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綾瀬のおばちゃん(3)

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<< 余計な一言 >>
 これは普段私が書いているものと違って、対象が子供ではあり
ません。『大人の赤ちゃんごっこ』世間ではエイジプレイなどと
呼ばれているものです。そのため、中にフェラチオの記述があり
ます。私の作品ですから、例によって細かな描写はありませんが、
一応、そういうものだとご承知ください。


 §3 馬鹿馬鹿しくて楽しい時間

 食後、子供たちは一階下の自宅に帰され、和子さんもこれから
先の準備が済むと、下へと降りていきました。
 残ったのは、僕とおばちゃんだけ。
 そのおばちゃんが僕に最終確認です。

 「ここは床屋さんと同じで、一度始めたら終わるまで私に全部
お任せの世界なの。何をされても絶対に逆らわないって約束する
かい?」

 そもそも1万円も払って(いえ、当時の僕にとっては大金です)
いったい何をされるかも分からない処へ入り込むなんて、とても
正気の沙汰とは思えません。今にして思えば、若気の至りという
やつでした。

 頼りは、丸川先生たちが書く小説だけ。そこに出てくる情景が
気に入っていて、ひょっとしてそれがここで行われているんじゃ
ないか、僕はそう踏んだのです。

 でも、肝心のサークル仲間の誰に聞いても、おばちゃんの事を
まともに答えてくれる人がいません。みんな口が重いのです。
 ただ、そうやってはぐらかすことが、逆に確信となって、僕は
不審者となってしまったのでした。

 「……はい、大丈夫です」
 おばちゃんの最終確認に、腹は決まっていましたが、あらため
て自分の心に『これから馬鹿なことをやるんだ』と言い聞かせて
返事をします。

 「それじゃあ、坊や、まずはこれに着替えて……」
 おばちゃんは和子さんが用意していった服に着替えるようにと
僕に命じます。
 そこで、その服を着てみますと……

 「ああ、可愛い、可愛い。爺さんたちと違ってお前は歳も若い
から見栄えがするじゃないか」
 おばちゃんは満足そうです。

 着替えたのは、股上の短いショートパンツとペコちゃんが胸に
大きくプリントされたニットシャツ。赤ちゃんのロンパースかと
思っていましたが、違っていました。
 夏にカジュワルな場所でなら大人が着ていてもそれほど不自然
さを感じさせない衣装です。

 「これ、何?」
 僕が衣装の袖を引っ張ると……

 「子供の服だよ。これからお前は私の子供になるんだ。歳は、
……そうだね、隼人か、……琴音くらいのつもりでいればいいよ。
……いずれにしても、私には絶対服従だよ。『はい、お母さん』
以外は許さないからね。イヤイヤをしたら即、お仕置き。いいね」

 「…………」
 その瞬間、私は『やっぱり、ここだったんだ』と思い。そして、
おばちゃんには、小説にあるように……
 「はい、おかあさん」
 と答えたのでした。

 「よし、いいご返事だよ。それじゃあ、まずお絵かきしようか」
 おかあさんはそう言って、ぼくを隣りの和室へ連れて行きます。

 そこにはすでにおコタ(炬燵)が用意されていました。
 時期は10月。まだそのシーズンには早いのですが、二人で、
一緒に入ります。

 まず、おかあさんがクッションに腰を掛けてコタツ布団を捲り
その股座(またぐら)へ私がお邪魔するという形です。
そうしないと、私の方がすでに身長が高いのでアンバランスに
なってしまいますから仕方がありませんでした。

 エイジプレイでは私は子供。あくまでおかあさんに抱かれる身
なのです。

 私はそんなおかあさんに負担をかけない形で抱っこされると、
目の前にあった大きなスケッチブックに絵を描き始めます。
 鉛筆で輪郭を描いて、クレヨンで上手に色を塗って……

 いえ、いえ……実はこれ、私が描いたものではありませんでした。
 私は鉛筆やクレヨンをただ握っていただけ。全てはおばちゃん、
いえ、おかあさんが私の手を包み込むように握り、慣れた手つき
で、さっさ、さっさと描いていきます。

 その上手なこと……驚きました。
 私は自分の握られた手から生み出される完成度の高いイラスト
が嬉しくなり、何だか自分まで絵が上手くなったように感じたの
でした。

 おかあさんが描くのは俗に『責絵』と呼ばれるSM劇画ですが、
私の嗜好を考慮しておどろおどろしいものは描きません。画題も、
『少女のお仕置き』になっていました。

 浣腸、お灸、尻叩き……いずれも親や教師からの折檻です。
 おかげで5、6枚描くうちに息子がすっかり目を覚まし、私は
おかあさんの描く少女に恋をしてしまいそうになります。

 「坊やは、こんなのが好きなんだね」

 おかあさんは僕の嗜好に副って最初の5、6枚を描き上げると、
更に奥深いテーマでまた5、6枚仕上げてくれました。

 おばちゃんはこうしてお客さんと一緒に絵を描くことで、相手
がどんな嗜好の持ち主で、今何を求めているかを判断して今日の
メニューを決めるのです。

 私は、その後何人かの女性に同じようなことを頼んでみました
が、大半は始めから決められたメニューを機械的にこなすだけ。
こんな事ができたのは、後にも先にも彼女だけでした。

