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姉妹

  **********<姉妹>*************

 彩香は学校の補習を終えて帰宅した。

 学校からまっすぐ帰ってくれば6時過ぎには戻れるはずだが、
彼女が自宅玄関をくぐったのは、近所の外灯がぼんやり灯る7時
過ぎのこと。学校での補習後、友達とサテンでだべっていたのだ。

 本来、彩香の家では年齢に関係なく門限を6時に定めていて、
それを厳しく守らせていたが、さすがに高校生ともなると、親も
そのあたりは大目に見ていた。

 「?……お客さん?」
 玄関に見知らぬ紳士靴がある。

 しかも家の奥から話し声が聞こえて来る。
 聞き覚えのある声。何かと世話好きな大叔父さんの声だ。

 早速、荷物を自分の部屋に置いて、挨拶だけすませておこうと
居間へ出向くと、大叔父さんはすでにお酒が回ってご機嫌な様子
に……。

 「おう、彩香ちゃん、おおきゅうなったなあ、ついこの間まで
赤ちゃんやったが、いつの間にかこんな立派な娘さんになっとる。
わしが歳を取るはずじゃ」

 大叔父さんは、きちんと正座して挨拶する彩香をその赤ら顔で
嬉しそうに眺める。

 「今日はちょっと千歳ちゃんのことで寄せてもろたんじゃ」

 今日の用向きは彼女ではなかった。三つ上の姉、長女の千歳に
お見合いの話を持ち込んでいたのである。

 この家の子供たちは女の子ばかり三人。
 長女千歳は短大を出て今はすでに就職している。
 次女は受験を控えたこの彩香だが、このほかにも小学五年生の
真理がいた。

 大叔父さんはせっかくやってきた彩香を肴に……
 「今はこんなに立派になっとるがな、わしゃあ、お前のオムツ
だって換えたことがあるんだぞ」と自慢してみたり……「その時、
ちょっと暇だったもんだから……(はははは)お前のあそこに、
マッチ棒を差込んでみたら、お前が無邪気に笑ってなあ」などと、
しらふでは言えないような話が飛び出す。

 聞くに堪えないので、彩香が席を立とうとすると……
 「そうか、これからまた勉強するんじゃろう。受験生は大変だ。
……そうだ、ほら、これを夜食にすりゃあいい」

 大叔父さんは部屋で出されていたローストチキンの皿を彩香に
無理やり押し付けた。

 「いえ、けっこうです」
 もちろん『そんなものいらない』と断ったのだが、そこは母が
とりなして、結局その皿を持って居間を出る。

 皿は台所へ持っていくつもりだったが、廊下へ出たところで、
母が追ってきて耳打ちをした。

 「ねえ、あなた、真理の部屋へ行ってあの子の様子を見てきて
くれないかしら?」

 「真理って?……あの子、また、何かやらかしたの?」

 彩香は『またか』という思いで母に尋ねた。
 実際、三女の真理は小学生であることを差し引いても三人の中
では一番のお転婆娘。心がまだ子供といった感じで、両親からの
お仕置きも枚挙に暇がないのだ。

 「今日はもらってきたテストが悪かったんで、お昼からずっと
ドリルをやらせてたんだけど、夕方、友だちが誘いに来たもんで
遊びたくなって部屋をこっそり抜け出そうとしたみたいなのよ」

 「それをお父さんに見られた?」

 「ま、そういうところね。二階のベランダから庭の樫の木の枝
に飛び移ろうとしたみたいだけど、失敗して宙ぶらりんで泣いて
るところをお父さんに助けてもらったの」

 「なるほどね、あいつならやりかねないわ」

 「これが初めてじゃないし……先週、建物に近い方の枝を切り
払ったから、もう大丈夫だろうと思ってたんだけど性懲りもなく
またやりだすんだもの。お父さん、カンカンなのよ」

 「それで、今は?」

 「部屋でモーモーさんさせてる」

 「お仕置きはしたの?」

 「その予定だったんだけど、急に大叔父様が見えたでしょう。
それどころじゃなくなっちゃって、真理には『ベッドの上でモー
モーさんを続けてなさいって言いつけてあるの」

