2ntブログ

Entries

8/30 お仕置きと折檻

        お仕置きと折檻

 よく出てくるテーマだけど、僕の基準は単純なんだ。
 お仕置きは相手を育てたい良くしようと思っている人の懲戒。
 折檻は法律や規則を隠れ蓑にした腹いせ。
 つまり、行為は同じでも罰を与える側に『継続的な信頼関係』
があるかどうかでこの二つは区別されてるんだ。

 昔は、学も教養もない飲んだくれのオヤジなんかも多くてね、
晩酌している目の前で子どもがテレビのチャンネルを変えようも
のなら、とたんに小皿や湯のみなんかを子どもに投げつける父親
ってのが珍しくなかった。

 これって、父親が自分の見ていたテレビ番組を子どもに変えら
れた腹いせにやってるんだろうから虐待って思えるかもしれない
けど、僕にしたらこれだってお仕置きなんだ。

 だって、その瞬間はともかく、365日、5年、10年、20
年、とにかく長いスパンでみたらその子はその飲んだくれの親父
が愛し続けているかけがいのない息子なんだから、この瞬間だけ
取上げて、「これは虐待だ」って声高に叫ぶ必要はないと思う。

 日常生活で繰り広げられるいささか不条理な出来事を、あえて
別にとらえて『折檻』と呼ぶ必要はないと思ってるんだ。

 それが証拠に、父親が投げるその小皿は、たとえ酔っていても
全力投球じゃないわけだし、全力で投げる時は的が外れるように
投げているんだから、理性も愛情も残ってるじゃないか。

 そもそも子どもが完璧じゃないように親だって神様じゃないん
だから、大きな括りで信頼関係が破綻していなければそれは虐待
と呼ぶ必要はないと思うんだよ。

 僕の小説にも親が不条理な理由を付けて子どもを折檻する場面
はいくらでもあるけど、あえて『折檻』とは言わず『お仕置き』
で通すことが多いもの。

8/28 お妃選抜試験

         お妃選抜試験

                  『ロワイヤル公国』から

選ばれた三人
 シャルロッテ(お嬢様風、緩やかな長い髪、清楚でおしとやか)
 ソフィー(ボーイッシュな短い髪、物怖じしない明るい性格)
 デラ(肩甲骨まで伸びる長い髪、理知的で包容力があり、勘も
鋭い)

モルソフ伯爵夫人(先代ジョセフ公の未亡人)
 夫の死によって息子のフランク公が形の上では元首になったが、
つい最近まで摂政として辣腕を振るっていたのは彼女である。
 今日にあっても、モルソフ家の実権は依然として彼女が握って
おり、フランク公もこの母親には頭が上がらない。

フランク公
 父の跡を受けてロワイヤル公国の元首におさまってはいるが、
アウトドアのスポーツや狩りは苦手で、インドアの読書やボトル
シップ作りが趣味といった軟弱男。為政者として見た時は、国民
にも人気があり愚鈍とまでは言えないものの36才の現在までに
二度の離婚歴がある。
 原因は極度のマザコン。前妻との婚姻中も寝室を共にしたのは
もっぱら母(伯爵夫人)の方だった。

***************************

 お妃選びはいよいよ佳境。
 広間には女王様のおめがねにかなった少女達が緊張した面持ち
で並んでいる。
 千人もいた候補者が百人になり……十人になり……そして、今、
候補はこうして三人に絞られるのだ。

 一人はシャルロッテ。頭の真ん中で分けられたストレートヘア
が肩先まで伸び、その先端だけ小さくカールしている。気品とか
清楚といった言葉がよく似合うお嬢さんだ。
 多くの国民は彼女こそお妃様にふさわしいとみていた。
 実際、母親も息子が初婚なら彼女を押していたに違いなかった
のだが……。

 二人目はソフィー。短い髪、ソバカスだらけの顔、落ち着きの
ない仕草だけみていると、男の子と見紛いそうだが、明るい性格
で、友だちの間での評判は高かった。
 母親にしてみると少し軽薄な気もするが、息子の好みならまず
彼女だろうと思い残しておいたのである。

 三人目はデラ。三人ともみんな同じ13才だが、見た目は彼女
が一番年長に見える。シックな装い、肩甲骨まで伸びる髪がその
若さを打ち消しているのかもしれない。外見はまるで巫女さんか
占い師のようにも見える彼女だが、包容力があり、反面勘も鋭い。
母親は『自分の後釜としてなら彼女を…』と感じていたのである。

 とはいえ、それらはあくまで風貌だけでのこと。心はといえば、
どの子にもそこに大きな差はない。いずれも、人生経験の乏しい
ひよこたちに違いなかった。

 「侍従長、フランク公の姿が見えませんが、どうしました?」

 女王陛下があたりを見回しながら侍従長を呼ぶと……
 「はっ、陛下は今はまだ湯殿で御仕度中とのことでございます」
 との答え。

 「湯殿?……またですか。…とにかく、早くこちらへ来るよう
申し伝えなさい」
 母親は苦りきった顔で侍従長に命じる。

 本人はさして大声を出したつもりではなかったが、その声は、
三人の娘達にもはっきりと聞こえたのだった。

 女王陛下はすでに還暦をとうに過ぎていたが、その美貌は未だ
衰え知らずで、特にそのよく通る声は国境の兵士にまで届いたと
噂されるほどだったのである。

 一方その殿下だが、こちらはサウナの長椅子に大の字になって
横たわると、美女を六人もはべらせて、今はまだお楽しみの最中
だった。

 一人の子がおっかなびっくり陛下の髭を剃る間、他の子は殿下
の色んな場所を舐めている。手の指、足の指、乳首……もちろん
彼にとって一番大事な場所も例外ではなかった。

 彼は若い頃から、全身をくまなくくすぐられるうちに髭を剃る
のを楽しみにしていたから、こうしたことは、今の思いつきでは
ない。

 さらにはこうした儀式、幼き公を母がこうやってあやしたこと
に始まるから、それも含めれば、フランク公はもう随分長い間、
こうやって遊んでいたことになる。

 もちろん、今、母親はそんなことはしていないし、昔、自分が
そんな事をしていたことさえ覚えていない様子だが、息子の方は
母のフェラチオの様子を克明に覚えていた。

 「お楽しみのところ、大変申し訳ございませんが、女王陛下に
あらせられましては、早急なる君のお召しをお望みにございます」

 「母上が……ああ、わかった。すぐに参りますと伝えてくれ」
 フランク公はドア越しの声にそう言って返事を返すと、木製の
ベッドからやおら起き上がる。

 「二度失敗して、まだ懲りぬとは、母上もしつこいお方だ」
 木製ベンチに腰を下ろしたフランク公は淡い金髪を右手で掻き
揚げてから愚痴を一言。あとは、ブルーの瞳でそれまでご自分に
奉仕してくれていた女の子たちに向かってやさしく微笑んだ。

 色白で長身、もともと童顔の彼は、見た目男らしいという感じ
は受けない。母親の影響もあって普段の彼は柔和で折り目正しい
好青年なのだ。ただ、ごくたまにだが、激高することもあって、
そんな時、女の子は彼のそばにいてはいけなかった。

 身なりを整えた彼は……といっても全裸に比べればというだけ
で服装はいたってカジュワル。半ズボンにポロシャツ姿でサウナ
から出てきた。

 そんな姿を母親に咎められるとでも思ったのだろうか、元首様
は裏庭から母の待つ建物へ侵入しようとしたのである。
 ところが……

 「あっ……いやあ……だめ、だめ……ああ、ああ、出ちゃう」
 どこからか、なまめかしい少女の声が聞こえる。

 そこで、庭をさらに奥へと進んでみると……
 「おや、まあ……」
 声の主は一人ではなかった。

 三人の少女が、それぞれに少し間をあけた二枚の板の上で膝ま
づき、コーヒー碗の乗ったお盆を目よりも高く両手で持ち上げて
いるのだ。
 もっと奇妙だったのは、せっかく正装してきている彼女たちの
スカートが高々と捲り上げられていること。

 当然、少女たちのお尻はフランク公の方からは丸見えとなって
いる。

 「おやおや」
 公は、そんな少女たちの向こうに母親を見つけてため息をつく。

 どうやら、そうした事情はお母様にしても同じだったようで、
ラフな姿のままやって来た息子を見つけると、渋い顔をして垣根
のこちら側へ回り込むようにと求めたのだった。

