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「お菓子の家」編 ~1~

♔♕♖♗♘♙♚ 「お菓子の家」編 ~1~ ♔♕♖♗♘♙♚

 アンナはグリムの森にお母さんと住んでいました。今年11歳に
なる女の子はとても活発で勇気があります。ですから、森の動物や
精霊たちからはとても人気があったのですが、まともな……いえ、
自分たちを『まともな人種』と信じる大人たちにとってはちょっと
困ったちゃんでもありました。

 昨日も牧師様の処へ行って教会や牧師館のお掃除をお手伝いした
まではよかったのですが感動した牧師様が何でも部屋にある好きな
物を一つだけあげようというから、小さなマリア様の像をいただく
ことにしました。

 ところが、疲れたアンナはそれをお股の中に入れたまま牧師様の
ベッドでお昼寝してしまいます。

 夕方になり牧師様がアンナを起こそうとシーツを払いのけると…

 「!!!」

 そこには、マリア様の像を自分のお股の中に差し入れて爆睡する
アンナの姿が……

 牧師様は卒倒しかけましたが、冷静になってアンナにわけを尋ね
ます。
 すると…

 「だって、いつも抱いてる熊のピーちゃん(ぬいぐるみ)抱くと
両手が塞がっちゃうでしょう。仕方がなかったのよ」
 という答え。

 「だったらベッドから出せば良いじゃないか!?」
 と言うと…

 「だって牧師様の気が変わって『返せ!』なんて言われたら嫌だ
もん』パンツの中の方が安全だわ」
 アンナはあっけらかんとして答えます。彼女、アクティブで物怖
じしない処は良いのですが、頭はちょっと回らない子でした。

 結局アンナは先週脱いだばかりのAという刺繍の入った赤い頭巾
を再び被らなければなりませんでした。

 「あなた、また、牧師様からお仕置きを受けたの?」
 赤いずきんを被って帰宅したアンナにママは呆れて尋ねます。

 「ん?……うん、一週間だって」
 「こんどは何をやらかしたの?」
 しかし、その理由を聞いた時にはあまりにバカバカしくてもう声
にもなりませんでした。

 こんな按配でアンナはいつもAが刺繍された赤いずきんを被って
います。おかげで、みんなから『あかずきんちゃん』『あかずきん
ちゃん』と呼ばれるようになっていたのでした。

 次の日、あかずきんちゃんはママにお使いを頼まれます。
 「おばあちゃんのお家にこのビスケットを届けてちょうだい」

 「え~~~いやだあ~~~だって、あんな処まで行ったら帰って
来るまで一週間もかかるじゃない。今日は、マーガレットとお花を
積みに行く約束があるし、明日は妖精さんたちのパーティーにおよ
ばれされてるのよ。明々後日は王女様の誕生会。ものすごく沢山の
ご馳走が出るんだから」

 口を尖らせて抗議するアンナにママは…
 「何言ってるの。おばあちゃんは今、風邪をこじらせてベッドで
寝込んでるの。あなたに会いたがってるわ。……だいいち、あなた、
そのずきんを被っておよばれに行くつもりじゃないでしょうね」

 「だって、しょうがないじゃない。牧師様が一週間はこれを脱い
じゃいけないって…牧師様が悪いのよ」

 「何言ってるの、あなたが悪いんでしょう。ママはそんな恥ずか
しい子をパーティーに出すつもりはありませんからね。今回はおば
あちゃんの処へいってらっしゃい」

 「いやよ。だいたい、みんなだってそうよ。私の赤ずきん姿なん
てもう見慣れちゃってるわ」

 「あっ、そう。どうしてもいやなら、たっぷりお仕置きをしてあ
げるから、その後ここを出て行きなさい。お言いつけを守らない娘
なんてママの子じゃないからどこへでも行っちゃいなさい。そうだ、
おばあちゃんの家の近くに住むオオカミさんから、私、頼まれてた
わ。養女になる子を探して欲しいんだって………ちょうどいいわ。
あなたならあげてもいいわね」

 『(何言ってるのよ)』
 赤ずきんちゃんはママを睨みました。
 『どうせまた脅かしに決まってるわ』
 そうは思うのですが確たる自信もありません。11歳のアンナは
まだ純真な子供でしたからママの指示には逆らえませんでした。

 結局、ビスケットを一杯に詰めたバスケットを持って森の中へと
入っていきます。

 「えっ!何よこれ、ママの嘘つき。おばあちゃんにビスケットを
届けるだけじゃないじゃないの。まだこんなにたくさんのご用があ
るんじゃないの」

 赤ずきんちゃんはママからのメモを見て愕然とします。そこには
……
 『(追伸)それから魔法使いのお婆さんの家に寄っておばあさん
が修理をたのんでおいた箒を受け取って欲しいの。それから七人の
コビトさんの家によって、あなたの誕生日ケーキを注文してきてね。
大きさやデザインなんかはあなたが決めていいわよ。そうそうそれ
と、お義姉様のお城へ行って王女様、つまりあなたから見れば従兄
弟ね。その子たちをお仕置きなさるそうだからそれを見届けて来て
欲しいの。土曜日の午後っていうから、時間厳守で行ってよ』

 「何よ、お義姉様のお城ってシンデレラ城のことでしょう。だい
たい、シンデレラ王妃様とママが義姉妹ってのが信じられないわ」
 ぶつくさ言いながら赤ずきんちゃんは森の中を歩きます。普通、
人間社会では幼い子は森に入っちゃいけないというのがごく自然な
ルールでした。もし暗い森の中で道に迷ったら出てこれないからで
す。ですが、このグリムの森では赤い靴を履いている限り道に迷う
ことはありません。この靴さえ履いていればその子の意思とは関係
なしに勝手に足が動いて目的地まで連れて行ってくれるのでした。

 「げっ!!!」
 赤ずきんちゃんはメモの最後を見てさらにショックを受けます。
そこにはおばあちゃんの家へ行く前にイバラ姫様のお城へ立ち寄り
なさいと書いてあったのです。

 イバラ姫様は赤ずきんちゃんの大叔母さんにあたる人なんです
が、ここへ行く時は決まってお仕置きをもらいに行く時なんです。
大叔母さんは子供へのお仕置きが大好きで自分の子供たちだけで
は飽きたらず、近所の子供たちまでその母親に代わってお仕置き
するような……そんな人なのです。

 でも、今ではそんな評判が広がって、国の内外から母親たちが
泣き叫ぶ子供の手を引いてこの城へとやってくるようになっていま
した。

 「嫌だよ、あんな処。ママったら、私をだましたのね。まったく
あの女、陰険なんだから」

 赤ずきんちゃんはぼやきながら慌てて赤い靴を脱ごうとします
が、時すでに遅し。この靴は一旦履くと目的地に着くまでは決して
脱げない仕組みになっていました。

 「え~~~どうして脱げないのよお~~~」

 諦めた赤ずきんちゃんは一旦は歩みを止めてバックしようとしま
したが……

 「……どうして足を後ろにを向けられないのσ(`´メ∂」
 赤ずきんちゃんの靴は前へはすんなり進むのですが、踵を返して
バックしようとしてすると、靴が急に重くなって動かなくなるので
す。

 「ダメかあ~~」
 諦めるしかありませんでした。

 「何よ、もうこうなったら、絶対この場所を動かないからね。
だいたいどうして私の方からお仕置きされに出向かなきゃならない
のよ。変よ、絶対に変よ」
 赤ずきんちゃん、ストライキです。

 でも、それも無駄でした。
 「……あっ、やめてえ、~~~痛い、痛い、痛い痛いんだから」

 あまり長時間その場に留まっていると、どこからともなく柳の枝
をくわえたツバメが急降下してきて……

 「ピシッ」

 「痛い!」
 赤ずきんちゃんのお尻を鞭打ちます。

 「いやあん、やめてえ~~」
 どんなに逃げてもツバメは赤ずきんちゃんのお尻を正確に捉え続
けます。
 ですから、赤ずきんちゃん、もうこうなったらママのメモ通りに
森の道を進むしかありませんでした。


***************** <つづく> *****

「お菓子の家」編 ~2~ 

♔♕♖♗♘♙♚ 「お菓子の家」編 ~2~ ♔♕♖♗♘♙♚

 グリムの森は明るい森です。お日様の光が大きな木の根元にまで
届いて可愛らしい草花があちこちに小さな花をたくさんに咲かせて
いました。ですから、赤ずきんちゃんはそれをたくさん摘んでバス
ケットに入れます。最初に行く魔法使いのお婆さんは顔はとっても
醜いのですが綺麗なものは大好きでした。

 「ここにもあるわ……あそこにも……黄色はあるけど紫はないか
しら」
 そんなことを呟きながら赤ずきんちゃんのバスケットはいつしか
お花で一杯になっていました。

 「このくらいでいいでしょう」
 満足した赤ずきんちゃんはお空の上からまだ用心深く自分を監視
しているツバメさんにあっかんべーをして魔法使いのおばあさんが
住むお家へと走っていきます。

