2ntブログ

Entries

12/31 この一年、ありがとうございました

12/31 この一年、ありがとうございました

 コメントを頂いた皆様、拍手を頂いた皆様、本当にありがとう
ございました。
 通りすがりの皆様も、こんな、独りよがりでつまらないブログ
ですが、お暇の節はまたお立ち寄りくださいませ。
 
 来年もまたよい一年でありますように、お祈り申し上げます。

               管理人/TUTOMU KURAKAWA

**********************

12/31 越野眞砂さんのイラスト

12/31 越野眞砂さんのイラスト

 越野眞砂さんは、(デビュー当時はたしかsandさんと名乗
られていました)私の好きなイラストレーターの一人です。

 学校もの、病院もの(看護婦中心ですが)などを得意とされて
います。
 スパンキングだけでなくお浣腸の絵も多くて、ちょっぴり古風
な感じのするところも、私のような古狸をご機嫌にさせてくれる
理由かもしれません。

 『過激なお仕置き』という感じのテーマが多いのですが、私が
好むくらいですから、グロテスクな感じの絵ではありませんよ。
 絵の中ではけっこう過激なことをしているのに、観てる方には
あまり圧迫感が伝わってきません。むしろ、ほのぼのと感じられ
る不思議な絵です。

 有名な売れっ子画家さんではありませんので、どこででも見ら
れるわけではありません。
 今でしたらKindle本の丘浩美さんの小説の挿絵やミストレスを
扱った『女神の愛』(三和出版)などで見ることができます。

 ただし、それらは題材そのものが私の趣味ではありません。
 やはり、彼女(?)の絵で引かれるのは同人誌。

 『令嬢訓育画報』や『訓育研究』、『まさごのむかしの絵(十五
枚組)などは、世に出てからかなり時間が経ってましたが、まだ、
風俗資料館やタコシェ(本屋)さんから通販で取り寄せることが
できました。

 感想、たった一言ですが……『よかったです』

 それもお金が掛かるし面倒だという方は、ネットに流れている
ものをご覧ください。
 (最初から、こう言えばよかったですね(^^ゞ)

************************

<<参考資料>>

google検索結果
越野眞砂の画像検索結果

海外サイトに流出した物
<Handprints Spanking Art & Stories Page Drawings Gallery >
G114
G144
G144(2)

***********************

12/30 人生最初の家出

12/30 人生最初の家出

 ある日、僕は家出を決意する。
 お父さんが食べたお菓子を僕が勝手に食べたって言われて頭に
きたからだ。ほっぺ抓られたのも痛かった。

 僕はお母さんに「僕、家出する」と高らかに宣言したのだ。

 ところが、お母さんは……
 「あら、そうなの……それじゃ、下着の準備しなきゃいけない
わね。お菓子もあった方がいいわね。ビスケット持って行く?」
 と言うので、下着とお菓子を通園バッグに詰めてもらった。
 普段は幼稚園で食べるお弁当が入っているバックだ。

 で……これで準備は整ったのだが……

 「あら、どうしたの?行かないの?」

 お母さんはアイロンかけながらこう言うんだけど……

 「う………………うん」

 まだ、もじもじしてたら……

 「早くしないとお外寒くなるわよ」

 「そうなの?」

 「……それで……どこに行くつもりなの?」

 「う~~~~ん、どこでもいい」

 「どこでもいいの?」

 「どこでもいいけど…………ママと一緒……」

 「ママと一緒じゃいやなんでしょ?……」

 「違う」

 「???……」
 お母さんはしばらく意味が分からなかったけど、そのうち……

 「あら、あなた、お母さんと一緒に家出するつもりなの?」
 さすがに察しがいい。

 「うん」

 「……そうなの……だったら、仕方ないわね……」

 お母さんは一つだけため息をついたけど、アイロンをやめて、
僕と一緒にお外へ出た。

 で……
 近くの公園にやって来て……
 そこのブランコに揺られながら、二人でビスケットを食べた。

 すると、近所のおばさんが……
 「まあ、勉ちゃん、今日はお母さんと一緒にお散歩かしら……」
 って言うもんだから……

 「家出……」
 って答えたら……

 「お母さんと一緒に家出したの?」
 って変な顔で笑ってた。

 で……
 お母さんの抱っこでビスケットは食べたけど……
 「ビスケットじゃお腹一杯にならないわね。おうちでご飯食べ
ようか?」
 って、言うから……

 「うん」
 って、小さな声でご返事したら、お母さんがおんぶしてくれた。

 一緒に家に帰って……
 一緒にご飯食べて、
 一緒にお風呂に入って、
 一緒のお布団で寝たら……

 「坊やは、まだ、お母さんの愛の中でしか生きられないの」
 「うん」
 「お仕置きイヤイヤでも、ここが一番いいのよ」
 「うん」
 「お外の風はまだ冷たいの。勉ちゃん独りじゃ風邪ひいちゃう
わ……わかった?」

 「う……うん」
 そう言ってお母さんのオッパイの中でネンネ。

 でも……
 この時、お母さんのオッパイを力一杯握ってたから……
 朝、お母さんのオッパイに痣ができちゃってて……

 「あ~あ、痣になってる」
 お母さんは、最初、困り顔だったけど……

 「『痣のつくほど抓っておくれ、それを惚気(のろけ)の種に
する』か……」

 お母さんが独り言のように言うと、お父さんが……

 「『痣のつくほど抓ってみたが、色が黒くてわからない』って
のもあるよ」
 って言うんだ。

 「それ、どういう意味?」

 「ん?……ぼくのにぎにぎじゃ仕方ないわねってことよ」
 って、お母さんは笑って許してくれた。

 僕の最初の家出は、父兄同伴だったんだ。
 
********************  

12/29 ぼくんちの食事風景

12/29 ぼくんちの食事風景

 このブログで、僕はよくお母さんに溺愛されてたとか、過保護
だったとか自慢(?)してるけど…それって、大人になった今だか
らそう思ってるだけで、子供時代はそんな風に思ったことなんて
一度もなかった。

 日常生活で、空気や水の存在をいちいちありがたがらないのと
同じで、子供時代、母親のしてくれてることはごく当たり前の事
だったからだ。

 むしろ、少しでもそれが気に入らないと『うざったい』としか
思わない。
 子供なんてわがままな世間知らずだから、これが自然なんだ。

 そんな子供時代、母親がやってたことで一番うざったいことが
食事だった。

 普通の家庭では、よほどの幼児でもない限り、食事って一人で
するもんだと思うけど……うちの場合は、小学校時代を通して、
母が膝の上に抱くか、すぐそばにひき寄せて、スプーンで食べさ
せるのが一般的だった。

 もちろん全てじゃない。大半は一人で箸を使って食べるんだけ
ど、嫌いな物があると、どうしてもそこには箸をつけたがらない。
 そんな時、母は僕たち兄弟を幼児とみなして、身体をぐぐっと
引き寄せて拘束すると、その嫌いなもの……例えば、ほうれん草
なんかをスプーンに乗せて、僕たちの口に運ぶのである。

 当然、食べたくないから口を閉じているのだが……
 「あ~~~ん、しなさい」
 こう言って口を開けさせる。

 逆らうと、鼻を摘まれるから苦しいし、大きな顔が目の前に迫
ってくるから、怖くて口を開けるしかなかった。

 「噛み、噛み、しなさい」
 こう言われながら頭を撫で撫で……顔は笑顔に戻っているが、
飲み込むまでは監視されているからごまかせなかった。

 仕方なく口の中で何回かくちゃくちゃやって涙目で飲み込むと
ほっぺすりすりがご褒美だった。
 ちなみに、僕はほうれん草とプリンやゼリーが苦手だった。

 うざったいけど……
 「好き嫌いがあると大きくなれないのよ」
 と言われると仕方がなかった。

 こうして、お母さんのご機嫌をとったあとは、大好きなお肉。
 これだって、一般家庭じゃまずやらないだろうなと思う方法で、
うちでは食べることになるのだ。

 まず、お母さんがお肉を口の中に入れてもぐもぐする。
 こうして柔らかくなったら、(昔のお肉は今と違って固かった)
それを口の中に箸を入れて取り出し、もう一度ソースを付けて味
付けすると、スプーンに乗っけて僕の口元へ……

 ま、普通の人の感性なら、『そんなもの食べられるか!』って
なもんだろうけど……
 僕はお母さんの唾のついたお肉を喜んで食べていた。

 だから……
 「美味しいか?」って聞かれると、当然のように「おいしい」
って答えたんだ。

 母だってそこは同じ。僕が吐き出してしまった食べ物を平気で
食べてたもん。親子なんだからこれが普通なんだ。

 今は、『母親の口の中の菌が子供に移る』とか言って、そんな
ことはしないみたいだけど、いいじゃないか、あとで歯を磨けば
いいんだから……

 お仕置きもそうだけど、今の世の中、親子のスキンシップを削
ぐ方向ばかりで動いてるもんだから、今の子は知識としての善悪
は知っていても、感性で善悪を感じ取れてないよね。罪の意識が
どっか他人事。客観化され過ぎちゃって実感が伴ってないんだ。
だから、何かのきっかけで容易に犯罪へ走っちゃうんだよ。

 こんなことやってて、子供が本当に幸せな人生を送れるのかな?
って思っちゃうよ。

***************************

12/28  やいと

12/28  やいと

 関東ではもっぱらお灸ですが、関西以西では『やいと』という
表現がよく使われます。私の家では多くの場合『お灸』でしたが、
個人的には『やいと』という言い回しの方が、子供へのお仕置き
とう感じがして好きです。

 その『やいと』という題で私の好きな一遍の小説があります。
今回、作者さんの承諾は頂いていませんが、他の方々にも読んで
頂きたくて発表する事にしました。

(*)
 以下は、『直』さんがかつてお灸サイトに発表したものを私が
自分にとって読みやすいようにいくらか手を入れたものです。
 万一、直さんがこれをご覧になって「それは困る」という事
ならば、即刻削除しますので、コメントにご連絡ください。

**************************

            やいと
                      by直
                 加筆・修正/tutomu kurakawa


 私の生まれた四国の田舎では昭和50年ごろまでは普通にやいと
がありました。家でも近所でも大人は治療に、子供は治療だけで
なくにお仕置きにもヤイトが普通が行われていました。

 私の家では艾の袋が仏壇に置いてあり、お風呂屋さんに行くと
黒い痕をつけた子供や大人をよく見かけました。
 ごく普通に存在したヤイトですが、友だちの話では「もの凄く
熱くて痛い」と言う子や、「チックってするだけでたいしたこと
無い」って言う子もおって、本当のことは経験するまでは分かり
ませんでした。

 そんな私にも、ついにその日が訪れます。
 小学校2年生を過ぎても時々オネショをする私に対して、近所
の叔母からヤイト据えたらって言われ、覚悟を決めて初めて据え
られたのが夏休みでした。

 「直ちゃん パンツずらしてここに横になり」
 って言われ座布団が2枚敷かれたところに横になると、ヤイト
線香に墨がついて腰に印がつけられ、小さな艾でしたが初めての
経験をします。

 母が腰を軽く押さえて、艾に火が点ると、「チック」と「痛っ」
が同時に感じられて、4箇所次々に据えられましたが、泣くほど
の熱さや痛さでは無く拍子抜けしたヤイトでした。

 友達が「すごーーーく熱い」って言ってたのが嘘のようでした。
あれが初めてのやいとでした。

 毎日寝る前にヤイトを据えられ米粒ぐらいの黒い痕が4つ腰に
残りましたが、ホクロではなく、規則正しく並んだヤイトの痕で
した。

 ところがその後、お転婆の私は、けんかや人を泣かしたりして、
再び「やいとを据えなあかん」と言われ、ものすごく熱くて痛い
ヤイトを経験することになります。

 オネショの治療も一段落したある日、従姉妹とけんかした私は、
癇が起きてると言われて癇のヤイトを据えるはめになりました。

 私はいつも通り座布団に横になります。チックってするいつも
のヤイトだと思ったからです。
 ところが、いつもならパンツをずらして腰に据えるのですが、
その日は何故か背中(ブラのホックの下あたり)に墨で印が付け
られ、母が太腿に乗って動かないように体を押さえられたあげく、
何だか前回より少し大きいかなって感じの艾が乗っかります。
 でも、そこまではあまり深刻に考えていませんでした。

 そして火がつけられたのですが……
 当初は艾の燃える匂いはするもの何も変化はありませんでした。
ところが、チックする感じを待っていた私の背中がホカホカって
暖かく感じられた途端でした。

 『ひぃーーーー』
 ギューーッ…とキリキリと差し込む熱さと痛さで、声も出ずに
唸ってしまいました。

 痛さが遠退いてから私は大声で「熱い痛い」って泣きました。

 そしたら母と叔母が……
 「ヤイト据えてるんやから熱いのは当たり前やないか。熱くて
痛うなとヤイトなんか効かんやろ。やいとは、熱くて痛いもんや」
 ってたっぷり線香を2本分1時間近く据えられました。

 これ以降、私は何度となくやいとをすえられることになります。
おかげで、小学生から中学生になる頃には、背中から腰にかけて
1cm近いヤイトの痕が規則正しく並ぶことになります。

 そんな話をヤイト友だちにしましたら、彼女も私が経験した事
と同じように据えられていたとのこと。しかも、四国の田舎では
そんなことはごく普通の出来事のようでした。

 次回はどんぐりやいとの自伝を・・・・・


【どんぐりやいと】

 小学校の間に何回もヤイトを経験した私は、中学校に入っても
お転婆がひどくて、母も「これだけヤイト据えているのに、落ち
着きの無い子は一度どんぐりやいと据えてもらわなアカン」と、
言い出します。

 「どんぐりやいとって、どんな、やいとやろ???」
 と思っていると、近所に住む叔母がその答えを出すのに時間は
かかりませんでした。

 その時、叔母の次女の薫ちゃんの腰には、10円玉大のヤイト
の痕が……
 『ひょっとして、あれ?』
 私はその灸痕に目を丸くします。

 そうです。大きくてどんぐりのように固く摘んだもぐさで据え
るヤイトだからどんぐりやいとなんです。
 これは、1火燃えつきるのに1分近くかかります。

 私の地方のヤイトは1度据え始めると、5~6日は連続で毎日
据えられます。2日目以降は瘡蓋もできて熱さや痛みはやわらぎ
ますから初日ほどの熱さはありません。

 ところが、どんぐりやいとは違います。薫ちゃんは3日目なの
に見れば歯を食いしばって我慢しています。
 『これはただ事ではない』と思いました。

 薫ちゃんのヤイトが終わり、「直ちゃんもこっちへ来なさい」
と、叔母さんの声。

 「中学にもなってもまだ悪さが過ぎてるいうのなら、どんぐり
やいと据えなきゃならんあぁ」って……

 覚悟はできていても、やはりヤイトはヤイト、怖いです。不安
な気持のまま座布団のところでうつ伏せになります。そうすると
パンツをずらされ背中も露出されます。やいと線香で墨を硯から
背中、腰と印がつけられていきます。

 「どんぐりやいとって言っても薫ちゃんの半分ぐらいの大きさ
だから」
 って叔母さんが言いながら艾をしるしの上に据えていきます。

 そして、線香にマッチで火がつけられやいと線香の独特の香り
がプーンとしてから……
 「中学生だから押さえんでもいいかな」て母が。
 叔母さんが、「暴れたら、やいとが増えるよ」って言いながら
尾てい骨の上に火を着けたみたいです。

 艾の燃える香りがしてきてホカホカってお尻がしたかと思った
途端に、キリキリと熱さと痛さがギュッとします。
 でも、まだまだ続きます。

 「熱い。痛いいいいいいいいいいいいいいいいい」
 『これがどんぐりやいと?』

 そうなんです。どんぐりやいとは単にその大きさだけではなく、
艾の固さがどんぐりのように固いのもその言われだったのです。
 結果、持続時間が長いヤイトになります。

 「判りました。よくわかりました。反省できました」
 でも やいとは続きます。
 「熱い、痛い、もういや、だめ、私もう十分に反省しますから
ヤイトだけは許して」
 って言ってもこれは続きます。

 線香1本休むことなく据えられます。叔母さんが艾を乗せ母が
火をつけて行きます。二人で据えるから次から次と背中から腰と
全部が煙が出てるみたいに熱くて痛いです。
 終わると背中から腰にかけて7箇所の黒い痕がついています。

 おまけに……
 『やれやれ、やっと、終わったあ……』
 と思っていると……

 「じゃあ また明日……」
 という言葉を聞くことになるのでした。


【灸痕】

 中学校の夏休みにどんぐりやいとを経験した私の背中には黒い
痕が残ったままになっていました。そんな状態で新学期を迎えま
ます。

 その新学期の初日には身体検査がありました。体重測定や身長
測定、内診もあり上半身は裸に近い状態です。

 「あ、直ちゃんヤイトの痕が黒いわぁ」
 と、さっそく友達が指摘がします。
 続けて…
 「ねえ、中学生でも泣いた?」
 などと質問が……

 私はちょっと恥ずかしくなりましたが……
 「ドンマイ、ドンマイ」
 2人の友だちが元気付けてくれました。

 「私も据えられたんだから……」
 と黒い痕や瘡蓋の取れたばかりのやいとの痕を見せてくれます。
 おかげで、クラスで3人も夏休みにお灸の躾があったって事に
なり私一人じゃないって安心できたのです。

 ただ、二人の背中には6つの灸痕が並んではいましたが、一人
の子は大きな灸痕が1つだけ黒く、残りの子もブラのホックの下
に左右2つだけで、やはり夏休みに据えられた数だけは私が一番
多かったようです。

 クラスで一番活発な…いえ、早い話、お転婆でゴンタの直子が
夏休みにヤイトも一番多く据えられるのは、ある意味自然なこと
だったのです。

 でも、そんな効果がそういつまでも続くものでもありません。
瘡蓋がとれ秋風の吹く頃になるとヤイトの熱さも怖さも忘れて、
一段とまたお転婆が激しくなります。男子を泣かしたり、一緒に
なって暴れたりする日々でした。

 と、ここまではまだご愛嬌で済んだのですが、ある事件で私は
とんだ過ちをしでかすことになります。

 悪い友だちではありましたが、まさか万引きをするとは……
 そうなんです。駄菓子屋ですが、お金を払わずに帰ったのです。
早い話、集団万引きです。腹に据えかねた駄菓子屋のおばさんが
学校に言いつけに……

 どうなるか、結果は見えています。遊び友達男3人女3人全員
が職員室に呼ばれ、正座して反省会です。しばらくして学校から
連絡があった親たちが集合してきます。すぐに叩かれる男子たち。
私も母から思いっきりお尻を叩かれ。全員、明日までに反省文を
持参することとなりました。

 家に帰るとすぐに反省文を書きなさいと母から言われ……
 とりあえず「今回の反省と二度としない誓いの言葉」をない頭
を使ってひねり出します。
 もう、それだけで私には十二分にお仕置きだったのです。

 でも、部屋から出て反省文を母に見せに行くと、すでにヤイト
の準備ができてます。反省文を渡しながら「ヤイト?」って聞く
と「当然」という返事が……。

 「最初は指に据えようか?それともお尻か?」
 と言われながら、小さな艾が人差し指に一つ火がつけられると
……
 「あぢーーーーーぃ」

 5火も据えられてから、今度は「うつ伏せになり…」と言われ
自分でパンツをずらします。自然に尾てい骨の上を何回か押えら
れて、いつもの位置に艾を乗せられ待つこと数秒。
 「あじゃーーーーー」
 何、この熱さ、痛さ、そうです。またもやどんぐりヤイトです。