 幸い三人のスカートの前は開いておらず、前から眺める光景は、
膝まづいた三人の少女が五人分のコーヒー碗の乗ったお盆をささ
げ持って震えているというものだった。

 「母上、これは何をやっておられるのですか?お仕置きですか」
 フランクは素朴に疑問をぶつけてみる。

 すると、母の答えは……
 「何を言っているのですか。今日はお妃を選ぶ大事な日だと、
あなたにも伝えたはずですよ」

 「これがそうですか?随分なまめかしいですね」

 「今は、三人に浣腸を施し、その忍耐を観察しているのです。
王妃たるもの。どのような困難に際しても品位を失うような顔を
してはなりませんから、その資質をみているのです」

 「おや、おや、また私の嫁探しですか。私は何度ももう上げま
したが、二度の結婚で女性は懲りております。どうか、そこは、
私の自由になりませんか」

 「何を言うのです。あなたはこの国の元首。妃を迎え世継ぎを
つくるのはあなたの仕事ではありませんか」
 母は息子を叱りつけたが、すぐに言葉は柔らかくなる。

 「どうです。こうして見ると、なかなかよい子たちでしょう。
今回は、貴族からではなく、あえて一般市民に公募をかけてみた
のです。これらの者たちはそこに応募してきた約千人の中から、
容姿、教養、品性などをチェックして最終的に私が選びました。
審査はまだ途中ですが、この子たちはすでに一定の水準をクリア
していますからね、もし、あなたの気に入った子のなら、お妃は
目の前のどの子でもいいんですよ」

 母は水を向けたが……
 「……」
 息子は笑って首を振るばかりだったのである。

 ところが、そんな二人の会話に関係なくことは進んでいく。
 ソフィーの様子がおかしいのだ。
 ガタガタと身体が震えだしたかと思うと、ある時を境に目が点
になって動かなくなってしまった。

 何が起こったかを詮索するのも無粋というものだろう。
 他の二人にしても、もはや他人のことに関心をはらう余裕など
なくなっていたのである。

 こうした時、その処理は下女が行う。身分ある人はたとえ自分
の粗相であろうとも自分でその処理をしてはいけなかった。

 「せっかくのおべべが台無しですね」

 「仕方がないでしょう。我慢できない方が悪いんですから……
これが大広間での舞踏会なら、建物外の茂みまでだって300m
はあるのよ。このくらい我慢できないならお妃は務まらないわ。
…それより、どうかしら、ソフィーは?今回はミスってしまった
けど、元気で明るい子だし、あなたの調教ひとつでどんな駿馬に
もなるわよ」

 「弱りましたね。またそのお話ですか」

 「別に弱ることはないでしょう。向こうの気持はすでに決まっ
てるんですもの、あとはあなた次第よ」

 「あんな恥ずかしいことをされてもですか?」
 フランク公が真顔で言うと、女王陛下は笑って……

 「相変わらず、あなたはうぶね。お妃の座がかかってるのよ。
この程度、女なら何でもないことだわ。女が何かと恥ずかしがる
のは、そうした仕草に周囲が好感を持ってくれると知ってるから
なの。裸の方が好感を持ってくれるなら、みんな裸で街を歩くわ」

 「まさか」
 今度はフランク公が笑った。
 しかし、その顔がすぐに曇ってしまう。

 「あれ、あの子……」
 殿下はソフィーの行方を追う。

 下女たちに身体を清められたソフィーは全裸のまま二人の女官
に誘導されて鞭打ち台の方へと向かっていくのだった。
 
 「今度は、一番早くお漏らししたお仕置きかな」

 「あら、あら、あなたは何でもお仕置きに捕らえちゃうのね。
お浣腸をどこまで頑張るかはその子の判断でいいの。そこに罰は
ないわ。最後まで頑張ってみたところで助け舟は来ないし、どの
みち次は鞭打ち台で鞭を受けることになってるんですもの」

 「おやおや、試練につぐ試練だ」

 「あなたのような殿方には理解しずらいかもしれないでしょう
けど、女は耐えることでしか自分をアピールできないの。お浣腸
にしても、60回の鞭打ちにしても、それを王妃としてどれだけ
品位を汚さず受けられるかが大事になってくるの。昔から王妃は
断頭台に上がっても品位を失ってはいけないって言われてるから、
これはそうした耐久試験ってところだわね」

 フランク公は気が優しくこうした光景を快く思わなかったが、
海千山千の女王陛下にしてみれば、小娘が辱めを受け悲鳴を上げ
ることなど実にささやかな催し物にすぎなかったのである。

 「ピシッ!!」
 「あっっっっ」
 革紐鞭の熱い抱擁を受けるたびに少女は苦しい息を吐く。

 「ピシッ!!」
 「ひぃぃぃぃ」
 木製とはいえ大人二人で抱えてきた重い鞭打ち台が動くのだ。
 こんな小さな身体のいったいどこにそんな力が眠っていたのか
フランク公は驚かされた。

 「ピシッ!!」
 「だめぇぇぇ」
 たった三発でソフィーの口から悲鳴が出た。

 断頭台とは言わなくても鞭打台に全身を拘束されての尻叩きは
それまで父親の膝の上で味わっていたお仕置きとはまったく別の
もの。少女たちは単なる痛みだけではなく、太股を大きく広げら
れた羞恥やいつ飛んでくるのか分からない鞭の恐怖とも戦わなけ
ればならなかったのである。

 「ピシッ!!」
 「ごめんなさい、もう帰る、帰る」

 ソフィーは悲鳴を上げ続けるが、鞭はやまなかった。
 女王陛下が「やめろ」とお命じにならなかったからである。
 代わりに出てくるのは愚痴だった。

 「まったく近頃の子はだらしがないね。私らが子供の頃は週に
一度はろく悪さをしなくても必ず父親からお仕置きの鞭を受けた
ものだったよ。どこへお嫁に行っても困らないようにってね。…
…それがどうだい、最近の親は娘に甘いもんだからこんな大事な
時に鞭一つ満足に受けられないときてる。……貸してごらん!」

 女王陛下は女官から鞭を取上げると自らソフィーのお尻へ叩き
つけた。

 「ピシッ!!」
 「いやあ~~~~」

 一段と高い声があたりに響いたが女王陛下はその手を休めない。

 「ピシッ!!」
 「だめえ~~~~」

 「だめえ~なんて声が出るんなら耐えられるよ……それ、もう
一つ」

 「ピシッ!!」
 「いやいやいや~~~~もう帰る、帰る」

 「帰さないよ。お妃選抜試験は一ヶ月。途中退場は認めない。
そう、断ったはずだよ」

 「ピシッ!!」
 「いやあ~~~ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい」

 「ピシッ!!」
 「いやあ~~~もうしないで、もうしないで、ごめんなさい」

 最後は訳もなくただ闇雲に謝るのだった。

 「まったくだらしないね。お前は父親からまともな鞭を一度も
受けたことないんだろう。そんなのがいったいどこへお嫁に行く
つもりだい」

 女王陛下は呆れた様子で鞭を女官に返すが、フランク公はそん
な彼女が鞭打ち台から解き放たれるのを待っていた。

 「おいで」
 そして、あろうことか、ソフィーをその腕の中に抱きしめたの
である。

 「えっ!」
 驚くソフィーだったが、これは国王陛下の命である。嫌も応も
なかった。父親以外の男に抱かれたことのなかったソフィーは、
まるで嵐の中で雨宿りする小鳩のように震えている。

 厚い胸板、太い腕がソフィーを包み込み。コロンだろうか薔薇
の甘い香りが漂う。見上げれば緩やかにウェーブのかかった淡い
金髪の青年が上から自分を見ている。まるで井戸に落ちた子猫を
見つけたときのようにその灰色の瞳がこちらを見ているのだ。

 もちろん、散々やられたお尻が痛くないはずはなかったが、今、
それは意識に上がってこなかった。ソフィーは何が起こっている
のかを理解できず、ただ息ができないままに上を見上げていたの
である。