 「やったあ~、ここだわ。相変わらずおばあさんは綺麗好きね、
まるで出来立てのお菓子でできてるみたいだわ」

 感心してお家を眺めていると、中から子供の悲鳴が聞こえました。
 「ごめんなさい。もうしません。もう食べないから許してよお」
 好奇心を刺激された赤ずきんちゃんはそうっと窓から部屋の中を
覗いてみます。するとどうでしょう。部屋の中では魔法使いのお婆
さんが膝の上に乗せた男の子のお尻を平手で叩いています。

 『お仕置きだわ。どうしたのかしら。あれ、ヘンゼルよね』

 赤ずきんちゃんはお友だちのお仕置きを目の当たりにしてとても
中に入る勇気が湧きませんでした。そこでもう少し部屋の中の様子
をうかがってみると…

 『やだあ、グレーテルがあんな処にいる』
 赤頭巾ちゃんが見たグレーテルは暖炉のそばに置かれた木馬の
上にいます。子供のお仕置き用なので跨る処は尖ってはいませんが、
スカートはすでに捲り上げられ、下着も身につけていませんでした。

 「(パン、パン、パン)」

 「ごめんなさい、もうしません。もう食べませんから」

 「当たり前じゃ。しかし、お前たちには以前にも前科があるから
のう。そう簡単に許してやるわけにはいかんのじゃ」

 「(パン、パン、パン)」

 「いやあ、だめえ、ごめんなさい」
 ヘンゼルは半ズボンとパンツをずり下げられた姿勢で、しきりに
謝っていますが、お婆さんは許す気配がありません。

 『あっ!』
 そんな中、部屋の中を観察していた赤ずきんちゃんはあるものに
気がつきます。

 『やったあ、本物のお菓子の家だわ!』
 魔法使いのお婆さんはもともと自分の家そっくりに作ったお菓子
の家を欲しい人に売っていました。それが今、テーブルの上にある
のです。

 『まだ、作りかけなのかなあ』

 いえいえ、その一部は明らかに食べられています。
 つまりそれが問題だったのです。

 「せっかくわしがお皿にクッキーを盛ってやったのに、大事な注
文品に手をつけよってからに…」

 「(パン、パン、パン)」

 「ごめんなさい、つい美味しそうだったから……」
 そうなんです。ヘンゼルとグレーテルはお婆さんの商売もののお
菓子の家に手をつけてこっそり食べてしまったのです。

 「ママに言ってお金をもってくるから……」

 「(パン、パン、パン)」

 「何を言っとるか。生意気言うもんじゃないぞ。まだガキのくせ
に。お金の問題じゃない。わしの信用の問題じゃ。まったくもって
最近のガキはこざかしいわい」

 お婆さんはそう言うとさっきよりさらに強くスナップを効かせた
平手打ちでヘンゼルのお尻を見舞います。

 「(パ~ン、パ~ン、パ~ン)」

 「いやあん、だめえ~~もうしないでえ~~」
 ヘンゼルは両方の手足をばたつかせて必死のお願いです。

 と、そこへ一羽の鳩が赤ずきんちゃんの肩を掠めて家の中へ……

 「おうおう、戻ったようじゃな。ようし、待っておれよ」
 お婆さんはヘンゼルを膝の上から下ろすと鳩を追って巣箱のある
隣の部屋へ。

 しばらくして……
 「おう、おう、これじゃ、これじゃ」

 ほどなく戻ったお婆さんでしたが、鳩の足首に着けられていた手
紙を見ながら何やら上機嫌です。そして三角木馬からグレーテルも
下ろして二人にその手紙を見せるのでした。

 「ほれ見てみい。……どうじゃ、お前等の母上はお菓子のお金を
払うと書いてあったか」
 魔法使いのお婆さんは勝ち誇ったように高笑い。

 憎々しい笑顔ですが、実際、手紙の内容は二人にとっては最悪の
内容だったのです。

 「お前たちの母上はわしにどんなお仕置きでもしてよいと言って
おるぞ。それがお前たちの為だからどんなことをされてもしっかり
耐えるようにとも書いてあったな。どうじゃ、ちっとは観念した
か?」

 お婆さんは不気味に笑います。その前で二人の子供たちは震えて
いるよりほかありませんでした。

 「このような性悪なガキにはどんな罰がよいかのう。ヒキガエル
にするというのも古典的過ぎるし……素っ裸で石像にでも変えて、
一週間ほど村の辻に立たせておくというのも、いいかもしれんな。
…………どうじゃ、グレーテル、そんなのは……ん?嫌か?………
恥ずかしいか?」

 お婆さんは困り切った二人の顔を楽しむようにゆっくりと眺めて
から、どうやら一つの結論に達したようでした。
 ただ、その答えは子供たちには告げず、さっそく辺りを片づけ始
めます。食べかけのお菓子の家は戸棚にしまい。編みかけの毛糸
のショールや銀の食器なども隣の部屋へ。代わりに持ってきたのは、
白い大きなシーツとお盆に乗った数種類のガラス器、それに、暖炉
の灰をかくための鉄の棒などです。

 「(えっ!)」驚きが声にもならず目が点になる二人。

 でももし二人が本当によい子なら、これらを目の当たりにしても
それほど驚かなかったかもしれません。実際、普段はお転婆なはず
の赤ずきんちゃんでさえこれらのものを見てもたいして驚きません
でした。

 『あれ、何だろう?注射器みたいだけど、それにしてはおっきい
し……あっ、あれなら知ってるわ。豚さんに番号を付けるやつよね。
でも、ここに豚さんいたっけ?』

 赤ずきんちゃんはお転婆少女でしたが、本当に厳しいお仕置きは
まだ誰からも受けたことがありません。ですから、ここに並べられ
たお道具に顔が真っ青になっている二人を見ても、それがいったい
どのくらい凄いことなのか理解できないでいたのでした。

 「わっ!なんじゃ、なんじゃ、汚い子じゃなあ」

 魔法使いのお婆さんが突然発した嬌声に、赤ずきんちゃんは何事
だろうとグレーテルの方を見ます。すると、まだ何も始まっていな
いというのにグレーテルがお漏らしを始めているのです。

 「まったく汚い子じゃ。……いいから、これで拭け」
 お婆さんはグレーテルにボロ布を投げつけます。これで自分のお
股をぬぐえというのでしょう。

 『いやよ、こんな汚いぞうきんでなんか。こんなので拭いたらか
えってお股が汚れるわ』

 グレーテルは思いましたが口に出して反論する勇気はありませ
ん。仕方なく投げられたボロ布で自分の太股のあたりをそうっと撫
でてみますが……

 「まったく手間のかかる子じゃ。パンツを脱がなきゃ綺麗になら
んじゃろうが」

 お婆さんはそう言ってグレーテルに飛びかかるとグレーテルから
ボロ布を奪い取り、少女のパンツを問答無用でずり下げるとお股を
鷲づかみにしてふきあげてしまったのです。そして何も言えず立ち
つくしているグレーテルに向かって……

 「ん?どうした?ありがとうございますの一言も言えんのかい。
親の躾がなっとらんのう」
 と迫りますから…

 「あ、ありがとうございました」
 グレーテルは仕方なく小さな声をあげます。屈辱的でしたが仕方
ありませんでした。

 「よし、では、服を全部脱いで…今度はこれを着るんじゃ」
 お婆さんが棚から取り出したのは、キャミソールと白いフレアの
スカートがついたワンピース。でも、ショーツはありませんでした。

 「おう、おう、よう似合っとるぞ。お漏らしするような赤ちゃん
にはこれで十分じゃて……よし、ヘンゼルもパンツを穿いてよいぞ」

 留魔法使いのお婆さんは二人に一旦下着を身につけることを許す
と、すっかりしょげかえってしまった二人を前にして一枚の誓約書
を提示します。そこには…

 『私たちはお婆さんが大事にしているお菓子の家を食べてしまい
ました。ですから、お婆さんからの罰を受けて許してもらうことに
します。どんな罰でも素直に受けます。絶対に恨んだりしませんか
ら、どうか神様、私たちをお守りください』

 と書かれてあります。まったくおばあさんの一方的な言い分です
が二人はこれにサインしなければなりませんでした。グリムの森の
子どもたちは大人たちからお仕置きを受ける時、どんな罰でも素直
に受けますという誓約書にサインをする仕来りになっていました。

 もしお仕置きの後、誓約書に反してあちこちで恨み言を言うと、
さらに厳しいお仕置きが待っていますから、子どもたちにとっては
これにサインすること自体とても勇気のいることだったのです。

 ためらいながらも二人が誓約書にサインをすませると、お婆さん
は二人を呼び寄せてとってもやさしく抱きしめます。なんだか矛盾
しているみたいですが、これもまたグリムの森のルールでした。

 『子どもたちへのお仕置きは、大人が冷たく突き放すための刑罰
ではなく、愛する者が愛の中で行う愛の儀式』
 そんなポリシーからでした。子供たちはお仕置きの前後には大人
たちから優しく抱いてもらいます。

 とはいえ二人の子供たちにしてみれば、お婆さんが用意したもの
からこれからどんなのお仕置きが自分たちに待っているかを容易に
想像できます。たとえお婆さんから一時抱いてもらったとしても気
もそぞろといった様子だったのです。

