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小暮男爵 ~第一章~ §1 / 旅立ち

小暮男爵/第一章


<<目次>>
§1  旅立ち        * §11 二人のお仕置き②
§2 お仕置き誓約書   * §12 ランチタイムの話題
§3 赤ちゃん卒業?   * §13 お父様の来校
§4 勉強椅子       * §14 お仕置き部屋への侵入
§5 朝のお浣腸      * §15 お股へのお灸
§6 朝の出来事      * §16 瑞穂お姉様のお仕置き
§7 登校          * §17 明君のお仕置き
§8 桃源郷にて       * §18 天使たちのドッヂボール
§9 桃源郷からの帰還  * §19 社子春たちのお仕置き
§10 二人のお仕置き① * §20 六年生へのお仕置き



*****<< §1 >>****/旅立ち/*****

 その日、私は孤児院の庭で大きな木にぶつかりました。
 見上げると雲衝く大男が私を見下ろしています。
 私は不安げに笑いましたが……すると、三歳になったばかりの
私はいきなりその大男に抱きかかえられます。

 それが、男爵様との最初の出会いでした。
 そして、その時、地面を離れた足が再び施設の土を踏むことは
ありませんでした。

 私は男爵に抱きかかえられたまま孤児院の園長先生にお別れを
言い、そのまま黒塗りのシボレーに乗せられます。

 いきなりの環境の変化。でも、私は泣かなかったそうです。
 私は男爵様の膝の上でまるで何事もなかったかのように変わり
ゆく車窓の景色を眺めていました。

 そうやって連れて来られたのは横浜の山の中にあった男爵様の
別荘。
 別荘と言っても、そこが男爵が住まう家であり、私たち養女、
養子たちが生活する家でした。

 その建物に入り居間のソファまでやって来て私はようやく足を
地面に着けることができます。
 「いいかい、ここが今日からお前の家だ。まずは兄弟(姉妹)
たちを紹介しようね」

 男爵はそこにずらりと居並ぶ新しい兄弟を紹介していきます。
 ただ、いきなり起こった変化の中で私はそれを理解することが
できませんでした。きっと、紹介された十人の兄や姉たち、その
誰一人覚えることがなかったと思います。

 ただ、誰かが……
 「もっと可愛い子かと思ってた」
 という問いかけに男爵が…
 「可愛いじゃないか。何よりこの子は芯が強そうだ。車の中で
一度も泣かなかった」
 と言われ、お父様から頭を撫でられたのを覚えています。

 次は突然のことでした。

 『あっ』
 私はパンツを脱がされるとまるで岩山のような男爵の膝の上に
腰を下ろします。どうやら、その場でお漏らしを始めたようで、
周囲の大人たちが慌ててタオルや替えのパンツを用意し始めます。

 でも、そのことに私は慌てていませんでした。
 というのも、当時の施設ではパンツが濡れたまま遊んでいる子
なんて珍しくないからです。

 「乾くまで待ってればいいのに……」
 私が思わず発してしまった言葉に、周囲はどん引きしてしまい
ます。
 が、男爵様だけは笑っています。
 私もそんな男爵様の顔を不思議そうに見ていました。

 そんな物怖じしない性格が気に入ったのか男爵様はノーパンの
私をさらに強く引き寄せ優しく頬ずりを繰り返します。

 実はこの男爵様、ペドフェリアの傾向があって、子どもたちも
その性癖を満足させるためにここに集められていたのでした。
 いわゆる『子供妾』と呼ばれるやつです。

 ですから養女と言っても、私たちに男爵の財産を相続する権利
はありません。ただ、食べさせてもらい、着させてもらい、住ま
わせてもらうだけの存在でした。

 そうですね、私が得られた報酬らしいものといえば、しっかり
とした教育を受けさせてもらった事とお婿さんを探してもらった
事くらいでしょうか。

 そうそう『男爵様と知り合い』というのも社会に出てから結構
役に立ちました。おかげで、大人になってからも路頭に迷うこと
なく暮らせましたから。そういった意味での報酬はあったみたい
です。