 「君は今でも僕の妃になりたいのかい?」

 ソフィーは頭がボーっとしてしまって、この言葉を理解するの
にとても長い時間がかかった。

 「……………………えっ!?」
 ところが、『はっ!』と我に返った瞬間、彼女は意外な行動に
でるのだった。

 「伯爵様、どうか私をこのお城に置いてください。お妃なんか
なれなくてもいいから、とにかくここで暮らしたいんです」

 ソフィーは若き伯爵の足元に膝まづくと必死に懇願するものだ
から伯爵は困ってしまった。

 「暮らしたいって、ここは君のお家じゃないんだよ」

 「ええ、だからここで働かしてください」

 「働くって?どんなことをして?」

 「ですから、何でもします」

 「何でもって……じゃあ、何ができるんだい?」

 「何がって……」

 「お針仕事は?……料理は?……じゃあ、庭仕事?」
 伯爵は色んな仕事を提示したが……

 「……………………」
 ソフィーはただ首を振るばかり、結局、『これならできます』
という答えはでなかった。

 そこで…
 「私じゃダメだってことですか?」

 ソフィーが力なくため息をつくので、伯爵が小さな肩を抱いて
……
 「ダメって……そもそも君はまだ王妃になれなかったわけじゃ
ないじゃないか」
 と諭すと……

 「そんなのもういいんです。お浣腸も三人の中で一番早く粗相
しちゃうし……お鞭だってすぐに音を上げちゃうし……私って、
何やってもドジだから……」

 「でもね、ソフィー。お妃って、必ずしも能力の高い子がなる
わけじゃないんだ。それに、選ぶのは女王陛下じゃない。最終的
には僕なんだよ。僕のことだからね」

 伯爵がこう言うと、先ほどまで消沈していた姿はどこへやら、
ソフィーはいきなり目を輝かせると、青年君主フランク公の胸元
へ飛びついたのだった。

 「おいおい、気の早いお嬢さんだ。そうじゃなくて、僕はあく
まで一般論を言ったまでだよ。…それにだ、今の処、僕は誰とも
結婚する気はないんだ」

 「なあ~~んだ」ソフィーは一旦意気消沈したが、でもすぐに
……
 「ねえ、でも、側女はいるんでしょう。私、側女でいいです」

 この大胆発言にフランク公は思わずのけぞった。
 たしかに彼は何人もの側女を持ってはいたが、まだ13の娘に
いきなり側女志願されては身も蓋もなかったのである。

 「君は側女がどんな仕事をする人か知っているのかい?」

 苦笑いを奥歯を噛み締めることで苦虫をかみ殺したような顔に
なったフランク公が尋ねると、さらにあっけらかんとした答えが
帰ってきた。

 「知ってます。フェラチオをする人ですよね。……オチンチン
を舐めるんでしょう。あれだったら私でもできそうですから……
ね、私を側女に選んでください。何でもします。今はできなくて
もすぐにできるようになります。努力しますから」

 フランク公は表情を変えまいとして頑張ったが、さすがに赤面
することまでは抑えきれなかった。

 「こんなこと言っては何だけど、君のお父さんは、君にここで
働いて欲しいなんて思っていないはずだ。君は大事に育てられて
いるからね」

 「どうして分かるんですか?」

 「だって、お浣腸でも鞭でも一番早く音を上げたじゃないか。
……ほら、シャルロッテを見てごらん。あんな華奢な身体なのに
60回の鞭を耐え抜いただろう。あれは普段から鞭を受けていて
慣れているから耐えられるんだ」

 「鞭や浣腸って慣れるものなの?」

 「ああ、全然違うよ。……君の場合は、家族や先生から滅多に
こんなお仕置きを受けたことがないんだろう。だから、耐えられ
ないだけさ」

 「それは……」
 図星のソフィーは胸が痛かった。
 確かに彼の父親はソフィーを溺愛して育てたから強いお仕置き
はこれまで避けていたのである。ところが娘の方はそんなお人形
生活が嫌で、自らお妃候補に応募してきたのだ。つまり。家族に
は内緒だったのである。

 「ひょっとしたら、お父様は君をどこにもお嫁に出したくない
のかもしれない。だからついつい花嫁修業の一つであるお仕置き
を避けてきたのかもしれないな」

 「おいおい、そうしょげるなよ。君は素直なんだなあ。大丈夫、
そんなことはないさ」
 伯爵は慌ててフォローしたが、ソフィーはしょげたのではない。
何でもズバスバ言い当てるこの青年が怖かったのだった。

 「君のお父様は、ここがダメでも君がどこか条件のよい相手を
見つけて結婚してほしいと思っているはずだよ。もちろん、私の
側女だなんて考えていないはずだ。それは分かるだろう?」

 「ええ、わかります。でも、だから困るんです。…私、すでに
許婚がいて、ここがダメだったらその人と結婚しなきゃいけなく
なりそうなんです」

 「おやおや、その人が嫌いなの?」

 「大嫌い!……愚図で、だらしがなくて、そのくせ大柄で傲慢
ときてるんだもん。良いところなんてまったくないバカボンボン。
そばに寄っただけで鳥肌ものなんだから」

 「ずいぶん悪く言われたもんだな。でも、私だって、世間では
そう見られてるんじゃないかな。すでに二度離婚してるしね」

 「伯爵様は違いますよ。抱きしめられた時、とってもいい匂い
がしたもの」

 「(ははは)おやおや、そんなことで人を判断してたのかい?」
 伯爵は思わず苦笑してしまう。

 そして……
 「わかった、じゃあしばらくはここで遊んでいきなさい。君の
お父様には『審査が長引いているからしばらくお城で預かる』と
連絡してあげるから」
 とソフィーに破格の助け舟をだしたのだった。

 すると……
 「えっ……」

 伯爵はソフィーに抱きつかれキスをされる。
 もちろん、こんなこと礼儀に反することは言うまでもないのだ
が、それが自由な家庭で育ったソフィーの人柄だろうか、伯爵も
ついつい許してしまうのだった。

***************************

 
   

古典的お嬢様生活

         古典的お嬢様生活

 私が子供だった半世紀前、私の生活範囲で『これはお嬢様だな』
と思った子たちの私生活を考えてみる。
 要するに独断と偏見によるお嬢様論。


<朝の仕度>
 これはお嬢様に限らないが躾の行き届いた家の女の子は10才
を超える頃から朝食の仕度を手伝わされる。
 私の知り合いなんか、受験の当日まで朝ごはんの仕度を手伝い、
その後、受験会場へとやってきたほどである。
 ちなみに、男の子にこの義務はない。

<洗濯>
 普通の洗濯物は他人任せでよいが、自分の身につけた下着だけ
は自分で洗うように命じられる。これもやはり初潮が始まるころ
からだ。
 これも男の子は免除。僕なんて大学生になるまで自分のパンツ
を洗ったことなんて一度もなかった。というかそんなことすると、
女の子とは逆で「男の子はそんなことしないの!」ってお母さん
が怒るからなんだ。

<生活スケジュール~日課~>
 親が決めた10分刻みのスケジュールで動く。もちろん決める
時には本人の意向も尊重されるが、一度決まってしまうとルーズ
なことはできない。日課に関しては男の子より厳しい。
 朝の仕度もそうした日課の一つだが、とにかく決められた日課
に違反するとお仕置きもありうるのだ。
 週末の自由時間の取上げとか外出禁止なんてのが多いが、蔵や
納屋に閉じ込められたりするケースも……
 スパンキングは本人に守秘義務(母親からどんな罰を受けたか
を原則として外で言ってはならないことになっている)があるの
で明確にはわからないが、竹の物指しで両手や太股を叩かれたと
いう話はよく聞いた。(そんな話は本人から直接ではなく妹さん
などからよく漏れるのだ)
 ちなみに、男の子(お坊ちゃん)だって、スケジュール自体は
同じように厳しく定められているのだが……こちらは結果責任の
場合が多く、学校の成績さえそれなりなら違反しても女の子ほど
厳しいことは言われないみたいだ。

<身なり>
 当然、うるさい。基本的には自分で身なりは整えるが必ず母親
のチェックがはいる。母親は、髪飾り、スカートの襞、ブラウス
の皺、ソックス、靴、とにかく娘に一分の隙もないように何から
何まで目を光らせる。
 制服はもちろん、私服でも派手なもの、だらしなく見えるもの
は購入NGである。お嬢様というのはどんな場面でも清楚に見え
なきゃいけなかったんだ。