 「どうした?怖いか?…でも、仕方がないのう、お仕置きじゃか
らな」

 震える二匹の子羊をお婆さんは交互に抱きながら落ち着かせます
が、そのうち窓辺に赤いずきんを見つけます。

 「おう、赤ずきんじゃないか、来ておったのか。入れ、入れ」
 赤ずきんちゃんは随分待ってやっと魔法使いのお婆さんの家に入
る事ができました。

 「おばあちゃまの箒じゃな、おうおう出来ておるぞ。これは性格
のいい働き者でな、きっと気に入るはずじゃ。これがあればな、夜
の間にお部屋が見違えるように綺麗になるからな、体の不自由なお
前のおばあちゃまにはぴったりな箒じゃ。わしには、まだいらんも
のじゃがな。(^◇^)」

 魔法使いのお婆さんは自慢の箒を手渡します。すると、赤ずきん
ちゃんはお礼にバスケット一杯に摘んできたばかりの花を差出した
のでした。

 「これ、お花、私が摘んだの」

 「おお、そうか、そうか、綺麗じゃ綺麗じゃ。これはお前の心の
ように綺麗じゃぞ。さっそく、花瓶に入れような」
 魔法使いのお婆さんは赤ずきんちゃんを抱きしめ野の花を花瓶に
生けようと立ち上がります。けれど今の赤ずきんちゃんはどうやら
他の事に気があるようでした。

 「ん、どうした?……こいつらのことか?……こいつらはお前と
違ごうて悪戯坊主じゃからな、今、お仕置きしておったところじゃ。
これからが本番じゃが、見ていくか?」

 お婆さんのお誘いに赤ずきんちゃんは首を横に振りましたが……

 「嫌か?いいから見ていけ。こいつらも観客がおった方が楽しか
ろうて……これもグリムの森の社会科見学じゃ。悪さを繰り返す子
が、どんなお仕置きを受けるかを見ておけば自分の心に悪い誘惑が
忍び寄った時も考え直すきっかけになるじゃろうからな」

 お婆さんはそう言って赤ずきんちゃんを引き留めます。赤ずきん
ちゃんは心の半分まではお暇(いとま)しようかと考えていました
がお婆さんに勧められたんじゃ仕方がありません。

 「ここで見ていればいいの?」
 「そうじゃ、少しだけ手伝ってもらうかもしれんがな」
 本当は二人のお仕置きを見たくて仕方がありませんでしたから、
これで公明正大に二人の泣き顔を見学することができます。

 『やったあ!』\(゚▽゚)/
 赤ずきんちゃんは申し訳なさそうに二人の様子を見てはいました
が、それは顔だけのこと。心の中はこれから始まる二人のお仕置き
に胸を躍らせていたのでした。

 「ほれ、これでも食べて待っておれ、もうすぐ助っ人も来るでな」
 お婆さんはお皿にお手製のビスケットを乗せて持ってきてくれま
す。

 「いただきます」
 赤ずきんちゃんは二人がびくびくしながら部屋の隅で震えている
光景を肴にビスケットを一つ手に取ると食べ始めます。
 すると、その口をもぐもぐさせながら顔はどうしても微笑を隠す
ことができません。ばつが悪いのでお婆さんに尋ねてみました。

 「ねえ、助っ人って誰?」

 「コビトじゃよ」

 「コビト?」

 「ほれ、白雪姫がお仕置きとして送り込まれとる家の住人じゃ」
 「七人のコビト?」

 「そうじゃ、もう、すぐそこまで来ておるわ」

 魔法使いのお婆さんはグリムの森の住人の中でも特別な能力をも
っています。これもその一つでした。彼女は誰が森のどこにいるか
念じるだけでそれを感じとります。

 ですから、お婆さんの言った通りでした。赤ずきんちゃんが二枚
目のビスケットに手を伸ばした時には、もう彼らは現れていました。

 「おう、よう来たな」
 「おばばの頼みじゃ、来ないわけにはいかないでしょう」
 一人のコビトが窓から顔を出します。すると、その青い帽子のコ
ビトの肩に乗って次から次へと他のコビト達も部屋の中へと入って
きます。

 彼らはとっても身軽でテーブルや椅子の背もたれはもちろん高い
棚の上までも椅子代わりにしてそれぞれ思い思いの場所に陣取りま
す。中でも青い帽子のコビトは彼らのリーダー格でした。彼は魔法
使いのお婆さんの肩に留まると…

 「何でも言ってくれよ。できる限りのことはするから」
 こう言って手と足を組みます。

 魔法使いのお婆さんはこんな無礼な態度にも怒った様子はあり
ません。むしろ肩の上のコビトに親しく話しかけます。
 「そう言ってくれるとありがたい。……時に、継母がお宅たちに
押し付けたお嬢様は元気かい?」

 「白雪姫かい。…ああ、最初はお仕置きのたびに大暴れして大変
だったがね、今じゃ自分から鞭打ち台に上っておとなしいものよ」

 「ほう、あの跳ねっ返りの小娘がなあ」

 「誰だって同じ、最初は虚勢張って突っ張ってるがね、ここより
他に暮らす場所がないと分かれば諦める。今じゃお義母様にせっせ
せっせと反省の手紙を書いてるよ」

 「それじゃあ、お城に帰る日も近いのかい?」

 「そうはいかないさ。今はまだ、悪さが見つかれば素直にお仕置
きを受けるって程度だからね」

 「それだけじゃいけないんだ」
 お婆さんの言葉にコビトは思わず語気を強めて…

 「そりゃあそうさ。こんなおチビさんなら、それでも仕方がない
だろうけど……」

 コビトのリーダーは語気を強めてしまい赤ずきんちゃんを驚か
してしまったことを詫びるように微笑みます。
 そして穏やかな口調に戻って……。

 「白雪姫はハイティーンだからね、罪を懺悔して自ら罰を受ける
ようにならなければ本当に改心したことにはならないよ」

 「そこまでは進んでいないというわけか」

 「そういうこと。幼い子と違ってあれだけ歳がいってからだと、
矯正するにも時間がかかるんだ」

 「そうじゃな。では、あの子たちはどうじゃ。もう手遅れか?」

 「そうだなあ、……これで何回目だい?」

 「三回目だ。前の二回は、スパンキングと蝋涙で許してやったん
だが……」

 「効果がなかったんだな」

 「まあな」
 青い帽子のコビトは二人をいぶかしげにながめながら……

 「……ん~~かもしれんなあ。男の子はいくつだ?」

 「11歳。女の子も同じじゃ。こいつら二卵性の双生児でな」

 「なるほど、男の子は観念しとるように見えるが、女の子の方は
まだまだ………だな」

 「わかるか、さすがに鋭いな」

 「そりゃそうさ、見くびってもらっちゃ困るなあ、こう見えても
こっちとらお仕置きが商売なんだぜ。そのくらいわかるよ。あの子
は女の子の典型だ」

 コビトの言葉に赤ずきんちゃんが反応しました。
 「女の子の典型って?」

 それにコビトのリーダーが答えます。
 「ん?お嬢ちゃんにはまだ関係ないけどね。女の子というのは、
成長するにつれて、お腹の中で思っていることと顔の表情を別々に
することができるんだ」

 「それって、本当は反省してないってこと?」

 「そういうことじゃな。反省しましたって、ふりだけすれば許さ
れると思ってしまうんじゃ」
 魔法使いのお婆さんが答えます。次にお婆さんは肩の上のコビト
に尋ねました。

 「表面づらは申し訳なさそうな顔をしていてもお腹の中では笑っ
てるような子にはどんなお仕置きがいいだろうね」

 「さあ、どうしようか」
 コビトのリーダーはグレーテルを見て笑っています。その笑いは
相変わらず申し訳なさそうな顔をしているグレーテルのお腹の中に
も届いたはずでした。

 「でも、おばば。おばばはもうこの子への罰は決めてるんだろう。
テーブルの上に色々乗ってるし暖炉では焼き鏝もすでにいい色合い
に焼き上がっているじゃないか」

 「そりゃあそうじゃが、あんたの意見も聞きたいと思ってね。何
しろ可愛い孫たちじゃからな。あまり手荒なことはしたくないんじ
ゃが、そうかといってこのままでは立派な大人にもなれそうにない
のでな」

 『(えっ!孫?この子たちはお婆さんの孫だったんだあ)』
 赤ずきんちゃんは驚きの事実を知ってしまいましたが、声は出さ
ずに三つ目のクッキーに手を出します。

 「このくらいの歳になると、もう痛いだけの罰じゃだめだろうね」

 「やっぱりそうか」

 「女の子は特にそうだけど、恥ずかしいって思わないと反省しな
いよ。特にこのくらいの歳はそういうことに敏感だから、なおさら
効果があるんだ」

 「もう少し上の方がもっと恥ずかしいがるんじゃないかい?」

 「ところがハイティーンになると、まわりも見えてくるし度胸も
つくからね。実はお仕置きの効果は薄いんだ。うちの白雪姫がいい
例さ。むしろこの頃に徹底的に恥をかかせて女の子としての心棒を
通しておくことが大事なんだよ」

 「鉄は熱いうちに…じゃな」

 「そういうこと」
 こうして二人の大人たちによりグレーテルへの厳しいお仕置きが
決定したのでした。

 こうした会話は、当然、グレーテルの耳にも届いていますから、
グレーテルの顔はすでに真っ青、心臓は今にも張り裂けんばかりに
脈打っていました。


***************** (つづく) *****


「お菓子の家」編 ~3~

(ファンタジー小説)
 赤ずきんちゃんの冒険 ③

  グレーテルのお仕置き、いよいよ佳境ですよ。(*^_^*)