 これって忘れようとしても忘れられない痛さです。大変な熱さ
です。声なんて出ません。涙が自然にあふれてきます。腰全体が
熱くて痛いって感じなんです。

 でも1箇所だけが千切れそうに痛いです。
 「もう二度としません。絶対にしません。ヤイト許して。いや、
やいと いやや」
 と何度も言いながらも、何回も何回も新しい艾に火がついて、
その晩はたっぷりと反省をさせられました。

 翌日学校に行くと、みんなごく自然に昨日家で受けたお仕置き
の痕を見せ合います。当然のごとく、全員がヤイトを据えられて
いました。指にも黒い痕が2人。みんな十分な反省をしてました
が、その事が、またお互いの安心感というか絆みたいになって、
次の悪戯、悪さへと繋がるのでした。


【Mの目覚め】

  万引きのヤイトがよく効いた私は 大人しくなり、お転婆も
少なくなり普通に日々を過ごしていました。生理も始まり性にも
目覚めて、友だちともエッチなことを話したりするようになりま
した。

 ある日のこと、妹が、その時何をしたのかは分かりませんが、
縁側に座布団を敷かれて、ヤイトを据えられそうな感じになって
います。

 私と同じように「もーせーへんから、ヤイトいやや」「ごめん
なさい」と謝る声が泣き声です。それでも母はやいと線香に墨を
つけて腰に背中にと印がつきます。
 線香に火をつけて、艾がひねられ尾てい骨の上に乗せられます。
 線香の火が艾に移され煙が立ち上がりながら艾が黒く変化して
いきます。

 艾が全体に黒くなった頃に妹が大きくうなります。
 一番の熱くて痛いときです。でも母は次の艾を墨で印した処に
乗せ火をつけていきます。
 「悪さする子にはヤイト据えなアカン」といいながら……

 それを見ていた私は、あそこがジューーンとなり濡れてしまい
ます。これが私が経験した初めてのMへの目覚めです。

 とにかく怖いヤイトやけど、心のどこかで据えられてみたいと
思う気持ちが芽生えていました。怖いもの見たさみたいな、相反
する変な気持で心が満たされ、気がつけばあそこが濡れちゃって
います。

 そんな気持ちの高まりを抑えられないまま、駆け込んだトイレ
で、あそこを拭きながらヤイトを据えられてる自分を想像します。
 あとは、ご想像ください。

 ただ、当時はすでに勉強もそこそこ、何よりめっきり大人しく
なっていましたから、昔のように母の方から私にヤイトを据える
理由がありません。おかげで、本物のやいとの方は随分ご無沙汰
でした。
 順風満帆に見える生活の中で、実は、悶々とした日々を送って
いたというわけです。

 そんなある日曜日。私は家で一人で留守番する事になりました。
すると……
 『チャンスだ。そうだ自分で据えてみよう』
 と、思い立ったのです。

 仏壇から艾と線香をとりだし、小さく丸めて鏡の前に……。
 お尻を見ると1cmぐらいの尾てい骨の上にヤイトの痕があり
ますから、そこに艾を乗せてみますが、最初は横になってないの
で落ちてしまいうまくいきません。
 そこで、唾でヤイトの痕を湿らせ艾を乗せると…
 『やったあ、動かない』

 あとは、線香に火を着け、ちょこんと艾に火を移すと煙が出だ
しますから……
 「直子 ヤイトや」
 と自分で言いながら燃えていきます。
 「アヂィーーーーーーイタイーーーーもうしません」
 と言いながら1火だけで終了。

 後片付けして窓も全開で自分の部屋に行き オナ……そして、
戸締りをして何も無かったように……
 自分では大成功のつもりだったのですが……

 3時過ぎ、母と妹が帰宅すると……
 「誰か?ヤイトした?」
 ほんのりと仄かに残る残り香に母が反応します。
 縁側に座布団を出して……
 「直子 ちょっと来てみ」
 パンツをずらすと……自分で据えてまだ水ぶくれになっている
ヤイトの痕がありますから……

 「自分でせんでも据えちゃるのに」
 と言われながら、水ぶくれを潰ぶして尾てい骨の処とその上に
縦に並んで2箇所艾を乗せられて、たっぷり線香2本。

 据えられてる間はMは関係ありません。
 お仕置きはお仕置き。ヤイトはヤイトでした。
 『もうしませんから許してください』
 って、母の膝の上で本気で思ってました。


**************************

12/27  サンプル動画

12/27  サンプル動画

 その昔、お仕置きをメインにした動画を製作、販売するチェコ
の会社がありました。
 すでに新たなものは製作していませんが、今でも過去の作品の
販売はしているようです。

 『お仕置き』と言いながら内容はかなり過激な部類に入ります。
SMとの境界は人により判断は分かれるでしょうが、ただ、絵は
とっても綺麗ですし、役者さんもしっかりした演技で、私的には
見ごたえがありました。

 もちろん、SMチックだという他にもいくつか難があります。
 全編チェコ語(?)なので会話の意味を十分に把握できません。
私のように語学べたな人間は、英語のあらすじが別の場所に掲載
されていますから、それだけが頼りです。
 それと……これは男性にはあまり関係ない事ですが、海外系の
こうした物ですからね、女性のそれにモザイクなんて無粋な物が
掛かっていないんです。(女性は問題かも……)
 
 もちろん、買って見るのが王道ですが、こちらのサンプル動画
というのがなかなかの出来でして……
 どうせ言葉はわからないしこれだけ見てても十分に楽しめます。

**************************

 色んなスチュエーションのものがありますが、以下は私の好き
な『懲罰室』と『家庭』を扱ったもの各五話です。


<<懲罰室>>

Detention House 3: Internal Affairs(Code:RGE-018)
RGE-018

Detention House 3: Whose bread you eat, his song you sing(Code:LP-027)
LP-027

The Exchange Student(Code:LP-022)
LP-022

Teacher's Exam Meeting(Code:LP-018)
LP-018

From the Headmaster's Study: A note for absence(Code:DIR-001)
DIR-001


 <<家庭>>

The Governess(Code:LP-017)
LP-017

The Christmas Quiet(Code: LP-040)
LP-40

...and for you I will come as well(Code: LP-035)
LP-35

Santa(Code: LP-061)
LP-61

The Eighth Commandment(Code: LP-021)
LP-021

********************

12/26 母という人

12/26 母という人

 僕の母は当時としては異常なほど家事というものを知らない人
でした。

 料理
 おかずの仕度はもちろん、電気釜以外ではご飯も炊けません。
 僕が幼い頃、ご飯の仕度のためにおばあちゃんを雇っていたの
ですが、『お味噌汁に味噌だけ入れてダシをとらない人を初めて
見た』って驚いていました。
 彼女ができる料理といったらサンドイッチぐらいでしょうか。
 ごくたまに作ると、まるで手の込んだご馳走でも作ったみたい
に家族全員に食べろ食べろって強制するのでみんな困ってました。
 先日、このブログにマー坊の家でそこのお母さんから手作りの
ケーキをご馳走になったって書いたでしょう。あれ、母親に話し
たら……道具と材料と本は買ってきたんですけどね、まったくの
手付かずでした。味噌汁のダシさえとらない人にケーキなんて作
れるわけがないのに、つまらない見栄だけは張るんです。

 裁縫
 少し前に主夫さんが猫のアップリケを縫い付けたら、糸が飛び
出してまるでライオンに思われたって洗剤メーカーのCMがあり
ましたけど、うちもまったく同じでした。
 あれは僕が5年生の時でしたか、そんな彼女の事情を知らない
おじさんがたまたま彼女の作品を見つけて「ほう、坊やが縫った
の、なかなか上手じゃないか」って、頭を撫でられたことがあり
ました。
 そのおじさんが帰ってから母はカンカンでしたね。でも、僕が
みても、そのおじさんの判断は正しいと思いますよ。
 だって、それって、とても成人女性が手がけたって思えません
でしたから。

 育児
 これは唯一、オムツ替えだけできました。実は、実家にいる時、
姪が生まれてイヤイヤ手伝わされたので覚えたみたいです。
 これもサンドイッチ同様、用もないのにやりたがりましたね。
僕なんて、お腹こわしただけなのに小5の時までオムツはめさせ
られましたから。
 とにかく、母親としてできることが限られてますから、自分で
やれることはとにかくやりたいみたいなんです。
 そうそう、育児の事で一つ思い出しましたが、彼女足し算しか
知らない人なんです。
 ビタミンやカルシウムが身体によいと聞くと、薬局から大量の
ポポンS(ビタミン剤)やカルシューム剤を買って来てこれでも
かってくらい大量にミルクに入れて飲ませますし、風邪をひいた
ら、これまた風邪薬を大量に買い込んで大人の分量を平気で幼児
に飲ませ続けます。
 とにかくせっかちな人で、三十分たって効果が出ないと、また
大人の分量を幼児に与えちゃいますからね。
 風邪じゃなくて、兄弟みんなそっちでダウンなんです。
 医者からも何度も分量を守るようきつく言われましたが、この
性癖は最後まで治りませんでしたね。
 兄弟全員よく命があったと思いますよ。

 教養
 ない事はないという程度。女学校は卒業していますが、何でも
周囲の人の話では、お父さん(僕のお祖父さん)が担任の先生に
賂を持って行って、卒業させてもらったとか…
 お裁縫の提出物は大半この担任の先生の作品だそうです。
 ただ、手紙なんかは器用に書いてました。字もそこそこ綺麗で、
絵も上手ですし、左脳は人並みに働いていたみたいです。
 そうそう、走るのが早かったですね。運動会ではいつもリレー
の選手をかってでてみんなをごぼう抜きにして喜んでいました。
 要するに、今で言う体育会系の人なんです。

 特技
 一番の特技は何と言っても社交術でしょうね。両親が子供の頃
に相次いで亡くなったために、跡を継いだお兄さんのもとで商売
を手伝っていましたから外交は得意でした。
 実は彼女、そこを見込まれてお嫁に来ましたから、家事の方は
最初から期待されていなかったんです。


 そんなキャリアウーマンみたいな人に育てられましたからね、
当時は一般的だった良妻賢母って感じのお母さんが羨ましかった
んです。
 ない物ねだりなんですよ。

 僕は強い母の庇護のもと、猫可愛がりで育てられましたから、
性格的に気弱いところがあって、そのぶん母から受けたお仕置き
も少なかったのですが、心情としては『叱られたい』という思い
(憧れ)をずっと心の奥底に持っていました。
 だって、お仕置きの後の抱っこは、その方がずっとずっと感激
できそうですから。

 これは良妻賢母型のよそ様の家庭を観察していて感じたこと。
今で言う虐待を望んでいたわけではありません。


************************

12/24 マー坊のお母さん

12/24 マー坊のお母さん

 小学校時代、僕の友だちに、みんなから『マー坊』『マー坊』
って、まるで自分の弟みたいに呼ばれている男の子がいました。
みんなクラスメートですから歳は同じはずなんですが、とにかく
彼、可愛い顔してるですよ。気立てはいいですしね、まるで天使
みたいな子で、クラスでは女の子たちのアイドルだったんです。

 対する僕は……顔はまずいし、性格は歪んでるし……おまけに
人付き合いが悪いから友だちいないという三重苦でした。

 つまり、二人の境遇はあまりに違っていたわけなんですが……
ただ、一箇所だけ共通していたのが学校の成績。おかげで、僕は
彼と親しく口をきくことができたのです。

 1、2学期、いつも僕の方がほんのちょっぴり彼をリードして
いますから、彼のお母さんが心配して「勉ちゃんを見習いなさい」
なんて言うんですけど、実際は3学期に行われる総ざらえの学年
末試験では、僕は一度も彼に勝ったことがありませんでした。
 要するに彼の方が優秀なんです。

 ただ、似通った成績の子ということで、僕は彼のお母さんから
よく自宅へ招待されていました。

 「僕んちはお百姓さんだよ」
 彼がそう言いますから、ぼくは単純にそう思っていましたが、
彼の言う『お百姓さん』というのは、戦前は駅まで他人の土地を
通らずに行けるほど広い田んぼを所有していて……おじいさんは
衆議院議員だったという家のことだったのです。

 戦後は農地解放の影響で戦前ほどの勢いがなくなったとはいえ、
いまだにマー坊はその田舎の名士でした。
 ですから、彼の下りるバス停の名前は『御庄屋前』。そこまで
乗って来たバスの車内でも、そのあと道ですれ違った人たちから
も、「坊ちゃんお帰りなさい」「坊ちゃん今日はもうお帰りかい」
って知らないおじさんおばさんが声を掛けてきます。
 そう、彼はそもそも家にいる時からアイドルだったのです。

 そんな地元のアイドルに連れられて行った先は、当然のごとく
広くて大きくて立派な家でした。
 でも、僕がここで最も驚いたのはそんな田舎の邸宅ではありま
せんで、応対に出るマー坊のお母さんのことだったのです。

 いつも親切で、穏やかで、慈愛に満ちた優しいその目はまるで
マリア様に見つめられているようでした。もちろん誰に話掛ける
時でも声を荒げることなんてまったくありません。
 それに、何時行っても、庭にも部屋にも御屋敷じゅうどこにも
塵一つ落ちていませんし、出てくるおやつは手作りで……それが
とっても美味しいんです。

 子供ながらに『この人が僕のお母さんだったらいいのに』って
『こんな人がお母さんだからマー坊は天使でいられるんだ』って
いつも思っていました。

 それに比べて家の母親ときたら……
 自分では何一つ家事ができないくせに、僕がちょっと失敗する
とすぐに怒鳴るし、誰はばかる事なくあくびはするし、おならは
するし、家の中ではお股だって平気で掻きますからね。
 およそ『清楚』という言葉からは縁遠い人でした。

 あれは3年生の二学期の終業式の日、ちょうどクリスマスイヴ
の日で、マー坊のお母さんが校門近くでマー坊を待っていました。

 本当は二人で帰るつもりだったんでしょうが、たまたま、僕が
一緒にそこにいますから……

 「ちょうどよかったわ。今日の夜、マーちゃん、お出かけしな
ければならないところができたの。それで、クリスマスはお昼に
すませたいと思ってるんだけど、勉ちゃん一緒にお付き合いして
くれないかしら……」

 「えっ!?これから?」

 「大丈夫よ。お母様には私の方からご連絡さしあげるから心配
しないで……」

 こう言われて、僕は急遽マー坊のクリスマスパーティーに招待
されたのでした。

 そこで出されたお母さん手作りのケーキの美味しかったこと。
 お店で買うものと、見た目も味も何一つ遜色ありませんでした。
 当時、田舎でこんな本格的なケーキを手作りできるお母さんは
他にいなかったと思いますよ。

 そんな、お母さんですからね。マー坊は僕の家で行われている
ような野蛮なお仕置きとは縁のない子だと思っていたんです。
 ところが、ある日、ひょんなことからポロリと彼が漏らしたん
ですよ。

 「そんなことないよ。うちのお母さんだって、竹のものさしで
お尻をぶったり、お灸だってすえられたことあるんだから……」

 すると、僕の頭の中で無数の鐘が鳴って……

 マー坊、ごめんね。
 僕、その晩、オナニーをしてしまったんだ。
 マー坊がやられてるのを想像して……
 僕がマー坊のお母さんの子供になって……

******************

12/22 ごくごくたまに貼り付けてある絵画

12/22 ごくごくたまに貼り付けてある絵画

 私の、文字ばかりで恐ろしく取っ付きにくいこのブログにも、
ごくごくたまになんですが古典的な絵画が貼り付けてあることが
あります。
 (見たことのある人は大ラッキー。そのくらい稀ですから)

 これは、どれも発表されてから100年くらい経っているから
著作権が切れているだろうというこちらの判断で載せたものです。

 僕自身が自らイラストを描けばそれが一番いいのでしょうが、
僕はおよそ絵というものが描けません。形にならないんです。

 中学時代、美術の授業でメジチ像をデッサンしたんですが、誰
も僕がメジチを描いたと思ってくれませんでした。
 (先生だけが、唯一『ほう、個性的なメジチですね』と褒めて
くれましたが……(^^ゞ……)

 それがトラウマとなって、以来、自分の絵を他人に見せた事は
ないんです。

 そこで、あくまで作品のイメージとして、古典絵画をごくごく
たまに載せてみるんです。

キューピットを折檻するヴィーナス(ワトー)

 この絵もそんな中の一つ。
 『キューピットを折檻するヴィーナス(ワトー)』です。

 キューピットがスパンキングを受けてるという構図は、この他
にもコーヒーカップの絵柄や置物として昔から幾つも製作されて
きました。

 これは、スパンキングが虐待などではなく、家族の微笑ましい
日常として受け入れられていた何よりの証拠でしょう。

 僕は、今の世の中にあっても自分の心に嘘をつかない親に育て
られることが、どんなに立派な能書きや理屈を言う親や教師より
子供を幸せにできると信じているんです。

 理屈で親や教師に説得された子供の多くは、自分の罪をへ理屈
をこねて正当化しようとします。目には目、理屈には理屈という
わけです。

 でも、それは危険なことです。
 正義や良心を忘れて、自己の目的(エゴ)のために振るう理屈
ほど野蛮なものはないと悟るべきだからです。
 ファシズムしかり、オウムしかりでしょう。

 お仕置きは何の理屈も能書きも子供たちに残しません。
 ただ『あいつ(親や教師)が怒ってた』という現実を知るだけ
です。たったそれだけの事を知るために彼らは痛い思いをしたり
恥ずかしい思いをしたりします。しかし、それでも戦争や騒乱や
非行で命を落とすより被害はずっとずっと小さいはずです。

 お仕置きは、
 『まずは、我を見よ!』
 という指導者側の強いメッセージであって、それ以上のものは
ないのです。

 そして、注目した子供の目に、その後の親なり教師なりの生き
様が、一言二言の理屈では語りきれない数々の感化となって心に
残るのです。

 『本人は立派じゃなかったけど、立派な事を言ってくれたので
感化されました』
 なんて子どもは、この世には決して存在しないと知るべきです。

**********************

12/21 今は伝説となったお気に入り

12/21 今は伝説となったお気に入り

 『過ぎ去りし日の夢』石崎澄子(著)
            SMファンタジア 75年5月号
 著者の女学校時代(昭和十五年から十九年にかけて)の想い出
に多少の夢を加えて書かれている。
 素人の投稿作品であるため、文章表現にやや難はあるものの、
このオリジナル作品は、やはり経験した人だから出せる真の迫力
みたいな物が感じられて、好事家の間でも評価は高い。
 その後、本人が亡くなられたため、編集者が引き継いで、この
名前を使い色々書いているため、多くの人はその編集者の書いた
ものでこの作者の名前をご存知だと思う。

 『蒼白い恋慕』黒田浩一(著)
              SMセレクト 昭和51年2月号
 終戦直後、近所に越してきた継母と少女が暮らす家で繰り広げ
られるお仕置きの様子を男の子の目線で捉えている。
 投稿作品だが、文章もしっかりしていて秀逸。
 何より僕とは年代も近く身につまされることが多かった。
 その後、編集者が時代に合せたリメイク版をこしらえたが……
これは駄作。読む途中で『どちらがプロか!』と叫んでしまった。
ただ、原本が手に入らないなら、『こんなお話なんだ』程度には
理解できる。

 『禁断の寄宿舎』
                1982年製作の映画(フランス)
 昔のことでVHSビデオでレンタルされていた。(その後購入)
 原題はEDUCATION ANGLAISE。文字通りイギリス式の、鞭で
の教育を標榜する全寮制女学校でのエピソードを綴ってある。
 SMチックな映像はなく軽いスパンキング程度だが、それだけ
に説得力があり、映像も綺麗で、筋もしっかりしている。
 まさに私の嗜好にドンピシャな映画で擦り切れるほど見た。

**********************

12/20 嘘のようなホントのお話

12/20 嘘のようなホントのお話

 あれは小4の夏休み。僕はお父さんが運転するスバル360で
ある川の上流へやってきていた。目的地は遠縁にあたるおばさん
の家。
 僕はもちろん、お父さんもその家に行ったことがなくて、途中、
迷ってしまう。