<立ち居振る舞い>
 お嬢様たるもの、立ってる時も座ってる時も、歩いていても、
とにかくどんな時でも背筋がピシッと伸びていなければならない。
 どんな豪華な衣装を身につけていてもへっぴり腰のお嬢様って
のはないんだ。

<表情>
 これも重要。どんな表情がいいのかは一口では言えないけど、
常に他人から見られているという意識を忘れちゃいけないんだ。
そうやって日常生活を送ると、おのずと垢抜けた顔になるみたい
で、お嬢様と成金の娘がクラスで並んで座っていても男どもには
一目で区別がついた。
 一言もしゃべらなくても、発してるオーラが全然違うからね。
神々しいっていうのか……お嬢様ってのは一種の芸能人みたいな
ものなんだ。

<言葉>
 当然、乱暴な言葉は使わないんだけど、だからと言って極端な
へりくだりやら馬鹿丁寧な言葉でもない。品位というか、教養が
にじみ出るというか、うまく言えないけどとにかく凛としている
んだよ。
 よくテレビで田舎出のアイドルがふだん使わない言葉を使って
お嬢様風を演じてみせることがあるけど、本当のお嬢様というの
は物心ついた頃から繰り返し訓練を受けてそうなってるからね、
付け焼刃の猿真似でどうなるものでもないんだよ。

<勉強>
 意外に思うかもしれないけどこれは男の子ほどには厳しくない。
小学校時代、男の子の家庭では単元テストの合格点が90点以上
だったのに対し、女の子の場合は大半が80点もとれば親は納得
していたんだ。これはお嬢様も同じだった。
 お嬢様だから男の子並みの成績でなきゃだめだなんて親は言わ
なかったんだ。
 しかも、先生のいう事を聞いて真面目にやっていれば、たとえ
合格点に足りなくても体罰ということにはならない。
 全て結果責任で、不合格点なら理由のいかんを問わずお仕置き。
なんて物騒なことになりがちな男の子の家庭とは立場が違う感じ
がした。
 そもそも女の子が勉強や習い事でお仕置きを受けるのは宿題を
サボったり、練習を怠けたりした時だけ。逆の見た方をすれば、
女の子には最初から成果は期待されていなかったのかもしれない。

<兄弟の世話、家の用事>
 男の子の場合、こうしたことをすると褒めてもらえるのだが、
お嬢様は女の子だからそうはいかない。こうしたことは、女の子
なら当然するもんだと大半の母親は考えていたから、たとえその
為に自由時間や勉強時間が削られても、母親は意外なほどその事
には無頓着だった。そこは庶民の娘もお嬢様も同じなんだ。
 どこへお嫁に行っても困らないように女一通りのことはやらす
家がほとんどだった。決して何もかにも甘やかされてたわけじゃ
ないんだ。

<きょうだい喧嘩>
 相手が兄であれ弟であれ相手が男の子の場合は表面上は男の子
の方が悪いとして決着するが、それでめでたしめでたしではない。
女の子は、その後、陰で母親から叱られることになる。
 『喧嘩なんかして顔に傷でもつけたらどうするの。危なくなっ
たその場から逃げればいいでしょう』
 ってことらしい。不条理な気もするが、何があろうと女の子は
男の子に手を上げてはいけないのだ。

<姉妹喧嘩>
 この場合は是々非々で対応。ただし、事のいかんを問わず姉妹
共々お仕置きという場合も少なくない。理由は、きょうだい喧嘩
と同様、暴力に訴えると不測の事態が起きかねないからである。
 女の子は逆上すると男の子以上に見境がつかなくなる、と考え
られていたのも確かだ。

<イエスウーマン>
 イエスマンならぬイエスウーマン。とにかく当時の良家の子女
は目上の人に対して何を言われても何をされても『ノー』と言え
ないのだ。(そう、どこかの国の外交と同じ)
 もし、それが意に添わなければ、微妙な顔を相手に見せるしか
なかった。
 『目上の人に不快な思いをさせてはならない』
 そう躾けられてきたから、面と向かって『ノー』とは言いにく
かったんだろうね。
 ま、それでも、日常生活で大したトラブルがないのは、お嬢様
って、そもそも紳士的でない人とは付き合わないから。
 相手も女の子が自分の提案に乗り気でないと悟ると、その後は
無理強いしなくなる。もし、女の子が喜ばないようなら自主的に
提案をキャンセルしてくれたんだ。
 つまり、お嬢様は「ノー」と叫ぶ必要がなかったというわけ。
 もちろん、男の子の場合は違うよ。『ノー』と言えなければ、
それは承知したものとみなされたんだ。

<おやつ>
 庶民の子供たちにとって大事な社交場は駄菓子屋さんだと思う
んだけど、お嬢様と呼ばれる女の子たちは、こうした処にあまり
立ち入らない。もちろん、お金がないとかいうんじゃないよ。お
母さんが快く思わないからなんだ。
 現にぼくの付き合ってた女の子は僕が駄菓子屋さんに行った事
あるって言ったらエスコートを頼んできたくらいだった。
 要するに興味はあったみたいだね。
 お嬢様のおやつはたいてい家に用意されていて大人たちと一緒
にお茶の時間として処理されることが多い。僕も招かれたことが
あるけど、お嬢様ってのはそんな場所では一段とキリッとしてい
るからね、とっても緊張したのを覚えている。
 何しろ僕んちのおやつタイムというのはたいていがお母さんの
お膝の上。お母さんがその舌でぼくのお口を綺麗にしてくれるの
を期待してミルクもお菓子も口元をべとべとにしながら食べるの
が僕流だったんだ。
 心配した母親によく「あんた、給食はお行儀よくして食べてる
んでしょうね」って言われてたけど……そこは僕だってTPOは
心得てるつもりだったから大丈夫だった。

<飲み物>
 おやつが出たからついでに飲み物についても語っておこう。
 実は、この時代のお嬢様(ま、僕んちもそうなんだけど)には
口にしてはいけない飲み物があった。
 もちろん、お酒なんて論外だけど、それ以外にも『コーヒーや
コーラは子供の飲むものじゃない』と言われてたいていの家では
禁止されていたんだ。
 代わりに用意されていたいたのがココアとサイダー。こちらは
なぜか問題にならなかった。
 あっ、それから、今は当たり前になってるけど、この時代まで
は、良家の子女は勝手に自分ちの冷蔵庫を開けちゃいけなかった
んだ。衣服も学用品もオモチャもおやつも飲み物も……とにかく
生活に必要なものは全~部親からのあてがいぶちで暮らす、それ
が正しいお嬢様生活だったの。だから小五の春までお金を使って
買い物をしたことがないなんていう猛者までいたくらいなんだ。
 ちなみに、僕は男の子だし、何よりぼくの家は良家ってほどの
ものじゃないから冷蔵庫は自由。コーヒー、コーラ、何でもあり
だった。そのうえ、僕は幼稚園時代から父親の晩酌を手伝ってた。
お父さんのお猪口を舐めてたんだ。ぼくんちは、厳しいところも
あったけど、全体としてはルーズで甘々、だらしのない家だった。
おかげで、ぼく、当時から結構いける口だったんだよ。

<習い事>
 日舞、バレイ、生け花、お琴、ピアノ、絵画教室、英会話教室、
乗馬などなど色々あるけど、これらから二つ三つ選んで習わせて
る家が多かった。
 ただ、重要なことは、単に習いに行くというだけじゃなくて、
親は我が子がそこで友だちをつくり、さらにその中で輝いていて
ほしいと願ってたんだ。
 だから、ぼくもピアノ教室に通ってたことがあるけど、生徒が
ほとんど女の子であるため、待合室にはリボンや少女フレンドは
置いてあるけど少年サンデーや少年マガジンは置いてなかった。
 そんな雑誌を見ながらこっそり女の子たちの会話に耳を傾けて
いると、これが学校では見たことないような気取った姿だったの
を覚えている。
 たまたま同じクラスの子がその教室にいたからわかるんだけど、
その子のそんな姿、学校じゃまず見たことなかったもん。
 彼女たちにとってこんな習い事の教室ってのは、ある意味学校
以上に大事な社交の場なんだろうなって思った。
 『えっ!?ぼく?』
 陰日なたまったくありません。学校もぐうたらなら習い事教室
もぐうたらです。疲れてくるとすぐにピアノの鍵盤に寄りかかる
癖があります。ピアノの先生には「ほら、姿勢を正して!」って
よく注意されてました。
 ああ、蛇足ですけどね、僕が時々柄にもなく少女趣味的な作品
を描くのはこの時の経験からなんです。
 
