巻きのようにしてゆわいて
しまうと、いくら声を出そうにも出ませんでした。

 静かになったところで、ポン太はゆっくりと、二回目の準備に
取りかかります。

 「そう言えば、おまえ、ロリコンだったよな。あの趣味って、
終わったのか?」
 「いいや、今でも好きだよ。資料はママにだいぶ捨てられちゃ
ったけど……また、台北やマニラに行けば会えるから」

 「台北やマニラ?」

 「僕の資料はそこに全部保管してあるんだ。お母さんの追及を
逃れるためにね。国内の拠点は全て知られちゃったから……」
 ポン太は次を乗せるためにその灰を払いのけます。そして次に
乗せる艾もさっきとほぼ同じ大きさでした。

 「小さい子が一番いいよ。純真だから………その素肌に触れて
いるだけで身も心も浄化されていく気分になる。………君は知ら
ないだろうけど、ハリスはそのための学校まで建てたんだ。偉い
奴さ。その子の学費を出してあげれば、ファックはできないけど、
それ以外ならたいていのことはOKさ。今度、招待してやるよ」

 「いやあ、僕は遠慮しとく。そんな趣味ないから」

 「騙されたと思って、一度おいでよ。生き返るから……大人と
いくら寝たってああはいかないもの。早い話、こいつにしたって、
実家に借金がなければ僕なんかと一つ屋根の下には暮らさないだ
ろうし……ま、それが、大人の分別ってやつだろうけど……」

 ポン太はそこまで言って火を点けます。効果はさきほどと同じ。
いや、それ以上だったかもしれません。何しろ私の乗った右足が、
今度はほんの一瞬わずかに浮き上がったほどですから。

「いややゃゃややゃゃややゃゃゃやあぁぁあぁぁああぁぁぁああ」

 美加さんの悲鳴に嘆きや愚痴や哀願はありません。ただただ、
熱いという思いだけが信じられないほどの力となって私を持ち上
げてしまうのでした。

 息が荒くなったまま横を向く美加さんの顔を、ポン太はちらり
とも覗こうともしません。そして、黙々と三回目を準備。ただし、
今度は少し趣が違っていました。

 ポン太は、美加さんの両足につけた細いワイヤーを電気仕掛け
のウインチで巻き上げていきます。

 「いやだあ、何すんの。こんなの約束してないでしょう」
 車内の窓の内側を擦るようにして、美加さんの両足が上がって
いきます。

 ゆっくり、ゆっくりではありましたが、それでも30秒とたた
ないうちに、美加さんの足先は車の天井まで届いたのでした。

 で、その結果。

 ワイヤーのたるみを利用して美加さんの足はある程度動かす事
ができますが、それも10センチ足らず。もとに戻すことなんて
到底できません。
 ですから、どんなに身体をばたつかせても大事な処が我々の目
から丸見えとなったのでした。

******************(10)***

 「ほら、こいつのは特別きれいだろう」
 ポン太は、自慢げに美加さんの奥深くを押し広げて私に見せて
くれました。

 しかし、そこに『綺麗』という言葉が当てはまるかどうか。
 とにかく、美加さんのそれは綿毛ひとつなくつるつるに剃り上
げられていたうえ、本来なら暗褐色になっているはずのびらびら
なんかも綺麗に生まれたままの皮膚の色をしていたのでした。

 私にはこう言うほかありませんでした。
 「おまえらしいよ」
 「本当はびらびらなんかも、手術で小学生並みに小さくしたか
ったんだけど……」
 「やればよかったのに」
 やけでこう言うと、相手はしごくまじめに、
 「お母さんに見つかっちゃってね。『子供を産むまで、そこは
触っちゃ駄目よ』って言われたんだ」

 まさに、彼とこうした話題を共にする時はこちらも小学生気分
でなければついていけないところがあります。でも、それでいて、
こいつは金曜日ともなれば、すまし顔で大学の教壇に立っている
のですから、呆れたもんです。

 私は勇気を出して尋ねてみました。
 「おまえ、美加さんが可愛くないのか?……だったら、俺から
おばさんに口きいてやってもいいんだぜ」
 しかし、ポン太は不思議そうな顔をするだけ。

 「何言ってるんだおまえ、可愛くなきゃこんなことしないよ。
終わったあとはちゃんと医者にも見せてるし、問題ないって…」

 彼はまったく意に介していない様子で、赤い袋からまた一撮み、
艾を取り出します。そして、それをほぐし丁寧に丸めて、小さな
山を作ると、今度は美加さんの股間へと分け入ったのでした。

 「おまえも手伝えよ。しっかり押さえてろよ」

 ポン太は美加さんの下腹に肩を入れて強引に美加さんの秘所を
こじ開けようとします。普段つとめてクールな男の無駄に必死な
姿は笑いさえ誘います。

 「なあ、こんなことしたら訴えられるよ」
 「訴えるって?誰に?」
 「美加さんにさ」
 「馬鹿馬鹿しい。おまえって意外に気が小さいんだなあ。その
時はその時さ」
 「だって……」
 「何がだってだ。そんな事だからお前は嫁さんの尻に敷かれて
るんだ。訴えたければそうすればいいだけ。俺たちは夫婦なんだ
もん。ほら、見ろ、美加のやつ。嬉しがって、こんなにおつゆを
垂らしてる」

 ポン太は、どう見ても抵抗しているとしかみえない美加さんの
股間を押し広げると、その一番敏感な処を二本の指で擦り始めて
いました。そのゆっくりとなじるような動きに美加さんの腰が揺
れ始めます。頭を埋め、押し開いた秘貝の中にざらざらした舌を
ちょこんとつけては美加さんの反応を楽しんでいます。

 「ほら、美加。今日は楽しいかい?お前は、広いベッドより、
こんな狭い車の中の方が感じるんだろう。どうした?ん?今日は
お客さんがいるせいかな。いつもよりペースが早いんじゃないの
かい」

******************(11)***

 そう言いながら、ポン太は美加さんのクリさんを立ち上げ剥い
ていきます。その同じ顔で、今度は私にはこの狭い車の奥へ入れ
というのでした。

 わけがわからず狭い車内へ入っていくと、美加さんの口からは
すでに猿ぐつわが取れていました。それを確認していた彼はこう
言ったのです。

 「なあ美加。今日は相羽のおじちゃんのが特製キノコがしゃぶ
れるからね。ご馳走だよ」

 「…………」
 当然、美加さんの顔は青ざめます。
 いえ、私だって、こんな時、どんな顔をしていいのか分かりま
せんでした。

 「ん?……どうしたの?…嬉しくないの?………嬉しいときは
嬉しいですって言わなきゃ」
 最後に、ポン太は、美加さんの大事なクリちゃんに二本の爪を
立てて摘みあげようとするのです。もちろんただではすみません
でした。

 狭い車内がまるで田舎のでこぼこ道を走っているように激しく
揺れ、私は天井に頭をぶつけてしまうほどでした。

 しかし、美加さんはけなげにもポン太の指示に従います。
 「嬉しいです。私、相羽さんのが好きです」
 かすれかすれの声で言いましたが、ポン太は納得しません。
 「じゃあ、俺のは嫌いなのか?」
 「……いいえ」
 「なら、なんで相羽のがいいんだ。おまえ、いつ相羽のを見た
んだ。えっ……」
 ポン太は再びクリちゃんを爪を立てて摘み上げました。
 「いやああああ、やめてえ~~~」

 ポン太はもう一度尋ねます。
 「相羽と俺とどっちがいいの?」
 「……どっちも」
 「どっちもじゃわからないでしょう」
 「もちろんあなたの、あなたのです」
 「そうか、それは嬉しいけど、今日は相羽ので我慢しろ」
 「はい」
美加さんは小さな声で答えました。

 ポン太は太い眉を少し上げると、私に満足げな顔を見せます。
 「じゃあ、相羽、美加がごちそうしてくれるそうだから、味わ
ってみなよ」
 彼はそう言うと、美加さんにも、
 「奴のは、でかいからね、シャブリがいがあるよ」
 こう言ってひやかします。

 そして、そこで会話がとぎれたとみるや、
 「相羽さんいらっしゃいませって言えないの!ん?…あれだけ
教えてやったのに、いつになったらまともな接待ができるんだ」
 彼の言葉が終わるか終わらないうちに、美加さんへは、さらに
厳しい罰が加えられることになるのでした。

 その悲鳴は突然でした。
 「ぎぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああ」
 喉が震え、全身に悪寒が走りひきつけを起こしたように震えて
います。

 何が起こったのか分からず尋ねると、ポン太はあっけらかんと
したもので……
 「膣前庭にお灸をすえたのさ。おしっこの出る穴の辺り。ここ
が悪さをする女には一番きくみたいだね。ただしベビーパウダー
をようくまぶして乾かしてからじゃないと、うまく乗っからない
から高等テクニックがいるんだ。今、一発目でいっちゃったけど、
こいつまだ若いからすぐに元気になるよ。フェラ、嫌いじゃない
んだろう?」

 「…………」

 「だったら、四つんばいになってそいつの口元に垂らしとけば
いいよ。うちのは、結構上手いんだぜ。最初の一年はそればかり
特訓させたから」

 彼はそう言いながら二回目を準備しています。私はお灸に興味
はありませんが、この可愛い口で舐めてもらえたらという欲望は
湧いてきます。
 良い悪い、理性、常識、そんなものは私の脳裏から吹っ飛んで
います。それは男の性というしかありませんでした。

********************(12)***

 「……本当に……いいのか」
 確かめると、

 「ああ、いいさ。こいつがくわえ込んだのはお前だけじゃない
んだから。最近は、お母さんも綺麗にしてやってるし、そうした
意味では重宝なんだよ。おまるとしてはな…それと、お前。少し
美加の乳を揉んでやってくれないか。その方が、美加にとっても
張り合いが出るだろうから」

 私はたまらずブラウスを引きちぎりろうとします。
 しかし、焦っていたのかそれに手間取っていると、ポン太が、
めんどくさそうに大きな裁ちばさみを渡してくれました。

 「ほら、ハサミ」

 あとはもう無我夢中でした。乳を揉み、とがった乳頭を舐め、
うなじを顎を鼻の頭まで舐めてから唇へ、さらにその奥へ自分の
舌を入れて……あとは……あとは……自分の一物を柔らかな井戸
の中へ吸い込ませたところまでは覚えているのですが……全ては
断片的な記憶だけ。そうそう、吸いつかれた時に体を反らした事
だけは覚えています。

 「あっあ~~~~うっあっ、いいいいいいいえええええええ」
 全てのネジが吹っ飛んで、フィニッシュとなる寸前、ポン太が
急所ばかりを選んで二回目の艾に火を点けたからたまりません。
それまで優しく遊んでもらっていたのに、いきなり、『がぶり』
ですから。

 「いたあーーーーー」
 今度飛び上がったのは私の方でした。

 もちろん切れたりはしませんが、狭い車内でのたうち回ること
20分、恥ずかしいのなんのって、理性が戻ってしまいました。

 ポン太は、その後私の大事なものを噛んだと言って美加さんに
三度目のお灸をすえていました。

 今にして思うと、あんな狭い車内でよくこんな馬鹿な事ができ
たと思います。お互い結婚はしていましたが、まだまだ若い盛り
でした。

***************************

 若気の至りから3年。
 さすがにポン太も最近はおとなしくなったみたいです。という
のは子供ができたからでした。

 ポン太の悪戯で産婦人科の先生も美加さんの体を診てたいそう
驚いた様子でしたが、それ以上に驚いたのはすでにこの時子供を
身ごもっていたことでした。
 幸い子供に影響はないとのことで、無事、男の子を出産しました。

 ところで、美加さんにもあれだけ悪戯していたポン太ですから、
さぞや子供にも……と心配になりましたが、美加さんの話では、
子供と私は別ということで、今のところ被害は及んでいないよう
です。

 今度は女の子を、と言っているそうですが、可愛がりすぎて、
変なことにならないか、奥さんには今からそれが心配なんだそう
です。

*********************(了)**

***************************
(ご挨拶)
 鬼滝村は田舎の小さな村です。ここでは都会の人の常識は通用
しません。村の有力者が法律以上の力を持ち、子供たちは体罰に
明るく怯え、女の子は結婚してもそこが安住の地ではありません。
 こんな村ですが、住めば都とやら、ほとんどの村人がこの村に
住んで不幸とは感じていませんでした。それは、ここにはここの
過ごし方、生き方があるからです。
 まずは、思い出のご報告まで……。
 お読みいただきありがとうございました。

****************************

第四話 おにばばの店


          第4話 おにばばの店

*************************
 鬼滝村シリーズの第四話。
 あまり推敲してませんから読みにくいかも…心配です。
 とにかく出してみるだけ出してみるということです。
 話の中身は『お灸』中心のお仕置き小説(SM小説)
 幼稚で過激ですから女の子にはお勧めできません。
*************************

          <あらすじ>
 駄菓子屋のくじで「じごく」をひいてしまった僕は、本当なら
駄菓子屋のばあさんのお手伝いをしなければならなかったのが、
その場を逃げてしまう。
 ところが、後日それを校長先生に告げ口されて、幼なじみの女
の子と一緒に学校でお灸のお仕置きを受ける事に……

***************************

             おにばばの店

 鬼滝村小学校のすぐ近くにこきたない駄菓子屋がありました。
店の主もこきたないばあさんなので、みんなから『おにばば』と
呼ばれていました。四畳半ほどしかない店内は薄暗くて、小さな
白熱灯が一つ灯っているだけ。

 「ごめんなあ、おばちゃん」
 そう言って子供たちが入ってくるとその店の主人が低く垂れ下
がった白熱灯の奥から顔を出しますが、子供たちにしてみると、
そりゃあ不気味なものでした。

 ですから、そんな店、誰も来ないのかというと、そうではあり
ません。近くに駄菓子屋がここ一件しかなかったことや怖いもの
見たさというのもあって、ばあさんが営む駄菓子屋はなかなかに
繁盛していました。

 そして、もう一つ。子供たちがこの店へ足を向ける為の不思議
な催しがあったのです。

 それはこのばあさんが独自に作っているくじでした。一回十円
で一等はプラモの戦車か、リカちゃん人形。それはどちらも千円
以上するものでしたから、子供たちには魅力がありました。

 もちろん滅多に当たりなんて出ません。たいていは5円のガム
をもらって帰るだけですが、貧しい時代の子供たちは、今日こそ
はと、一攫千金を夢見てお小遣いをはたきます。いえ、それだけ
ならまだいいのですが、このくじにはとんでもない逆のおまけが
ついていました。

 ばあさんのくじをひいて、もしも、「じごく」という字が見え
たら、それは文字通り「地獄行き」だったのです。

 たちまち板戸になっている店の入り口が閉じられ、子供は奥の
部屋へと連れ込まれます。
 そこでばあさんの肩を叩いたり、腹這いになったばあさんの腰
や背中に乗って足踏みしなければなりませんでした。女の子の中
には部屋の掃除をさせられたり買い物に行かされた子もいます。

 それでも一番やっかいだったのはお灸でした。ばあさんは艾を
持ち出すと、それを小さくちぎって丸め、と背中の色の変わった
ところに貼り付けろと命じます。
 そして、その艾にお線香で火をつけるのも子供の仕事でした。

 身よりのない一人暮らしのばあさんにとって、子供たちがして
くれるサービスはお金以上に価値のあることだったのかもしれま
せん。

 しかし、いずれにしてもお金を出した人間に働かせるなんて、
そんな不条理が許されていいのでしょうか。そうは思いましたが、
純朴な村の子供たちの大半が、このばあさんの命令に従っていま
した。

 というのは……
 「いやあなこっだあ」
 とあかんべをえをして逃げることはできなかったのです。

 そんなことをすれば、ばあさんは学校へやってきます。そして
校長室の椅子にふんぞり返るや、
 「吉さんところの下の娘と作蔵のせがれが、くじで負けておき
ながら逃げた」
 などと告げ口に来るのでした。

 そして、この告げ口は不思議なくらい効果があります。名指し
された子は、授業中にもかかわらず校長室に呼びつけられ……
 そこで……

********************(1)***

 「きゃぁ、もうやめてえ、お願い堪忍してえ~~」
 僕が校長室の前へ立った時、ものすごい女の子の悲鳴が聞こえ
てきました。

 それは聞き覚えのある声。クラスメートの里子の声です。でも、
僕は彼女が校長室に呼ばれていたことに気づいていませんでした。

 『あいつも呼ばれてたんだ。まずいなあ』
 僕は、思わずノックしようとしていた手を止めてしまいます。

 「お灸だけは堪忍してえ、何でもするから、ごめんなさいする
からあ」

 覗いたわけではありませんが三つ編みにした後ろ髪を振り乱す
里子の必死の形相が目に浮かびます。
 彼女は田舎にあっては結構おしゃれで、時々ピンクのショーツ
なんか穿いてたりしましたから、僕の胸は思わず高鳴ります。

 「心配せんでええ。新しい処にすえやせんから、全部、あんた
のかかさんがすえたところをなぞるだけじゃ」
 部屋の中からオニババの声が聞こえます。

 『やばい』
 とっさにそう思いました。が、ここから逃げるのは駄菓子屋と
違って、さすがに勇気がいります。

 どうしようもなく、ドアの前でたたずんでいると。
 「橋本先生。この子を保健室で裸にしますからな。一緒に来て
手伝うてくだされや。こうした性悪は……幼いときに治しておか
なんと……」

 オニババの声がドアの方へ迫って来てますから、僕は慌てて、
その場を離れます。

 廊下の陰から、そうっと様子を窺うと……
 いつものこきたない割烹着姿のオニババと三揃えのスーツをび
しっと着こなした校長先生が廊下に出てきたところでした。

 そして、部屋の中では若い橋本先生の声がします。
 「本当に、よろしいんでしょうか」

 橋本先生は心配して尋ねましたが、当の校長先生は…
 「里子ちゃんのご両親にはすでにこのことは連絡してあります。
『どうぞご存分に…』って言われたからいいでしょう」
と、意外なくらいあっさりと認めてしまったのでした。

 「いやいやいやいやいや、お灸だけは絶対にいや。お願い先生」
 里子ちゃんの哀願は鬼気迫っています。こんな彼女の声を聞く
のは生まれて初めてでした。

 恐怖の中で聞く彼女の声は不思議にも私を興奮させます。
 自分だって立場は同じはずなのに、なぜかその瞬間だけは甘美
な劣情がお臍の下から這い上がり、顎の先端までもを微妙にくす
ぐるのでした。

 「静かになさい。あなたがいけないんでしょうが…だいたい、
ピアノのお稽古があるなら、なぜくじなんかひいたの。それに、
おばあさんに事情を話して、あとからお手伝いに来ることだって
できたでしょう。何も言わず逃げたりするから……さあ、さあ、
こうなったらおとなしくしなさい。暴れるとまたお仕置きが増え
るわよ」