 「おかしいなあ、この辺なんだけど……」
 橋の上に車を止めて地図を見ながらぼやくお父さんの声を背中
で聞きながら、僕は山間の景色を眺めていた。

 「おばさんち、ずいぶん、山の中にあるんだなあ」
 おばさんの住んでる集落は戸数30戸あまり、どこへ行くにも
山一つ越えなければならないという場所だった。
 僕の住んでいる処だって、都会の人から見れば田舎だろうけど、
そこと比べても断然田舎。僻地と言うべきかもしれない。

 だから逆に、空は抜けるように青いし、周囲一面緑の山々だし、
今、こうして僕が車窓から眺めている眼下の川だって泳ぐ魚の姿
がはっきり見えるほどだったのである。

 そんな中、僕と同じ位の年頃の男の子たちが水泳パンツを穿い
て泳いでいるのが見えた。いえ、それ自体は何気ない光景。この
時代、川で泳ぐことなんて珍しくなかったから。

 ところが、次の瞬間、僕は目を疑う光景に出くわすのである。

 女の子が数人でやってきて、やはり水着で泳ぎ始めようとした
のだが、そのうちの一人が私服を着ていて……
 「だって、うち、水着もってへんもん」
 と言うから、こっちは当然その子は不参加だと思ったのだ。

 ところが……
 「えっ!!!!!」

 「家に帰って持って来るのもじゃまくさいから、いいわ」
 そう言ったかと思うと、その場ですっぽんぽんになったのだ。

 「いいの?」

 心配する友だちに、彼女……
 「パンツ濡らすとおかあちゃんにまた怒られるから、いいよ」

 友だちのいる川の中へ一緒に飛び込んだのである。

 今から50年以上も前のこと、大人の貞操観念が違うように、
子供の羞恥心意識も今とは違っていた。そもそもHな情報なんて、
周囲に何もなかったから、今以上に女の子たちは心がオープンで、
性の芽生えも外からの情報ではなく自然に芽生えるものだったの
である。

 僕の学校でも、一応四年生頃から体育の着替えは男女別の部屋
で行われていたけど、男の子が入って来ても「キャー」という声
を上げる子なんて誰もいなかった。

 とはいえ、これは別格。
 『田舎は凄い』
 と思ったんだけど、その瞬間、車が発車してしまった。

 すると彼女、一瞬あっけにとられてこちらを見て立ち尽くして
いたが、慌ててしゃがみ込んでしまったから、それまでこちらに
気がついていなかったのだろう。

 それにしても、同世代の男の子だってすぐそばにいたわけだし、
彼らには見られても仕方がないと思っていなければできないはず
で、きっと集落中の子供達が幼い頃から兄弟同様の関係だったん
だろう。そこへ、滅多に現れないよそ者が現れてビックリという
わけだ。

 のどかな、のどかな、大昔のお話。
 今そこへ行っても裸の女の子はいませんので、あしからず……。

***********************

12/19 僕っていつ独立したっけ……

12/19 僕っていつ独立したっけ……

 エイジプレイの話なんか書いてて、ふと思ったんだけど……

 『僕って、いったいいつ母親から独立したんだろう?』

 父親とは始めからお互いを認め合う友だちみたいな関係だった
から、『今日から独立』みたいな区切りはいらないと思うけど、
母親の場合は、赤ん坊の時から小学校時代は僕を完全に支配した
人だからね……『独立記念日』みたいなものがなきゃいけないと
思うんだけど……

 『う~~~ん』
 思い当たらないんだよね。

 ひょっとして……
 『まだ独立してない?』とか……

 『う~~~~ん、それも、ありえる』

 実は、お父さん、お母さん、おじいちゃん、おばあちゃん……
学校の先生、会社の先輩や上司……とにかく目上の人たちには、
比較的可愛がられてきたけど、それは逆に『コレといった信念や
がむしゃらな闘争心とは無縁な人生だった』ともいえるわけで、
当然、出世とは縁がなかった。

 このあたり、父親の遺伝子をもろに引き継いでいる。

 そんな男だから、自分の母親とも、いまだ親子関係のままで、
人間として対等な関係にはなっていないような気がする。

 例えば、風邪をひくと……
 「風邪薬はこれを飲んどきなさい……ドリンク剤はこれで……
お風呂は今日とりやめます。……仕事も、もう切り上げて、床に
ついた方がいいわね……えっ、何?……そんな、ことしたら首に
なる?……いいの、いいの、どうせあんた、大した仕事ないんて
してないんでしょう。首になったらなったで、また新しいところ
を探せばいいじゃないの」

 と、こうなるのだ。
 さすがに寝床に哺乳瓶まではないけど、どこかエイジプレイに
似たところがあるんだよね。
 この歳にして、生エイジプレイ。洒落にならないね。

**********************

12/17 エイジプレイ

12/17 エイジプレイ

 エイジプレイを僕があまり小説にしてこなかったのは、単純に
『絵的に綺麗じゃないから』

 そりゃあ、やってる方は天国にでもいる気分かもしれないけど、
小説って、その姿を客観視して楽しむでしょう。
 そうすると、その姿って、少女や子供と違って美しくないもの。

 ツルッ禿、赤ら顔のおっちゃんが、オムツはいて、涎掛け付け
て哺乳瓶でミルク飲んでても、見てる方は楽しくないでしょう。

 せめて、そこは女の子でないと……
 だから小説には向かない題材だと思うんだよ。

 ただ、普段は子供のお仕置きばかり描いてる僕も元はと言えば
『自分がお仕置きされたい』という欲求から出発している訳で、
いわばエイジプレイは原点だからね。
 今回は『思い出』という形で作ってみたんだ。

**********************

綾瀬のおばちゃん(3)

       << 綾瀬のおばちゃん(3) >>


<< 余計な一言 >>
 これは普段私が書いているものと違って、対象が子供ではあり
ません。『大人の赤ちゃんごっこ』世間ではエイジプレイなどと
呼ばれているものです。そのため、中にフェラチオの記述があり
ます。私の作品ですから、例によって細かな描写はありませんが、
一応、そういうものだとご承知ください。


 §3 馬鹿馬鹿しくて楽しい時間

 食後、子供たちは一階下の自宅に帰され、和子さんもこれから
先の準備が済むと、下へと降りていきました。
 残ったのは、僕とおばちゃんだけ。
 そのおばちゃんが僕に最終確認です。

 「ここは床屋さんと同じで、一度始めたら終わるまで私に全部
お任せの世界なの。何をされても絶対に逆らわないって約束する
かい?」

 そもそも1万円も払って(いえ、当時の僕にとっては大金です)
いったい何をされるかも分からない処へ入り込むなんて、とても
正気の沙汰とは思えません。今にして思えば、若気の至りという
やつでした。

 頼りは、丸川先生たちが書く小説だけ。そこに出てくる情景が
気に入っていて、ひょっとしてそれがここで行われているんじゃ
ないか、僕はそう踏んだのです。

 でも、肝心のサークル仲間の誰に聞いても、おばちゃんの事を
まともに答えてくれる人がいません。みんな口が重いのです。
 ただ、そうやってはぐらかすことが、逆に確信となって、僕は
不審者となってしまったのでした。

 「……はい、大丈夫です」
 おばちゃんの最終確認に、腹は決まっていましたが、あらため
て自分の心に『これから馬鹿なことをやるんだ』と言い聞かせて
返事をします。

 「それじゃあ、坊や、まずはこれに着替えて……」
 おばちゃんは和子さんが用意していった服に着替えるようにと
僕に命じます。
 そこで、その服を着てみますと……

 「ああ、可愛い、可愛い。爺さんたちと違ってお前は歳も若い
から見栄えがするじゃないか」
 おばちゃんは満足そうです。

 着替えたのは、股上の短いショートパンツとペコちゃんが胸に
大きくプリントされたニットシャツ。赤ちゃんのロンパースかと
思っていましたが、違っていました。
 夏にカジュワルな場所でなら大人が着ていてもそれほど不自然
さを感じさせない衣装です。

 「これ、何?」
 僕が衣装の袖を引っ張ると……

 「子供の服だよ。これからお前は私の子供になるんだ。歳は、
……そうだね、隼人か、……琴音くらいのつもりでいればいいよ。
……いずれにしても、私には絶対服従だよ。『はい、お母さん』
以外は許さないからね。イヤイヤをしたら即、お仕置き。いいね」

 「…………」
 その瞬間、私は『やっぱり、ここだったんだ』と思い。そして、
おばちゃんには、小説にあるように……
 「はい、おかあさん」
 と答えたのでした。

 「よし、いいご返事だよ。それじゃあ、まずお絵かきしようか」
 おかあさんはそう言って、ぼくを隣りの和室へ連れて行きます。

 そこにはすでにおコタ(炬燵)が用意されていました。
 時期は10月。まだそのシーズンには早いのですが、二人で、
一緒に入ります。

 まず、おかあさんがクッションに腰を掛けてコタツ布団を捲り
その股座(またぐら)へ私がお邪魔するという形です。
そうしないと、私の方がすでに身長が高いのでアンバランスに
なってしまいますから仕方がありませんでした。

 エイジプレイでは私は子供。あくまでおかあさんに抱かれる身
なのです。

 私はそんなおかあさんに負担をかけない形で抱っこされると、
目の前にあった大きなスケッチブックに絵を描き始めます。
 鉛筆で輪郭を描いて、クレヨンで上手に色を塗って……

 いえ、いえ……実はこれ、私が描いたものではありませんでした。
 私は鉛筆やクレヨンをただ握っていただけ。全てはおばちゃん、
いえ、おかあさんが私の手を包み込むように握り、慣れた手つき
で、さっさ、さっさと描いていきます。

 その上手なこと……驚きました。
 私は自分の握られた手から生み出される完成度の高いイラスト
が嬉しくなり、何だか自分まで絵が上手くなったように感じたの
でした。

 おかあさんが描くのは俗に『責絵』と呼ばれるSM劇画ですが、
私の嗜好を考慮しておどろおどろしいものは描きません。画題も、
『少女のお仕置き』になっていました。

 浣腸、お灸、尻叩き……いずれも親や教師からの折檻です。
 おかげで5、6枚描くうちに息子がすっかり目を覚まし、私は
おかあさんの描く少女に恋をしてしまいそうになります。

 「坊やは、こんなのが好きなんだね」

 おかあさんは僕の嗜好に副って最初の5、6枚を描き上げると、
更に奥深いテーマでまた5、6枚仕上げてくれました。

 おばちゃんはこうしてお客さんと一緒に絵を描くことで、相手
がどんな嗜好の持ち主で、今何を求めているかを判断して今日の
メニューを決めるのです。

 私は、その後何人かの女性に同じようなことを頼んでみました
が、大半は始めから決められたメニューを機械的にこなすだけ。
こんな事ができたのは、後にも先にも彼女だけでした。

 「これ、もらっていい?」
 思わず私がねだると……
 「いいわよ。お土産にあげる」
 快く応じてくれたのです。

 以来、これは私の宝物となりました。売るなんてとんでもない。
ネットにだって絶対に出しませんよ。

 「よし、坊やの嗜好もわかったことだし、次は綺麗綺麗しよう
か」
 イラストをまだ見入ったままでいる僕の頭の上からおかあさん
の声がします。でも、おかあさんの言う綺麗綺麗の意味が、最初
私には分かりませんでした。

 「ほら、いつまで見てるの。始めるわよ」
 やがて、おかあさんがシェービングクリームとT字のカミソリ
を持ってきたことで、私は了解します。

 実はこれ、丸川先生の小説にはよく出てくる光景だったのです。

 小説によれば、新入生は頭の毛以外すべての毛をおばちゃんに
よって剃り上げられることになっていました。すね毛、わきの下
……勿論、陰毛も全てです。
 いくら、子供だ、子供だ、と叫んでみても、はたからみれば、
グロテスクこの上ないことをしているわけです。これでさらに、
毛があったんじゃ、いよいよ興ざめしてしまいますから……

 私もそれについては覚悟を決めるしかありませんでした。

 ただ、私の場合……
 「ほう、お前さん、すね毛ばかりか、脇の下もつるつるじゃね。
まるで本物の子供みたいだ。こっちも手間が省けて何よりだよ」
 せんべい布団に全裸で寝かされている私を見て、おかあさんが
微笑みます。

 これって遺伝なんでしょうか。私は脇の下には毛が一本も生え
ませんでした。

 ただ、そんな恥ずかしい姿を晒していても、僕は笑っています。
『おかあさん』なんて呼んでいてもおばちゃんと会うのはこれが
二回目。所詮は赤の他人のはずです。なのに、なぜなんでしょう。
こうして笑われていることがちっとも苦痛ではないのです。

 そのことは私自身も不思議で仕方がありませんでした。

 「よし、坊や、さっぱりしたところで、次はミルクよ。その後、
お風呂に入ろうか」

 おかあさんは再び股上の短い半ズボンを穿かせ、ペコちゃんの
ポロシャツを着せて、布団の上に正座したままで僕の体を抱き上
げます。

 「さあ、おいちい、おいちいミルクですよ」

 「!」
 僕は目を丸くします。

 おかあさんの優しい声と共に目の前に現れたのは、どこで調達
したのでしょうか、巨大な哺乳瓶。その吸い口は、大人の私でも
口を大きく開けなければならないほどでした。

 でも、これが赤ちゃんのリアリティーなんでしょう。赤ちゃん
にとって哺乳瓶というのはこのくらい大きな存在のはずですから。

 何でも粉ミルクメーカーが宣伝用にこしらえたのを譲ってもら
ったんだそうですが……一説には、その社長がここで使うことを
見越して、そんなCMをわざと企画したんだとも聞きました。
 いずれにしても、これはありがたかったです。

 それはそうと孫の琴音ちゃんはすでに赤ちゃんじゃありません
から、今は哺乳瓶のお世話にはなっていないはずですが、大人の
赤ちゃんたちはいくつの年齢設定で遊ぶ時もこれだけはお定まり
のようでした。

 僕も目を輝かせてこれにしゃぶりつきます。

 「!!!」
 ところが、吸い付いてみて二度ビックリです。

 「美味しいかい?………あんたのおかあさんがいつもミルクに
ポポンS(ビタミン剤)を入れてたって聞いたから真似してみた
んだよ。どうだ、ママの味がしたろう」

 僕は感激、感心しました。実はその話をおばちゃんにした記憶
がなかったのです。恐らく何かのついでにポロリと口からこぼれ
出た程度でしょう。…でも、それを覚えていてさっそく利用する
なんて……さすがにおばちゃんはプロです。

 おばちゃんに上半身を揺らされ、子守唄を聞いてるうちに僕も
ちょっとだけ悪戯を……

 哺乳瓶のゴムの吸口を吸って出てきたミルクを、そうっと唇の
周りに吐き出してみたのです。

 当然、唇の周りは白く汚れますから、そのたびにおかあさんが
ガーゼで拭いてくれますが……

 それを何回か繰り返すうち、わざとやってるって気づいたんで
しょうね、今度は、おかあさんがそれを舐めて拭きとってくれる
ようになったのでした。

 普通の人の感性ならおばちゃんに口の周りを舐められたんです
からね、『おえっ!』ってなもんでしょうが、私の場合はそれも
楽しい遊びでした。


 授乳が終わると、次はお風呂でしたが、実は、これがこの日の
中で最も大変な出来事だったのです。

 「おかあさん、ちょっと準備がありますからね、いい子にして
いるのよ」
 おかあさんは僕の口に特大おしゃぶりを押し込むと、頭を撫で
て席をたちます。和子さんがお水だけを張ってくれていたお風呂
のガス釜に火をつけに行ったのです。

 当初、僕はそれだけのことだと思っていました。
 ところが、それにしては時間がかかります。

 『おかしいな、どうしたのかな?』
 と思っていたところへおかあさんは戻ってきたのですが……

 「えっ!?」
 それを見た瞬間、全身鳥肌、目が点になってしまいました。

 おかあさんは手ぶらでは戻ってこなかったのです。
 大判のタオルやら茶色の薬ビンやらを大き目の洗面器に入れて
運んできます。そこには見慣れたガラス製のピストン式浣腸器も
あって……これを見たら、驚くなという方が無理でした。

 『えっ、お風呂だと言ってたのに、その前に浣腸するのか?』
 僕の不安そうな目を見て、おかあさんはしてやったりといった
表情になります。

 「坊や、せっかくお風呂に入るだもの。一緒にお腹も洗っちゃ
おうね。だって、坊やのおうちではそうしてたんでしょう」

 『何言ってるんだ、そんなことするわけないじゃないか』
 僕はとっさにそう思います。

 「浣腸が終わってからお風呂に入るの?」
 恐る恐るたずねてみましたが……

 「そうじゃないの。お風呂でうんちするのよ。体が暖まってる
からそこで出すと気持がいいわよ」

 「えっっっっ!?『冗談だろう……』」
 僕はさらに驚き不安になります。

 でも、その瞬間、
 『!!!』
 僕はおばちゃんに余計なことを話してしまったのを思い出した
のでした。

 『そうか、僕が子供の頃お風呂場でウンコ漏らしちゃったこと、
おばちゃんに話したんだっけ……おばちゃん、何でもよく覚えて
るなあ』

 後悔先に立たずですが……

 「コラ!何ぶつくさ言ってるの。そりゃあ、世間でこんなこと
したら大変だろうけどさ。そもそも、ここは世間じゃないもの。
みんなここへ来て、自分の恥ずかしい部分を全~部さらけ出して
帰るんだよ。ここはそうやってリフレッシュするためにあるんだ
からね。かしこまってどうするんだい」

 「そりゃそうだけど……」

 「何だ、これだけ言ってもまだ恥ずかしいのかい。お前はまだ
若いからね……それじゃ仕方がない。このおかあさんが、目一杯、
恥をかかせてやるか」

 おかあさんはそう言うと……膝を抱えてうずくまっていた僕を
突き倒して仰向けにし、半ズボンをブリーフごとさっと脱がせ、
両足を高くあげます。

 「…………」
 一瞬の早業ではありましたが、僕も無抵抗でした。

 もちろん、おばちゃんと若い僕が争えば、勝負は見えています。
 でも、争いませんでした。
 自分からやって来て、お金まで払って、今さら逃げても何にも
なりませんから……

 「ほら、坊や、いくよ。ちょっと気持悪いけど我慢してね」

 ところが、そんなおばちゃんの声は、僕に魔法をかけます。
 不思議なもので、その声と共に僕の精神年齢が21から5歳へ
と変化するのでした。

 お尻の中へと流れ込むグリセリンが心地よいはずがありません。
どんな時にやられても、誰にやられても、それは不快に決まって
います。

 ところが、おばちゃんにやられたその浣腸だけは、なぜか心地
よいと感じてしまったのでした。

 「さあ、このまま、おっぷ(お風呂)に入ろうね」
 シミズ姿になったおばちゃんに抱き起こされ、手を引かれて、
おばちゃんちのお風呂へ行きます。

 豪華なお風呂じゃありません。ビニールのアヒルさんやブリキの
金魚さんたちが湯船に浮かぶ団地の小さなお風呂です。
 そんな狭い湯船にシミズ姿のおばちゃんと一緒に浸かった時、
僕はありえないものを感じてしまいます。

 イチジク浣腸をされ、シミズ姿のおばちゃんに抱かれるように
して湯船に浸かって震えながらウンコを我慢している図なんて、
こんなのマンガにさえならなほど滑稽な映像です。恐ろしいほど
馬鹿げています。
 でも、その時間は、同時に信じられないほどの幸福感を、僕に
もたらしたのでした。

 女性にはわからないと思いますが、多くの男性はウンチを我慢
する時、性的に興奮します。幼児の時もそうですから、フロイト
は幼児の一時期を『肛門期』だなんてよんでたくらいです。