 「これ、もらっていい?」
 思わず私がねだると……
 「いいわよ。お土産にあげる」
 快く応じてくれたのです。

 以来、これは私の宝物となりました。売るなんてとんでもない。
ネットにだって絶対に出しませんよ。

 「よし、坊やの嗜好もわかったことだし、次は綺麗綺麗しよう
か」
 イラストをまだ見入ったままでいる僕の頭の上からおかあさん
の声がします。でも、おかあさんの言う綺麗綺麗の意味が、最初
私には分かりませんでした。

 「ほら、いつまで見てるの。始めるわよ」
 やがて、おかあさんがシェービングクリームとT字のカミソリ
を持ってきたことで、私は了解します。

 実はこれ、丸川先生の小説にはよく出てくる光景だったのです。

 小説によれば、新入生は頭の毛以外すべての毛をおばちゃんに
よって剃り上げられることになっていました。すね毛、わきの下
……勿論、陰毛も全てです。
 いくら、子供だ、子供だ、と叫んでみても、はたからみれば、
グロテスクこの上ないことをしているわけです。これでさらに、
毛があったんじゃ、いよいよ興ざめしてしまいますから……

 私もそれについては覚悟を決めるしかありませんでした。

 ただ、私の場合……
 「ほう、お前さん、すね毛ばかりか、脇の下もつるつるじゃね。
まるで本物の子供みたいだ。こっちも手間が省けて何よりだよ」
 せんべい布団に全裸で寝かされている私を見て、おかあさんが
微笑みます。

 これって遺伝なんでしょうか。私は脇の下には毛が一本も生え
ませんでした。

 ただ、そんな恥ずかしい姿を晒していても、僕は笑っています。
『おかあさん』なんて呼んでいてもおばちゃんと会うのはこれが
二回目。所詮は赤の他人のはずです。なのに、なぜなんでしょう。
こうして笑われていることがちっとも苦痛ではないのです。

 そのことは私自身も不思議で仕方がありませんでした。

 「よし、坊や、さっぱりしたところで、次はミルクよ。その後、
お風呂に入ろうか」

 おかあさんは再び股上の短い半ズボンを穿かせ、ペコちゃんの
ポロシャツを着せて、布団の上に正座したままで僕の体を抱き上
げます。

 「さあ、おいちい、おいちいミルクですよ」

 「!」
 僕は目を丸くします。

 おかあさんの優しい声と共に目の前に現れたのは、どこで調達
したのでしょうか、巨大な哺乳瓶。その吸い口は、大人の私でも
口を大きく開けなければならないほどでした。

 でも、これが赤ちゃんのリアリティーなんでしょう。赤ちゃん
にとって哺乳瓶というのはこのくらい大きな存在のはずですから。

 何でも粉ミルクメーカーが宣伝用にこしらえたのを譲ってもら
ったんだそうですが……一説には、その社長がここで使うことを
見越して、そんなCMをわざと企画したんだとも聞きました。
 いずれにしても、これはありがたかったです。

 それはそうと孫の琴音ちゃんはすでに赤ちゃんじゃありません
から、今は哺乳瓶のお世話にはなっていないはずですが、大人の
赤ちゃんたちはいくつの年齢設定で遊ぶ時もこれだけはお定まり
のようでした。

 僕も目を輝かせてこれにしゃぶりつきます。

 「!!!」
 ところが、吸い付いてみて二度ビックリです。

 「美味しいかい?………あんたのおかあさんがいつもミルクに
ポポンS(ビタミン剤)を入れてたって聞いたから真似してみた
んだよ。どうだ、ママの味がしたろう」

 僕は感激、感心しました。実はその話をおばちゃんにした記憶
がなかったのです。恐らく何かのついでにポロリと口からこぼれ
出た程度でしょう。…でも、それを覚えていてさっそく利用する
なんて……さすがにおばちゃんはプロです。

 おばちゃんに上半身を揺らされ、子守唄を聞いてるうちに僕も
ちょっとだけ悪戯を……

 哺乳瓶のゴムの吸口を吸って出てきたミルクを、そうっと唇の
周りに吐き出してみたのです。

 当然、唇の周りは白く汚れますから、そのたびにおかあさんが
ガーゼで拭いてくれますが……

 それを何回か繰り返すうち、わざとやってるって気づいたんで
しょうね、今度は、おかあさんがそれを舐めて拭きとってくれる
ようになったのでした。

 普通の人の感性ならおばちゃんに口の周りを舐められたんです
からね、『おえっ!』ってなもんでしょうが、私の場合はそれも
楽しい遊びでした。


 授乳が終わると、次はお風呂でしたが、実は、これがこの日の
中で最も大変な出来事だったのです。

 「おかあさん、ちょっと準備がありますからね、いい子にして
いるのよ」
 おかあさんは僕の口に特大おしゃぶりを押し込むと、頭を撫で
て席をたちます。和子さんがお水だけを張ってくれていたお風呂
のガス釜に火をつけに行ったのです。

 当初、僕はそれだけのことだと思っていました。
 ところが、それにしては時間がかかります。

 『おかしいな、どうしたのかな?』
 と思っていたところへおかあさんは戻ってきたのですが……

 「えっ!?」
 それを見た瞬間、全身鳥肌、目が点になってしまいました。

 おかあさんは手ぶらでは戻ってこなかったのです。
 大判のタオルやら茶色の薬ビンやらを大き目の洗面器に入れて
運んできます。そこには見慣れたガラス製のピストン式浣腸器も
あって……これを見たら、驚くなという方が無理でした。