 橋本先生は、里子の細い両手を右手一つで鷲づかみにすると、
ぐいぐい引っぱって、廊下に引き立てます。

*******************(2)****

 そして、聡子ちゃんは今一度、弁明しようと……
 「でも、わたし……(うがっ、)」
 と、そこまで言ったのですが、その先が何かに押し殺されます。

 察するところ橋本先生がご自分のハンカチで猿ぐつわを噛まさ
れたみたいでした。

 「(…うがっあ、…むっああ、…あああっ、……んんんん、)」

 里子ちゃんはなおも抵抗を続けているみたいでしたが……

 「お黙りなさい」
 という橋本先生の一言で急に静かになります。

 そして……
 「橋本先生、ここでは生徒さんたちのお勉強のおじゃまじゃろ
から、早う保健室の方で……」

 オニババの声に里子ちゃんは思わず腰を引きますが、それなら
と、橋本先生が里子ちゃんをその体ごと抱き上げ、勝負はついて
しまいます。

 「あんまり聞き分けがないようならここで脱がすしかないわね」
 橋本先生は何と里子ちゃんをシュミーズ一枚の姿にしてしまい
ます。

 「…………」
 あまりの事に声の出なくなった里子ちゃんは、呆然としたまま
なされるままに…。

 その薄い下着に胸の膨らみがくっきりと分かります。
 当時、田舎の娘は小学校の間はたとえ高学年になってもブラを
していないのが普通でした。

 実はこの時、橋本先生は僕の存在に気づいていましたが、あえ
て僕には声をかけず、里子ちゃんの頭を僕と反対方向にゆっくり
ひねって保健室の方へ歩かせたのです。

 こうして障害ががなくなったので、今度は僕のことを校長先生
が手招きします。オニババも校長先生もすでに僕のことは気づい
ていたようでした。

 「何じゃ、作蔵のせがれも一緒に来とったんかい。それじゃあ、
ちょうどええ……」
 と、そこまで言ってオニババは校長先生の顔を振り返ると、
 「どうじゃろ、この子も一緒に。どうせここで待たせておいて
も時間の無駄じゃろう」

 「しかし、里子は女の子ですから……」
 校長先生がこう言っても……

 「女の子っていうても、この間おむつがとれたばかりのやや子
やないか」
 オニババは受け合いません。オニババにしてみれば小学生など
まだ赤ん坊と同じ扱いのようでした。

 校長先生は少し困った顔になりましたが、オニババは、すでに
この先の予定を決めているみたいでした。

 「今日はこれからおまえにも保健室でお灸をすえてやるからな。
観念しとけよ」
 何だか楽しそうに告げると、少しだけ不自由な右足を引きずり
ながら保険室へ向かいます。高笑いが廊下に響くなか、僕は絶望
で涙さえ出ませんでした。

 こんなこと書いてると、都会で育った人たちや今の若者たちは、
『どうして民間人であるオニババが校長先生より偉そうなんだ?』
なんて思うでしょうが、昔の田舎では公務員である校長先生より
町の有力者の方が偉いんです。

 オニババも今でこそしがない駄菓子屋のばあさんですが、もと
をたどれば村の名士の出。駄菓子屋の前に広がる公園もオニババ
の亡くなったご主人が村に寄付したものなのです。
 それに何より、校長先生とオニババは、実はある特殊な関係に
あったのでした。

 それはともかく、保健室では橋本先生が保健婦の先生と一緒に
里子ちゃんのお灸の準備を始めていました。

********************(3)**

 僕は里子ちゃんが正座させられているベッドから一番遠い視力
検査表の張ってある壁から彼女を見ています。けれど狭い保健室
ではそれでも里子ちゃんのむき出しにされた背中は大きく見えま
す。背骨のラインの両側に二つずつ対になって並んだ12個のお
灸のあともこの時はっきりと見ることができたのでした。

 「さあ、これを噛んで」
 橋本先生はタオルで猿轡を噛ませると、そのまま里子ちゃんと
向き合うように正座して、その小さな両肩を抱きかかえます。
 里子ちゃんも正座した先生の両膝に自分の両手を乗せて、オニ
ババが自分の背中に一つずつ乗せていく艾の脅威に耐えています。
 今の里子ちゃんにはこの橋本先生のお膝だけが唯一の心の支え
でした。

 やがて、オニババによって灸痕のある12箇所に、新たな艾が
置かれると……

 「じゃあ、いくぞ。熱くなったらよ~く噛み締めとけ。それが
何よりの薬じゃからな」
 こう言ってから、それにいっぺんに火をつけていきます。

 「(うぐっ、んんんんんんんんうんんんうううううんん)」
 火が背中に回った瞬間、声にならない吐息がしてタオルの猿轡
に力が入ります。

 「さあ、しっかり噛んでこらえるの。女の子でしょう!」

 橋本先生の声に、里子ちゃんは先生の膝の上に置いた自分の両
手をこれでもかという力で押さえつけるように握りしめます。

 「ほら、がんばって。もうすぐ終わりますからね」
 先生は里子ちゃんの耳元でささやきます。
 実際、それ以外に励ます方法がありませんでした。

 経験者はわかることですが、お灸は終わる寸前が一番熱いのです。
12個のお灸が終わる頃には里子ちゃんの体は離れた僕の処から
もわかるほど震えていました。そして全身脂汗に光っているのが
わかります。

 里子ちゃんが咳とともにタオルをはき出して少し横を向いた時、
上気した顔と一滴の涙がほほをつたったのも確認できました。
 それでも里子ちゃんはとっても我慢強かったと思います。
 そこで、
 『これで里子ちゃんは終わりだ。次は僕の番だ』
 僕の心臓が締め付けられます。ところが……。

 「おまえ、小学校の4年生までは寝小便がなおらずに、腰の目
だけじゃのうて、尻っぺたや臍の下にもやいとをすえられとった
ようじゃな」
 オニババに言われて里子ちゃんはいっぺんに顔を真っ赤にしま
す。

 でも、オニババに容赦はありませんでした。
 「ほうら見せてみい。どうせついでじゃ。お前の母ちゃんには
わしからよう言うてきかせるからそこもすえとこうや……」

 オニババはそう言うと、無慈悲にも里子ちゃんを今度は仰向け
に寝かせます。
 でも、その時、彼女の視界に僕の姿が映ったようでした。
 ですから……、

 「……あっ、ああ……だめ……」
 一瞬呟いては、体を元に戻そうとします。

 ですが、里子ちゃんの望みは聞き入れられませんでした。抵抗
する里子ちゃんを保健婦と橋本先生が取り押さえてさっきと同じ
ように革張りの処置用ベッドの上で正座させます。先ほどと違う
のは背中に回した両手を大人二人に押さえられていることでした。

*******************(4)****

 「なんじゃ、一人前に恥ずかしいのか?まあだ小便臭い小娘の
くせに……くじに負けて逃げ出す方がよっぽど恥ずかしいんじゃ
ないのかい」

 機嫌の悪くなったオニババはかなり乱暴に里子ちゃんのショー
ツをはぎ取ります。おかげで里子ちゃんの正座は崩れ、投げ出さ
れた両足のスカートはめくれあがり、かわいい割れ目が顔をのぞ
かせてしまいました。
 ですが、その場の誰もが里子ちゃんに同情してはくれなかった
のでした。

 「おうおう生意気に……」
 オニババは短いスカートを跳ね上げて、ちらりとそこをのぞき
込むや、それだけ言い残してその場を離れます。

 そして、始めからそこにあるのがわかっていた様子で、戸棚の
引き出しを開け、カミソリとタオルを取り出し、だるまストーブ
の上にかかっていたやかんのお湯で湿してから戻ってくると……

 「ほれ、ほれ、いつのまにこんな立派になった。こんなものは
おまえさんにはまだ早いわさ」
 彼女はそう言うと里子ちゃんの三角デルタをタオルで湿しなが
ら、カミソリを使って、きれいに剃り上げてしまいます。

 「ほれ、わしの言うた通りじゃろう。この子のおっかさんがな、
寝小便に難儀してここにすえとったのをわしはおぼえとったんじ
ゃ。こんな茂みになんぞに隠さず、昔のことを思い出させる方が
この子の為じゃ。艾をかしてみい。わしがすえてやるから」
 オニババは橋本先生から艾の袋を奪い取ると、手慣れて様子で
ほぐして、九つほど新たに作ります。それをまず三つ、お臍の下
の線、蟻の戸渡りに沿って並べて火をつけます。

 「あっぁぁぁぁ、いやぁああぁぁぁぁぁぁ」
 猿ぐつわがとれている里子ちゃんは、必死に首を振って我慢し
ます。

 『あんな十二個も耐えたんだから、三つぐらい』
 と思いましたが、存外それは熱そうでした。

 「幼い頃の記憶があるからのう。熱いじゃろうて……三つ子の
魂百までというてな、幼いときにやられたことはいつまでも強う
記憶に残っとるもんじゃ」

 オニババは容赦なく、二回目の三つを同じ位置に置きます。

 「ああああっ、いややややあああ~~、かんにんしてえ~~」
 里子ちゃんの悲しい声を聞いてもオニババはまるでひるむ様子
がありません。それどころか、
 「おうおういい声じゃな。お仕置きはこういう声が出んようじゃ
効果がないからな。ほれ、もう一回じゃ。辛抱せいよ」

 「いやあ~~~~だめえ~~~許して~~~ごめんな…さい」
里子ちゃんは無駄と知りつつも必死に哀願していましたが、その
途中で痰を喉にからめてしまいます。すると、それであきらめた
のか、そのまま静かになったのでした。
 そして、お灸の火が回っても必死に体は逃げようともがくもの
の言葉はでないままで終わったのでした。

 「おとなしゅうなったな。……大人の覚悟ができたな。それで
こそお仕置きのしがいがあるというものじゃ。ぎゃあぎゃあ騒が
んで、じっくりこの熱さを噛みしめれば、それこそいい薬になる
じゃよ。……よし、じゃあ次は尻っぺたじゃ」

*******************(5)****

 オニババは責め手をゆるめません。
 そして、里子ちゃんの体を裏返すと、みずみずしい桃のような
お尻のてっぺんに今までのどこよりも大きな灸痕を発見してしま
います。

 「ここは熱かったじゃろう」
 オニババは嬉しそうに大きな笑窪をさすりますが、里子ちゃん
はそれには答えませんでした。
 それは、答えたくなかったのか、それとも心の整理がつかずに
それどころではなかったのか……いずれにしても、こんな態度を
オニババが喜ぶはずがありませんでした。
 それが証拠にここではお尻の丘の上はもちろんのこと殷の目や
お尻の割れ目が始まる尾てい骨あたりにも艾が置かれます。

 「あっぁぁぁぁぁぁああああああ、いいっ、ひぃ~~~……」

 形容しがたい悲鳴が保健室に流れるなか、里子ちゃんのお灸は
続きますが、ある瞬間から急におとなしなってしまいました。

 僕は、里子ちゃんがお灸の熱さに慣れたんだろうと勝手に思い
こんでいましたが、オニババはすぐにこの異変に気づきます。

 「あんれまあ。だらしないことじゃねえ。だから、お前はまだ
まだネンネだと言うんじゃ」
 オニババの言葉からほどなくして、お仕置きは中断。橋本先生
や保健婦さんによってタオルがたくさん用意されます。

 それは里子ちゃんがお漏らしをしてしまったことへの後処理で
した。
 放心状態の里子ちゃんのおまたか持ち上げられ、思春期の僕に
は鼻血ものの光景が目に飛び込んできます。それは男兄弟ばかり
の中で育った僕が初めて目の当たりにした女性器でした。

 『いいのかなあ、あんなの見ちゃったけど』
 僕は自問しましたが、ならば目をつぶってもよさそうですが、
それもかないませんでした。

 『見たい!何がなんでもみたい!』
 と願ったものではありませんでしたが、拒否する理性もありま
せんでした。
 実際、僕の村ではそのあたりがとても鷹揚で、この時も僕が、
その場に居合わせたことは承知の上で、あえて部屋から出ろとは
誰も言いませんでした。

 お灸のお仕置きが再開される時、里子ちゃんは再び僕の存在に
気づいて、わずかに抵抗しましたが、抵抗はそれだけでした。
 疲れた体と放心状態の心からお人形のようになってお仕置きを
受けています。僕はようやくこの出来事が『明日は我が身』いえ、
『すぐに我が身』だと気づきます。
 気づきますが、不思議なもので、この時はまだ差し迫った恐怖
を深刻には感じてはいませんでした。

 「ようがんばった。このくらい頑張れれば、お産は楽じゃぞ」
 オニババは里子ちゃんにわけのわからないことを言って励まし
ます。私は、さすがにこれで全部終わっただろう。いよいよ僕の
番だな、と思いました。

ところが、ところが……

*******************(6)**

 「そうじゃ、せっかく機会じゃからな、何か思い出に残る事を
せにゃいかんな。『ああ、あの時、駄菓子屋のばあさんに、とっ
ちめられたなあ』って、思い出してもらわんといかんからな。…
…どこがいいかいねえ」

 オニババはにこにこしながら里子ちゃんの体を舐め回します。
 そして、思い当たったとみえて、里子ちゃんをふたたび仰向け
にすると両足を高く上げます。

 「いや、いやあ~~~」
 貞操の危険を感じた里子ちゃんは、慌てて激しく抵抗しました
が、校長先生までが加わった大人三人の力にはかないません。

 「だめえ~~~」
 くの字に曲がった両足の膝小僧が里子ちゃんの鼻先に迫ると、
その場所は僕の処から余すところなく丸見えとなったのでした。

 『えっ!これが女の子?』
 それは本当にぶっ倒れそうなくらいのショックでした。
 だって、それはとってもグロテスクに感じられたのです。

 『あんなに可愛い顔をしているのに、あんなに綺麗な声なのに、
あそこは何てグロテスクなんだろう』
 って思ったんです。
 そして何より、今までなぜ見たことがなかったんだろうという
疑問さえわいてきたのでした。

 もちろん、心臓はシャツを突き抜けていきそうですし、瞳孔も
開いて頭はパープリン状態。陸に上がった金魚のような荒い呼吸
をしています。けれど、それに性欲を感じたか、と問われれば、
答えはNoでした。

 「なんじゃ、おまえ珍しいもんでも見たんか。世界に女の数だけ
これはあるぞ」
 オニババは僕の異変に気づくと苦笑いを浮かべます。そして、
やはりまずいと思ったのか……
 「おまえにはまだまだ刺激が強いようじゃな。後ろを向いとれ」

 こうして、僕は里子ちゃんの大事な処から目をそらしてしまい
ましたが、里子ちゃんに対するお灸のお仕置きはまだ終わっては
いませんでした。
 しかも、オニババは親切にもその場所を僕に教えてくれます。

 「いいか。このお尻の穴はな。神経が集まっとるからとっても
熱いんじゃ。吉さんも躾に厳しい人やから一度や二度はすえとる
と思うが………ほうら、やっぱり痕がのこっちょるわ」

 オニババがそこまで言った時でした。僕の耳に里子ちゃんの鼻
をすする音が聞こえてきます。
 それは今までとはちょっと違う泣き声。子供に戻ったような声
でした。

 オニババにはその声が感に触ったのでしょう。
 「泣くなら泣きな。しかしな、今度のは泣いてごまかせるほど
甘くないぞ」
 吐き捨てるように言います。

 実際、火がついたあとは地獄絵図でした。
 いえ、見たわけではありません。里子ちゃんもそんなに大きな
声を出していたわけではありませんが、ベッドのきしむ音、本当
に限界まで押し殺したうめき声、かすれ声、そして先生方のいつ
になく必死になって取り押さえようとしている様子など、たとえ
見なくてもそれがいかに壮絶なものだったかは背中でだって感じ
ることができます。

*******************(7)*****

「もういいぞ」

 僕は振り向くことを許されましたが、その時、里子ちゃんは、
まだ四つんばいでハイハイしながらお尻の穴を押さえていました。
きっと、じっとその場にとどまってはいられないほどお尻の穴が
まだ痛かったに違いありませんでした。

 「これから一週間はうんこをするたびにわしのことを思い出す
じゃろうが、そのぐらいでないと、性悪の根性は立ち直らんから
な。……ま、吉さんがおるから治療は問題ないじゃろう。しかし、
もし、わしにやって欲しければやってやるぞ!……ハハハハハ」

 オニババはしばしの高笑い。しかし、次の瞬間、里子ちゃんは
この時になって初めてオニババの顔を思いっきり睨み付けたので
した。

 「さてと、これで、一人終わった。……あとは校長先生の領分
じゃが、……今の今ではこの子も可哀想じゃから、もうしばらく
してからお願いしますよ。……ほれ、そうと決まったらそこの隅
に立って反省しとれ」

 僕は、この瞬間、目が丸くなった。
 『あんなにすごいお灸をされた上に、まだお仕置きがあるなん
て……。それに校長先生の領分って何だろう?……そう言えば、
誰かが校長はイギリス帰りのだから鞭を使うって……。今日は、
俺、生きて帰れないんじゃないか……』
 少しオーバーかも知れないけど、その時は本当にそう思った。

 そんな恐怖心がついこんなことを言わせる。
 「僕、あまりお灸はされたことがなくて」

 僕がオニババに言ったことはほとんど命乞いと同じだった。
 しかし、オニババは当然の事ながら相手にはしてくれなかった。

 「何をみっともないこと言っとる。里子だってあんなに立派に
耐えとるのに、男のおまえにできんはずがないじゃろうが。さあ
さあ、さっさと裸にならんかい」

 オニババだけではない。オニババのわがままにつき合わされて
いる先生方まで、早くしろという無言の圧力をかけてくる。僕は
覚悟を決めて裸になるしかなかった。

 パンツ一つになるまでは、それでもなんとかなったが、やはり
最後の一枚はなかなか踏ん切りがつかない。やっぱり里子ちゃん
の目が気になるのだ。

 「なにをぐずぐずしとるんじゃ。時間がもったいないぞ」
 オニババがそう言ったからだろうか、その直後、僕は、保健婦
さんに羽交い締めにされる。そして、これも示し合わせたように
橋本先生が僕のパンツを……

 「だめえ~~~」

 僕は悲しい声をあげたが間に合わなかった。
 するりとぬけたパンツのあとに、みすぼったらしい僕の一物が
残っている。

 当然の反応かもかもしれないが、里子ちゃんは両手で顔を覆い、
横を向いてしまう。

 「おうおう、まだ可愛らしいもんじゃないか。それでもちょっ
とは膨らみだしたか。……まだ、蕾じゃな」
 オニババは無造作に僕の竿を摘みあげると、それをゆっくりと
剥き始める。

 『えっ!何するの!』
 まだまだ包茎の時代。僕はそれまで一度たりともそれを剥いて
みようなどと考えたことがなかったのだった。

********************(8)***

 「痛い痛い、だめだめ、壊れるから~」

 オニババは僕の懇願などまるで眼中にないかのように中の芯を
出していく。

 「馬鹿、本当に駄目だって。やめろよ!。殺すぞ、てめえ!」
 僕は必死になってオニババをつかもうとした。実際、それほど
痛かったのだ。
 しかし、何とか振りほどけそうなところまできたら、今度は、
校長先生までもが加わる。
 たちまち形勢は逆転してしまった。

