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6/24 早苗お姉ちゃん/子ども懲戒所(編)

6/24 早苗お姉ちゃん/子ども懲戒所(編)

*)お灸の小説です。

 私たちの町には、『子ども懲戒所』という看板の掛かった家が
いくつもありました。
 今の常識では考えられないでしょうが、親が我が子のお仕置き
を依頼する家のことです。

 学校帰りに、行儀作法を習ったり縫い物を習ったりする名目で
通う塾感覚のものから、一週間位お泊りさせて、本格的にその家
の主人に躾直してもらう合宿形式のものまで形態は様々でしたが、
共通しているのがお仕置き。

 普通の塾では月謝を頂いている手前、そこの先生が生徒に手を
あげることなんて滅多にありませんが、それがここでは自由なの
です。むしろ親自身が我が子をどう叱ってよいかわからないから
ここに預ける……そんなケースがほとんどでした。

 当然、その家からは毎日のように子どもの悲鳴が聞こえますが、
もちろん、『この家で虐待が行われていますよ』なんて通報する
人は誰もいませんし、その子が逆に悪くなったという評判も聞き
ませんでした。
 主人は大半が子育てのベテランでしたから親も安心して預けて
いました。

 そんな懲戒所の一つに鍼灸院を営んでいる菊江お婆さんがいま
した。

 お婆さんの診療所は、古い日本家屋で雨が降ると雨漏りがする
ありさまでしたが、腕は確かとみえて、昼下がりから夕方にかけ
お客さんの絶えることがありません。

 待合室には大人のお客さんもいますが、多くは子ども。それも
大半がお仕置きやいとが目的で親に連れてこられた子供たちです。

 ですから、待合室は恐怖におののく子どもたちの悲鳴で大混乱
と思いきや、そこは意外なほど静かでした。

 『騒ぐ子、泣く子は治療の前にまずお灸』
 が徹底していたからです。

 泣き声が診療室に届くと、院長である菊江婆さんが飛んできて、
訳も聞かず男の子も女の子もお尻を捲られてお灸をすえられる事
になります。……その間わずかに1分。あっという間の出来事で
した。

 ですから、ここが初めての子は別として、治療院の中で泣く子
はいませんでした。
 それがどんな結果をもたらすかを、大半の子は自分の体で学習
していたからなのです。

 子供たちにとってはお外が勝負というわけです。あらん限りの
大声を出し……哀れみを込めた眼差しで親にすがり付いて泣き…
…身体を持ち上げようとすれば重心を後ろにして抵抗します。
 そりゃあ必死でした。

 でも、その有り余るエネルギーは治療院のドアを入る前に使い
果たされるのが通常でした。親にすれば、嫌がる子どもの両手を
鷲づかみにして、無理やりにでも建物の中へ入れてしまえば勝ち
だったのです。
 あとは菊江婆さんが何とかしてくれますから。

 そんな敗者ばかりの待合室へ、私も足を踏み入れます。
 理由は前に述べたとおり、清史君の弟さんに石を投げたこと。
 大人の世界で言う暴行傷害罪というわけでした。

 『なによ、頭から血が出たといったってほんのちょっとでしょ。
なのに、なんでそのくらいのことで、どうしてお灸なのよ!!』
 私は思います。本当は待合室にいる全部の人に聞こえるくらい
大きな声を張り上げたい気分でした。

 でも、私もすでに11才。幼い子のように親との戦いに無駄な
エネルギーを使う歳でもありません。入口のドアは自分で開け、
畳敷きの待合室では親の分まで座布団を出してきてそこでおとな
しくしています。
 そこはまわりのチビたちとは違うお姉さんの貫禄でした。

 すると顔見知りのおばさんが……
 「あら、早苗ちゃんじゃないの。今日はどうしたの?」

 おばさんは私に尋ねます。でも、それには母が答えました。
 「大したことじゃないわ。お友だちと喧嘩して、腹立ち紛れに
石を投げたらその子の弟さんにあたってしまって……」