 この男性特有の性的興奮が、二つの矛盾する感情に翻弄され、
僕のリビドーを高めていきます。

 僕は、『この湯船で漏らすかもしれない』という恐怖心の中で、
『でも、もし、ここで漏らしたらどんなに気持ちがいいだろう』
と考えたりもするのです。
 身体はガタガタと震えていながら、お湯の暖かさ、心地よさも
同時に感じています。
 それに、ガタガタと震えている僕の身体をおばちゃんが押さえ
ているは、拘束されているという不安感であると同時に、身体を
支えてもらっているという安堵感でもあるわけで……

 互いに相反するもの同士が絡みあい、僕の頭のあちこちでは、
回線がショートして火花が散ります。意識が朦朧とし始めます。

 でも、そんな異常電流が僕の生命エネルギーの炎を消し去る事
はありませんでした。むしろ、それは僕の身体の芯にしっかりと
溜め込まれ、やがて湧き上がるリビドーの触媒となっていきます。

 「よし、もういいぞ」

 ようやくおばちゃんがそれまで掴んでいた僕の両腕を離します。
 おばちゃんには僕の限界がわかっているみたいでした。

 「だめなら、ここでやってもいいよ」
 おばちゃんの許可を背中で聞きましたが、さすがにそこまでは
……

 「*********」

 ところが、おばちゃんは既(すんで)の所でトイレに間に合った
僕を急かせます。
 「ほら、早くせんと、せっかくの楽しみがなくなるぞ」

 おばちゃんに急かされてトイレを済ませると僕は再び煎餅布団
へ……

 「さあ、これからがお楽しみだ」

 まだ身体が温かいうちに仰向けに寝かされて今度はおばちゃん
の愛撫を受けるのです。

 バスタオルで身体中の汗と水滴がくまなく拭き取られ、香油が
全身に塗り込められます。これは身体を冷やさない工夫でした。

 「じっとしてるんだよ。そして、目一杯、我慢するんだ」

 乳首から始まった愛撫は舌と唇を使って僕の神経に添いながら
すべての性感帯を網羅していきます。

 切なさが顎をじんじん震わせ、両手両足の指先を痺れさせます。
 自然と身体が弓なりになり涙が滲みます。

 『ここも、ここも、……ここもだよ』

 最後に取り残された局部が、おばちゃんの愛を求めて猛り狂う
まで、それは続くのでした。

 最後に……おばちゃんは大きくなった噴水の吹き出し口に口を
着けますが、そこから歓喜の水を吹き上げるのにそう時間はかか
りませんでした。

 『あ~~~~~』
 お風呂の浣腸で僕の身体はよほど大きなエネルギーを溜め込ん
でいたのでしょうか、大人のオシッコが僕の頭の上を越えて遥か
遠くへ飛んでいきます。

 『やったあ~~~』
 僕は自分独りでは味わえなかった快感を、この時初めて味わい
ます。

 『あ~~~~~~』
 夢心地とは、まさにこのこと。

 ただ、大人のオシッコが一回済んでも、しばらくはおかあさん
の愛撫が続きます。おかげで僕は自分で楽しむ時より遥かに長い
時間、天国の住人でいられたのでした。

 そして、僕の愛液が一滴残らず身体の外へ出てしまうと……
 僕のお股には、たっぷりと天花粉がはたかれ、浴衣地で作った
昔ながらのオムツがお尻に当たります。
 その頃には、もうすっかり赤ちゃん気分になっていました。

 真新しいオムツがちょいと浮かしたお尻の下に滑り込む瞬間、
僕の身体は後ろに倒れて一瞬反身になり、ベランダに干してある
沢山のオムツが目に入ります。

 今さらながらですが、『そういうことだったのかあ』と思った
のでした。


 あとの時間は、おかあさんに甘えるだけ……
 オムツを付けた僕は、おかあさんの膝で離乳食をもらいます。
 絵本、といってもHな絵本なのですが、これを読んでもらい、
目を輝かせます。
 生のオッパイにはさすがに抵抗があったけど、結局は、それも
拒否しませんでした。

 そして、お背中をトントンされて子守唄が聞こえ始める頃には、
本当に目蓋が重くて仕方がなかったのです。

 「眠い……」

 「眠いなら寝てもいいのよ。私は未亡人だからここに来る人は
誰もいないの。安心しておネンネなさい」

 おかあさんとの時間は、僕が、当初思い描いていたシナリオと
完全に一致したわけではありません。でも、僕のシナリオ以上の
サービスをおばちゃんは僕にもたらしてくれたのでした。


 目が覚めると、僕の上には掛け布団が乗っけてありました。

 「坊や、目が覚めたかい?」
 おばちゃんにこう言われた瞬間、恥ずかしい話ですが、最初は
………
 『えっ!ここはどこ?』
 って思ったんです。
 すぐに思い出して赤面です。

 「驚いたよ。……あんた、二時間もここで寝てるんだもん」
 おばちゃんは縫いものをしていました。僕のイニシャルが刺繍
された涎(よだれ)掛けを縫っていたんです。

 「あっ、ごめんなさい。すぐ帰ります」
 僕は上半身を起こしますが……

 「いいのよ、寝たければ寝たいだけ寝て帰ればいいんだから…
そうじゃなくて、驚いたって言ってるの。ベテランになるとそう
いう人もいるけど、初日から本格的にここで寝た人は、あなたが
初めてよ。あなた、人を疑ったことがないでしょう?」

 「そうですか?僕はただ寝ていいって言われたもんだから……
そのまま寝てしまって……」

 「あんた、田舎じゃボンボンだったんだろうね。初日から何の
躊躇(ためら)いもなく私になつくんだもん。こっちが驚いちゃっ
たわ。人が良いにもほどあるよ」
 おばちゃんは手先を休めずこう言います。

 「ごめんなさい、こういうこと初めてだったから勝手がわから
なくて……きっと、やりにくかったんでしょうね」
 頭をかいて答えると……

 「そんなことはないわ。私の方こそ、あんたのお母さんの代わ
りができて嬉しかったのよ。お客さんは当然そうでしょうけど、
こちらだって苦痛だったらできない。私も好きだから続けてこれ
たの。………だけどね、もうここへは来ないほうがいいわね」

 「どうしてですか?」

 「あんたはこれからの人だもん。未来ある人はもっと前向きな
楽しみを見つけなきゃ。こういう道楽はね、世の中でそれなりに
仕事をして、もうこれからは、万事下り坂って人が通う処なのよ」

 「次は3万円用意します。お寿司も……」
 苦笑いでこう言うと……

 「馬鹿だね、お前。人の話を聞いてないのかい」
 おばちゃんに本気で怒られました。
 その後、気を取り直したおばちゃんがこう続けます。
 「………だから、そういう問題じゃないって言ってるだろう。
こっちは純粋に心配してるのさ。………お母ちゃんのオッパイが
恋しかったら、田舎(くに)に帰りな。お前の母ちゃんは、お前が
愛しくて仕方がないはずだから、また、こっそり抱いてくれるよ」

 「えっ?この歳でですか?……馬鹿馬鹿しい。うちの母親って
そんな人じゃありませんよ。結構、怖い人なんですから…そんな
ことしませんよ」
 僕は話しにならないとばかりハエを追うように右手を振ります。

 「やってみな。やってみればわかるよ。あんたみたいな子は、
そうやってでないと育たないはずだから……」
 おばちゃんは自信たっぷりに断言します。
 でも、それと同時に、さっきからやっていた涎掛けが完成した
らしく、それを僕の首に巻きつけてくれました。

 「よし、よし、似合う、似合う。良い子だね、笑ってごらん」
 おかあさんは独りではしゃぎ、僕もお愛想の笑いを返します。

 すると、おかあさんは小鉢に取り分けた離乳食代わりのおじや
をスプーンですくって、僕の口にねじ入れるのです。

 「ああ、上手、上手」

 おかあさんに乗せられて、僕も両手の指を目一杯広げたままで
赤ちゃん拍手。
 この時はもう息もぴったりの親子でした。


 しかし、さすがにいつまでもここにいるわけにもいきません。

 帰りしな、おばちゃんは……
 「その涎掛けは私との絆だから箪笥の奥に大事にしまっといて、
もし再びここへ来る機会があったら持って来てちょうだい」

 「はい。わかりました。またバイトでお金を貯めてから来ます」
 僕は、相変わらず明るく返事したのですが……

 「だから、ダメだと言っただろう。次は社会人になってから。
出世してからおいで。ここはね、自分で稼いだお金で遊ぶ処なの。
専門書買うからって、母ちゃんに嘘ついて、くすねたお金で来る
処じゃないんだよ」

 おかあさんは最後まで厳しい言葉を投げかけます。

 『……でも、どうしてわかったんだろう?……その事は絶対に
おばちゃんには話してないと思うんだけどなあ……』

 綾瀬の不審者は沈む大きな夕日を車窓に見ながら、六畳一間の
下宿先へと戻って行ったのでした。


******************(3)******

12/15 昔、浣腸ありき

12/15 昔、浣腸ありき

 今だって浣腸という医療行為は存在していますが、僕の子供の
頃は今よりもっともっと盛んに行われていました。
 単にお通じがないというだけではありません。熱がある。お腹
が痛い。果ては『だるそうにしている』というだけで、お浣腸の
憂き目に会う子供がたくさんいたんです。

 当時の常識では、子供の場合、まずお腹を空にすることが治療
の第一歩だったのです。

 おかげで、家庭でも病院でも子供へのお浣腸は多用されました。
私の家にもイチジク浣腸だけでなく子供用に注射器のような形を
したピストン式の浣腸器が薬箱のある引き出しに奥で眠っていま
した。

 そして、この浣腸器、実は実用よりも……
 (もちろん、実用で使用されたこともありますが)

 「そんなにだるいなら、まずこれで浣腸してから始めようか」

 お母さんは、勉強や家の仕事を嫌がって、ふて腐れてだるそう
にしている我が子には、これを見せつけ脅しに使っていました。
 我が家ではその方が頻度が高かったのです。

 そして、これこそが、その後私が『浣腸』をお仕置きの一つと
考える原点となるのでした。

 そんな昭和30年代以前の子どもの浣腸事情を知る手がかりに
なる作品があります。

 『子供の時の浣腸』池田喜代子(著)
 掲載 奇譚クラブ 昭和33年 7月号

 掲載された奇譚クラブは、知る人ぞ知る昔のSM雑誌ですが、
この作品自体はSMではなく一つの思い出として描かれています
から誰が読んでも差し障りがないと思います。

 奇特な方がネットに上げておられますから、興味のある方は、
ご一読ください。

『子供の時の浣腸』池田喜代子(著)

**********************

綾瀬のおばちゃん(2)

         << 綾瀬のおばちゃん(2) >>

 §2 オムツ翻るベランダ

 おばちゃんがくれた走り書きには住所と電話番号が書いてあり
ました。
 そこで、まずは地図を買ってその住所を確かめてみると、そこ
は綾瀬という地下鉄の駅から程近い団地だと分かったんです。

 二週間後の土曜日、
 私は興味半分でその綾瀬駅へ行ってみることにしました。
 でも、最初はそれだけ。改札さえ通らずそのまま帰ってしまい
ました。

 それから一週間後、
 まだ開通したばかりだった地下鉄の終点で下りると、綾瀬駅の
周辺を散策。
 『へえ、住所はこの団地なんだ。ということは……この最後の
数字は……2号棟の505号室ってことか』
 と、団地だけを確認、その日はそこまでです。

 そして、さらに二週間後、
 綾瀬を訪れること三度目にしてやっと私はおばちゃんが書いて
くれた住所に辿り着いたのでした。
 『間違いない。あの部屋だ。……それにしてもたくさんオムツ
が干してあるなあ。あの家何人も赤ちゃんがいるのかなあ』
 私はベランダ一面に翻る布オムツを見て思います。当時はまだ
紙おむつが一般的じゃありませんから布のオムツが干してあって
もちっとも不思議じゃありませんでした。
 その日はそれを確認して帰ります。

 まだうぶな頃でしたからね。すべては恐怖心と好奇心との戦い。
その戦いに好奇心が勝つと綾瀬へでかけるんです。

 これから先は毎週のように綾瀬へ通いましたが、それでも電話
する勇気はありませんでした。

 こうして三ヶ月四ヶ月と過ぎた頃、
 団地をうろつく不審者がとうとう発見されてしまいます。

 その日もベランダには沢山のオムツが干してありました。
 それをいつものように見上げていた時です。
 突然、女の人がそのベランダに現れて私を手招きします。

 最初は自分の事だとわかりませんでしたが、周りに他の人の姿
が見えませんから……
 『ヤバ、見つかっちゃった』

 もちろん、逃げるという選択肢だってあったはずですが、この
時はすでに『今日、電話しようか、やめようか』って思い悩んで
いましたから、実はいいきっかけだったんです。


 ご招待を受けて、私は505号室のチャイムを押します。

 出てきたのは和子さんでした。和子さんは、おばちゃんの実の
娘です。ベランダから私を手招きしたのもこの和子さんでした。

 『きっとここがおばちゃんのもう一軒のお店なんだ』
 なんて思っていましたが、奥に通されると、おばちゃんは居間
のソファに胡坐をかいて座っています。おまけに周りに変わった
ところなんて何もありません。何の変哲もない団地の一室だった
のです。
 所帯道具一式すべて揃っていますし生活観ありありの風景です。

 ただ、ない物もありました。いえ、物って言っちゃいけません
よね。赤ちゃんがいないのです。あんなに何時もオムツが干して
あるからには赤ちゃんは一人ではないと踏んでいたのですが……
開け放たれた2DKのどこを見回しても、肝心の赤ちゃんの姿が
ありませんでした。

 「ほら、何をキョロキョロしているの。そんなだから、あんた、
不審者と間違われるんだ」

 「不審者?僕が?」

 「そうだよ。毎週、週末にこの辺りをうろついく不審者がいる
から注意してたくださいって回覧板が回ってきてたからね。……
ひっとして、ひょっとしたらって思ってたんだけど……案の定、
ってわけだ」

 「えっ、……」
 私はそれまで他人から怪しまれていたなんて知りませんでした
から絶句します。

 「だから、ここに来る時は電話しなさいって言ったろう。……
警察に引っ張られたらつまらないじゃないか」

 「すみません」
 私が頭を下げると……

 「私に謝ったってしょうがないじゃないだろう、これは坊やの
問題だもん。……恐らくここに電話する勇気がなかったんだね。
……あんた、育ちがよさそうだし、気も弱そうだもんね」

 「こんな処、初めてだったから……」
 思わず弁解したら足元をすくわれて……

 「おやおや、こんな処で悪かったね。こんな処に大学の先生、
お医者、弁護士、代議士先生から警察の所長さんまで来るんだよ」
一介の学生ふぜいに『こんな処』よばわりされたくないね」

 「ごめんなさい」
 また、謝ることになった。
 すると……

 「はははは、可愛いね、あんた、はにかんだところなんか息子
そっくりだよ。……和子、和子、この子兄ちゃんに似てるだろう」

 おばちゃんが同意を求めて娘の和子さんを呼びます。

 「ええ、……」
 和子さんは台所からこちらを見て遠慮がちに笑います。

 すると、ここでおばちゃんは少しだけ声のトーンを落とすと、
真剣な顔になって話します。それは、ここでの約束事でした。

 「ここに来たらね、外での肩書きは一切関係なしだ。みんな、
私の子ども。私にすべてお任せで楽しむんだ。あんたの場合は、
学生だからどっちみち関係ないけど、たまに自分の地位にしがみ
つく人もいるんだよ。そうした人はここでは楽しめないね」

 「ところで、ここで、何するんですか?」

 「えっ!?」おばちゃんは目を丸くした。「何だ、丸川先生に
聞かなかったのかい?あんた、あの時、丸川先生達の連れだった
じゃないか?」

 「ええ、何となくは……でも恥ずかしくて……具体的な事まで
訊いてないんです」

 「呆れた。何をするかも知らないでここに来たのかい?」

 「ええ、まあ……」

 「まあ、いいわ。度胸があるのか、馬鹿なのかは知らないけど、
可愛がってあげるよ。今日の午後はちょうど空いてるしね……」

 「いえ、僕は……」
 私は慌てて否定しようとしたのですが……

 「何言ってるんだい。散々この辺うろついてたくせに……ほら、
財布出してみな」

 「えっ……」
 驚く僕を押し倒すようにおばちゃんがのしかかって来て、僕の
財布を強奪します。

 「ほら、見な。ここにちゃんと1万円、分けて入れてあるじゃ
ないか。これが何よりの証拠だよ。私が1万円でいいって言った
から、あんたちゃんと持ってきたんだね。…よし、これでいいよ」
 おばちゃんは僕の財布から1万円札を抜き取ると……

 「和子、これで寿司買ってきな」
 それを無造作に娘さんに手渡すのでした。

 とにもかくにもこれで交渉成立です。

 「私も、あんたの事はそこそこ聞いてるから、たぶん、大丈夫
だと思うけど……嫌になっても途中で逃げ出さないでおくれよ。
『変態がこの家から出てきた』なんて評判になったら、私の方が
ご近所から白い目で見られることになるからね」

 「ここって、自宅なんですか?」

 「そりゃそうさ、見ればわかりそうなもんだろう。ここは私の
自宅。娘は、一階下で亭主や子供たちと一緒にに暮らしてるよ。
だから、ご近所迷惑な音の出るスパンキングはここではやらない
んだ」

 「じゃあ、ここでは……」

 「だから、ここではそれ以外のことで楽しむんだ」

 「それ以外?」

 「まあ、いいさ。あんただって嫌いじゃないはずだから……」

 その時でした。入口の扉が開いて光がこちらへさしたかと思う
と、甲高い声が家じゅうに響きます。

 「おばあちゃん、お寿司は……」
 「あたしも……」

 声の主は、当時小学1年生の隼人君と幼稚園児の琴音ちゃん。
 この子たちは和子さんの子供、つまりおばちゃんの孫でした。

 二人はいきなりお婆ちゃんの首っ玉にしがみつきます。

 「ほらほら、お客さんが来とるというのに、ご挨拶せんかい」

 二人はそう言われて、仕方なく顔だけを私の方へを向け…
 「こんにちわ」
 「こんにちわ」
 と、さも大儀そうに頭を下げますから……

 「こんにちわ」
 私も笑顔を見せて挨拶すると、それを物珍しそうに眺めたあと、
再びお婆ちゃんの顔をすりすりします。

 しかし、ここで二人にとっては予期せぬ事が起こります。

 「お前ら、昨日、お父さんの大事にしとる皿を壊してしもうた
そうやな。…おおかた、また戸棚の上に乗って遊んどったんじゃ
ろう」

 お婆さんの言葉に二人の顔色が悪くなっていくのがわかります。
同時にそれまでしっかりとしがみついていた首っ玉からも、少し
距離を置くのです。

 二人は異常事態を察知したようでした。

 いえ、私だってこんな事は山と経験してきたのでわかるんです
が、たいてい手遅れでした。

 「今日は、お前達のお父さんからもお仕置きを頼まれとるから
な。やってやらにゃ、あかんだろうなあ」

 「えっ、だってあれお兄ちゃんが先に登ったんだよ」
 琴音ちゃんが言えば、
 「嘘だね、琴音が先に登ろうって言ったんじゃないか」
 隼人君だって負けてません。
 「うそつき!」
 「嘘じゃないもん」
 お互いが責任のなすりあいをしますが、こんな場合、たいてい
一方だけが親に責められるということはあまりありませんでした。

 ついにお婆ちゃんの目の前でつかみ合いの喧嘩になってしまい
ましたから……

 「ほれ、お客さんの前でみっともない。やめんかい。……ほれ、
隼人、こっちへ来るんじゃ」

 お婆ちゃんは隼人君を目の前に立たせると、着ていた服を脱が
せ始めたのでした。
 シャツだけお情けですが、あとは全部剥ぎ取られて……
 当然、可愛いお尻もオチンチンも丸出しです。