 『えっ、お風呂だと言ってたのに、その前に浣腸するのか?』
 僕の不安そうな目を見て、おかあさんはしてやったりといった
表情になります。

 「坊や、せっかくお風呂に入るだもの。一緒にお腹も洗っちゃ
おうね。だって、坊やのおうちではそうしてたんでしょう」

 『何言ってるんだ、そんなことするわけないじゃないか』
 僕はとっさにそう思います。

 「浣腸が終わってからお風呂に入るの?」
 恐る恐るたずねてみましたが……

 「そうじゃないの。お風呂でうんちするのよ。体が暖まってる
からそこで出すと気持がいいわよ」

 「えっっっっ!?『冗談だろう……』」
 僕はさらに驚き不安になります。

 でも、その瞬間、
 『!!!』
 僕はおばちゃんに余計なことを話してしまったのを思い出した
のでした。

 『そうか、僕が子供の頃お風呂場でウンコ漏らしちゃったこと、
おばちゃんに話したんだっけ……おばちゃん、何でもよく覚えて
るなあ』

 後悔先に立たずですが……

 「コラ!何ぶつくさ言ってるの。そりゃあ、世間でこんなこと
したら大変だろうけどさ。そもそも、ここは世間じゃないもの。
みんなここへ来て、自分の恥ずかしい部分を全~部さらけ出して
帰るんだよ。ここはそうやってリフレッシュするためにあるんだ
からね。かしこまってどうするんだい」

 「そりゃそうだけど……」

 「何だ、これだけ言ってもまだ恥ずかしいのかい。お前はまだ
若いからね……それじゃ仕方がない。このおかあさんが、目一杯、
恥をかかせてやるか」

 おかあさんはそう言うと……膝を抱えてうずくまっていた僕を
突き倒して仰向けにし、半ズボンをブリーフごとさっと脱がせ、
両足を高くあげます。

 「…………」
 一瞬の早業ではありましたが、僕も無抵抗でした。

 もちろん、おばちゃんと若い僕が争えば、勝負は見えています。
 でも、争いませんでした。
 自分からやって来て、お金まで払って、今さら逃げても何にも
なりませんから……

 「ほら、坊や、いくよ。ちょっと気持悪いけど我慢してね」

 ところが、そんなおばちゃんの声は、僕に魔法をかけます。
 不思議なもので、その声と共に僕の精神年齢が21から5歳へ
と変化するのでした。

 お尻の中へと流れ込むグリセリンが心地よいはずがありません。
どんな時にやられても、誰にやられても、それは不快に決まって
います。

 ところが、おばちゃんにやられたその浣腸だけは、なぜか心地
よいと感じてしまったのでした。

 「さあ、このまま、おっぷ(お風呂)に入ろうね」
 シミズ姿になったおばちゃんに抱き起こされ、手を引かれて、
おばちゃんちのお風呂へ行きます。

 豪華なお風呂じゃありません。ビニールのアヒルさんやブリキの
金魚さんたちが湯船に浮かぶ団地の小さなお風呂です。
 そんな狭い湯船にシミズ姿のおばちゃんと一緒に浸かった時、
僕はありえないものを感じてしまいます。

 イチジク浣腸をされ、シミズ姿のおばちゃんに抱かれるように
して湯船に浸かって震えながらウンコを我慢している図なんて、
こんなのマンガにさえならなほど滑稽な映像です。恐ろしいほど
馬鹿げています。
 でも、その時間は、同時に信じられないほどの幸福感を、僕に
もたらしたのでした。

 女性にはわからないと思いますが、多くの男性はウンチを我慢
する時、性的に興奮します。幼児の時もそうですから、フロイト
は幼児の一時期を『肛門期』だなんてよんでたくらいです。

 この男性特有の性的興奮が、二つの矛盾する感情に翻弄され、
僕のリビドーを高めていきます。

 僕は、『この湯船で漏らすかもしれない』という恐怖心の中で、
『でも、もし、ここで漏らしたらどんなに気持ちがいいだろう』
と考えたりもするのです。
 身体はガタガタと震えていながら、お湯の暖かさ、心地よさも
同時に感じています。
 それに、ガタガタと震えている僕の身体をおばちゃんが押さえ
ているは、拘束されているという不安感であると同時に、身体を
支えてもらっているという安堵感でもあるわけで……

 互いに相反するもの同士が絡みあい、僕の頭のあちこちでは、
回線がショートして火花が散ります。意識が朦朧とし始めます。

 でも、そんな異常電流が僕の生命エネルギーの炎を消し去る事
はありませんでした。むしろ、それは僕の身体の芯にしっかりと
溜め込まれ、やがて湧き上がるリビドーの触媒となっていきます。