 「まあ、大変じゃない……その子、大丈夫だったの?」

 「幸い、怪我は大したことなかったんだけど、この子ったら、
怖くなってその場から逃げたらしいのよ。癇癪起こして石投げて
相手に怪我させたあげくその場から逃げるなんて……まったく、
いい恥さらしだわ」

 「ははあ~ん。それで、ばあちゃんの処でお灸になったのね」

 「もっと幼い時ならそれも仕方ないかと思うけど……この子も
少しずつ大人に近づいてるし……このへんで、ガツンというのを
やって目を覚まさせようと思って……」

 「あらら、そりゃあ大変だ。災難だったわね」
 おばさんは悪戯っぽく笑います。
 それを横目で見ながら、私は悔しい思いをしていました。

 『何よ、楽しそうに……嫌な女』
 私はそうは思いましたが、今はそれを口に出すことはしません
でした。この上トラブルを起こしては、この先どんなお仕置きが
待っているかしれません。ここは自重するしかなかったのです。


 そうこうするうち、さっきこの待合室を出て行った中学生位の
お姉さんが戻って来ました。
 目に一杯涙を浮かべ、お母さんが支えていなければ一歩も歩け
ないんじゃないかと思うほど憔悴しきっています。声を掛けるの
さえもはばかられるほどでした。

 『あ~あ、私もああなるのかなあ~』
 明日はわが身という光景に正座していてる私の子宮がキュンと
しぼむのがわかります。と同時に、オシッコがほんのちょっぴり
漏れます。

 『というと、次は私じゃないかしら』
 と思っていると、案の定……

 「倉田さん。倉田早苗さん。いらっしゃいますか?………あっ、
どうぞ診察室へお越しください」

 まだ若い助手のお姉さんに呼ばれて、お母さんと二人長い廊下
を歩きます。菊江婆さんの診察室は小さな悲鳴ぐらいなら待合室
にまで届かないように中庭を挟んだ離れになっていました。


 「倉田でございます。よろしくお願いします」
 お母さんが廊下に正座して障子に向って声をかけます。

 「おう、倉田さんか、入りなさい」
 もう聞きなれてしまったしわがれ声。その声だけで背筋に氷水
を流し込まれる思いでした。


 診察室は今のようにベッドじゃありません。畳敷きの純和室。
薄い布団が一枚敷いてあるだけの簡素な部屋です。
 ただあの強烈なお線香の匂いだけが鼻を衝きます。
 私はそれを嗅いだだけでもう卒倒しそうでした。

 二人は部屋の奥へ進むと、割烹着姿の菊江婆さんの前に正座で
すわり頭をさげます。

 『あ~あ、いよいよ死刑執行かあ~~』
 下げた頭で思うことはそれだけでした。

 「どうなさった?どうせ、また、相変わらずの事件じゃろう」
 菊江婆さんが訳知り顔で言うと……

 「お恥ずかしいのですが、その通りでして……実はこの子が、
また男の子と喧嘩をしまして……」
 お母さんはこう前置きして、私の罪を語り始めます。

 正直、聞いてる私ももううんざりでした。
 『そもそも女の子が喧嘩してどこが悪いの!』
 と思って聞いていました。

 お母さんが話し終えると菊江婆さんは綺麗な白髪をかき上げ、
一つため息をつきます。

 「おおかた、そんところじゃろうと思った。前にも言うたがな、
花枝さん。この子のそんな性格はあんたから来とるもんなんじゃ。
赤ん坊の時からずっと一緒で、同じ女の同士で生理も一緒。そり
ゃあどうしたって娘は母親の性格に似るもんじゃ。……というて
あんたも、あのご亭主じゃ、これからだってずっと商売していか
なきゃならんだろうし、そりゃあ女々しくてはやっていけんわな
……難しいところじゃな」