 「向こう行って」
 おばちゃんに強い調子で命じられると、壁の前で膝まづいて、
さっそく壁とにらめっこです。

 隼人君がおばちゃんに何も訊かずに壁の前へ行って膝まづいた
ところをみると、どうやらこれはこの家でよくやられているお仕
置きのようでした。

 隼人君だけじゃありません。琴音ちゃんだってそれは同じです。
やはり、シャツだけお情けで、下はすっぽんぽんのまま壁とにら
めっこです。

 「どう、可愛いストリップやろ。西洋じゃコーナータイムとか
言うんだそうな。……あんたの家でもあったかい?こういうの…」

 「………柿の木に縛り付けられたのが一回だけ……あとは……」

 僕が答えに詰まると、おばちゃんはその事とは関係ないことを
独り言のようにつぶやきました。
 「あんたをみてるとね。育ちがいいって言うか、あんたの親が
どんだけあんたを愛してたかわかるよ」

 その直後、入口のドアが開いて和子さんが、大きな桶を抱えて
帰ってきました。

 和子さんはそれを居間のテーブルに置いてから、自分の子ども
たちに気づきます。

 「あんたら、また、何かしでかしたんかいな」

 こう言って叱ると、今度はおばちゃんが……
 「違う、違う、和子、昨日のことや……」
 和子さんにはこう言い……僕には……
 「ほら、食べなさい。お昼まだなんやろ」
 とお寿司を勧めたのです。

 そして……
 「隼人と琴音。お前たちも、もういいから、ここへ来てお寿司
を食べなさい」
 って、チビちゃんたちにもお許しが出たのでした。

 子供は現金ですから、その声を聞くや一目散に大きな寿司桶の
前へやってきます。もちろんフルチンでしたが、そんなのお構い
なしでした。

 そんな二人におばちゃんと和子さんが服を着せなおし、ビール
やジュースもテーブルに乗って、昼の食事が始まります。

 「さ、遠慮はいらんよ。今日はおばちゃんのおごりだから……」

 人生経験のない僕は、この時、『これがここのルールなんだ』
なんて単純に思ってしまいましたが、これは僕だけの特別ルール。
社会人の人たちは、規定の3万円を払った上に、自分でお寿司を
差し入れていたのです。

 その事に、後々気づいて謝ると、おばちゃんは……
 「脛かじりのあんたからお金を取るってことは、あんたの親御
さんからお金取るってことだろう、それはできないんだよ。……
もちろん、社会人になって自分でお金を稼げるようになったら、
ちゃんとしなさいね。それが男の甲斐性ってもんだから……」

 学生時代、私はすべての点でこのおばちゃんに甘えっぱなしで
した。


*****************(2)******

綾瀬のおばちゃん(1)

        << 綾瀬のおばちゃん(1) >>

                     (小説)

 綾瀬のおばちゃんとは『お仕置きサークル』の仲間に連れられ
て行った錦糸町のお店で知り合いました。

 当時、まだ学生で世間知らずでしたが、好奇心だけはあって、
自分の書いたシナリオで相手の女性が演技してくれるというので
社会人の人たちに着いて行ったのです。

 その店内は薄暗いを通り越してお化け屋敷状態です。しかも、
そこに現れたのは、僕の母より年上とおぼしきおばちゃんでした
から、これはもう、がっかりで……

 『ああ、せっかく稼いだバイト代がこんな事で……』
 って、正直思いました。

 でも、やることはやって帰らないと損ですからね。
 僕の希望をおばちゃんに話したんです。
 すると、10分以上話してましたか、けっこう根掘り葉掘りと
いう感じで相手が聞いてきますから、僕もいつしか乗せられて、
身の上相談みたいにべらべらとおしゃべりしてしまいました。

 すると、突然、隣に座っていたおばちゃんが自分の膝を叩いて
……

 「あんたみたいな子がこんなとこ来ちゃダメだよ。親御さんが
心配するじゃないか。バイトで貯めたお金はもっと有意義に使わ
なきゃ。ほら、今日は私がお仕置きしてあげるからおいで……」

 って、ぶっきらぼうにこうです。

 私は一瞬面食らいました。それは私が書いたシナリオと違って
いたからです。
 でも、これがこういう処のノリなんだと思いなおして……

 「ごめんなさい」

 わざと、子供っぽい声を作って、その膝へ寄りかかります。

 「まったく、お前みたいに悪い子はいないね。勉強もしないで
バイトして、あげくその稼いだお金をこんな処で使うなんて……
とんでもないよ。親御さんに代わって私がたっぷりお仕置きして
あげるから覚悟しない」

 こう、宣言されて始まったスパンキングは、途中で短い休憩を
挟みながら30分。平手でお尻を叩かれただけなんですが、最後
は涙と鼻水で顔はぐちゃぐちゃ、サウナに入ったみたいに汗びっ
しょりというありさまでした。

 何より驚いたのは、おばちゃんの迫真の演技でした。僕の三文
シナリオなんて関係ありません。本当の叔母さんが僕を叱りつけ
てるような、そんな迫力だったのです。

 それが僕の心に響いて、僕の羞恥心は勃起してしまいます。
 すると、それを膝で感じ取ったんでしょうね、おばちゃんは、
僕を立たせ、それまで許していたパンツまで剥ぎ取ります。

 「おうおう、可愛らしいの付けて…お前、マスばかりやってる
から、こんな可愛らしいのになるの。もっと、我慢しなきゃ」
 と、僕の息子を見て、そこも叱るのでした。

 もう、やりたい放題。きっと……『この子なら、このくらいの
ことをしても怒らない』というプロの読みがあったに違いありま
せん。
 とにかく大ベテランですから……

 そして、実際、そうだったのです。
 これほど惨めなことを他人にされているのに、心が高揚してて、
お尻が限界だと片っ方の頭が訴えているのに、もう片方はもっと
強くぶたれたいと思っていたのです。
 そのアンバランスが自分でも不思議でした。

 そして、そんな欲求にまで、おばちゃんは応えてくれるのです。

 「和子、和子、」

 おばちゃんは誰かを呼びます。
 ベニヤで仕切られたような部屋でしたから、ちょっと大きな声
で呼べば店じゅう届いてしまいます。
 実際、僕とおばちゃんが楽しんでいる(?)時にも両隣の部屋か
らは色んな声や物音がガンガン入って来ていました。聞きたくも
ありませんが、そこでどんな事をしているのか、だいたいわかる
くらいだったのです。

 やがて、間仕切りのカーテンを祓って若い女性が(といっても、
おばちゃんに比べればということですが)入ってきました。

 「あんた、この子の手を押さえてて……」

 この時は、もう僕はおばちゃんの言いなりです。

 「いいかい、二度とこんな処に来なくていいように、たっぷり
とサービスしてあげるからね、しっかり受け止めるんだよ」

 立ったまま、息子も立ったままで両手を戒められ、こんな言葉
を聞けばたいていの人は後ろを振り向きます。

 すると、おばちゃんは幅広の皮ベルをしごいています。
 何をするかがわかりましたから、あとは我慢するだけ……
 もちろん、僕はお客さんですから、『それは要らない』って、
言えなくもありませんが、その勇気さえその時はなくなっていま
した。

 「ピシッ!!!」

 その痛かったこと。
 そりゃそうです。今まで散々お尻を叩かれたあとだったんです
から……

 前に鞭を受けたのは子供の時に親からです。当然彼らは手加減
しますし、散々脅してからの折檻ですから、ほんのちょっとした
力で叩いても効果てきめんというわけです。

 でも、今は、身体が頑丈になり、周りが見えるようになったの
で、そんな子供だましは意味がありません。当然……

 「ピシッ!!!」
 「ひぃ~~~~」

 ということになるのでした。

 「ピシッ!!!」
 
 「ピシッ!!!」

 「ピシッ!!!」

 「ピシッ!!!」

 結局、六回。僕はおばちゃんからシャレにならない餞別を貰い
ます。
 でも、餞別はコレだけではありませんでした。

 身なりを整えた私をおばちゃんは最後にもう一度膝の上に置き
ます。
 正直、お尻がヒリヒリしていて今はどこにも座りたくなかった
のですが、素直に従うと、おばちゃんは僕を見つめて満足そうな
笑顔です。

 「あんた、よく見ると可愛いね」
 その顔は今までの笑顔とは違っていました。
 素の顔というのでしょうか。作った笑顔ではなかったのです。
 そして、僕にこう言うのでした。

 「あんた、本当にもう二度とここにきちゃだめだよ。親御さん
が心配するからね」

 「はい」

 僕が素直に答えると……
 「いい子だ。あんた、私の息子にしたいよ」
 そう言って頭を撫でるのです。そして、ひとしきり僕の頭や顔、
肩や背中や太股なんかを愛撫してからこう言うのでした。

 「…………でも、もし、どうしてもこんな遊びがしたかったら、
一万円握って、ここへおいで……半日たっぷり可愛がってあげる
から」
 こう言って、走り書きのメモを握らせます。

 何の事はないおばちゃんの営業活動だったわけですが、ただ、
おばちゃんの言ったこの一万円、実は破格のサービス料金だった
のでした。

 「あっ、それから、それ要予約だから、必ず電話するんだよ」

 僕はおばちゃんのこの言葉を背中で聞いてその部屋を後にした
のでした。

 とにかく、その日はお尻が痛くて、総武線の電車はすいていた
のに座席には座らずじまいで帰ったのを覚えています。


***************(1)********
  

12/11 これがリアルなわけないだろう!

12/11 これがリアルなわけないだろう!

 「これがリアルなわけないだろう!」
 って、当然、思われるでしょうけど、僕の家って特殊だったの
か『初めてのお仕置き』って、僕の心の中では結構リアルな世界
なんでですよ。

 実は、あのお仕置きを受けた人はそれぞれ違っていて、従兄弟
だったり兄弟だったりするわけで……これを全部一人で引受けた
ってことではないんですが……ハレンチなことが平気(というか
大好き)な母親でしたからね。この人にかかれば『子供はお人形』。
お仕置きなんて何でもありの世界なんです。

 一方父親は、滅多に子供に手をあげたりはしません。ですから、
母親にお仕置きされそうになると嵐をやり過ごす避難所みたいに
なっていました。

 その代わり、父の処へ行くと、かなり年長になってからも、彼、
必ず幼児みたいにして僕たちをあやすんです。
 成長するにつれ、正直『うっとうしいなあ』と思うことも多く
なりますが、それでも実際抱かれてしまうと、すぐに慣れて逆に
甘えてしまいます。このあたりが『お父さんマジック』でした。

 ただ、そうは言っても、兄弟の中で一回もぶたれずに成人した
人もいませんでした。ごくごく稀にしかない事なんで、ぶたれる
とショックが大きくて、その時の事はみんなよく覚えています。

 今にして思うと、うちの親にとって子供はお人形、お仕置きは
レクレーションを兼ねていた気がするんです。
 こんなこと言うと、きっとあちこちから『そんなの不謹慎だ!』
ってことになるんでしょうけどね。うちは過保護、過干渉の親子
でしたからね、教育的にそれが正しかったかどうかは別にして、
『それだけ僕たち親子は距離が近かった』と、思って欲しいんです。

 『お仕置きありがとうございました』
 なんて、もちろん茶番劇ですよ。でも、それはそれで、親子の
スキンシップだったと思ってるんです。

**********************

初めてのお仕置き<4>

       << 初めてのお仕置き >>

 §4 鞭

 「お灸のお仕置きありがとうございました」
 正座する両親を前に私も正座してご挨拶。

 心の中はちっともありがたくないんですが、とにかく、やらな
ければお仕置きは終わりませんから仕方がありません。清美さん
もその下の双子のチビちゃんたちも、この家の子どもなら全員が
お仕置きの時にやらされる儀式でした。

 「はい、これからはいい子になりましょうね」
 お母さんのこの一言があって、やっと一息です。

 お灸のお仕置きのあとは、すえられた場所に軟膏を塗ってもら
い、またまた白いブラウス、紺のプリーツスカートに着替えます。
思えば、お仕置きのたびに着せ替えられて、この時の私は両親の
着せ替え人形でした。

 でも、大切なお人形ですからそこは大事にはしてもらえます。
お仕置きが終わった私は、しばらくの間、両親から代わる代わる
にだっこされて過ごします。

 「ほら、高い、高い」
 お父さんは相変わらず幼稚園児ののように私を扱います。
 もうそんな事されても素直に喜べない歳になっていましたが、
お仕置きから開放された安堵感からでしょうか、この時はなぜか
素直に笑顔がでます。まだ、ちょっぴりぎこちないですが、他の
子供たちと同じようにお父さんにもお母さんにも甘える事ができ
たのでした。

 すると、その抱っこの中で二人は意外なことを私に打ち明けて
くれたのでした。

 両親は私の扱いについて、最近まで悩んでいたそうなんです。

 歳もすでに11歳。他人に気を使うおませな女の子ですから、
今さら清美のように子ども扱いするより、このまま自立した少女
として育てた方がいいんじゃないかと当初は考えていたんだそう
です。
 けれど、私の成績が下がり始めたことで……

 「しっかりしてるように見えても、やはり、子供は子供だよ。
とにかく、一度、身も心も私たちが抱いて育ててやらないと……
このまま思春期に入ったらもっと大変なことになるんじゃないか」
 って、お父さんが心配したことから、このお仕置きが決まった
そうなんです。

 ところが、いざやろうという段になったら、お父さんが逃げ腰
になっちゃって、それをお母さんは「ずるい」って怒ってました。

 「でも、こうして、お仕置きも無事すんだことで、一安心だわ。
ほら、この子の目、私に甘えてるもの」
 お母さんが私を赤ちゃんのように抱いて嬉しそうに言います。

 「本当かい?そんなふうには見えないけどなあ」
 お父さんは懐疑的ですが、お母さんには確信があるようでした。

 「恵子ちゃん、あなたもいずれはお母さんになる身だから覚え
ておきなさい。どんなに厳しいお仕置きにもしっかりついてきて、
終わると、すぐに甘えられるのが本当の親子なの。あなたはそれ
に合格したの。だから、これで名実共に、あなたは清美と何一つ
変わらないこの家の娘になったのよ。あとは、たくさん甘えて、
……たんさんお仕置きをされて、……また、たんさん甘えて……
を繰り返すだけ。子どもの生活はその繰り返しだもの。それが、
何より幸せな子どもの生活だし、そうやって大人になっていくも
のなのよ。お仕置きを経験しない子は、羅針盤を積み込まないで
船出するのと同じ。幸せな航海はできないわ」

 お母さんのこんな言葉が今でも記憶に残っています。


 私とお父さん、お母さんとのじゃれあいは、その後小一時間も
続いたでしょうか。その間、お父さんは私を肩車したり、さっき
やった飛行機でお庭を走り回ってくれましたし、お母さんとは、
次の発表会で着るドレスの品定めなんかをして過ごします。

 実は経験としては前にも同じような事をした記憶があります。
 ですが、その時はまだ心が開放されてなくて、こんな晴れやか
な気持にはなれませんでした。

 今は……
 とっても厳しいお仕置きがあって、無理やり「私たちがあなた
のお父さんとお母さんです」というのを承認させられて……私は
それに何も言えなくて……
 悪い言い方をすれば、この時の私って、お父さんお母さんから
手篭めにあった娘みたいなものなんです。
 でも、そうやって自分の居場所が定まると、不思議な事ですが、
全てのことが吹っ切れて『こんなにも幸せなんだ』と感じる事が
出来るようになったのでした。


 ですが、楽しい時間というのは永遠には続きません。
 突然、お母さんとお父さんがこんな事を言い出したのです。

 「あなた、今日から始めるんでしょう」

 「そうだな、早い方がいいだろうから、今から始めようか」

 「鞭は……ケインになさいますか、それともトォーズの方が」

 「いや、一通り全部持ち込んでくれ、この子は初めてだから、
どれが合うかもまだ分からないから、一通り全部試してみよう。
あ、それから眠気覚ましのローソクは忘れないように……」

 「わかってますよ。大箱で用意しましたから大丈夫ですわ」

 いきなり始めた二人の会話が具体的に何を言っているのか私に
はわかりませんでしたが、それが私のお仕置きに使われるんだと
いうことだけははっきりとわかりましたから、私の顔はたちまち
青くなります。

 『どうしてよう。お仕置きはすんだはずでしょう』

 私の不安な顔に気づいたのでしょう。お母さんが……

 「これから、お父さんがあなたの為に勉強をみてくださる事に
なったの。三箇所もあった講演を全部キャンセルして、あなたに
つきあってくださるんだから、あなたも気を引きしめて頑張って
頂戴ね」

 「一日に三箇所も?」

 「一日って?……何言ってるの、一日であなたが元に戻るはず
ないでしょう。あなたの面倒をみる二週間で三箇所よ」

 「二!?……二週間も……(聞いてないわよ。そんなこと)」

 「その間は、あなたもお父さんと一緒にここで寝泊りするのよ」

 「えっ、私、ここで寝るの?」

 「そうよ。お父さんと一緒のお布団よ」

 「おとうさんと一緒!?」

 「そうよ、親子なんですもの。べつに問題ないでしょう」

 お母さんは簡単に片付けますが、思春期の入口に差し掛かった
娘としては、それは大いに問題です。

 『実の父親だって今なら一緒のお布団なんて無理だと思うのに』

 「嫌なの?」
 私の曇った顔を見て、お母さんが尋ねます。

 「えっ……」
 私は下を向いてしまいました。

 普段だったら『嫌です』ってきっぱり言えてたかも知れません。
でも、たった今、本当のお父さんになったばかりの人の願いを、
今度は『嫌です!』とは言いにくかったのでした。

 「やってあげなさいな。お父さん、あなたのために講演を全部
キャンセルして、一週間も前から下調べなさってたわ。……私が
『そんなことなさるより家庭教師を雇った方が安上がりだと思い
ますけど…』って申し上げたら、怖い顔なさって、『馬鹿、お金
の問題じゃない。目の前で娘が崖から落ちそうになっているのに
他人を頼んでどうするんだ。責任のない他人に任せられる話じゃ
ないだろう』ですって……久しぶりにお父さんの怖い顔を見たわ」

 お母さんがお父さんをプッシュします。
 すると、そばで聞いていたお父さんが乗り出してきて……

 「どうしても、嫌だったらそれは無理にとは言わないよ」

 見かねたお父さんが譲歩してくれたのですが、今度は私が……

 「大丈夫です。……でも、変なことしませんよね?」
 なんて言いますから……

 「変なこと?」
 お父さんは少し考えてから……
 「当たり前じゃないか。そんなに私が信用できなければ、また
お尻叩きから始めてもいいんだよ」
 と、笑顔です。

 ですから、その件は仕方がありませんでした。

 ただ、問題はこれだけではなかったのです。
 むしろ『お父さんと一緒に寝る』なんてことはささやかな問題
なんだと…私は、その後、気づかされることになるのでした。


 私はお父さんにお姫様だっこされて書斎へ戻ります。
 すると、お父さんから下ろされた処に、ちょっと小ぶりのテー
ブルが用意されていましたから、私はてっきり、これで勉強する
ものと思ったのです。

 ところが……
 「何してる、こっちだよ」
 お父さんが、『こっち』と言って指差すのは、お父さんが普段
使っているデスク。大きな天板の上に普段だったら沢山の資料が
山積みになってる場所だったのです。

 でも、気がつけば、そこは綺麗に取り片付けられていました。
さらに近づくと……いつもの資料の代わりに、今日は、私が普段
やっている参考書や問題集なんかが置いてあります。