 ベッドに仰向けに押し倒されたら、今度は橋本先生まで参加。
両手両足が大人二人に押さえ込まれ、オニババがお腹の上に乗っ
てしまっては万事休すだった。

 「こらこら、じたばたせずにおとなしくしてろ。せっかくお前
を男にしてやろうというのに……他人の親切は受けるもんじゃ」

 僕の大事なところをオニババの皺くちゃな手がしごいている。
性欲というのとは違うけど、そりゃあ不思議な気持ちだった。

 「痛い、痛い、痛い、」
 何度もそう言いながら、僕の先端は生まれて初めて外の空気に
触れたのだ。

 「ほれほれ、汚くしとるからこんなに垢が溜まっとるじゃない
か」
 オニババはちり紙を自分の唾で濡らすと、包皮との隙間に白く
溜まっていた雑菌をふき取った。

 「やめてえ~~~~痛い、たいたい……」
 僕は両足をばたつかせ悲鳴を上げて無駄な抵抗を続ける。
 外に出たばかりの一物はとてもデリケート。ぬぐっただけ……
いや、触れただでも、その痛さは拷問に匹敵するほどだったので
ある。

 「やるろ~~~、痛い痛い痛い、壊れると言ってるだろうが、
くそばばあ」

 怒号が部屋中に轟き渡ったが、オニババはまるでよそのことの
ように平然として掃除を続ける。そして、一応完了すると、振り
返って里子ちゃんにこう言うのだった。

 「ほれ、お前もよう見とれ、これが大人のちんちんだ。こいつ
のはまだ小さいし形も貧弱だがな、そのうち、このあたりが膨ら
んで立派になっていく」

 オニババはなんと私のをモデルに男根の説明を始める。今様に
言えば性教育を始めたのである。そして、ふたたび里子ちゃんが
顔を隠すと……、
 「ほれ、ほれ、恥ずかしがってたら何もできやせん。何事も、
経験じゃぞ。見られる時に見ておいて損はないわい」
 オニババは耳たぶまで真っ赤になった里子ちゃんを勇気づける
のだった。

 「ほれ、おまえは作蔵のせがれじゃからな、あんまし灸はすえ
られとらんじゃろう」

 オニババはそう言うと僕をうつぶせにして背中から調べ始め
ます。
 たしかに背中や腰には灸痕がありませんでしたが、お尻には、
大きな痕が七つもあります。さらに知られたくない秘密が僕には
ありました。

 『オニババにわかりませんように』
 僕の願いもむなしく僕の体を仰向けに戻したオニババはすぐに
それを発見してしまいます。

*********************(9)**

 「おうおう、おまえも悪さはそれなりにしとるようじゃな」
 オニババはそれを発見すると、嬉しそうに笑って、てかてかと
ケロイド状になった灸痕を指でなぞります。それは竿の根本、袋
との境目や袋の根本からお尻の穴にかけてそれはあったのでした。

 「気持ちええじゃろう」
 オニババはそこをさすりながら悪戯っぽく僕の顔をのぞき込み
ます。オニババがどういう意味でそう言ったのかは知りませんが、
確かにそこは他の皮膚とはほんの少しだけ感触が違っていました。

 「よし、尻からじゃ」
 オニババの号令一下、先生たちはまるで彼女の手下のようです。

 今では考えられないことですが、当時は村全体が牧歌的な暮ら
しぶりで、どんな役所も学校も今以上に土地の有力者には融通が
きいたみたいです。
 もちろん法律やお上の命令というのは一応守られていましたが、
どちらかと言えば村の有力者の常識みたいなものの方が優先で、
法律やお上の通達というのは、それに反する事を校長や先生方が
どうしてもやらなければならない時に持ち出す錦の御旗みたいな
ものだったのです。

 これだって……
 『オニババが困ってるから協力してやろう』
 理由はたったそれだけ。たったそれだけの事でこれだけ激しい
体罰が、しかも学校内でまかり通っちゃうなんて、今の人にこれ
を信じろと言ったって、そりゃ無理ですね。

 「熱い、やめてえ~~、もうだめ、いやだってえ~~~」

 僕はオニババのやいとに悲鳴をあげます。その熱いのなんの。
よく歯が折れなかったと思うほど全身に力をいれてもまだ足りま
せんでした。

 「だらしのない奴やなあ。男の子がこのくらいの事で音を上げ
よってからに。おちんちんにもすえてやるけど、この分じゃ目を
回すかもしれんな。……先生、この子にタオルを……」

 オニババの指示でタオルが猿ぐつわとして与えられましたが、
オニババの言った通り、以前、母親が激怒してここへすえた時は
本当に目を回してしまい、以後、我が家ではお灸がすえられなく
なったという経緯がありました。

 「よう~我慢せいよ。お仕置きじゃからな」
 そう言ってから線香の火が艾に落とされます。

 その時の格好って、里子ちゃんも体験した赤ちゃんがおむつを
替える時のようなあのポーズ。見ている時はそれほどでもなかっ
たけど、いざ、自分がやられる段になると、死ぬほど恥ずかしい。
 人間なんて勝手なものです。

 ですから、本当にどうなってもいいから、ここを逃げだそうと
考えていました。
 でも僕の決心よりほんの一瞬早く大人たちが動いてしまいます。
今回は力の強い校長先生が私の肩にのしかかり、両足をそれぞれ
橋本先生と保健婦さん。おまけにタオルで猿轡までされれば……
もうこれは立派な拷問でした。

 何もできぬままに火かつけられ『しまった』と思った時はもう
後の祭り。

 やがて暖かいと感じてから……

 『あっ!』
 「(んんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんん)」

 火が回って消えるまでは10数秒。火が消えるまでの炎熱地獄。
とにかく、この熱さばかりは文字では表現できません。

 と、普通はこう表現するのですが、この時は火が消えてからも、
しばらくはベッドの上で悶絶していました。

******************(10)**

 「よし、よう目をまわさんかったな」
 オニババは褒めてくれましたが、次が余計でした。
 「次は尻の穴も暖めてやるか。里子だけじゃかわいそうだから
な」
 そう言うとオニババは艾をぐいぐいお尻の穴へと詰め込みます。

 『勘弁して、もう一生トイレにいけなくなっちゃうよ』
 私はべそをかいていました。それくらいオニババは丹念に丹念
に艾をお尻の穴へ詰め始めたのです。

 「よし、これくらいでいいじゃろう。いいか、これが最後じゃ
からしっかり耐えるんじゃぞ」
 オニババは僕のお尻の穴を絞り出すように強い力で摘むと火をつけます。

「(ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ)」

 本当は大声をあげていくらかでも痛みを緩和させたいところで
すが、それもできないまま、焼け火箸をお尻の穴に差し込まれた
ような強烈な熱さ痛さが脳天まで突き上げます。
 そして、一瞬、本当に気が遠くなりかけたのでした。

 きっとその時だったのでしょう、事が収まってから大人たちが
苦々しい顔になっているのに気づくと、それとほぼ同時に自分の
下半身が濡れている事を悟ります。

 『里子ちゃんにすべてみられてしまった』

 確かにそうは思いましたが、それより何より『やっと終わった』
という安堵感の方が強くて、なされるままに先生たちから恥ずか
しい場所を拭いてもらいパンツを穿かせてもらったのでした。

 「いやあ、お見事でした」
 橋本先生がお灸のお仕置きを終えたオニババをねぎらいます。
 でも、ねぎらってほしいのは僕と里子ちゃんの方でした。

 二人はお仕置きがこれで終わったと思っていましたから、早速
帰り支度を始めます。
 『これから学校で出会う友達にこの部屋で起こった事を微塵も
感じさせてはならない』と感じてた僕は、ボタンの付け忘れがな
いかとか、髪が整っているかとか、鏡に向かって笑顔の練習まで
していたのです。
ところが……、

 「これからは先生方の領分じゃから、わしの出る幕ではないが、
どうなさるね」
 オニババが尋ねると、校長先生が……

 「二人とも尻を百回も叩いてから、この物差しで20回もどや
しつければ少しは反省するでしょう。今日はだいぶお灸でこたえ
てるでしょうから、あんまりきついことはしませんよ」

 校長先生の言葉を聞いた瞬間、僕と里子ちゃんは顔を見合わせ
ます。お互いの顔には『嘘でしょう』という文字が浮かんでいま
した。

*******************(11)***

 校長先生のくどくどしいお説教のあと、二人は、里子ちゃんが
橋本先生、僕が校長先生の膝の上に乗ってお尻を叩かれ始めます。
前にも言いましたが、この時の校長先生はイギリス帰りでそこで
身につけた本格的なスパンキングを得意としていました。今は、
西洋文化が豊富に入ってきますからまだしもでしょうが、こんな
田舎でしかも40年も昔の事ですからこれは特別な事でした。
 校長室にはケインが傘立てのようにして置かれていたのを覚え
ています。

 とにかく二人一緒にやって時間を節約しようという大人たちの
魂胆でしたが、パンツを下ろす時間までは節約してくれませんで
した。

 二人はふたたびお尻丸出しになります。今度は二人並んでいま
すから互いのお尻は見えませんが、顔をちょっと横に向けるだけ
で表情はうかがい知れます。

 「…パン、…パン、…パン、…パン、…パン…パン、…パン、」

 乾いた音がハモって白い天井から反響してきます。
 最初はそれどころではなかった二人も、しばらくするとお互い
が気になるようになります。私が彼女の方を向くと里子ちゃんは
その顔を反対の方へ向けてしまいますが、気がつくと今度は里子
ちゃんが僕の方を見ている、そんな感じでした。

「…パン、…パン、…パン、…パン、…パン…パン、…パン、」

 しかし、それも半分を過ぎるころになると、そんな余裕もなく
なります。腰を振り、足をばたつかせ、伸び上がって拘束された
腰を自由にしようとしたり、ただ闇雲に頭や上半身を振ったります。
こんな事をしても痛みが逃げるわけではなく、何にもならないの
ですが、とにかくじっとしている事が苦痛でした。

「…パン、…パン、…パン、…パン、…パン…パン、…パン、」

 平手によるスパンキングは決して強く叩いているわけではあり
ません。ちょっと見には遊んでいるようにさえ見えます。ですが、
百回ともなれば蓄積されたその苦痛は相当なものです。七十回を
超える頃には全身が脂汗にまみれて、軽い一撃も悲鳴を上げたい
ほどの衝撃でした。

「…パン、…パン、…パン、…パン、…パン…パン、…パン、」

 ただ、里子ちゃんより先に悲鳴を上げたくない。
 これは、男の意地みたいなものでした。

 「…パン、(うっ)…パン、(あっっ)…パン、(うぅぅ)…
パン、(おっっ)…パン(ああ~)…パン、(んんん)…パン、
(はあっ)…パン、(むっっ)」

 八十回を超えると、嗚咽とも吐息ともつかない熱い息が僕の口
からも里子ちゃんの口からも漏れ始めます。
 これは自分の意志では止められない生理的なものでした。
 そして、85回目、ついに……

 「…(パン)いやあ~やめてえ……(パン)ごめんなさい……
もうしません……」
 里子ちゃんが泣き出した時点で橋本先生は一旦スパンキングを
中断します。
 しかし、それはお仕置きをやめてくれるということではありま
せんでした。

 「うるさくすると、お仕置きを増やすわよ」
 そう言って、今度は前にもまして強く叩き始めます。

*******************(12)**

 「(パン)だめえ、ぶたないでえ…(パン)いやいやいやいや、
…(パン)ああ…(パン)こわれる~~、…(パン)痛いのイヤ
ですから~…(パン)お願い、やめてえ…」

 里子ちゃんの悲鳴はたぶんに生理的なものでした。僕にも経験
がありますが、ある一定の苦痛をこえると自分の心が制御不能に
なって、とりとめのない事を言ってしまうことになります。
 里子ちゃんだって、こんな悲鳴で許してくれるなんて思っては
いないはずです。けれど、ある限界を超えてしまうと、もうどう
にも叫ばずにはいられない状態になるのでした。

 僕はこの時は恥をかかずに終わることができましたが、この先、
校長先生のお仕置きでみっともなく叫んだ事は何度もありました。
 先生はそれほどお尻叩きが上手だったのです。

 「よし、いいだろう。それでは30分後にあらためて鞭を受け
てもらうからな」

 校長はそう言うと私たち二人を部屋の隅に立たせて部屋を出て
いきます。
 彼は『こんな田舎にどうして?』と思えるような博識で、洋行
帰りでもあったのですが、子供たちに対する愛情は人一倍、鞭や
スパンキングを中心としたお仕置きも人一倍、という変わった人
でした。

 残された2人は保健婦さんの管理下に置かれますが、その保健
婦さんも何かの用事で席を外してしまいます。

 すると、僕は隣で立たされている里子ちゃんのお尻にそうっと
触ってみます。

 驚いた彼女はすごい形相で僕を激しく突き倒しましたが、僕は
笑ってごまかし、めげませんでした。

 また忍び寄ってはスカートの中に手を入れて脅かします。

 二度目はビンタ。
 でも、最初より気のせいか穏やかな顔に見えます。

 三度目はさすがに警戒されてなかなか近寄れませんでしたが、
目をあわすことは断然多くなりました。

 そして、隙きをついて三度目を敢行。
 でも、この時はなぜか彼女も笑っていました。

 そして、校長先生のきつい20発のあと、僕たちは痛いお尻を
抱えて体育館の奥にある用具置き場まで行き、まだホットなお尻
のままで結ばれてしまいました。

********************(13)***

 その後紆余曲折は様々ありましたが、笑顔が可愛かった里子は、
今でも私の布団の中で寝ています。子供ができて、里子の笑顔は
半分彼らに取られてしまいましたが、でもまだ半分残っています。

 オニババがきついお仕置きやいとのすえに結びつけてくれた僕
と里子。今でも時々、艾に火をつけてはお互いに楽しみます。
 『こどもたちですか?』
 もちろん、お灸で躾てますよ。時代錯誤なんて言わせませんよ。

****************<終わり>***

第三話 おすけべ神社

        第三話 おすけべ神社

**********************
『お灸』を題材にしたSM小説です。
恐ろしく下手な小説ですが、
いつも書いているものとは、世界が違いますから
その点だけ、老婆心ながら、ご注意くださいませ。
**********************

          <あらすじ>
 村のフーテン三人娘の一人ナオミは、興味半分で村祭りの夜に
おすけべ稲荷と呼ばれる神社に願掛けを行うが、精力が余ってい
る彼女は逆に妖怪にたぶらかされることになってしまって大事な
処から指が抜けなくなってしまう。
 最後は大人たちの協力でめでたしめでたしとなるのだが……


*************************

            おすけべ神社

 村には三人のフーテン娘がおりました。髪を紫に染めたナオミ、
赤く染めたエミ、金髪のキミエの三人です。三人はほとんど学校
にも行かず、親ともめったに口をききませんでした。

 夜はその日の気分で仲間の家でごろ寝して、昼は町へ出て万引
かカツアゲか援交(いえいえ、一人を囮にしての美人局なのです
が……)。そんなこんなで稼いでは、夜更けまでゲーセンに入り
浸っているのが常でした。

 ですが、そんな彼女たちもお祭りの日だけは別だとみえて村で
おとなしくしています。
 おとなしくといっても、昔の友達を見つけては、人気のない処
に誘い込み、たばこの火をその子の顔や胸にちらつかせてはお小
遣いを借りるということはするのですが、そんなことは彼女たち
にしてみれば、たわいのないこと、ご愛敬のうちだったのです。

 そんな三人娘ですから村の人たちだって好意的ではありません。
少しは楽しい事、刺激的なことが起こるんじゃないかと期待して
いた三人にとってお祭りは村人の冷たい視線を感じるだけのつま
らないものになってしまったみたいでした。

 「あ~~あ、つまんねえなあ、子供の頃はもっとたのしかった
のに~」
 「だめよ。こんなちんけな村祭りじゃあ何もおこらないって」
 「あ~あ、こんなことならゲーセンにいた方がよかったなあ」

 ナオミたち三人は祭りがはねて露天も店じまいする頃になって
鎮守の森へとやってきます。そこは若いカップルのデートスポッ
ト。あわよくばそいつらをからかって、またお金のむしんを考え
いてたのですが、それも空振りだったのです。

 そんな欲求不満の三人がタバコをふかしウンコ座りをしている
と、中でキミエの目にあるものが映ります。

 彼女はそれに吸い寄せられるように友達から離れていきました。

 「どうしたのさあ」
 気がついた二人が後を追ってみると、キミエはお稲荷様の小さ
な祠(ほこら)を守る白く小さな狐の像の前に立っています。それ
はとても可愛いもので、高さも彼女たちの腰の辺りまでしかあり
ませんでした。ただ彼女が不思議がったのはその二匹の狐の頭に
パンティーやらブリーフが何枚か掛けてあったことでした。

 「なあんだ、おすけべ稲荷じゃない」
 エミが事情を知っているらしく答えます。

 「この狐にパンティーをかけておくと、感じなくなったものが
また感じるようになるんだって……昔、ばあちゃんに聞いた事が
あるの。こっちが雌の狐で女用、あっちが雄の狐で男用なの」

 「へえ~~、おもしろそうじゃない。やってみようか」
 ナオミは乗り気でしたが、エミが注意します。
 「何言ってるのよ。あんた昨日だって私たちとウハウハだった
くせに」

 「なにウハウハって……私、知らないわよ」

 「…………」
 「…………」

 「何よ、二人とも、そのいやらしい目は……。いいでしょう。
私はもっともっと絶頂感が欲しいの」

 「でも、本当にだめよ。これは精力が衰えた人でじゃないと、
やっちゃいけないんだって、うちのじいちゃんも言ってたから。
まだ元気な人がやると、あり余った精気を森の妖怪が吸い取りに
くるそうよ」

 「ばかばかしい。そんなの迷信に決まってるじゃない。あたし、
やってみるからね」

 ナオミはさっさと自分のショーツを脱ぎ去ると、妙ににやけた
顔をした狐の顔にかぶせます。

 「ねえ、あんたたちもやりなさいよ」
 ナオミは誘いましたが、二人は首を振ります。

 「あたしまだそんなに困ってないし……」
 「だって、明日、これブルセラに売って5000円稼ぐだもん。
もったいないじゃない」

 二人は理由はともかくその場の雰囲気が異常なことに気づいて
いたのです。なま暖かい風がスカートの中をはい上がり、背筋を
ぞくっとさせます。
 三人の他には誰もいないはずなのにどこがで見られているよう
な気がします。

 でも、そんな霊感をナオミは感じていないようでした。
 そして、ご丁寧にもナオミが柏手を打ったときでした。

 祠(ほこら)から強烈な青みがかった白い光が四方八方に飛び散
ったかと思うと、狐の目が赤々と光り。その瞬間、ナオミの体は
祠(ほこら)の中へと吸い込まれていきます。

