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8/29 極楽の夢

8/29 極楽の夢

 僕はごく幼い頃、極楽の夢を見ていた。

 寝ていると居間に光が差してきて、そこへ行くと、僕の身体は
瞬時に、蓮の葉の上にいて川を流れている。

 途中、観音様やお地蔵さんが川岸に立っていて、そこを通過す
るたびに僕のおでこに何かがくっつくのがわかる。
 何がついたのかは分からないが、それが額につくたびに辺りの
景色が鮮明になった。

 そして、ある桟橋まで来ると、そこにはお爺さんとお婆さんが
待っていて、僕を引き上げる。
 二人は僕を家に連れ帰り、指をしゃぶらせるのだが、不思議な
ことにその指からはミルクが出て、僕はそのまま眠ってしまう。

 翌朝、二人に見送られて、ある場所へ行くのだが、そこがどこ
だか分からない。
 ただ、行った先では神様たちが沢山いて、僕を抱いてくれる。

 そして、そこに集まった子供たちと一緒に僕もそこで遊ぶのだ。
遊園地というよりフィールドアスレチックみたいなところだけど、
とにかく空は飛べるし、相手の心は読めるし、望みは何でも叶う
って感じで、やりたい放題なんだ。

 規則はただ一つ。相手の嫌がることはしない。でも、女の子達
は僕が望むとたくさん裸になってくれた。お互い裸で遊んだんだ。
「ここでは、相手が求めることはできるだけしてあげなさい」と
いう観音様のお言いつけがあったから。

 というわけで、みんなと一緒にいた時間がどれほどだったかは
分からないけど、とにかくとっても楽しかった。

 そうこうしているうちに、僕は瞬間移動してお釈迦様の指の中
へ。中指の第一関節と第二間接辺りが僕のベッドだ。
 そこで休息を取りながら、お釈迦様の話を聴く。

 流れてくるのは世の中の真理についてだ。
 幼児には難しい話のはずなのに、なぜかこれが理解できたんだ。
 実は、お釈迦様の顔は見えない。ただこうしている間がこの世
で一番幸せな時間だった。

 お釈迦様からは色んなことを習ったが最後は決まって、
 「お母さんを大事にするんだよ」
 だった。

 で、夢から覚めるんだけど、覚めてみると、親たちが青い顔を
していて、
 「あなた大丈夫?なんでもない?」
 って、しきりにきくんだ。

 僕は心地よい夢を見ていただけなのに、現世では僕がひきつけ
を起こして夜中じゅう大変な事になっていたらしい。

 わけも分からず翌日は学校休んで大学病院で精密検査。
 こんなことが何度かあったけど、僕の身体や脳波に異常が見つ
かったことは一度もなかった。

 成長と共にそんなこともなくなったが極楽の夢も見なくなった。
ただ、お釈迦様に言われたことはその後も守っていて、お母さん
の言いつけを守って暮らしてきた。

 だって、お母さんが抱っこして僕を見つめる顔は観音様と同じ
笑顔だったし怖い顔もやっぱり観音様と同じ悲しい顔だったから。

 実は、この極楽では地上とは違う形でお仕置きがあるんだ。
 悪戯したり悪い心を持った子は観音様に抱かれて見つめられる
んだけど、ぼく達子供はそうされただけで『ここにはいられない』
って思っちゃう、とてつもなく悲しくなっちゃって体が張り裂け
そうになるんだ。それで、たくさんたくさんごめんなさいを言う
と、そのまま抱っこは変わらないんだけど、もう観音様は怒って
ないってわかるんだ。

 体験したことのない人に言っても無駄だろうけど、本当のお話
だよ。

**********************

8/29 <事務連絡>

8/29 <事務連絡>

『庄屋の奥様』はもともと『鬼滝村の五つの物語』の一つとして
書かれたものだったのですが、今回、『鬼滝村の五つの物語』を
独立したカテゴリーにした関係で、『新しい記事』となって巻頭
に登場してしまいました。ただ、中身は前のままです。

『鬼滝村の五つの物語』には『庄屋の奥様』『仮祝言の夜に』の
ほか、『おすけべ神社』『ポン太』『おにばばの店』という話で
構成されています。
いずれも民話風のSM話です。

ただ、SMと言っても私の描くSMですから、商業誌にあるよう
な欲情をそそる立派な作品は一つもありませんのでご注意を。

8/25 男の子ですから

8/25 男の子ですから

 『梅屋敷医院』って何だ?
 って問われると困るんですが……
 作者は男の子ですからね、こんなものだって書くんです。

 即物的というか……覗き趣味というか……妄想癖というか……
 当時はおかずになると思って書いたと思うんですが、文章力が
なくて、その役にはたちませんでしたね。

 他の作品とペンネームが違うのは単に恥ずかしいからで……
 今は閲覧者が減ってるので、ドサクサに紛れて出しちゃおうと
いう魂胆です。
 若かりし頃の記念品の一つですよ。