 「さあ、座って」
 椅子も普段お父さんが使っているものでした。そこに、何枚も
座布団が敷いてあります。

 恐る恐る座ってみると、目の前にはお父さんが手書きした国語
や算数の問題が数枚並べてありました。

 「椅子の高さはどうだい?君がお勉強しやすい高さにするから
ね」

 お父さんの声がすぐ隣りからするのでそちらを向くと、そこに
お父さんの顔の、どアップが……

 「(わあ!ビックリした)」

 お父さんは普段お母さんが使わない足踏みミシンの椅子を隣り
に持ち込んで座っていたのです。その距離30センチ。普通の息
だって顔に掛かりそうな至近距離でした。

 お父さんとの距離があまりに近いので、椅子の高さより本当は、
『もう少し、離れて』って、言いたかったのですが、たった今、
お仕置きされたばかりの私はその言葉を飲み込んでしまいます。
 おかげで、それから先も親子はお互いこの体勢で勉強する事に
なるのでした。

 「いいえ、これでいいです」
 私は少し遅れて椅子の高さの返事をします。
 すると……

 「だったら前にある問題を解いてごらん。時間は気にしなくて
いいから……ゆっくりでいいよ」
 お父さんはご自分で作成した問題を私に解けと命じるのです。
もう、椅子に座ったらさっそくテストでした。

 ところが、コレ……
 「……えっ……」
 私は問題を読んで面食らいます。

 学校で受けているテストでは解ける問題の方が多いのにここに
ある問題は、どれも習ったことのある単元で、見覚えのある問題
なのに全然解けないのです。

 「……(えっ、これどういうことよ)……」

 「8割といいたいけど、7割解ければ合格にしてあげるからね」
 お父さんは言いますが、とても、そんなにたくさん解けそうに
ありませんから慌てます。

 私は段々泣きそうになりました。いえ、泣いてしまいました。
 だって、こんなに解けないテストを受けたことがありませんで
したから……

 でも、そりゃそうなんです。
 だって、お父さんは一週間も前から私のテスト結果を解析した
上で、担任の先生にも面会して、私のウィークポイントを徹底的
に洗い出し、さらに一ひねり加えて問題を作ったのです。
 つまり、これは今の私専用のテストだったわけです。

 ですから……

 「35点に……こちらは45点。とても100点満点のテスト
結果とは思えないな。……こっちはちょっとましで……それでも
60点か。……お母さん、こりゃあ二週間じゃ足りないかもしれ
ないよ」
 何だか勝ち誇ったようなお父さんの声を、私は恥ずかしそうに
聞くはめになるのでした。

 いえいえ、事はそれだけではすまなかったのです。

 「大丈夫ですよ。この子、まだ寝てるのよ。ここらで少し目を
覚まさせた方がいいわ」
 背後にお母さんの声がしますから、振り返ると……

 お母さんは部屋の中央に置かれたテーブルの脇にいました。
 さきほど、私が自分の勉強机じゃないかと思ったあれです。
 その時はテーブルだけポツンと置いてありましたが、今度見た
時は、テーブルの上に毛布が丸めて置いてありますし、隣りには
キャスター付きのワゴンがあります。

 「……(あれは、お浣腸の時の)……」

 そうなんです。このワゴン、お浣腸の時、節さんが押して荷物
を運んできたあれだったんです。
 当然、嫌な予感がします。

 ワゴンには、籐でできた細いステッキのような棒や幅広の革の
ベルト。さらには、大きめのおしゃもじや使い古しのヘアブラシ
なんかも乗っています。

 それを見た私は……
 『よかった、お浣腸じゃないんだ。でも、あれ。何だろう?』
 と思ったのです。

 私はともかくここでお浣腸が行われないことだけが喜びでした
から自然と笑顔がこぼれます。でも、私にとって事態はそんなに
楽観できるものではありませんでした。

 「そうだな、初日のことだし、今日の予定は潰れてもあとから
取り返しがきくから、最初はとびっきりのをやってみるか」

 お父さんのこの一言で私の運命が決まってしまいます。

 その直後、私はお母さんに呼び付けられますから、怪訝な顔で
行ってみますと……
 「これ、穿きなさい」
 いきなりニットのパンツを渡されたのでした。

 「えっ?……まだ、寒くないからいらない」
 こう言って断ると……お母さんは笑いながら、
 「そういう事じゃないわ。寒さからじゃなくて、お父さんから
あなたを守りたいの」

 「?????」
 私にとってお母さんの言葉はまったく意味不明でした。

 というのも、私は一度としてお鞭のお仕置きを経験したことが
ありません。あのワゴンに乗っていたお道具が私のお尻を励ます
ものだなんて知らなかったのです。

 清美さんは鞭の経験者でしたが、私はそのお仕置きを手伝った
ことがありませんし、清美さん自身もその事をあまり語りたがり
ませんから、私にその情報は伝わりません。

 というわけで、私はこの日までお鞭のお仕置きに関する限り、
ヴァージンだったのです。

 「いいから、穿いて。ショーツの上からじゃ、あなたが可哀想
だわ。……お父さんのはもの凄く痛いのよ」
 お母さんの言葉で、私はこの時初めて自分がこれから鞭打たれ
ようとしていると気づくのです。

 「えっ!嘘でしょう!」
 今頃驚いても手遅れなのですが……

 「だって、お仕置きは終わったって言ったじゃない」
 お母さんに泣き言を言いますと……

 「これはお仕置きじゃないもの。お父さんがあなたを励まして
くださるの」

 「だって、罰を受けるの同じじゃない」

 「同じじゃないわ。お仕置きは罪の清算だから、今さら謝って
も取り返しはつかない。どのみち決められた罰は受けなきゃなら
ないけど、励ましの方はこれからの事だもの。あなたが注意さえ
していれば、新たな罰にはならないわ。あなたの頑張りで減らせ
ることだもの。同じではないのよ」

 変な理屈です。お仕置きとどこがどう違うのか、狐につままれ
たみたいなのですが、でも、これって両親の間では筋が通ってる
みたいでした。

 「恵子、おいで」

 お父さんに呼ばれて行ってみると、さきほどのテストで、私が
ケアレスミスをした処ばかりを指摘します。その箇所3箇所。

 「今度から、こんな事が起きないように注意するんだよ。注意
さえしていれば間違わずにすむところなんだから……」
 と、ここまでは穏やかに話しを聞いていたのですが……
 次の言葉に衝撃を受けます。

 「この三箇所を忘れない為に、鞭を三つ。お尻に受けるんだ。
これからもこんな間違いをしでかすたびに鞭を受けなきゃならな
いからね、気をつけるんだよ」

 「えっ!!!!そんなの聞いてないよ」
 私は甘えた声を出しますが……

 「大丈夫だよ。清美だって、下のチビ二人だって、そうやって
お勉強してるんだよ。恵子にできないはずないじゃないか」

 お父さんにこう言われると、たしかに思い当たる節がありました。
そうなんです。これまで私だけが特別扱いだったから気づかない
だけ。それが取り払われただけだったのでした。

 「さあ、いいから、あのテーブルでうつ伏せになるのよ」

 お母さんは私をせき立てます。
 私のつかの間の天国はあっという間に地獄へと逆戻りでした。

 仕方ありません。覚悟を決めて、私はテーブルに乗った毛布を
どけようとしましたが……

 「それはどけちゃだめよ」
 お母さんがたちまち注意します。
 「そこにお臍を乗っけて、うつ伏せになるの」

 私はお母さんの言う通りにします。
 すると、私のお尻が他の部分より高くなって、お父さんの方は
お尻に狙いを付けやすくなります。
 一方私はというと、踏んづけられたヒキガエルみたいに絶望的
で屈辱的な心持ちでした。

 「まだ慣れない事だから、ビックリして間違いがあってもいけ
ないだろうし、ハンカチを噛まして、両手を押さえておいてくれ」

 お父さんはお母さんに対して冷静に指示を出します。

 おかげで、私はハンカチで猿轡を噛まされ、両手を拘束されて
惨めさが加速してしまいますが、安全のためには仕方のないこと
でした。
 実際、私の両手を押さえたお母さんがこんな事を言います。

 「しっかり、歯を喰いしばって頑張るのよ」

 そして、その通りになったのでした。

 お父さんは、私の短いスカートを捲って跳ね上げると、先ほど
穿いたばかりのニットのパンツに、ケインの先をチョンチョンと
当てます。
 それが不安をかきたてた次の瞬間。

 「ピシッ」
 鞭が一閃(いっせん)して私のお尻に当たります。

 「ひぃ~~~~~」

 目から火花。背筋に電気が走り、それが頭のてっぺんから抜け
ていったと思ったら、身体が海老ぞりになっていました。

 11年の短い人生ですけれど、今までに、お尻がこれほど強い
衝撃を受けたことはありません。
 その衝撃があまりに凄かったので、私は泣くことさえすぐには
できなかったのでした。

 幸いニットのパンツのおかげで、この時は、ケイン特有のヒリ
ヒリする痛みや火ぶくれ水ぶくれにはならずにすみましたが、二
階から落ちて尻餅をついた。そんな感じの衝撃だったのです。

 そして、もう一閃(いっせん)……
 「ピシッ」

 「ひぃ~~~~~」
 
 その衝撃は一発目の余韻がまだお尻に残っていますからさらに
強烈です。お尻を叩かれただけなのに、身体が一瞬浮き上がった
気がしたほどでしたから。
 
もちろん、目からの火花も背筋の電気も一発目と同じでした。
ただ、二回目はそれが両手両足の神経にも作用して、電気の抜け
る場所が頭のてっぺんだけでなく、手の指、足の指からも抜けて
いったのです。

 「……(死ぬ~~~もうしないで)……」
 私は心の中で叫びましたが、無駄でした。

 さらに、もう一閃(いっせん)……
 「ピシッ」

 「ひぃ~~~~~」

 今度は歯が浮いてジーンとしびれて電気が顎からも抜けて行き
ます。
 いえ、もう一つ、私の大事な処にもその衝撃はやってきたので
した。

 一旦外に向った電気が今度は別のルートから子宮へ向って殺到
します。
 『子宮がジンジン痺れてる』
 それが分かるなんて、もちろんこれが初めての経験でした。


 この時のお父さんの励ましは約束通り籐鞭で三回だけ。
 終わったから、お母さんが猿轡を外してくれたのですが……

 「もう、しない。ごめんなさい。お父さんにもうしないように
言って、お願い、お願い」

 私は怯えて震えて目の前のお母さんに泣きつきます。
 こんな醜態見せたくありませんが、自然にそうなってしまった
のです。これはそのくらい怖いくて痛いお仕置きでした。

 ですから、テーブルを離れると、すぐにお母さんに抱きついて
そこで抱かれて小さくなっていました。
 もちろん、お父さんの顔なんて絶対に見たくありません。

 そんな私を気遣ってお母さんは一時期とっても優しくしてくれ
ました。泣きついた私の身体を優しく抱いてくれましたし、その
手で私の目を被い、お父さんの姿が見えないようにもしてくれた
のです。
 しかし、それもまた長い時間ではありませんでした。

 「あなたをこのままずっと抱いててあげたいけど、そうはいか
ないわ。あなたにはお父さんの力が必要なの。お父さんの力なし
にあなたは生きていけないわ。怖いからって、縮こまってくても
幸せにはならないのよ。飛び込まなくちゃ。『男は度胸女は愛嬌』
って言うけど、本当は女の子の方こそ度胸がないと生きてはいけ
ないのよ」

 私はお母さんに説得されて、お父さんのもとへ戻ります。

 いえ、正確には戻る決心をしただけ。どうしても自分の力では
そこへ行けないから、お母さんに抱かれたまま、お父さんの膝の
上に移されたのでした。

 お母さんから私を受け取ったお父さんは怒ったりしません。

 「痛かったかい。今度からはもうそんなに強くぶたないからね」

 椅子に座ったお膝の上に私を乗せて何度も何度もなだめてくれ
ました。
 そうやって、一時間。お勉強はしないでひたすら頭をなでなで、
ほっぺすりすり、お手々やあんよをもみもみ、といいった時間を
過ごしてから、また勉強を始めるのでした。


 それから二週間。
 私は、朝から晩まで、寝床までもお父さんと一緒という生活で
した。それだけでもきっと拷問なのかもしれませんが、勉強して
いる時は事態がもっと深刻でした。
 
 鞭だって、初日ほどきつくはなくても毎日のようにテーブルに
しがみつかなければなりませでしたし、ちょっとでも眠気を催す
と、蜀台で燃えている蝋燭の蝋涙が手の甲に落ちてきます。

 勉強時間中はお父さんとの真剣勝負。ちょっとした気の緩みも
許されなかったのです。

 蝋涙ってお灸ほどではありませんが、そりゃあ熱いです。揺ら
めく炎の下から垂れてくるのは不気味です。
 ですから、大人になってSM雑誌にこれと同じような事が載っ
ているのを見て時は笑ってしまいました。思えば親子のお仕置き
ってSMみたいなものなのかもしれません。

 だって、お父さんと一緒にそんな拷問の時間を過ごすうちに、
最初は嫌いだった狭くて葉巻臭いその空間が次第次第に居心地が
よくなっていったのですから。

 そして二週間が終わる頃には、お父さんのふかふかなお膝の上
と飛び切り痛い鞭と熱い熱い蝋涙がなければ勉強できない身体に
なっていたのでした。

 ですから、今度はそんなお父様中毒から抜け出るのに、また、
苦労する羽目になるのでした。


******************(4)****

初めてのお仕置き<3>

        << 初めてのお仕置き >>

 §3 お灸


 お義父様はお尻叩きの終わった私の両脇を持ち上げて高い高い
したり、頬ずりしたり、くすぐりっこしたり、まるで幼女のよう
にスキンシップします。

 すると、まだ子供だったんでしょうね。お尻叩きのお仕置きの
直後ですが、それによってお義父様が嫌いになったわけではあり
ませんから、それにはたっぷりの笑顔をお義父様にサービスして
お付き合いしたのでした。

 「さあさあ、いつまで甘えてるの。そんなに抱っこして欲しい
なら私が隣りの仏間でたっぷりやってあげるわよ」

 お義母様にこう言われて、私の心臓がその瞬間「ドキッ!」と、
特別な脈を打ちます。
 反応したのは、『仏間』という言葉でした。

 今は仏間のある家も少なくなりましたが、昔は仏様やご先祖様
を祀る部屋が必ずあって、その仏壇の引き出しにはこれまた必ず
艾が常備されていました。

 そう、反応したのは仏間から連想されるお灸のお仕置きです。

 昔の子供にとって『仏間』という言葉は『お灸のお仕置き』と
同義語みたいにして脳裏にインプットされていましたから『仏間』
と聞いただけで反応する子も少なくありませんでした。

 この建物はもともとお義父様のおばあさまにあたる方が隠居所
として使っておられたので隣りには立派な仏間があります。実際、
その部屋で清美さんがお灸がすえられたのも一度や二度ではあり
ませんでした。

 私たち子供にとって仏間へ連れて行かれるということはお灸を
すえられることを意味します。ですから……

 「さあ、恵子ちゃん、仏間へ行ってパンツをとり替えますよ」
 とお義母様に言われても、私の耳には……
 『さあ、恵子ちゃん、仏間へ行ってお灸をすえますよ』
 としか聞こえなかったのでした。


 楽しい時間は長続きはしないものです。
 私はお義父様のお膝を降りると、渋々お義母様のもとへ……

 すると、お義父様が……
 「私も行くのかい?」
 と言いますから……

 「何、おっしゃってるですか、今さら……普段の事なら私でも
やってしまいますけど、今日はこの子にとって初めてのお仕置き
なんですよ。『私はここの家の娘になったんだ』って実感させる
大事な日なんです。一家の主人であるあなたがやらなきゃ示しが
つかないじゃありませんか」

 お義母様のボルテージはあがります。
 お義父様はそれに呑まれたみたいでした。

 「あなたはここでパジャマを着替えて、10分くらいしたら、
隣の部屋へ来てください。それまでに全てこちらで用意しておき
ますから」

 お義母様は私の手を引くと、鼻息荒く部屋を出ます。

 一見すると、男の強い時代ですから逆のように感じられるかも
しれませんが、実際は、多くの家で父親より母親の方が女の子の
お仕置きには積極的だったのです。

 生理の違う男性は女の子が泣けば嘘泣きでもすぐに真に受けて
『可哀想、可哀想』ってしてくれますが、同性である母親は自分
も同じ経験をしてきていますから、そうは簡単には騙されません。
 娘が何を考えているのか、男性よりはるかによくわかるんです。
ですから、腹黒い娘の言動に怒りがこみ上げることも多くて……

 『お父様が帰ったらお仕置きします』
 なんて、お父さんを持ち出しては脅しをかけてきます。これは
実の母もお義母様も同じでした。

 ただそのためには、娘にとってお父さんという存在が怖くなく
ては意味がありませんから、何か理由のある時に、母親がこんな
怖いお仕置きを企てるのでした。

 一方、お父さんはというと、『娘を厳しく躾けなければ……』
なんて考える人はむしろ稀で、大半の人はただただ娘が抱きたく
て仕方がないみたいでした。

 ただ、そんな大人たちのからくりに私が気づくのはもっと成長
してからのこと。
 11歳のこの時は、お父さんもお母さんも…いえいえ、大人は
皆『大きくて』『強くて』『偉い人』だと思い込んでいました。

 仏間に入るなり、そんな偉い人の一人であるお義母様から…
 「これに着替えて……」
 って、またも体操服を渡されます。

 もちろん、濡れたパンツももちろんお取替え。女同士ですから
着替えそのものに問題はないのですが……
 やはり気になるのは、節さんが私たちのそばで準備している艾
やお線香の匂い。

 『いやだなあ』
 節さんを恨んでも仕方ありませんが、明るい顔の節さんを見る
と、憎しみがこみ上げてきます。
 幼い頃に一度でも経験したことのある人はたいていこの匂いに
トラウマを持っていますから敏感です。

 私はまだ何もされていないのに、涙が溢れてきてこぼれそうに
なっています。
 立っているだけでまたオシッコを漏らしそうです。
 実の母にこれをやられたのははるか昔の幼稚園時代。
 あれから六年も過ぎているのに、恐怖の記憶は決して色あせる
ことなく、まるで昨日のことのように思い出すことができるので
した。

 そんな私に気づいたのでしょう。お義母様が声をかけます。
 「どうしたの?…怖いの?……怖くないって言ったら嘘よね。
私だって、母から何度もやられたのよ。お風呂に一緒に入った時、
あなたも私の背中見たでしょう。あれって一回や二回じゃあんな
にならないのよ」

 『えっ!あれって……そうなんだ』
 私は声を出さずに驚きます。
 確かに一緒にお風呂に入った時それを見かけたのは事実です。
でも、それはあまりに見事な灸痕でしたから、きっと別の何かだ
と思っていたのです。
 それに比べれば、私の火傷の痕なんてちっぽけなもの。近くに
顔を近づけなければ見えないほどでした。

 「どうしたの?今頃驚いてるの?……昔は保険制度がなくて、
お医者様の治療費がとっても高かったから、僻地に住んでいたり
貧しかったりするとそうたびたびお医者様にかかれないでしょう。
自分たちで何とか治療しようとしてこうなったの。べつにこれが
全部お仕置きでついた訳じゃないのよ」

 「…………」
 私は少し胸をなでおろします。

 「何だ、安心しちゃった?……自分も、あんな風ににされるん
じゃないかと思ったのね。……大丈夫よ。昔は毎日のようにすえ
られる子もいたけど、今は『お医者様と旦那様以外にお尻は見せ
ない』なんて時代じゃないもの。ビキニの水着だって、ちゃんと
着れるわ。……それにね、そうたびたびやっていたら、慣っこに
なってしまって、お仕置きの効果が薄れるでしょう。……だから、
お灸のお仕置きはここぞと言う時だけのとっておきなの。………
分かったかしら?」