 「ナオミ~~~」
 一瞬の出来事。光が消え去った後になって取り残された二人が
慌てて祠(ほこら)を調べましたが、ナオミの姿は影も形もありま
せんでした。

*************************

 祠(ほこら)で強烈な光を浴びてからいったいどのくらいの時間
がたったのかわかりませんが、ナオミは気がつくと、大きな木に
背中を張り付かせるようにして立っていました。両手を万歳する
ようにしてあげ、やや自身が伸び上がるようにつま先立っている
のがわかります。違和感を感じてお腹のあたりに目を落とすと、
そこには張り付いた大木の太い枝が一本、股の間を貫いているの
がわかります。

 『あっ、ああああああん』
 浮き上がっているかかとを地面に着けようとしましたが、その
たびに太枝が彼女の股間を持ち上げて邪魔します。べつに縛られ
てはいないのですが、何一つ体の自由がききません。

 『え?!私、どうして、こんな格好になっちゃったのよ……』
 わけのわからないままにあたりを観察し始めたナオミは、あら
ためて自分が素っ裸でいることに気づきます。

 『いやあ~~~恥ずかしいよ~~~』

 それだけではありません。太い枝と格闘するうち、張り出した
胸の先端は次第に緊張し始め、やがてはち切れんばかりになって
乳頭のあたりが細かく震え出しました。

 『いやあ~~~』
 頭のてっぺんからお臍の下へと伸びる一本の太い神経に電気が
走ったかと思うと、後は、子宮へ子宮へと痛がゆくも切ない電気
信号を送り続けます。

 『ああ~~~~いやあやめてえ~~~~~』

 子宮が激しく伸縮し、子宮口へ、膣口へとたっぷりのおつゆを
絞り出したその切ない刺激は、子宮での役目を終えると、再び、
お腹の中心線を駆け上がって、細いあごの先端を振るわせたり、
涙腺を開けて歓喜の涙を流させたしながら、両手の指先や足の指、
乳頭、顎、歯、あるいは脳天、とにかく身体の尖った部分なら、
どこでも、そこから放出されるでした。

 「あっあっ~~~~~~~~」
 電気が放出される時、ナオミは絶頂を感じます。ナオミの瞳は
そのたびに涙に潤んでいました。自分のものであっても触れられ
ないもどかしさも、逆に情欲の感情を高めます。

 抑えようとしても沸き起こる愛の感触で、ナオミの心と身体は
パニックになっていました。

 「やめてえ~、もうだめえ、許して……ごめんなさあああああ
あああ~~」

 ナオミは哀願の声をあげます。それでも、キュートにしまった
腰や形のいいお尻へは絶え間なく官能の電気信号が送られ続けま
す。快感の信号に痺れたまま、ナオミは腰に力がなくなり、もう
立っていられないほどでした。今の彼女を支えているのは、股間
から伸びる一本の太い枝だけ。

 『あっ……濡れてる』
 ナオミはたまらずその太股を自分のもので濡らしてしまいます。

 「なんじゃ、もうお漏らしか。察するにお主、まだ精力は存分
に残っておるな」

 見れば、くねくねと曲がった木の枝で出来た杖をつき、白髪で
ざんばら髪の老婆が一人。ナオミの足下に立っています。

 とても小さな体で、四頭身の大きな頭は身動きできないナオミ
のお臍のあたりまでしかありませんでした。

 「何よ、あ、あんた、こんなことして無事にすむと思ってるの。
警察、呼ぶはよ」

 ナオミは他人が口にしても自分では滅多に口にしないこの言葉
で目の前の老婆とやりあおうとしましたが……

 「ははははは、おまえに警察が味方してくれるとは思わんがな。
まあよい、いずれにしても無駄なことじゃ。ここは魔界の森じゃ
からな。お前がどんなに大声を出そうと人間が聞く気遣いはない
のじゃ」

 「魔界って?あんた、誰なの?」
 ナオミは満たされない快感の為に今は気が遠くなりそうになり
ながらも気丈に尋ねます。

 「わしは稲荷の化身じゃ。といっても普通の稲荷ではないぞ。
神より『精気をなくした者を助け、子孫繁栄に繋げよ』との命を
受けて、あの祠に棲んでおるのじゃ。しかるに最近はろくに精力
も衰えておらんくせにより多くの快楽をむさぼらんがために参る
やからが増えて困っておる。見れば、おまえもその口じゃろうて。
精気も十分にあるのにその歳で願をかけるとは、けしからん限り
じゃ。そのような娘には……仕置きが必要じゃな」

 肩まで伸びたざんばら髪を掻き分け、老婆は、緊張して一杯に
張りつめている乳頭の先を、持っていた杖でほんのちょいとだけ
触れます。

 すると、たちまちそこかしこから光の矢が彼女の子宮をめがけ
て襲うようになります。

 「だめえ~~~~もうだめえ~~~~~いゃあん~~~もうだめ、
いかせて、いかせて、お願い」

 ナオミは我慢我慢を重ねていましたが、ついに口にしたくない
言葉を発してしまいます。
 しかし、無慈悲にも老婆はその瞬間ぷいっと姿を消してしまい
ました。


 それからもナオミは地獄を見続けることになります。足の裏、
内股、背骨、今まで感じたことの臓器までもがその血を沸き立た
せ、最後は子宮へと殺到します。

 本当なら、体全体を反り、足の指や手の指を曲げ、恥ずかしい
処へも中指と人差し指を押し入れて、体の中を思いっきりかきむ
しりたいところですが、一センチたりとも身動きならない身では
どうにもなりません。

 「はあ、ああん・・・・・いやあはあ、・・・・あああああ」

 呼吸は荒くなり、目がうつろになってもナオミは満足を得られ
ないのです。すでにねっとりとした蜜が太ももを伝い、体の中で
は「ぴちゃ、ぴちゃ」とイヤらしい音をたてているのが自分でも
わかります。

 「こんなのいやあ~~~」
 ナオミの雄たけびが夜空に轟きます。

*************************

 そして、一昼夜。
 東の空が開け始める頃になって異変が訪れたのでした。

 それまで望んでもどうにもならなかった場所で何やらうごめい
ているのです。ナオミはその正体が知りたくなって下を見ました
が、見えません。

 でも、確かにそれはナオミの体の一部ではなく何かなのです。
 『芋虫?』
 そうかもしれません。しかし、それは徐々に大きくなっていき
ます。

 「だめえ~~だめえ~~~」
 神経が過敏でなくなったぶん、今は徐々に落ち着き始めていた
快楽の地獄がこの芋虫のせいでふたたびよみがえってきたのです。

 ナオミは当初それを拒絶しながらもやがて無意識のうちに受け
入れようとし始めました。

 『これで生かしてもらえる』
 大きくなった芋虫が膣の穴から顔出し、そこで体全体をしきり
にくねくねとさせたあと、湿り気を帯びた尿道口をなめつくし、
勃起して芽を出したクリトリスをしきりにそのざらざらした頭で
こすりつけます。

 『あ~~~~し・あ・わ・せ……』
 ナオミがそう感じた瞬間でした。

 脳のどこかに小さな穴があき、そこからこれまでとは比べもの
にならないほどの光の束が無数の細かな針となって健康な子宮へ
と殺到します。

 荒い呼吸にあわせて何度も何度も歓喜のエクスタシーが訪れ、
そのたびにこれまで感じたことのないオルガスムスへといざなう
のです。

 『よかったあ~~~』
 静かな吐息とともにナオミは深い眠りへと落ちていきます。
 芋虫が自分のクリトリスを噛んだことを知ったのはその眠りへ
の直前でした。

**************************

 それからさらにどのくらいの時間がたったでしょうか。余韻を
楽しむには十分な時間が過ぎてから、ナオミは肩を叩かれます。

 「ほれ、ほれ」
 どこか聞き覚えのある声です。ですからナオミは目を開けたの
ですが……

 「………………いやあああああ~~~~~~~~~」
 ナオミはけたたましい声をあげます。

 目の前にいたのは先ほどの老婆でした。
 しかし、その姿は先ほどとは違っています。

 老婆の顔が、ナオミ体の三倍も四倍も、いえいえもっと大きい
のです。

 その顔がいきななり目の前にあるのですから、恐怖におののき
震えるのは当たり前でした。しかも、落ち着く間もなく、老婆は
その大きな顔からさらに大きな舌を出し、ナオミの裸の体をその
足先から頭のてっぺんまで『ぺろり』とひと舐めにします。

 一瞬の出来事。
 でも、足先から太もも、乳房、乳頭、顎の下、ほっぺた、鼻の
穴、頭のてっぺんまで、いえいえお臍の下のお豆さんまで、舐め
られた感触がはっきりと残っています。

 「ぎぁああああ~~~~」
 ナオミは半狂乱になって叫びましたが、どんなに力一杯叫んで
みてもその感触が消えることはありません。

 あまりの恐ろしさに目を閉じてしまったナオミが再び目を開け
ると、そこに髪振り乱した恐ろしい老婆の顔はありませんでした。
しかも、今は手も足も自由に使えます。大木に張り付いていなく
てもよいのです。

 解き放たれたナオミは、ふいに自分を縛っていた大木を見あげ
てみました。
 するとどうしょう。その木にはナオミの股間を貫いていた枝が
一つあるだけ。枝も葉っぱも付いていません。
 ただ、雲に届くほど高いその幹の先が斜めになって膨れていて、
それから下はだらしのない靴下のようにいびつな皺がついていま
す。

 「いやあ~~~」
 わけもなく叫んでしまったナオミ。でもそれは間違いなく過去
に見たことのある形でした。

 「だめ、もうだめ」
 ナオミは腰砕けになりながらも、とにかく逃げます。木々の間
を抜け、下草に足を取られながら必死に逃げます。どこへという
あてなどありません。
 とにかくこの場から離れたかったのでした。

 すると、30分ほどあてどなく走り続け逃げ続けるうち、急に
視界が開けました。

 「助かったわ!!!」
 思わず安堵の声を上げたナオミに住み慣れた村の風景がどんな
に美しかったことか。
 彼女は、今自分がすっぽんぽんであることさえ忘れて我が家へ
と走り出します。

 『見ないで、見ないでよ。誰にも会わない。会わないからね』
 青々とした田圃の真ん中を一心に祈りながら全力で駈け抜ける
少女。そのあまりにも美しいストリーキングを農作業の傍ら遠く
から眺める人はいましたが、幸いなことに実家にたどり着くまで
正面から出会った人は誰一人いませんでした。

 「ただいま!」
 ナオミは土間を駆け上がり自分の部屋へとなだれ込みます。
 『ショーツ、ショーツ、ショーツ』
 彼女は下着タンスを引っかき回しますが、いつもの場所にショ
ーツがありません。やっと見つけた木綿のショーツを穿き、シュ
ミーズを身につけると畳の上に大の字になってようやく弾む息を
整えることができたのでした。

 と、そんな安らぎもつかの間、彼女の体に再び異変が起きます。

 「……!……」
 彼女は下腹を押さえて立ち上がります。急な差し込みで、ふた
たびトイレへと駆け出さなければなりません。

 ところがです。トイレへ行くと、そこには母親がすでに入って
いました。

 「ちょっとお母さん出てよ。私大変なの。代わってよ。すぐに
終わるから。お母さんはあとでゆっくりやればいいじゃない」
 そう言って懇願しのですが、母親はいつになく冷たく、

 「いやよ。そんな恥ずかしいことできないわ」
 と、にべもなく断るのでした。
 ナオミは仕方なく、外へと出ます。農家だったナオミの家には
水洗ではありませんが、農作業用のトイレが建っていました。

 ナオミはそこに駆け込んだのでした。とにかく臭いなんて言っ
てられません。そのくらいせっぱ詰まっていたのですから。

 「ふう、……」
 ナオミはとりあえずお腹を整理して吐息を一つ漏らします。

 と、その時です。彼女の毛穴という毛穴、いえ、穴という穴を
すべて脈打たせるあの声が聞こえたのでした。しかも、すぐ近く
で……

 「どうやらすっきりしたようじゃな」
 ナオミの体を一舐めにした老婆が金隠しの前に座っています。
今度はナオミと同じくらいの体ですが、雷に打たれたようなショ
ックに変わりはありません。

 「ほれほれどうした。口がきけぬのか」
 老婆の言うとおり、ナオミは口がきけませんでした。

 「ほれ、ここには紙がない。これで拭いたらどうじゃ」
 老婆の渡す白い一枚の紙。ナオミはもうそれを拒否することも
確かめることもできないでいたのです。
 そして、催眠術にでもかかったみたいに言われるままにそれで
お尻を拭いてしまいます。

 ですが、その紙が彼女の大事な処へ触れた瞬間。自分でもなぜ
そうするのかわからぬまま、ナオミは力強くその落とし紙を自分
の体の中へねじ入れてしまいます。

 「ははははははは」
 突然老婆が笑い出しました。

 「おぬしは若いのう。あれだけ搾り取っても、まだまだ精力が
有り余っとる」
 老婆はそれだけ言うと姿を消してしまいます。

 あとに残ったナオミが正気を取り戻したとき、彼女はまだその
紙を大事な処へ突っ込んだままにしていました。
 そして……、

 「えっ、抜けない。どうして?どうして抜けない。どうしよう。
抜けないよ」
 彼女がどんなにもがこうと、いったん突っ込んだ指はその落と
し紙を巻き込んで、まるで接着剤で固定されたようにぴくりとも
しなくなってしまったのでした。

 「どうしよう。どうしよう」
 ナオミの顔に次第次第に不安の色が濃くなります。
 そして、自分を落ち着かせるように、
 「夢よ。こんなの夢に決まってるじゃない」
 と何度も心に確かめてみるのですが、板戸に触れる手の感触や
夏の熱気、トイレの臭気はどう考えても夢とは思えないのです。

 「どうしたのナオミ、いつまでそんな処に隠れてるの」
 自分を呼ぶ母の声はやはり現実の世界だったのです。

 無論、それはナオミにとってあまりにも悲しい現実でした。
 母親にありのままを告げても信じてもらえませんし、困難な右
手に石けん水を塗って試してみても効果はありませんでした。

 しかもこの右手、ナオミの意志とは関係なく膣の中でいやらし
い動きを繰り返しますから、母親の前でさえ幾度となくよがり声
をあげることになります。こんな姿を他人に見せられませんから
……、

 「やめてえ!お医者さんになんか電話しないで」
 ナオミは医者に連れて行こうとする母親を必死になって止めま
す。しかし、ずうっとこうしているわけにもいきませんでした。

 「仕方がないでしょう」
 結局は、タクシーが呼ばれ、お医者様へ診察を受けに行く事に
なります。母親は娘を気遣って、裏口から入るから誰にも会わせ
ないようにしてくれと病院側に念をおして出かけたのでした。

 ところが、診察室に入ると、たまたま居合わせた絹ばあさんと
鉢合わせになります。彼女は老人で動作がのろく、診察を終えて
もすぐに服を着ることができず、その場に留まっていたのでした。

 「なんだ、助蔵さんとこのナオミじゃねえか。どうした、そん
な青い顔して……」
 絹ばあさんはナオミの様子をうかがいます。
 そして、すぐに結論をだしてしまうのでした。

 「おめえ、若い身空でおすけべ稲荷に願掛けしたろう」
 こう言われた瞬間、ナオミは心臓が止まったかと思えるほどに
驚いたのでした。図星を指されたナオミの顔は真っ青に変わり、
言葉には出さなくても当然、態度にでます。

 「そんなことするから妖怪にたぶらかされるんじゃ。…………
だったら、お股がかゆいじゃろうて」

 絹ばあさんの言葉に母親までが救いを求めるようにこう言い
ます。
 「ええ、それに指がぬけないとか言ってまして……」

 「そりゃあ、おこんこん様によっぽど気に入られたんじゃな」
 少し軽蔑した表情が上目遣いにナオミを見据えてぼそりと一言。
 「こうなったら『やいと』以外にはないかもしれんな」

 「やいと?」

 「お灸じゃよ。おすけべ稲荷の前でな、お股と悪さをする右手
にたっぷりすえるんじゃ。おこんこん様はどういうわけかやいと
の臭いがお嫌いでな。こうすると離れてくださるんじゃ。ほれ、
ようく見てみい。おまえのお股には、おすけべ稲荷のお札がまだ
挟まっとるはずじゃ」

 絹ばあさんに言われてあらためてお股をのぞき込むと、間違い
ありません。
 「あら、ほんと、言われてみれば……」
 「これ、ただの広告の紙じゃない。お札だよ……」
 「こんなこと初めてだ。聞いたことがないねえ」
 母親も看護婦もそしてお医者様まで駆けつけてナオミのお股を
のぞき込みます。おかげでナオミは途中から泣き出す始末。

 絹ばあさんの話は具体的で説得力がありましたが、それでも、
みんなの気持ちの中に『こんな科学の世の中にそんな馬鹿な話』
という思いは残っています。
 そこで……、

 「早い方がええ。今からおこんこん様の処へ行けば、今日中に
取れるかもしれんからやりにいこう」というおばあさんをなだめ、
まずはお医者様のやり方でやってみようと、ひとまずお引き取り
願ったのでした。

 しかし、結果はというと。
 どんなお薬や注射を打って筋肉の緊張を解いてもナオミの指は
抜けません。最後は高圧浣腸までやったのですが、結局、お手上
げでした。

 その間も繰り返されるオナニーで、ナオミの膣口は赤く爛れて
いきます。

 「ああっ……ああっ……」
 ナオミの口をついて出るうめき声も快感から来るよがり声では
なく、苦痛に満ちたものに変わっていくのでした。

 さすがにこうなっては絹ばあさんを頼るしかありませんでした。
夜中、遅く訪れると、ばあさんは艾の用意をして待っていました。
 待ってはいましたが、しかし……、

 「夜中はいかんのじゃ。他の魔物が入れ替わるかもしれんからな。
明日は宮司さんも修験者も呼んであるから間違いないはずじゃ」
 こう言って断ったのです。

 翌朝は駐在所のお巡りさんまで頼んで、お稲荷様の周りに紅白
の幕を張り巡らし、他の人が中に入り込まないようにしてから、
儀式が始められました。

 祠の高さに合わせたテーブルが用意され、ナオミがそこに乗せ
られます。
 鎮守の森の宮司さんが祝詞をあげ、山から下りてきた修験者が
護摩を焚いて祈祷を始めます。テーブルの上のナオミは、まるで
そのための供物のようでした。

 そして、いよいよ絹ばあさんのお灸が始まります。

 まるで赤ちゃんがおむつを替える時のように、仰向けになって
両足を高く上げるのはいくらヤンキー娘にだって抵抗があります。
おまけにこの日は、エミやキミエまでが手伝いとしてかり出され
ていますから、彼女としては友達の前で恥をかく羽目になったの
でした。

 「おまえらも悪さばかりしてるとこうなるからな」
 絹ばあさんの捨てぜりふを二人は神妙な顔をして聞いています。

 ナオミは友達にまでこんな醜態を見られ、身の置き所がありま
せんでした。ですから、テーブルに乗った時からずっと、あいた
左手で顔を押さえながらその時を待っているしかありませんで
した。