 「それを私が見てくればいいのね。わかったわ」

 「いえ、見てくるだけじゃなくて……そのあたり、あなたの方
で、適当に処理して欲しいのよ」

 「処理って……私が?」

 「そう、もし反省してないようだったら、パンツ脱がしてビシ
ビシやって構わないわ。お尻が真っ赤になるくらい構わないから」

 「私が真理のお尻を叩くの?」

 「そうよ、あなたも、もう大人なんだから、お仕置きをされる
んじゃなくて、そろそろやる側に回らなきゃ。前に二三度やった
から要領は分かってるでしょう」

 「そりゃあ、そうだけど……」

 「最初は軽くゆっくり叩くのよ。それからペースをあげてって、
最後は左手で真理の身体をしっかり締め付けておいて思いっきり。
わかるでしょう?でないと、あの子も体だけ大きくなってるから
少々のことでは反省にならないのよ」

 「ちょっと、ちょっと待ってよ。……あれはお母さんが一緒に
見ていたからで……私一人じゃ……まだ無理よ」

 「大丈夫、大丈夫、何も心配いらないわ。相手は小学生だもの。
もし抵抗してきたら『私はお母さんの代理で来てるの。そんな事
してると、お母さんに言いつけるけど、それでもいいの』って、
脅しつけたらおとなしくなるわ」

 「でも、お客様も見えてるし……あの子、悲鳴なんてあげたら」

 「心配性ね、あなたは。そりゃあ、なるべく悲鳴が上がらない
ようにやって欲しいけど、大叔父様は、お客様と言っても真理が
どんなにお転婆な子かご存知だもの。悲鳴があがったとしても、
そこは察してくださるわ」

 「それは、そうかもしれないけど……」
 彩香がぼそぼそっとつぶやくと……

 「いいこと、あの子のことだから、また何だかんだとへ理屈を
こねて逃げようとするかもしれないけど、そんな時は問答無用で
パンツを脱がして構わないわ、お尻を真っ赤にしてから私を呼ん
で頂戴」
 お母さんは心配性の彩香に発破をかける。

 当時は総じて兄弟の数が多く、歳の離れた兄弟姉妹がいる家庭
も珍しくなかった。そんな環境のもとでは、長兄が親の代わりに
なって弟や妹たちをお仕置きするなんてこともそれほど不思議な
事ではなかったのである。

 「えっ!そこまで私がやるの?」

 驚く彩香に、母は……
 「そりゃそうよ、あなたしかいないから頼んでるんだもの」

 「だって……」

 「だってもしあさってもないわ。あなた、もう高校生でしょう。
小学生の妹の躾ぐらいちゃんとできないでどうするの!」

 「だってえ~~」

 「何がだってよ。高校生にもなって甘ったれた声をださないの。
あなただって、将来は子供を産んで母親になるのよ。その子に、
お仕置きの一つもできないようじゃ母親失格。『鞭を惜しむは、
その子を憎むなり』なんて言葉知らないかしら?……さあ、私が
責任持つから、とにかく行ってらっしゃい」

 彼女はそう言って彩香の背中を押す。

 『女の子は、適齢期になると結婚して子供をつくり、その子を
立派に育て上げる。そのためにはお仕置きだって必須科目』
 というのが当時の常識だったのだ。

 実際、彩香だってこれまで何度も両親からお仕置きされてきた。
ただ、その時は自分に非があり、自分が我慢すれば済む。でも、
今回は可愛がってる妹の事であり、自分ではどうにもできない。
だから、それ以上に気は進まなかったわけだが、彩香だってこの
家に生まれ、母の子供なわけだから、不満はあってもそこはやる
しかなかったのである。

 「わかった、やってくる」
 彩香はいかにも渋々と言った感じで母と別れ、階段を上がって
いく。

 ただ、こうと決まれば、女の子は切り替えが早い。
 階段下から真理のいる部屋を見上げた彩香は、すでに不気味な
笑顔を浮かべていて……

 『待ってなさい、真理。このお姉ちゃんが、あなたをヒーヒー
言わせてあげるからね。どんな顔するかしらね、楽しみ、楽しみ
(ひひひひひ)』

 さっきまでの同情心はどこへやら、そろりそろりと階段を登り
始める頃には、妹の泣き叫ぶ顔を想像して、すでにほくそ笑んで
いたのである。

 彩香は、最初、まるで猫が歩くように忍び足で二階への階段を
登っていくが、それがもうあと四五段で頂上という処までやって
来ると、今度はわざとドスンドスンといった感じで自分の体重を
乗せ、一段一段踏みしめながら上がっていく。

