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3/26 子守っ子、敬子の性春 <2>

3/26 子守っ子、敬子の性春 <2>

*)お灸の記述あまりありません。ごめんなさい。

 若奥様に沢山のお灸を据えられてしまったお仕置きから3月後、
私は中学二年になり、次男の明雄ちゃんが幼稚園に入園しました。
ということは本来なら私はここでお役ご免になるはずでした。

 子守というのは、女中さんたちと違って、昼間、一日中仕事を
していたわけではありません。たいていが幼い娘で、自分も主人
の家から学校に通わせもらい、その空き時間を利用して赤ん坊の
面倒をみるのが仕事だったのです。
 つまりは住み込みの新聞配達と同じようなアルバイト。

 でも、その子が幼稚園に上り、大人たちの手も掛からなくなる
と、やがて子守としての仕事がなくなり、普通はお暇が出て親元
に帰されることになります。
 つまり、首になるわけです。

 ところが、そんな子守の身分でありながら私は角田の家に残さ
れていました。
 若奥様が小間使いとして必要だからとお傍に置いてくださった
のでした。

 この変化。厳密に言うと雇い主が大奥様から若奥様に代わった
ことにはなるのですが、私の生活そのものは今までと何ら変わり
ありませんでした。

 依然として、私は若奥様の子供たち3人の面倒をみるのが仕事
でしたから、子供たちの着替えを手伝ったり、お風呂に入れたり、
食事をさせたり、玩具を片付けたりといった事が私の仕事でした
し、角田の家の中で一番身分が低いのもそのままでした。

 ただ、変わったこともありました。
 それは『学校の勉強』

 もともと、私と若奥様は主人と使用人の関係。つまり、他人の
関係ですから、主人である若奥様は私を学校に通わせていれば、
それ以上の事は若奥様に責任なんてありません。私の学校の成績
がどんなであってもよいはずでした。
 実際のところ、私の通知表には2と3しかなかったのです。

 ところが、私が若奥様の小間使いとなさった頃から、若奥様は
私の勉強に関心をはらうようになります。
 つまり、今までのような成績ではだめだと言い出すのでした。

 おかしいでしょう。
 私は、若奥様のおそばにお仕えするようになったといっても、
お子さんたちとは違うんです。角田家に雇われた使用人で、それ
も子守にすぎないのに、「勉強しろ」だなんて……

 でも、これは若奥様の厳命でした。
 そして、そのために家庭教師まで雇い入れたのです。

 若奥様は、私が寝起きする部屋の二階、本来は古着などが仕舞
ってある古い蔵の一室を綺麗に取り片付けて勉強部屋にすると、
そこに家庭教師の先生(三田村先生)を招き入れ、私に勉強させ
るのでした。

 期間は半年くらいでしたが、その間は学校から帰ると寝るまで
勉強、また勉強の日々です。
 それまで、本格的に家で勉強なんてしたことのなかった私には
1時間だって机に向うのは苦痛です。毎日、家庭教師と2時間も
勉強するなんて最初は信じられませんでした。

 しかも当時は勉強方法というのは今みたいに合理的じゃありま
せんから家庭教師だってスパルタです。ちょっとでも気の抜けた
態度をみせると授業の途中でも机にしがみついて先生が繰り出す
竹の物差しをお尻でしっかり受け止めなければなりませんでした。

 問題はそれだけじゃありません。
 時間の許す限り若奥様が私の様子を見に蔵へいらっしゃいます
から、こちらも気が抜けません。

 もし、はかどりが悪いようなら、その晩は寝る前に必ずお灸の
お仕置きが待っています。

 お尻の山に、ビーナスの丘に、尾てい骨……
 若奥様のお灸は容赦がありませんでした。

 いえ、いえ、まだあります。

 日曜日は三田村先生がお休みだからなんでしょうけど、土曜の
夜は『反省会』と称して若奥様からその週の成果に応じて特別な
お仕置きが与えられることになっていました。

 この時は、普段据えられているお尻のお山やビーナスの丘だけ
じゃありません。乳首の周りにも、お臍の中にも、そして若奥様
が『心棒』と呼ぶお股の中にも……
 出来の悪い子は涙なしには日曜日を迎えられなかったのです。

 『何で、子守の私が勉強しなきゃならないのよ!!おかしいで
しょう!!!』
 『あ~あ、ここから逃げたい。こんな処から逃げ出したいなあ』
 『そうだ、お父さん、お母さんの処へ帰ろう。事情を話せば、
きっと許してくれるよ』
 学校から帰る時はいつもそう思いながら小石を蹴っていました。

 でも、結局のところ一度も実家に戻った事はありませんでした。

 これはとても不思議なことなんですが、歩いているうち、お股
に据えられた心棒が私の足を実家ではなく角田の家の方へと向け
てしまうのです。

 実家へ戻ろうとした瞬間、お股が擦れて、『それはいけない事
なんだ』と感じるのです。

 どういう事かというと……
 お股に据えられた心棒は当然そこだけ火傷を負っていますから
歩くたびに微妙に擦れて感じるのです。痛いとか、痒いとかじゃ
ありません。普段は歩いても走ってもまったく気にならない程度
の感覚なのですが、『実家に帰ろう』と思い立った瞬間だけは、
火傷の痕が擦れると、『あ、ここにお灸!!』って感じてしまう
のでした。

 『あっ、ここに据えられたんだ!』って思い出す一瞬の小さな
刺激が、私を実家ではなく、苦難の待つ角田の家へと向わせるの
でした。

****************************

 あれは勉強を始めて四ヶ月目のとある土曜日の午後でした。

 その週は何だか気乗りがしなくて、月曜日早々、若奥様の見て
いる前で三田村先生に居眠りを注意され鞭のお仕置きをもらって
しまいます。

 その後も、学校の授業で欠伸は出るわ、返されたテストの成績
は悪いわ、今年10才になる長女の美咲ちゃんとは些細なことで
喧嘩をするわで、とにかく散々な一週間でした。

 ですから土曜日の午後は三田村先生が帰った後に若奥様からの
お仕置きが確実だったんです。

 『今日こそは実家に帰ろう』

 朝、角田の家を出る時は本心からそう思っていたのに、帰り道
は、やっぱり、心棒が私の足を若奥様の方へと向けてしまいます。
それは理屈では説明できない不思議な霊力でした。

 土曜の午後は学校から帰ると何時も2時から6時頃まで三田村
先生と一緒に勉強して、夕食のあとは、再び学校の宿題と三田村
先生からの課題をやらなければなりません。

 その時の私は子守ではありませんでした。まるで受験生の生活
だったのです。

 そんな私のもとへ、若奥様がハツさんを伴って階段を上がって
やってきます。
 その足音がどんなに怖かったか。時々猫が悪戯して階段を駆け
上がりますが、そんな猫の足音だけでも私の心臓は引きちぎられ
そうだったのです。

 もう何をやるかは、わかっていましたが、分かっていてなお、
正座した膝の震えが止まりませんでした。

 「あら、今日のお勉強は終わったのかしら?」

 「はい」

 「そう、よかったわ。今日は土曜日だし、今週の反省会をしま
しょうか」

 「はい……でも、あのう……一つうかがってもいいですか」
 私は勇気を振り絞って声を出します。

 「どうしたの?」

 「どうして、私は勉強しなきゃいけないんですか?」

 「どうしてって、勉強して悪いことなんて一つもないでしょう」

 「でも、私は子守ですし……そんなに立派な教養は……」

 「いらないって言うの?……随分もったいないこと言うのね。
……どうしたの?今日は?……勉強が嫌になったの?」

 「そういうわけじゃあ……」

 「じゃあ続けてちょうだい。三田村先生おっしゃってたわよ。
あなたのこと。『存外、頭のいい子だ』『あの子は掘り出し物だ』
って……『この分なら、もう一、二ヶ月もするとクラスの中でも
トップグループと肩を並べるだろう』って……もし、そうなって
くれたら私としても助かるわ」

 「どうしてですか?」

 「だって、これからあなたには、家の子たちの家庭教師もして
もらおうと思ってるからよ」

 「えっ!!!!」
 それはまさに青天の霹靂でした。

 「できませんよ。だって、私は子守なんですから……」

 「どうして?どうしてできないの。……できますよ。だって、
あなた子守なんでしょう。だったら、子供たちにお勉強を教える
のも子守の大事な仕事じゃなくて……」

 「そんなあ~~~だって、そういうのはお父様とかお母様とか
家庭教師の先生とか……もっと、偉い人が……」

 「そうじゃないわ、それとは別なの……あなたにはこれからも
色んな意味で『お姉さん』として家の子たちの面倒をみてほしい
のよ」

 「お姉さん?……子守のわたしが?」

 「そうよ、あなたに私の子供たちの模範になってもらいたいの。
……だって、あなたが一番の年長者でしょう」

 「えっ、?!……それは……そうですけど……」

 「あなたには、この間のことで、身体のあちこちにお灸をすえ
ちゃったでしょう……そのことでは大奥様も、ちゃんと責任とる
ようにっておっしゃられてたわ。だから、私、責任をとることに
したのよ。私が嫌い?」

 「そんなこと……あれはもう過ぎたことですから」

 「あらあら、あなた随分潔いのね。……でも、あのお灸の痕は
生涯消えないわよ」

 「えっ!……」
 私はその瞬間までそんな事も知りませんでした。

 「それで……『あなたを成人する迄ここでお預かりしたい』と
申し出たら……今日、高井のお父様から正式に『お願いします』
というご返事を頂いたわ……これよ」
 若奥様はその手紙を私の前に広げられます。

 「……!!!……」
 私は目が丸くなります。それは見覚えのある父の筆跡。正直、
全身が震えました。

 『中学生にもなった子どもの意向を無視して、大人たちだけで、
そんな人生の大事を勝手に決めていいのでしょうか』
 私は思いました。

 でも、それがこの時代の常識であり現実でした。だって中学生
というは大人じゃありません。子供なんですから、どう育てるか
は親の自由だったのです。

 まだ上の空でいる私の耳元で若奥様が言葉を続けます。

 「ただ、あなたの場合……うちの子たちより年長には違いない
んだけど……今のままの成績じゃあ、ちょっと頼りないのよね。
だから、こうやってお勉強してもらってるの。……わかった?」

 「………………」
 あまりに無茶な話で、私は声がでませんでした。

 ただ、この時になって初めて、私がなぜこの家に残されたのか、
なぜ自分がこうやって勉強させられているのかを知ったのでした。

 でも、私に対する補償というだけなら他にも方法はあるはずで、
若奥様がなぜそんな手間とお金の掛かる道を選択したのかまでは
教えてくださいませんでした。


 「さてと……それじゃあ、今週の反省会といきましましょうか
……今週はどんなことがあったかしら……」

 若奥様が居住まいをただし、私の様子を細かく記した閻魔帳と
呼ばれるノートのページを捲り始めます。
 これからが今夜の本題なのですが……

 「……………………」
 私は今聞いたお話のせいで若奥様が取上げる数々の罪状が耳に
入りませんでした。

 だって、父にさえ見捨てられた気分になってる私にすれば……
 『今夜はたっぷり絞られる』
 それだけ分かっていれば十分だったのです。

 実際、その夜、若奥様からいただくお仕置きは、明雄ちゃんと
映画館ではぐれてしまったあの日のお仕置きより、さらに厳しい
ものだったのです。

***************************

 「どうしたの?今週は、随分と調子が悪かったみたいだけど、
何か心配事でもあったのかしら?」

 「別にそういうわけじゃ…」

 「ならいいんだけど。何かあるのなら、すぐ私に言って頂戴ね。
あなたは高井のお父様からお預かりしてる大事な娘さんですもの。
お返しするまでは、私がお父様お母様の代わりなの。何でも相談
して頂戴ね」

 若奥様の言葉は、『それだけあなたの事を大事に思ってますよ』
という当時の挨拶言葉ですから本気にする人はいません。むしろ、
『お母様の代理として愛の鞭もありますよ』という脅し文句でも
あったのです。

 「……えっと」

 「ん?何かあるの?」

 「いえ……水曜日の夕方……美咲ちゃんと……」

 「あ~喧嘩になっちゃったあの事ね……でも、あれはあなたが
心配しなくてもいい事だわ。だって、あれはあの子が悪いんです
もの。あの子、最近生意気が過ぎるものだから……あの日新しく
心棒を据え直したの」

 「えっ、また」
 私は思わず声が出てしまいました。
 私は美咲ちゃんが以前心棒を据えられたところを見てしまいま
したから……

 「だから少々むくれてたのよ。そのうち収まるわ。気にしない
で……『今度そんな顔したら焼きごてですからね』って脅したら
さすがにおとなしくなったわ」

 私は若奥様の『焼きごて』という言葉に反応してしまいます。
思わず両手で自分の二の腕を擦って寒そうな素振りをしますから
それが気になったのでしょう。

 「どうしたの、怖い顔して?……ああ、焼きごてのこと?……
驚いたのね?……滅多にやらないけど、でも、こういう事もある
んだってのを教えておかないと子供はすぐにつけあがるから……
お灸が効かなくなったら親が次に使う手なのよ」

 「…………」
 さらに、私の顔が青くなっているのを一瞥してから……

 「別に、あなたに試すつもりはないけど、見てみます?」
 若奥様は私を目の前にしてイタズラっぽく笑うと、ハツさんが
持ち込んだお仕置き道具の中から目的のものを探し出します。

 それは取っ手の付いた金属の棒のような物が二本でした。
 一本にはループ状に編みこまれた弾力性のある細い針金が20
センチくらい取っ手の先端から伸びていますし……もう一本は、
お仏壇にあがっている蝋燭ほどの太さのものが15センチくらい
やはり取っ手に取り付けてあります。
 いずれも見た目はハンダ鏝のような形をしていました。

 「これを十分に焼いておいて、お尻の穴とおしっこの穴に入れ
るの。最初はガイドカバーが付いているから平気なんだけど……
ガイドを引き抜いた瞬間、ギャーってことになるわけ」

 想像するだけで鳥肌、目が眩んで気絶しそうでした。
 それでも、女の子ってのは仕様のないもので好奇心だけは沸き
ます。
 「それって、やっぱり火傷させるんですよね?」
 恐る恐る尋ねてみると……

 「そうよ。理屈は心棒と同じ。火傷が完全に治るまではそこが
擦れて微妙に感じるから、罰を受けたことを簡単には忘れさせて
くれないの」

 「じゃあ、ウンチのたびに……」

 私は恥ずかしくなって途中でやめてしまいましたが、若奥様は
あっけらかんとして……

 「そうよ。最初の一週間は毎日お医者様に自分の恥ずかしい処
を見せてお薬を塗ってもらわなきゃならないし、完全に治るまで
はウンチやオシッコをするたびに思い出すことになるわ。特に、
最初の数日はトイレに行くたび泣くほど痛いわよ」
 若奥様は悪魔チックに笑います。

 「私も一度だけ親にやられたけど、そのあまりの恐怖に暫くは
怖くて親のそばにも寄りつかなかったくらいだもの。……お互い
がよほど強い信頼関係で結ばれていないとやっちゃいけないこと
だわね」

 「…………」
 私はそんな話、どんな顔をして聞いていたんでしょうか。
 ひょっとしたら、よだれを垂らしていたかもしれません。
 女の子って自分に関係のない不幸な話が大好きな人種なんです
から。

 「ただ良いこともあるのよ。場所が場所だけに傷が目立たない
でしょう。らそれだけは助かったわ」

 「…………」
 私はあまりのことに二の句がつげません。
 と同時に、若奥様はどうしてこんな悲惨な思い出を明るく話せ
るんだろうと、自分の事は棚に上げて思うのでした。

 すると、そんな私を見て、若奥様はこうも付け加えるのです。
 「でもね、不思議なもので、私がこれによって父や母をずっと
拒否し続けたかと言うと、それがそうでもないの。3日後には、
もう以前と変わらない生活に戻ってたわ。親子ってね、そういう
ものなのよ。絆が強ければたいていの事は乗り越えてしまうもの
なの。あなたにはそこまでは求めないつもりだけど、これからは
私との関係を単にお給金をもらって働いているだけの関係だとは
思わないでね」