♔♕♖♗♘♙♚ 「お菓子の家」編 ~3~ ♔♕♖♗♘♙♚
 でも最初に呼ばれたのはなぜかヘンゼルでした。

 「いいか、お前は男の子なんじゃぞ。妹の尻に敷かれてどうする。
嫌なものは嫌、ダメなものはダメとはっきりせんからこんなことに
なるんじゃ。今回だってどうせグレーテルの奴が『少しぐらいなら
分かりりゃしないわよ』ぐらいのことを言ったんじゃろう」

 実は、魔法使いのお婆さんの言う通りでした。気の弱いヘンゼル
は、グレーテルから何か言われると断り切れないのです。

 「ほれ、これを持ってみい」
 お婆さんは柳の細い枝をよりあわせて作った一本の鞭をヘンゼル
に持たせます。

 「これは魔法の杖じゃ。これがあるとな、お前の望むものは何で
も叶うからな、大事にするんじゃぞ」

 お婆さんはほくそ笑んで諭します。それは何か含みのありそうな
不気味な笑顔でしたからヘンゼルは怪訝な顔になります。しかし、
頭の良いグレーテルにとってみれば、それはもっともっと不気味に
思えたに違いありませんでした。

 「グレーテル、こっちへ来なさい」
 お婆さんは今度はグレーテルを呼びます。その声は氷河の奥底か
ら響く地鳴りのように冷たく、その鋭い視線はグレーテルの小さな
胸をえぐります。
 恐くなったグレーテルは思わず逃げようとしましたが……

 『えっ?!』
 でも、それは叶いませんでした。体が動かないのです。
 いつの間に取り囲んだのでしょうか。手も、足も、頭も、胴体も、
身体のすべてが七人のコビトたちによって押さえられています。

 「いやあ、放して」
 泣き叫ぶグレーテルに微笑みで答えるコビトたち。
 彼らは身体こそ小さいのですが大変な力持ちでした。
 彼らから見れば少女の一人ぐらいどうにだってなります。

 「だめえ、止めて、止めてよ、わたしママのところへ帰る」
 グレーテルはコビトたちの思うがままにはなりたくなくて必死に
声を張り上げました。

 「だめよ、帰る。私ママの処へ帰るんだから。離しなさいよ」

 でも、無駄でした。

 彼らにかかればグレーテルより体の大きな白雪姫でさえどうにも
ならないのです。ましてやまだ幼いグレーテルがどうにもならない
のは当然でしょう。

 やがて、コビトたちとの争いに疲れたグレーテルは、魔法使いの
お婆さんの足下に放り出されると、その直後はもう立ち上がる気力
もない様子でした。

 「ほう、どうしたね、グレーテル?観念したか?ま、そんなはず
もあるまい。ほんのちょっと休んでおるだけじゃな」
 お婆さんは意地の悪そうな目つきで床に転がるグレーテルを見つ
めます。

 グレーテルは起き上がろうとしましたが……

 「まあよい、しばらくはそこで休みながら聞け。……いいかお前、
お前の兄さんは立派な男じゃ。お母さんの言いつけはよく聞くし、
陰ひなたなく働く。何より妹思いじゃ。しかし悪さをするとなれば
話は別じゃ。あいつはわしがせっかく苦労して作ったお菓子の家を
壊して食べてしもうた。だから、罰を受けさせたんじゃ。……ここ
までは分かるな」

 「……はい」グレーテルは恐る恐る答えます。

 「だから、お前の兄さんは今は清い身体になっておる。……わし
のお仕置きを受けたからな…しかし、お前はどうじゃ、グレーテル。
兄さんにお菓子の家をねだらなかったか?……ん?わしがしばらく
は帰らないから逃げる暇はあるから、なんて言ったんじゃないの
か?」

 「…………(どうしてそんなことがわかるんだろう?)……」
 グレーテルは思います。
 すると……

 「図星のようじゃな」
 おばあさんは床に転がっていたグレーテルを立たせると、椅子に
座らせ床で着いた埃を払いながらこう言います。
 「今回のことは、おおかたお前がそそのかしたんじゃろう。……
自分が言えば、ヘンゼルがお菓子の家を取ってきてくれると思って
な」

 「…………」
 グレーテルの表情は固いまま、まるでお人形のように口を開きま
せんでした。

 「まだあるぞ。わしが不機嫌な理由が……わかるか?」

 「…………」
 グレーテルは無言で頭を横に振りました。

 「わしがお前等を見つけた時、お前、兄さんに言っとったな……
『だからお菓子の家に手をつけちゃだめって言ったのに、兄ちゃん
は言うことをきかないんだから』って……あれは何だ!」

 「…………」
 お婆さんは床に視線を落とすグレーテルの顎をとって自分の目を
見させます。

 「ああ言えば、自分はよい子で、ヘンゼルに罪を着せることがで
きるとでも考えたのか?」

 「…そんなこと……私はべつに………」
 グレーテルは小声で反論しようとしましたが、おばあさんの強い
視線にやがて目も口も閉じてしまいます。

 「愚かよのう。さっきも言ったようにお前の兄さんは正直者じゃ。
自分からつまみ食いなんぞしやせんよ。お前がそそのかさん限りは
な。それは誰もが知っとることじゃ。お前のお父さんもお母さんも、
わしもここにいるコビトたちもみんなそうじゃ。………そのことを
知らんのはお前だけじゃ」

 お婆さんはグレーテルには信用がないと言っているのです。その
言葉はグレーテルの胸にも深く突き刺さります。

 道は二つでした。素直にお婆さんの言葉を受け入れて謝るのか、
それとも……

 「だだって、私は取ってないのよ。お菓子を取ったのはヘンゼル
じゃないの!」
 どうやらグレーテルは二つ目の道を選んだようでした。

 「たしかに、お前があれを壊したわけじゃない。しかし、お前は
それを兄からもろうて食べたじゃろう」

 「わたし、食べてないもん」
 グレーテルは強情をはりますが…

 「何を言うととる、口についとる白砂糖がなによりの証拠じゃ」
 お婆さんに言われて、グレーテルは慌てて口元をぬぐいますが、
そこには何もついていませんでした。

 「いいか、グレーテル。お前がそんな了見じゃから、みんなから
嫌われるんじゃ。世の中には実際に罪を犯した者よりそれをそその
かした者の方がより強く責められることがたくさんあるんじゃぞ」

 「だって私があのお菓子の家に手を出したんじゃないのよ。ヘン
……ヘンゼルが、ヘンゼルが下手だから壊れただけじゃない。私は
……壊れた破片をちょっぴり頂いただけなんだから」
 グレーテルは必死に抗弁を繰り返しましたが、魔法使いのお婆さ
んはすでにグレーテルの言葉なんか聞く気がありません。
 もはやグレーテルが何を言おうとそれは気にせず、せっせせっせ
と準備を進めます。そして、準備が終わると……

 「だめえ~~」
 何の宣言もなくいきなりグレーテルへのお仕置きが始まります。

 まず、最初は……

 「いやあ、やめてえ、下ろしてよ~」

 七人のコビトたちに抱え上げられたグレーテルは白いシーツが敷
かれたテーブルに仰向けに寝かされます。

 「いやだ、エッチ。なにするのよ!」

 グレーテルはいきなりスカートを捲り上げられそうになりました
から慌てて身を翻そうとしたのですが、できたのは上体を30度程
起こすことだけ。

 「いやあん」

 そもそも相手は七人もいるんですからかなうはずがありません。
たちまち両手と頭の動きが封じられると、両足が高々と持ち上げら
れ、スカートは胸の位置で止められてしまいます。

 「……(もう、どうにもならないわ)……」
 そう悟るのにそう長い時間は掛かりませんでした。
 そして、悟ってしまえば一旦はおとなしくなります。

 もちろん、一度高く天井を向いて跳ね上がった両足はそのまま。
グレーテルがどんなに頑張っても踵をテーブルに戻すことなどでき
ませんでした。

 「(そっ、そんなあ)」

 グレーテルは体の自由が利かなくなってからも、しばらくは嘆き
悲しみましたが、やがて、あまりのことに頭の回路がショートして
声さえ出なくなったのです。

 「(こんなのいや、こんなの夢よ、こんなの現実じゃないわ)…」
 そう思い続けることが唯一の慰めでした。

 想像してみてください、こんな格好を。女の子だったら誰だって
卒倒したいほどのショックなはずです。
 おまけに自分のお股の間からは……

 「……(ヘンゼル!)……」

 弟の不安げな顔が見え隠れしています。

 「ヘンゼル坊や、ほうら見てごごらん、グレーテルのこんな処は
おまえはまだ見たことがないじゃろう」

 魔法使いのお婆さんがヘンゼルの後ろに回って肩を抱くと小さな
声ですがグレーテルの耳にもしっかりと届きます。
 するとその瞬間、ヘンゼルの顔が少し微笑んだように見えました。