 とたんに、猫が人間の気配に驚いて逃げ去る時のような物音が
した。

 彩香はしてやったりと苦笑い。
 『案の定だわね』

 自分だって同じ事をしてきたから他人を非難できないが、彩香
にしてみたら、廊下に漏れ出る音の気配だけでその部屋の様子が
容易に想像できたのである。

 真理の部屋の前まで来ると、ノックなどせず、勢いよくドアを
開け放つ。
 これもまた、母がいつもしていることだった。

 「…………」
 そこに見えたのは予想通りの光景。
 真理が頭を抱えてベッドの上で四つん這いになっている。

 この四つん這いのポーズは、その姿が牛を連想させることから
三姉妹が暮らすこの家では『モーモーさん』と呼ばれ、ごく幼い
頃には粗相したお尻をこの姿勢になって綺麗にしてもらっていた。
 その後、赤ちゃんを卒業してからは粗相こそしなくなったが、
もっぱら鞭のお仕置きを受ける時は、この姿勢が最も正しい姿勢
として家の習慣となっていたのである。

 親からは『モーモーちゃんで待ってなさい』って命じられると、
この姿勢でお仕置きを待っていなければならないのだ。

 モーモーちゃんだなんて可愛いネーミングだが、当の子供たち
にとっては、その命が下る時、顔が青ざめ、唇が震え、喉が渇き、
全身鳥肌という恐怖の姿勢だったのである。

 ただ、そうはいってもお仕置きまでの待ち時間があまりに長い
と、子供だはだれてしまう。
 そういう時は本人の判断でいったん緊張を解いてリラックス。
 階段を父や母が登ってくる音を聞きつけてから慌ててベッドへ
駆け上がり、牛さんに戻るのが普通だった。

 先ほど彩香が聞いた部屋の中から聞こえてきた物音というのが
まさにこれだった。

 彩香はわざと大声を出す。
 「真理、おとなしくモーモーちゃんしてた?間違っても今まで
床の上で寝そべってたなんてことはないでしょうね。そんなこと
したらお仕置きを倍に増やしますからね」

 「違うよ、そんなことしてないもん」
 真理の怯えたかすれ声がする。

 彩香はたしかに大声だったが、それにしても、普段、冷静な時
なら母と姉の声を聞き間違えるなんてことはしないだろう。
 しかし、階段のきしむ音を聞いて慌ててベッドに駆け上がった
真理は母が来たものだと思い込んでいる。だから姉の声も母の声
に聞こえたようだった。

 ただ、少し時間が経つと、それもさすがにおかしいと感じたの
ようで……恐る恐るそうっと後ろを振り返ってみると……。

 「なんだ、お姉ちゃんじゃない!脅かさないでよね!」
 真理はほっとしたのか、ベッドにそのまま仰向けに倒れこんで
しまう。

 ところが……

 「何よ、不満そうね、私じゃいけないの?」

 「不満ってわけじゃないけど……てっきりお母さんが来たのか
と思ったから……」

 「あんた、また、勉強時間に部屋を抜け出したんですってたね。
それが見つかって、お父さんに、『あとでお仕置きに行くから、
それまで自分の部屋でモーモーちゃんやってなさい』とか言われ
たんでしょう」
 彩香をはお父さんのモノマネをしながら妹をくさす。

 「なんだ、お姉ちゃん知ってるのか。どうせ、下で聞いてきた
んでしょう。分かってるならそれでいいじゃない。帰ってよ」
 真理はひとごこちついたのかベッドの上に起き上がるとその場
に胡坐を組んで座る。彼女にとってはこれが普段の姿勢だ。

 「わざわざ冷やかしに来たの?……それとも可愛い妹の悲鳴が
そんなに聞きたいわけ。……まったく、姉ちゃんはサディストで
悪趣味なんだから……」

 「いいの?私にそんな悪態ついて……今日はね、お母さんから
あなたのお仕置きを命じられてきたの。お母さんの代理よ」

 「うっ、うそ~~嘘でしょう。そんなの嫌よ。何でよ~、何で
私がお姉ちゃんからお尻ぶたれなきゃならないのよ」

 「何よ、それはこっちのセリフだわ。何で私があんたみたいな
汚い尻を叩かなきゃならないのさ。こっちこそよっぽど迷惑だわ」

 「わあ~~汚いって……私のこと侮辱した。こっちだって毎日
お風呂で綺麗に洗ってるんだから、ローションだって着けてるし、
汚いわけないでしょう」

 「あら、そうかしら?今日だって樫の木の枝にぶら下がってた
みたいじゃない……山猿みたいに……山猿のお尻がそんなに綺麗
なわけないでしょう」

 「…………」
 真理はここまで来てようやく姉の口車に乗ってしまったことを
悟ったのだった。

 「私だってこんな山猿の子守なんて御免だけど、仕方がないで
しょう。お母さんの命令なんだから……とにかく覚悟するのね。
……あっ、それはそうと……客間に置いてあった進物用の菓子箱、
あれ、水引が解かれてたみたいだけど……あれ、解いたのまさか
あなたじゃないでしょうね」