 菊江婆さんは、そこまで言ってしばらく考えていましたが……
突然、突飛な事を言い出します。

 「どうやろ。今度は、あんたがお灸をすえてみる気はないか?」

 母と娘、まさに目が点になっていました。

 「そうやろう、娘をいくら折檻してみたところで、親が変わら
んのなら同じことじゃからな。娘が変わるためにはまず親である
あんたが変わらんとな。……どうじゃ、ここでわしのお灸を受け
るというのは…………嫌かい?」

 今度はお母さんが考える番でした。
 そりゃあそうでしょう。娘を折檻しようと思ってやって来たの
に、自分がお仕置きを受けるはめになるんですから……

 私はお母さんが菊江婆さんの申し出を簡単に断ると思っていま
した。『はははは、ご冗談を』ってな感じで……

 でも、お母さんは……
 「承知しました。私が受けます」

 『え!?……ええええ!!!』
 今度、驚いたのは私でした。そして困ったのも私だったのです。

 「ねえ、やめてよ。私がお灸すえられればいいんだから……」
 私は突然の展開に、心の中が罪悪感で一杯になります。

 「いいのよ、早苗ちゃん。菊江さんの言う通り私が変わらない
限り何も変わらないんだもの。今度は私がお仕置きを受けるわ」

 お母さんの健気な言葉に、私は頭から血の気が引いていくのが
はっきりわかりました。

 あまりの急展開に『ちょっと、ちょっと、待ってよ~』という
事態です。

 それでも、事は順調に行われていきました。
 お母さんは何のためらいもなく上着を脱ぐと、薄い布団の上に
寝そべってその時を待ちます。
 菊江婆さんも作り置いた艾をあらためて締め固め、据える分の
数を勘定します。お盆の上にはまるで機械で作ったように12個
の艾が綺麗に並んでいました。

 これを、ブラウスを捲りあげたお母さんの背中へと置いていく
わけですが……もちろんこれって特別なことをしているわけでは
ありません。
 ここは鍼灸院ですから、治療目的で背中にお灸をすえることは、
誰にでもごく普通に行うことでした。

 でも、子どもの私にはそれがとても残酷なシーンのように感じ
られるのです。
 自分は治療の為にお灸をされたことがなく、ここではお仕置き
やいとしか受けたことがないので、やいとは全て怖いものでした。
それに何より、この原因は自分にあるわけですから、心に棘が刺
さったように気詰まりです。

 やがて、お線香の火が艾に移される瞬間になって……
 「やめて、お母さんにそんなことしないで」
 
 私は、もうほとんど無意識に菊江婆さんの持つお線香を両手で
押さえていました。

 「あれあれ、どうしたことじゃ。これはお前さんとは関係ない
事なんじゃぞ」

 「……それは……」

 「……ん?どうした……それとも何か、お前はそれほどまでに
お母さんがお灸を据えられるのが嫌か?」

 菊江婆さんは子どもの私の手を払い除けると、あらためて私の
目を見て呆れます。

 すると、今度はお母さんが……
 「いいのよ、早苗ちゃん。これは菊江さんと私だけのことなん
だから……あなたには関係ないわ」

 お母さんはそう言いますが、幼い私にとってこの目の前の現実
を見過ごすことなどできません。

 「いい。私がお母さんの分までお仕置き受けるから……」
 思わず禁断の言葉が口をついて出ます。

 すると、それを聞いたとたん、待ってましたとばかりお母さん
が起き上がります。菊江婆さんも、そそくさと艾の乗ったお盆を
片付けます。

 まだ青ざめてる私を尻目に、菊江婆さんはお母さんにむかって
こう言うのでした。
 「あんた、ええ子を持ったねえ。下のチビ二人といい、この姉
ちゃんといい、あんたには過ぎもんじゃないか。………親子は、
やっぱりこうでなきゃ」

 「はい、ありがとうございます」
 お母さんは恥ずかしそうに微笑みます。

 どうやら私、杜子春役をこの二人にやらされたみたいでした。
 でも、私がお母さんを助けずに傍観していたどうなっていたか、
…菊江婆さんのことです、とてつもないお仕置きで私を責めさい
なんでいたかもしれません。