 「さあ、始めるからな」
 ここで元気なのは絹ばあさんだけです。
 彼女はあらかじめ切り分けてお盆に乗せておいた艾を一つずつ
丁寧に1センチほどの大きさに丸めて、それに唾をつけて湿り気
をくれてから、恥ずかしい処へ差し込んで抜けなくなった右手は
それぞれ指の股に一つずつ、お股の中は大陰唇に三つずつと会陰
にも二つ、そしてなぜか菊座にまで丹念に艾を詰め込むのでした。

 「熱いけどがまんせえよ。おまえが悪いんじゃけんな」
 そう言ってこの十三個の艾にいっぺんに火をつけて回るのです
から、そりゃあ大変なことです。

 「いやあああああ。熱い。待って、ごんなさい。熱い。だめ、
ごめんなさい。だめえ~~~、駄目だと言ってるのに、やめて~
やめて死ぬから、ぎゃあ~~いやあ~~~」

 ナオミはもう半狂乱になって叫び続けます。でも、母親だけで
なく父親や宮司さん、山伏のおじさん、はてはエミやキミエまで
がナオミの体を押さえていますから、どんなに暴れようと思って
もその体はテーブルの上でピクリともしませんでした。

 「人殺しい~~~~~」
 荒い息の下からようやく聞き取れる程度の弱々しい悪態が聞こ
えます。お灸になれた人でも大変なこの儀式。ましてやナオミは
お灸初体験ですから、そりゃあ驚くのも無理ないことでした。


 13個の小さな火が落ちて、一息ついたのもつかの間、絹ばあ
さんは早速次を準備します。

 「さあ、落ち着いたらもう一度やるよ」
 無慈悲な宣告にナオミは慌ててテーブルを下りようとしました
が、間に合いませんでした。絹ばあさんの号令一下、ナオミの体
は一瞬にして大人たちの圧倒的な力の前に押さえ込まれてしまい
ます。

 おまけに、普段はおとなしいナオミの父親までもが見せしめと
なっているお尻を平手で「ピシッ、ピシッ、ピシッ」と続けざま
三回叩きます。

 「みんなおまえのためにやってんだぞ。我慢しないか!」
 ドスのきいた声がお腹までに響きます。ナオミにとってそれは
お灸と同じく生まれて初めての出来事でした。

 「さあ、もう一回」
 さきほどと同じ処へ13個の火の粉がふり注ぎます。

 「………………………………………………………………」
 今度は先ほどと違って素っ頓狂な奇声がまったくあがりません。
でも、熱いのは初回以上でした。

 それが証拠にナオミのお股からは、ちょろちょろと黄色い水が
漏れ出します。母親が可哀想に思ってタオルで拭き取りますが、
その水はチョロチョロとだらしなく流れ出すばかりでいっこうに
止まらにないのです。

 テーブルに池を造り、やがてそれが溢れて落ち、砂地の地面は
そこだけ色が変わってしまいます。唯一の救いは、ナオミ自身が
このことに全く気づかないでいることぐらいでした。


 そして、三回目。

 「うっん……ううううん」
 荒い息の中でくぐもった声がしたかと思うと、それまで周囲に
漂っていたやいとの煙が一気に祠の中へと吸い込まれていきます。

 と、同時に、あれほど頑強だったナオミの右手がヴァギナから
するっと抜けたのです。

 「おい、抜けたぞ!」
 両親も宮司さんも山伏のおじさんもエミもキミエも絹ばあさん
も、とにかくみんな大喜びです。けれど、当のナオミはその瞬間、
気を失ってしまいあとのことは覚えていませんでした。

 人の話によれば、彼女が粗相をした地面の上にはおすけべ稲荷
のお札と芋虫が一匹転がっていたとか。
 でも、これも一瞬にして消えてしまったそうです。

 ナオミのお股と右手の指の股には、今もその時のやけどの痕が
はっきりと残っています。けれど、彼女はこれ以後、専門学校に
通って、立派な美容師になったということですから、払った代償
以上のものは得たのかもしれません。

めでたし、めでたし、

*******************<了>****

第一話 庄屋の奥様

               <ご注意>
 これは恐ろしくも下手な文章ですけど、一応はSMです。
 SMに耐性のない方はご遠慮ください。
 逆に耐性のある方は馬鹿馬鹿しいので欠伸が出ます。(^^ゞ
 あっ、それと、お話の中にカトリック系の名称が出てきます
けど、勿論これはフィクションですから、いかなる宗教宗派とも
何の関係もありません。


****************************

               <あらすじ>
 庄屋の奥様が建てた礼拝堂で繰り広げられる秘密の儀式を覗き
見た左官(私)は独りになった奥様の寝床に降りて行き……
 10年後、二人は同じ左官と奥様として言葉を交わすが、そこ
には娘が一人できていた。

****************************

             第一話 庄屋の奥様

村には庄屋様がおりました。たくさんの田畑や山林を持っていて
村一番のお金持ちでした。戦後は農地改革があったために田畑は
少なくなりましたが、それでも、村一番のお金持ちであることに
違いはありませんでした。

その庄屋様の現在の当主様はそりゃあ立派な方で、戦後、隣町に
大きな縫製工場を建てて農地改革で失った田畑以上の利益を得て
いました。その当主様の元へ隣町の分限者からお嫁入りなさった
のが現在の奥様でして、今もお綺麗ですが、嫁入り当時は天女様
天女様と噂がたつほどの器量よしでございました。 

 おまけに嫁入り先の庄屋様も何不自由ないお暮らしぶり。同じ
百姓というてもお肌はすべすべ、日焼けのシミ一つありません。
奥様もよくできた方で、偉ぶったところがどこにもなくて村では
奥様を悪く言うものは誰もおりませんでした。

そんなある日のこと、庄屋様のお屋敷のはずれに妙な建物が出来
ておりますから聞いてみますと、なんでも奥様のご要望で礼拝堂
を建てたとのこと。
私どもはその時になって初めて奥様がクリスチャンであることを
知ったのでした。

村に耶蘇さんはおりませんでしたが、もちろん信ずる処は人それ
ぞれですから、それ自体は何の問題もありませんでしたが……
しばらくして妙な噂がたち始めたのです。

「奥様は金曜日になると礼拝堂に中年男やらまだ幼い少年たちを
そこへ連れ込んでるらしい」
とか……

「いやいや、金曜日の夜は、あの礼拝堂の近くで女の悲鳴がする」
とか……いうものでした。

それが奥様の耳に入ったのでしょう。奥様は私のような出入りの
職人にまでそのことを説明してくださいます。

「あのお方は、私たちの教会では司祭様と言って、とても地位の
高い坊様なの。少年たちはそのお弟子さんたちですわ。土日は、
お忙しいので金曜日にお招きして、ご一緒に祈りを捧げていただ
いているのですよ」

奥様の説明はこんなものでしたが、金曜日の夜に女性の悲鳴が聞
こえるという説明は最後までありませんでした。

それでも村人はそれで納得したみたいでした。金曜日の夜に聞こ
えていたという女の悲鳴も最近は噂を聞かなくなっていました。
もともと娯楽の乏しい村のことです。誰それがきつねの鳴いたの
を勘違いして尾ヒレをつけて話したのだろうということになった
のでした。

ですから、そのことについては私もすっかり忘れていたのです。

『お美しく、お優しく、何不自由ない暮らしをなさっている』

そんなイメージの奥様像が私の脳裏にはすでに定着していました。

***********************(1)**

ある日のことです。

私は礼拝堂の壁の塗り替えを頼まれて、それを終えたところでした。
奥様は相変わらす熱心な耶蘇さんの信者ですからとても喜ばれて、
お酒をだして私をねぎらってくださいます。

すっかり、いい気持ちになった私はごちそうのお礼を言っていった
んは外へ出たのですが、外はちょうど寒い時期で雪がちらつき始め
ています。私の家は遠いですし、こう酔っていては車を走らすこと
もできません。

私は、戻って宿を無心しようと考えたのですが、もうすでに母屋
に電気はついていませんでした。困った私は、今仕事を終えたば
かりの礼拝堂に行ってみます。あそこに藁がつんであったことを
思い出した私は、勝手知ったる他人の家とばかりに、藁の布団に
くるまるとそのまま寝てしまったのでした。

一眠りすると時間は真夜中になっていました。酔いもさめ、帰ろ
うか、朝までここに泊まろうか、と迷っていた、その時です。
 礼拝堂の扉が開く音がします。

 『えっ、こんな真夜中に?』

 しかも、入ってきた足音は一人二人ではありませんでした。朝
の早い百姓の家ではこんな時間に働く者はいません。それは庄屋
様の処でも同じはずでした。

『さては、どろぼう』

そう思った私は心を引き締めます。ですが、藁を積み上げた土間
へ差してきたのは百目ローソクの明るい光。しかもそれがやがて
何本も立ち並び、まるで真昼のように輝いています。
コソ泥が仕事をするにはあまりに大胆な光の量でした。

節穴を通して広がる先には、奥様と顎髭を蓄えた中年紳士。それ
に12、3歳位でしょうか、まだ可愛らしいという形容で十分の
少年が二人見えます。

私はとっさにこれが奥様のおっしゃってたミサなのかと思いま
した。

奥様は白いケープを被った薄絹のワンピース姿、中年紳士は、金
モールの刺繍も鮮やかなガウンを纏っています。二人の少年は共
に白いシャツに白いホットパンツ姿。

赤毛でそばかすだらけの顔をしている方がやや体も大きく年長
でしょうか、金髪の方は今でも母の乳を恋しがる子供に見えま
した。

この二人が、それぞれに長い鎖のついた香炉を振り回すなかで、
祈りの儀式が始まります。

香炉はとても強い香りでたくさんの煙もでます。もう奥様の顔さえ
判別できないほどの煙が部屋中に立ちこめる中で奥様は跪いたまま
何かの教典を読んでおいでのようでした。

それが終わると、かの司祭の声がします。

「神のご加護がそなたとそなたの夫、この家のすべてにもたらされ
んことを」

彼はそう言うと仰々しい飾りの付いた杖を取り出して、奥様の肩に
宝石に飾られたその先端を押しつけます。

すると、さも今の動作で気づいたかのような物言いでこう言うので
した。

「何か悩み事はござらんか。心の震えがこの杖に伝わってくるが…」

奥様は両手を胸の前で組んだまま首を横に振りますが、男は腰を
落とすや、奥様の目を見つめて離しません。

「ありませぬか。隠し事はなりませぬぞ。神の前にあっては純潔
こそが救いの証しなのです。純潔でない者の望みを、神は絶対に
お聞き届けにはなりません。自らに巣くう悪しき妄念を赤裸々に
告白し、魂の浄化を受けることこそ救いの道なのです」

**********************(2)***

 神父は芝居がかった物言いで奥様の手を取って立ち上がると、
祭壇の脇にある小部屋へと誘(いざな)います。そして、その部屋
の中にある小さな椅子の埃を払い、これに腰を下ろすようにと、
丁重に勧めてから、自らは白いガウンを脱ぎ去り、中に着込んで
いた真っ赤なローブ姿のままで、奥様の入った小部屋とは反対の
部屋へむかうのでした。

 私は、建築当時からここに関わっていて知っているのですが、
奥様の入った部屋と、今、男が回り込んで入った奥の部屋とは、
小さな窓で繋がっています。
二人はその窓にお互いの顔を寄せ合い、そこで何やら密談を始めた
みたいでした。

奥様の声はとても小さく、聞き取りづらかったのですが、少年二人
が香炉を振り回すのをやめてからは私の耳へも届きます。
ただ、それは私のような者が聞いてはならない内容でした。

「それでは、あなたは昨夜、夫に求められたにも関わらず、理由
もなしに拒んでしまったのですね」

「はい、とても頭が痛かったものですから」

「それは理由にはなりません。夫婦和合は神の恩寵であり、夫が
求めるのは明日の働きに備えてのこと。夫の働きは神のご意志な
のですからそれを遠ざけることは神のご意志に背くことでもある
のです」

「お、お、お許しを……さりながらあの時は本当に頭が痛くて…
…私の頭痛は神のご意志ではないのでございますか」

「これまた何たる不見識。罪ななき者に災いをもたらすは悪魔の
仕業。だいいち、あなたはその夜、夫に身をまかせても明日にな
れば昼までも寝ていられる身。どちらが神のご意志か、はたまた
悪魔のささやきか、わかりそうなものを……」

「では、私の頭痛は悪魔の仕業だと……」

「もとより自明のこと。そのようなことも即座に分からぬでは、
この家も危うき限りじゃ。よろしい、口で分からねば、別の場所
を説得いたそう」

「あああっ、口が滑りました。どうか、お許しを。私が悪うござ
いました。どうかお鞭ばかりは……先月頂いた分の御印も、まだ
取れてはおりません」

哀願する奥様の声は真に迫っています。しかも香炉の煙が晴れる
につれて、小部屋のドアが開いているのが分かります。私は眠気
を忘れ、その先の展開を求めて、さらに目と耳をとぎすますので
した。

「いやいや、こうしたことは自らの懺悔だけでは落ちませぬ。体
の中と外を丹念に洗い、悪魔が吐き散らかした毒素を聖なる鞭で
たたき出さねばならなぬのです」

「そんなこと……私にはとても……」
司祭の決定に奥様は落胆して、その場に倒れこみます。
すると、司祭はすぐさま部屋を飛び出て奥様のもとへと駆け寄る
のでした。

「何も心配いりませぬ。私にお任せあれば今夜は心地よくお眠り
になりましょう。明日は、天国もかくあらんと思えるほど爽快に
お目覚めできましょうほどに……」

「本当に……」

「奥様はすべてを神のしもべたる私めにお任せあればよいのです。
さあ、お気を確かに……」

「あなたに任せてよいのですね」

「何よりそれが肝要かと……」

**********************(3)***

時代錯誤した二人の会話が妙に心に残ります。

『と、そういえば少年二人は?……』
あたりを見回すと、これがすでに、礼拝所には二人の姿がありま
せんでした。

奥様ばかりに気を取られて見失ってしまったのです。

『あれは?……』
ところが、そんな彼らの居所が、またすぐに知れることになります。
祭壇の脇にあるドアの先、そこには司祭のために居室が二間続き
で用意されていたりですがが、そこから新たなローソクの光が…。
二人がそこにいるのはほぼ間違いありませんでした。

司祭は今にも倒れそうな奥様の手を取ると、狭い部屋から抜け出
します。
そして少年たちがすでに何やら始めている自分の居室へと奥様を
いざなうのでした。

あまりに芝居がかって浮世離れした光景に、『私は夢を見ている
のか?』とさえ思いましたが頬をつねっても太ももをつねっても、
しっかりと目が覚めているのが分かります。

となれば、その先も覗いてみたくなるのが人情。

私は悪い事とは知りながらも、そうっと屋根裏部屋へと這い上が
ると、天井裏を司祭の居室の方へと向かったのでした。

おあつらえ向きに小さな節穴からローソクのゆらめく光が漏れて
います。
私はそこへ腹這いになって陣取ると、その小さな穴を商売用の鑿
(のみ)で広げて覗き込みます。

と、いきなり飛び込んできたのは全裸でテーブルに横たわる白い
女体でした。形よく盛り上がった乳房の先にはまだピンクの乳頭
がピンと立ち、柔らかくカーブを描いてくびれる腰の中央に形の
良いお臍があって、その下は本来なら太く縮れた茂みがある処で
すが、奥様はあえて剃ってしまわれたのか、生まれたままの姿に
なっていました。

プロポーションは七等身くらいでしょうか、小顔で首筋の柔らか
なフォルムからして女を感じさせる均整の取れた体には、当然、
すらりと伸びた手足がついていて、男なら誰もがむしゃぶりつき
たくなるような体です。もちろん角質化した皮膚やシミ皺などは
微塵もありませんでした。

『天女様じゃあ。庄屋さまは幸せもんじゃなあ』
村人の誰もがそう言って褒めそやす体は、まさに天女が降臨して
きたよう。私は流れ落ちる汗やよだれと同じように股間の動きを
止められないまま、見ほれていまったのでした。

すると、先ほどの少年たちが司祭と一緒に部屋へ現れます。

司祭は奥様の枕元に立ってその額や髪の毛を優しく撫でているだ
けでしたが、傍らでは少年たちが何やら忙しく働いていました。
10リットル入りの樽や漏斗、水道ホースなどはすべて少年達が
用意した物のようです。

「司祭様、これは、私、とても耐えられそうにないのです。」

奥様が少年たちの動きに不安そうに泣き言を言うと、司祭は冷静
にこう言って励ますのでした。
「大丈夫です。先週も奥様は立派に耐えたではありませんか……
案ずることは何もありません。神がきっとお守りくださいます。
身体は未熟な魂の支配を嫌い、すぐに邪悪なものに浸食され安い
のです。若い婦人はことさらその傾向が強い。だから浄化せねば
ならぬのです。大量の聖水を使い汚れた体のすべてを洗い流さね
ばならぬのです」

***********************(4)**

司祭のやさしく握ってた手が、言葉の最後ではしだいに熱を帯び、
やがて、奥様の手を強く握るようになっていきます。

そのうち、少年たちが準備を整えたみたいでした。
彼らの一人が鼻つまみ用のピンを神父に渡すと、さっそく、あの
上品な鼻がつまみ上げられ、息ができずに開いた口へ漏斗が差し
込まれていきます。

「あっぁぁぁぁぁ」

その瞬間、奥様は何か言いたげでしたが言葉になりませんでした。

「決して、息をしてはなりませんぞ」
司祭が最後の注意を与えると、いよいよコックが開いて大量の水
がでてきます。

「ううううっ……うううううっっっ…………うっっっっっっ……」
奥様は苦しい息の合間にその水を口の中へと入れていきます。

そして、ロートが水で溢れそうになると、高い位置に置かれた樽
のコックが閉じられるようでした。
ただし漏斗の水がなくなれば、一度だけ息を吸うことが許される
だけで、またロートから流れ込む大量の水と格闘しなければなり
ません。

ウエーブのかかる濃い茶の髪が激しく揺れて漏斗の水がテーブル
にこぼれ落ちます。奥様はそれなりに激しく抵抗しているように
も見えましたが、司祭も少年たちもそれにはお構いなしです。

「はあ、はあ、はあ、はあ、はあ」
やがて、回を重ねるたびに息継ぎの時間が長くなります。

奥様の髪がびしょびしょに濡れ、溢れた水がテーブルを落ちて滝
のように床を叩きつける頃には奥様のお腹は見事なまでに膨れて
いました。

「う~~んうううん」
苦しい息の奥様に向かって司祭の言うことはまたも同じです。

「聖水を大量に体に入れねば、その身は浄化されませんぞ。今が
踏ん張り時です。お子さんをお産みなるつもりで耐えるのです」

30分後、根気よく続けた作業の結果ついに樽の水が底をついた
ことで、この苦行は終了したようでした。

しかし、それは責め苦の第一弾に過ぎませんでした。

「さあ次は四つんばいに…その重荷を軽くしてさしあげましょう
ほどに」
神父の命令が下りましたが、

「ああ、もうよろしいです。私、今でも…出てしまいそうで…」
奥様は青い顔で訴えます。しかし、司祭の判断は冷徹そのもので
した。

「今、聖水がせっかく邪悪なものを捕らえているのです。これを
完全に体の外へと出し切るためには浣腸によらなければならない
のです。さあ、子供のようなことを申されますな」