 ただ、男爵はみずからの性欲の満足のために子どもたちを受け
入れているわけですから、実のお子さんのように『蝶よ花よ』と
いうわけにはいきません。
 私たちの生活は沢山の規則で縛られていて、些細な罪も厳しい
体罰で精算することになっていました。

 痛い罰、恥ずかしい罰もここでは日常茶飯事です。
 ですが、不条理な罰というのだけはありませんでした。

 罰には立派な理由がついていて、規則どおりに暮らしていれば
体罰の心配はありません。
 それができない時に厳しいお仕置きとなるわけです。

 ならば安心と言いたいところですが、そうはいきません。
 何しろ相手は子ども。大人と違って分かっていても色んな事を
やらかしますから、お仕置きを受けずに暮らすというのは事実上
不可能だったのです。

 どんなに注意深く慎み深い生活していても、二週間、三週間、
いえ一月に一度くらいは必ず男爵家のお仕置き部屋で泣き叫ぶ事
になるのでした。

 いえ、これは家庭だけじゃありません。
 学校も同じでした。

 養女となった私たちが通う学校はお父様と同じ性癖を持つ方々
が資金を出し合って作った小学校や中学校。よって、お仕置きも
毎日の恒例行事です。何しろお父様たち公認なんですから幼い子
にも容赦はありませんでした。

 お父様たちに協力的な先生方のもと、子供たちは色んな理由を
つけられてはぶたれます。まるで森でさえずる小鳥たちのように
子供たちの悲鳴が人里離れた山の中に響きます。

 それだけじゃありません。学校の敷地に一歩でも入り込めば、
他では絶対に見られない破廉恥なお仕置きが目白押しでした。

 もちろんここは文部省が認可した正規の私立学校ですよ。でも、
ここへ入学できるのは特別な性癖を持つお父様方が吟味に吟味を
重ねた子供たちだけ。

 クラスメイトだってつまりは同じ身の上なわけですから私たち
には比べるものがありません。つまり私たちは自分たちのことを
ことさら不幸と感じる必要がありませんでした。

 住めば都という言葉があるように、私たちにとってはこの山里
がふるさと。男爵様の家が我が家。男爵様が用意してくれたこの
世界でみんな一緒に暮らしていた。……そんな感じでしょうか。

 すべての幸せは男爵様の手の中にあったのかもしれませんが、
それで私たちは十分幸せでした。

 厳しいお仕置きがあると言っているのに幸せだなんて、不思議
ですか?変ですか?

 だってどんなに厳しいお仕置きがあったとしてもそれは生活の
中のほんの一コマ。大半の時間は優しいお父様にたっぷり甘えて
暮らしていたわけですから、差し引きすれば不幸より幸福感の方
が遥に大きいわけです。

 お仕置きがあってもなくても、施設に戻りたいだなんて思った
ことは一度もありませんでした。

**********<1>*************

小暮男爵 ~第一章~ §2 / お仕置き契約書

<主な登場人物>

 学校を創った六つのお家
 小暮
 進藤(高志)(秀子)
 真鍋(久子)
 佐々木
 高梨
 中条


 // 小暮男爵家 //
 小暮美咲<小5>~私~
 小暮遥 <小6>
 河合先生<小学生担当の家庭教師>
 小暮 隆明<高3>
 背が高く細面で彫が深い。妹たちの間では
 もっぱらハーフではないかと思われている。
 小暮 小百合<高2>
 肩まで伸びた黒髪を持つ美少女。
 凛とした立ち居振る舞いで気品がある。
 小暮 健治<中3>
 小暮 楓<中2>
 小暮 朱音(あかね)<中1>
 武田京子先生<中学生担当の家庭教師>
 小暮 樹理<大学2年生>
 今は東京で寮住まい。弁護士を目指して勉強
 している。