 「げっ!目ざとい。さすが、お姉ちゃん。食べ物の事となると
さすがに人間離れしてる」

 「何が人間離れよ。それはあんたの方でしょうが……座卓の下
に置かれた御菓子の箱の水引が解かれてたから、おかしいなとは
思ってたけど、やっぱり、犯人はあなただったのね」

 「犯人だなんて大仰なこと言わないでよ。大叔父さんが持って
来た御土産を先に一つだけ頂いただけじゃなない」

 「何言ってるのよ。呆れてものがいえないわ。何の取柄もない
くせに食い意地だけは張ってるんだから」

 「えっ……何よ……あれ、大叔父さんが家に持って来たお土産
じゃないの?」

 「呆れた、あんた、本当に山猿ね」

 「山猿、山猿ってうるさいなあ」

 「だってそうじゃないの。要するに、あんたは、あれをつまみ
喰いしたんでしょう!」

 「えっ?……まあ……だって、あの時は、誰もいなかったから
……でも、一つだけよ」

 「一つでも全部でもこの場合は同じなの!!」
 彩香は憎憎しそうに顔を歪ますと……

 「なんだ、だったら全部食べちゃえばよかった。小さい御菓子
だからね、一つじゃ物足りないなって思ってたのよ(へへへ)」
 真理はとげとげしい雰囲気を和らげようと冗談を言ったつもり
だったが……

 「この子、呆れてものが言えないわ。あれはね、お姉ちゃまの
お見合い相手に届ける進物なのよ。一つ食べようと二つ食べよう
と水引を解いちゃったらそれで使いものにならないわ。ホント、
あんたってどこまでトンチンカンなの!!」

 「そうなの?あれダメだったんだ。だって、知らなかったんだ
もん……へえ~~千歳姉ちゃん結婚するんだ」
 真理は心細げに彩香を上目遣いに見上げる。

 どうやら自分がまずいことをしたみたいだというのは分かった
みたいなのだが、反省の顔色はイマイチ。

 「あなたって、おバカでお転婆なだけでなく、常識ってものも
まるでないみたいね。こんなバカな子、山猿に違いないじゃない。
これじゃあ、お父さんが怒るはずだわ」

 「でも……あれ……元のようにして座卓の下に置いてきたから
まだ発見されてないかも……ねえ、あれって、そんなに大切な物
だったの?」

 「当たり前でしょう!!」

 「……何よ、そんなに怖い顔しないでよ」

 「何なら、下へ行ってお母さんに白状してみたら?……きっと、
どれくらい大切なのかわかるはずよ。……ひょっとしたら、お灸
すえるなんて言い出すかもね」

 「えっ、まさか……だってお饅頭一つくらいでそんな……嘘よ」
 真理はお灸と聞いて明らかに怯えている。
真理にしてみたら、お灸はたった一回の経験なのだが、それで
十分なほど怖かったのである。

 「行ってらっしゃい。謝ってらっしゃいよ。私の方は、その間
くらいなら待っててあげていいのよ」

 「…………」
 彩香にこう言われると、真理は黙ってしまう。

 もちろん下へ行って母に尋ねてもよいだろうが、そんな勇気、
真理にはなかった。
 とりわけ、父に見つかったら……
 そう思うと、真理は姉の言葉を信じるしかなかったのである。

 「どうしたの?行かないの?……そう、だったら、お母さんに
頼まれた分、先に始めましょうか」
 彩香がいつの間にか真理の椅子に腰を下ろすと、膝をたたいて
待っている。もちろん、顔は怖いままだった。