**********************(5)***

奥様の希望はことごとく断ち切られ、少年たちによって、あられ
もない姿のままテーブルに四つんばいにされてしまいます。
しかも、金髪の少年によって奥様のお尻は大きく割られてしまい
ましたから男たちからは菊門が丸見えになっているはずでした。

「では、お覚悟を願います」
赤毛の少年の声はハスキーで、ちょうど変声期を迎えた頃なので
しょうか。彼は水枕のような物から伸びるゴムの管の先を奥様の
菊門へ差し込むもうします。

ところが……

「あっぁぁ……ぁぁあっ……あ~~……うぅぅぅ……ぁぁぁぁ」

金髪の子が両手で割って露わにしていたその菊座はあまりに可愛
らしくて、さして太くもないゴム製の先端でさえ、容易に中へは
入れてくれませんでした。

「はあ、あぁぁぁぁぁぁ」
奥様の吐息は痛いと言うよりこそばゆいと言っているのでしょう。

少年二人がもたついていると、見かねた神父が少年たちからカテ
ーテルを取り上げ、『もたもたするな』と言わんばかりに彼らを
睨み付けます。

そして、左手で奥様の太ももひとなですると、それまで固く締ま
っていた菊の門が一瞬緩みます。その期を逃さず、神父は右手に
持った管の先を一気にねじ込んでしまったのでした。

その間わずかに数秒。まさに電光石火の早業でした。
この時、四つんばいにされ、細い尾っぽをつけられた奥様の頬に
一筋の涙が光ります。奥様は身体を震わせすべてのことに耐えて
いるようでした。

「美しい」
私は思わず知らず感嘆の声をあげます。

『うんこを我慢している姿がこんなに美しいなんて……』

羞恥に赤く染まった素肌がこの暗がりから、この隙間から、くっ
きりと浮かび上がります。

「あ~~~」

押し殺すような吐息は実際に奥様の身体に浣腸液が侵入してきた
何よりのあかしでした。
わずかにお尻を振るのは、新たに侵入してきた浣腸液の蓄え場所
を探しているのでしょうか。そのたびに天に向かって伸びる細長
い尾っぽが揺れます。

ほぼ一分半で終了したこの作業。しかし、厳重な紙栓の代わりに
尾っぽをとってもらった奥様に笑顔はありませんでした。

全身脂汗でテーブルの上にうずくまり、そこを一人で下りること
さえできないのです。おそらく意識さえも朦朧としていることで
しょう。

ただ『ここで奥様に粗相をさせたい』とはさすがの司祭も思って
いないようでした。

彼は、目配せで次の指示を少年たちに与えます。

まず、それに応えて奥様の両手を赤毛の少年が細いロープで縛り
上げます。たいそう手慣れた様子でしたから、身重の奥様は抵抗
する間もありませんでした。

そして、滑車に通されていたもう一方の紐の端を神父ともう一人
の少年が、二人して引き下ろしますから、奥様の上半身は、両手
を天井に向けたまま、たちまちにして伸び上がります。

おまけに、奥様の両手を戒めた少年が、今度は伸び上がる奥様の
様子を見ながら程良い加減でテーブルを引いてしまいますから、
あっという間に奥様の全身は、両手を高々と上げた状態で吊し下
げられることになるのでした。

奥様の体はつま先がわずかに床に着くだけで、天井に向かいその
身体は一直線に伸びています。

***********************(6)***

「奥様、悪魔は暴れておりますかな」
神父の陰険そうな問いかけにも奥様はけなげな表情で答えます。

「はい、もう十分に……ですから、おまるを……おまるをお願い
します」
奥様にしてみれば『おまる』という言葉を使うことすら恥ずかっ
たに違いありません。

神父への懇願は本当に悲痛なものと見えます。
しかし神父にしてみれば、それがあまりに悲痛で切迫していれば
いるほど喜びは深いのです。
顔が笑っているのではありません。儀式を楽しんでいるといった
様子が、門外漢である私の目にも十分に伝わってくるのでした。

神父は新たに一振りの剣を取り出しました。

「聖なる剣です。これをかざせば、悪魔もあなたの体を出なくて
はならなくなるでしょう。……これは作り物ではありませんよ。
緊張するように」

そう言って、剣先を奥様の顎に突き刺し、十分に緊張させてから
それをゆっくり下ろしていきます。

「ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

喉から胸の谷間、お臍を通って蟻の戸渡りまで這わせると……

「ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

太股から股間の奥へ……

「ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

今度は後ろへ廻り、お尻の谷間、尾骶骨、背骨をまっすぐに這い
上がります。

やがて、うなじまで達した剣は役目を終えてもとの鞘へと戻りま
すが、剣をのど元に突き立てられた時に生じた奥様の全身を包む
生理的ともいえる細かな震えがこれによってやむことはありませ
んでした。

「よろしいでしょう」
神父はそう言うと二つばかり手を叩きます。

それが合図で電動式の滑車が動き出し、奥様はそれに引っ張られ
て部屋の隅へと追いやられます。その先には洋式トイレがありま
した。

ロープが少し緩み、そこに座ることを許された奥様は両手を戒め
られたまま、用をたします。

「ああああああああ」
赤毛の少年によって紙栓が取り除かれたの同時に、もの凄い音と
ともにそれは始まりましたが、ほとんどは水だったと思います。
あまりにも量が多すぎてむしろ悪臭もありません。

「あっ……あ~~……うううううん……あ~~……ううううん」

ただ、ご自分の力で排出できたのは最初の1分間だけでした。
奥様はまだお腹に残る水分を出そうとしていきみましたが……

「あっ……あ~~……うううううん……あ~~……ううううん」

以後は三十秒休んではちょろちょろ、また三十秒休んではちょろ
ちょろだったのです。

「おまえたち、お手伝いして差し上げなさい」

神父の言葉に少年たちが動きます。二人は便器の前に跪くとその
豊満な乳房に顔を埋め、まるで幼子のように仲良くその一つずつ
をむしゃぶりつきます。
すると不思議なことに、奥様のお小水が、前よりも元気よく便器
の中へ音をたててそそがれるのでした。

「もういいだろう」
神父の言葉は次への合図でした。

奥様の体がバンザイをしたまま再び持ち上げられ、丸まった足先
が、かろうじて床を掃きながら厚手の敷物の中央へとやってきま
す。

ただ、その間も少年たちは奥様への奉仕をやめませんでした。

「……いやあ~……だめえ~……いやあ~……いやあ~……」

それどころか、奥様が立ったことで自由になったお臍の下の谷間
にまでも手を入れて、前と言わず後ろと言わず、その喜びが倍加
するように勤めます。
まだ幼い指が谷間の中の穴という穴をすべて解放し、柔らかな内
太ももを徘徊しているのが見て取れます。

**********************(7)***

「だめ、だめ、だめよ、ぁぁぁぁぁ」

うわ言のような呟き。浮遊感の中の悦楽に、奥様はすでに意識が
ないように見えます。そのせいでしょうか、お小水が漏れ、便器
から敷物の間にもその恥ずかしい水が光っていますが、奥様も、
少年も、そして神父さえもその事には無頓着でした。

やがて、目的地に着くと、バンザイをさせにられていたロープが
緩められ、敷物の上に横たえられた奥様は久しぶりに両手を下ろ
すことができましたが、これで自由になったということではあり
ませんでした。

両手の戒めが一旦解かれますがすぐに両足が片方ずつ革のベルト
で固定されます。
革ベルトから伸びる細身のロープが滑車に通されていて、これを
巻き上げれば、うつぶせのまま奥様の下半身は宙に浮く仕掛けで
した。

わずかな休憩を挟み、いきなり、両足が自分の意志とは関係なく
大きく開いて宙に浮き始め両手の戒めも今一度巻き上げられます。
おかげで奥様はうつ伏せのまま、自分の体を空中に浮かせること
になるのでした。

「あああああ」
奥様は少し驚きの声をあげましたがこの時はまだ途中までの高さ。
エビぞりになった奥様の下半身の角度は30度くらいでしたか。
胸から上はほんの数センチで床につくほどだったのです。

「奥様、これより悪魔をおびき寄せます。が、いかなる時も平静
さを失ってはなりませぬぞ」

神父の言葉が終わるや、全裸となった少年たちが奥様に再び寄り
添います。

二人とも仰向けに寝て、赤毛の少年は奥様の股間の谷間に顔を埋
め舌の妙技を披露。金髪の少年は垂れ下がった乳房と乳頭を両手
と口を使って愛撫です。

そしてその作業がもっともやりやすいように奥様の上半身と下半身
の高さを調整するのは神父の仕事でした。

それが終わる頃には、奥様の息も荒くなりかけています。
神父はころ合いを見計らい、七本もの大きなローソクが並ぶ燭台
を取り上げると、こう言って奥様の反った背中にふりかけたので
した。

「悪霊退散、悪霊退散、神のご加護を与えたまえ。…悪霊退散。
悪霊退散。神のご加護を与えたまえ。悪霊退散、悪霊退散、神の
ご加護を与えたまえ。…」

当然、奥様の体はもだえ苦しみます。しかし、神父に呵責の念は
ありません。笑顔も憎しみもない超然とした顔で燭台を降り続け、
蝋涙を奥様の背中へと浴びせ続けます。

気がつくと、金髪の少年の体は一部が変化しています。
まだ幼い彼の体は完全にはむけきれずにいましたが、奥様はその
幼い一物を渇望しているご様子なのです。

「あっ、あっ、あっ……」
まるで幼児がおもちゃやお菓子を欲しがる時のような声。しかし、
手が使えない今は、その甘いお菓子に口だけでは届きません。

***********************(8)***

この潤んだ瞳や物欲しげな口元に神父の目が届かないはずがあり
ません。
彼は事情を察して金髪の少年の位置をずらして奥様の口元に合わ
せます。
そしてその可愛らしいものに口をつけたことを確認するや、両手
の戒めを一つずつはずしてしまったのでした。

それから先の奥様は、もう私の知ってる奥様ではありませんでした。
爪を立て、少年のお尻を両方の手で鷲づかみにすると、化け猫が
皿の油を舐めるように、怪しくも愛おしく歯と唇と舌を上手に使
いこなして、まだ完全に剥きあがっていないピンクの卵を剥いて
しまいます。

少年も、どんな事になっても騒いではいけないと教育されている
のでしょうか、顔をゆがめながらもおとなしくしています。

しかし巻き起こる生理現象までは止めることができませんでした。

「あ~~~」

ややとろみがかった精液で奥様の顔は汚れます。しかし、それに
奥様が動じる様子はありませんでした。

気を取り直し、なえた一物に再び刺激を与え始めます。
すると、若い彼の体は、再び反応して奥様のおもちゃとしての用
をはたすのでした。

そして、ついに奥様にも歓喜の時が……それは金髪の少年を三度
昇天させた直後でした。

すべてが脱力し、赤毛の少年も金髪の少年も神父さえもしばしの
休憩へと入ります。この時奥様の背中には厚く蝋涙が降り積もり、
背中だけでなくお尻も太腿も真っ白になっていました。

今、月に一度の幸福な余韻が奥様を包んでいます。

こんな時奥様の体に触れられるのはやはり金髪の少年だけでした。
奥様が差し出した手を大事そうに受け取った少年は、ちろちろと
その指先だけ舐め始めます。
すると、奥様の体には、今一度、幸福な快感がよみがえったよう
でした。

それから20分。
ひょっとしてこのまま夜明かしをするのではないかと思うほどの
時間が過ぎ去ってから、神父が動き出します。この時も彼は突然
動き出すのでした。

いきなり滑車の紐を巻き上げて、大きく開いた奥様の両足を高々
と上へ上へと上げていきます。その角度は70度くらい。もう垂
直に近いほどでした。こんな姿勢では神父からも奥様の大事な処
が丸見えです。
ですが、この時、奥様は何も言いませんでした。
抱き枕を一つ顎の下に挟みこんだだけで、穏やかな表情で神父を
見つめています。彼女にはすでに次の事態が分かっているようで
した。

「私はあなたに平静でいるように求めた。しかし、それは赤ん坊
にミルクを飲むなと命じるほど無謀なことのようだ」
神父はナインテールを手にしている。が、奥様はそれを見ようと
しません。その代わり……

「申し訳ありません。神父様。私は弱い女なのです」
と、それだけ言って抱き枕を一段と自らに引き寄せます。

**********************(9)***

「では、この鞭で悪魔を叩き出すことになりますが、よろしいかな」

「あ~~~お願います」
奥様は深い吐息とともに神父に願いましたが、それは悔恨という
のではなく、憧れや願望からくる切ない響きを私に感じさせます。
こうなることは分かっていた。いや、こうなって欲しいと願って
いたということでしょう。さすれば、彼女の歓喜にも似た悲鳴の
謎もとけます。

「ピシッ」

巻き付くような革の鈍い音がしたかと思うと、雪のように降り積
もった蝋が弾け、白い奥様の肌に数本の淡いピンクの筋が残ります。

「あ~神様。お許しください。私の体に巣くう悪魔を追い出して
ください」

懺悔の言葉が終わるのを待って、もう一撃。

「ピシッ」

「あっ、あ~、神様。このか弱き女に愛のお慈悲を。孤独に負け
ない勇気を」

「ピシッ」

「ああ~、後生です。すべてあなたのなすがままに。私はあなた
に使えるしもべでいたいのです」

鞭はその後も続き、背中やお尻だけでなく、太股や当たればただ
ではすまない谷間の中にまでもおよびます。

「ぎゃあ、………………」

そこに当たった瞬間だけは、女性らしい悲鳴のあと、しばらくは
息が詰まるのか、懺悔の声がすぐには出てきませんが、しばらく
して痛みが治まると……

「この痛みと引き替えに安らかな心がとりもどせますように」

それまでと同じような懺悔が続きます。

「ピシッ」

「あ~、私はこうしている時にしか幸せを感じられない。それは
罪なのでしょうか。煉獄の炎に焼かれてもよいのです。神よ、私
に安らぎを」

神父も奥様の長い懺悔に必ずつき合っていました。そして、それ
が終わったのちでなければ、次は絶対に振り下ろさなかったのです。

たっぷり時間をかけ、たっぷり三ダースの鞭が振り下ろされるや、
奥様の口からは懺悔の言葉がとぎれます。
最後は、みみず腫れで真っ赤になったお尻にさらにもう一振り、
赤い嵐が舞い降りて……、

「ピシッ」

「このあたりで神の国へまいりましょう」
一言、こう言っただけでした。

すると、その言葉が合図だったのでしょう。神父はナインテール
を片づけます。
次に、待ちくたびれて居眠りを始めていた二人の少年を起こして、
二人に手伝わせて、高々と上げていた奥様の足を静かに下ろして
いきます。
そして、奥様を敷物の上に丁寧に寝かせると毛布をかけてから、
三人は静かに部屋を出て行ったのでした。

*********************(10)***

『…………………………』

私はローソクの明かりがすべて消され、真っ暗になった礼拝所を
見つめながら、そこに横たわる白い影を探しまわります。でも、
それはあまり意味のある行為ではありませんでした。あまりにも
浮世離れした光景に頭が混乱して、まずはその整理をつけたかっ
ただけだったのです。

『この一連のミサ自体はお芝居?でも、誰が?何の目的で?……
神父が首謀者?……いや、違うな。この劇の主役は奥様だった。
彼女がイニシアティブをとっていた。…………でも、なぜ?……
夫婦仲はよいと聞いていたのに?…それは外面だけの事なのか?
……庄屋様はこんなこと、ご存じなのだろうか?……知っていて
なおこんな事を許すことなんて、あるのだろうか?』

あれこれ考えるうちに、目が暗さになれて奥様の顔の位置までが
はっきりと分かるようになります。

私はいつしか屋根裏部屋を下りていました。そうっと足音を立て
ないように礼拝堂に入り込み、奥様が寝息をたてる敷物の前まで
やってきてしまったのです。

部屋は真っ暗。でも私の目の奥にはローソクの揺らめきに映し出
された奥様の痴態がフラッシュバックして頭を離れません。
あとは私の理性が関知するところではありませんでした。

****************************

その後のことは噂で聞いたことですが、奥様の御乱行は庄屋様の
知るところとなり、奥様は庄屋様からかなり手ひどい折檻を受け
たようです。でも、その時すでに奥様のお腹には赤ん坊があった
ために、夫婦別れはしなかったということでした。

私は十年後、再びあの礼拝堂の修理を任されます。

その作業の途中、三時のおやつを奥様が自ら持っていらっしゃい
ました。

「ごせいがでますね。あなたは10年前とちっとも変わらないわ」

「私はしがない左官職人ですから、変わり様がありませんけど、
奥様はあの時よりお美しくなられた」

「まあ、うれしいこと。あの時は新興宗教に入れあげてて、我を
忘れてたけど……」

 「では、もうあの神父様とは……」

 「今は、主人が教祖様ですわ。だからね、ここも改装したの。
教祖様に合わせて……」

見れば、かつての礼拝堂は近在のどこにもない立派なSMクラブ
に変身していました。

「女は自分を愛してくださる教祖様しだいで幸せにも不幸せにも
なるのよ」
奥様がそこまで言うと庭先で遊ぶ一人の少女に目を向けます。

「私は、あの子ができたから今の幸せがあるの。わかるでしょう」

私は意味深な目で見つめる奥様の視線を避けるように、幸せそう
な少女に視線を移します。

「あの子には、毎週、お灸と浣腸はかかさないの。物差しでお尻
を叩くのもしょっちゅうよ。女は愛される人のもとで耐える喜び
を知らないと幸せにはなれないわ」

「えっ!」
私は思わず奥様の顔をうかがい。そして、あらためて少女を見つ
め直します。

「でも、お嬢様は明るいですね」
調子を合わせてこう言うと、奥様は……
「そりゃそうよ。私はあの子を誰よりも愛してますからね。女の
幸せは自分を愛してくれる人がいるかどうか。そんな人がいれば、
その人の為には何でもしたいと思うのが女なのよ」

「それで厳しいお仕置きを……」

「あの子から愛と信頼を得ているから、私もあの子にお仕置きが
できるの。あの子だってお仕置きされても明るく振舞えてるの。
……母親としては、愛と信頼があるうちに、どんな人と出会って
も愛されるように娘を躾てやらなければならないわ」

「躾ですか……」

「そうよ、娘が幸せに暮らすために一番大事な躾なの。…………
そうだ、ちょっとこっちへ来てくださる?」

彼女は今気づいたように立ち上がりました。
そして、自慢のSMルームへと私を引っ張って行くと、その天井
を指さして……

「ね、あそこに大きな穴が空いてるでしょう」

「あっ、そうですね。塞ぎましょうか」
私はさも今、気づいたように応対します。

「いいの。あの穴は塞がないでね。私ね、あの穴から見られてる
と思うと、よけいに燃えちゃうたちなの。それに、また一晩だけ、
すてきな王子様が現れるかもしれないでしょう」