 // 聖愛学園の先生方 //
 小宮先生<5年生担当>
 ショートヘアでボーイッシュ小柄
 栗山先生<6年生担当>
 ロングヘアで長身
 高梨先生<図画/一般人>
 創設六家の出身。自らも画家
 桜井先生<体育/男性>
 小柄で筋肉質。元は体操の選手
 倉持先生<社会/男性>
 黒縁メガネで頭はいつもぼさぼさ
 榎田先生<理科/男性>
 牧田先生<お隣りの教室の担任の先生>
 大柄な女の先生。陰で男女(おとこおんな)
なんて呼ばれることもある怖い先生。
 中井先生<家庭科/女性>
 本来の仕事のほかに頼まれるとお灸のお仕置きも
こなす生徒には怖い先生。
 黒川先生<校医/男性>
 温厚なおじいちゃん先生

 //6年生のクラス<担任/栗山先生>//
 小暮 遥
 瑞穂のライバル。飛び降りは参加せず。
 進藤 瑞穂
 学級委員、でもけっこうヤンチャ。
 佐々木 友理奈
 高梨 愛子
 飛び降りは参加せず
 中条 留美
 飛び降りは参加せず
 真鍋 明(男)

 //5年生のクラス<担任/小宮先生>//
 小暮 美咲
 中条 由美子
 高梨 里香
 真鍋 詩織
 お下げ髪、三つ編みを両耳で垂らし先端に
毎日色代わりの小さなリボンをつけている。
 佐々木 麗華
 進藤 広志(男)<家庭教師/会田先生>
 絵が得意。鷲尾の谷はお気に入りのスケッチポイント。


****<< §2 >>***/お仕置き誓約書/***

 小暮家にやって来てからというもの私は一日の多くをお父様の
抱っこの中で過ごしていました。
 私がそう望んだのではありません。リタイヤしたお父様が暇を
もてあましていて幼い私を手離そうとしないのです。

 私は独りになりたくてイヤイヤしたことが何度もあったようで
すが、そんな時でも一時的に河合先生が預かるだけで、またすぐ
にお父様の腕の中に戻されます。

 最初の頃はお遊びの時間はもちろん、食事、お風呂、おトイレ
……そのすべてが一緒の暮らしでした。
 こちらはそうした生活に無理やり慣らされたといったところで
しょうか。

 3歳という年齢を考えればそうした親子もそう不思議でないの
かもしれませんが、幼児期を過ぎてもお父様は私を離しません。

 お父様は、昼間ゴルフに出かけたり、書斎で書き物をしたりと
いう生活でしたが、その場所にもお父様のお人形として私は常に
参加していました。
 そんな時、私の面倒をみるお母さん役が河合先生になります。
彼女は私が幼い時はナニーとして、少し成長してからは家庭教師
として私を支えてくれたのでした。

 それにしてもいつもお父さんと一緒だなんて楽しそうですか?

 いえいえ、そこはそんなにこれは快適な生活ではありませんよ。

 お父様が私を抱く時、そこはゴツゴツとした岩のような筋肉の
ベッドですし、まるで束子のような顎鬚が私の頭や顔にチクチク
当たります。おまけに男性特有の体臭が鼻を突きますから思わず
顔をしかめます。
 母親に抱かれる時ような優雅な世界ではありませんでした。