 「はい、若奥様」

 それは、『あなたは他の従業員とは違う特別な存在』いう褒め
言葉(お世辞)だと思ってあまり深く考えず頷いたのでした。
 すると……

 「若奥様ねえ…そんな他人行儀な呼び方はこの際やめましょう。
私と二人きりでいる時は、若奥様じゃなくて、『お母さん』って
呼んでほしいわ」

 「(えっ!)」
 それは別の意味で全身の毛穴が開く驚きでした。

 「私はあなたを本当の娘だと思って育てたいの。そういうのは
嫌い?」

 「……そういうわけでは……」
 私は困惑します。正直、そんなの迷惑です。私には正規のお父
さんもお母さんがいるのですから。
 でも、「イヤです」とも言えませんでした。若奥様の申し出を
むげに断ることが何だか自分の立場を悪くしてしまうな気がして
……うやむやのまま話は進んでいきます。

 「もし、あなたがよければそうして頂戴。今、この家を取り仕
切ってるのは私だもの。私に着いてる方が何かと安心よ」

 確かに大奥様が病気がちな今、奥向きの実権は若奥様が握って
いらっしゃるみたいでしたから、その権力に上手にすがるのが、
女の子としては正しい道なのかもしれません。

 そんなことを漠然と考えていると、次には、またドキッとする
ような言葉がやってきます。

 「……その代わり、うちの子と同じように、お勉強もちゃんと
やってもらうし、お仕置きだってちゃんと受けてもらいますから
ね。そこのところは覚悟しておいてね」

 「はい」
 私の小さな一言でどうやら話は決まったようでした。

 そこで、素朴な疑問をぶつけてみます。
 「どうして、私をそんなふうになさりたいんですか?」
 私は恐る恐る尋ねてみました。
 すると……

 「どうしてって、あなたが好きだからよ。それじゃいけない?
あなたは、私好みの愛くるしい顔で、気立てもいいし、何より、
素直なところがいいわ。だから私の手元におきたいの。……それ
だけよ。他に何か理由が必要なのかしら?」
 若奥様はしらっとしておっしゃいます。
 私としてはそれを信じるしかありませんでした。

 「さあ、無駄話はこれまで……決まりごとを片付けてしまいま
しょう」

 「きまりごと」
 私が小さくつぶやくと、若奥様…いえ、お義母様は笑って……

 「あら、忘れちゃった?……土曜日の夜は何をするんだっけ?」
 お義母様はすでに椅子に腰を下ろすと、その膝を広く空けて私
を待っています。

 唾を一口飲み込んで……あとは、嫌も応もありませんでした。
 すぐにその膝にうつ伏せになります。

 「パン、パン、パン、パン、パン、パン、パン、パン、パン」
平手でスカートの上から軽やかにスパンキング。
 「あなたは素直でやりやすいわ」
 お尻を叩かれながら、お褒めの言葉を頂きました。

 「パン、パン、パン、パン、パン、パン、パン、パン、パン」
 次はスカートをあげて、ショーツの上から……

 「美咲もあなたみたいだといいんだけど、あの子の時はこうは
いかないわ。あの子ったら、大して痛くもないくせに大仰に騒ぎ
立てるんだから……堪え性がないっていうか……女の子のくせに
みっともないって言葉を知らないのかしら」

 「美咲ちゃんは、まだ小学生ですもの。お義母様に甘えてるん
です」
 私は自分の立場もわきまえず思わず口が滑ります。
 実際、私へのスパンキングは始まったばかり、お義母様の平手
の下にいても、私のお尻にはまだ余裕があったのでした。

 「パン、パン、パン、パン、パン、パン、パン、パン、パン」
 「そうかしら?」
 お義母様は一旦否定しますが、思い直して……
 「そうかもしれないわね。親子だから……とにかくそんな時は、
わざと最初からスナップを効かせて泣かせるの。……でも、その
点、あなたは偉かったわよ。ここに小4の時にやって来て、すぐ
に私がお仕置きしたけど、必死に堪えて泣かなかったもの。……
あれには感心したわ」

 「そんなこと……その時は気が張ってたから……」
 私はお義母様の褒め言葉に照れてしまいました。

 「パン、パン、パン、パン、パン、パン、パン、パン、パン」
 「同じ小4でもえらい違いね。……あなたを見習ってあの子も
奉公に出してみようかしら……」
 お義母様から軽口も飛び出します。

 でも、さすがにこの頃になると、私のお尻も悲鳴を上げ始めて
いました。
 そして、そんな頃になって、最後の砦が取り払われます。

 「ピシッ、ピシッ、ピシッ、ピシッ、ピシッ、ピシッ、ピシッ」
 ショーツが取り払われ、お義母様の平手が素肌へじかに当たる
ようになると、お尻を叩く音も乾いた音へと変わり……。

 「ピシッ」「あ~」
 「少しは効いてきた?」

 「ピシッ」「いっ~」
 「それでこそ、こちらもやりがいがあるというものだわ」

 「ピシッ」「ひぃ~」
 「はいはい、わかりました。痛いのねえ。可哀想ねえ。でも、
あなたが悪いのよ」
 お義母様はわざと幼児に語りかけるように私に話しかけます。

 「ピシッ」「あああっ」
 「ほら、もう少しだから我慢しなさい。ほらあ両手をバタバタ
させないのよ。……ハツさん、この子の両手押さえてやって……」

 「ピシッ」「いたぁ~」
 「痛い?堪えたかしら?…でも、だからこそのお仕置きなのよ。
堪えないお仕置きなんてやっても仕方がないでしょう」

 「ピシッ」「ああああだめえ~~」
 「だめえ~~って何がだめなの?…やらなきゃだめえ、なのよ。
……やらなきゃ、お仕置きは終わらないわ」

 「ピシッ」「いやあ~~~」
 「よし、よし、いいわよ。じゃあ、やめてあげる」

 最後は両足をバタつかせ歯を喰いしばり、介添え役のハツさん
の両手をしっかりと握りしめて耐えている私に、やっとお許しが
出ました。

 「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ」
 ハンドスパンキングの嵐が収まってからも、私は荒い息をつき、
しばらくはそのままお義母様の膝の上で寝そべり続けます。
 すると、その耳元でハツさんが……

 「若奥様、お鞭は何にいたしましょう」

 とたんに、頭の中がカアッとなりますが……
 「いいわ、今日は……鞭はいいの。それはもっと重大な事でも
あればその時に使うことにするわ。……今日は、この子とは親子
でいたいの。肌を合せていたのよ。わかるでしょう」

 「では、お浣腸とお灸の方も……」

 「いえいえそれはそれでお願い。罪を犯した子を更生させたり
怠けてる子を励ましたりするのは母親の役目ですもの。それは、
たっぷりとこれからやってあげるつもりよ」

 ともかくも、お尻叩きのお仕置きが終わり、お義母様は膝の上
に乗る痛んだ私のお尻を撫でながら、ハツさんと更なるお仕置き
について話をしています。

 ところがそんなさなか、お義母様はふいに、さも今気づいたか
のようにして、こうおっしゃるのでした。

 「あら、あなた、こんな処に蝶々の痣があるじゃないの」

 お義母様は私の太股にある痣を見つけてこうおっしゃいます。
 でも、これはおかしげなことでした。

 だって、これまでだって何回となく私はお義母様の前で裸にな
っています。お仕置きで、お風呂で、ベッドで……
 そんな時、私の痣にお義母様が気づかないはずがありません。
 なのになぜ今になってこんな目立つ痣に初めて気づいたみたい
なことをおっしゃるのでしょうか。それが理解できませんでした。

 「あなた、この痣は怪我かなんかでついたのかしら?それとも
生まれつき?」
 「生まれつきです」
 「そう、生まれつきなの……」
 お義母様の手はいつしかお尻から太股の痣へと移っていました。

 「あなた生年月日は?」
 「昭和30年、9月15日です」

 「そう、9月15日なの…………お父様、お母様は可愛がって
くださったの?」
 「はい……でも、うちは兄弟が多いものですから……」

「そう、それでうちに来たの……まだ幼い頃から親元を離れて
他人の家で暮らすなんて大変なことだわ。……私でよければ甘え
てちょうだい。お仕置きの時だって我慢なんてしなくていいの。
もっともっと大きな声で泣いていいのよ。うちの美咲みたいに…」

 お義母様はそこまで言うと、ショーツを上げスカートを直して
私を抱き起こします。
 そして、お互いがにらめっこするように私を膝の上に乗せ直す
とこう続けるのでした。

 「そんなこと急に言われたって、中学生には無理かしら?……
プライドが邪魔しちゃう?……」
 お義母様は私の前髪をかきあげます。

 「……でもね、子供は泣いたら泣いた分だけ『良い子、良い子』
って頭を撫でてもらえるの。なぜだかわかる?」
 お義母様はそう言って私の頭を撫でました。

 「…………」

 「愛されてるからよ。……お仕置きされる子って無視されたり
虐められてる子とは立場が違うの。……あなたは、愛されてる子。
そんな愛されてるあなたが、愛してくださる人に、つまらない我
を張っては損だわ。その胸に飛び込んで、自分のすべてをさらけ
出さなきゃ。……そうでなきゃ、愛は得られないわ」

 「…………」
 私はどこかむきになったお義母様がおかしくて、思わず微笑み
ます。

 「あら、今、笑ったわね、わかってくれたみたいね。そりゃあ、
今の私じゃ不満でしょうけど、私も、いずれはあなたのお父様や
お母様と同じ立場に立ちたいと思ってるの。……どんなに痛い目
にあっても、どんなに恥ずかしい事をされても、私に着いて来て
くれるようになって欲しいの」

 「…………」
 私はお義母様の言葉にポッと顔を赤らめました。こんな大きな
商店の奥様が私なんかを娘として扱ってくれるなんて……たとえ
言葉だけでも嬉しかったからでした。

 「わかってくれたみたいね」
 お義母様も満足げです。

 子守っ子なんて学校が終わるとすぐに帰って仕事をしなければ
ならない身の上ですから、普通の中学生のように同年代の友達が
出来にくいのです。そんな中、若奥様は身分こそ違え私の唯一の
友だちだったのかもしれませんでした。


 「さて、次はお浣腸……そこにハツさんが布団を敷いてくれた
から、寝てくれる」

 お義母様の命令、この期に及んで逆らうつもりもありませんで
した。
 「はい、お義母様」

 白いシーツの掛かった薄い布団に仰向けになると、ハツさんが
すかさずスカートの中に手を入れてショーツを引きずり出します。
 それを足首にぶら下げて、両足が高々と持ち上げられます。

 「恥ずかしい?」

 お義母様に尋ねられて、私は反射的に頷きます。

 「…………」

 でも、それは『女の子なんだからこんな反応しなきゃ』という
見栄なのです。
 慣れたせいだからでしょうか、周りが女子だけだからでしょう
か、この時までは、こんな格好でいてもあまり恥ずかしいという
気持が起こりませんでした。

 「今日は、お薬だけ140㏄。ちょっと大変だけど、それでも
10分だけは我慢よしてね」
 お義母様はそう言いながらガラス製のピストン式浣腸器で私の
お尻を責め立てます。

 50㏄浣腸器で三回。お薬を入れてる段階から、もうトイレに
行きたくなるほどでした。

 「あっ…………」
 声には出しませんが、オムツを当て取られている最中から顔は
歪みます。
 それなのに、お義母様はこうおっしゃるのでした。

 「この間はお尻に栓をしてあげたけど、今回は自分の力で頑張
ってね。そのくらい中学生なんだからできるでしょう」

 「えっ!」
 ショックが鳥肌を伝わって全身に行き渡ります。

 「もちろん粗相してもいいのよ。お母さんが片付けてあげるわ。
でも、いきなり出しちゃったらお薬が効かないし、何より女の子
は恥ずかしいって思う気持を忘れたらいけないわ」

 お義母様は優しい言葉でしたが、
 「そんなことしません」
 私は泣きそうな顔で答えました。

 「そうそうその調子。女の子は我慢する事を忘れてはいけない
わ。……でも10分過ぎたら、はめてるオムツにそのまま出して
しまってね」

 「えっ、……」
 その瞬間、全身にもの凄い悪寒が走りました。

 「どうしたの?遠慮しなくていいのよ。…どのみち私が着替え
させてあげるんだから……」

 「えっ、おトイレは……」
 甲斐のないことですが、訊いてみます。
 でも……

 「だから、構わないわ。せっかくあなたが私の子どもになって
くれたんですもの。最初はオムツぐらい替えてあげるわ。………
ん?……どうしたの?……イヤなの?…そうかもしれないわね、
女の子というのは痛い事より恥ずかしい事が大の苦手ですものね。
……でも、これは私の子どもとしての義務だから仕方がないわね」

 「どういうことですか?」

 「どういうことって?お母さんがこんなふうにお仕置きします
って言ってるのよ。娘が『イヤ』って言っちゃいけないでしょう。
お母さんの愛はしっかり受け止めなくちゃ……そうじゃなくて?」

 愚問でした。でもその時から、それほどでもなかった気持が、
『とっても恥ずかしい』という気持になるのでした。


 薄い布団の上でオムツが当てられると、私の体はすでにまった
なしの状態になっていました。

 「さあ、いらっしゃい」
 お義母様は私に膝の上へ来るように促しますが、すでにそれも
無理な状態でした。

 「どうしたの?爆発しちゃうかしら?自分では起き上がれなく
なっちゃった?」
 お義母様は仕方なく私を膝の上へ抱き上げ、私はすがるように
その身体に抱きつきます。

 「あっ……あああん……いやあ……はあ、はあ、……苦しい…
…だめえ~~出る、出ちゃう……あああぁぁ……ごめんなさい」

 全身に悪寒が走り、鳥肌がたって、唇が震えます。涙がこぼれ、
……目の前にいきなり現れたお義母様の乳首に噛み付きました。

 理性のない身体。すがれるものは何でもすがりたかったのです。

 「あぁぁ~~~いや~~~~苦しい~~~もう、だめえ~~」

 『悶絶』ってこういう時のためにあるんだと思います。10分
という時間がこんなにも長く感じたことはありませんでした。
 そして、お義母様からは……

 「よく頑張ったわ。さすがに私の見込んだ子だけのことはある
わね。女の子は貞節が大事ですもの……さっ、でももういいわよ。
全部出しちゃいましょう」

 「……(そんなこと言ったって)……」
 私の耳にお母さんの言葉は届いていました。でも、だからって、
ここでお漏らしなんて……
 私は残った力を振り絞って頑張り続けます。

 すると、今度は……
 「だめよ、女は貞節も大事だけど、諦めも大事なの。青い果実
でもがれたら『すっぱくて食べられない』って捨てられるけど、
だからといってあまりに熟しすぎると誰からも手を出してもらえ
ないわ。果実も女もそれはおんなじ。熟しきったところで捥いで
もらうのが一番よ。ほどよいところで諦めて、恥をかいて、次の
ステップに進まなきゃ」

 私にお漏らしするように催促します。
 でも、だからって、『そうですか』というわけにはいきません
でした。

 しばらくは……
 「そんなのいや、いや、だめ、恥ずかしい、だめ、だめ、……
トイレ行きたい、ごめんなさい、だめ、だめ、だめなんです」
 と、お義母様にしがみついたまま必死に訴えましたが……

 「しょうがないわね」
 お義母様がこうおっしゃるので、おトイレを許してもらえるの
かと思いましたが……

 私は再び薄い布団の上に寝かされます。もちろん元気な体なら
そのままトイレに立つところですが、この時はすでにそんな力も
残っていませんでした。何しろ、お尻以外にちょっとでもどこか
に力をいれたら爆発しそうだったんですから。

 「さあ、うんちゃん、出てきてねえ……すっきりしましょうね」
 妙ちきりんなおまじないの言葉をかけながら、お義母様が私の
下腹をさすり始めます。
 すると、もう1分ともちませんでした。

 「あああああああああ」
 その瞬間、まるで高い崖から身を投げた時のような虚脱感が、
身体全体を包みます。
 その変化は、お義母様だって分かりますから……

 「大丈夫よ。大丈夫。泣かないで、あなたが悪いわけじゃない
んだから……」

 気がつくと、びちょびちょのオムツを穿いて、私はお義母様の
膝の上にいました。

 「寒い?……そうかもしれないわね、女の子の大事なプライド
が飛んでいっちゃったんですものね。……でも、私の前だけでは
身も心も裸でいて欲しいの」

 「……どうしてですか?」
 私は涙声でつぶやきます。
 すると、一拍おいて、お義母様から強い言葉が返ってきました。

 「それは、私があなたのお母さんだからよ」

 「えっ!?」
 私がまごついていると……

 「大丈夫よ。これは私たち二人の秘密……外には漏れないわ」
 お義母様は、ご自分の唇に人差し指を当てると微笑みます。

 私はこの時初めて『この人、ひょっとして私の本当のお母さん
なのかしら』などと、馬鹿な事を思ってしまったのでした。

 「さあ、キレイ、キレイしましょうね」

 お義母様に翻弄され続けている私は、薄い布団の上で赤ちゃん
さながらにオムツを取り替えてもらいます。
 すると、不思議なことが起こりました。最初は屈辱感で流して
いたはずの涙が、いつの間にか、喜びの涙に変わっていたのです。