 真理は大の字になれる広いベッドを離れ、窮屈な狭いベッドへ
と移る。それしか、今の真理に選択肢はなかった。

 彩香は、短いスカートの裾を上げると白い綿のショーツをむき
出しにする。
 「良い子ね、あんたも、いつもこのくらい素直だと可愛いわよ」

 「余計なお世話よ」

 ちょっぴりふて腐れた様子で身構える真理。体を固くしている
のが彩香にはすぐにわかった。

 「パン……パン……パン……パン、……パン……パン」

 最初は緩くゆっくりとしたペースで真理のお尻を叩き始めた。
それは懲罰というよりどこかコミカルでまるで遊んでいるように
見えるスパンキングだ。

 「いいこと、真理、今は千歳お姉ちゃんにとってとても大事な
時期なの。相手はうちなんかとは格違いのお家柄なの」

 「格違いって、お金持ちってこと?」

 「それだけじゃないけど……まあ、それもあるわね」

 「ふう~ん、シンデレラくらい凄いの」

 「ええ、まあ、そんなところよ。身分違いだからこそ、ことは
慎重に進めないといけないってお父さんが言ってたわ。それを、
あんたったら、先様へ持っていく進物の水引外して中の物を食べ
ちゃうんだもの……開いた口が塞がらないわ!」

 「ピシッ」
 彩香は一つだけ厳しく叩く。

 たちまち真理が文句をつけた。
 「いやあ~~、痛いでしょう!だって、知らなかったのよ」

 「何言ってるの、これはお母さんから頼まれたお仕置きの方。
……文句言わないの」

 「あ~あ、そうかあ~~千歳お姉ちゃま、いいなあ。私も結婚
するなら絶対、お金持ちの家がいいなあ」

 「何言ってるの。あんたみたいに、お転婆で恥知らずで教養も
なんにもない子をもらってくれる酔狂な家なんて、どこにもある
わけないじゃない」

 「いやな言い方しないでよ。私だって特技くらいあるのよ」

 「特技?……あんた何ができたっけ?」

 「失礼ね、だって、去年のお祭りで大福21個食べて優勝した
じゃない。忘れたの!!」
 真理は気色ばむが……

 「大福って……あの、大食い大会のこと?…………」
 彩香は真理のお尻を丁寧に優しく叩きながら絶句する。

 「そうよ、あの時は、男の子よりたくさん食べたんだから……
立派な特技でしょう」

 「あっ、そう……」
 彩香は吐き捨てるようにあしらう。

 そして、お母さんから言われていた禁句を……
 『私、こんなバカが妹だなんて恥ずかしいわ。私もお姉ちゃん
も学校でトップを争ってたのよ。どうしてあなただけ出来が悪い
のかしらね』
 と心の中で思うのだった。

 そんな腹立ち紛れもあったのだろう、彩香がペースを上げる。

 「ピシッ……」

 「いやあ、痛い!……痛いでしょう!」
 その痛さに真理は思わずその手を後ろに回そうとしたが、右手
も左手も姉に戒められていて自由にならない。

 すると、そんな真理の苦情に彩香は……
 「何言ってるの。いつまで甘えてるのさ。あんたも大きいんだ
からね、こんなもんで許されるはずがないでしょう。今までのは
ウォーミングアップ。これからが本番よ」

 「ピシッ……」

 「いやあ、痛い!……もう、しちゃだめ~~~」

 「ダメって、何よ!これからが本番だって言ってるでしょう。
とにかく、私は、お母さんから『真理のお尻をお猿さんみたいに
してちょうだい』って言いつかってきたの。お尻が真っ赤になる
まではお膝から下ろさないからね。覚悟なさい!」

 「そんなあ~~」

 「ピシッ……」

 「いいじゃないのさあ。ここにはお母さんがいないんだもん。
お母さんには、ちゃんとお尻が真っ赤になるまでぶちましたって
報告すれば……」

 「ピシッ……」

 「いやあ~~」

 「そんなズルはしません。それにお母さんがちゃんと叩けたか
どうか検査に上がって来るもの。お前のお尻をちゃんと赤くでき
なかったら今度は私のお尻が赤くなるわ」

 「ピシッ……」

 「ギャァーー」

 「何が『ギャァーー』よ。このくらいで騒がないでちょうだい。
……あんた、本当に堪え性がないんだから」

 「ピシッ……」

 「ギャァーー」

 「ほら、また~~。大仰に悲鳴を上げないでちょうだい。下に
聞こえたらどうするの。まるで、私があなたを虐待してるみたい
じゃない」

 「そんなこと言ったって……」

 「ピシッ……」

 「ギャァーー」

 「まったく、処置なしねこの甘ったれは……私なんて、あなた
くらいの歳には、もう、お父さんからお尻をぶたれても悲鳴なん
て上げなかったわ。昔は、平手でちょっとでも悲鳴をあげたら、
猿轡をされてお母さんから体を押さえられて、竹の物差しでこれ
でもかってくらいぶたれたんだから……」