 「…………」

 もちろん今までなら『ぎゃ~~』と金切り声を上げてるはずです。
 ところがグレーテルは声を出しませんでした。
 ヘンデルの見せたちょっぴり不気味な笑顔を見た瞬間グレーテル
の心は怒りと不安が交差したまま固まってしまい自ら自由を失って
しまったのです。

 『何よ、何なの、あいつ!どうして笑うのよ!』

 底知れぬ恐怖と不安。その正体は、ヘンゼルが初めて見せた男の
性(さが)だったのです。

 それだけではありません。周りには忌々しいコビトだっています。
彼らだって小さくても男ですからね……女の子にはプレッシャーで
す。
 『大声を出してさらに恥をかきたくない』
 グレーテルにはそんな気持が働いたようでした。

 「さあ、まずはお腹の中におる悪賢い悪魔どもを身体の外に出さ
んといかんな」

 お婆さんがそう言って取り出したのはガラス製の浣腸器。これが
横を向いたグレーテルのすぐ脇、ほっぺたから5センチと離れてい
ない処にいつの間にか置いてあります。

 「(いや、やめて、それはいや)」
 やがて、一人のコビトによってお薬の入った石けん水が吸い上げ
られていく様子が、グレーテルの視界にあまりにも大きく映り込み
ます。

 「(えっ、なっ、何よ、何するのよ、やめてよ、…いやよ、いや、
いや、それは絶対にいや)」
 グレーテルは心の中で叫び続けましたが、どうにもなりませんで
した。

 やがて目一杯の石けん水を吸い上げた特大の浣腸器の先を指で
塞いで赤い帽子のコビトがそれを肩に担ぐとグレーテルのお尻の
方へ……。

 「(あっ、待って)」

 グレーテルは声がでません。目だけで彼を必死に追いかけました
が身体がどこも自由にならない悲しい身の上。やがて視界から消え
去り、それっきり。

 代わりにお婆さんの声がして…
 「おうおう、可愛いお尻の穴じゃて…」

 「いや、触らないで…>_<…」
 ここでやっと声が復活します。

 「何が、嫌じゃ、お前のばっちい処を触っとるこっちの方がよっ
ぽど嫌じゃよ。さあ、お尻の穴を緩めんかい。抵抗するとお仕置き
が増えるぞ」
 急にドスの利いた声になったお婆さんがグレーテルのお尻の穴を
押し広げようとしますから、慌ててその門に力を入れます。

 「あ~いやあ~~どうしてこんな格好でお浣腸しなきゃならない
のよ。恥ずかしいでしょう」

 グレーテルはたまらず訴えますが、誰も聞いてはくれません。
それに今となってはどうにもなりませんでした。

 そのうち、おばあさんにお股のどこかを触られて……
 「\(◎o◎)/!」
 びっくりした拍子にガラスの突起が体の中に入ったようでした。

 「(いや、いや、いや)」
 そう思いながらも少しずつ、でも確実に、お尻の穴から石けん水
がお腹の中へと流れ込んできます。その気持ちの悪いことといった
らありません。
 「(>。≪)」

 一本目が抜き取られ、やれやれと思っていたのに……

 「えっ、またなの?(;゜∇゜)」

 ふたたび赤い帽子のコビトがガラス製の浣腸器を担いで目の前に
やって来ます。

 グレーテルの泣きそうな声にもお婆さんは冷たく……

 「まだじゃ、小さい子じゃあるまいに、お前さんがこんなもので
効くもんか。……ほれもう一本あるぞ。終わったら今度は石けん水
が逆流せんようにお尻の穴をしっかり閉じておくからな。お前さん
はお腹の中の悪魔としっかり戦うんじゃ」

 そしてまたしてもグレーテルの頬のすぐそばで石けん水が不気味
な音と共に吸い上げられていき、やがてお尻の方へと届けられます。

 「\(◎o◎)/!あっ、苦しい。だめ、痛い、痛い、痛いって、
そんなにいっぱい入れたらお腹が耐えられない。死ぬ~~~」

 「馬鹿が、うろたえるな。大丈夫じゃ、これまで何人となくお前
のようなチビさんたちにお浣腸を授けてきたが、お腹が破裂した奴
も死んだ奴もおらんわさ」

 終わるとグレーテルのお尻の穴にはお婆さんが仕掛けた魔法の栓
が食い込みます。また尾籠なことが起きないようにとコビトたちに
よってオムツも厳重に穿かされたのでした。

 「よし、これでいいじゃろう」
 魔法使いのお婆さんのお許し声。グレーテルもこれでやっと空中
に浮いていた両方の踵をテーブルの上に下ろすことができます。

 「(もう、ここまでくれば大丈夫)」
 グレーテルはそう思ったに違いありません。テーブルを降りると、
さっさとトイレへ向かおうとしました。ところが……。

 「やめてえ~~何するのよ~~トイレへ行かせてよ~~漏れちゃ
ったらどうするのよ」

 グレーテルは再び恥も外聞もなく声を限りに叫びますが、七人の
コビトたちがグレーテルの言うことをきくはずもありませんでし
た。

 「グレーテル、こっちだこっち。今日のお前のトイレはここだよ」

 コビトたちがグレーテルのために用意したトイレは、誰の目から
も身を隠すことのできる外の茂みではありませんでした。魔法使い
のお婆さんが伝書鳩を飼っている部屋の片隅で今まで埃を被ってい
た晒し台のピロリー。ここに大きなバスケットを置き、中にボロ布
を敷いてグレーテルを跪かせます。

 「いやあ~~いやあ~~おばあちゃんこんな酷いことしないでよ
~お嫁に行けなくなっちゃうでしょう」

 グレーテルは少し遅れて部屋へやって来たお婆さんを見つけると
今の境遇を顔を真っ赤にして哀願したのですが…

 「何を騒いでおる。お前がお嫁に行くのはお腹の中の悪魔を追い
出してからじゃ」

 「そんなの嘘よ。私のお腹の中に悪魔なんていないわ」
 グレーテルは抗議しますが……

 「ほう、ならばお前の性悪な行いはお前自身が悪魔だからなのか
?……もしそうなら、お前を魔女として火刑にせねばならなくなる
が、それでもいいのか?」

 「……(火あぶりって?何言ってるのよ!)……」
 グレーテルはあまりに馬鹿馬鹿しいとは思いましたが、暗い歴史
も秘めたグリムの森です。冗談が冗談で通らないこともある現実を
賢いグレーテルは知っていましたから、思わず声に詰まってしまっ
たのでした。

 「どうやら、薬が効き始めたし、悪魔も叫びだしたようじゃな。
あとは待つだけじゃな。……」

 魔法使いのお婆さんはお薬が効き始めて食いつきそうな顔になっ
ているグレーテルを尻目にいたって冷静でした。小さな首と両手首
を大きな板に挟まれたクレーテルのすぐ脇に籐でできた揺り椅子を
置くと……

 「……おいで、ヘンゼル、赤ずきん」

 二人を呼び寄せ、ヘンゼルにはここで膝まづいてグレーテルの為
に祈りを捧げるように命じ、赤ずきんちゃんは自分のお膝にあげて、
まるで何事もなかったかのように優雅に椅子を揺らし始めます。

 「お願い、もう、やめてえ~~もれちゃうから~~~」
 グレーテルは必死に哀願しますがお婆さんは知らんぷりです。
 それどころか…

 「大丈夫じゃ。時間はまだたっぷりあるぞ。今のお前さんには、
このたっぷりの時間こそがよい薬なんじゃ」
 こう言って相手にしてくれません。

 グレーテルは両足をぴったりと閉じ、全身に鳥肌をたてて震えて
います。とにかく今はそれだけしかできませんでした。

 「漏れちゃうよお~~」

 悲痛な叫びに赤ずきんちゃんが…
 「ねえ、お姉ちゃまはうんちしたいの?」
 と尋ねますが……

 「大丈夫じゃ、お尻の穴には魔法の栓が突き刺さっておるからな、
今はうんちをしようとしても出やせんのよ」

 「ふうん…………だってよ、グレーテル。うんち漏れないって」
 赤ずきんちゃんはどこまでも無邪気です。

 ただ、日頃の習慣とは恐ろしいもので、グレーテルにもそれが分
かっていてなお、無意識に肛門を閉め、必死にうんちがでないよう
に頑張ってしまうのでした。

 「もういや、……もういや、……もういや、……絶対にいや!」

 始めは小さかったその言葉が段々大きくなっていきます。
 きっと声をたてることで辛い自分を励ましたいのでしょう。

 でも、そのことがグレーテルの境遇を改善したかというと、事態
は逆でした。

 「コビトさんたちや、この子の歌に伴奏を入れてくれんか」

 お婆さんの指示に従いコビトたちが柳の鞭でグレーテルの太股を
叩き始めたから大変です。

 「いやあ~~やめてえ~~ごめんなさい、もうしませんから~~」

 鞭はそれ自体が飛び切り痛いというわけではありませんが、今は
何もされたくないグレーテルにとってはショックな出来事でした。
 しかも、泣き叫ぶグレーテルを面白がって赤ずきんちゃんばかり
か普段おとなしいヘンゼルまでもがこのお仕置きに興味津々とい
う顔で自分を見ているのです。
 グレーテルにはそれが何より気になっていました。