 「…………」
 私は笑い出しそうになる自分を必死に抑えていました。
 だって、こんな状況で気持がいいなんて顔をしていたら、変態
ですから。

 でも……抑えても抑えても素直な喜びがこみ上げてきます。

 とうとう抑えきれなくなった私の顔が、一瞬笑ってしまうと、
お義母様が目ざとく見つけて……

 「あら、ご機嫌ね。赤ちゃんの時以来ですものね、こんな事は
……気持いいでしょう。女の子は、普段、厚い鎧を着てるから、
たまに脱いだ時はとても気持がいいものなのよ」

 私の顔を間近に見ながら微笑返してくれるのでした。

 お義母様は私の股間を何枚もの蒸しタオルでキレイにすると、
一枚の白いショーツを穿かしてくれました。
 でも、それは短い時間私のお尻を保護してくれただけ。また、
すぐに脱がなければなりませんでした。

 その後、幼児に返ってひとしきりお義母様のお膝で甘えていま
したが、やがて、私の耳元でお義母様が囁きます。

 「さてと、それでは仕上げにかかりましょうか」

 『仕上げ』それはもちろんお灸でした。

 今は肌に灸痕が残るようなお仕置きをする家庭はほとんどない
かもしれませんが、私の子供時代、『お灸』は、どうにも言う事
をきかない悪童やお転婆への最終兵器として親の間で重宝されて
いましたから、身体検査の日など、お友だちの背中に新しい灸痕
を見つけることも、そう珍しい事ではありませんでした。
 ですから、子守の私が、親代わりである若奥様にたとえお灸を
据えられたとしても、それは当時の基準でなら大騒ぎする事では
なかったのです。

 ただ若奥様(お義母様)の場合は身体の色んな処に数多く据えら
れますから、据えられる側はたまったものではありません。
その熱さに耐えるのは、それはそれは大変なことでした。

 当然、『お灸』と言われて私の顔にも緊張が走ります。
 その緊張した顔に向って、お義母様は最初に……

 「心棒の調子はどう?役に立ってるかしら?」
 と、尋ねられたのでした。

 「あっ……はい」

 「それはよかったわ。人間、喉元過ぎれば熱さを忘れるものよ。
どんなに厳しいお仕置きで叱っても、今が何ともなければ、再び
過ちを犯してしまうものなの。女の子は特にそう。誘惑に流され
安いの。……でも、こうしておけば普段は感じないほんの微かな
抵抗感があなたの心にブレーキを掛けてくれるわ。……わかるで
しょう。火傷の皮膚が擦れるその感じって……」

 「…………」
 私は悔しいけど頷きます。

 「しかも、それを感じているのはあなただけだから。誰からも
気取られる心配がない。それも良い事だわ」

 「これ、ずっとこうなんですか?」
 私は心配になって尋ねてみました。
 すると……

 「心配なの?………そうね、人にもよるけど、二、三年は歩く
たびに抵抗感が残るはずよ」

 「そんなに……」

 「仕方ないわ。だって、あなたは、その時はまだ子供でしょう。
戒めはまだまだ必要ですもの」
 お義母様は笑います。
 そして、私を安心させるように正座した膝の上で抱き直すと、
頭を撫でながらこうおっしゃるのでした。

 「大丈夫よ。生涯、ずっとこのままじゃないから。たいては、
四、五年もたてばまったく感じなくなるものなの。あなたが大人
になる頃には抵抗感もなくなってるわ…………ん?どうしたの?
……あらあら、そんな深刻な顔しないで……大丈夫だって………
私は、大事な娘を片端になんかさせないわ」

 私は、お義母様の胸の中に顔を埋めて、お義母様を信じるしか
ありませんでした。

 「さあ、お尻からよ。準備して……」

 私はお義母様の言葉に反応して、その膝にうつ伏せになって、
お尻を高く上げます。
 今までなら準備はこれだけでした。
 ところが……

 「敬子さん。あなたも、もう中学生なんだし、小学生気分で、
何もしないで私の膝にふんぞり返ってるだけではいけないわね」
 こう言われたのでした。

 「????」
 私は、どういう意味かを考えます。
 そして、自分なりに出た結論に従って、お義母様の膝を下り、
お義母様の目の前で正座すると、三つ指をついて……

 「お灸のお仕置きをお願いします」
 と、頭を下げたのでした。

 すると、お義母様はその時間を楽しむかのように私の顔を見て
微笑んでいらっしゃいましたが……やがて……

 「やはり、あなたに目をかけたのは間違いじゃなかったみたい
ね。私は、だからあなたが好きなのよ。他人が、今自分に対して
何を望んでいるかを察知できることは、女の子にはとても大事な
資質なの。あなたはそれを持ってるもの」

 どうやら私は褒められているみたいでしたが、だからといって
お仕置きが免除されたわけではありませんでした。

 「さあ、いらっしゃい」
 お義母様は正座したお膝の上を右手で叩きます。

 「はい」
 私は再びお義母様のお膝の上にうつ伏せになると、そこでお尻
を高くしますが、その際、自らスカートを捲り、ショーツを下げ
て、むき出しのお尻をお義母様に捧げたのでした。

 すると、『では、お言葉に甘えて……』というわけではないの
でしょうが、沢山の艾がお尻一面に乗っかるのが分かります。

 「えっ!?」
 でも、驚いている暇はありませんでした。

 「うっ……ああああああああああああああ」
 艾に火がつけられたのと同時に私の身体は硬直します。

 覚悟はしていましたが、それを、どう表現していいやら……
 とにかく、艾が一面に乗ったお尻が、一気に火の手に包まれた
んですから、これはもう、かちかち山のタヌキです。
 それは声にならない熱さでした。

 私は何度も拳で床を叩き、炎熱地獄の苦しみを表現しましたが、
もちろん許してはもらえませんでした。

 でも、このお灸、数こそ多いものの、全て寸止めだったのです。
 火が回って、皮膚をほんのちょっぴり焼いた瞬間、お義母様が
火のついた艾を指の腹で押し付けて消してまわるのです。

 おかげで、お仕置きの後に『きっともの凄いことになってる』
とばかり鏡で自分のお尻を見てみましたが……赤くはなっていた
ものの、そこに火傷の痕が残ることはありませんでした。

 きっと、そこは大人になって目立つと可哀想だからという配慮
だったんでしょう。
 ただ、どこもそうやって配慮してくれるわけではありません。
 尾てい骨にはそんな情けはかけてもらえませんでした。

 骨に近いその場所は火が回ると頭の天辺まで衝撃が走ります。

 「ひぃ~~~~~~~~」

 一度火をつけられたら、それが消えるまで、歯を喰いしばって
頑張るしかありません。
 私は、またお漏らししないか、それが心配で仕方がありません
でした。

 「大丈夫ね、今回は漏らしてないないわ」
 お義母様の言葉に私の顔はカァーとして赤くなります。
 でも、とにもかくにも第一関門突破でした。

 さて次は、お義母様が私のブラウスを捲り上げ。両腕を羽交い
絞めにする中で、オッパイ(乳頭)の周りに小さい艾を五、六個
貼り付けてと、お臍の中にも据えられます。
 これはハツさんの担当でした。

 「あらあら、あんた、まだ男の子みたいだね」
 お線香を片手に近づいてきたハツさんにそう言われても、私は
無表情でした。顔を赤らめたいところですが、今は、それどころ
ではありませんでした。

 「でも、気にすることないよ。胸の小さい子の方が頭がいいっ
ていうからね」
 ハツさんはそんな慰めを言いながら、私の乳首をいじります。

 「あっ……いやあ……いや……あ~あ~……だめえ……うっ」

 ハツさんの指は、私を興奮させるのに十分なほど執拗でしたが、
幼い私に、『やめてください』という勇気がありませんから、私は
長い時間その拷問に耐えなければなりませんでした。

 もだえる身体を必死に押し殺して、頑張っていると……
 「じゃあ、いくよ」
 ハツさんの声がします。

 そして、それはすぐでした。
 「あっ!!!!」

 胸のお灸は『小さな小さな艾が一瞬だけ燃えて消えた』という
だけのことでしたが……次の瞬間、私の顔色が変わります。

 私の洞窟の中に雫が落ちているのが分かるのです。

 「!!!!!」
 大人になれば『なんだ、そんなことか』って思うことですが、
中学生の私にとって、それはとても恥ずかしいことでした。

 今の子なら中二になれば当然ブラジャーをしていると思います
が、私の中学時代は総じて発育が遅かったせいか、クラスの全員
がブラをしているわけではありませんでした。特に私の場合は、
クラスの中でもペチャパイの方でしたから、日常生活では必要が
ありません。
 でも、そのせいで乳首がシャツに擦れて、ちょくちょく不思議
な気持を感じることがありましたが、その大きな波が、今、ハツ
さんによってもたらされたものだったのです。

 そして、お臍も……
 ハツさんが、まず私のお臍の下にある小さな芽を悪戯します。

 「あああああ、だめえ~~~~いやあ~~~そこいやあ~~」
 私の声にならない恥ずかしい声が響くなか、今度はお臍の中に
大きな艾が……もちろんこんな場所ツボなんかじゃありません。
でも、お仕置きとしてのお灸は治療じゃありませんから、子供が
怖がる処、熱つがる処、痕が目立たない処が大人達の候補でした。

 「あっ、熱い~~~~」

 今度は、目の前に見える艾も大きくて燃えてる時間も長いです
から、そりゃあ怖いです。おかげで寸止めにも関わらず胸のお灸
以上にねっとりとした雫が私の洞窟の中に溢れ出てきたのがわか
ります。

 「……(また……何なの、コレ、血?オリモノ?病気?)」
 少し落ち着いた私は、自分の身体に起こった変化に困惑します。
 でも、恥ずかしながら、その時はそれがどんなものなのか……
どうしてそうなったのか……まだ何も知りませんでした。

 ポルノ雑誌など、猥雑な情報が子供の目に飛び込む機会が少な
かった当時、子供が性に関して知ってる事といえば、学校で習う
生理と病気の話だけ。
 『女の子が感じるというのは、どういうことなのか』
 そんなこと学校の教科書のどこにも書いてありませんし、友達
も知りませんでした。

 今の人は信じられないでしょうけど、SEXって具体的にどう
するのかを知ったのは高校生になってからなんです。
 ですから、親のお仕置きが、自分の性を目覚めさすきっかけに
なった子は多くて、その快感を求めてオナニーに走る子も男の子
だけでなく女の子だって決して少なくありませんでした。

 「最後は、お臍の下ね。ここはお臍と違って目立ちませんから
ね。最後まで熱いのを我慢してもらいますよ」
 お義母様は私を羽交い絞めにしたままで残酷に宣言します。

 その後はハツさんが準備をしました。
 そこは半年前にも据えられた場所。でも、すでに下草が新たに
はえ始めていましたから、再びハツさんに剃り上げてもらいます。

 スカートが捲り上げられ、ショーツを下ろされて、黒こげのお
臍から下はすべて丸見えです。
 でも、もうその頃になるとそうした恥ずかしさには慣れてしま
っていました。

 そんな私の厚顔にお義母様は気づいたみたいでした。
 ビーナスの丘に円錐形の艾が並べられても冷静な顔でいられる
私の様子は抱いているお義母様が何より一番よくわかっておいで
だったのです。

 そこで……
 ハツさんが九つ並んだ艾にお線香の火を近づけようとしますと
……

 「あっ、待って……」
 お義母様はハツさんの手を止めてしまいます。

 そして……
 「敬子ちゃん、あなたももう中学生なんだし、いつまでも大人
の手を煩わせていてはいけないわ。最後ぐらいご自分でなさいな」

 「えっ、?」
 鈍感な私は当初お義母様の言葉の意味がわかりませんでした。
 それでも、ハツさんに火のついたお線香を手渡されれば、その
意味を理解します。

 「えっ!!!」
 私は二度びっくりです。最初は意味が分からなくて……そして、
意味がわかってまたびっくりでした。

 「わかったかしら?……あなたは子供と言ってももうそんなに
幼くないの。自分の始末は自分でつけることを覚えてもいい頃よ」


 お義母様は穏やかにおっしゃいますが、それって、私に自分で
目の前の艾に火をつけなさいとおっしゃっているわけで……

 「…………」
 私は思わず固まってしまいます。

 もちろん、誰が艾に火をつけても肌に伝わる熱さに違いなんて
あるはずがありませんが、やはりその原因を自分が作るとなると、
話は別、お線香を持つ手が震えてきます。

 そんな勇気のない私を見ていたお義母様がこうおっしゃるので
した。
 「時間はあるわよ。私もハツさんも気は長い方だから……でも、
『このまま何もしなければ、そのうち諦めてくれるんじゃないか』
なんて思っちゃいけないわ。私たちはたとえ徹夜してもあなたの
勇気を待ってるんだから……」

 私は進退が窮まってしまいました。

 たしかに、これまでだって沢山のお仕置きを受けてきました。
お灸も沢山すえられてきましたが、それって、いつも大人たちが
勝手にやったきたことだったんです。
 嫌がる私を押さえつけて、無慈悲に無理やり……

 ですから、それって悲劇ではあっても、終われば……
 『あれは大人たちが勝手にやったこと』
 『私は哀れな被害者』
 『悲劇のヒロインなんだから』
 と、自分の心を慰めることができました。
 自分のプライドを守る逃げ道があったんです。

 でも、こうして自分で火をつけてしまうと、そんなささやかな
エクスキューズさえ奪われてしまうようで……
 それは、とてつもなく悲しいことだったのです。

 「………………………………………………………………………
……………………………………………………………………………
……………………………………………………………」

 長い沈黙が続きました。持っていたお線香に火の気が迫ると、
お義母様はまた新しいものを用意します。

 そうやって、三本目のお線香が燃え尽きようとする時、私は、
ようやく決心して、九つある艾の一つに火を移します。
 
 「!!!!」

 当然、肌を焼くいつもの熱くて痛い瞬間が訪れます。

 でも、それは一瞬でした。
 まるで、示し合わせたようにハツさんが、私の肌に火が回った
瞬間、火のついた艾を消してしまうのです。

 二つ目も……
 三つ目も……
 四つ目も……
 そして、最後の九つ目だけ……

 「熱い~~~~」

 ハツさんはその火を消してくれませんでした。
 お義母様とハツさんは何一言も打ち合わせをした様子がありま
せんでしたが、大人二人の間にはそれでいて何一つ問題がなかっ
たみたいでした。

 「わかった?これが大人になるということなのよ」
 お義母様はそう言うと、最後は黙って私を抱いてくださったの
でした。

**********************

3/16 サマースクール(午前中~4~)

3/16 サマースクール(午前中~4~)

 「さてと……愛子さん、覚悟はできたかしら?」

 春山先生は中2の少女に寄り添って語りかけます。
 すると、その子は静かに頷いたのですが、オカッパ頭に隠れて
いた顔が持ち上がると、その瞳がすでに涙で濡れていました。

 自分で蒔いた種ですからそれは仕方のないことなんでしょうが、
私たちも立場は同じ生徒の身ですから、その悲しげな顔には同情
を禁じえませんでした。

 「じゃあ、いらっしゃい。まずは罪の清算をしてしまわないと。
……お勉強はそれからよ」

 春山先生は愛子ちゃんの手を取ります。

 少女の手は大きな顔の割りに細く、体つきも華奢な感じを受け
ます。椅子に座っていた時はさほど感じなかったのですが、立ち
上がってみると、その身体は実際の年齢より一つ二つ幼く感じら
れました。