 幼児にとって、むしろそこは過酷な場所。愛情を押し売りして
くるありがた迷惑な世界だったのです。

 ただ、いいこともありました。
 それは、ここがこの小暮家にあっては最も安全な場所だったと
いうことです。

 というのは、小暮家の子供たちになったら避けて通れないはず
のお仕置きが、お父様に抱かれている私には一度もありませんで
した。

 そりゃあそうでしょう。お父様に四六時中抱かれている私は、
この家では赤ちゃん扱い。そんな赤ちゃんに、体罰を仕掛ける人
なんて誰もいませんから。

 その一方で人畜無害だと考えられていた私が、お姉さまたちの
お仕置きを見学する機会はよくあります。

 躾の厳しい小暮家では、娘といえどお父様の前でパンツを脱ぐ
のは当たり前。お臍の下を裏表しっかりチェックされたり、その
中までも検査されます。

 そうやって近々にお仕置きされていないことをを確認してから
平手や竹の物差しでお尻を叩かれるのです。

 強くは叩きませんがそれでも悲鳴があがることはよくあります。
時には女の子全員を集めてその前でお仕置きなんてことも。

 それだけじゃありません。お父様の家では特に女の子に対して
お浣腸やお灸がなされることも少なからずありましたから、その
恥ずかしさは半端ではありませんでした。

 今なら、これらは『虐待』という領域なのかもしれませんが、
当時は少しぐらい度を越したお仕置きでも、それは父親の権利で
あり愛情。躾の為にはやむを得ないと考えられていましたから、
非難する人は稀だったのです。

 ですから決して理由なくお仕置きするわけではありませんが、
お父様が躾の為にこれは必要と判断すれば、子どもたちはその後
厳しいことになります。

 私は、最初の頃、そうした悲劇の様子をお父様の腕の中でただ
ただ楽しく見学していたのでした。

 というのも、それがどれほど痛いのか、どれほど恥ずかしいか、
そもそもお仕置きをされたことのない私にはわかりません。
 ですから気楽なものなのです。お姉さまの悲鳴や悶絶にも私は
笑顔や拍手で答えます。

 お父様の腕の中から垣間見るお姉さまたちの地獄絵図も幼い私
にとっては退屈しのぎ見せ物(ショー)にすぎませんでした。


 さて、それではこの小暮家の娘たち、いったいどんな時にお父
様からお仕置きされるのでしょうか。
 これには、だいたい四つのパターンがありました。

 『宿題や勉強を怠ける』
 お父様は女の子だから学問はいらないとは思っていませんから
成績が落ちるとお仕置きです。

 『嘘をつく』
 特に自分を守る為につく嘘には厳しい結果が待っていました。

 『お父様や学校の先生、家庭教師、お姉さまなどはもちろん、
庭師や下男、賄いのおばちゃんに至るまでおよそ自分より年長の
人は全て私たちより偉い人というルール』
 家の娘なんだから使用人の名は呼び捨てで構わないなんていう
お嬢様ルールはここにはありません。目上の人は誰であっても、
『○○さん』と敬称を付けて呼ばなければなりませんでした。

 そして、お父様が何より気にしていたのが兄弟の仲でした。

 『兄弟げんかは理由のいかんに関わらずタブー』
 取っ組み合えば無条件で悲鳴が上がるほどのお尻叩きです。
 特に自分より年下の子をいじめようものなら、その結果は悲惨
というほかありませんでした。

 血の繋がらない兄弟姉妹、親子、だからこそ仲良しを一番気に
かけていたのでした。


 では、そんな本格的なお仕置きがいつ開始されるのか。

 男爵様の家ではだいたい10歳くらいから本格的なお仕置きが
始まります。
 いえ、それ以前にもお仕置きはあるにはあるのですが、それは
危ないことをやめさせる為に手を出すといった程度。
 過激なお仕置きではありませんでした。

 たまに河合先生がご自分の判断でお尻叩きをなさることもあり
ますが、驚いた子どもたちがお父様の処へ逃げ帰るという光景が
よくありました。

 それが10歳を過ぎると状況が一変します。お父様がご自身で
判断して子供たちにお仕置きを宣言なさいます。
 それって河合先生の場合とは違い、愛されてきた子どもたちに
してみたら、とても重いことだったのです。

 ですから、お父様はそれに先立ち、子どもたちに誓約書を提出
させます。

 『もし約束を破ったらどのようなお仕置きもお受けします』

 簡単な文面の誓約書です。でも、この一枚の紙切れは、その後、
私たちを長い間縛り付けることになるのでした。

 私も他の姉妹と同じように10歳になった時に誓約書を書いて
います。

 「いいかい美咲。この誓約書は、これから先、お前が児童施設
で暮らしたいのなら、いらないものだから書かなくていいんだよ。
どうするね。施設へ帰るかね」

 お父様はその時わざわざこんなことを言うのです。でも、私の
人生はここから始まったようなもの、はじめから児童施設へ帰る
という選択肢なんてありませんでした。
 私だけじゃありません。恐らくこの誓約書のせいで児童施設へ
帰る決断をした子は一人もいなかったと思います。