 「ピシッ……」

 「ギャァーーやめてえ~~~~~~」

 真理は本気になって彩香の膝から降りようとしたが、しょせん
体力では大人と子供、どうすることもできずもがくだけ。
 それしかできなかったのである。

 「だめ、だめ、このくらいじゃお尻が赤くならないでしょう。
ちゃんと我慢してなさい」

 「ピシッ……」

 「ギャァーーやめてえ~~~~~~」

 甲高い悲鳴が階下にまで届くが、彩香は振り下ろす右手を止め
ない。

 「ピシッ……」

 「痛いから、やめてえ~~~~~~」

 真理の両足が痛みに耐えかねて大きく振りあがると、その踵が
彩香の鼻を掠める。

 「(わっ)まったく、お行儀の悪い子ねえ、危ないじゃないの!
そんなにあんよをヨバタバタさせたいなら、パンツも脱がそうか」

 彩香のちょっと怒った様子の声に真理は全身が震える。
 それが、抱いてる彩香にはよくわかった。

 「どう、少しは懲りたかしら」

 「ピシッ……」

 「いやあ~~ごめんなさ~~い」

 「あなた、4や5は無理でもせめて算数は3にしてちょうだい。
でないと、私がお友だちと会って恥ずかしいの」

 「ピシッ……」

 「します、します、約束します~~ごめんなさ~~い」

 「口先だけじゃだめなのよ。ちゃんと真面目やらなきゃ成績は
あがらないんだから。わかった!?」

 「ピシッ……」

 「わかりました。ホントに、ホントにやるから、もう許して、
お尻、お尻、壊れる」

 「壊れません。お尻は壊れないようにできてるの。だから外人
の子はお尻をよく叩かれるの。一番安全な場所だから叩いてるの」

 「ピシッ……」

 「いやあ~~~~」

 「これからは、お友だちが遊びに誘ってもちゃんと断れるの!」

 「ピシッ……」

 「えっ?」
 その瞬間、正直な真理は言葉に詰まってしまう。
 すると、また……

 「ピシッ……」

 「いやあ~もう、ぶたないで、お願い、お願い、しますします
ホントに、ホントしますから……」

 「ピシッ……」

 「ひぃ~~~~」

 真理は、彩香がギアを入れてからは常に両足をばたばたさせて
いたが、最後は一段と応えたとみえて、姉の膝の上でその背中が
弓なりになった。

 「よし、今日のところこんなものでいいかな」

 彩香は綿の実のような真理の白いパンツを摘み上げると、その
中がしっかり熟していたから、満足そうに笑って元に戻した。

 と、ここで、彩香にとっても意外な声がかかった。

 「うまい、うまい……あなた、上手じゃない。この位できれば
合格よ。あなた、いいお母さんになるわ」

 二人は、突然のお母さんの声にびっくり。
 真理は驚いてお姉ちゃんの膝を飛び降りたが……

 「真理、こっちへ来なさい」

 こう言われると、そこは小学生、嫌も応もなく母のそばにきて
……

 「後ろ向いて」
 と言われれば、何のためらいもなく後ろを向く……

 そして、いきなりパンツを下ろされたのだが……

 「………………」
 真理は黙ったまま、苦情も悲鳴も何もなかった。

 いや、これが彩香であっても同じだったかもしれない。
 当時の親は、守り育ててきた子供のパンツを脱がすことなんて
朝飯前。悲鳴なんて上げさせなかったのである。

 「うんうん、いい色に仕上がってるわ。これなら真理も十分な
反省ができたみたいね」

 お母さんは真理のお尻を品定め。そして……

 「こんなに上手にできるんなら、今度から真理のお仕置きは、
あなたに頼むことにするわ。今度はお尻叩きだけじゃなくお浣腸
やお灸もやってみればいいわ。覚えておいて損はないわよ」

 なんて言い出す始末だった。

 「ちょっと、やめてよ」

 彩香は顔をしかめるが……
 「何よ、いいでしょう?……何事も経験。花嫁修業の一つだと
思えばいいのよ」

 お母さんは、真面目な顔で彩香を説得する。
 そして、最後は……

 「あなたたち、今のうちにお風呂に入ってらっしゃい」

 となって、このお仕置きはひとまず終了するのだった。


**********<おしまい>*************

Appendix

このブログについて

tutomukurakawa

Author:tutomukurakawa
子供時代の『お仕置き』をめぐる
エッセーや小説、もろもろの雑文
を置いておくために創りました。
他に適当な分野がないので、
「R18」に置いてはいますが、
扇情的な表現は苦手なので、
そのむきで期待される方には
がっかりなブログだと思います。

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