 そんな彼女の両肩を抱いて春山先生が向った先は、長い廊下の
先にある重い扉の部屋。もちろん、扉が重いのは中の悲鳴が外に
漏れないためなんですが……

 「あなたたちもお手伝いしてくださるんでしょう」
 それまで愛子ちゃんに付き添っていたシスターに尋ねられ……

 「あっ、はい」
 ドキンとして小さい声で答えます。

 私もオマルも何一つこの件に関わっていませんが、私たちも、
何だか愛子ちゃんと一緒にお仕置きされに行く気分になっていま
した。

***************************

 重い扉が開かれて5人が中に入ると、大きな衝立から別の先生
が顔をだします。さらに衝立の裏へ回ると、見慣れぬシスターの
姿も……

 世間では学校の先生というのはとても忙しい仕事と聞きますが、
幸いな事に、ここでは大勢のシスターが献身的に働いてくれます
から人手には不自由していませんでした。

 「木村愛子さんね。お待ちしてたわ。では、さっそくだけど、
これに着替えてね」

 愛子ちゃんはここを管理する森野先生に、綺麗に畳まれた服を
一式手渡されます。

 「あっ、はい」
 呆然としてそれを受け取る愛子ちゃんでしたが……さっそく、
春山先生がやって来て着替えを手伝ってくれます。

 「あなたたちも、この子の着替え手伝って」

 私達にも声がかかり、さらに人手が増しますから、愛子ちゃん
はハッと我に返ったみたいでしたが、時すでに遅しでした。

 「自分でやります」
 小さな声は聞こえたものの、大勢のアシスタントに無視されて、
まるで着せ替え人形かマネキンのように着ていた服をすべて剥ぎ
取られ……愛子ちゃんはショーツ一枚の姿に……

 そして、そこから、再び与えられた服を身につけ始めます。

 『えっ、これって……』

 出来上がった姿は私達の学園では珍しくもない小学部の通学服。
 今は中2になった愛子ちゃんも、数年前まではこの制服を着て
いたことでしょう。

 でも、これ、森野先生がうっかりミスではありません。
 先生方がわざと愛子ちゃんに小学生の服を着せたのでした。

 「………………」

 何となく居心地が悪そうな愛子ちゃんに向って春山先生は理由
を説明してくださいました。

 「あら、不思議かしら?中学生が小学生の服を着るの……それ
は、『あなたには、まだ中学生としての資格を与えられない』と
いうことなの。あなただってうちの小学部へ通ったから知ってる
でしょう。そこではどんなお仕置きがあったかしら?……思い出
してごらんなさい」

 「………………」
 こう言われて愛子ちゃんの顔が赤らんだり青ざめたりします。

 それは小学校時代のお仕置きがいかにハレンチで厳しかったか
を物語っていました。

 うちは、一応世間からはお嬢様学校だなんて呼ばれていますが、
学校生活の内実は、世間のイメージするものとは程遠くて、優雅
さや上品さとはまったく無縁のハレンチ学園なのです。
 上級生や先生といった目上の人たちが繰り出す残酷極まりない
お仕置きが校内を跋扈し、それによって規律が保たれていました。

 とりわけ小学部は厳しくて、『鉄は熱いうちに打て』とばかり
に幼児ポルノ張りの折檻が日常的もごく自然に行われていました
から、愛子ちゃんじゃなくても、あの時代のお仕置きをもう一度
受けたいだなんて思う人はまずいないと思います。

 そのハレンチで厳しいお仕置きを中2になった今になってまた
やらされるだなんて、そりゃあ、心中穏やかな訳がありませんで
した。

 「どうしたの、青い顔して……怖いのかしら?」

 「………………」
 春山先生の言葉に愛子ちゃんは意外にも素直に頷きます。

 「仕方がないわね。私としても何とかしてあげたいけど、これ
ばかりはどうにもならないわ。あなたには、この先、試練を受け
て立ち直るしか、道は残ってないのよ。残酷なようだけど、ここ
まで来たら諦めが肝心だわね」

 「………………」
 愛子ちゃんの悲しそうな顔を見て春山先生は少女の頭をご自分
の懐にいれます。そして、こう励ますのでした。

 「あなたはまだ若いからそこまで理解できないでしょうけど、
女の子にとって、諦めるってことは、決して終わりじゃないの。
だって女の子が諦めようとしているのは、たいていが自分の『我』
『エゴ』なんですもの」

 「えっ?」

 「罰を受ければ罪を浄化できるなんて大人の世界にはないわ。
こんなに楽な浄化は子ども時代だけの特権だもの。……あなたは
『お仕置きを受ける自分はなんて不幸なんだろう』って思ってる
でしょうけど、大人になって責任ある地位に就くようになると、
子供時代のお仕置きって、母の懐に抱かれていたのと同じくらい
懐かしい思い出になるわ」

 春山先生は、愛子ちゃんの頭を懐から離すと、その肩を優しく
抱いて、広間に並んだ五つのドアのうち、一番右の扉、『浄化』
と書かれたドアへと入って行くのでした。

***************************

 私とオマルも恐る恐る愛子ちゃんと春山先生のあとに続きます。
 すると、ドアを開けた瞬間、強い光が私たちの顔をたたきつけ、
そこが明るい部屋だと分かりました。

 強い光は人工の光ではありません。南側に大きな窓を持つその
部屋に差し込む太陽の光でした。
 しかも、この部屋、床と言わず壁と言わず薄いブルーのタイル
で覆われていますからなおのこと室内が明るく感じられます。

 私とオマルは、まるで銭湯のお風呂場にでも迷い込んだような
広く明るい場所ではしゃいでいましたが、愛子ちゃんはその間に
も黒いレザー張りの処置用ベッドに寝かされてしまいます。

 「あなたは、今はもう中学生だけど、あなたのやったハレンチ
な行いを考えると、中学生としてお仕置きすることはできないの。
ここでのあなたは小学生。あくまで小学生としてお仕置きします。
いいですね」

 「はい、先生」
 春山先生の厳とした態度に、愛子ちゃんは小さな声で頷きます。
とにかく、桃園の生徒だったらそうするしかありません。そう、
諦めるしかありませんでした。

 話が決まると、さっきまで愛子ちゃんを説得していたシスター
によって、短めのスカートの裾が捲り上げられ、ショーツがずり
下ろされます。

 そこにはビーナスの丘に軟らかな陰毛がうっすらと生え始めて
いました。

 しかし、春山先生はそのうぶ毛のような陰毛を指で触れながら
……
 「こうした飾りは、まだ小学生のあなたには早いわね。綺麗に
してしまいましょう」
 と、シスターに指示します。


すると、それからあっという間でした。
 シスターが髭剃り用のT字剃刀で、わけなくツルツルに仕上げ
てしまいます。

 「まあ、綺麗になったわ。やはり小学生はここがツルツルじゃ
なきゃ。ここに飾りがあってはいけないわね」
 春山先生は綺麗になったビーナスの丘を愛おしく撫でまわしま
すが……愛子ちゃんはそれにはつとめて無表情を装っていました。


 「それでは、まず身体の外側から洗いましょうか。愛子ちゃん
あの盥の中に身体を洗いましょう」
 春山先生がこうおっしゃいますから、愛子ちゃんは素直にそれ
に従おうとしてベッドから起き上がったのですが……

 「愛子さん。ちょっと待って……何か忘れてないかしら?」

 「…………」

 「分からない?他人から何かしてもらった時はね、お礼の言葉
を述べるものなのよ。そんな事、あなた小学校で習わなかった?」

 「えっ……」
 突然のことに戸惑う愛子ちゃん。

 「女の子の世界では、お勉強ができる事より、お作法や礼儀、
ご挨拶といったことが大事なのよ」

 「ごめんなさい。…………えっと、…………えっと、…………」

 最初、愛子ちゃんは今の事をどう表現していいのか分からない
みたいで取り乱してしまいます。
 ……とりあえず……

 「私のお股の毛を剃っていただきありがとうございました」
 こう言うのが精一杯でした。

 男性にはわかっていただけないかもしれませんが、年頃の女の
子にとっては、こんな事を口にすること自体、とても恥ずかしい
事だったのです。

 おまけに……
 「お礼のご挨拶をさぼった罰を与えます」

 春山先生の一言で、愛子ちゃんの顔色が一層青ざめます。
 春山先生の手にはすでにトォーズが握られていました。

 「…そこのテーブルに両手を着きなさい」

 突き出された可愛いお尻が、ここにいる誰からもようく見える
ように、シスターはスカートを背中にまで捲り上げ、ショーツも
足首まで下ろしてしまいます。

 鞭のお仕置きをいただく時、中学生ならショーツを穿くことが
許されますが、小学生時代は裸のお尻が原則だったのです。

 もちろん小学生だってお知り丸出しはそりゃあ恥ずかしいです
けど、その時代は、『それは先生にされることだから仕方がない』
と諦めていました。

 でも、愛ちゃんはこの時中学生。心も体も色んなところで大人
へと変化してきています。恥ずかしさだって小学生時代とは比べ
ものになりません。
 ですが、春山先生が妥協してくださらない以上、仕方がありま
せんでした。

 「ピシッ」「ピシッ」「ピシッ」「ピシッ」「ピシッ」「ピシッ」

 立て続けにトォーズの鞭が六回。
 愛子ちゃんの顔は歪み、思わず下唇を噛んで耐えます。

 『先生の演技かな?』
 私の脳裏に意地悪な想像が頭をよぎりました。

 というのは、桃園の鞭の中には『花鞭』と呼ばれて、形だけの
鞭打ちもあるからなのです。けれど見る見るうちに愛子ちゃんの
お尻が真っ赤に変わっていきます。ですから、これは本当に痛か
ったみたいでした。

 『やっぱり、最初が肝心だものね。先生だって最初から優しく
したんじゃ、なめられちゃうわよね』
 私は勝手なもので、頭の中で変な納得をしてしまいます。

 私の場合、そんな事されたら死んじゃうって思えるほどの罰を
言い渡されたことが何度かありましたが、でも、そのつど、途中
からは許してもらっていたのです。

 桃園のお仕置きって、先生の匙加減一つでどうにでも緩くする
ことができますから、それを期待したのでした。

 「愛子さん、これからは小さな粗相もすべて鞭で償ってもらい
ますから、気を引き締めてお仕置きを受けなさい。いいですね」

 「はい、先生。お仕置きの鞭、ありがとうございました」
 両手をゆっくりととテーブルから離した愛子ちゃんは向き直っ
て春山先生にお礼の言葉を述べます。

 「よろしい、その調子よ。それでこそ桃園の生徒だわ……さあ、
次は盥で身体の外側を綺麗にしましょう」

 春山先生の言葉にシスターが待ってましたとばかり愛子ちゃん
の服を脱がせ始めます。
 愛子ちゃんはすでに先生やシスターの言いなり、お人形でした。

 お湯をはった盥の中に裸で立たされた愛子ちゃんは、さすがに
恥ずかしそうに前を隠して中腰になりますが、でも、そんな女の
子らしいポーズもそう長くは続ける事ができませんでした。

 シスターが盥の前へとやってくると……
 愛子ちゃんは、さっそく気をつけの姿勢を取らされます。

 要するに彼女、ここで沐浴するわけです。ですが、これって、
盥の住人にとっては決して楽な役回りではありませんでした。
 というのも、この沐浴、自分で身体を洗うことは許されていま
せんでした。

 ビーナス丘を綺麗にしてもらった時と同様、愛子ちゃんは大人
になされるまま身を任せなければなりません。その盥の中で必死
に立っていなければなりませんでした。

 知らない人は『だって体を洗ってもらうだけなんだろう』って
簡単に考えてしまうかもしれませんが、実はこれ、体の隅々まで
硬いスポンジでゴシゴシとやられますからね、とっても痛いのです。

 ましてや、それがお股の中にでも入ろうものなら、悲鳴を上げ
ないでいるのが精一杯だったのです。誰だって腰を引いてしまい
ますが、でも、それさえも……

 「ほら、腰を引かないの。せっかくあなたの穢れた身体を浄化
しているのに、少しはじっとしてなさい。また、鞭でしゃきっと
してもらいたいの」
 なんて、大人たちから叱られることになるのでした。


 シスターたちによって身体の隅々まで綺麗に磨き上げられる頃
には、愛子ちゃんの身体は全身真っ赤かになっていました。


 「さてと……これで身体の外側は綺麗になったけど……問題は
身体の中。……こちらも綺麗にしなければ意味がないわね」

 春山先生は、直接『浣腸』という言葉を使いませんでしたが、
この場合、それ以外のことがなされる事なんてありませんから、
桃園の生徒なら『身体の中を洗う』って聞かされただけで覚悟を
決めることになります。

 ごく普通に学んでる子でも一学期に一回位は先生方に呼ばれて
身体の中を洗ってもらうのが通例ですから、桃園学園のバッジを
付けている限り『浣腸』それ自体はそんなに驚くことではありま
せんが、ただ、問題はそのやり方でした。

 最も穏当な方法は、保健室で石鹸浣腸を保健の先生にしていた
だくケース。これですと身体も楽ですし、オマルが与えられます。
恥ずかしい姿を見られるのも、保健の先生だけですみますから、
あまり問題はありませんでした。

 ところが、先生のご機嫌を損ねてしまうと……

 放課後、クラスメイトの見ている前で、赤ちゃんのオムツ替え
ポーズを取らされ、お薬をガラス製の浣腸器でお尻の穴から入れ
られ、散々我慢させられたあげく、最後はオムツにたれ流し……
 なんて、悲惨な事になりかねません。

 私も小学生の頃、オイタが過ぎて一度だけこの屈辱を味わいま
したが、お尻の穴を見られたことやウンチを見られたこともそう
ですが、私のオムツを取り替えるように命じられたクラスメイト
が、さも嫌そうにしているのを見るのが辛くてそれが一番傷つき
ました。

 もちろん、こんなケース、そう多くはありませんが、それでも
小中高に限らず毎学期必ず一人や二人はこうしたことの犠牲者が
出るのも確かでした。

 愛ちゃんは再び小学生時代の制服を着せられると、さっきお臍
の下を剃り上げてもらったあの黒革張りの処置用ベッドに再び横
たわるように命じられます。

 愛ちゃんはおとなしくしたがっていましたから、そこは問題が
ないようにみえたのですが……

 シスターによって、再びスカートが捲り上げられ、ショーツが
引き下ろされて愛子ちゃんの足首をすり抜けたその瞬間でした。
 春山先生の声がします。

 「あら、……それ見せてちょうだい」

 先生は、今しがた脱がされたばかりのショーツをシスターから
受け取ると、その肌触りを検査します。

 「愛子さん、これシルクよね」

 愛子ちゃんは、思わず『しまった』という顔になりましたが、
手遅れでした。

 桃園の生徒は年齢に関わらず身につける下着はすべて綿でなけ
ればなりません。発表会のような特別な場所での衣装以外、絹の
下着を身につけることは禁じられていたのです。
 学生は華美に流れてはいけないという創立者の教えからでした。

 私だって女の子ですから愛子ちゃんの気持ちはわかりますが、
これについては同情できませんでした。

 私の心の中は……
 『あ~ら、ら、あたし、知~らない』
 だったのです。

***************************

3/15 サマースクール(午前中~3~)

3/15 サマースクール(午前中~3~)

*)また、自分の世界へ戻ってきました。(^-^)/

 その部屋は12畳ほどの広さがありましたが、奥に大きな事務
机と書棚があって、それに壁際に荷物置きのような飾り気のない
テーブルと古いソファが一つ。その他には家具らしいものは何も
ありません。
 広さの割にはガランとした部屋でした。

 ただ、ここへ連れて来られた子供たちにしてみると、それ以外
のことが気になります。

 一つは大きな事務机の後ろの壁に掛けられた大きな額。
 そこに描かれている創立者の大西胤子女史の肖像画があまりに
凛々しくて、子供たちにしてみると、その絵を目の当たりにした
だけで何だか叱られたような気分になってしまいます。

 それにもう一つ、事務机の脇にある傘たてに放り込まれたり、
その上の壁に掛けられた色んな種類の鞭の数々。
 樺の小枝を束ねた鞭やケイン、黒光りするトォーズ(革紐鞭)、
や乗馬鞭、そして伸ばせば2mはあろうかという牛追い鞭まで、
多種多様な鞭がまるでコレクションのようにして飾られています。