 私たちはすでにお父様の実の子でないことを知っていましたが、
私たちは目の前にいるこの人以外に愛された経験がありません。
この人が世界で一番大事なお父様ですし、ちょっぴり口うるさい
ですけど河合先生がお母様です。
 もちろん、お姉さまたちともこのお家とも離れたくありません
から答えは簡単でした。

 むしろ……
 『なぜ、そんな事をわざわざ聞くんだろう。……ひょっとして、
お父様、私のことが嫌いになったのかしら……』
 なんて、余計なことまで心配してしまいます。

 そんな私が誓約書を提出すると、お父様はいつものように私を
膝の上に抱いてあやし始めます。
 10歳を過ぎた少女と赤ちゃんごっこを始めるわけです。

 でも、そんなお父様に私の方も不満はありませんでした。
 女の子は、何かにつけてお付き合いが大事ですから、お父様が
望むなら私は赤ちゃんにだってなります。
 幼い頃やったおママゴトの延長ですから難しいことは何もあり
ませんでした。

 ガラガラが振られると笑い、おじやの入ったスプーンが目の前
に現れれば口を大きく開けて受け入れます。お風呂でもお父様が
私の服を全部脱がせて一緒に湯船に浸かり、流しで身体を隅から
隅まで洗ってもらうなんてことも……

 でも、これだってある日突然こうなったわけではありません。
赤ちゃん時代からの習慣がこの歳になってもたくさん持ち越され
ていただけのこと。お父様にしてみたら、幼児も赤ちゃんも同じ
ということのようでした。

 そして、こうしたことに何一つ抵抗感を示さない私はお父様の
信用を勝ち取っていきます。

 この時、お父様はすでに70歳近く。これまでも多くの女の子
たちを施設から引き取ってきましたが、さすがにこれ以上は無理
ということで私が最後の養女と決めていました。

 つまり、私より年下の子はもうこの館へ来ないわけですから、
ずっと私がお父様のお膝を独占できるわけです。

 そんな事もあって、お父様はずっとこのまま私を幼女のままで
育てたかったのかもしれません。でも、河合先生がそれを許して
くださらないので仕方なく誓約書だけは書かせた、そんな感じで
した。

 そんな事情からか、誓約書は提出したものの、その後も四年生
の間は今までと何ら変わらず私はお父様の赤ちゃんとして過ごす
ことになります。

 でも、さすがに五年生になって、とうとうその時が……
 お父様の家で暮らす少女なら避けて通れない試練の時が訪れた
のでした。

 小五から中一にかけて、大人たちはありとあらゆる機会を使い
子どもたちを躾けようとします。言いつけに背く子は無条件で罰
します。きついきついお仕置きは歳相応とはいえないほどの体罰
です。
 それがこれからは年長のお姉さまたちだけでなく、お父様から
寵愛を受けていたはずの私にも例外なく降りかかろうとしていた
のでした。


**********<2>*************

小暮男爵 ~第一章~ §3 / 赤ちゃん卒業?

小暮男爵

***<< §3 >>****/赤ちゃん卒業?/***

 その日は、夕食までは何も変わったことはありませんでした。
 五年生になってやっとお父様との添い寝から独立できた私は、
夕食の間じゅう一つ年上の遥ちゃんとおしゃべり。遥ちゃんとは
歳が近いこともあって何でも話せる間柄でした。