<お人形>
 ま、昔から言われていることだけど、良家のお嬢様なんてもの
は大半が親が道楽でこしらえたお人形です。僕なんて生意気盛り
の頃は、『これじゃあ、タイコもちと同じじゃないか。こんなの
社会でいったい何の役に立つの?』なんて、横柄な口をきいてた
もんです。
 当時の僕は、お嬢様というのがそもそも社会に出る必要のない
特殊な人たちだとは知りませんでした。
 ま、それはさておき……
 親は、愛する娘が、自分はもちろん誰に対しても品よく接して
くれることを望みますが、仕事の成果のようなものは望みません。
そこで、娘の方も何をやっても本当の意味での努力はしません。
あくまで、一生懸命にやってますよというパフォーマンスだけで
いいんです。
 要するに親(=お嬢様はファザコン多いので大半父親です)が
満足なら、それでいいわけです。ですから彼を満足させる以上の
無駄な努力は、最初からしないという訳です。
 そんな事が『お嬢様は気まぐれ』『お嬢様はわがまま』という
評価に繋がるのかもしれませんね。


***************************

8/10  アルベルト・アンカーの絵画

8/10  アルベルト・アンカーの絵画

 アンカーさんは19世紀に活躍したスイスの画家さんである。
ほとんどの絵が故郷の村に題材をとったものなので出てくる人物
も、みな村人ばかり。しかも、お祭りのような華やかな場面では
なくて普段の生活が主なモチーフ。だから実に、地味な絵である。

 何でもスイスでは国民的な人気を誇る画家さんなのだそうだが、
遠い異国のこの日本ではあまり知られていない画家さんだ。

 でも、私はこの『絵かき』さんが好きである。
 のどかな風景の中にとけこんだ村人の顔には異邦人の私が見て
も違和感がまるでない。そこで暮らしたことのない私でも親近感
がもてるのだ。さながらその時代に撮られた写真をそのまま油彩
にしたような絵は、暗くて重いという評価もあるだろうが、私の
心にはフィットする。

 実直な大人たち、穏やかな顔の幼児、特にちょっぴり不安げな
顔をのぞかせる少年少女からは、その場の雰囲気、台詞までもが
こちらに聞こえてきそうである。

 そりゃあ同じように庶民的なモチーフで多くの画家さんたちが
色んな絵を描いているのは知っている。ところが、彼らの作品に
はどこか嘘を感じてしまう。もちろんその『嘘』こそが芸術なの
だろうが、いずれにしてもそれは私とって似て非なるものなので
ある。

 例えばフェルメール『牛乳を注ぐ女』なんかもこうした系統だ
と思うのだが、そこに描かれている人物は地味な衣装を身につけ
ていてもアンカーのとは違うのだ。

 もちろんそれはそれで意味のあることで、絵画的には成功して
いるとは思うのだが、その絵を見た瞬間、私は不自然さを感じる。
その人物を目立たせようという画家の魂胆が透けて見えるのだ。
 そうやって見てしまうとその人物は作者の主義主張が書かれた
お人形ように見えてリアリティーは失われてしまう。

 彼の作品にはそうした余分な欲がないのだ。
 だから、見ている者が素直に感激できる。
 ここが心地よいのだ。

 特に、2才で亡くなった自分の子供をあえて描いた絵は圧巻で、
ベッドに寝かされた死体をこんなにも厳かに描けるものかと感動
してしまった。

 村人の自然な生活の営み。大人たちが実直すぎる為に子供たち
も底抜けに明るいわけではない。そんな処も当時のリアリティー
だ。

 私はアンカーさんが語りかけてくる嘘のない村人の自然な生活
を垣間見ながら、こんな世界を描いてみたいと『カレンのミサ曲』
を描いてみたのである。

アンカーさんの絵

*********************

アチャ子日記<3>

          アチャ子日記<3>

 日曜日、学園ではミサが行われます。必ずしも強制ではないの
で全員が参加するわけではありませんが、特別反省会に出席する
親子はこれに参加するのが通例でした。
 ですから……

 『おや?見慣れない顔が来ている』

 熱心な信者さんたちにしてみたら、もうこれだけでその親子が
特別反省会に呼ばれたんだとわかる仕組みでした。

 私達親子も普段はミサにやって来ませんから、他の参加者から
特別反省会に呼ばれたんだとわかったはずです。

 ミサの最中、私はお友達がいないか心配で、礼拝堂のあちこち
に視線を送り、見知った顔を探して回っていました。

 実はこの会、秘密会ではありませんでしたから呼ばれた人以外
でもその場に居残って見学することができます。

 もちろん大半の子はそんなお友だちを仮に見つけても親に連れ
られて帰ってくれますが、中には、特別反省の情報を聞きつけ、
その様子を見学しようと、普段はこないミサにわざわざ参加して
そのまま礼拝堂に居残るなんて意地悪なお友だちも……。

 『もし、そうなったらどうしよう』
 特別反省会の参加者はそんな事も気にしながら罰を受けなけれ
ばなりませんでした。

 ミサが終わり、帰る人は帰ってから、それまであった説教壇が
取り片づけられ、その周囲に今日呼ばれた親子が集まり始めます。

 教室でいうなら、教卓が片付けられ、教壇の周りに関係者全員
が集まったというところでしょうか。
 ここでは黒板の代わりに豪華な祭壇がありますし、部屋の規模
がやや大きいという違いはありますが……

 教壇の椅子に居並ぶのは渋い顔の先生方。振り返れば見学者も
少ないけどいます。反省会の邪魔にならないように遠巻きに見て
いましたけど、前と後ろで、私にとっては十分な威圧感でした。

 「合沢さん、我校のモットーを言いなさい」

 私が後ろを気にしている間に園長先生が口火を切ります。
 慌てた私は前を向きました。

 「……えっ……あっ……はい……えっと……」
 指されたのは最前列に座っていた六年生三人組の一人です。
 どうやら、反省会はこの三人組の一件から始まるみたいでした。

 「どうしたんですか、最上級生にもなって、そんなことも満足
に答えられないんですか」

 「いえ……『清純・清楚・従順・勤勉』です」
 園長先生の鋭い言葉に俯き加減の合沢さんは肩まで伸びた長い
髪で顔を隠すようにして答えます。知らないというのではありま
せん。緊張のあまり呂律が回らないのでした。

 ところが、そんなさなかにあっても、合沢さんの隣りに座った
残りの二人は、お互い俯きながらも顔を見合わせて笑っています。
 それが私の座る後ろの席からもはっきりわかりました。

 「そうですね、この四つはとても大切なことですから……」

 先生は、だぼだぼの法衣の中からおもむろに皮製のサンダルを
取り出します。
 そして、右手に持ったサンダルでご自分の左手に叩いてみせな
がら、こうおっしゃるのでした。

 「そもそもすぐにその言葉が出てこないというのは、頭の中に
しまっておいたからなのね。でも我校の生徒なら、それは何より
大事なテーゼですもの。何時でも取り出して、どなたにも言葉に
出して説明できないといけないわ。……まずは、そのお手伝いを
してさしあげましょうかね。……合沢さん、立ってこちらへ」

 園長先生が皮製のスリッパを持たないその左手で案内したのは
すでに舞台に設置されていた懲罰台でした。

 超罰台というのは、その高さや天板の角度が自由に変えられる
机のことで、これにうつ伏せになると……その子のお尻を先生が
最も楽に叩ける位置に固定することができます。

 ですから、先生方にとってはとても重宝な教育用具でした。

 そして、私もそうでしたが、卒業するまでにこれに登ったこと
のない生徒は、恐らくこの学校には一人もいなかったと思います。
 ですから、合沢さんだって、否応なしというか何の疑問もなく
これにうつ伏せになります。

 すると、二人の先生方がまってましたとばかり介添えに入り、
合沢さんのお尻は、頭より高い位置にセットされて納まります。
 それは単に園長先生がスパンキングをするのに丁度よいばかり
ではなく、私たちが見学者に対しても丁度よい位置になっていた
のでした。