 これらは実際に使われることはありませんが、女の子を脅すに
は十分効果的でした。

 そんな悪趣味な部屋へ、私とオマルは老シスターに肩を抱かれ
て連れてこられます。

 「失礼いたします」
 挨拶のあと、そのシスターが事務机からこちらをいぶかしげに
見ている学園長の耳元に二人の事を告げ口して、事は始まるので
した。

 この時、事務机の主は、遠く九州の系列校から派遣されていた
春山先生。彼女がこのサマースクールを取り仕切っていました。

 40歳前後でしょうか……ウェーブの掛かった長い髪を肩まで
たらしたそのお顔は柔和で、私にはパッと見、優しそうにも見え
ますが、もちろん、こちらは叱られる身、警戒を緩めたりはでき
ませんでした。

 先生はシスターの報告を聞き終わると、まず、私たちに向って
右手を小さくパタパタさせます。
 これは、『そこに敷物に膝まづきなさい』という合図でした。

 私たち二人は、目の前にある敷物に膝をつけて、両手を胸の前
で組みます。これは桃園学園で生徒が先生に対して恭順をしめす
時にする伝統のポーズなのですが、これって、要するに……
 『どんな言い訳もしません。どんなお仕置きも引き受けます』
 という意味だったのです。

 すると、春山先生は大きな事務机を回って、私たちの目の前へ。
 そして、先生もまた、その敷物の前で膝まづかれたのでした。

 『何かヤバイかな?』
 息がかかるほどのとても近い距離でのお話。こちらはてっきり
事務机のその場所から私たちを見下ろして、お説教が始まるもの
とばかり思ってましたから、もうそれだけでどぎまぎです。

 「伯爵様の処は楽しかったかしら?」

 いきなり、返事に窮するような質問が飛んできます。
 でも、答えないわけにもいきませんから……

 「はい」
 と、私が小さな声で答えると、オマルにも……

 「小川さん、あなたは、ここ、初めてよね」

 「はい」

 「千賀さんに誘われたの?」

 「いいえ、勝手に……チッチは関係ありません。私が勝手に、
彼女、毎年来てるみたいだし、どんな処か知りたくて……」

 「そう、……それで、楽しいかしら?」

 「…………それは」

 「だって、もともとここはあなた方のような優等生が来る場所
じゃないもの。勉強嫌いの落ちこぼれさんたちの為に企画された
キャンプなのよ。そのことは知ってるわよね」

 「は、はい……」

 「だから、千賀さんが伯爵様の部屋へ出入りしていると最初に
分かった時は『とんでもないことだから、やめさせるべきです』
って、主張する先生もいたの……」

 「…………」

 「驚いた?……でも、むしろそう主張するほうが世間では正論
なのよ。……でも、ここでは多くの先生方の考えが違ってたの。
どう違ってたか、千賀さんわかるかしら?」

 「それは……」

 「勉強ができないのも、家に帰りたくないのも、それはそれで
どちらも心に傷があるからだからで、単に勉強を教える事だけが
教師の仕事じゃないんじゃないかってことになったの。幸い事情
をお話したら、千賀さんのお父様も伯爵様も快く受け入れてくだ
さったから、今日までこんな不思議な事が続いてるのよ」

 「じゃあ、父もこのことは……」

 「もちろん、ご存知よ。……あら、あなたお父様がご存じない
とでも思ってたの。だって、毎年期末テストを白紙で出す子が、
夏休みを終えると再びクラスのトップに返り咲くなんて、そんな
奇跡が毎回毎回続くはずないじゃない。誰だって、そんな馬鹿な
こと、まともに信じたりはしないわ」

 「そりゃあ、そうですですけど……父は私に無関心ですから」

 「そんなことないわ。あなたって成績の割りに心は子供なのね。
お父様はとてもあなたのことを気にかけておいでなのよ。常々、
あなたに関することはどんな些細なことも細大漏らさず報告する
ようにっておっしゃってるわ」

 「だって、今まで何も言ってくれなかったし……特別扱いも、
これといってなかったみたいだから……」
 私は顔を赤らめました。

 「だって、あなたは勝手に白紙の答案をだしてここへ来たんで
すもの。こちらも、あなたを特別扱いしなければならない理由が
ないわ……そうでしょう?」

 「…………ええ」

 「あなたは、ここではみんなと同じ落第生。みんなと同じよう
に、ここでの規則を守って暮らさなければならない困ったちゃん
の一人だわ。だから今日だって、4時限目の授業に遅れたから、
ここにこうして呼ばれたんでしょう?」

 「はい、ごめんなさい」

 「よろしい、素直でなによりだわ」
 先生は満足そうな笑顔で立ち上がります。

 その直後でした。
 奥の部屋で物音が……

 「いやあ~だめえ~ごめんなさい」

 女の子の悲鳴がほんの小さくですが、大きな事務机の後ろから
聞こえてきます。そこはこの部屋のさらにずっと奥の部屋。私も
一度覗いたことがありますが、そこは『折檻部屋』という名前が
ぴったりの場所でした。
 その声がインターホンがオンにしてあった為に流れたのでした。

 「まったく、みっともない声をあげて……」
 春山先生は慌てて事務机にもどり首を振りながらインターホン
をオフにします。そして、私たちにこう付け加えました。

 「一人、ここを脱走した中学生がいて、その子のお仕置きなの。
ああした子は堪え性がないから、勉強の前にまずはお仕置きして
我慢することを覚えさせてからでないと勉強もはかどらないわ」

 先生のため息に私とオマルは思わず二人で顔を見合わせます。
 お互い、相手の目はなんて大きいんだろうって思いました。

 すると……
 「あら、どうしたの?怖いの?…でも、そうかもしれないわね」
 先生は素っ頓狂な顔の二人を見て苦笑いです。

 「あなたたちみたいな優等生は滅多にお仕置きなんてされない
もの……そうだ、あなたたちに手伝ってもらいましょうか。……
あの子のお仕置き」

 「!」
 「!」
 私たちは再び顔を見合わせます。
 もちろん、そんなのイヤですが、イヤとは言えませんでした。

 「あなたたちのお尻をぶつより、その方がよほどあなたたちの
為にもなるわ。……だって、同じ桃園の生徒といっても劣等生が
受ける厳しいお仕置きなんて、あなたたち見たことないでしょう。
これも一種の社会科見学よ。ついてらっしゃい」

 私たちは春山先生の後に続きます。
 今はそうするしかありませんでした。

***************************

 お仕置き部屋への入口は、大きな事務机の右奥にある小さな扉
から入ります。そこはドアを全開にしても、身をかがめて中腰に
ならなければ通れません。おまけに、その先もトンネルになって
いて、洞窟の中を三人は中腰で進みます。

 「まるで忍者屋敷ね。どうして、お仕置き部屋をこんな不便な
処に造ったのかしら?」
 オマルがこぼすと春山先生が答えます。

 「逃走防止のためよ。あなたたちみたいに聞き分けのいい子ば
かりなら問題ないんだけど、うちには何かというと脱走したがる
子が大勢いるの。ましてお仕置きなんてされてたら、なおさらで
しょう。……さあ、もうすぐよ。明かりが見えてきたわ」

 窮屈な姿勢で20m。薄暗い穴の中を進むのは本当に骨が折れ
ました。

 「ふう~やっと出た」
 私は出口で大きく背伸びします。
 と同時にその両目も大きく見開きます。

 そこは広いサンテラスのような場所。目の前は深い崖ですが、
遠くまで緑の山々を見渡せて、さながら観光名所にでも迷い込ん
だ面持ちでした。

 「ヤッホー」
 オマルが思わず叫びますが、そのくらい美しい景色でした。

 「素敵な場所でしょう。本当は、こちらに教室を作ろうという
意見もあったくらいなのよ。でも、胤子先生(創立者)が薄暗い
地下室なんかより、こんなすがすがしい場所の方がより多くの子
が改心するんじゃないかしらっておっしゃって、それで、ここが
子どもたちをお仕置きする場所に決まったの。……それに、ここ
なら、どんな大声をだしてもお友だちのいる教室までその悲鳴が
届かないでしょう。お仕置き部屋としてはうってつけだわ」

 春山先生はにこやかでしたが、私たち二人はまたもや顔を見合
わせます。

 いくら普段あまり厄介にならない場所といっても私たちは未だ
生徒の身、お仕置きの事を楽しげに語る春山先生には背筋が凍る
思いがしたのでした。

 「こちらへ、いらっしゃい。あなた方にはお手伝いしてもらい
たことがあるの」
 おじけづく二人に、春山先生がサンテラスから続くロッヂ風の
建物の扉を開けます。

 今さら逃げ隠れ出来ない二人が恐る恐る踏み込んだ室内は……

 『何よ、コレ!?』
 『やだあ~~なつかしい~~』
 と思う景色でした。 

 12畳ほどの明るい部屋に、円錐形の帽子を被って椅子に座る
子やわざと大きく作られた幼児用木馬に跨る子、椅子の座面に膝
まづいてその背もたれを抱くようにしている子など様々です。
 そして、どの子の傍らにもシスターがいて子供たちに何やら話
かけています。

 実はこれ、桃園学園の幼稚園に実際にあったのお仕置き部屋を
そのまま模したものだったのです。

 桃園の幼稚園では、オイタを繰り返したり、お言い付けを守れ
ない子はこんな部屋に隔離されてしまいます。
 そして、椅子や木馬や先生のお膝の上なんかで先生のお説教を
聴く訳ですが、これが女の子の世界ですからね、くどくどしくて
長いんです。

 でも、それをちゃん聞いて『ごめんなさい』を言わないうちは
決して許してもらえませんでした。
 泣いたり、笑ったり、怒ったり、あくびをしたり、なんてのは
ダメなんです。

 真面目な顔で最後まで聞いて、『ごめんなさい』が言えないと、
たとえお母さんがお迎えに来ていても返してもらえませんでした。

 幼稚園児が相手ですから、ぶったり叩いたりはありませんが、
先生たちも決して妥協はしませんでした。

 「ねえ、あなた、お母さんをどのくらい待たせたことあるの?」
 オマルが懐かしがって私に尋ねてきます。

 「覚えてないけど、1時間くらいならあったと思うわ。最後は
泣きながら『ごめんなさい』の連呼だったけど……」

 「優秀じゃないの。あたしなんか、母に手を引かれて幼稚園を
出た時は星がまたたいてたなんてことが何度もあったわ。『どう
してあなたはそんなに強情なの』ってよく母に叱られたけど……
『許してくれないんだから仕方がないじゃない』ってそこでまた
おおむくれよ」

 「とにかく『心から反省してます』って態度になるまでは妥協
しない先生方だったけど、こっちも自分の気持をどう表現したら
いいのか分からなくて、最初から最後まで泣きっぱなしだったわ」

 「言えてる。あの幼稚園泣けば許されるってもんじゃないから
辛いのよね」

 二人が昔の話題で盛り上がってるところに春山先生が口を挟み
ます。
 「それは、ここでも同じよ。このくらいの歳になると『うわべ
だけ反省してますって顔を作りさえすれば、それでごまかせる』
って思い込んでる輩が大勢いるけど、それではいつまでたっても
この部屋は出られないの」

 「でも、そうすると、いつまでも先生とにらめっこすることに
なりませんか?」

 「だから、そういう時は、そういう気持になりやすいように、
サポートしてあげるの」
 春山先生の言葉に二人の背筋が反応します。

 『サポートって……オシオキ』
 『サポートって……オシオキ』
 思い浮かぶことは二人とも同じでした。

 その思いを見透かしたように春山先生が……
 「あなた達だって、これまでに一回や二回は経験したでしょう。
幼稚園の頃ならいざ知らず、少しぐらい理屈が言えるようになる
と誰だって我を通したい時があるもの。……でも、そんな時って、
どうなったかしら?」

 『やっぱり……オシオキ』
 『やっぱり……オシオキ』
 思い浮かぶことはやっぱり二人とも同じでした。

 「中学生の頃ってね、自分の思い込みだけで正義や真理を語る
お年頃なの。とにかく自分だけが正しくて、他の人の意見が邪魔
で仕方がないよ。だから初めは聞く耳をもたないわ。……でも、
それでは、いくら説得しても無駄だから、そんな時は別の方法を
試す事になるんだけど……桃園では何をするか、二人ともご存知
よね?」

 「お灸もやるんですか?」
 思わず、オマルが口を滑らすと……

 「ええ、やるわよ。……桃園の勲章みたいなものですものね。
あなたたちみたいに優秀な子でも、一度くらいは経験したことが
あるんじゃなくて?」

 春山先生の悪戯っぽい笑顔に二人は思わず顔を見合わせます。
 お互いの、そのえも言われぬ複雑な表情は、不本意ながら経験
済みということでした。

 「ほら、あそこに、円錐形の帽子を被って丸い回転椅子に腰を
下ろしてる子がいるでしょう」

 二人は春山先生の視線の先を見つめます。

 そこでは、おかっぱ頭の少女が回転椅子をほんの少しだけ左右
に動かし、俯き加減に少し怒ったような表情で、シスターのお話
を聞いています。

 少女はシスターのお話を無視しているわけでも、あからさまに
反抗的な態度をとっているわけではありません。世間的にみれば、
先生からお説教を聞く態度としてはこれで十分なのかもしれませ
んが、桃園の場合はさらに厳しいモラルを子どもたちに求めます
から、その基準に照らすと、これでは不十分でした。

 「あのような反抗的な態度では、とても反省しているとは言え
ないわね」

 春山先生の嘆きに二人は小さく頷きます。
 幼稚園の頃『心から本当に申し訳ないという顔』ができるまで、
家に帰してもらえなかった二人としては、春山先生の評価だって
十分に頷けるのでした。

 「あの子、何したんですか?」
 私が尋ねると……

 「脱走よ。大脱走。親に連れられて一旦はここの門をくぐった
んだけど、隙をみて逃げ出したの。手分けして探してもらったら、
近くの街のゲーセンで楽しんでたわ」

 「それで……お仕置き……」

 「人には色んな事情があるから『どんな場合もまず体罰』って
考えは持たないつもりでいるけど、事情を徹底的に訊いてみて、
それがその子の心の弱さから来る場合は、お仕置きも選択肢よ」

 「…………」
 「…………」

 「あら、そんなに緊張しないで……何もあなたたちをお仕置き
しようというんじゃないんだから……ただね、心の弱い子という
のは、表向き『お仕置きはイヤだ!そんな事されたら死んじゃう』
なんてだだをこねていても、自分じゃ何もできない決められない
子たちだから、本心は誰かに背中を押してもらいたがってるの。
他人から強制されることで、『あれは仕方がない事だったんだ』
って自分の心を納得させて始めたいのよ。そうすればうまくいか
なかったとしても他人のせいにできるでしょう。……あなた達は
そんな経験ないかしら?」

 『……言い訳?……責任転嫁?』
 そんな言葉が頭の中をぐるぐる回ります。
 私だって弱い人間ですからそんなことがないはずがありません
でした。

 「うまくいかなかった時の保険をかけたいのよ。あなたたちの
中にもそれはあるでしょうけど……劣等生の場合は、それが極端
なの。……でも、ここでは失敗はさせないわ。むしろ、圧倒的に
恥ずかしいこと、辛いことをさせてから必ず成功させるの。成功
するってどういうことなのかを身体に叩き込んで覚えさせるのが
この学校の目的ですもの。ですから、あなたたちが幼稚園時代、
反省するまで家に帰してもらえなかったように、ここでは成果を
上げるまで、元いた自分たちの学校へは戻さないわ」

 春山先生の言葉は今の私たちには直接関係ないかもしれません。
でも、私にしてもオマルにしても、この学園で長く生徒をやって
いればお仕置き以外にも辛いことは山ほど経験しています。です
から、春山先生の言葉は私達の背中だって凍らすのに十分だった
のでした。


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3/14 今では嘘にしか思えないでしょうが……

3/14 今では嘘にしか思えないでしょうが……

 私の家にも実は子守さんというのがいて、服飾関係の専門学校
に通いながらうちで子守の仕事をしていたのですが、短気な母に
責められて、お灸すえられたこともありました。

 「私はあなたの親代わりなんだから……」
 というのがその理由だったみたいですが……
 ほんと、今なら傷害罪で訴えられてます。

 私の家は個人経営の商店に過ぎませんが、それでもご飯炊きの
おばあちゃんとこの子守さんぐらいは雇っていました。
 当時、女の人のお給料というのはとても安くて、この若い子守
のお姉ちゃんにいたっては、貰えるお給金はお小遣い程度だった
と思います。
 その代わり、学費や衣食住はただですから、辛抱すれば卒業後
は何とかやっていけるという希望はあったみたいです。