 ところが、食事が終わって、さて自分の部屋へ戻ろうとした時
です。私は家庭教師の河合先生から呼び止められます。

 「美咲ちゃん、お父様が何か御用があるそうよ。お父様、居間
にいらっしゃるから行ってちょうだいね」

 こう耳元で囁かれたものですから、す~っと頭の中から血の気
が引いていきます。

 『お仕置き!?』
 嫌な言葉が頭をよぎります。
 誰とは限りませんが、夕食後お父様が子供たちを呼び出す時、
そういうケースがたくさんにあったのです。

 でも、行かないわけにはいきません。
 11歳の少女に逃げ場なんてありませんからそこは残酷でした。

 我が家の居間は、普段なら恐い場所ではありません。板張りに
ソファが並ぶ20畳ほどの洋間で、自由時間であれば子供たちが
レコードを掛けたりテレビを見たりします。

 おかげで少し騒々しい場所でもありましたが、お父様にとって
はそんな喧騒もまた楽しいみたいでした。
 ですから、よほどのことがない限り『うるさい』だなんておっ
しゃっいません。

 もちろん子供たちの出入りは自由。ただ我が家では、夕食後、
家庭教師の先生に居間へ行けと言われたら、それは要注意だった
のです。

 ここでは、お父様の耳元でパンパンに膨らました紙袋をパンと
破裂させても、ジャムがべっとり着いた手でお父様の襟を握って
も、お膝に乗って思いっきり跳ね回っても、それを理由に叱られ
たことはありません。
 ただ無礼講のはずのこの場所も子供たちにしてみたら必ずしも
天国ではありませんでした。

 ここはお父様に愛撫されるだけの場所ではありまん。子供たち
にしたらお仕置きを受ける時だってここで受けます。

 たとえ高校生になった娘でも、お父様が命じれば妹たちのいる
この場所でパンツを脱がなければなりませんでした。

 お父様はお家の絶対君主ですから娘たちのお尻を素っ裸にして
平手打ちしたり、お浣腸やお灸をすえることだって、それは可能
なわけです。
 ですからこの場所にはお尻への鞭打ちに際して身体を拘束して
おくラックやお浣腸、お灸などのお仕置き用具もあらかじめ用意
されていました。

 私はこの居間でお姉さまの悲鳴を何度も聞きましたし、あまり
見たくありませんがお姉さまたちの大事な部分だって幾度となく
目の当たりにしてきたのです。

 そんな場所に行くようにと河合先生に耳打ちされた私は心配で
なりません。そこで、まずは入口から中の様子を窺いますが……

 「ほら、どうしたんだ。おいで」
 すぐに気づかれてしまい、お父様が私を中へ招きいれます。

 その顔はいつに変わらぬ笑顔でしたから、こちらも、ついつい
つられていつもと変わらぬ笑顔で部屋の中へ。

 お父様のお誘いにやがて駆け出すと、いつものように無遠慮に
ポンとその膝の上へ飛び乗ります。
 その様子はまるで飼いならされた仔犬のようでした。

 「おう、いい子だ、いい子だ」
 お父様はオカッパ頭の私の髪をなでつけ、その大きな手の平で
私の小さな指を揉みあげます。
 これもまたいつものことでした。

 『取り越し苦労だったのかもしれない』
 お父様がいつも私にやってくる愛情表現で接してきましたから
こちらもそう思ったのです。

 でも、そこからが違っていました。

 「今日、お父さんね、河合先生と一緒に小宮先生に会ってきた
んだ」

 その瞬間『ギクッ』です。
 私はさっそく逃げ出したいという思いに駆られますが……

 「…………」
 その思いはお父様に察知されて大きな腕の中にあらためて抱き
かかえられてしまいます。

 『ヤバイ』
 私は直感します。でも、大好きなお父様の抱っこの中での私は
おとなしくしているしかありませんでした。

 実はクラス担任の小宮先生と私は最近あまり相性がよくありま
せん。

 だって、あの先生、友だちの上履きに押しピンを立てただけの
軽~い悪戯まで取上げて、まるで私がその子を虐めてるみたいな
ことを言いますし、テストの点が合格点にわずかに足りないだけ
でも放課後は居残り勉強です。

 私にとってはこの先生の方がよっぽど『私をいじめてる』って
思っていました。

 「小宮先生、心配してたよ。美咲ちゃんは本当はとってもいい
子のはずなのに、最近、なぜか問題行動が多いって……」

 「モンダイコウドウ?」

 「例えば由美子ちゃんの体操着を隠したり、里香ちゃんの机に
蜘蛛や蛇の玩具を入れたり、瑞穂ちゃんの教科書に落書きしたの
もそうなんだろう?……昨日も男の子たちと一緒に登っちゃいけ
ないって言われてる柿の木に登って落ちたそうじゃないか。幸い
怪我がなかったみたいだけど、柿の木というのは枝が急に折れる
から危ないんだ」