 「よし、もういいぞ」

 ようやくおばちゃんがそれまで掴んでいた僕の両腕を離します。
 おばちゃんには僕の限界がわかっているみたいでした。

 「だめなら、ここでやってもいいよ」
 おばちゃんの許可を背中で聞きましたが、さすがにそこまでは
……

 「*********」

 ところが、おばちゃんは既(すんで)の所でトイレに間に合った
僕を急かせます。
 「ほら、早くせんと、せっかくの楽しみがなくなるぞ」

 おばちゃんに急かされてトイレを済ませると僕は再び煎餅布団
へ……

 「さあ、これからがお楽しみだ」

 まだ身体が温かいうちに仰向けに寝かされて今度はおばちゃん
の愛撫を受けるのです。

 バスタオルで身体中の汗と水滴がくまなく拭き取られ、香油が
全身に塗り込められます。これは身体を冷やさない工夫でした。

 「じっとしてるんだよ。そして、目一杯、我慢するんだ」

 乳首から始まった愛撫は舌と唇を使って僕の神経に添いながら
すべての性感帯を網羅していきます。

 切なさが顎をじんじん震わせ、両手両足の指先を痺れさせます。
 自然と身体が弓なりになり涙が滲みます。

 『ここも、ここも、……ここもだよ』

 最後に取り残された局部が、おばちゃんの愛を求めて猛り狂う
まで、それは続くのでした。

 最後に……おばちゃんは大きくなった噴水の吹き出し口に口を
着けますが、そこから歓喜の水を吹き上げるのにそう時間はかか
りませんでした。

 『あ~~~~~』
 お風呂の浣腸で僕の身体はよほど大きなエネルギーを溜め込ん
でいたのでしょうか、大人のオシッコが僕の頭の上を越えて遥か
遠くへ飛んでいきます。

 『やったあ~~~』
 僕は自分独りでは味わえなかった快感を、この時初めて味わい
ます。

 『あ~~~~~~』
 夢心地とは、まさにこのこと。

 ただ、大人のオシッコが一回済んでも、しばらくはおかあさん
の愛撫が続きます。おかげで僕は自分で楽しむ時より遥かに長い
時間、天国の住人でいられたのでした。

 そして、僕の愛液が一滴残らず身体の外へ出てしまうと……
 僕のお股には、たっぷりと天花粉がはたかれ、浴衣地で作った
昔ながらのオムツがお尻に当たります。
 その頃には、もうすっかり赤ちゃん気分になっていました。

 真新しいオムツがちょいと浮かしたお尻の下に滑り込む瞬間、
僕の身体は後ろに倒れて一瞬反身になり、ベランダに干してある
沢山のオムツが目に入ります。

 今さらながらですが、『そういうことだったのかあ』と思った
のでした。


 あとの時間は、おかあさんに甘えるだけ……
 オムツを付けた僕は、おかあさんの膝で離乳食をもらいます。
 絵本、といってもHな絵本なのですが、これを読んでもらい、
目を輝かせます。
 生のオッパイにはさすがに抵抗があったけど、結局は、それも
拒否しませんでした。

 そして、お背中をトントンされて子守唄が聞こえ始める頃には、
本当に目蓋が重くて仕方がなかったのです。

 「眠い……」

 「眠いなら寝てもいいのよ。私は未亡人だからここに来る人は
誰もいないの。安心しておネンネなさい」

 おかあさんとの時間は、僕が、当初思い描いていたシナリオと
完全に一致したわけではありません。でも、僕のシナリオ以上の
サービスをおばちゃんは僕にもたらしてくれたのでした。


 目が覚めると、僕の上には掛け布団が乗っけてありました。

 「坊や、目が覚めたかい?」
 おばちゃんにこう言われた瞬間、恥ずかしい話ですが、最初は
………
 『えっ!ここはどこ?』
 って思ったんです。
 すぐに思い出して赤面です。

 「驚いたよ。……あんた、二時間もここで寝てるんだもん」
 おばちゃんは縫いものをしていました。僕のイニシャルが刺繍
された涎(よだれ)掛けを縫っていたんです。

 「あっ、ごめんなさい。すぐ帰ります」
 僕は上半身を起こしますが……

 「いいのよ、寝たければ寝たいだけ寝て帰ればいいんだから…
そうじゃなくて、驚いたって言ってるの。ベテランになるとそう
いう人もいるけど、初日から本格的にここで寝た人は、あなたが
初めてよ。あなた、人を疑ったことがないでしょう?」

 「そうですか?僕はただ寝ていいって言われたもんだから……
そのまま寝てしまって……」

 「あんた、田舎じゃボンボンだったんだろうね。初日から何の
躊躇(ためら)いもなく私になつくんだもん。こっちが驚いちゃっ
たわ。人が良いにもほどあるよ」
 おばちゃんは手先を休めずこう言います。

 「ごめんなさい、こういうこと初めてだったから勝手がわから
なくて……きっと、やりにくかったんでしょうね」
 頭をかいて答えると……

 「そんなことはないわ。私の方こそ、あんたのお母さんの代わ
りができて嬉しかったのよ。お客さんは当然そうでしょうけど、
こちらだって苦痛だったらできない。私も好きだから続けてこれ
たの。………だけどね、もうここへは来ないほうがいいわね」

 「どうしてですか?」

 「あんたはこれからの人だもん。未来ある人はもっと前向きな
楽しみを見つけなきゃ。こういう道楽はね、世の中でそれなりに
仕事をして、もうこれからは、万事下り坂って人が通う処なのよ」

 「次は3万円用意します。お寿司も……」
 苦笑いでこう言うと……

 「馬鹿だね、お前。人の話を聞いてないのかい」
 おばちゃんに本気で怒られました。
 その後、気を取り直したおばちゃんがこう続けます。
 「………だから、そういう問題じゃないって言ってるだろう。
こっちは純粋に心配してるのさ。………お母ちゃんのオッパイが
恋しかったら、田舎(くに)に帰りな。お前の母ちゃんは、お前が
愛しくて仕方がないはずだから、また、こっそり抱いてくれるよ」