 口減らしなんて言葉は快くありませんが、その子の親にそんな
気持がなかったとは言えないでしょう。
 それだけに、入った家で無理を強いられ泣いてた娘も多かった
はずです。

 昭和30年代って、もちろん戦後の憲法下なんですけど、封建
社会の名残みたいなものも、まだあちこちに残っていた時代で、
『三丁目の夕日』のような世界は確かにその時代の一つの真実で
はありますけど、美しくない真実だって沢山あるんです。

 僕の小説が、『お仕置き』と称しておきながらSM並みに過激
なのは、ベースとなっているお仕置き体験そのものが今日以上に
過激だったからで、それをさらに脚色してしまうからなのです。

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3/13 子守っ子、敬子の性春(特別読みきり)

3/13 子守っ子、敬子の性春

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*)お灸のお仕置きを待っていますというコメントをいただきま
したので、駄作ながら一本書いてみました。純粋にお灸だけじゃ
ありませんし、まだ草稿なので、誤字脱字つじつまの合わない処
などがあるかもしれません。ご容赦ください。

************************

 私が奉公と称して角田の家へ預けられたのは10歳の時。
 いきなり母親から切り離され、右も左も分からない他人の家で
暮らし始めた私は、何をしても寂しさが募って毎日泣いてばかり
いました。

 もちろん、母の元へ一刻も早く帰りたかったのですが、貧しい
家に帰ったところでそこに私の居場所はありません。
 幼いなりにそれは分かっていました。

 私の仕事は主に子守。
 赤ん坊を負ぶってあやして、オムツが濡れればそれを取り替え
るのも私の仕事でした。
 最初は赤ん坊が泣いてもどうやってあやしていいのか分からず、
オムツのウンチを触るのだってイヤでイヤで仕方がありませんで
した。

 そんな私を支えてくれたのは、家の若奥さんでした。
 着る服、食べるもの、学校で必要な学用品にいたるまで何でも
与えてくれましたから、学校へ行っても『あの子、きっと角田の
遠縁なのよ』なんて声が聞こえたほどだったのです。

 ですから、私はたちまち若奥さんのしもべになります。
 若奥さんの頼みは何でもきいて、精一杯愛想よくして気に入ら
れようと務めたのでした。

 すると、そんな私がお気にめしたのでしょう。今度は膝の上に
抱いて勉強まで教えてくださるようになったのでした。

 そして、それが終わると、そのままお床へ……

 世間常識からして、それがおかしいことは大人ならわかるので
しょうが、10や11の小娘にそれは分かりません。
 命じられるままに一緒の布団に入ると……

 「!!!!!!!」

 私の身体はその隅々まで若奥様の手で揉み解されることになり
ます。
 手の指、足の指、頭、ほほ、あご、おっぱい、お臍、お尻……
いえ、その中にまで、若奥様の指先は入っていきました。

 「(いやあん、くすぐったい、やめてえ、もうここから出る)」

 心の中ではそう叫んでも、身体が動きません。

 『もし、若奥様をしくじったら、この家でも私の居場所はなく
なる』
 そんな思いが私を布団から出さなかったのでした。

 幼いからだはそれほど敏感ではありませんが、若奥様は丁寧に
丁寧に私の身体を開いていきます。

 私の穴という穴が全て敏感になり、その口がいつしか若奥様の
乳首を求めるようになると、それまで、起立したことのない私の
小さな芽がいきりたつのです。

 後は、ひたすら幼児が母の乳房へ甘えるように身体を擦り寄ら
せて若奥様のお情けを求め続けます。
 あまりに幸せすぎて、涙が出てきました。

 すると、今度は、若奥様が被っていた布団を跳ね上げ、裸の私
にのしかかります。
 もう、この時は若奥様の口臭さえも心地よい媚薬に思えるほど
私の身体はとろけていたのでした。

 当然、行き着くところへ行き着きます。
 手の指、足の指、頭も顎もオッパイも、全ての末梢神経が子宮
に向けて引っ張られ、腰が弓なりになってお臍の下がヒクヒク。
 よだれで布団が汚れても気になりませんでした。

 『何て幸せなんだろう』

 こんな気分、もちろん生まれて初めてだったのです。


 その後も、若奥様は私の身体を愛撫してくださり、私は絶頂を
長く維持して幸せをかみ締めます。

 「どう、楽しかった?」
 若奥様に耳元で囁かれた私は素直に頷いたのでした。


 でも、良い事ばかりではありません。
 ご主人からこれだけのことをしてもらったのです。
 お返しをしないというわけにはいきませんでした。

 私は若奥様にやり方を習ってクニングスで御奉仕をします。
 もちろん、これだってオムツ替え同様ばっちいことに違いあり
ませんが……

 「ああ、いいい、いいわ~、あなた上手よ」

 若奥様にこう言ってもらうと本当に嬉しくて、赤ん坊のオムツ
替えなんかよりこちらの方がはるかに楽しい仕事になっていった
のでした。


 ところが、こうして若奥様から特殊な仕事(?)をいただいて
楽しくやっていたにも関わらず、三月後、私はとんでもない失敗
をしでかすことになるのでした。

 その日、角田の家の近くにある映画館には少し前話題になった
映画、『禁じられた遊び』がかかっていました。もともとここは
名画座で上映されるものはいずれも古いものばかりです。でも、
入場料が安く子守の小遣いでも入ることができましたから、たび
たび利用していました。

 ただ、その時は、若奥様の次男で今年3歳になる明雄ちゃんの
子守を言い付かっていました。つまり、仕事中だったわけです。

 とはいえ、子守なんてその子を連れて歩けば何かするわけじゃ
ありませんし、何よりおとなしい子だったのでこちらもつい気を
許してしまって、ついふらふらと映画館の中へ入っていきました。

 閑散とした館内で二人並んで映画を観るうち、明雄ちゃん寝て
しまいます。そこで、私はトイレに立ったんです。

 ところが、席に戻ってみると肝心の明雄ちゃんがいません。
 もう、真っ青でした。

 もぎりのおばちゃんに聞いても知らないと言いますし、あれで
1時間くらい館内を探したでしょうか。外へ出て、映画館付近を
また1時間。でも、結局見つかりませんでした。

 『人攫いにつれていかれちゃったんじゃないか』
 そんな不安でいっぱいになります。

 ところが、どうしようもなくなって角田の家に戻ってみると、
明雄ちゃんが店先でお爺ちゃんに抱かれています。

 どうやら、私がトイレに立った間に目を覚ました明雄ちゃんが
人知れず映画館を出て、外で泣いてたところを偶然通りかかった
近所の人に保護されてたみたいでした。

 当時は近所中その子がどこの子か知っていましたから、すぐに
連れて来てくれたのです。その意味では街は今より安全でした。

 そんなわけで、角田の家の人たちは事なきを得たわけですが、
使用人の私はそうはいきませんでした。

 たちまち、ご家族のいる居間へと呼び出されます。

 もちろん、土下座して平謝りだったんですが……

 「まったく話しにならないわ。あなたは大恩あるこの家に泥を
塗ったのよ。何が映画ですか。こんな大きな図体して子守ひとつ
まともにできないようなら、ここに置いておくわけにはいかない
わね。お母さんの処へ帰りなさいな。うちはね、遊び半分で仕事
をするような小娘を置いとく義理はないんですからね」

 他の方々はそれほど多く口を開きませんでしたが、若奥様だけ
はカンカンだったのです。

 「まあ、まあ、そう大声でまくし立てなくてもいいじゃないか。
この子だってまだ子供なんだし映画ぐらい観たいさ。明雄も無事
だったことだし、大騒ぎすることじゃないよ」

 旦那様(若奥様のご主人)はとりなしてくださったのですが…

 「そうはまいりません。こうした事はその時その時でしっかり
ケジメをつけておかないと、後々間違いのもとですから……」

 若奥様の怒りは収まりそうにありませんでした。
 しかも旦那様が……

 「せっかくの映画、見損なったみたいだね。ほら、これでもう
一度観て来なさい」
 そう言って映画代を私に渡そうとしますから、慌ててその手を
押しとどめます。

 「冗談じゃありません。そうやってあなたがこの子を甘やかす
からつけあがるんです」
 若奥様はこう言うと、私の方を怖い顔で振り返って……

 「敬子、女中部屋へ戻って正座して待ってなさい」

 こう命じます。私にそれを嫌がる理由などありませんからすぐ
に立ち上がりますが、それと揆機を一にして大奥様も同じように
立ち上がり、いつもの関西弁でこうおっしゃるのでした。

 「若い女中たちの躾はあんたに任せてるさかい、そこはあんた
の判断でやってくれたらええんやけど……ただ、あんまり厳しく
せんといてな。私の部屋にまで小娘の金切り声が届くようなら、
こっちも、あまりいい気持はしませんよってに……」

 「承知しました」
 若奥様は畳の縁に顔を擦り付けるようにして部屋を出る大奥様
を見送ります。

 今だってそうでしょうが、当時は今以上に家の中で上下関係が
はっきりしていました。若奥様といえど大奥様の前では『ご無理
ごもっとも』なのです。
 もちろん、そんな中でも私は一番下の身分。この家の中では、
誰に何をされても何も言えませんでした。


 そんな私の部屋へ若奥様がいらっしゃいます。

 私の部屋は、売れ残りの古着などをしまっておく二階倉庫へと
通じる大階段の下にあります。三畳ほどしかない狭くて暗い部屋
には窓もありませんから昼間でも電気をつけなければ何も見えま
せん。ところが、その電気もをつけていいのは着替えなどの必要
最小限だけ。部屋にいるからといって無条件に電気を点けていい
わけではありませんでした。

 当然その時も、私は正座して電気も点けず待っていました。
 そこへ、パッと電気が点いて……

 「!!!!」
 私は驚きます。

 というのは、部屋の白熱電球を点けたのは確かに若奥様でした
が、その後ろには女中のハツさんが控えているのです。
 しかも、その手には見覚えのある大きな漆の箱が……

 『お灸だわ』
 それは、これから何が始まるかを私に告げています。
 かつて、手癖の悪い子やおねしょの治らない子がこの箱の餌食
になって嬌声を上げているのを何度も目撃していましたから間違
いありません。

 本当はこの場から今すぐ裸足で逃げ出したいくらいでしたが、
今、ここを出ても行く所がありません。
 冷めていてもお腹一杯のご飯が食べられて、外の寒さをしのげ
るお布団があるのは世界でここだけですから……
 若奥様に対しては素直にこう言うしかありません。

 「申し訳ございません。私が悪うございました。お、お仕置き
を…お願いします」

 頭を畳に擦り付けてもどれほど効果があるのかわかりませんが、
何の力もない女の子はとにかくこうするしかありませんでした。

 ところが……

 「ま、いいわ、頭を上げなさい」

 それは、時間が経って冷静になったからでしょうか。若奥様の
第一声は、さきほどの居間で興奮気味に私をなじっていた時とは
大きく違っていました。

 「待った?……こんな火の気のない処じゃ、寒かったでしょう。
……でも、自分で蒔いた種だから、仕方がないわね。………首が
繋がっただけでも大奥様に感謝しなきゃ」
 若奥様の声はどこか弾んでいました。

 当時、子供だった私に大人の世界の駆け引きなど分かりません。
 『さっきはあんなに怒っていたのに、今は、なぜこんなに機嫌
よくしてるんだろう』
 と思っていました。

 実はあの時、一番怒っておられたのは大奥様で、そのまま私を
辞めさすおつもりだったのです。それを若奥様がもの凄い剣幕で
叱りつけることで大奥様のお怒りを代弁し、『お前は首』という
大奥様の口を封じてくださったのでした。

 もちろん、私をかばった若奥様の方にもそれはそれなりの理由
がありました。

 若奥様は普段着姿の私をしばらく眺めてからこう言います。

 「あんた、制服の方がいいな。学校の制服に着替えなさい」
 こう命じられたのでした。

 事情は分かりませんが、私の方は嫌も応もありません。
 すぐに中学の制服に着替えます。

 すると、若奥様は女中のハツさんが持ってきた大きな箱を開け
て中の物をあらため始めます。
 着替えながら、チラ、チラっと視界に入るそれはやはりお灸の
セットでした。

 『やっぱり……』
 心の中でため息がでますが、でもこれはいわば想定の範囲内。
ここまでならまだよかったのです。

 ところが……

 「あっ、ハツ。もし粗相なんかしたらつまらないからお浣腸も
一緒にやりましょう。その方がこの子も辛くないはずよ」

 『えっ、!!!』
 私の全身に衝撃と悪寒が走ります。
 でも、それは逃れられないことでした。

 「でも若奥様、今日はこれから踊りのお稽古もございますので
あまり長い時間は……」
 ハツさんはこう言いますが……

 「それは、今日はお休みにするわ。先生には体調がすぐれない
ので今週はお休みさせてくださいって、すでにお断りしてあるの」

 「さようでしたか、それは準備のおよろしいことで……」
 ハツさんが悪戯っぽく笑いますと……

 「なあに、その目は…相変わらず、子供だって言いたいの?」

 「いいえ、決してそのような」
 ハツさんは否定しましたが、若奥様自身、ご自分が子供じみた
ことをしているのは承知しているみたいでした。

 若奥様は、殿方によく見られるロリコンの気がおありでした。
女性には珍しいのですが、幼い男の子や女の子にも深いご興味が
おありだったのです。

 「おいで……」
 若奥様は正座なさった膝を叩いて、着替えの済んだ私をお呼び
になります。

 「はい」
 何をされるかは分かっていましたが、ほぼ無抵抗でした。

 若奥様は、ハツさんがお浣腸を準備する僅かな時間を惜しんで
私を求められます。

 私のほとんど膨らみのない胸、わずかに大きくなった乳首を、
若奥様の右手が支配してくすぐったく……

 「あっ……いや……いや……だめ……だめ……あっ……いい…」

 私の隠しておきたい場所にも左手がやってきます。

 「あっ、恥ずかしい……いや……いや……そこは汚いから……
だめ……だめ……あっ……いい…痛~……あっ、だめ、離しちゃ」

 それは、私がここへお世話になった頃からの習慣。いまはもう、
こうして寸暇を惜しんで私を求めてくださることが嬉しかったの
でした。
 そして、こうして抱かれていると、それが何だか母に抱かれて
いるような気分になるのでした。


 20分ほどして……
 「ガシャ、ガシャ、」
 入口の留め金を揺する音がして二人の睦みごとは終了します。

 「あっ、ご苦労さん」
 若奥様がハツさんを迎え入れる時は、私も身なりを整えて正座
していました。

 見ると、大きな洗面器を抱えてハツさんが部屋へ入ってきます。
大判のタオルを乗せてありますが、その脇からガラス製の浣腸器
やらグリセリンの入った茶色い薬壜などが顔を出しています。

 持ってきたものはそれだけではありませんでした。
 ハツさんが自ら固形石鹸を溶かして作った石鹸水が大きな牛乳
ビンの中で波打っていますし、浴衣地を裂いたオムツの当て布や
新聞紙も必要以上に運び込まれます。
 すべて私の為だけに用意されたものでした。

 まだ、12や13の少女にとってこんな沢山の貢物はプレッシ
ャー以外の何ものでもありません。
 今さらながら、私は逃げようとして腰を浮かしたのですが……

 「ほら、始めますよ」
 たちまち若奥様に肩をつかまれて浮きかけた腰が踵の上に戻り
ます。

 後はなされるままでした。

 その場に仰向けになって押し倒されると、畳に倒れた顔のすぐ
そばで、大人たちが私の為にお仕置きの準備を始めます。

 「お薬は一割ほど混ぜましょうか」

 左に顔を向けると、ハツさんが大きな洗面器に牛乳瓶の石鹸水
を入れています。ハツさんはこの洗面器に何割ほどグリセリンを
いれましょうかと尋ねたのでした。

 「一割ねえ……この子も大きくなってるしそれじゃ物足りない
でしょうから……そうね、三割でいいわ」
 一方、右に顔を倒すと、若奥様が艾を解きほぐし円錐形にして
お盆の上に並べ始めています。