 「うん、わかってる」

 「分かってるならやめなきゃ」
 か細い声で俯く私の頭をお父さんは再び撫でつけます。

 自慢のストレートヘアは友だちにもめったに触れさせませんが、
幼い頃から習慣で慣れてしまったのか、お父様だけはフリーパス
でした。

 「でも、由美子ってこの間体育の時間に私の体操着引っ張って
リレー一番になったんだよ。あの子、いつもずるするんだから。
里香だってそう。宿題のノート見せないなんて意地悪するから、
私もちょっとだけ意地悪しただけ。……瑞穂の教科書は違うわよ。
あれはあの子が『ここに描いて』って頼むから描いてあげただけ
なの。私が勝手に描いたんじゃないわ。そしたらあの子、それが
自分の思ってたより大きかったから騒ぎだしちゃって…おかげで
先生には叱られるし、ホント、こっちの方がよっぽど迷惑してる
んだから」

 私はさっそく早口で反論しましたが……

 「…………」
 見上げるお父様の顔はイマイチでした。

 「それだけじゃないよ。学校の成績も、いま一つパッとしない
みただね。朝の小テストは今週三回も不合格だったみたいだし」

 「あれは……」

 「あれは宿題さえちゃんとやっていれば誰にでもできるテスト
なんだだよ。……不合格ってのは宿題をやってないってことだ。
……違うかい?」

 「それは……先生もそう言ってた」

 「それと……単元ごとのテストは、合格点が何点だったっけ?」

 「80点」

 「そうだね。でも、美咲ちゃんのは、ほとんどが80点以下。
河合先生も最近は勉強に集中していないみたいだって……何か、
やりたくない理由があるのかな」

 「……そういうわけじゃあ……」
 私は即座にまた反論したかったのですが、ちょっぴり考えると、
そのまま口をつぐんでしまいます。

 いえ、この頃は近所の男の子たちとも暇を見つけて一緒に遊ぶ
ことが多くて、それが面白くて仕方がないんです。……だけど、
男の子たちってやたら動き回るのが好きでしょう。だから、家に
帰る頃にはもうくたくたで、何をする気にもならないってわけ。
 勉強もどころじゃありませんでした。

 でも、それを言ったらお父様は納得するでしょうか。
 しそうにありませんよね。だから私は黙ってしまったのでした。

 そもそも原因はうちはお姉さまたちがいけないんです。みんな
揃いも揃って秀才ばかりなんですよ。何かと比べられる妹はいい
迷惑でした。

 「樹理お姉さまはあなたの歳には3年先の教科書をやってたわ」
 とかね。
 「遥お姉さまがこの問題を解いたのは2年生のときよ。凄いで
しょう。誰かさんとは大違いね」
 なんてね。
 河合先生にいちいち比べられるのもしゃくの種だったんです。

 それに、お父様の顔色を窺うと……
 『どうして、お前だけできが悪いんだ』
 って言われそうなんで、強いプレッシャーです。

 「まだ、あるよ。これは小宮先生も笑ってらっしゃったけど。
この間の家庭科の宿題。あれはみんな小百合お姉ちゃんに作って
もらったんだろう?」

 「えっ!…あっ……いや……そ……そんなことは……ないです」
 私は心細く反論しますが……実はそんなことがあったんです。

 「美咲ちゃん、お父さんには本当のことを言わなきゃだめだよ。
お父さん、嘘は嫌いだからね」
 お父様に諭されると……

 「うん」
 あっさり認めてしまいます。
 私は生来もの凄く不器用で特に縫い物はいつも高校生の小百合
お姉様を頼っていました。小百合お姉様はやさしくてたいていの
事はやってくれましたから頼み甲斐があるお姉様なんです。