私はその言葉を聞いて10年まえと同じことがしたくなりました。

「………………」
でも、今回は体が動きません。

庄屋の奥様は奥様、私はしがない左官の職人。そんな当たり前の
事を、改装前からそこに祀られてるマリア様の像が、私にそっと
教えてくれたような気がしたのです。


****************<了>***(11)***

第二話 仮祝言の夜に

**********************
『お灸』を題材にしたSM小説です。
恐ろしく下手な小説ですが、
いつも書いているものとは、世界が違いますから
ご注意ください。
**********************


        第二話 仮祝言の夜に

          <あらすじ>
明子は、仮祝言とよばれる村の風習にのっとって結婚するが、
それは、婚礼の当日から繰り広げられる姑による地獄の責め苦の
始まりを意味していた。


***************************

           仮祝言の夜に

 鬼滝村には昔かわった風習がありました。『仮祝言』といって
正規の結婚を望む家どうしが、仮に祝言をあげ、花嫁を仮に迎え
入れるというものです。だいたい1年間、無事に勤め上げれば、
晴れて二人は正式に結婚できることになってました。

 いわば、その間は見習期間いというわけですから、お嫁さんの
立場は微妙です。地位は奥さんですが扱いは女中以下にしてその
娘の力量を試そうとするお姑さんたちがたくさんいました。

 おまけにこの期間、夫とはセックスレスですから、息子の方が
じれて婚約を解消することもないとは言えませんでした。

 女性の地位が上がった今日では考えられませんが、30年ほど
前まではこれがごく自然な結婚の形態だったのです。

***************************

 明子はこの村の出身者、『水呑百姓』とよばれ戦後の農地改革
で土地を手にした農家の出身でした。
 これに対して、嫁ぎ先の板東家は規模こそ小さいものの、戦前
から土地持ちで『呑百姓』とよばれ、村では明子の家より格が上
だったのです。

 「おまえには、ワシらより広い田畑を持った百姓のところから
嫁をもらうはずじゃったのに、予定が狂ってしもうた」

 息子の孝雄に向かいこう言って嘆く姑の登美子は仮祝言という
村の風習を使いこなし、あわよくば明子との結婚を御破算にした
いと考えていたようでした。


 仮祝言の夜、明子は姑の登美子に呼ばれます。すでに披露宴も
終わり、彼女自身も普段着に近いワンピース姿になっていました。

 『今頃、何かしら?』
 そう思いながら座敷の襖を開けると、中は明かりがこうこうと
焚かれ、親戚の者たちが集まっていました。相手方の両親はもち
ろん、明子の叔父や叔母までがいます。そして、孝雄の親戚たちも、
まだ正装のままでそこに集まっていました。

 その場にお酒の用意はありませんが、すでにお酒が入った人達
は誰もが陽気で、その場は最初から華やいだ雰囲気に包まれてい
ます。

 『ひょっとして、またお酌でもさせるつもりなのかしら』
 そう思って箱御膳を覗きましたが、そこにはお茶の他は黒豆や
勝栗、それに慈姑の金団などが並んでいるだけ。お酒などは一切
ありませんでした。

******************(1)****

 「さあ、お義母さまがお待ちかねよ。早く奥へいらっしゃい」
 明子が幼い頃からよくなついていた叔母がそう言って彼女の手
を取ります。

 すると、お客たちの間を抜ける明子へはただならぬ拍手と声援
が……

 「よっ、明子ちゃん、初披露」
 「じっくり見せてよ!」
 「おじさん、待ってる。明け方までだって待ってるよ」

 しかし、それは単に新妻を祝福しているというだけではない、
ある種異様な盛り上がりだと明子は感じていたのです。
 おまけに……

 「何?これ?」

 明子は広い座敷の上座にあたる次の間に通されるた瞬間、目が
点になります。というのも、そこには、すでに真っ白な敷き布団
が一枚、ぽつんと敷いてあったからでした。

 『孝雄さん……』
 不安になって振り返ると、夫は座敷の真ん中あたりでお義父様
と雑談しています。

 それで気がついてのですが、この時ばかりは女性がすべて上座
に座り、男たちはすべて真ん中より下座で待っています。
 いつもとはあべこべでした。

 「では、大変に遅うなりましたが、これより…『みとめの儀』
執りおこないたいと思います」
 姑の登美子が男の客たちを前に正座して頭をさげます。

 でも、ここまできても明子はまだ事態が飲み込めず……ただ、
ぽかんと突っ立ていました。
 それを叔母の波恵が慌ててスカートの裾をひっぱり姑と同じ様
に正座させたのでした。

 彼女は母親が早くになくなったために、こうした女社会の習慣
には疎かったのです。

 「じゃあ、明子さん、こちらへ寝てくださいな。ちっとも痛く
なんてありませんから、しばらくの間我慢するんですよ」

 登美子の声が逆に明子を不安にさせます。
 けれど、ここから逃げ出すという選択肢だけは、この時の彼女
にはまだありませんでした。

 明子が言われるままに布団に寝そべると……

 「ごめんなさいね」
 そう言って、にこやかな顔のおかみさん連中が、男達との間を
隔てる襖を閉め始めます。

 『!?』
 見回せば、こちらの部屋に残ったのは女性だけ。
 明子はその時になって初めて、男と女が開け放たれたそれぞれ
別の部屋にいたことを知ったのでした。

 「さあ、男たちの目はなくなったから気にしなくていいのよ」
 叔母の波恵にそう言われてもきょとんとしている明子。

 そのうち姑の登美子がじれてこう言います。
 「愚図愚図しないで、さっさと脱ぎなさい。スカートを上げる
だけでいいわ。そのくらいならできるでしょう」

 あまりに唐突なその言葉。心の準備がない明子はどうすること
もできません。
 年上のおばさんたちが自分が寝ている布団を取り囲んで見つめ
るなか、明子はただただ震えるばかりでした。

 「あなた、ひよっとして『みとめの儀』を知らないの?」
 心配して聞いてくれた叔母の波恵に、明子は用心深くあたりを
窺ってから、小さく肯きます。
 すると、周囲から、どっと笑いが起こりました。

 姑の登美子も渋い顔をしています。
 でも、知らないものは仕方がありません。

 「とにかく始めますよ」
 登美子は、そう言うと大儀そうに『みとめ』と呼ばれる下帯を
取り出しました。

********************(2)****

 『何よ、これ?』

 事情を知らない明子が驚くのは無理もありません。
 それは全体のほとんどが竹製で、今でいうTバックのような形
をしています。赤い布が巻かれて大事な処は直接竹が当たらない
ようにはなっていますが、いずれにしてもそう説明されなければ
身につける物だとは思えない代物だったのです。

 「今日は、これをあなたが初めて身に着けるためのお式なの。
男なんてのは何かあるとすぐに分別をなくす生き物ですからね。
大事な預かりものであるあなたを、これで、1年間、お守りする
のよ」

 それまでのとげとげしい態度から一変、登美子は穏やかな口調
になり明子に話しかけますが、それは彼女の気持を落ち着かせた
りはしませんでした。
 むしろ、その半笑いは背中に薄ら寒いものを感じます。

 「さあ、始めましょう」
 登美子はもう待っていられないとばり、自ら明子のワンピース
の裾をめくりかけました。

 「あっ!」
 あわてた明子が上体を起こしてやめさせようとしますが……

 「大丈夫、大丈夫、ここではみんなやってることよ」
 叔母の声がします。

 「わかったら、おとなしくしてなさい」
 彼女の手は姑によってはねのけられ、起こしかけた上半身も、
周囲の大人たちによってもとに戻されます。
 他の婦人たちもよってたかって登美子の作業に協力します。
 この時ばかりは、明子の味方は誰もいませんでした。

 「……!……」
 あっという間に、明子のスカートは跳ね上げられ、ショーツも
下ろされます。

 『いや!いや!いやよこんなの!』
 明子は心の中で叫び続けましたが、これをやめさせるすべなど
ありません。
 彼女にできることと言えば、両手で顔を隠して頭を振ること。
それ以外は、周囲を取り囲むおばさんたちのなすがままだったの
です。

 「ほら、手を離しなさい」
 動転している明子の耳元で叔母の波恵が声をかけます。

 そうっと、手を顔から遠ざけると……

 「まあ、真っ赤になってる。今の子にしては意外にうぶなのね」
 誰かの声につられるようにして周囲でまた笑いが起きました。

 「ねえ、明子さん。このままじゃあ、着けたところを殿方にお
見せする時、下の毛が見えちゃうわ。だから、これ剃っちゃって
もいいわね。……どうせまた生えてくるものだし……」

 波恵の言葉は明子に衝撃を与えます。今だって、こんなに恥ず
かしいのに、このうえ着けたところを男の人に見せるなんてこと、
絶対に許されるはずがありませんでした。

 「馬鹿言わないでください!そんなことできません!」

 大声が女たちのいるこの部屋中に響き渡ります。
 ということは、襖一つで隔てられた男たちの部屋にも聞こえた
はずで、叔母はたちまち青くなってしまったのでした。

 「だめよ。そんなこと言っちゃあ。……いいこと、明子さん。
これは鬼滝村に古くから伝わる大切な儀式の一つなんですからね。
いやいやなんか言えないわ」

 「だって……」
 彼女がぐずると叔母さんは……

 「あなただけじゃないの。みんな、恥ずかしい思いは乗り越え
て立派なお嫁さんになったのよ」

 「…………」
 明子は反論できませんでした。

 鬼滝村に生まれ育った彼女にとって、鬼滝村の古くからの習慣
でみんなもやってきた事だと言われれば、それを覆すことはでき
なかったのです。

 明子はわがままの通らない分を、涙を流して自分を落ち着かせ
るしかありませんでした。

*******************(3)**

 鬼滝村のみとめはいわば日本式貞操帯で、金属製のもののよう
に鍵はありませんが、外すと二度と元のように組み立てられない
仕組みになっていました。

 仮祝言から一年間はこれを着けて操を守り、万一破談になって
も、その処女性をお嫁さんの実家に保証する意味を持っていたの
です。

 とはいえ、本人にすればそれは耐え難い苦痛に違いありません
でした。装着している時の違和感はもちろんのこと、排泄や月の
ものの時まで、いちいち姑に許可を得なければなりません。
 ましてや、今夜はこうした姿を招待客に披露するというのです。
明子は今が悪夢を観ているとしか思えませんでした。

 『夢よ、悪い夢よ。きっと醒めるわ』
 明子は必死に思い込もうとします。

 しかし、仮祝言をあげた若い娘に、これを拒むすべはありませ
んでした。
 今のように娯楽が充実していなかった当時にあっては、これも
数少ない男たちの娯楽。『女の子が可哀想だからやめよう』とは
誰一人言わなかったのです。


 みとめを着けられた明子は男たちの好奇な目の中に立っていま
した。

 「さあ、スカートを上げてごらんなさい」
 登美子の無慈悲な声が後ろから聞こえます。

 明子も事情は飲み込めましたから、そうしようとは思うのです
が……

 「………………」
 スカートの裾に手をかけるのがやっとだったのです。

 こうした事情は明子に限らず娘なら当たり前ですから、簡単に
スカートの裾を持ち上げられる子はまれでした。そして、それが
また男たちの興奮を高めていきます。

 「しょうがないね、いつまでそうやって突っ立ってても終わら
ないよ」
 「さあさあ、さっさとスカートをあげて……」
 「私がやってあげようか」

 それは男達の声ではありません。女たちの席からのヤジだった
のです。
 明子が思わず振り返ると、野次は止まりましたが、その顔は、
誰もが笑っていました。

 「…………」
 彼女たちは同性ですから性的な興奮はありませんが、ちやほや
される歳はとうに過ぎてしまった彼女たちにとって、幸福の絶頂
にある若い娘は羨ましくねたましい存在。そして、その娘の不幸
は、この上なく甘い蜜の味がしたに違いありませんでした。

 やがて、切りの良いところで母親代わりの波恵がでてきます。
あまり早く登場すると男たちの機嫌を損ねますから、そのタイミ
ングは難しいところですが、明子が泣き出す寸前に現れて……

 『はて、何をするのか』
 と思った瞬間、明子の後ろへまわって、そのまま何も言わず、
ひょいとスカートをまくり上げるのでした。

 「!!!!」

 竹製のみとめは明子の谷間にしっかりと食い込み、今、剃り上
げたばかりの三角デルタはその剃り跡が青々としています。

 「いやあ~~~」
 悲しき叫び声が部屋じゅうに木霊したことは言うまでもありま
せんでした。

 と同時に、へたり込もうとする明子を、心得ていたとばかりに
抱きかかえたのも波恵だったのです。

 それは10秒あったでしょうか。明子のみとめが男たちの目に
触れたのは……

 ほんの一瞬の出来事だったのですが、気を失ってしまった明子
にしてみれば丸一日さらし者になっていたようなショックでした。

 「まったく、だらしないねえ、近頃の娘は……」

 明子は姑の愚痴で目を覚まします。気がつけばさっきの布団に
寝かされ、頭には冷たいタオルが乗せられていました。お客たち
はすでに帰ったらしく、それまで感じられた熱気は失せて大広間
に人の気配はありません。

 ここに残ったのは姑の登美子と叔母の波恵だけでした。

******************(4)**

 「波恵さん。こんな度胸のない子じゃ先が思いやられるわね。
男は度胸、女は愛嬌って言うけど、本当に度胸がいるのは女の方
なんよ……」

 「すみません、ご迷惑かけて」

 「私はいいんだけど……これからはこの子も板東の家に入るん
じゃけん、気い引き締めてもらわんと……ちょっと、ストリップ
やったぐらいで目を回しとったら、この先も思いやられるけん。
……で、どうじゃろう。わし、この子に灸なっとすえてみたらと
思うんじゃけど……どうじゃろうねえ」

 「……それは、そちら様のご都合でよろしいかと……明子は、
すでに嫁に出した娘ですから……」

 「そう、つれないこと言ってもらっちゃ、こっちもやりにくい
もんで……ここは『うん』と言うてもらわんと……」

 「わかりました。お任せします」

 「そうかね、そんじゃあ、あんたも承知なんじゃな。そうか、
そんじゃあ、遠慮のうそうさせてもらうけど……」
 姑はそう言うと立ち上がり、もう一言、
 「大丈夫、目立つとこにはすえやせんから」
 こう言って奥の部屋へと消えて行ったのでした。

 すでに気がついていた明子にとってこの会話は不安な心をさら
に煽ることになります。ですから、もう恥も外聞もなく、おでこ
に乗せたタオルをはねのけ……

 「おばちゃん、私、だめ。こんな処じゃよう辛抱できんもの」
 明子は正座している波恵の右手をとって、そこにもたれかかる
ようにして訴えかけます。

 しかし、叔母の返事は冷たいものでした。
 「何言ってるの。今、こうして嫁いできたばかりで……その日
に帰ってきたなんて分かったら、それこそいい笑いものでしょう
が。私だって肩身が狭くてこの村にいられませんよ」

 ところが、それは姑の耳にもはいってしまったようでした。

 「いいんやで、帰っても。祝言いうてもまだ仮なんやし、やる
気がないもんが家におられても足手まといになるだけやから」

 登美子は、艾と線香、それにマッチといったお灸のために必要
な品物を一式お盆に乗せて運んできたところでした。

 「さあ、決めんかいね」

 凄む姑に手をついてわびたのは叔母の波恵でした。
 「すいません。この子、父親の手一つで育ってるもんで、……
男みたいなところがあって……口の利き方をよう知らんのです。
堪忍してやってください」

 「なんぼ口の利き方しらん言うても『帰りたい』いうのは本心
やろうから、そのようにしたらええがな」

 「でもありましょうが、当人もまだ世間知らずでして、こちら
様でそこのところを何とか躾てやっていただけないでしょうか」

 「あんた、何か勘違いしてないか。ここは学校やないで。……
だいたい21にもなって…そんな躾は、実家でやるもんじゃない
やろか」

 「ごもっともさまで……」

 姑にとっては望んでいた通りの展開。しかし、彼女はふと別の
ことも考えました。

 『何も今すぐ放りださんでも1年という時間がある。それに、
今、本当に帰られてはこちらも外聞が悪い』

 こう思った彼女は、それでも畳に額をこすりつけている波恵に
こう提案したのです。

 「じゃあ波恵さん、この子の躾はうちでやっていいんやな」
 ゆっくりと念を押すような調子は、波恵にしてもその先にくる
ものが読めないわけではありません。しかし、彼女には婚礼の日
に明子を連れ帰るなんてことはどうしてもできませんでした。

 「……そりゃあもう、そうしていただければ……」

 この言葉に姑の登美子は安堵したようでした。そして、自分は
明子の保護者として公明正大に認められたのだという自信を顔に
みなぎらせることとなるのです。

 もとよりこれが明子の不幸の始まりでした。

*********************(5)***

 「なら、今日のことは今日のこととして灸なとすえて反省して
もらおうと思うけど、あんた手伝っておくれでないかい」

 登美子の言葉に戦慄が走ります。当時は、今とは違い、お灸は
ポピュラーな折檻方法。明子にしてもこれが初めてというのでは
ありませんでした。でも、それだけにその時の恐怖は骨身にこた
えて覚えていました。

 明子は自分の想いを言葉にできず、その素振りだけで、何とか
叔母に訴えかけようとしましたが、やはり無駄でした。

 「じゃあ、まずうつ伏せに寝てもらおうか。子供と違ごうて、
小さいのじゃ温泉にはいっとるようなもんじゃろうから……艾は
大きめに作っとかな、……なあ、波恵さん」

 姑はそう言うと赤く印刷された袋から艾の固まりを取り出し、
小分けにしたうえ3センチほどの円錐形の小山をこさえ始めます。

 その様子を恐怖心のあまり薄目を開けて覗き見ていた明子は、
何かの悪い冗談かと感じていました。

 この世界は1センチでも飛び上がるほどに熱いのです。幼い頃、
近所のガキ大将がよくお灸をすえられていましたが、それでも、
せいぜい1センチか2センチまで。こんなに大きな物は見た事が
ありません。

 ガキ大将の灸痕は見た目にもわかるほど大きな火傷痕となって
今なお背中に残っていました。それが、自分は3センチだなんて
……

 でも、姑が作るそれは冗談でもなんでもありませんでした。

 「じゃあ、スカートが落ちんように、ようく押さえておいてく
ださいな」

 うつ伏せになった明子のワンピースの裾がめくり上げられると、
先ほどの赤いみとめが顔をだします。
 明子は本能的にそうなってしまうのか、匍匐前進を試みますが、
もとより、逃げ出せるはずなどありませんでした。

 「おう、おう、お前も人並みに殷の目にやいとをすえてもらっ
とるやないか」
 姑はみとめをずらして見える腰のあたりの灸痕をいとおしげに
なでまわします。そして、邪魔なみとめを取り外すと……

 まず痕の残る場所へ二つ。
 「……!……!……」
 姑は今ある灸痕よりさらに大きな艾を乗せるのでした。

 「どうやろ、波恵さん。あとは私に任せてもらえんじゃろか」
 当時の姑の権威を考えれば許可もいらないところですが、親代
わりでもある波恵の顔をたてて尋ねます。そして……