 右も左も、どちらも見たくない映像でした。
 ですから、まっすぐな姿勢で天井を向き、目を閉じたのですが、
まだ残っていた耳の中へとんでもない情報が入ってきます。

 「奥様、お仕置きはお浣腸のあと、お灸ということでよろしい
ですね」
 ハツさんが尋ねると……

 「そうじゃないわ、今回は一緒にやってあげようと思うの」

 『えっ!!!一緒にって……そんなことしたら……』
 私の脳裏に恐ろしい未来予想図が浮かびます。
 お灸を据えられながらのウンチお漏らし……

 『どうして、そんなことするのよ。……そんなの耐えられる訳
ないじゃない。若奥様は始めから私を笑い者にするつもりだった
のね』
 絶望が涙となって畳の目に吸い込まれます。私は惨めな自分を
想像しただけで気が遠くなりそうでした。
 だから何も考えないように目を閉じてしまいます。

 しかし、大人たちの予定は何も変わりませんでした。

 「!!!!!」

 私はいきなりスカートが捲られるのを感じて目を開けます。
 そして慌てて何かしようとしました。大声をだすなり、身体を
よじるなり……
 でも、何もできませんでした。

 ただ、大人たちが私のショーツを脱がして、その両足を高々と
持ち上げて、私が誰に対しても…いえ、自分に対してさえ隠して
いるその場所が外の風に吹かれているのを……私は、ぼんやりと
天井を眺めて何もしないでいたのでした。

 「まあ、可愛い。……まだ、可愛いものね」

 「ほんと、ほんと、まだ赤ん坊と同じ色で……これならお灸が
似合いますね」
 その瞬間、私の大事な処をハツさんが触ります。

 「!!!!(いやあ~~~~)」
 私の身体は痙攣したように細かく震え、棒のように硬直します。
 私は大声を出すつもりでした。でも、出なかったのです。

 『怖いから……』『あとのたたりを恐れて……』
 いいえ、そんな理性的な話じゃありません。単に生理的に声が
出なかったのでした。

 そうしているうちに……
 「!!!!!!!」
 私のお尻の穴へ例のガラス器が突き刺さります。

 生ぬるい、本当に気持悪い水にお腹の底が満たされていきます。

 「あ~~~いや~~~~これいや~~~~~」
 あれでどのくらい入れられたのでしょう。正確な量はわかりま
せんが、ピストンを押し込んで、なくなるたびにづき足されて、
三回、私はガラスの突起が自分のお尻の穴に入って来るのを我慢
しなければなりませんでした。

 『ああ、お腹が重い』
 お浣腸が終わるまで、ずっとこう思っていました。

 「しっかり、ガーゼで栓をしといてね。お灸の方は私がします
から……」
 若奥様の囁くような声が聞こえます。

 「許して……許してください」
 やっと出た小さな声でした。

 でも……
 「大丈夫、心配しなくても、あなたならきっと我慢できるわ」
 若奥様はやさしい笑顔で私の頭を撫でると、高く上がっていた
私の両足を静かに下ろします。

 捲られたプリーツスカート。足首まで行ってしまったショーツ。
私の前はその時がら空きなのです。
 でも、不思議と恥ずかしいという思いはありませんでした。

 度胸がついたんでしょうか。
 いえいえ、そうではありません。今さっきやられたお浣腸が、
どうなるか、かつてお浣腸だけのお仕置きを受けたことのある私
はそのことが気になって、それどころではありませんでした。

 「まずは……こんな飾りいらないわね」
 若奥様は、私の柔らかくまだ生え揃わない下草の上に、水気を
含んだタオルを押し付けてから剃刀で剃りあげていきます。

 慌てたハツさんが……
 「奥様、そのような不浄なことは私が……」
 と止めたのですが……

 「大丈夫よ、相手は子供じゃないの。汚くなんかないわ。……
私だって三人の子持ちよ。オムツだって取り替えたじゃない」

 若奥様は明るく笑いますが、こちらはそれどころではありませ
んでした。お尻の具合が差し迫っているのです。
 その切迫した顔は、当然、若奥様にも通じてて……

 「あら、もうウンチしたくなったの。でも、今日は我慢してね。
お灸の事は気にしなくていいから、あなたはウンチを漏らさない
ことだけ心配してなさい。……いいわね」
 若奥様は青ざめた私の顔を見て優しく微笑んみ頭を撫でてくれ
ましたが、私の方はというと、それにどんな顔をしていいか分か
りません。本心を言うと……

 『この、鬼、死んじまえ』
 なんて思っていました。

 若奥様は下草の処理が済むと、そこに艾を置きます。

 大き目の物が、三つ、四つ、五つ……
 若奥様はそれを一つずつご自分の唾で濡らして貼り付けていき
ます。

 「ここは、どのみち陰毛が生えて隠れる処だから艾も大きいの。
覚悟なさいね。……あら、どうしたの?イヤなの?……仕方ない
でしょう、あなたが悪いんだから……」
 若奥様はそう言って、お線香の火を艾へ移したのでした。

 「あらあら女の子がそんな不満そうな顔をするもんじゃないわ。
……お仕置きはあなたの為にやってるんですもの。……あなたも
もう幼い子供じゃないんだし、礼儀を学ぶ必要があるわね。……
いいわ、今度暇があったら、お灸とお浣腸でお仕置きを頂く時の
お顔、訓練してみましょう」

 『あっ、いやあ、熱い、熱い、熱い、だめえ~~どけて~~~』
 ビーナスの丘に火が回りました。まさに、身体が火事です。
 私は声こそ出しませんが、荒い息遣いをして、思いっきり顔を
ゆがめ、身体をねじります。

 今までも実母からそこにお灸を据えられた経験があったのです
が、これは別物でした。

 「ほら、またそんな顔をして……私も母には『あんたは本当に
堪え性のない子だ』ってよく言われたものだけど……さすがに、
中学生になってからはそんな顔はしなかったわよ。あなた、もう
中学生なんだからこのくらい耐えなきゃ」

 若奥様は『呆れてものが言えない』といった感じで、私の苦難
を見下ろします。

 「私は5年生の時、母から心棒を通してもらったの。それから
は少しぐらい大きな艾を乗せられても耐えられるようになったわ」
 若奥様は据えられていたお灸の残り火を指で押さえ込んでもみ
消すと、やにわに私の両足を引き上げます。

 「いやあ!!」
 それは反射的に出た言葉でした。

 「あなた、まだ心棒が通っていないわね」
 若奥様は私の女である部分をなぞりながらこうおっしゃいます。

 「……あなたがうちに来たの、確か、小学4年の時だったわね。
あなたのお母様もそのくらいじゃまだ可哀想だと思われたのね。
……そうだわ、今日はちょうどいい機会だから、あなたにも私が
心棒を通してあげましょう」

 若奥様はさも楽しそうにおっしゃいますが、私はすでに全身が
脂汗にまみれていながら悪寒がするという不思議な状態になって
いました。
 目には汗と涙が入り前が見えませんし、何より時々襲う強烈な
下痢で、若奥様のおっしゃってることも半分以上は理解できない
ままになっていたのでした。

 ですから……
 「じゃあ、いいのね」
 と言われた時も、何の抵抗もなくあごを引いて頷く始末でした。

 当然、若奥様はためらいなどしません。
 ビーナス丘に乗せたのと同じ位の艾を私の狭い場所に乗せます。

 私は慌てて激しく首を横に振って、『いや、いや、だめ、だめ』
という意思表示をしましたが手遅れでした。

 「いやあ~~~いやあ~~~いやあ~~~いやあ~~~いやあ」

 『火のついたように』というのは、こういうことなんでしょう。
まるで赤ん坊が泣き叫ぶようにして、私は硬直した身体をさらに
硬直させて必死に耐えたのです。

 ところが、心棒のお灸が終わって、息も絶え絶えになっている
私に向って、若奥様は不思議なことをおっしゃるのでした。

 「どう?…そんなに熱くなかったでしょう。多くの人はお浣腸
しながらお灸なんて残酷だって思ってるみたいだけど、こうする
と、ウンチを我慢する方に気をとられるからお灸はかえって熱く
ないの。お浣腸が麻酔の役目をはたすのね。……ね、どう?……
熱くなかったでしょう?」

 若奥様は優しい眼差しで私の顔に近寄ります。
 でも、それに対する私の反応はありませんでした。
 いくら市販の浣腸液より濃度が薄いといっても、それは時間の
経過と共に勢いを増していきますから、この時は、もう爆発寸前
だったのです。

 でも、お灸はこれで終わりではありませんでした。

 「さあ、今度は裏返し。うつ伏せなってお尻を高くするのよ」

 若奥様はおっしゃいますが、この時は、すでにその姿勢になる
にも自分の力では無理だったのです。

 『絶対に恥をかきたくない』
 女の子の意地だけが、暴発をかろうじて回避していたのでした。

 私はハツさんの手を借りてゆっくりうつ伏せになります。
 もちろん、スカートが捲られてお尻があらわになりますが、今
はもうそんなことはどうでもよかったのです。

 『おトイレ、おトイレ、おトイレ』
 頭の中にはそれしかありませんでした。ですから、お灸のこと
だって……
 『早くして、早く、早く、早く』
 今はお灸の熱さより一刻も早くお仕置きが終わって解放される
ことを願っていたのでした。
 ですから……

 「今度のお灸はお尻の始まる処、尾てい骨の処にすえるけど、
ここはお股の中よりさらに熱いですからね、しっかりオシッコの
出口に力を入れて我慢してるのよ」
 若奥様の忠告も何気なく聞き流していたのでした。

 そして、今まで同様、ハツさんが艾をセットして若奥様が香り
のよいお線香で艾に火をつけます。
 私は、今度もお腹に力を入れて頑張れば何とか…と思っいてた
のです。
 ところが……

 「ひぃ~~~~~~~」

 その衝撃は言葉になりませんでした。
 尾てい骨に噛み付いた火は一瞬にして背骨を駆け上がり後頭部
を殴りつけます。それは頭の内側を金槌で思いっきり殴られた様
でした。

 と同時にその衝撃は、本当はこのままうずくまっているつもり
だった私の身体を持ち上げます。そう、まるで猫が喧嘩をする時
に自分の体を持ち上げて威嚇するように、あんなおぞましい感じ
で私も畳に爪を立て立ち上がったのでした。

 もちろん悪寒が全身に走り、体中が震えます。その凄まじさは
私の全身の毛穴から狼の毛が生えるんじゃないか、そんな妄想を
呼び起こすほどの凄まじさだったのです。

 ですから、その先は仕方のないことでした。

 「あらあら、だから言ったじゃないの。オシッコの出口をしっ
かり閉めときなさいって……」

 若奥様に言われて、私はようやく自分の股間がぬれている事に
気づきます。慌てて腰を浮かすと、そこはすでに私が作った湖が
……

 『よくもこんなに出たものだわ』

 こうなると自分でも呆れて逆に笑みがこぼれます。
 それほどの大量失禁でした。

 「もう、いいわ、ここにオマルがあるからここで済ましてしま
いなさい」
 若奥様の命令で、私はオマルにしゃがみます。

 もちろん、本当はお便所がよかったのですが、もう今はそんな
贅沢は言ってられません。跨ると、すぐに出してしまおうとしま
した。
 ところが……

 「えっ!」

 お尻の穴には、しっかりとした栓がしてあって、私がちょっと
力んだくらいではでないようにしてあったのです。
 ですからお尻の穴に関する限り少しぐらい力を緩めたところで
最初から暴発なんてしなかったわけですが、当時の私にそんな事
を考える余裕はありませんでした。


 ハツさんに身体の隅々まで綺麗にしてもらってから、私は再び
若奥様の処へ行きます。
 若奥様の前に立つと……

「いいわ、あなたにはやっぱりセーラー服が似合うわね。こう
して見ると、清楚で気品があって、とても田舎の百姓娘には見え
ないわよ」
 と最初は褒めていただけだったのですが……

 「でも、今日は全裸におなりなさい。そう、服を全部脱ぐの。
下着も、靴下も全部脱ぐのよ」
 若奥様が命じます。実はこんなに据えられてもまだ据えられる
処が残っていたのでした。

 今さら恥ずかしいなんて意味ありませんから、私に心の葛藤は
ありませんでした。まるでお風呂にでも入るように私は服を脱ぎ
捨てます。
 すると、今度は……

 「ここへいらっしゃい」
 若奥様は正座した膝を叩いて、裸の私をその膝の上へ呼びつけ
ます。

 恐る恐る近づき、どうなるのかと思っていると、いきなり私の
腕を取って膝の上に……
 尻餅をついたかと思うと若奥様と同じ方向を向いて羽交い絞め
にされます。

 そこで見たものは、またもやお灸でした。
 ハツさんが艾を並べたお盆やお仏壇から持ってきた線香立てを
傍らに置いて微笑んでいます。

 『何よ、今度はどこに据えるのよ』

 私は怖い顔でハツさんを睨んでいたみたいですが、頭の中は、
恐怖と悲観と諦めがない交ぜになって、今でも泣きそうでした。

 「今度のは小さいからチクッとするだけよ」

 若奥様の慰めにも私は反応しませんでした。今さら逃げもでき
ませんし、何より迫り来るハツさんが怖かったのです。

 「さあ、お譲ちゃん、じっとしててね」

 私のオッパイを舐めることができるまでに近づいたハツさんは、
そこで、幼い子に言って聞かすように諭します。

 「あっ……いや……熱い……あっ……だめ……いや……イヤ」

 灸点は、ほんの少しだけ大きくなった私の乳首の周り。ピンク
色と肌色の境に小さく三つずつ。
 確かに、小さな艾でしたから時間にすれば一瞬のはずでしたが、
なぜかこれがとても熱く感じられたのでした。

 すると、そんな私の心を見透かしたように……
 「どう?……熱いでしょう。それが本当のお灸の熱さなのよ。
さっきはお浣腸の最中で、そっちに気をとられてるもんだから、
あまり熱さを感じずにすんだけど、今は気にすることが何もない
から、逆にとっても熱く感じるのよ」
 と、おっしゃいます。

 そして、熱いお灸は乳首だけでなくお臍の中にも飛び火します。

 「いやあ~~そんなところやらないで~~~」

 私はお仕置き覚悟で叫びましたが、無駄でした。

 「あつい~~~~~~」
 据えられた瞬間は駄々っ子のように両足をバタつかせます。
 お浣腸という呪縛がとれてお灸に専念できるぶん、恐怖もひと
しお、熱さもひとしおでした。

 これでようやく私へのお仕置きは終了。

 若奥様は全裸の私を立たせると、まるで芸術作品でも鑑賞する
ようにその灸痕を丹念に見て回ります。
 最後はお股の中まで調べますから、私は寝そべって両足を高く
上げ、その両足は自分で持っていなければなりません。
 やはりこれが一番屈辱的でした。

 「いいわね、このくらい色がついていれば大奥様も納得される
でしょう」

 そして、その検査が終わると、私という名の作品は大奥様にも
饗されます。

 「いいわ、そんなもの」
 最初、大奥様は不機嫌そうにそうおっしゃいましたが、結局は
ご覧になったのです。
 若奥様と同じようにそのすべてを……最後の私が高く上がった
自分の両足を支える中での、あのお股の中までも……

 「そうですか。こんなにしてまったら、今さらこの子を親元へ
は帰せませんね。でも、その責任はあなたにとってもらいますよ」
 大奥様は若奥様に向って何だか全てを見通しておいでのような
笑顔でこうおっしゃたのでした。

 私はこの時まだ子供でしたから、若奥様が、なぜこんなことを
なさったのか理解できずにいましたが、すべては若奥様の計らい
だったのです。
 私が、できるだけお仕置きを軽くすませ、この先もこのお店で
ずっと長く働けるようにしてやろうという配慮だったのです。

 今では主人が従業員にお灸なんかすえたら傷害罪で訴えられる
ことでしょうが、私の子ども時代(昭和30年代)には封建的な
常識がまだまだ生きていて……
 『子どもを預けた親に代わって躾をするのも店主の親心』
 なんて考えがまかり通っていました。

 しかも、私の場合は……
 この若奥様の親心が、実は、本当の親心だったと気づくことに
なります。ただ、それはずっと先のお話。
 そのことは、また日を改めてお話することといたしましょう。

***************************

3/9 サマースクール(午前中~2~)

3/9 サマースクール(午前中~2~)