 「えっ?この歳でですか?……馬鹿馬鹿しい。うちの母親って
そんな人じゃありませんよ。結構、怖い人なんですから…そんな
ことしませんよ」
 僕は話しにならないとばかりハエを追うように右手を振ります。

 「やってみな。やってみればわかるよ。あんたみたいな子は、
そうやってでないと育たないはずだから……」
 おばちゃんは自信たっぷりに断言します。
 でも、それと同時に、さっきからやっていた涎掛けが完成した
らしく、それを僕の首に巻きつけてくれました。

 「よし、よし、似合う、似合う。良い子だね、笑ってごらん」
 おかあさんは独りではしゃぎ、僕もお愛想の笑いを返します。

 すると、おかあさんは小鉢に取り分けた離乳食代わりのおじや
をスプーンですくって、僕の口にねじ入れるのです。

 「ああ、上手、上手」

 おかあさんに乗せられて、僕も両手の指を目一杯広げたままで
赤ちゃん拍手。
 この時はもう息もぴったりの親子でした。


 しかし、さすがにいつまでもここにいるわけにもいきません。

 帰りしな、おばちゃんは……
 「その涎掛けは私との絆だから箪笥の奥に大事にしまっといて、
もし再びここへ来る機会があったら持って来てちょうだい」

 「はい。わかりました。またバイトでお金を貯めてから来ます」
 僕は、相変わらず明るく返事したのですが……

 「だから、ダメだと言っただろう。次は社会人になってから。
出世してからおいで。ここはね、自分で稼いだお金で遊ぶ処なの。
専門書買うからって、母ちゃんに嘘ついて、くすねたお金で来る
処じゃないんだよ」

 おかあさんは最後まで厳しい言葉を投げかけます。

 『……でも、どうしてわかったんだろう?……その事は絶対に
おばちゃんには話してないと思うんだけどなあ……』

 綾瀬の不審者は沈む大きな夕日を車窓に見ながら、六畳一間の
下宿先へと戻って行ったのでした。


******************(3)******

綾瀬のおばちゃん(2)

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 §2 オムツ翻るベランダ

 おばちゃんがくれた走り書きには住所と電話番号が書いてあり
ました。
 そこで、まずは地図を買ってその住所を確かめてみると、そこ
は綾瀬という地下鉄の駅から程近い団地だと分かったんです。

 二週間後の土曜日、
 私は興味半分でその綾瀬駅へ行ってみることにしました。
 でも、最初はそれだけ。改札さえ通らずそのまま帰ってしまい
ました。

 それから一週間後、
 まだ開通したばかりだった地下鉄の終点で下りると、綾瀬駅の
周辺を散策。
 『へえ、住所はこの団地なんだ。ということは……この最後の
数字は……2号棟の505号室ってことか』
 と、団地だけを確認、その日はそこまでです。

 そして、さらに二週間後、
 綾瀬を訪れること三度目にしてやっと私はおばちゃんが書いて
くれた住所に辿り着いたのでした。
 『間違いない。あの部屋だ。……それにしてもたくさんオムツ
が干してあるなあ。あの家何人も赤ちゃんがいるのかなあ』
 私はベランダ一面に翻る布オムツを見て思います。当時はまだ
紙おむつが一般的じゃありませんから布のオムツが干してあって
もちっとも不思議じゃありませんでした。
 その日はそれを確認して帰ります。

 まだうぶな頃でしたからね。すべては恐怖心と好奇心との戦い。
その戦いに好奇心が勝つと綾瀬へでかけるんです。

 これから先は毎週のように綾瀬へ通いましたが、それでも電話
する勇気はありませんでした。

 こうして三ヶ月四ヶ月と過ぎた頃、
 団地をうろつく不審者がとうとう発見されてしまいます。

 その日もベランダには沢山のオムツが干してありました。
 それをいつものように見上げていた時です。
 突然、女の人がそのベランダに現れて私を手招きします。

 最初は自分の事だとわかりませんでしたが、周りに他の人の姿
が見えませんから……
 『ヤバ、見つかっちゃった』

 もちろん、逃げるという選択肢だってあったはずですが、この
時はすでに『今日、電話しようか、やめようか』って思い悩んで
いましたから、実はいいきっかけだったんです。


 ご招待を受けて、私は505号室のチャイムを押します。

 出てきたのは和子さんでした。和子さんは、おばちゃんの実の
娘です。ベランダから私を手招きしたのもこの和子さんでした。

 『きっとここがおばちゃんのもう一軒のお店なんだ』
 なんて思っていましたが、奥に通されると、おばちゃんは居間
のソファに胡坐をかいて座っています。おまけに周りに変わった
ところなんて何もありません。何の変哲もない団地の一室だった
のです。
 所帯道具一式すべて揃っていますし生活観ありありの風景です。

 ただ、ない物もありました。いえ、物って言っちゃいけません
よね。赤ちゃんがいないのです。あんなに何時もオムツが干して
あるからには赤ちゃんは一人ではないと踏んでいたのですが……
開け放たれた2DKのどこを見回しても、肝心の赤ちゃんの姿が
ありませんでした。

 「ほら、何をキョロキョロしているの。そんなだから、あんた、
不審者と間違われるんだ」

 「不審者?僕が?」

 「そうだよ。毎週、週末にこの辺りをうろついく不審者がいる
から注意してたくださいって回覧板が回ってきてたからね。……
ひっとして、ひょっとしたらって思ってたんだけど……案の定、
ってわけだ」