 お義母様はこう言っておいて私の顎を二本の指で持ち上げます。

 「……ただし、今日がその『ここぞという時』なのよ……」

 お義母様は不安げな眼差しの私の顔を覗き込んで微笑みます。
 すると、女の直感でしょうか。背筋が寒くなります。
 『この子、まだお灸でいけそうね』
 ひょっとしたらそんな事を思ったのかもしれません。
 お義母様に見つめられると、なぜか白雪姫の継母のイメージが
だぶるのでした。

 「大丈夫よ。ほかの子もみんなやってきたことだもん。あなた
だけ耐えられないなんてことはないわ」
 こう言われれば……

 「はい」
 こう答えるしかありません。

 そうこうするうち……
 「もう、いつでもいいですよ」
 という節さんの声。準備はすっかり整ったみたいでした。


 私が節さんの声の方を振り向くと……そこには子供用の小さな
敷布団が敷かれ、傍らには仏壇から拝借したお線香や線香たて、
マッチなどと共にお盆の上に金平糖ほどの小さな艾が十個ほど、
三角錐の形に綺麗に整えて並べてあったのです。

 そのお盆をお義母様に見せながら節さんが尋ねます。
 「奥様、大きさとしてはこのようなものでよろしいでしょうか」

 「ええ、けっこうよ。このくらいの年恰好の子にはそんなもの
でちょうどいいわ。……あと、主人を呼んできてちょうだい」

 お義母様は艾の大きさを納得して、節さんがお義父様を呼びに
行かせます。いよいよ私へのお灸が始まるのでした。

 「恵子さん、ここでもご挨拶がありますよ。ちゃんと正座して、
両手を着いて、頭を下げるの」
 お義母さんは畳の上でのお辞儀の仕方を教えてくださいます。
 「言葉は同じ。『私の不始末にお灸のお仕置きをお願いします』
って、これだけでいいわ」

 たしかに子供の方から『お仕置きをお願いします』だなんて、
変かもしれませんが、これは我が家では大事な儀式でした。
 もし、拒否すると別のお仕置きが追加されますから、子供達に
してみれば否応なしだったんです。


 緊張した空気の中、お義父様が部屋に現れます。
 いつものようににこやかな表情。まるで、ここで何が行われる
のかを知らないようなやさしい笑顔でした。

 そう言えば、私、このお義父様が怒った顔をしたのをほとんど
見た事がありません。いつでしたか……

 「私はこのお家で一番偉い人だから、私が怒ってしまったら、
子供たちの逃げ場がなくなるでしょう。それはお仕置きより辛い
ことだからね。なるだけ怒らないようにしてるんだ。…お父さん
だって子供たちを叱りたい時はあるんだよ。だけど、そういう時
はね………たいてい『お母さんに頼むんだよ』」
 私を抱き上げて、嬉しそうにこうおっしゃっていました。
 最後の言葉は小声で耳元で内緒話をするように……

 もともと、我が家のお仕置きは、お義父様やお義母様が激情に
駆られて子どもを折檻するというケースはほとんどありません。
約束事を守らない子が約束に従って罰を受ける。大半がそんな形
のものだったのです。

 さて、話を戻しましょう。

 正座した私の前にお義父様とお義母様が並んで正座します。
 もちろんこれは私がご挨拶するのを期待してのことですから、
私はその期待に応えなければなりませんでした。

 「『私の不始末にお灸のお仕置きをお願いします』」

 私は三つ指をついてお仕置きをお願いします。
 すると、お二人は顔を見合わせてお互い微笑んでいらっしゃい
ましたが、そのうちお義父様の方が……

 「頼まれてしまいましたね。それでは仕方がないので、やって
あげますか」
 少し悪戯っぽい笑顔で立ち上がります。
 そして、まだ座っていたお義母様に向って……

 「どうします?私が最初に押さえましょうか?」
 と尋ねますから、お義母様も……

 「そうですね。最初の方がきついですから、お父さん、やって
いただけますか」
 こう言って、立ち上がったのでした。

 話が決まったみたいなので、『私はどうすればいいのかしら』
と思って、お義父様の姿を探して後ろを振り向こうとしたまさに
その時です。
 何の前触れもなく、私は背後から襲われます。

 「いやぁ!!」
 悲鳴は不可抗力です。

 後ろから私の両脇に両手を入れてきたお義父様が、私の両方の
太股を鷲掴みにして抱き抱えます。

 「えっ!」
 驚きと同時に私の身体がたちまち宙に浮き上がります。

 「…………おとうさま!」

 後ろを振り返ってお顔を確認しましたから驚きは一瞬ですが、
心臓が止まるほどの衝撃を受けました。
 おまけに、その格好は幼児がおトイレをする時にやってもらう
のと同じ姿なのですから、恥ずかしくて仕方がありませんでした。

 そんな私の気持を知ってか知らずかお義父様はその格好のまま、

 「ブ~~ン」

 飛行機のつもりでしょうか、部屋を一周してから敷かれていた
子供用の布団の上に胡坐をかいて座ったのです。
 そして、その胡坐の中に私を置いて、こんな事を言うのでした。

 「これからお灸をすえるけど、それがすんだら、私のことは、
『おとうさん』だ。『さま』を付けちゃいけない。お義母様も、
これからは『おかあさん』だよ」

 「???」
 私はその意味がわかりませんでした。私は、よかれと思って、
『お義父様』『お義母様』と呼んでいたのですから。
 でも……

 「『様』ってつけるのは丁寧でいいのかもしれないけど、それ
って『本当のお父さんお母さんとは別の人』って意味で使われて
るみたいで余所余所しく響くからね。私も、お母さんも、そんな
呼ばれ方、本当は好きじゃないんだ。私たちはね、恵子ちゃんの
本当の『お父さん』『お母さん』でいたいから、私たちのことは
『おとうさん』『おかあさん』って呼んでほしいいんだ。………
いいかい?」

 「はい、おとうさま…いえ、お父さん」
 私は痛いところをつかれました。
 亡くなった両親とお二人を分けて呼びたいという思いが私の心
の中にあったのはたしかなのですから。

 「これから、お灸をすえるとね、君の身体には火傷の痕が残る。
それは小さいけど生涯消えないから、君はこれから先、私たちを
ずっと恨み続けるかもしれないけど…その傷は、私とお母さんが
背負い続ける十字架でもあるからね。私たちが、君を本当の娘と
して生涯守り続けるという証でもあるんだ」

 「…(えっ!うそ!この傷って消えないの?嫌だそんなの)…」

 私は、この時、お義父様から何か凄いことを言われているとは
思っていたのですが、11歳の馬鹿娘に理解できたのは……これ
からお義父様の事は『おとうさん』お義母様の事は『おかあさん』
と呼ばなければならないという事とこの傷が生涯消えないという
こと。この二点だったのです。

 「これからは、甘えん坊するのも、お仕置きで泣くのも、私と
お母さんの二人だけだ。私たち二人だけが、この世で唯一の君の
お父さん、お母さんなんだからね」

 「……(そんなこと言ったって、本当のお父さんとお母さんを
忘れられないよ)……」
 私はそう思いましたが、女の子の世界というは、何事によらず
融通とお付き合いの世界ですから、後先考えず、あっさりとこう
言ったのです。

 「はい、おとうさん」

 「ありがとう。これからはずっとそう呼んでくださいね」
 私はお父さんの満足そうな顔を見るとほっとします。
 そして…

 「お母さんもいるよ。……これからは、お義母様じゃなくて、
『おかあさん』だ」

 「はい、おかあさん」

 すると、お母さんも笑顔で……
 私はこれで八方丸く収まったと思って安堵したのですが、当然
のことながらこれからが大変だったのです。

 「それでは始めましょうか。……まず、あんよを前に出して」

 お母さんの指示に従ってお父さんの胡坐の中でも正座していた
足を投げ出すと、お父さんがいきなり私の上半身を羽交い絞めに
してお母さんがブルマーとショーツを太股へ引きずり降ろします。

 「(あっ)」
 両親のあまりの早業に私は声をたてる暇さえありませんでした。

 「(あっ)」
 今度は、いきなりお母さんが私の身体を裏返しにします。
 私は、『お尻が危ない』と思いましたが、そうではありません。

 「ああ、これね。あなたが、昔、すえられたっていうのは……」
 お母さんは、かつて実母にすえられた灸痕を確認したかったの
です。

 そして、そこを指で何度もなでなですると……

 「ここは、残しておきましょうね」
 そう言って、再び私の身体をひっくり返します。

 当然、私のお臍の下は、二人に丸見え。割れ目だってくっきり
見えていますが……

 「…………」
 でも、私にはどうすることもできませんでした。泣くことも、
笑うことも、ひょっとしたら驚いた表情さえしていなかったかも
しれません。
 ただ、ただ、成り行きを見守るしかない。この時はそんな感じ
だったのです。

 昔の事ですから、お灸を子供のお仕置きに取り入れている家は
何も私の処だけではありません。身体検査の日には、女の子でも
お灸の痕が見られる子が何人もいました。
 ただ、うちはここからが厳しかったのです。

 お母さんは脱脂綿に消毒用アルコールを含ませると、私のお臍
の下の膨らみを丹念に拭き清めます。

 「あっ……」
 思わず声が漏れました。

 これって直接的なお仕置きではありませんが、そこを拭き取る
事で『お灸をすえるのはここですよ』と宣言されてるようなもの
ですし、子どもは体温が高いので大人以上にアルコールを塗られ
た処がスースーします。

 おかげで、まだ艾も乗せられていないというのに緊張感だけは
MAXで、私は思わず起き上がろうと上半身に力を込めましたが、
そこはお父さんの太い腕が羽交い絞めにして押さえ込んでいます
から、それこそピクリともしませんでした。

 この時、上半身はお父さん。腰の辺りはお母さん。足首もすで
に節さんによって抑えられていましたから、私の体は大人三人に
よってどのみちどうにもならないほど完璧に押さえこまれていた
のでした。

 「あなたも、清美のお灸を見学したことがあるから知ってるで
しょうけど、我が家ではお灸のお仕置きの時は懺悔をする決まり
なの。私の言う通り、懺悔するのよ…………」

 「………………」
 私はおかあさんに言われて、頷いてみせましたが……

 「なあに、その横柄なお返事は…ちゃんと『はい、おかあさん』
って言えないのかしら?」

 お母さんに睨まれましたから、慌てて……
 「はい、おかあさん」

 「でしょう。わかってるじゃない。だったら、そんな横柄な事
しないの。そんな事してると、ここへ乗せる艾の数が増えますよ」

 お母さんは私のお臍の下、もうすぐ下草がはえ始める膨らみを
指でじらすようになで続けています。
 それは、お灸をすえられる子供にとってはくすぐったくて怖い
出来事だったのです。

 「『私は、1学期、怠けていて、お父さんお母さんをがっかり
させるような成績を取ってしまいました』…………言ってごらん
なさい」

 「私は、1学期、怠けてお父さんをがっかりさせる……」

 「お父さんだけじゃなくお母さんもよ」

 「あっ……お母さんをがっかり……」

 「最初からよ」

 「私は、1学期、怠けていて、お父さんやお母さんをがっかり
させるような成績を取ってしまいました」

 「『二度とこんな事が起きないように、沢山お灸のお仕置きを
して、私が目が醒めるようにしてください』」

 「沢山お灸のお仕置きをして……」

 「『二度とこんな事がおきないように』が抜けたわよ」

 「……二度とこんな事が起きないように、沢山お灸のお仕置き
をして…………」

 「『私が目が醒めるようにしてください』」

 「私が目が醒めるようにしてください」

 「『お願いします』」

 「お願いします」

 私はようようのことで、おかあさんからの口移しの懺悔を言い
終えます。

 すると、おかあさんはすでにべそをかいてる私の顔を刺すよう
な鋭い視線で睨みつけると、節さんが用意してくれた艾の一つを
指で摘んで、私のお臍の下の膨らみに乗せます。

 「(あっ!!!)」
 私はもうこの時点で、身体じゅうに震えがきていました。
 もちろん寒かったからではありません。怖かったからなんです。

 最初の艾は、身体の中心線、蟻の門渡りと呼ばれる場所に置か
れます。
 そして、すでにお線香立てで煙を立てていたお線香を一本摘み
上げると…吐息で灰を落とし、火のついた赤い部分をさらに赤く
してから艾の小山に移しかえます。

 「(あっ!!!)」

 艾のお山は頂上が一瞬赤くなり、それがすぐに黒くなって消え
たように見えますが、火の手はお山の中を通って、やがて私の肌
に食いつきます。

 「いやあ~~~~」

 柔肌を直接焼かれるわけですから、そりゃあ熱いです。
 いえ、熱いというよりむしろ痛いと言うべきかもしれません。
錐で揉まれているような強烈な痛みが10秒ほど続きます。

 「ひぃ~~~~~」
 たった10秒。でも、それは強烈な10秒でした。

 「どう、少しは応えたかしら?……でも、一つじゃわからない
わね。……もう一ついきますよ」

 お母さんはすでに嗚咽でひくひくやっている私の事など眼中に
ないとばかり、二つ目の艾を一つ目の右横に置きました。

 やり方はさっきと同じです。やはり、お線香を一度吐息で吹い
て熾(おこ)してから…………

 「いやあ~~~~もうしません。もうしません。……」

 私は無駄な泣き言を繰り返しましたが……

 「そうよ、もう二度とこんな恥ずかしい成績取らないで頂戴。
でも、そのためには、今の惨めな自分をよ~~く覚えといてもら
わないと……そのためには、二つじゃ足りないわね」

 お母さんはさう言って三つ目を最初の灸痕の左横に置きました。
 あとは同じです。

 「いやあ~~~~ごめんなさい。悪い子でした。もうしません。
許して、許して、許して、ごめんなさい。ごめんなさい。……」

 私は最初こんな惨めな雄たけびをあげるつもりはありませんで
した。我慢できると思っていたのです。でも、もうこれは自然に
そうなったといった感じで、自分の決心とは関係なく、途中から
は『ごめんなさい』の連呼になったのでした。

 そして、四つ目。元に戻って最初の灸痕の処でもう一度です。

 「いやあ~~~~もうしないで、ごめんなさい。悪い子でした。
もうしません。許して、許して、ごめんなさい。ごめんなさい…」

 結局、お母さんが四つ。
 選手交代で、今度はお父さんからもお母さんがすえたすぐ下に
四つ。同じ要領ですえられます。

 二人で合計八回。
 私は艾に火がつけられるたびに『ごめんなさい』を連発。七転
八倒の火炎地獄を経験するはめになるのでした。


 最後に…
 「あらあら、あなたってよっぽどおしもにしまりがないのね」
 お母さんの声が遠くで聞こえていましたが、もうその時は何も
する気力がありませんでした。

 普通なら恥ずかしさのあまり両手で顔を被うところでしょうが、
そんな事さえもせず、私はただぼんやりと天井を見つめるだけで
した。

 「よく頑張ったね」
 お父さんが私の頭を撫でて微笑み、お母さんが濡れたショーツ
を取り替えます。
 されるがままの赤ちゃん状態ですが、その時はそれが不思議と
楽しいと感じてしまうのでした。

*****************(3)******

初めてのお仕置き<2>

       << 初めてのお仕置き >>

 §2 お尻叩き

 私はお義母様(おかあさま)から身なりを整えてもらいます。
 
 まだ少し放心状態の私に任せていたらいつまでかかるか分から
ないと思われたのでしょう。てきぱきと体操服が脱がされ、通学
の時によく着る白いレースのブラウスと丈の短いフリルスカート
が次の衣装です。

 丁寧に櫛を通して髪がセットされ、涙に濡れて腫れぼったい顔
も蒸しタオルが消し去ってくれました。

 そこにはお浣腸の時の修羅場はどこにもありません。
 お義父様の書斎へ行く前、お義母様が私を普段の恵子に戻して
くれたのでした。

 それだけではありません。お義父様の処へ行った時のご挨拶を
この場で予行演習させられたのです。

 「いいこと、お父様の前に出たら……まず足元に膝まづいて、
両手を胸の前に組むの。清美もやってたら見て覚えてるでしょう。
……ここで、やってごらんなさい」

 私はお義母様の足元に膝まづくと、ゆっくりと両手を胸の前で
組みます。

 「……(え~~と、何て言うんだっけ)……」
 清美さんはもの凄く真剣に何か懺悔してたみたいですが、言葉
は思い出せません。仕方がないのであたりをキョロキョロしだす
と……
 仕方ないといった顔でお義母様が教えてくださいました。

 「『お父様、私の不始末に対してお仕置きをお願いします』よ。
人間、自分に関わらないことは覚えないわよね」
 お義母様はすでに笑っておいでです。

 「あ、はい…『お父様、私の不始末に対してお仕置きをお願い
します』」

 「そう、それでいいわ。……自分で『お仕置きをお願いします』
なんてお芝居じみてるけど、男の人って、こういう時代がかった
ことが好きなの。相手が好きな事はやってあげるにこしたことが
ないでしょう」

 「はい……大丈夫です」

 「ただし、お父様の前では今みたいに決して笑っちゃだめよ。
あなた、今、ほほが緩んでた。それじゃ台無しね。こういうもの
は悲しいって顔をして言わなきゃ意味がないの」

 「はい、お義母様」
 私の顔はさらに緩んでしまいました。

 「今日は初めてのことだし、ちゃんとご挨拶できれば、あまり
荒っぽいことはなさらないと思うけど……」
 お義母様はそこでしばし考えてから…
 「それでもお仕置きはお仕置きなんだから、それなりに覚悟は
しておきなさい。あなただって亡くなったお父様からお尻くらい
は叩かれたことあるんでしょう?」

 「……は、はい、平手でなら何回か……」

 「鞭は?竹のものさしとかスリッパなんかでは……?」

 「いいえ」

 「そうね、まだ、幼い時だったからね……鞭は遠慮なさったん
でしょうね」

 「ごめんなさい」
 私は暗い顔をなさったお義母様を見てその場の空気から思わず
謝ってしまいますが……

 「べつにあなたが謝ることではないでしょう。でも、お父様の
ご判断は賢明よ。幼い頃に鞭を使うと疎外感を持つからできれば
避けた方がいいの。家のチビちゃんたちは今でもお父様のお膝の
上でお尻ぺんぺんだけよ。鞭のお仕置きはまだヴァージンなの。
……でも、あなたの場合はもう11歳だし……ひょっとしたら、
決断なさるかもしれないわね」

 「清美さんには私より年下だけど、もう鞭を使っていらっしゃ
いますものね」

 「(はははは)あの子は特別。世間様から見れば凄い事をして
いるように見えるかもしれないけど、あれはあれで、お父さんと
二人してじゃれあってる時間が大半なんだから……」

 「あれで……」
 私は小声でつぶやきます。

 「そう、あれでよ。……あらあら、脅かしちゃったかしら……
そんな深刻な顔しないでちょうだい。あの子は特別なの。お転婆
なくせにお父さんとは仲がいいもんだから、何かやらかしても、
お父さんの前に出るとすぐに甘えぐせがでちゃって……それで、
いつも逆に厳しくされちゃうのよ」

 「お灸とかも……」

 「そう、それもすでにあちこちすえられてるわ。女の子だから、
親としては、できるだけ目立たない処に…とは思ってるんだけど
あの子の場合は手遅れね」
 お義母様は明るく笑います。そして、思い出したように……
 「……そうだ、あなた、お灸は未経験かしらね?」

 「いえ、一度だけ……」

 「そう、気がつかなかったわ。どこ?」

 「お尻です。幼稚園の時、悪さして……」

 「そうなの、でも小さいものでしょう。私、あなたとお風呂に
入ったこと何度かあるけど、気づかなかったもの……うちはね、
チビちゃんたちも含めてすでに全員が経験者よ。本当は痕が残る
から、できたらやりたくはないんだけど、他のお仕置きと比べて
も効果が絶大なもんだから……親はついつい頼っちゃうのよ」