 「あ~はぁ、あ~はぁ、あ~はぁ、あ~はぁ、あ~はぁ、あ~ぁ」

 グレーテルは観念したのか数分で悲鳴も哀願もやめてしまいま
す。どうやらそんなことをしても無駄だと悟った様子でした。でも、
荒い息の方は10分たってもおさまりません。

 太股の方も真っ赤なみみず腫れが紫色に変化して痛々しく変わっ
ていきます。
 「いやよ、いやいや」
 時折、か細い声が痛々しく部屋の中に響きます。

 すると、ここへ来てようやく魔法使いのお婆さんが腰をあげます。

 「どうじゃな、お腹の中の悪魔は?……少しは懲りた様子かな」
 お婆さんはそう言ってグレーテルのお腹をさすります。我慢に我
慢を重ねていたお腹ですから、ちょっとした変化にだって敏感です。

 「いやあ~~やめて~~」
 しばらく出なかった元気な声が復活しました。

 「おうおう、まだこんなに元気なら大丈夫じゃな」
 お婆さんが再び椅子に座り直しますから…

 「だめえ~、もうだめなの、早く、早くしてよ~~」

 「何で、わしがお前に命令されなきゃならんのじゃ。まだなもの
は、まだじゃ」

 お婆さんは不機嫌そうにこう言うと、コビトたちの小さな鞭打ち
も再開させたのでした。

 「いやあ~~はぁ、はぁ、はぁ、いやあ~~はぁ、はぁ、はぁ、」
 絶望感が自然とグレーテルの声を小さくしてしまいます。

 心配した赤ずきんちゃんが尋ねました。
 「グレーテルお姉ちゃまは大丈夫なの?」

 「大丈夫じゃよ」お婆さんは赤ずきんちゃんの両脇に手を入れる
と、高い高いをしてあやします。そしてこう言って諭すのでした。

 「お姉ちゃまはな、今、お腹の中に住み着いた悪魔と戦っておる
ところなんじゃ。もうすぐ、我が儘という悪魔が降参するからな。
そうしたら、またみんなで楽しく遊べようになるぞ」

 魔法使いのお婆さんは得意の魔法で部屋を七色に変えると、この
世にはない不思議な生き物を次々と登場させてはヘンゼルと赤ずき
んちゃん、それにコビトたちをも楽しませます。

 でもグレーテルだけが独り蚊帳の外でした。それはそうでしょう。
今の彼女は、それどころじゃありませんから。c(>_<。)

 そうやって20分、お浣腸から30分がすぎる頃になるとグレー
テルの口からは悲鳴も愚痴も懇願もなくなります。僅かに嗚咽が聞
こえるだけでした。

 「ようし、もう一度聞いてみるかのう」
 こう言ってお婆さんは小さい椅子から立ち上がります。

 「どうじゃ、ちっとは懲りたか?」

 「もう、だめ、早くトイレ、トイレ」

 「そんなことは聞いておらんわ。相変わらずじゃな、お前は……
わしは懲りたかと聞いたんじゃぞ」

 「懲りました。ごめんなさいします。もうしませんから……」

 「もうしませんからなんじゃ。もうしませんからトイレか。……
ふん、話にならんな」

 お婆さんが立ち去ろうとしますからグレーテルは慌てて…
 「ごめんなさい。これから何でもします。どんなお仕置きでも受
けますから」

 グレーテルはお婆さんの背中に必死に訴えかけます。
 するとその声が聞こえたのでしょう。お婆さんが振り返りました。

 「そうか、何でもするか、その言葉に嘘偽りはないじゃろうな」
 言われたグレーテルはドキンとしました。だってそんなもの苦し
紛れだったんですから……でも、今さら『やっぱり、嘘』だなんて
言える状況にありません。ですから…

 「はい」
 と力無く答えたのでした。



******************* (つづく) ***

 「お菓子の家」編 ~4~

♔♕♖♗♘♙♚ 「お菓子の家」編 ~4~ ♔♕♖♗♘♙♚

 魔法使いのお婆さんからすると、グレーテルにはまだまだ女の子
としての修行が足りないということになります。でも、あまり長い
間こうしていては身体を壊してしまいますから、グレーテルのお尻
の栓を抜いてやることにしました。

 「パチン」
 小さな音がしました。

 お婆さんがやったのは指を一つ鳴らしただけ。たったそれだけで
グレーテルのお尻に刺さっていた栓がどこへ消えてしまいました。

 ま、お婆さんは魔法使いですからね、そのくらいは朝飯前なんで
す。

 ただ、グレーテルの方は……お腹は楽になりましたが……

 「いやん、いや、いやあ~~ん」
 突然泣き出します。

 「どうした、グレーテル。待ちきれなかったか?さもあろうなあ」

 自分でやっておいてお婆さんは慌てます。そして、ぐるぐる鳴る
グレーテルのお腹の音を聞きながら同情もしてくれました。
 でも、グレーテルにしてみればこんなところで同情されても何の
役にもたちません。

 「だめえ~~~出ちゃう、出ちゃう、止めて、止めてよ」

 グレーテルは小さく地団駄を踏んで泣き続けますが、一度堰を切
ったものを押し留めることはできません。
 そこは魔法使いのお婆さん、冷静でした。

 「もういいから、全部出すんじゃ。今さらお腹に残しておいても
何の役にもたたんぞ」

 お婆さんは手に持った杖をグレーテルの下腹にあてると、得意の
魔法で……

 「どうじゃ、これでお腹が楽になったじゃろう」

 確かにお腹は楽になりましたが、その分グレーテルのお尻は重く
なります。

 「いやあ、触らないで」

 グレーテルはピロリーから解放してあげようとしたコビトたちを
怒鳴り散らします。

 驚いたコビトたちは一瞬たじろぎますが、やっぱり無駄でした。
これまでも何一つ抵抗できなかったグレーテル。今だってやっぱり
コビトたちのやることには何一つ逆らえないのです。

 「大丈夫じゃ、安心せい。お前のばばっちい尻を洗ってやろうと
いうだけのことじゃ。任せておけ」

 お婆さんはこう言います。いえ、それ自体、嘘ではありませんが
……

 「いやあ~~~やめて~~~はなしてよ~~~」

 コビトたちがグレーテルを表の井戸に連れ出したあと、暫くして、
再びグレーテルの甲高い悲鳴が聞こえ始めます。

 「やめてえ、だめえ~~、触らないで、自分でやる、自分でやる
んだからあ~~~」

 グレーテルは訴え続けますが、願いが叶えられることはありませ
んでした。

 「ヘンゼル、ついておいで。赤ずきんちゃんもおいで」

 魔法使いのお婆さんはグレーテルとコビトたちが部屋を出てから
しばらくして子供達二人と共に表の井戸へとやって来ます。
 すると……

 「いやあ~~見ないで~~ヘンゼル帰りなさいよ~~帰って」

 一行はいきなり少女の甲高い悲鳴というか非難を浴びます。そこ
には井戸の高い梁に両手を縛られ吊し上げられた裸のグレーテルが
……。

 「ヘンゼル、ダメだと言ってるでしょう。帰りなさいよ」

 グレーテルの受難はそれだけではありませんでした。両手だけで
なく、両足首もまた1m程の棒の両端に縛りつけられているのです。
つまり、かなり大きく両足を広げさせられた格好で大の字になって
いるわけです。

 「ほれ、ほれ、騒ぐでないわ。お前が暴れるからじゃ。せっかく
コビトさんたちがお前の汚れた尻を洗ってくれているというのに…
…お前は感謝せねばならんのだぞ」

 「いやあ、だめえ~~こんなの自分でやるんだから~~下ろして
え、下ろしてよ~~」

 グレーテルは訴えかけますが、もとよりそんな我が儘が通るはず
もありませんでした。

 冷たい井戸の水が何杯もグレーテルのお尻に掛かり、コビトたち
が献身的に彼女のお尻を拭き上げます。
 でも、そこってグレーテルにとってはとっても微妙な場所だった
ので……

 「いやあん、いいからそんな処触らないで……だめえ~~エッチ、
野蛮人、恥知らず、触るな~~~」

 グレーテルは全身を震わせ相変わらず意気軒昂です。とてもさっ
きまでは意気消沈して力無く虚空を睨んでいた女の子とは思えない
変身ぶりでした。

 「まったく、しょうのないやつだ。野蛮人はお前じゃろうが……
そんな大きな声を出しよってからに………グリムの子はお仕置きを
感謝の気持で受けなければならないという約束を忘れたのか」

 「そんなこといっても……」
 グレーテルは口惜しそうに口を尖らせます。

 「あんまり騒がしいようならその口を塞いでやる……」

 お婆さんがこう言ってほんの数秒、どこから現れたのか、柳の枝
鞭を口に銜えたツバメが急降下、グレーテルのお尻を……

 「ピシッ」

 「痛~~い」
 グレーテルは思わず両手でお尻をおさえたくなりましたが、あい
にく両方とも大きな梁に引っ掛かっています。

 痛みがひく間もなく大空で宙返りしたツバメが再び襲来。

 「ピシッ」

 「いやあ~~ん」

 そしてもう一つ……
 「ピシッ」

 「いやあん、もうぶたないで……ごめんなさい、静かにするから」

 「何じゃ、もう降参か?…そんなに早く白旗をあげるくらいなら
おとなしくしておればよさそうなものを……何かと文句を言う奴に
限って信念はないもんじゃのう」

 ツバメは去っていき、グレーテルの降伏は聞き入れられましたが、
でも、それからはグレーテルと赤ずきんちゃんの出番でした。
 二人はお婆さんに教えられた通りに柳の鞭をグレーテルのお尻に
お見舞いします。