 「…………」

 あいさつ無しにスカートがまくられ、綿のショーツが現れます。
 近くには女の子だけしかいないのならまだしも、お父さんたち
が見てますし遠くに取り巻いて見知らぬ男性の姿も……もちろん、
これだけだって十分恥ずかしいのですが……ことはこれだけでは
収まりませんでした。

 そのショーツさえも当然といった感じで剥ぎ取られてしまうの
です。

 「あっ、いや」
 思わず合沢さんの口から悲鳴のような声が漏れますが……

 「レースの付いたものは規則違反ですよ。…忘れてましたか?
気持がたるんでいるみたいなので、忘れていたかもしれませんね」

 園長先生の凛とした声に合沢さんは首筋まで真っ赤にして首を
振ります。
 声が出なかったのは、声を出すのさえ恥ずかしかったから……

 せめても女の子の大事な処が見えないように合沢さんは両足を
ぴったりあわせようとするのですが……

 「ほらほら、あなたみたいなちびっ子が、そんなものいちいち
隠さないのよ」
 園長先生は無慈悲にもその両足の太股をぴしゃぴしゃと叩いて
広げさせます。

 「そもそも小学生がお父様お母様に断りもなく映画を見に行く
ことを本校は許しておりません。ましてや、夜に家を抜け出して、
女の子同士つるんで映画を観に行くなんて論外です。……そんな
ハレンチな罪を犯す子が清純な子のはずがありませんから、清楚
な子として罰を与える必要もないはずです。それでは釣り合いが
とれないでしょう。『目には目、歯に歯』という言葉があります。
ハレンチな罪を犯すようなハレンチな子には、やはりハレンチな
罰が適当でしょう。わかりましたか!」

 園長先生の合沢さんを説得している間もさらにその足を広げる
のでした。

 「…………」
 両足の太股が離れ両足が肩幅以上に開くと、合沢さんの女の子
が見えてきます。

 そりゃあ死ぬほど恥ずかしいかもしれませんが、うちの学校の
生徒である以上これも仕方のないことでした。

 それだけじゃありません。十分に広げられ、露になったお尻の
穴に、今度はメンソレータムがたっぷりと塗りこめられますから
……

 「(あっ、いやあ~~~、ひぃ~~~~、やめて~~~~~)」
 
 声にならない声。懲罰台が地震にあった時のように揺れます。
 それがどんなに強烈な刺激か、やられた事のない人には分から
ないでしょうが、相手が小学生なら悲鳴をあげて暴れてもちっと
おかしくない衝撃でした。

 「………………」
 しばらくして、地震も、くぐもった声もおさまりました。

 メントールの刺激は1分程度だからです。でも、それを必死に
我慢できたのは合沢さんがこの学校の生徒だから。もし、この場
で暴れたらただではすまないと知っているからでした。

 「合沢さん。この学校のモットーを、もう一度、正確に言って
御覧なさい」

 「清純な心……と……清楚な振る舞い……あと……勤勉な日常、
……それに、従順な態度です」

 「そうです。やっと思い出したみたいですね。でも、あなた、
何一つできていませんよね」

 「………………」
 合沢さんが黙っていると、突然、園長先生の怒ったような強い
調子の言葉が音響のよい礼拝堂内に響きます。

 「はい、でしょう!!!まさか、いいえなんですか!!!」

 「……はい。先生」
 対する合沢さんの答えは耳を澄ましていないと聞こえないほど
小さなものでした。

 私たちは幼い頃から目上の人には何をされても何を言われても
「はい」が原則。黙っていたら「いいえ」の意味でした。もし、
目上の人に「いいえ」という言葉を使う時にはちょっとした勇気
が必要だったのです。
 
 「あなたは、お父様やお母様の許可もなく、夜、おうちを抜け
出してお友だちと映画を見に行きましたよね。しかも、あんなに
派手な服装で……外出の時は、原則として制服姿でという規則も
忘れてしまったみたいね。これが、清純で清楚な子のすることか
しら?……おまけにたまたま出会った牧田先生が声をかけると、
みんなしてその場から一目散に逃げ出したそうじゃないの。……
こういうのも反抗の一つなのよ。少なくとも従順ではないわよね」

 「はい、先生」

 「しかも、肝心の宿題はやらずじまい。サボって朝のテストで
不合格をもらうようじゃ……これも、勤勉とは言えないわよね。
立派な怠け者ですものね」

 「はい、先生」

 「いいこと、これが新入生というならいざ知らず、六年生にも
なったあなたがこうして反省会に呼ばれるんですから、話になり
ませんよね。……このままじゃ、どこの中学に行くにせよ、うち
の学校の卒業証書をお渡しすることはできませんよ。……こんな
卒業生を出したとなると本校の品位に傷がつきますから……公立
に移って、そこで卒業証書をもらってちょうだい」

 「ごめんなさい、先生」

 合沢さんが「はい、先生」から「ごめんなさい、先生」へ言葉
を変えたその直後でした。
 再び、園長先生の甲高い声が礼拝堂内に響きます。

 「ちょっと、あなたたち。さっきから何をそんなにニヤついて
いるの!!」

 ここで『あなたたち』というのは、もちろん、先ほどから二人
で顔を見合わせては、にやにやしていた最前列の上級生たちです。

 私も人の事をあれこれ言えませんが、子どもは直接自分の身に
降りかからないことに対しては驚くほど無頓着です。今こうして
目の前でお友だちが受けている罰が、やがては自分たちにも降り
かかるだろうと容易に予見できるんですが、そんな時でも、こう
してお友だちに誘われると睨めっこするのが女の子の習性でした。

 そうは言っても先生に怒鳴られてしまえば、やはり話は別で、
その瞬間、二人の顔は真っ青になります。

 「まったく、あなたたちときたら、自分達の犯した罪の重さが
どれほどのものか分かっていないみたいね。……あなたたちには
お友だちのお仕置きも他人事なのかしらね?…呆れたものだわ。
よし、いいわ、真理子先生、敬子先生、この二人を裸にして頂戴。
なまじ着衣を許してるからお客さん気分になっちゃうんでしょう
から……」

 興奮した園長先生は、二人の先生に指示して女の子二人の服を
脱がさせます。

 途中、「パンツも脱がせてよろしいんでしょうか」という声に
対しても……「構いませんよ。どうせ私達しかいないんですから
……靴と靴下以外全て脱がせたら、この場に膝まづかせなさい」
と命じるのでした。

 もちろんこの中にはこの子たちのお父さんだっています。遠く
からですが取り巻きの姿も見えます。でも、誰も何も文句を言い
ませんでした。

 この学校では、入学の際に父兄と『お仕置き承諾書』を取り交
わしていて、その中では、生徒である間はどのようなハレンチな
お仕置きも全て担当の教師におまかせすることになっていました。

 素っ裸で浣腸すること、鞭打つこと、お灸をすえることまでも
この学校ではポルノではなく、教育や躾として可能になっていた
のでした。

 完璧な躾をうたい文句に生徒を集めてきた学校には父兄もまた
厳しい体罰を是認する人が多いのです。
 ですから、入学前はどんなお転婆さんだった子も学校のカラー
に染まるうち、従順になっていきます。上級生になればお仕置き
だからといって騒ぎ立てたりする子は誰もいません。
 みんな、歯を喰いしばって厳しい体罰に耐えるうち、痛みにも
恥ずかしさにも慣れることになるのでした。

 もちろん、女の子ですから、こうした格好が恥ずかしくないと
言った嘘になるでしょうが、過去に何度もこの格好をさせられて
きましたから、この時だって落ち着いたものだったのです。

 靴と靴下だけを身に着け、床に膝まづいたら、まだろくに隆起
していないペチャパイの胸を隠すように両手を組む。
 二人に課せられたのはこの学校では昔から行われているお約束
のポーズでした。

 「いいわ、これで少しは緊張感のある顔になるでしょう。……
あなたたちはただ順番待ちをしているわけじゃないの。今度の事
を反省しながらお仕置きを待っていなければならないのよ」
 園長先生は二人の神妙な顔を見て満足そうでした。