 「えっ、……」
 私はそれまで他人から怪しまれていたなんて知りませんでした
から絶句します。

 「だから、ここに来る時は電話しなさいって言ったろう。……
警察に引っ張られたらつまらないじゃないか」

 「すみません」
 私が頭を下げると……

 「私に謝ったってしょうがないじゃないだろう、これは坊やの
問題だもん。……恐らくここに電話する勇気がなかったんだね。
……あんた、育ちがよさそうだし、気も弱そうだもんね」

 「こんな処、初めてだったから……」
 思わず弁解したら足元をすくわれて……

 「おやおや、こんな処で悪かったね。こんな処に大学の先生、
お医者、弁護士、代議士先生から警察の所長さんまで来るんだよ」
一介の学生ふぜいに『こんな処』よばわりされたくないね」

 「ごめんなさい」
 また、謝ることになった。
 すると……

 「はははは、可愛いね、あんた、はにかんだところなんか息子
そっくりだよ。……和子、和子、この子兄ちゃんに似てるだろう」

 おばちゃんが同意を求めて娘の和子さんを呼びます。

 「ええ、……」
 和子さんは台所からこちらを見て遠慮がちに笑います。

 すると、ここでおばちゃんは少しだけ声のトーンを落とすと、
真剣な顔になって話します。それは、ここでの約束事でした。

 「ここに来たらね、外での肩書きは一切関係なしだ。みんな、
私の子ども。私にすべてお任せで楽しむんだ。あんたの場合は、
学生だからどっちみち関係ないけど、たまに自分の地位にしがみ
つく人もいるんだよ。そうした人はここでは楽しめないね」

 「ところで、ここで、何するんですか?」

 「えっ!?」おばちゃんは目を丸くした。「何だ、丸川先生に
聞かなかったのかい?あんた、あの時、丸川先生達の連れだった
じゃないか?」

 「ええ、何となくは……でも恥ずかしくて……具体的な事まで
訊いてないんです」

 「呆れた。何をするかも知らないでここに来たのかい?」

 「ええ、まあ……」

 「まあ、いいわ。度胸があるのか、馬鹿なのかは知らないけど、
可愛がってあげるよ。今日の午後はちょうど空いてるしね……」

 「いえ、僕は……」
 私は慌てて否定しようとしたのですが……

 「何言ってるんだい。散々この辺うろついてたくせに……ほら、
財布出してみな」

 「えっ……」
 驚く僕を押し倒すようにおばちゃんがのしかかって来て、僕の
財布を強奪します。

 「ほら、見な。ここにちゃんと1万円、分けて入れてあるじゃ
ないか。これが何よりの証拠だよ。私が1万円でいいって言った
から、あんたちゃんと持ってきたんだね。…よし、これでいいよ」
 おばちゃんは僕の財布から1万円札を抜き取ると……

 「和子、これで寿司買ってきな」
 それを無造作に娘さんに手渡すのでした。

 とにもかくにもこれで交渉成立です。

 「私も、あんたの事はそこそこ聞いてるから、たぶん、大丈夫
だと思うけど……嫌になっても途中で逃げ出さないでおくれよ。
『変態がこの家から出てきた』なんて評判になったら、私の方が
ご近所から白い目で見られることになるからね」

 「ここって、自宅なんですか?」

 「そりゃそうさ、見ればわかりそうなもんだろう。ここは私の
自宅。娘は、一階下で亭主や子供たちと一緒にに暮らしてるよ。
だから、ご近所迷惑な音の出るスパンキングはここではやらない
んだ」

 「じゃあ、ここでは……」

 「だから、ここではそれ以外のことで楽しむんだ」

 「それ以外?」

 「まあ、いいさ。あんただって嫌いじゃないはずだから……」

 その時でした。入口の扉が開いて光がこちらへさしたかと思う
と、甲高い声が家じゅうに響きます。

 「おばあちゃん、お寿司は……」
 「あたしも……」

 声の主は、当時小学1年生の隼人君と幼稚園児の琴音ちゃん。
 この子たちは和子さんの子供、つまりおばちゃんの孫でした。

 二人はいきなりお婆ちゃんの首っ玉にしがみつきます。

 「ほらほら、お客さんが来とるというのに、ご挨拶せんかい」

 二人はそう言われて、仕方なく顔だけを私の方へを向け…
 「こんにちわ」
 「こんにちわ」
 と、さも大儀そうに頭を下げますから……

 「こんにちわ」
 私も笑顔を見せて挨拶すると、それを物珍しそうに眺めたあと、
再びお婆ちゃんの顔をすりすりします。

 しかし、ここで二人にとっては予期せぬ事が起こります。

 「お前ら、昨日、お父さんの大事にしとる皿を壊してしもうた
そうやな。…おおかた、また戸棚の上に乗って遊んどったんじゃ
ろう」

 お婆さんの言葉に二人の顔色が悪くなっていくのがわかります。
同時にそれまでしっかりとしがみついていた首っ玉からも、少し
距離を置くのです。

 二人は異常事態を察知したようでした。

 いえ、私だってこんな事は山と経験してきたのでわかるんです
が、たいてい手遅れでした。

 「今日は、お前達のお父さんからもお仕置きを頼まれとるから
な。やってやらにゃ、あかんだろうなあ」

 「えっ、だってあれお兄ちゃんが先に登ったんだよ」
 琴音ちゃんが言えば、
 「嘘だね、琴音が先に登ろうって言ったんじゃないか」
 隼人君だって負けてません。
 「うそつき!」
 「嘘じゃないもん」
 お互いが責任のなすりあいをしますが、こんな場合、たいてい
一方だけが親に責められるということはあまりありませんでした。