 「ピシッ」
 「いやあ、だめよ。やめてよ」

 「ピシッ」
 「だめえ~~おばあちゃん、やめさせてよ~~~」

 二人の動きはぎこちなく、力だってそんなに入っていませんから、
ツバメさんよりはるかに凌ぎやすいはずなのですが、恥ずかしさの
方はまた別で、グレーテルにとってはこの二人に叩かれている方が
人一倍恥ずかしかったのでした。

 「どうだヘンゼル、グレーテルのお尻が赤くなるのは面白いか?」
 お婆さんの問いに赤ずきんちゃんが…
 「おもしろいよ」
 と答えましたが、気の弱いヘンゼルは少し遅れて…
 「ねえ、グレーテル泣いてるよ」
 と心配そうです。

 でも、お婆さんはそんなヘンゼルにこう言うのでした。
 「いいか、おなごはな、最初が肝心なんじゃ。最初に『こいつは
御しやすそうじゃ』なんて思うとどんどんつけ込んでくる。反対に
手強いなと思えば猫のようにおとなしく従う。だから、こうしてな、
最初に屈服させるのが一番なんじゃ」

 お婆さんはヘンゼルから柳の鞭を取り上げるとグレーテルのお尻
を一閃します。

 「ぎゃあ~~」

 グレーテルはこの井戸へ来て最も大きな声を上げました。それは
もちろんここへ来て最も痛い思いをしたからでした。

 「いやあ~~、やめて~~、お願い~~~、もうしませんから~」
 グレーテルは必死に哀願します。でも、12回打ち終わるまで、
魔法使いのお婆さんはやめてはくれませんでした。

 そして、ようやくおさまったかと思うと、今度はヘンゼルに鞭を
渡して……。
 「ほれ、もう一度やってみい。今なら小鳥はよい声でなくぞ」

 柳の鞭を与えられたヘンゼルは、再びグレーテルのお尻に挑み
ます。

 「ピシッ」

 「いやあ~やめてえ~~」
 グレーテルは大声で叫びます。

 いえ、ヘンゼルの振るった鞭が先ほどより強かったという訳では
ありません。お婆さんが先ほど付けた傷の上に再び鞭が飛んできた
ものですから先ほどとは事情が違っていたのです。

 でも、そんなことヘンゼルには分かりませんから……

 「ピシッ」
 「やめなさいよ。だめだって言ってるでしょう」
 ヘンゼルはグレーテルの泣き声を自分が作り出している事に満足
した様子でした。ですから、もう一度やってみたくなりました。
 今度はもっと思い切って……

 「ピシッ」
 「いやあ~~~」
 ヘンゼルは生まれて初めてグレーテルへの優越感で笑います。

 「どうじゃ、気分がいいじんゃろう。男はおなごを従えて生きる
もんじゃ。そのためにその鞭は役にたつんじゃぞ」
 お婆さんの励ましに、しかし、ヘンゼルはすぐに不安そうな顔に
なります。

 「でも、グレーテルは嫌がってるよ」
 「大丈夫じゃ。お前があとで優しくしてやればそれでよい。おな
ごは与えられた処で賢く暮らすようにできておるからな。たとえ、
それがお前の鞭の下であっても自分で楽しみが見つけられるんじ
ゃよ」

 魔法使いのお婆さんは静かにヘンデルから柳の鞭を取り上げる
と、今度はグレーテルに向かってはこう言うのでした。

 「少しは応えたか。おなごは自分では稼がん。だから、相手から
色んなものを引き出してなんぼのもんじゃがな。しかし、それは、
相手をたててやるものよ。相手を不幸にしてはいかんのじゃ。相手
が御しやすいからと、何でもかんでも自分のものにしようとすると、
大きなしっぺ返しを食う。利口なお前さんなどは特に要注意じゃ」

 お婆さんはそう言って立ち去りかけましたが、思い出したように
振り返り……
 「コビトさんたちや。すまんが、もう一度この子の身体を洗って
くださらんか。どうもしょんべん臭くてかなわんわ」

 グレーテルはヘンゼルの意外なほどの力強さに、再びその場で
お漏らしをしてしまったのでした。

 「おばば、この子にもう一度、浣腸をかけてみるかね」
 心配したコビトのリーダーが声をかけますが…

 「それはもういいじゃろう。そいつは、大方さっきの浣腸の残り
じゃろうから、もう焼き鏝を入れても粗相することはあるまいよ」

 お婆さんの口からふいに出た言葉。でもそれはグレーテルにとっ
ては容易ならざることだったのです。

 「(ヤキゴテ?……えっ、焼き鏝!(○_○))焼き鏝だめ、いやよ、
焼き鏝なんて絶対いや。そんなことしたらママがきっと悲しむわ。
だってそんなことされたら……あたし、お嫁に行けなくなっちゃう
じゃない」

 グレーテルは一瞬考えて、それが何か分かると、必死に訴えかけ
ます。でもお婆さんの方は、さして気にとめる様子もありませんで
した。

 「うろたえるな、大丈夫じゃ。この焼き鏝はな10日で消える。
痕も残らんよ」

 お婆さんは笑います。でも、その直後、緩んだ顔を引き締めて、
こうも付け加えるのでした。

 「ただしじゃ、おまえが10日以内にふたたび同じ罪を犯せば、
そこからさらに10日、同じ模様が浮き上がるからな。もしそうな
ったら、それを消せるのは、わしだけじゃ」

 「ほんと?」
 グレーテルが不安そうに尋ねますから…

 「本当じゃとも、今さらお前に嘘をついてどうなる。大丈夫じゃ。
お嫁にも行けるわい。だからせいぜい10日の間だけでも身を慎む
ことじゃな」

 「10日でいいのね。10日で……」

 「10日、10日と一口に言うが、大人と違って子供の10日は
長いぞ。心してかかるんじゃな。もしまた同じ過ちを犯すようなら、
今度は歯の根も合わないほどのたっぷりのお仕置きを受けてもらう
からな、覚悟しておけよ」

 お婆さんはこう言ってグレーテルのもとを立ち退いたのでした。
 部屋へと戻る道すがら赤ずきんちゃんがお婆さんに尋ねます。

 「ねえ、お姉ちゃん、今度は焼き鏝なの?」

 「そうじゃ、お前はまだされたことがないじゃろうが熱いぞう~」

 「ふうん、……どこにすえるの?」

 「お尻の山に一つずつと、お臍の下にもう一つじゃ。お臍の下が
『A』で、お尻の山が『D』と『I』じゃな」

 「ふうん……ねえ、「A」ってadulteryってことなの?」

 「おまえはまた、随分とませた言葉を知っとるんじゃなあ」
 お婆さんは笑います。

 「……そうさなあ、それでもいいが……この場合の『A』はな、
お仕置きのランクのことさ」

 「『A』は一番いけないことをした子が受けるの?」

 「そうじゃない。『A』が一番軽い罪なんじゃ」

 「これでも軽い罰なの?」

 「そりゃそうじゃ、ここは人間の社会じゃない、おとぎ話の世界
じゃからな、ちょっとやそっとのことじゃ子供だって改心しやせん
のよ」

 「じゃあ『D』は?」

 「discipline」

 「『I』は?」

 「immoral」

 「本当にあの焼き鏝の文字は消えるの?」

 「何だ、お前まで疑ってるのか。10日もすれば綺麗になくなる
よ。このグリムの森で、青い火は神様からいただいた特別な炎じゃ
からな。あれで熱くした鏝も特別なんじゃ」

 「ふうん、神様の火なんだ」

 「ただし、またヘンゼルに意地悪をしたり、我が儘なおねだりを
すると、文字が消えるまでさらに10日伸びるがな」

 「私は?」

 「お前はいい子じゃから、関係ないよ」

 「そうか、私はいい子だから、あんなことはされないんだ」

 「あたりまえじゃ、よい子はお仕置きなんかされんよ」

 赤ずきんちゃんは魔法使いのお婆さんに言われてほっとしたよう
な、それでいてちょっぴり残念な気持になったのでした。

 「(私もあんなお仕置き受けてみたいな)…(それで、その身体
が火照っているうちに愛されたらどんなにすばらしいだろう)…」

 赤ずきんちゃんは声にこそだしませんが、そんな不思議な欲望が
小さな乙女の心のどこかにポッと灯ったのでした。

 10分後、グレーテルはコビトたちによって張りつけラックの上
に乗せられてお婆さんのもとへと運ばれてきます。

 もう、次は何が行われるかがわかっていますから当然素っ裸です。
暴れるといけませんから、1センチいや1ミリだって身体を動かせ
ないように厳重に縛り付けられていました。

 「(いや、焼き鏝なんていやよ。ママ、ママ、ママ助けてよう)」

 グレーテルは心の中でママの助けを求めていました。声に出せば
魔法使いのお婆さんからまた何をされるかわからないので自重した
つもりなのですが、お婆さんの方はお構いなしです。