 そして、話を合沢さんに戻します。
 「あなたが他の子を誘ったそうだから、あなたの罪が最も重い
ということになるけど……それでいいかしら?」

 「はい、先生」

 「あなたに申し開きすることがあれば何でも言っていいのよ」

 「…………」

 「よろしい、それでは、あなたにはみんなをそそのかした罪も
ありますから、そのことをようく自分のお尻に覚え込ませなさい」

 「はい、先生」

 園長先生は合沢さんのむき出しになったお尻に皮のスリッパを
当てると、それで何かを摺り込むように撫で回します。

 「あなたは先週の土曜日の夜、ご両親の許可も受けずお友だち
を誘って映画を観に行きましたね」

 「…………はい、先生」

 先生は合沢さんの『はい、先生』という言葉を待って、まず、
最初の一撃を振り下ろします。

 「ひとうつ」
 先生は鞭打つ瞬間、普段の声とは違いお腹の底から声を出して
数を数えます。その低い声は子供たちにとっては常に恐怖でした。

 「ピシャ」
 革特有のまとわりつくような痛みです。
 「ひぃ~~~」

 最初の一撃は、それまで何もされない状態から一撃ですから、
正直、誰だって堪えます。
 ですから、みんなそうしますが、合沢さんもその瞬間懲罰台を
しっかりと握りしめました。

 「そもそも、おうちに帰ったのは何時頃でしたか?」

 「10時ごろです」

 「呆れた、小学生がそんなに夜遅く繁華街を出歩くなんて……
学校の規則では、午後の9時にはお父様お母様にお休みを言って
ベッドに入るお約束になっていますけど、それは知ってますよね」

 「……はい、先生」

 「よかった、覚えてないなら、さらに鞭が増えるところよ」

 園長先生がこう言うと何か話したかったんでしょう。合沢さん
は後ろを振り返ろうとしましたが……

 「いいからじっとしてなさい」
 園長先生は振り返ろうとする合沢さんを制して……

 「ふたあつ」
 「ピシャ」
 「ひぃ~~~」

 二発目は少し慣れて一発目ほど痛くはありませんが、やはり、
その瞬間は懲罰台をしっかり握っていました。

 「あなたのやったことは我校が標榜する清純や清楚とは無縁の
ものです。わかってますね」

 「……はい、先生」

 「わかっていないと困ります」
 先生はそう言って……

 「みっつ」
 「ピシャ」
 「ひぃ~~~」

 三発目からは、お尻の表面だけでなく、奥の筋肉までもが痛く
なります。『痛い!!』と言って思わず飛び上がるというより、
ずしんとお腹にまで響くような鈍い痛みです。

 「おまけに、朝のテストも不合格ということでは、勤勉という
美徳もあなたにはあてはまりませんね」

 「……はい、先生」

 「あなたには、今、どんなとりえがあるのかしらね」
 先生は合沢さんのお尻を少し革のスリッパで撫で回してから…

 「よっつ」
 「ピシャ」
 「ひぃ~~~」

 四発目、ずしんという痛みがさらに強くなって脂汗が出てきま
す。もちろん懲罰台は握っていますが、お尻があまりに痛くて、
強い力では握れなくなっていました。

 「牧田先生がお声をかけた時、逃げ出したのは、きっと悪さが
バレると思ったのね」

 「……はい、先生」

 「うちではそういうのも反抗的な態度というのよ。あなたには
女の子に大切な従順さも欠けてるみたいね」

 「……はい、先生」

 「いつつ」
 「ピシャ」
 「ひぃ~~~いやあ!!」
 
 合沢さんは思わずオカッパ頭を振り乱して声を出します。
 もちろん、「ひぃ~」というのだって声ですが、そのくらいは
許されていました。ただ、「いやあ!」と、あからさまに言って
しまうと……それは別だったのです。

 「何が、『いやあ!!』なの。忙しい時間を割いてやっている
こちらの方が、よっぽどいやだわ」

 「ごめんなさい」

 「むっつ」
 「ピシャ」
 「ひぃ~~~いやあ!!」

 いったん声が出てしまうと、それまで押さえつけていたものが
開放されてしまうためか止まりません。
 もちろんそのことは先生もよくご承知でしたから、あえてそれ
をとがめだてはなさいませんが、だからといってお仕置きをやめ
てもいただけませんでした。

 そんな事情を熟知してる二人の先生が気を利かせて合沢さんの
身体を押さえ、猿轡を噛ませます。
 ですから、以後は悲鳴や身体の逃げを我慢する必要はありませ
んでした。

 「これからは逐一学校のモットーにそって生活しなさい」

 合沢さんは真っ赤な目をして園長先生の顔を見上げます。その
顔は無意識に縦に振れていました。ここでイヤイヤなんかできま
せんから、彼女も必死だったのです。

 ただ、そんな哀願に満ちた目もこれからのお仕置きを止める事
はできませんでした。いえ、むしろお仕置きとしてはこれからが
本番がだったのです。

 「あなたはこれから学校のモットーにそって生活する証として、
さらに鞭六回を受けなければなりません。……いいですね」

 園長先生は念を押すようにおっしゃいますが、合沢さんは猿轡
を噛まされ、身体を二人の先生に押さえつけられています。どの
みち『イヤ』なんて言える状態ではありませんでした。

 昔のお仕置きって、親にしろ教師にしろ最後はこんな一方的な
ケースが多々あったのです。
 これって明らかに虐待だと思うんですが、先生方は、どうやら
そうは思ってらっしゃらないみたいでした。

 「反省文を百回清書して提出しなさい」
 園長先生はそう言うとあのお腹に響く声で再び数を数えます。

 「ひとおつ」
 「ピシッ!!!」
 「ひぃ~~~~~」

 ついさっきまで、これと同じ事をされていた合沢さんですが、
今度は、それとは比べ物にならないほどの強い衝撃を受ける事に
なります。これまでのスパンキングはいわばウォーミングアップ、
予行演習でした。

 それが証拠に合沢さんの身体はぶたれたあとも震えていました。
単にお尻が痛いだけじゃありません。辛い罰が次から次に耳の中
へ入ってくるので心が折れてしまうのでした。

 「これから一週間は毎朝お家でお浣腸をしていただいて、その
時の写真と出したウンチの写真を学校に持ってきなさい」

 こう言われてさすがに驚いたんでしょう。合沢さんが、思わず
園長先生の方を振り返ろうとしましたが……

 「どうしたの?心配なの?……大丈夫よ。すでにお父様お母様
のご承諾は頂いてるから……いいこと、あなたが犯した罪の重さ
からいえば、このくらい、当然の罰なのよ」

 「…………」
 合沢さんは返す言葉がないみたいでした。

 「さあ、わかったら、前を向きなさい」

 「ふたあつ」
 「ピシッ!!!」
 「ひぃ~~~~~」

 身体全体が痺れています。
 脳天に、顎に、歯、両手の指先、両足の指先、そのすべてから
身体の中の電気が放電したみたいでした。
 もちろん、これは私の想像ですが、私だって懲罰台には何度も
登りましたから、この時の合沢さんの気持、たぶん間違いないと
思います。

 「とにかくこれからの一週間は学校のモットーに従い、従順。
勤勉を旨として生活しなければなりません。お父様お母様、先生、
すべての目上の人に向って「いいえ」という言葉を禁止します。
誰の、どんな求めに対しても、答えは全て「はい」と言って従う
のです。そして、その証として、この一週間は貞操帯を常に身に
つけなければなりません。勿論、登校の時、お昼休み、下校の時
ちゃんと身に付けているか検査します。……いいですね…………
聞いてますか合沢さん?」

 「はい、先生」

 「よろしい……みっつ」
 「ピシッ!!!」
 「ひぃ~~~~~」

 「もしこの一週間。少しでも反抗的な態度がみえたら、クラス
みんなの見ている前で『ウーマン検査』です。……それが嫌なら、
この一週間、とにかく身を謹んで暮らすのです……いいですね」

 「はい、先生」

 「よっつ」
 「ピシッ!!!」
 「ひぃ~~~~~」

 合沢さんはこれを聞いた時、泣いたと思います。ウーマン検査
というのは、女性器の発育具合を先生が検査するもので、本来は
もちろん非公開なのですが、稀に、お仕置きとしてみんなの前で
恥ずかしいものを晒さなければならなくなる時があります。
 そりゃあ周りはみんな女の子なんですが……それでもとっても
恥ずかしい罰に違いありませんでした。