 「そうなんですか」

 「あなたも親の立場になってみればわかるわ。でも、大丈夫よ。
お義父様の逆鱗に触れるようなことになっても、痕の残るような
艾はつかわないように頼んであげるわ」

 「……(なんだ、やめるように頼んではくれないのか)……」
 私は図々しいことを思います。

 「安心した?」
 お義母様はそう言ってすぐに私の顔色に気づきます。
 「……あら、どうしたのそのお顔は…『母親だったらどうして
やめるように頼んでくれないんだろう』ってお顔かしら?」

 「いえ、違います」
 私は慌てて否定しましたが、図星でした。

 「今日は初めての本格的なお仕置きだから、『家のお仕置きは
こんなですよ』『こんな怖い事もしますよ』『こんな恥ずかしい
事だってありますよ』というお披露目なの。だから、一通り全部
やらされるとは思うんだけど、本格的なのは、『お尻ペンペン』
くらいで、鞭やお灸なんかは、この次だわね」

 「……(簡単に言わないでください)……」
 私はお義母様があまりにあっさりおっしゃるので心の中だけで
ちょっぴりすねます。
 すると……

 「そんな深刻な顔しないでちょうだい。大丈夫よ。ああ見えて、
お父さんって、女の子には優しいの。そもそも暴走するような人
じゃないわ……さあ、もう行きましょう。お待ちかねよ」

 「……はい」
 私は心なしか元気を取り戻して出発します。


 二人は長い廊下を通り抜け、お義父様の書斎が見える中庭へ。

 赤い三角屋根の書斎が目に飛び込んで来ると思わず足を止めて
しまいましたが、その後は中庭の石畳をお義母様に肩を抱かれる
ようにして歩き、ようやく『麒麟堂』という額まであがっている
いかめしい黒塗りの玄関ドアの前に立ちます。

 お義父様の書斎は一部屋というのではありません。一戸建住宅
のように独立したもので、当然、玄関と呼べるものがありました。
 そこで……

 「いいこと、中に入ったらまず最初に悲しい顔で膝まづいて、
『お父様、私の不始末に対してお仕置きをお願いします』って、
懺悔よ。……いいこと、笑っちゃだめよ」
 私は耳元でお義母様から最後のレクチャーを受けたのでした。

 私達は玄関で靴を脱ぎ、スリッパに履き替えて書斎のドアの前
まで来ます。ここまで来れたのも、お義母様の付き添いがあった
から。私一人だったら逃げ出していたいたかもしれません。
 お仕置きのために書斎を訪れるって、そのくらい怖い事だった
んです。

 私は一つ大きく深呼吸すると、体中の勇気を振り絞ってドアを
叩きます。
 「コン、コン」

 「どうぞ、入りなさい」
 それはいつもと変わらない穏やかなお義父様の声でした。

 「失礼します」
 恐る恐るドアノブに手をかけると、古い蔵書のカビ臭い匂いが
まず鼻を突きます。

 「うっ!」
 私は思わず顔を背けます。
 何度かお邪魔していますから部屋の中の様子は知っているはず
なのに、ここへ来るたびに同じことをしてしまうのでした。

 厚い絨毯の上には、玄関にあったものとは別のスリッパが用意
されていて、その中の小ぶりなものに足を滑り込ませると、遠く
逆光の中で声がします。

 「待ってたよ。さあ、入って」

 びっくりするほど広い部屋ではありませんが、子供の私には、
その部屋は広くて、暗くて……お義父様がお仕事をなさっている
処にだけ窓があってそこだけ明るいのです。でも、そこまでは、
なぜかとても遠く感じられたのでした。

 お義父様は、この時、窓辺の事務机で何か書き物をされていた
ご様子でしたが、すぐに立ってソファの方へ移ります。

 「こっちへいらっしゃい」

 私はお義父様の声に引っ張られるように歩き出しはしましたが、
天井までも届く大きな本棚を右左と見ながらゆっくりと進みます。
 お義父様のご本に興味なんかありませんが、とにかく怖かった
からまっすぐお義父様の方を向けないのです。

 どんなにやさしい声でも、お義父様はお義父様。自分より遥か
に体が大きくて、遥かに力の強い男の人です。そして、何より、
11歳の少女にとっては、自分よりはるかに偉い人です。
 そんな偉い人から、今まさに叱られようとしているのですから、
その顔を直視する勇気がなかったとしても不思議ではありません。

 これは私と実の父との関係もそうでしたし、清美さんだって、
そこは同じはずでした。普段はどんなに仲良しな親子でも、父親
が一旦怖い顔をみせると、娘たちはたちまち唇を震えさせて怯え
ます。

 そのあたりは今のフレンドリーな父親とは大きく違っていたの
でした。

 私はお義父様と視線を合わさないように進み、すでにソファで
腰を下ろして待っていた父親の足元まで辿り着くと、さっそく、
お義母様との約束を果たします。

 どぎまぎしていた私はスリッパも脱がずその場に膝まづいて、
胸の前で両手を組み…とにかく、声を振り絞りました。

 「お父様、私の不始末に対してお仕置きをお願いします」
 と、やったのでした。

 棒読みの台詞はまるで感情なんてこもっていません。
 『こんなんで、反省してるって言えるのか!』
 って、お芝居ならお客さんから物を投げられそうですが…でも、
お義父様は私の気持をわかってくださったみたいで……

 「『ごめんなさい』だね。わかったよ。その作法はお母さんに
習ったの?…………そう……いい子だ。おいで……」
 お父様の両手が目の前にやってきました。

 「…………」
 もし、これが本当のお父さんの手なら、私はすぐに抱きついた
はずです。
 でも、私はその手に逡巡してしまいます。

 『お尻をぶたれるかもしれない』などと、深読みしたからでは
ありません。純粋に怖かったからでした。
 お世話になっている人です。可愛がってもらっている人です。
でも、大きな人です、男の人です、偉い人です……そういう人は
少女にとってはやはり怖い人でした。

 『でも、そんな人の誘いに、女の子はこの床でへたり込んでは
いけない』
 それを教えてくれたのはお義母様でした。

 「あっ!」
 とたんに私の身体が浮きます。

 お義母様の両手が私の両方のわきの下に差し入れたかと思うと、
私の身体は簡単に宙に浮いてしまいます。

 「ほら、お父さんがせっかく抱いてくださるって言うんだから、
そういう時は、ちゃんと抱いてもらわなきゃ。あんたはまだ子供
なの。大人より赤ちゃんの方に近いんだから、嫌々なんかしたら
損するよ」
 お義母様はそう言ってソファでくつろぐお義父様の膝へと私を
運びます。

 「(はははは)」
 顔の引きつったお愛想笑い。
 お義父様と久しぶりに目が合います。でも、どんな顔をしたら
いいのかがわかりません。

 ただ、その優しい声は相変わらずです。

 「私のお膝は嫌かい?」

 「……」
 私は激しく首を振ります。それまで散々避けておいて、今さら
『嫌いじゃありません』とは言いにくいのですが、私はお義父様
が本当に嫌いではありませんでした。
 ただ、実の父のように何でも許せるかというと、そこには当然
問題があったのです。

 「震えてるね。怖いんだ。無理もないよね。『お仕置きするよ』
なんて言って呼んだんだもの。そりゃあ怖いよね」
 お義父様は私の頭を優しく撫でてくれます。

 ただ、その時の私はというと……
 確かに体は震えていたかもしれませんが、すでに覚悟は出来て
いました。もう、こうなってはどうにもなりませんから……
 『どうにでもなれ!』だったのです。

 それより……
 『あっ!お義父様、パジャマ穿いてる』
 って思いました。
 『上はちゃんとセーターなのに……』
 私がお義父様に抱かれて気にしたのは、その服装の事でした。

 今、私を抱きしめているお義父様の上着は、肘あてに軟らかな
駱駝の皮を使った高級なカシミアのセーター。
 でも、下は普段着のパジャマです。
 このアンバランスが、女の子の私には気になったのでした。

 「恵子ちゃん、私は嫌いかい?」
 お義父様が尋ねますから、私は首を横に振ります。

 「ありがとう、私も恵子ちゃんが好きだよ。頭はいいし気立て
はいいし。啓治(私のお父さん)は果報者だな。………でもね、
女の子はお嫁に行くと、そこの家のお姑さんをお義母様お義父様
って呼ばなきゃいけないんだ。赤ちゃんの時からのお父さんだけ
がお父さんじゃないんだ。そのことは知ってるよね?」

 「……はい」

 「女の子はお婿さんは選べても、そのお姑さんまでは選べない。
神様に与えられた場所で、神様から与えられた人達と幸せになる
しかないんだ。そこの人たちを喜ばせてね」

 「…………」

 「ここも同じだよ。私たちは君の為に精一杯の事をしてきた。
これからだって、不満があれば何でも言っていいんだよ。できる
限りのことはしてあげるからね。だから君も、私たちを喜ばして
欲しいんだ。君の精一杯で……でも、君の精一杯って、こんな物
じゃないだろう?」

 「……だから、お仕置きなんだ」
 私は小さな声でつぶやきました。
 抱かれた胸の中では、お義父様がよく吸う葉巻の匂いが残って
います。

 「そうだね、さっきは僕も、お仕置きって言葉を使ったものね。
でも、それって体罰とか折檻って意味じゃなくて、本当は、君を
励ましたいだけなんだ。『恵子ちゃん、頑張れ!』ってね………
言葉だけでは伝わらない事も少し強い刺激が加わると伝わり易く
なるからね、お母さんと相談してやってみようって決めたんだよ」

 お義父様は、ゆっくりとした口調で話し、膝の上に抱いた私の
頭をゆっくりと撫で始めます。

 それは最初の頃、逆に私の緊張を高めていました。
 『いつ、ぶたれるのかしら』
 と、そればかり考えていましたから、そこは居心地の悪い空間
だったのです。

 でも、蒼いセーターに染み付いた高級な葉巻の香りを嗅ぐうち
に、何だか、この膝が安らぎの場になってしまって、私の目蓋を
しだいしだいに重くしていきます。

 「……(眠い)…………」
 お義父様のお話が十一歳の少女には難し過ぎるというのも原因
だったのかもしれません。

 でも、私だって肝心なことだけは分かっていました。

 『今さら無事じゃすまない。お義父様にお付き合いしなきゃ』
 難しいことは分からなくても、これだけわかっていれば女の子
は十分だったのです。

 それだけわかって、私はお義父様のお膝で半分寝てしまいます。
 遠くで大人たちの会話が聞こえてはいるのですが、まるで音楽
を聞き流しているように話の中身に興味はありませんでした。
 お義父様の胸の中で、私はそれほどまでにリラックスしてしま
ったのでした。

 「まあ、肝の据わった子だこと。これからお仕置きされようと
いうのに……あきれたわ」
 お義母様の声が遠くで聞こえます。

 「いいじゃないか、このまま寝かせとこう」
 お義父様はこう言ってくださったのですが……

 「いけません。二人で話し合ったじゃありませんか……それで、
今日は、お尻叩きとお灸と、最後は鞭も経験させようって……」

 「わかってるさ」

 「分かってたら、逃げずにちゃんとやっていただかないと…」

 「別に逃げてはいないよ。ただ、今でなくても、もう少し私に
慣れてからの方がいいかと思って……」

 「いいえ、今じゃなきゃいけないんです。先月、家族で行った
温泉旅行でこの子も私達と一緒にお風呂に入ったじゃありません
か。あなたの布団で一緒に寝たでしょう。それは私たちとの生活
にも慣れてきた証拠ですわ。むしろ、最近では自分一人が家族の
中で浮いてることを気にし始めてるんです。こんな時こそ、あな
たの力が必要なんです。あなたが父親の威厳を示せば、あの子も
自分の居場所がはっきりして、勉強にも実が入るはずですわ」

 「そういうもんか?」

 「そういうものです。あなたに女の子の心を解説しても仕方が
ありませんけど、自分の居場所が定まらなくて不安でいるより、
心置きなく暮らせる家庭があるなら、お仕置きなんてされても、
その方がずっと楽なんですから……」

 「でも、あまり強引なことしたら、泣くんじゃないか?」

 「当たり前じゃないですか。そのためにやってるんですから。
女が泣くのは呼吸してるのと同じ、いちいち気にしてたらきりが
ありませんよ。それに、清美の方はいつも泣かしてるじゃありま
せんか」

 「あれは、昔からの甘えん坊で、私にもなついてるから……」

 「この子だって、それは同じ。あなたにすでになついてます」

 「そうかなあ……」

 お義父様は懐疑的でしたが、お義母様は断言します。
 「私が言うんだから間違いありません。さあ、お願いしますよ。
今日は最初ですから、きつめにやってくださいね。それが何より
この子のためなんですから……」

 お義母様はここまで言うと、すやすや顔の私のほほを軽く指で
叩きます。

 「ほら、おタヌキさん。起きてくださいな。お義父様がやって
くださるそうよ」
 お義母様は目をつぶったままの私に声をかけてきました。

 お義母様にしてみれば、私はタヌキ寝入りを決め込むずるい子
という事になるのでしょうか?
 でも、私だって、今さらここでタヌキ寝入りしたところでどう
にもならない事ぐらい分かっていますから、罰を免れようとして
お義父様のお膝で居眠りしていたわけではありません。

 このお膝が純粋に気持よかったから、うとうとしていただけな
のです。
 ですから、お義母様の、『……今日は最初ですから、きつめに
やってくださいね。……』という言葉だって私の耳にはちゃんと
届いていました。

 「さあ、もう一度、最初からよ。今度は、ご挨拶したらすぐに
お仕置きですからね」
 お義母様は、プロデューサー気取りで指図します。

 そして、二度目のご挨拶。

 「お父様、私の不始末に対してお仕置きをお願いします」

 お義父様の足元に膝まづいた私を、今度はお義父様自身が抱き
かかえて、ご自分の膝の上でうつ伏せにします。

 車に轢かれたヒキガエルみたいにお義父様のお膝の上で身体を
押しつぶされると……
 「これから、『お尻、痛いたい』するけど我慢するんだよ」
 幼い子を諭すようにそう言って、私の丈の短いスカートが跳ね
上がります。

 その時、白い綿のショーツが、お義父様からもお義母様からも
丸見えになったはずでした。

 もし、これが清美さんなら……
 「ごめんなさい!もうしません」
 「いい子になるから、やめてお願い」
 「だめえ、お尻壊れるから~~」
 と、ぶたれる前からこんな調子で大音響が部屋中に響き渡りま
す。

 もちろん身体だってじっとなんてしてません。無駄と分かって
いても、あらん限りの力を振り絞ってジタバタやって、お義父様
お義母様をてこずらせたことでしょう。

 私はそんな妹の様子を思い出して思わず笑ってしまいました。

 いえ、こんなこと、女の子にとっては凄くショックな出来事の
はずですから、最初からこうださったら私だってお義父様のお膝
でジタバタしていたかもしれません。
 でも、お仕置きが間延びしてしまったせいで、私には、今起き
てることにまるで現実感がありませんでした。何だか、みんなで
お芝居をやってるみたいだったのです。

 「パン……パン……パン……パン……パン……パン……パン…」

 やがて、お義父様の平手が私のショーツの上に炸裂します。
 でも、それもそんなに力が入っていませんでした。軽くお尻の
泥をはたくような、そんな感じでしたからから、私も……

 『何だ、大したことないじゃない』
 なんて軽く考えていたんです。

 もちろん、実の父からもお尻を叩かれたことはありましたが、
その時は三つ四つ強烈なのが飛んできて、すぐに大泣き。
 「ごめんなさい」「ごめんなさい」「もうしません」を連呼する
うち、いつの間にか抱っこよしよしされていて、それでおしまい
だったのです。

 ところが、お義父様のお仕置き、お尻ペンペンは、一つ一つの
威力こそ小さいものの、五回が十回、十五回でもやむことはあり
ませんでした。

「パン……パン(あっ)……パン(あ~)……パン(いや)……
パン(だめ)……パン(痛い)……パン(いやあ、痛いよう~)」

 十回を過ぎてほんの少しずつ痛みを感じ始めたお尻の状態は、
回数が重ねるごとに辛くなっていきます。
 十五回を過ぎる頃から、顔が歪み始め、二十回を待たずに私の
口から悲鳴が漏れ始めます。

 「パン」
 「いやだあ~~やめてえ~~~」
 泣き言を言うのは悔しかったけど仕方がありませんでした。

 「パン」
 「いやあ~~痛いよう~~」

 「パン」
 「ア~~~もうしない、もうしない」

 「パン」
 「ごめんなさいもうしません」

 「パン」
 「やめて、やめて、やめて~~~」

 結局、三十回。
 終わった時の私は全身鳥肌で毛穴全開。体中に悪寒が走るなか、
お尻だけが火照っていました。

 お義父様は決して途中で力を込めたりはなさいません。最初も
最後も同じ力だったはずなのですが、二十回を過ぎたあたりから、
私のお尻は地獄を経験します。

 一つぶたれるたびに……
 「もうしません」
 「ごめんなさい」
 「やめて、やめて」
 の連呼。
 とにかく大声で何か叫んでいないと痛くて気が狂いそうでした。

 身体だってそうです。
 お義母様に両手を、いつの間にかやってきていた節さんに両足
を押さえていただかないと、とてもお義父様の膝の上には乗って
いられないくらい手足をジタバタさせるお転婆娘だったのです。

 何の事はない、私もまたお義父様の前で清美さんと同じ醜態を
晒すことになったのでした。


 「よしよし、よく頑張ったね。偉いよ。よ~く我慢したもの」
 お義父様は私を膝の上に抱いて慰めてくれます。

 『それにしても、お義父様のお胸はなんて心地いいんだろう』
 私は泣きながら、心ひそかにお義父様の胸の感触を楽しみます。
 火照ったお尻がお義父様のお膝に触れて少し痛いけど、それは
私にとっては幸せな時間でした。

 少し落ち着いてから、お義母様が赤ちゃんみたいにお義父様に
抱きついている私の顔を覗きこんで尋ねます。
 「どうかしら?ペンペンされたお尻は?……落ち着いた?」

 「はい」
 私はお義父様の膝に抱かれて、べそをかいて答えるしかありま
せんでした。

 「あなたは、清美のお尻ペンペンを見てて、このくらいの事で
ジタバタしてみっともないと思ってたみたいだけど……お尻ペン
ペンも結構大変なのがわかったでしょう。これが中学になったら、
五十回、七十回って引き受けなければならないの。………でも、
そのたびにお漏らしじゃ。お父様も大変だわ」

 私は、最初、お義母様の言葉の意味がわかりませんでしたが、
そのうち、自分のショーツが濡れていることに気づきます。
 そこで、恐る恐るそうっと下の方を確認すると……私のシミは
お義父様のパジャマにまで……

 「……(お義父様、それでパジャマ穿いてたんだわ)……」
 私は恥ずかしくてお義父様の胸の中へ顔を隠してしまいます。

 「よし、よし、いい子、いい子」
 お義父様は私がその事に気づいたのを承知で、それでも濡れた
パジャマのまま、謝りもしない私を抱いてくださったのです。

 「……(甘えすぎかなあ)……」
 でも、女の子にとってこんな幸せがあるでしょうか。
 この時の私はもう完全に幼女の昔に戻っていました。


******************(2)******

Appendix

このブログについて

tutomukurakawa

Author:tutomukurakawa
子供時代の『お仕置き』をめぐる
エッセーや小説、もろもろの雑文
を置いておくために創りました。
他に適当な分野がないので、
「R18」に置いてはいますが、
扇情的な表現は苦手なので、
そのむきで期待される方には
がっかりなブログだと思います。

最新記事

カテゴリ

FC2カウンター

検索フォーム

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード

QR