 「おうおう、いい身体じゃ。おっぱいは……(ははは)まだじゃな。
…うんうん、この立派なお尻は丈夫な赤ちゃんが産めそうじゃわい」

 お婆さんは幼いグレーテルの裸を満足そうに調べ始めます。

 と、その時でした。

 「遅くなってすみません。お義母さん」

 聞き慣れた声と共に部屋へ入ってきたのはヘンゼルとグレーテル
のお母さんでした。

 「おう、ちょうどよい処へ来た。ちょうどこれからグレーテルに
焼き鏝を当てるところだったんじゃ」

 お婆さんがこう言うと、待ってましたとばかりグレーテルが中に
割って入ります。いえ口だけは縛られていませんから口だけは参加
できたんです。

 「ママ、ママ、助けて。焼き鏝なんかされたら、私、お嫁に行け
なくなっちゃうよ」

 「あらグレーテル、元気そうじゃない。そんなに元気なら大丈夫
ね。失神せずに済みそうだわ」
 ママはグレーテルの必死の懇願もあっさりかわしてしまいます。

 「( ・◇・)?」

 そればかりか…

 「どうじゃな、今度はお前さんがやってみたら……こういう事は
親のあんたの方がよかろう」
 魔法使いのお婆さんにこう勧められると、それもあっさり…

 「そうですね、では、私がやってみますわ」
 娘に焼き鏝を押す係りを引き受けたのでした。

 「(う、うそでしょう)……いやいや、ママやめてえ」

 娘の哀願にもママは平静でした。

 「そもそも、あなたが悪いんでしょうが。グリムの森は古くから
神様が管理される由緒正しい森なの。そこの住民も邪(よこしま)
な心を持った子がいてはいけないの」

 「そんなこと言ったって………」

 「覚悟しなさい。もし、こんな事で神様に呼び出しでも命じられ
たら、あなただってこのくらいではすまないのよ」

 「何よ、けちんぼ。娘のピンチに何もしてくれない気?だいたい
あんたは昔から薄情なのよ。こんな親に生まれなればよかったわ」

 グレーテルは逆切れ、口汚くお母さんを罵りますが、その間にも
大人たちは熱いお仕置きの準備を着々と進めていきます。

 青い火の燃え盛る暖炉からひき抜いた鉄の棒の先端には小さくA
という文字が彫ってありました。

 やがてそれがママの手に握られて自分の処へとやってくると……
 「…………」
 さすがにグレーテルだって言葉を失います。

 「(嘘でしょう。嘘よね、ママ。ママはそんなことしないよね)」

 こんな事を思っていると……

 「目をつぶって!」
 ママの大きな声が部屋中に響きます。

 それに合わせてグレーテルが反射的に目を閉じてしまうと、もう
いきなりでした。

 ママの左手がグレーテルのお臍の下の丘を握り上げ、そこが少し
だけ持ち上がったかと思うと、まだすべすべのその丘へ狙いすまし
たように『A』の焼き鏝が突き刺さります。

 「ぎゃあ~~~~~」

 その熱いのなんのって、グレーテルにしてみれば、今自分が気絶
しないでいるのが不思議なくらいだったのです。

 ヘンゼルも赤ずきんちゃんもこの時ばかりは魔法使いのお婆さん
の腰にしがみついて震えています。

 でも、これでもグレーテルに対するお仕置きが終わったわけでは
ありませんでした。

 「よし、今度は尻ぺたじゃ」

 お婆さんの号令一下、ラックにバンザイするように縛り付けられ
ていたグレーテルはコビトたちによってその縄目を解かれますが、
今度はママの膝で俯せにならなければなりませんでした。

 そうです。スパンキングをOTKで受ける時のような姿勢にされ、
さらにお尻のお山に焼き鏝を二つも受けなければならないのです。
しかも、今度は縄目はありませんから、逃げようと思えば逃げられ
る、そんな状態で先ほどもらったあの強烈なお仕置きを待たなけれ
ばなりませんでした。

 それはAを押された先ほど以上に辛いこと。ですからグレーテル
もたまりかねて身を翻すとママの膝に腰を下ろして抗議したの
です。

 「いやよ、もうあんなの耐えられない。今度こそ本当に死んじゃ
うわ。こんなの人でなしのやる事よ」

 猛烈に抗議するグレーテル。でもママもひるみません。

 「人でなしですって、いったい誰に向かって言っているの。これ
は、あなたが罪を許してもらうための大事なお仕置きなのよ」

 「だってえ~」
 グレーテルは泣き出しそうに甘えた声を出します。

 「お仕置きは昔から親の権限です。いいこと、もしこのお膝から
逃げたら、あなたは今日限り私の娘ではありません。いいですね」

 「えっ……」

 「そうだわ、ちょうどシンデレラのお継母さん(おかあさん)が
シンデレラの代わりを探していたから、そこへやります。それでも
いいならお逃げなさい」

 「…………」

 「黙ってちゃわからないわ。いいですね。わかりましたか?」

 「…………はい」

 「わかったら、ここへ俯せになりなさい」

 こんなことをママに言われては、いかに勝ち気なグレーテルでも
動揺します。『まさか、シンデレラの家の養女になんか……』とは
思っても、100%の自信はありません。もし、そうなったら……
そう考えるとママの膝に俯せになるしかありませんでした。

 膝の上に寝そべるグレーテルに向かって、お母さんはこう言いま
す。

 「……いいこと、女の子は我慢を覚えなきゃ幸せにはなれないわ。
親を、兄弟を、先生を、牧師様を、やがてあなたの夫となるべき人
を……愛すべきすべての人を信じて身を任せなさい。それが女の子
が幸せになる道なんです。……そもそもあなたは私を愛せますか?」

 「…………はい」

 「……私を愛していますか?」

 「はい」
 グレーテルは弱弱しく答えます。

 「だったら、大丈夫と言ってる私の言葉を信じてただただ必死に
我慢しなさい。いいですね」

 「はい、おかあさん」

 娘が落ち着いたのを見計らってお母さんはハンカチで娘に猿轡を
噛ませ、お尻の皮膚を引き伸ばします。
 そこにお婆さんがDとIの焼き鏝を持ってきて……

 「(うっぐ、ぎゃあ~~~~~)」

 「(うっぐ、ぎゃあ~~~~~)」

 口に押し込まれたハンカチのせいで甲高い悲鳴はしませんでした
が、その瞬間は、くの字だった体が硬直して一直線になります。

 ただ、この時ばかりは大人二人の顔からも笑顔は消えていました。

 「(怖い顔)(;゜0゜)」
 「(恐ろしい顔)(*゜Q゜*)」
 真剣で緊張感に満ちた大人たちの顔は赤ずきんちゃんもヘンゼル
も見ていました。

 でも、終わるとすぐに二人は笑顔を取り戻します。
 そして……

 「おやおや、また漏らしかいな。よほどだらしのない奴じゃな、
お前という奴は……」

 「やれやれ、あまり手間をかけさせないでよね……これじゃあ、
帰りはオムツをして帰らなくちゃならないわ」

 グレーテルはまだまだ放心状態。お婆さんやお母さんのこの言葉
を白昼夢の中で聞いたのでした。

 こうしてヘンゼルとグレーテルのお仕置きは終了。親子三人は、
仲良くお家へと帰っていきました。

 騒動が落ち着いて、魔法使いのお婆さんは次に赤ずきんちゃんの
身なりを整えてやります。
 赤いずきんをしっかり頭にかぶせ、できあがったばかりの箒を背
中に括り付けます。
 そして、森の入り口まで送ってくれました。

 「ねえ、お家の中では杖を使わないのにどうしてお外では使うの」
 赤ずきんちゃんが尋ねると……

 「これか?……これは看板じゃよ。魔法使いの看板じゃ。この方
が威厳があるからのう。薬もケーキもよく売れるんじゃ。……だい
たい生活するのに杖がいるようになったら、子供の尻も叩けんじゃ
ないか。そうなったら、大人としての値打ちはないし、魔法使いも
引退じゃよ」

 お婆さんは笑います。赤ずきんちゃんもつられて笑顔でした。

 赤ずきんちゃんはお母さんのメモを再び確認します。
 「次の目的地は……シンデレラ城かあ……あ、その前に、コビト
さんのお家にも寄らなくちゃ」

 「……何じゃ、次はコビトの処か。……なら、ここにおればよい。
じきにコビトたちが用を済ませて帰るじゃろうから」

 お婆さんのせっかくの提案でしたが…

 「いいの、帰る道も覚えておきたいから」

 「ほう、そうか、人に連れて行ってもらうと道は覚えんからな。
……感心じゃな、お前は……じゃあ、気をつけていくんじゃぞ」

 赤いずきんちゃんは魔法使いのお婆さんと別れて再び森へ入って
いきます。赤ずきんちゃんの冒険はまだまだ続くのでした。


*「お菓子の家」編はここまで。でも、物語はまだまだ続きます*

Appendix

このブログについて

tutomukurakawa

Author:tutomukurakawa
子供時代の『お仕置き』をめぐる
エッセーや小説、もろもろの雑文
を置いておくために創りました。
他に適当な分野がないので、
「R18」に置いてはいますが、
扇情的な表現は苦手なので、
そのむきで期待される方には
がっかりなブログだと思います。

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