 「当然、お勉強もしてもらいますよ。この一週間は朝のテスト、
単元テスト、その他どんなテストも合格点に達しなかった点数を
放課後こうしてお尻で償ってもらいます。相当に頑張らないと、
毎日お猿さんのお尻を両手で押さえながら帰ることになりますよ。
……いいですね」

 「はい、先生」

 「いつつ」
 「ピシッ!!!」
 「ひぃ~~~~~」

 合沢さんのお尻がリンゴと同じくらい真っ赤になっているのが
分かります。もうこれくらいになると、先生の言葉は耳に入って
きません。
 『とにかく痛いお尻が終わってほしい』
 このあたりまで来ると誰もがそれだけ考えていました。

 「もちろん、一週間過ぎればどんな生活態度でも必ず終わりに
なるわけじゃありませんよ。改悛の情がみえない時は、お仕置き
の期間がさらに一週間延びます。そのつもりでがんばりなさい。
……いいですね」

 「はい、先生」

 「むっつ」
 「ピシッ!!!」
 「ひぃ~~~~~」

 鞭のお仕置きが終わると、合沢さんのお尻は二つのお山が満遍
なく真っ赤かでした。
 でも、懲罰台から下ろされた合沢さんを、さらなる試練が待ち
うけます。

 「合沢さん、ついでに、ここでウーマン検査をしましょう」

 園長先生は『ついでに』なんておっしゃいますが、当の本人に
したら、とてもついでにできるようなものではありませんでした。

 「えっ……わたし……」
 合沢さんは小さく答えて後ずさりしようとします。
 でも、それが彼女にできる精一杯の抵抗でした。

 それも……
 「あっ!」

 二三歩下がったところで、担任の野島先生の胸に突き当たって
おしまい。それからはなすすべがありませんでした。

 野島先生に連行された合沢さんは広いテーブルの上に仰向けに
寝かされます。

 「はい、ちょっとごめんなさいね」
 園長先生はお義理に声をかけますが、手を休めることはありま
せんでした。

 合沢さんはショーツを剥ぎ取られると、両足の太股を立てて、
それを自分で支えます。ちょうど赤ちゃんがオムツを替えてもら
う時のようなポーズ。
 当然、自分の大事な部分は先生方に丸見えですが、ここでは、
先生方への文句はもちろん、悲鳴や泣き声さえタブーなのです。

 先生方は同じ女性だからでしょうか、微妙な処だって遠慮なく
触ってきます。
 オシッコの出る穴。将来赤ちゃんが出てくる穴。ウンチの出る
穴。前にある小さな突起だって例外じゃありませんでした。

 「……ぁぁぁ……ぃぃぃぃゃゃゃ……(だめえ~~)……」

 園長先生の微妙な指のタッチは、合沢さんを変な気持にさせて
しまっているようで、困惑した顔が私にも分かります。

 「……(いやあ、変な気持がする。背中がむずがゆい。あごが
しびれてる。いやあ、もうしないで……ああ、お願い。いやあ)」

 悶々とした時間が堅いテーブルの上で過ぎていく中で見ている
だけの私までもがおかしくなりそうでした。
 でも、ここはひたすら我慢するしかありませんでした。

 「ご両親、まだ大丈夫ですわ。清美ちゃんにオナニーの兆候は
ありません。ご覧ください。綺麗な襞が揃っていますし、膣口に
これといった炎症もありません。クリトリスも無理やりいじった
ような形跡もありませんから、これならまだ大丈夫だと思います」

 園長先生の言葉に御両親は安堵の表情でしたが……合沢さんは
ショックを受けます。先生方ばかりかお父さんやお母さんにまで
見られていたことがわかって女の子としてのプライドがずたずた
にされた思いがしたようでした。

 もっとも、この時代。小学生というのはプライドを持つことが
認められていませんでした。どういうことかというと……

 小学生というのは赤ちゃんと同じ扱い。赤ちゃんがオムツ替え
の場所を選べないように小学生も親が『ここで裸になりなさい』
と命じれば断れませんでした。子供のプライドは子供自身にある
のではなく親や教師が子供に代わって管理するものだったのです。

 そんな子供たちが自らの操を管理できるようになるのはなんと
14才を過ぎてから。
 さすがに、初潮が始まり、胸が大きくなって陰毛が生え始める
ようになると、それ以上の関わりは卑猥と判断されるようでした。

 ただそれも、あくまで中学生の場合であって、小学生ならば、
話が別なのです。たとえ胸が大きくなり初潮が済んで陰毛が生え
きても、大人の目から見れば小学生は小学生。『大事な大事なお
人形』であり『大事な大事な大人のおもちゃ』という地位に変化
はありませんでした。

 だからこそ、今の時代から見ればこんなポルノチックな儀式が
当時は存在が許されたのでした。

 ちなみに、さっきニヤついていた罰で裸にされてしまった二人。
彼女たちはその後相沢さんがお仕置きを受けている間、体操服を
着る訓練を受けていました。

 先生の号令に従って、体操服を着て気をつけの姿勢になります。
すると、次の号令で今度はそれを脱ぎ、素っ裸になってまた気を
つけの姿勢になります。

 この繰り返しを部屋の隅でずっとやらされていました。
 かれこれ20回くらいやらされてたでしょうか。二人とも鼻を
すすりながら目を真っ赤にしてやっていました。

 私もやったことがありますけど、肉体的にというより精神的に
けっこう辛くて、その場にへたり込んでしまい、担任の先生から
思いっきりお尻を革のスリッパで叩かれたことがあったくらいで
す。

 この二人、その後はやはり懲罰台に乗せられてお尻をぶたれる
運命となるのですが、お姉さん格の合沢さんに誘われて断りきれ
なかった事情や他の罰をすでに受けるということが考慮されて、
園長先生もこの二人に関してはそんなに強くぶったりはしません
でした。

 いえ、強くぶたれたはずの合沢さんにしても、お尻が痛いのは
恐らくこの会場だけでしょう。家に帰る頃には普通に椅子に座れ
るはずです。

 ここでのお仕置きはあくまで『恥ずかしめ』が中心。どんなに
悪いことをした子であっても、その日のお勉強に差し障りがでる
ようでは本末転倒ですからSM小説のような過激なスパンキング
というのは当時でもありませんでした。

 ただ、お勉強に直接影響しないウーマン検査の方は、やはり、
二人とも受けるはめになります。
 まるで赤ちゃんに戻ってオムツ替えさせられてるようなもので
すから当たり前といえば当たり前ですけどね。二人ともテーブル
の上で泣いていました。

 女の子にとっては大事な大事なプライドですものね。もっと、
もっと配慮してあげるべきだと思いますが、とにかく当時の大人
たちときたらデリカシーというものがまったくありませんでした。

 ただ、私自身はというと、心がまだ幼かったからでしょうか。
脳天気だったんでしょうか。ウーマン検査の時も他の子ほど深刻
には受け止めたことがありませんでした。
 逆に……

 「ほら、笑わない!!」

 なんてね、先生から注意されたことがあったくらいでした。
 だって、私にしたら、まるでママゴトやってるみたいで不思議
に楽しかったんですもの。


               <おしまい>

 (質問)
 『お~い、待った。待った。待った。君自身の事はどうなんだ。
やっぱりお仕置きされたんだろう。記事がないじゃないか(`ε´)』

 「まあ、いいじゃないですから私の事は……女の子ってのは、
他人の事はああだこうだ詮索したがりますけどね、自分のことは
秘密にしておきたいんですよ。男性と違って実績をたてに生きて
いけないから女の子は見た目が全てなの。裸にされて全部分かっ
ちゃうと、『なあんだ、そんなものか』って言われるのが怖いの。
謎めいた部分を残してぼかしておきたいのよ。ごめんね。期待も
たせちゃって……だからそれは、また次の機会にいたしましょう
( ^o^)


**********************

Appendix

このブログについて

tutomukurakawa

Author:tutomukurakawa
子供時代の『お仕置き』をめぐる
エッセーや小説、もろもろの雑文
を置いておくために創りました。
他に適当な分野がないので、
「R18」に置いてはいますが、
扇情的な表現は苦手なので、
そのむきで期待される方には
がっかりなブログだと思います。

最新記事

カテゴリ

FC2カウンター

検索フォーム

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード

QR