 「どうぞ、お願いします」

 波恵の言葉を聞くと、満足そうな顔になり、今度は明子のお尻
へ片方3つずつ、合計6つの艾を並べたのでした。

 『いや、いや、だめよ、そんなのやめてよ』
 明子は次々に並んでいく艾の数に恐れおののき、心の中で叫び
ますが、もう今さら声にだすわけにもいきませんでした。

 「よし、こんなもんかな……」
 登美子は火のついた線香を構えますが、それを艾に近づける段
になって……、

 「そうじゃ、肝心な所を忘れるところじゃった」
 登美子は、さも今、気がついたかのように、線香を線香立てに
戻すと、新たに特大の艾を用意します。

 そして、自ら、明子のお尻の割れ目の上部を少し押し開いて、
尾てい骨あたりに、さらにもう一つ置きます。

 「ここはお尻の割れ目が始まるところでな。底だけじゃのうて
左右の壁にも火がまわるからな、特別熱いんじゃ。昔はな、親の
いうことをちいっともきかん根性もんの娘がな、ようすえられた
もんじゃ」
 登美子はしたり顔、さも楽しげに語るのでした。

********************(6)**

 「蛇の生殺しのようなのも可哀想じゃからな、一気にいくぞ。
気合いれて、よう踏ん張るじゃ」

 登美子の宣言とともに、一気に、すべての艾へと火がつきます。

 「……あっ、…だめ、くる、くる、いやあ~~~やめてえ~~
取ってえ~~おねが~い……ひぃ~~~だめえ~~いやあ~~~」

 始め、ほんのり暖かくなったかと思うと……それがほどなく、
もの凄い痛みに変わります。
 まるで錐で穴を空けられてるみたいでした。

 そして、その衝撃はやがて全身へ……
 「いやあ~~~熱いいいいい~~~死んじゃう~~~取ってえ
~~~ごめんなさい、ごめんなさい、いや、いや、いや、いや」

 かすれ声が裏返り、それは甲高い悲鳴以上に哀れを誘います。
 明子の体は頭のてっぺんから手足の指先、はては乳頭やクリト
リスさえその衝撃を逃がそうとして痺れかえります。

 熱いというより、痛いというのがその時の感情に近いでしょう。
明子も経験者ですから、それなりに覚悟はしてのぞんだのですが、
何しろ大きなものが9つも乗せられていますから、とてもとても
辛抱たまりませんでした。

 「死ぬ~~殺さないでえ~~お願い~~いやいやいやいやいや」
 幼い子のように足を激しくばたつかせ、狂ったように首を振り、
ついには、だみ声を部屋中にはり上げてその苦痛から逃れようと
しました。

 「まったく、うるさい娘じゃ。この程度のやいとなら12、3
の子供でもおとなしくしとるというのに……」

 荒い息が続く明子を尻目に、姑は大きく一つ息を吐いて愚痴を
言います。そして、熟慮のうえという思わせぶりな態度で波恵に
こう言うのでした。

 「なあ、波恵さん。こんなにだらしがないなら、おまたも折檻
せにゃならんかもしれんなあ」

 登美子の言葉に波恵は返す言葉がありません。

 ただ、今はそそくさと明子の体をよけ、そこに染みこんだシミ
を少しでもふき取ることしかできませんでした。

 明子は、自分が少しぞんざいに布団の真ん中から追いやられた
ことに不審を抱いて波恵を見ます。すると、そこには大きなシミ
が広がっていました。

 『……えっ、……でも、…まさか、だって……そんなあ~~!』

 明子は最初そのシミを見てもすぐには信じられませんでした。
しかし、どう考えてもそのシミは粗相のあとに違いありません。
もちろん、それをしでかしたのも自分しか考えられませんでした。

 「もう、言い訳はきかんよ。あんたも言いたくはないじゃろう」

 登美子の稟とした態度に明子の全身の毛穴が震えます。明子は
この期に及んでも、逃げるということをまで諦めてしまったわけ
ではありませんでした。

 本当ならたとえ素っ裸でもこの場を立ち去りたかったのです。
しかし、腰がぬけてしまった彼女に、次から次へと繰り出される
姑の辱めをよける手段がありませんでした。

 彼女にとって残された道はただ一つ。
 嫌なことはすべて忘れ、今ある苦難や苦痛は現実のものとして
は考えないようにして過ごすことだけでした。

 明子は申し訳なさそうな顔色とは反対に粗相したという現実も
どこか別世界で起こった出来事のようにとらえていました。

 ですが、男になら使いやすいこんな芸当も、女の中にあっては
その了見が簡単に見透かされてしまいます。

 「こんな事なら、もっと、はっきり分かるところにすえなきゃ
効果がないかもしれないねえ」
 細い目の奥で光る登美子の鋭い眼光が鼓動の早い明子の小さな
心臓を捕らえています。

 明子は、今や姑に睨まれただけで言いしれぬ不安を感じるよう
になっていました。
 『もっと大きな不幸がやってくるんじゃないか』
 そう思うだけで、彼女の顔は自然と険しいものになり、それを
見た姑の態度もなおいっそう意固地なものへ変わっていくという
悪循環でした。

 そして、早くも次の瞬間にはそれが姑の行動となって現れます。

*********************(7)**

 「ああ、いいよ。いいよ。波恵さんそれはこっちでやるから…
…それより、次はちょっと大変だからしっかり頼みますよ」

 登美子は、波恵が始末しようとしていた明子のおしっこ布団を
二つ折りにするとその布団をパンパンと二回ほど叩いて……

 「素っ裸になって、ここに尻を乗せてごらん」
 と命じます。

 「………………」
 たじろぐ明子を尻目に、姑は小さく一つため息をついただけで、
あとはキセルを取り出してタバコを吹かし始めます。
 彼女はあえて無言のまま明子の支度を待つようでした。

 明子にしてみると、姑の命令はそれだけではそれほど驚くもの
ではありませんでした。裸と言っても見ているのは同性だけです
から、それほど強い羞恥心があるわけではありません。

 ただ、その二つ折りの布団に腰を下ろしてから先の事は、想像
するだに恐ろしいこと。おそらく生涯消えぬ思い出となることを
彼女自身、覚悟しなければなりませんでした。

 「ポン!」
 姑がたばこ盆に雁首を勢いよく叩きつけて火玉を払いますと、
まるでそれに呼応するかのように明子の体が動き始めます。これ
以上、姑を待たせることはできないと考えたのでしょう。

 それでも姑はそんな明子を信用していないのか、彼女の動きを
横目で見ながらも二服目を雁首に詰め始めます。
 しかし、その前に裸になった明子のお尻が布団の山にのしかか
ったのを確認すると、少し大儀そうにそれをやめ、明子の足下に
正座したまま擦り寄ります。

 「決心がついたんなら始めるかいね」

 お互いが向き合う姿勢から、登美子はいきなり明子の肩をぽん
と突きます。
 とっさのことで、明子はその場に仰向けになって倒れましたが、
どうやら登美子にとってそれはとるに足らないことのようでした。

 明子の体はお臍の辺りを頂点に弓なりになります。
 明子は慌てて体をよじり、起きあがろうとしましたが、それを
はたす前に姑の声がします。

 「それでいいんじゃ。起き上がらんでよい。それより、さあ、
両足を高く上げるんじゃ」

 姑の言いつけに従い渋々両足を浮かしかけますと、波恵もこれ
また姑と同じような渋い顔で、いきなり明子のお腹の上に乗って、
まだ処女のままでいる明子の白く艶やかな足を二本とも受け取り
ます。

 登美子は波恵に次はこれこれをやると指示したわけではありま
せんでしたが、波恵の方もこれから先のことは心得ているようで
した。

 「(あっ)」
 その瞬間、明子は声を上げようとしました。単に裸というだけ
なら隠しようがある場所も、こうなってはすべてがあからさまに
なってしまいますから。

 明子の恥ずかしい場所が白熱灯の真下で浮き上がります。

 すると、年長者の二人が処女の操をしばしながめてはお互いに
顔を合わせて微笑みます。それは、一方で感心したような、……
そして、もう一方では、馬鹿にしたような不思議な笑顔でした。

 いずれにしても明子にしてみれば、とんでもない格好をさせら
れていることに違いありません。
 もちろん今回のお仕置きはこれだけではありませんでした。

「ここは女には急所やからな。少し小さくしてやらにゃなるまい
な」
 登美子は明子の小さな秘所を左手でさすりながら、右手一つで
再び艾を丸め出したのでした。

******************(8)**

 「いやあ、やめて」
 これには、夢の中へ逃げ込もうとした明子も、その意識を現実
に引き戻さざるを得ません。

 彼女は上半身を起こしかけましたが、波恵がお腹にどっかと腰
をすえていますからどうにもならないのです。

 明子はたまらず、右手を伸ばして波恵のブラウスを引っ張りま
すが、これも気づいた波恵に叩き落とされてしまいます。
 波恵も、もはや明子をかばうことはできませんでした。

 「仕方ないでしょう。あなたが悪いんだから」
 彼女は再びやってきた明子の右手をはねのけます。

 続けて、登美子が…
 「最近は、人権、人権とうるそうなったけど、私らの子供の頃
はな、女の子がどうしようもないような悪さすると、ここによう
やいとをすえられたもんよ。ここなら、どんな根性曲がりの子も
一発で目がさめるさかいな」

 登美子は思わず出た関西弁でそう言いながらも、黙々と準備を
進めていきます。波恵によって大きく押し開かれた秘密の場所を
左手で愛撫しながら右手では艾をちぎっては丸める作業をやめま
せんでした。

 「おうおう、おまえも……おなごじゃなあ」
 登美子は皮を破って姿を現した小さな芽に目を細めながらも、
これをさすり続けます。

 「あっあああああああ」
 明子がたまらず腰を振ると、

 「おう、おう、こんなにもおつゆがしたたって……身体は正直
じゃて……あんた、この娘が男っぽい言うとったが、こりゃあ、
意外に男好きかもしれんな」
 登美子の手に翻弄されて明子は真っ赤な顔を激しく左右に振り
続けましたが、それ以上何もできませんでした。

 若い彼女にとってクリトリスは何より敏感な処。たとえそれが、
憎しみを感じる老婆のしわがれた指であっても、愛撫を受ければ、
それとは関係なしに反応するのは女の性だったのです。

 「おう、おう、男がほしゅうて必死においでおいでをしとる。
今からこの調子じゃ、先が思いやられるのう」
 登美子は、充血して膨れあがり、磯巾着のように脈打つ明子の
操をうらやましげに眺めた。そして、そのびらびらを思いっきり
抓り上げると……

 「いやああ~~~~」

 「おなごはな、ここを、よ~く仕置きせんとな、おとなしゅう
ならんのじゃ」
 登美子は、あまりの痛さに放心状態になった明子のお豆の上に
一粒、艾を貼り付けます。さすがに剥きだした中へはすえません
が、それでもそこは女の急所に違いありません。
 ですから、たった一火でも目が覚めるには十分でした。

 「ぎゃあああ~~~」
 全身を尺取り虫のように波打たせ、両手を何度も畳に叩きつけ、
波恵が施した手ぬぐいの猿轡でさえ、あまりに激しく頭を降り続
けますからすぐにはずれてしまいます。

 やがて大きく目を見開き、半開きの口が熱病におかされたよう
になって震え出すと、もうその後はうめき声さえ出ませんでした。

 「しょうのない子じゃ。また、粗相しよってからに。おおかた、
さいぜんのが残っとったんじゃろう」
 登美子は愚痴を言いながら、タオルで明子の粗相を処理します。
布団を拭き直し、恥ずかしい股ぐらもぬぐって、大判のタオルを
明子のお尻に敷き込みます。

 そして、あろうことか次は……

 「ここにも、気合いを入れにゃなるまいね」

 登美子は小さな唇を押し開くと、ピンクの前庭がはっきり外気
に触れるように波恵に見せつけるのでした。

*********************(9)**

 もちろん、明子にしても、今、自分がどこを触られているかは
分かります。おまけに、次はそこがターゲットになる可能性が高
いわけですから、そりゃあ必死でした。

 「冗談やめてよ。だめえ!そこはだめよ!」
 彼女は後先考えず叫びます。

 でも、姑からは……
 「仕置きはな、そうやって泣き叫ぶ処が一番効果があるんじゃ」

 彼女はもちろんそれがどんなことになるかは知っていました。
 いえ、この姑にしたところで、それは身をもって知っていたの
です。ですから、逆に躊躇もしませんでした。

 「ぎゃあ~~~あああああああぁぁぁぁぁぁ…………」

 明子の悲鳴は喉に痰が詰まったのを期に声がしなくなります。
 でも、それは明子が耐えきったとということではありませんで
した。

 「おや、おや、今度はオネムかい……」
 明子はため息交じりの姑の愚痴を遠くに聞きながら、本当の夢
の世界へと逃げ込みます。
 つまり、気絶してしまったのでした。

*************************

 それからどれくらいがたったでしょうか。
 明子は二人の楽しげな雑談に、はっとして目がさめます。

 「あら、気がついたみたいね」
 波恵がそう言って話しかけますが、部屋の雰囲気は気を失う前
とはずいぶん違っていました。
 姑の登美子も波恵もずいぶんと穏やかな顔になっていました。

 「あなたのこと話してたのよ。ずいぶん辛抱強い娘だって…。
これなら一年も辛抱できるんじゃないかって……」

 波恵が言えば登美子も肯きます。
 「だから、今回のお仕置きはもうこのへんにしましょうって…」

 大人たちの言葉に明子は狐に摘まれたような思いがしました。
 まだ、夢を見ているに違いないと思ったのです。
 しかし、これは夢ではありませんでした。

 ただ、これで明子に対するお仕置きがすべて終わったわけでは
ありませんでした。

 「だから、最後は、あなたがお義母様にこれからこちらの嫁と
して精進いたしますのでいたらない時は存分にお折檻くださいま
せって、誓いの言葉を述べてもらいたいのよ。そうすれば、もう
一回お灸をすえていただくだけでいいのよ」

 叔母の言葉に明子は当惑します。
 『今さら、どうしてまた新たな宣誓をしなきゃならないの?。
それにこの上まだお仕置きだなんて……』

 そんな思いが一瞬頭の中を駆けめぐったのですが、すでに明子
自身、その理性の回路がショート寸前になっていました。
 『このまま我を通しても何も変わらない』
 そんな脱力感が彼女にこの最後の屈辱を承知させてしまいます。

 「ふつつかな嫁ではございますが、精一杯勤めさせていただき
ますのでご指導ご鞭撻よろしくお願いいたします。もし、不手際
や粗相などございましたら、いかなるご折檻もいといませんので
どうぞお命じくださいませ」

 明子は最後のお仕置きが何かも尋ねず三つ指をついて挨拶して
しまいます。
 そして、それが終わってから最後のお仕置きが実は菊門である
ことを告げられるのでした。

*******************(10)***


 「これって、浣腸……」

 明子のつぶやきに、叔母は……
 「女の子なんだから、『お』をつけた方がいいわね。…そうよ、
お浣腸よ。あなた、処置されたことなかったかしら……」

 目の前にはピストン式のガラス製浣腸器。洗面器。大判タオル。
オムツ、ワックスや天花粉、オマルなども用意されています。

 今度はお灸の前に大量の石けん水でおなかの中を洗わなければ
ならないということのようでした。400㏄もの石けん水をお腹
に抱いて、長時間我慢することなど、浣腸初心者の明子にできる
ことではありませんでした。

 ですから、室内便器が始めから用意されて、これに跨って用を
足すことになるのですが、これもまた明子にとってはプライドを
傷つけられることになります。

 「いやあ~~~~もう帰して!お願い、帰してください」
 ほんの数分前に姑の前で誓った言葉はどこえやら、予想外の事
にたちまち自分の本心が現れます。

 思わず、明子は本気で逃げ出そうとしましたが、若いとはいっ
てもこれまでのことですでに体力を使っており、襖に手がかかる
寸前で御用となったのでした。

 布団の上に引き戻されると……
 「まだまだ、子供じゃな。しかしまあ、この方が躾がいがある
というものじゃて」

 登美子は、まるで昆虫採集用の昆虫に注射を打つような心持で、
明子の尻の穴へガラス製浣腸器のピストンを押し込みます。

 すぐにオムツがあてられましたが、そこへ漏らすまでいくらも
時間がありませんでした。
 オマルの必要さえなかったのです。

 「あんたは、恥ずかしいとかいう感情はないのかね」
 登美子は再びぼやきますが、その表情には諦めに似た笑い顔も。

 もちろん、登美子にはこれを理由に明子を責めることが可能で
したが、それはしませんでした。
 波恵の手前とか、ヒューマニズムとかではありません。尻たぶ
を開いて見えた美しい菊座を目の当たりにして、このまま明子を
帰したくないと感じたからで……年老いた者にとって、若い体は
精気を取り戻す何よりの妙薬。これをみすみす手放したくないと
考えるのはごく自然なことだったのです。

 「ぎゃあ~~~~ひぃぃぃぃぃ~~~~いやあいやあいやあ」

 菊門へ艾の火が回った時、明子はいつものように叫び続けます。
もうこの時の彼女は、姑にあがなう気持ちが失せていましたから、
逃げだそうと考えたわけではありませんが、その熱さは格別で、
どうにも我慢できないといった生理的な叫びだったのです。

 「おやおや、また寝てしもうた」

 菊門へのお灸がどれほど熱いかはあえて説明の必要もありませ
んが、これがために、明子は、以後毎日、その治療もかねて姑に
お尻の穴を見せにいかなければならなくなります。

 不幸な人生の始まりのようにも見えますが、でも、これが結果
的には彼女に一つの運を開かせるのでした。

 お灸の治療はお仕置きも兼ねられており登美子は何かにつけて
明子を責め続けましたが、それは仕事や義務というより、一種の
レクリエーション。若い娘をいたぶることで日頃の鬱積が晴れ、
優越感に浸ることのできる貴重な時間となっていきます。

 一方、明子にしても、最初こそ悲鳴を上げ暴れていましたが、
しだいにそんな辛いお勤めにも慣れてきます。と同時に彼女にも
姑の責めがいつしか心よいものになっていったのでした。

 二人の関係はいつしか深いものへとなっていきます。

 一年後、明子が仮祝言を卒業したのはもちろんのこと、嫁と姑
の中は時間がたつごとにさらに深まり、明子にしても、登美子に
しても、お互いの存在はそれぞれの夫以上のものになっていくの
でした。

 そして、明子に娘が誕生すると、二人は何かと理由をつけては、
毎日のように娘たちへ厳しいお仕置きを科すのでした。

**************<11/了>*******

Appendix

このブログについて

tutomukurakawa

Author:tutomukurakawa
子供時代の『お仕置き』をめぐる
エッセーや小説、もろもろの雑文
を置いておくために創りました。
他に適当な分野がないので、
「R18」に置いてはいますが、
扇情的な表現は苦手なので、
そのむきで期待される方には
がっかりなブログだと思います。

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