8/22 お父様・お母様

8/22 お父様・お母様

 これを言うと歳がばれるけど、僕たちの世代では両親のことは、
「お父さん」「お母さん」と呼ぶのが一般的だった。

 パパ、ママという言葉もなかったわけではないが、それは大抵
TVの中でのこと。日常的な会話で使うことはほとんどなかった。

 言わば、TV用語というわけ。

 もう一つ、僕たちが絶対に使わないTV用語があった。それが、
「お父様」「お母様」。

 自分の親に様づけする子なんて田舎じゃ考えられなかったから、
これもTVの中だけの特殊な言い回しだとばかり思っていたのだ。

 ところが……

 夏休みに東京へ出かけて行った時のこと。それまでペンフレで
しか付き合いのなかった少年の家を尋ねたことがあるのだが、
そこの友だちが、ごく自然に自分の親を「お父様」「お母様」と
呼んでいるのを見て、正直、腰が抜けるほどびっくりした記憶が
ある。

 『この呼び方って、テレビの世界だけじゃないのか!!!』
 田舎者にとっては、初めて知った衝撃の事実だった。

 パパ・ママはまだ悪戯にそう呼んでみたりすることもあったが、
『お父様・お母様』となるとさすがに引く。だから両親に対して
こんな呼び方をする子どもなんて、日本国中どこにもいるはずが
ないと、僕は確信していたのである。

 その思い込みが、木っ端微塵に崩れ去った瞬間だった。

 「すごいね、君はお父さんお母さんを尊敬してるんだ」
 僕がこう言うと……
 「何のこと?」
 と言うから……
 「お父さんやお母さんをお父様、お母様って……」

 「何言ってるんだい。それとこれとは話が別だよ。僕の場合は
幼い時に、『父のことは「お父様」母のことは「お母様」という
んだよ』って習ったから慣例に従い続けているだけさ。机や椅子
と同じように単なる名詞だよ。……」
 と言われて……目から鱗。

 「……まったく、あのくそばばあうるさいんだから」
 と続けられて、思わずほっとしてしまった。

 でもこれ、両親の聞こえない処でだから、彼のリップサービス
だったのかもしれない。

 

8/20 『汚い』って何だろう

8/20 『汚い』って何だろう

 実は、ブラウン先生がサンドラを抱っこして用を足させたいと
願うくだりには、作者の思い出、ルーツがあるのだ。


 僕は小3の時にちょっとした病気になった。入院までしなかっ
たからそれほど深刻な病ではなかったと思うが、二三日家で寝て
いたことがある。

 意識がはっきりせず、立つとふらついて、下痢もしていた。
 自分でトイレに立てないほどではないとは思ったが、いざ布団
から立ち上がってみると、よろけてしまい、その瞬間、

 「やばっ……」
 漏らしてしまった。

 すると、母はそういう事には敏感な人だから、たちまち風呂場
へ連れて行かれて後処理すると、布団に戻ってオムツを穿かされ
てしまったのだ。

 「今さらオムツなんて嫌だよ!!」
 僕はごねたが、聞いてもらえなかった。

 案の定、しばらくして、また……

 僕は知らん顔していたが、どういうわけか母は僕の異変を察知
する能力に優れている。

 「また、漏らしたの?」
 「うん」
 恥ずかしかったが、そう言うほかなかった。

 すると、彼女……
 「しょうがないわねえ」
 と言いながらオムツを替え始めたのである。

 「いいよ、僕が自分でやるから……」
 と言ったが聞き入れてもらえなかった。

 赤ちゃん時代と同じ姿勢、同じ手順で着替えが完了する。

 「ごめんね、汚いことさせて……」
 と言うと、
 「何言ってるの。子どものうんちが汚いわけないじゃない」
 と笑うのである。

 僕にはその意味が分からなかった。
 『だって、誰のうんちだってものは同じなのに……』
 なんて思ったのである。


 時、移って、今度は自分が2歳の子供をお風呂に入れる立場に
なった。

 すると、何かがぽかんと目の前に浮かんでくるのである。

 紛うことなき息子のウンコ。

 でも、それを……
 『大変なことしやがって』とも思わなかったし、そのウンコを
べつに『汚い』とも思わなかった。
 むしろ、『私の遺伝子を引き継ぐこの子は、私同様お風呂場で
ウンチをするのが好きなんだ』と笑ってしまった。
 そのウンコは、洗面器ですくって処理したが、二人は最後まで
ウンコの浮かんでいた湯船で身体を温めた。

 そして、その時……
 「子どものうんちが汚いわけないじゃない」
 という母の言葉を思い出したのだ。

 そういえば……
 母は子供の私が食べ残したぐちゃぐちゃになった料理でも平気
で食べていた。

 『愛されている』というのは、こういうことなんだと実感した
のである。

**************<了>*******

Appendix

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tutomukurakawa

Author:tutomukurakawa
子供時代の『お仕置き』をめぐる
エッセーや小説、もろもろの雑文
を置いておくために創りました。
他に適当な分野がないので、
「R18」に置いてはいますが、
扇情的な表現は苦手なので、
そのむきで期待される方には
がっかりなブログだと思います。

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