 ついにお婆ちゃんの目の前でつかみ合いの喧嘩になってしまい
ましたから……

 「ほれ、お客さんの前でみっともない。やめんかい。……ほれ、
隼人、こっちへ来るんじゃ」

 お婆ちゃんは隼人君を目の前に立たせると、着ていた服を脱が
せ始めたのでした。
 シャツだけお情けですが、あとは全部剥ぎ取られて……
 当然、可愛いお尻もオチンチンも丸出しです。

 「向こう行って」
 おばちゃんに強い調子で命じられると、壁の前で膝まづいて、
さっそく壁とにらめっこです。

 隼人君がおばちゃんに何も訊かずに壁の前へ行って膝まづいた
ところをみると、どうやらこれはこの家でよくやられているお仕
置きのようでした。

 隼人君だけじゃありません。琴音ちゃんだってそれは同じです。
やはり、シャツだけお情けで、下はすっぽんぽんのまま壁とにら
めっこです。

 「どう、可愛いストリップやろ。西洋じゃコーナータイムとか
言うんだそうな。……あんたの家でもあったかい?こういうの…」

 「………柿の木に縛り付けられたのが一回だけ……あとは……」

 僕が答えに詰まると、おばちゃんはその事とは関係ないことを
独り言のようにつぶやきました。
 「あんたをみてるとね。育ちがいいって言うか、あんたの親が
どんだけあんたを愛してたかわかるよ」

 その直後、入口のドアが開いて和子さんが、大きな桶を抱えて
帰ってきました。

 和子さんはそれを居間のテーブルに置いてから、自分の子ども
たちに気づきます。

 「あんたら、また、何かしでかしたんかいな」

 こう言って叱ると、今度はおばちゃんが……
 「違う、違う、和子、昨日のことや……」
 和子さんにはこう言い……僕には……
 「ほら、食べなさい。お昼まだなんやろ」
 とお寿司を勧めたのです。

 そして……
 「隼人と琴音。お前たちも、もういいから、ここへ来てお寿司
を食べなさい」
 って、チビちゃんたちにもお許しが出たのでした。

 子供は現金ですから、その声を聞くや一目散に大きな寿司桶の
前へやってきます。もちろんフルチンでしたが、そんなのお構い
なしでした。

 そんな二人におばちゃんと和子さんが服を着せなおし、ビール
やジュースもテーブルに乗って、昼の食事が始まります。

 「さ、遠慮はいらんよ。今日はおばちゃんのおごりだから……」

 人生経験のない僕は、この時、『これがここのルールなんだ』
なんて単純に思ってしまいましたが、これは僕だけの特別ルール。
社会人の人たちは、規定の3万円を払った上に、自分でお寿司を
差し入れていたのです。

 その事に、後々気づいて謝ると、おばちゃんは……
 「脛かじりのあんたからお金を取るってことは、あんたの親御
さんからお金取るってことだろう、それはできないんだよ。……
もちろん、社会人になって自分でお金を稼げるようになったら、
ちゃんとしなさいね。それが男の甲斐性ってもんだから……」

 学生時代、私はすべての点でこのおばちゃんに甘えっぱなしで
した。


*****************(2)******

綾瀬のおばちゃん(1)

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                     (小説)

 綾瀬のおばちゃんとは『お仕置きサークル』の仲間に連れられ
て行った錦糸町のお店で知り合いました。

 当時、まだ学生で世間知らずでしたが、好奇心だけはあって、
自分の書いたシナリオで相手の女性が演技してくれるというので
社会人の人たちに着いて行ったのです。

 その店内は薄暗いを通り越してお化け屋敷状態です。しかも、
そこに現れたのは、僕の母より年上とおぼしきおばちゃんでした
から、これはもう、がっかりで……

 『ああ、せっかく稼いだバイト代がこんな事で……』
 って、正直思いました。

 でも、やることはやって帰らないと損ですからね。
 僕の希望をおばちゃんに話したんです。
 すると、10分以上話してましたか、けっこう根掘り葉掘りと
いう感じで相手が聞いてきますから、僕もいつしか乗せられて、
身の上相談みたいにべらべらとおしゃべりしてしまいました。

 すると、突然、隣に座っていたおばちゃんが自分の膝を叩いて
……

 「あんたみたいな子がこんなとこ来ちゃダメだよ。親御さんが
心配するじゃないか。バイトで貯めたお金はもっと有意義に使わ
なきゃ。ほら、今日は私がお仕置きしてあげるからおいで……」

 って、ぶっきらぼうにこうです。

 私は一瞬面食らいました。それは私が書いたシナリオと違って
いたからです。
 でも、これがこういう処のノリなんだと思いなおして……

 「ごめんなさい」

 わざと、子供っぽい声を作って、その膝へ寄りかかります。

 「まったく、お前みたいに悪い子はいないね。勉強もしないで
バイトして、あげくその稼いだお金をこんな処で使うなんて……
とんでもないよ。親御さんに代わって私がたっぷりお仕置きして
あげるから覚悟しない」