*)僕の好きなプリズンもの。でも、Hはちょっぴりです。

 私はもたもたしているオマルを尻目にピアノへ向います。
 さっきの授業中、思いついたメロディーを忘れないうちに五線
紙に書き留めなければなりませんでした。

 「まあまあ、今日はお二人でいらしたのね。それならもう一つ
カップが必要ね」

 いつも上品な身なりのおばさん、つまり、おじちゃんの奥さん
がオマルを気遣ってそんなことを言ったみたいですが、こちらは
それどころではありません。

 今度は、授業中に思い浮かんだ詩のフレーズをメモ用紙に書き
留めます。
 お茶はそれからでした。

 でも、それだけやると、今度は次の授業の為に教室へ戻らなけ
ればなません。

 実にせわしない休み時間です。

 こんなことを夏休みになるたびにここへ来て繰り返していた訳
です。
 でも、このせわしなさが私には逆に心地よかったのでした。

 「あんたって、変わってるわね」
 教室に戻る道々オマルが尋ねますが……

 「そうなの?…私、なまじ立派な勉強部屋で、時間がたっぷり
あって、『さあどうぞ』って言われると、何も浮かばないのよ。
何か別の事をしているついでの方が面白いものができるわ」

 「ここの先生たち、このこと知ってるの?」

 「もし、知らなかったら、馬鹿ね」

 「しっ!聞こえるわよ」
 オマルが慌てて私の口を押さえてくれましたが……

 「大丈夫よ。真面目にやってるGの子たちに申し訳ないけど、
私も規則にしたがってやってるだけだから……今は問題ないわ」

 「『今は……』っことは昔は叱られたの?」

 「小学生の頃はね。……みんなの前でパンツの上からお尻叩か
れた。……『伯爵様のおうちに勝手に入り込んではいけません』
ってね」

 「それでも、やめなかったんだ」

 「だって、最初に『お入りなさい』って言ってくれたの伯爵様
だもん。……だから伯爵様に泣きついたら、とりなしてくれて…
…いったん家に帰されて、お父さんからこっぴどく叱られたけど
……最後は、『学校の規則内で行動するなら』という条件付きで
今のサボテンハウスに出入りすることを許してもらったの」

 「じゃあ、チッチは特別扱いなんだ」

 「特別扱いというより黙認ってことじゃないかな。今日の様子
じゃ斉田先生はまだ私がなぜGにいるのか、わかってないみたい
だし……」

 「それじゃあ、差し止められることだってあるんじゃないの?」

 「そうかなあ……でも、たぶん大丈夫よ。……ここの先生方は
みんなやさしい人ばっかりだもん」

 「それって、先生が優しいんじゃなくて、あなたが優しくして
しまうのよ」

 「えっ、それどういうこと?」

 「そうよ、絶対そう。……あなたって、そんな不思議な魔力を
持ってるもの」

 「魔力?」

 「魔力よ。女の魔力。だって、まったく同じことをしてるのに、
私はこっぴどく叱られて、あなたには『今度から気をつけなさい』
って笑って注意する先生が何人もいたもの」

 「馬鹿ねえ、そんなの偶然よ」
 私は思いっきりオマルの肩を叩きます。

 「偶然じゃないわよ。差別よ。差別。可愛い子差別だわ」

 「何、急にひがんでるのよ?」

 「悪いかしら?ええ、ひがんでるわ。ひがんで当然でしょう。
こんなお話、聞かされたら、馬鹿馬鹿しくて、私みたいなブスは
やってられないわよ」

 「そうかなあ……」

 「そうよ、絶対にそう……」

 ここで2時限目が始まりました。


**************************

 2時限目のテスト。
 今度はお互い競争です。

 9時34分30秒。
 答案を書き上げます。

 9時35分00秒。
 答案を提出して教室を出ます。

 9時35分30秒
 校舎を出て、そこからは猛ダッシュ。

 9時37分30秒
 サボテンハウス到着

 一人でやっている時もそんな感じでしたが……二人になると、
なおさら運動会のゲームのようです。
 最後は窓から入るところまで競争になっていました。

 「楽しい」
 「今度は負けないからね」
 二人は荒い息をつきながらソファーに腰を下ろします。

 「あっ、忘れた」
 「何を?」
 「教室で浮かんだメロディー。あんたと競争したおかげて忘れ
ちゃったじゃない」
 「やったあ~勝った勝った。じゃあ、今度は私が弾いてあげる
からね、聞いときなさいよ」
 オマルは得意げにピアノに向かいました。

 『何て楽しいんでしょう。やっぱり友だちがいるっていい事ね』
 こんなに心が浮き浮きしたのは久しぶりでした。

 2時限目の休み時間は、おばちゃんが入れたお茶をいただいて
おじちゃんともおしゃべりしながらゆっくり過ごします。

 本当は『おじちゃん』とか『おばちゃん』なんて言っちゃいけ
ない人たちです。何しろ世が世なら伯爵に伯爵夫人なんですから。

 でも、小4の私が物欲しそうに窓辺から中の様子を窺っている
とおじちゃんが抱っこして部屋の中へいれてくれました。
 その時よんだ『おじちゃん』『おばちゃん』の呼び名が今でも
続いていたのです。

 私だって、そうそう子供じゃありませんから、途中で気づいて
『伯爵様』だなんて呼んでみたこともありましたが……
 「伯爵なんて戦前までの話さ。今はおじちゃんでいいんだよ」
 って優しく頭を撫でてくれました。

 おじちゃんにとって大事なことは呼び名じゃなくて、子供たち
をこうして膝の上に抱き上げてあやすことだったんです。私との
関係が続いたのも、私がそうしたことを嫌がらないからでした。

 おじちゃんは知る人ぞ知るロリコンコレクター。昔は青髭伯爵
だなんて呼ばれていたそうです。
 ですから、奥のコレクションルームには今でも子供たちの絵や
写真が山のようあります。

 もし、そのことを知ったら、今までは無関心でいてくれたパパ
も、この学校から私を連れ戻してしまったかもしれません。

 でも、私はおじちゃんが好きです。小4の時から抱かれ続けて
きたからでしょうか。ちょっぴりHなことをされても、今でも、
そのお膝に乗ることに何のためらいもありません。むしろ、おじ
ちゃんの膝の上にいると心が安らぐのです。
 おじちゃんの膝の上にいると、何だか幼い日に戻った気がして、
あくびなんかしちゃいます。たとえその手が私のスカートの中を
這いずり回っていたとしても、全然OKでした。

 私はこの時もおじちゃんのお膝の上を狙っていましたが、さす
がに今は高校生、オマルがそばにいたので諦めました。
 そのオマルが、突然、素っ頓狂な声を上げます。

 「『千賀文庫』??…何よこれ、あなた、自分専用の書棚まで
あるじゃないの」

 「ああ、それのことね。おじちゃんが読め読めって毎年買って
くるから増えちゃったのよ」

 「ふうん……どんな本読んでるの?」
 彼女は本棚を物色し始めます。
 「ライ麦(ライ麦畑で捕まえて)、ノン束(アルジャーノンに
花束を)、草の葉…ホイットマンか………マンガもあるじゃない。
萩尾、竹宮、山岸……これって、あなたの趣味?」

 「おじちゃんの趣味よ。おじちゃんが私をお膝に乗せて読んで
くれるの」

 こう言うと、オマルは一瞬考え、変な顔をしてこちらを振り向
きましたが、私は真実を述べたまで……でも、笑って答えます。

 「さあ、もう帰らなきゃ。3時限目が始まるわ」


***************************

 3次限目のテストも、二人とも五分を切るタイムで仕上げると
教室の外へ。さすがに三回目は、斉田先生の「あなた方、見直さ
なくていいの?」という声もなくなったみたいでした。
 呆れてはいましたが……

 いずれにしろ、私たちは伯爵様のサボテンハウスに直行です。

 すると、そこには可愛い先客が来ていました。
 8歳の男の子、伯爵様のお孫さんにあたる譲治君です。

 「お姉ちゃん」
 彼は、私が身をかがめて窓から顔を出すなり私の顔に抱きつき
ます。

 「こらこら、悪戯しないの。お姉ちゃんの頭はボールじゃない
のよ」

 私がここへ最初にやってきた時はまだ完全に赤ちゃんでしたが、
物心がつくと、私になつき、いつもピアノをせがみます。
 仕方がないので、膝の上に乗せて童謡を中心に弾いてあげると
とっても喜ぶので、私もいつしか本当の弟のような気分で可愛が
っていました。

 今日は真由美も一緒なので、彼女にもピアノをせがみました。

 夏休みだけの、それもせわしないお付き合いですが楽しい時間
でした。こんなアットホームなひとときなんて、実家に帰っても
どのみち得られませんから……

 私とオマルがアニメソングを一曲ずつ弾いたあと、私の膝の上
で興奮気味に跳ね回っていた譲治君が……
 「ぼくも……」
 と言って弾き始めます。

 流れた曲は『主よ、人の望みの喜びよ』

 それが、意外なほど美しかったのでオマルが……

 パッヘルベルの『カノン』をサービスします。

 すると、譲治君がオマルに……
 「お姉ちゃん、上手だね」
 なんて、おべんちゃらを言いますから、思わずライバル心に火
がついてしまって、私も……

 『きらきら星変奏曲』を……

 でも、これがいけませんでした。
 部屋の鳩時計が11時を知らせようと『ピッポウ』『ピッポウ』
って顔を出したのです。

 「!」
「!」

 二人は、一瞬顔を見合わせ……
 そして、脱兎のごとく窓の外へ……

 「やばい、やばい」
 「あんたが調子に乗るからでしょう」

 二人はいつもよりさらに全力で舞い戻ったのですが……
 間に合うはずがありませんでした。

 教室の入口にはすでに鍵が掛けられ……窓から覗くと、すでに
授業が始まっています。

 『やばいなあ』
 って思っていると、それに気づいた初老のシスターが入口の鍵
を開いて顔を出します。

 ばつの悪そうな二人。

 でも、シスターは冷静でした。

 「いらっしゃい」
 低い声で私たちを廊下の突き当たりにある部屋へと連行します。

 私は、もう先が読めていますから何も言いませんが、オマルは
ここのしきたりを知りませんから、尋ねてきます。

 「ねえ、どこへ行くの?」
 「お仕置き部屋よ」
 「お仕置き部屋?そんなのここにもあるの?」
 「あるわよ、ここはその為の学校なんだもん。ここのはうちの
お仕置き部屋より凄いんだから………授業に遅れたり、授業中に
おしゃべりしたり、友だちと喧嘩なんかすると、シスターに連れ
て行かれるの」
 「で、どうなるの?」
 「どうなるって、お仕置きされるに決まってるじゃない」
 「どんな?」
 「知らないわよ」

 と、ここまでは許してくれていたのですが……

 「二人ともうるさいわよ」
 シスターが振り返って、怖い顔をしますから、二人共しゅんと
なって俯いてしまいます。

 実際、私も、お仕置き部屋へ連れて行かれることは分かります
が、どんな罰になるかは分かりませんでした。

 突き当たりの部屋は、二重になったぶ厚い扉の先にありました。
 中の鞭音や女の子の悲鳴が外に漏れないためです。

 最初の扉を開けると、そこは六畳ほどの小部屋で薄暗く、明か
りはロウソクだけ。その炎に照らされてマリア様の像が高い場所
から微笑んでいます。

 子供たちはそれが小学生であれ、高校生であれ、この像の前で
膝まづいて、ある誓いを立てなければなりませんでした。

 「私は授業に遅れてしまいました。二度とこのような事がない
ように自分を厳しく律してまいります」
 「私は授業に遅れてしまいました。二度とこのような事がない
ように自分を厳しく律してまいります」

 桃園学園の生徒でいると、このくらいの言葉は誰でもすらっと
でてきます。というのも桃園の生徒は穢れた心を持たずピュアで
いることが勉強ができることより大事なことだったからです。
 そんなピュアな心を持ち続ける為に、お仕置きされるかどうか
は別にして、どんな細かな過ちもすべて親や教師に報告して懺悔
しなければなりません。
 懺悔は通知表に載らない必須科目みたいなものでした。

 ベテランシスターが二つ目の扉を押し開いて二人を奥の部屋へ
招き入れます。
 ここからが本当のお仕置き場、二人にとっては足のすくむ場所
でした。


***************************

3/8 初めてのお酒

3/8 初めてのお酒

*)思い出話

 その日は、父と一緒に質屋組合の寄り合いに参加していました。
寄り合いと言っても中身は日帰りの親睦会で、当時まだ幼稚園児
だった私もおまけで参加していました。

 温泉旅館に着くと、さっそく大きなお風呂で泳いで、長い廊下
を走り回って、お土産を売っているガラスケースに乗っかったり
とやりたい放題です。

 でも、そんな探検旅行が一段落すると、レジャーランドのよう
に遊具がありませんから、やることがなくなります。
 仕方なく元いた広間に戻ると、今度は一緒にバスでやってきた
はずの大人たちがいませんから、独り残っていたおじさんに……

 「お父さんは?」
 って、尋ねたら近くの名所をみんなで見に行ったとのこと。

 仕方なく、独りでお銚子を傾けているそのおじさんのおそばに
いることにしたのです。
 スルメや裂きイカなんかもらって、お酌なんかしながら……

 すると、そのうちそのおじさんがこんな事を言うのです。

 「坊や、お前も一杯やるか」
 ってね。

 もちろん、ぼくはそれまでお酒なんか一滴も飲んだことがあり
ませんでしたが、父が飲んでいるのは目にしていましたから興味
はあったんです。

 そこで……
 「うん」
 と言うと、おじさんが盃にほんのちょびっと注いでくれます。

 それは時間が経つと自然に乾いてしまうほどちょびっとだった
んですが、飲んでみました。

 『美味しい』
 正直、そう思いました。
 そしてそれまで知らないおじさんと二人きりだった部屋が急に
楽しい場所に思えるようになったのです。

 すると、そんなぼくの変化におじさんも気づいたんでしょうね。
 「おまえ、なかなかいける口じゃないか。よしもう一杯いくか」
 って、僕を膝の上に抱くと二杯目を注いでくれるんです。

 前の一杯が美味しかったぼくは二杯目もグイッとやってみます。

 『わあ~~~こんなに楽しい気分は初めてだ』

 盃二杯、それもほんのちょびっとの量だったんですが、何しろ
幼稚園児で小さな身体でしたからね、完全に酔っ払ってしまった
のでした。

 そして、三杯目、四杯目、……
 『わあ~~~天井が回ってる』
 ぼくはおじさんの膝に座ることさえできず、その場に倒れこみ
ます。
 天井は回っていますが、とてもいい気分でした。

 そうやって倒れてる私は、やがて、座敷に帰ってきた父に発見
されます。
 すると、こちらは気分がよく寝ていても、私を見つめる父の顔
は恐ろしく怖いものでした。

 『やばい、お酒飲んだから怒ってるんだ』

 すぐに、そう思いましたが、何しろ足腰が立ちませんからどう
にもなりません。
 ぼくはお仕置きを覚悟したんですが……
 父が僕にしたのは、温泉場へ連れて行って、頭を水で冷やして
脱衣場の畳の上に寝かせただけでした。

 その後のことは母から聞いたのですが、父は私にお酒を飲ませ
たおじさんの胸倉を掴んで……
 「どうして家の息子に酒なんか飲ませた。お前、俺に恨みでも
あるのか。もし死んだらどうするつもりだ」
 って怒鳴り散らしたそうです。

 一触即発、周りにいたみんなが止めなかったらきっと殴り合い
の喧嘩になっていたみたいです。
 喧嘩っ早い人ならともかく、普段とっても大人しい父ですから、
周囲の人たちが一様に『あの時は驚いた』って言ってました。

 それで、その旅行はその後父の懐に入れられて無事帰ってきた
わけですが、これには後日談がありまして……

 数日後、今度は父が私に……
 「お前もやってみるか?」
 って盃を勧めたんです。

 もちろん、量はほんのちょびっと。一杯だけですが……
 でも、やっぱり美味しかったです。

 おじさんと喧嘩までしたそんな事を、今になってなぜ僕に求め
たのかは謎ですが、父もまたおじさん同様、盃を飲み干す僕を懐
に抱いて満足そうでした。

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Appendix

このブログについて

tutomukurakawa

Author:tutomukurakawa
子供時代の『お仕置き』をめぐる
エッセーや小説、もろもろの雑文
を置いておくために創りました。
他に適当な分野がないので、
「R18」に置いてはいますが、
扇情的な表現は苦手なので、
そのむきで期待される方には
がっかりなブログだと思います。

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