 「他人に作ってもらった物を提出するのも、これはこれで先生
に嘘をついたことになるんだよ。宿題は下手でも自分で仕上げな
きゃ。……そんなこと、わかってるよね」

 「はあ~い」
 私は消え入りそうな声を出します。
 でも、心の中では……
 『わかってるけど、できませ~~ん』
 でした。

 そして、その心根を隠すように顔はお父様の胸の中へと消えて
いきます。

 これって、甘えです。
 お父様と私は施設から連れてこられて以来ずっと大の仲良し。
少なくとも私はそう思ってます。だって、こんなに身体が大きく
なった今でも、お父様はまるで幼女のように抱いてスキンシップ
してくれますから。

 これって、慣らされちゃったってことなんでしょうけど、私も
またそんなお父様の抱っこが嫌いじゃありませんでした。

 『姉妹の誰よりもお父様は私を可愛がってくださってる』
 そう確信していた私はお父様に嫌われたくありませんでした。

 お父様の命令には何でも従いますし、なされるまま抱かれると、
たまにその冷たい手がお股の中へも入り込んだりしますが、でも、
私はイヤイヤをしたことがありません。
 女の子の一番大事な処だってフリーパスだなんて、広い世界で
お父様ただ一人だけでした。

 ただ、そんな蜜月も終わろうとしていたのです。
 
 「美咲ちゃん、こっちを向いてごらん。これから、大事な話を
するからね」
 お父様はご自分の胸の中に沈んだ私の顔を掘り起こします。

 「お父さん、いつまでも美咲ちゃんが赤ちゃんだと思って来た。
正確に言うと、赤ちゃんのままでいて欲しかったんだ、だから、
これまでは何があっても河合先生に『あの子はまだ幼いから……』
って言い続けてきたんだけど、これからはそうもいかないみたい
なんだ。これからは甘いシロップばかりじゃなくて、時には苦い
お薬も必要なのかもしれないなって思ってるんだ」

 「えっ!?私、お薬飲むの?」

 「はははは、そうじゃないよ」
 お父様は大笑います。

 でも、私は分かっていました。お父様の言う苦いお薬が、実は
お仕置きの意味だということを……でも、とぼけていたのです。

 お父様のお家の同じ屋根の下にはたくさんの姉たちがいます。
 その姉たちがどんな生活をしているのか。
 その扱いが自分とはどう違うのか。
 五年生にもなれば大体の事はわかります。
 そして、そんな特別待遇がいつまでも続かないこともこの歳に
なれば理解できるのでした。

 お父様と顔を合わせるたびに抱っこされてきた私。これまでは
何をやらかしてもお父様の懐に飛び込めば誰からも叱られません
でした。
 そんな私も、これからはお姉さまたちと同じ立場で暮らさなけ
ればならなくなります。
 それをお父様が、今、宣言しようとしていたのでした。

 「これからしばらくはお父さんの部屋で一緒に暮らそう」
 お父様の言葉はその最初の一歩を刻むもの。
 ですから、私は戸惑いながらもイヤとは言いませんでした。

 私が観念したのが分かったからでしょうか。
 「最初は辛いことが多いかもしれないけど、美咲もいつまでも
赤ちゃんというわけにはいかないからね」
 お父様は宣言します。

 お父様の大きな顔が同意を求めて迫ってきます。

 『……(うん)……』
 絶体絶命のピンチ!でしたが……でも、私は頷きます。

 この家で育った幼女が一人前の少女として認められる為の試練
の一週間。
 他のお姉さまたちはもっと幼い頃に済ましてしまった儀式を、
私はこの時初めて受け入れたのでした。


**********<3>*************

Appendix

このブログについて

tutomukurakawa

Author:tutomukurakawa
子供時代の『お仕置き』をめぐる
エッセーや小説、もろもろの雑文
を置いておくために創りました。
他に適当な分野がないので、
「R18」に置いてはいますが、
扇情的な表現は苦手なので、
そのむきで期待される方には
がっかりなブログだと思います。

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