 こう、宣言されて始まったスパンキングは、途中で短い休憩を
挟みながら30分。平手でお尻を叩かれただけなんですが、最後
は涙と鼻水で顔はぐちゃぐちゃ、サウナに入ったみたいに汗びっ
しょりというありさまでした。

 何より驚いたのは、おばちゃんの迫真の演技でした。僕の三文
シナリオなんて関係ありません。本当の叔母さんが僕を叱りつけ
てるような、そんな迫力だったのです。

 それが僕の心に響いて、僕の羞恥心は勃起してしまいます。
 すると、それを膝で感じ取ったんでしょうね、おばちゃんは、
僕を立たせ、それまで許していたパンツまで剥ぎ取ります。

 「おうおう、可愛らしいの付けて…お前、マスばかりやってる
から、こんな可愛らしいのになるの。もっと、我慢しなきゃ」
 と、僕の息子を見て、そこも叱るのでした。

 もう、やりたい放題。きっと……『この子なら、このくらいの
ことをしても怒らない』というプロの読みがあったに違いありま
せん。
 とにかく大ベテランですから……

 そして、実際、そうだったのです。
 これほど惨めなことを他人にされているのに、心が高揚してて、
お尻が限界だと片っ方の頭が訴えているのに、もう片方はもっと
強くぶたれたいと思っていたのです。
 そのアンバランスが自分でも不思議でした。

 そして、そんな欲求にまで、おばちゃんは応えてくれるのです。

 「和子、和子、」

 おばちゃんは誰かを呼びます。
 ベニヤで仕切られたような部屋でしたから、ちょっと大きな声
で呼べば店じゅう届いてしまいます。
 実際、僕とおばちゃんが楽しんでいる(?)時にも両隣の部屋か
らは色んな声や物音がガンガン入って来ていました。聞きたくも
ありませんが、そこでどんな事をしているのか、だいたいわかる
くらいだったのです。

 やがて、間仕切りのカーテンを祓って若い女性が(といっても、
おばちゃんに比べればということですが)入ってきました。

 「あんた、この子の手を押さえてて……」

 この時は、もう僕はおばちゃんの言いなりです。

 「いいかい、二度とこんな処に来なくていいように、たっぷり
とサービスしてあげるからね、しっかり受け止めるんだよ」

 立ったまま、息子も立ったままで両手を戒められ、こんな言葉
を聞けばたいていの人は後ろを振り向きます。

 すると、おばちゃんは幅広の皮ベルをしごいています。
 何をするかがわかりましたから、あとは我慢するだけ……
 もちろん、僕はお客さんですから、『それは要らない』って、
言えなくもありませんが、その勇気さえその時はなくなっていま
した。

 「ピシッ!!!」

 その痛かったこと。
 そりゃそうです。今まで散々お尻を叩かれたあとだったんです
から……

 前に鞭を受けたのは子供の時に親からです。当然彼らは手加減
しますし、散々脅してからの折檻ですから、ほんのちょっとした
力で叩いても効果てきめんというわけです。

 でも、今は、身体が頑丈になり、周りが見えるようになったの
で、そんな子供だましは意味がありません。当然……

 「ピシッ!!!」
 「ひぃ~~~~」

 ということになるのでした。

 「ピシッ!!!」
 
 「ピシッ!!!」

 「ピシッ!!!」

 「ピシッ!!!」

 結局、六回。僕はおばちゃんからシャレにならない餞別を貰い
ます。
 でも、餞別はコレだけではありませんでした。

 身なりを整えた私をおばちゃんは最後にもう一度膝の上に置き
ます。
 正直、お尻がヒリヒリしていて今はどこにも座りたくなかった
のですが、素直に従うと、おばちゃんは僕を見つめて満足そうな
笑顔です。

 「あんた、よく見ると可愛いね」
 その顔は今までの笑顔とは違っていました。
 素の顔というのでしょうか。作った笑顔ではなかったのです。
 そして、僕にこう言うのでした。

 「あんた、本当にもう二度とここにきちゃだめだよ。親御さん
が心配するからね」

 「はい」

 僕が素直に答えると……
 「いい子だ。あんた、私の息子にしたいよ」
 そう言って頭を撫でるのです。そして、ひとしきり僕の頭や顔、
肩や背中や太股なんかを愛撫してからこう言うのでした。

 「…………でも、もし、どうしてもこんな遊びがしたかったら、
一万円握って、ここへおいで……半日たっぷり可愛がってあげる
から」
 こう言って、走り書きのメモを握らせます。

 何の事はないおばちゃんの営業活動だったわけですが、ただ、
おばちゃんの言ったこの一万円、実は破格のサービス料金だった
のでした。

 「あっ、それから、それ要予約だから、必ず電話するんだよ」

 僕はおばちゃんのこの言葉を背中で聞いてその部屋を後にした
のでした。

 とにかく、その日はお尻が痛くて、総武線の電車はすいていた
のに座席には座らずじまいで帰ったのを覚えています。


***************(1)********
  

Appendix

このブログについて

tutomukurakawa

Author:tutomukurakawa
子供時代の『お仕置き』をめぐる
エッセーや小説、もろもろの雑文
を置いておくために創りました。
他に適当な分野がないので、
「R18」に置いてはいますが、
扇情的な表現は苦手なので、
そのむきで期待される方には
がっかりなブログだと思います。

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