 そう考えれば、事は私にとってもうまく運んだのかもしれませ
んが、だからといって私へのお仕置きがなくなったわけではあり
ませんでした。

 「あんた、お母さんの分までお仕置き受けるって言うてたな。
……なら、ここに来なさい」
 さっそく菊江婆さんが正座した自分の膝を叩きます。

 「…………はい」
 私が不承不承で進み出て……
 
 「お願いします」
 と正座したままお辞儀。

 「しっかり頑張りましょう」
 と言われたら……

 「お願いします」
 と言って菊江婆さんの膝にうつ伏せになります。

 右も左も分からない頃から続けている儀式を、ここでもう一度
やらなければなりませんでした。

 スカートがまくられ、ショーツが下ろされる間に、お母さんと
菊江婆さんの若い助手さんがそれぞれ両手と両足を押さえにかか
ります。

 「ふう」
 一つため息。
 こういうふうに拘束されるのって男の子はあまり好きじゃない
みたいですが、私は独りで頑張るより、この方がみんなから大事
にされているみたいで好きでした。

 やがてお尻のお山に艾が乗せられます。菊江ばあちゃんの唾で
お尻が一瞬冷たく感じられると、お尻だけでなく背筋までがぞく
ぞくっとして、その瞬間はまたオシッコを漏らしそうでした。

 「さあ、いくよ」
 菊江ばあちゃんの一言でお尻の山に火がつきます。

 艾が大きいですから火が回るまで30秒くらいでしょうか。
 火が回らなければ何ともありませんが、いったん火が皮膚へと
下りてくると、その熱いのなんのって……

 「いいいいいいいい」
 あまりに歯を食いしばって歯が折れそうなくらいですが、その
衝撃がやがて脳天にまで届き、手足の指先は放電したように痺れ
ます。
 責められてるのはお尻のお山だけなのに影響は全身に及ぶので
した。

 「いやいやいやいや、熱い、熱い、熱い、やめて、やめて」

 もちろんお尻へのお灸はこれが初めてではないんですが、やる
せない悲鳴は部屋中に響きます。

 私の両手は掴まる物を求めて畳の上を拭き掃除するようにジタ
バタ。あんよは苦し紛れにバタ足で畳をドタドタ。まるで金づち
の子がプールで必死にもがいているみたいな有様です。

 「こんなに大きな子がみっともない。静かに受けられないの!」

 お母さんには叱られますが、でも、こうでもしないと耐えられ
ないほどそれは塗炭の苦しみだったのです。

 お尻のお山へは幼稚園時代から何度も据えられてきましたから、
その痕は今でもはっきり残っています。

 おかげで随分と恥ずかしい思いもしましたが、当時の親たちは、
将来、自分の娘がTバックのような水着を着て、公衆の面前で、
自分のお尻を晒すだなんて、想像だにしていませんでしたから、
『こんなんじゃお嫁にいけない』と訴えても『いいの、いいの、
ここは他所様には見えない場所だもの、気にしなくていいのよ』
なんて嘯(うそぶ)いていました。

 そう、いくらお仕置きやいとと言ってもどこにでもすえていた
わけではないのです。それなりに娘の将来を気遣って人目につく
場所は避けていました。

 ですから、その場所は、当然、下半身が中心になります。
 
 お尻のお山に一つずつ据えられた後は、お尻の割れ目が始まる
尾てい骨に一つ。さらには仰向けにしてお臍の下、ビーナスの丘
と呼ばれる場所に三つ。ここらあたりにはほとんどの子が灸痕(
=お灸を据えた時の火傷の痕)を残していました。

 菊江婆ちゃんはプロですから、ほんの数回程度しかここを訪れ
ない良い子ちゃんたちには灸痕が目立たないように最大限の努力
をしてくれていましたが、私の場合は、お仕置きやいとの常連で
したからとてもそんなんじゃ間に合いません。いくら婆ちゃんが
努力しても据えられるたびに灸痕は大きくなっていき、この頃で
はすでに1円玉くらいの灸痕がお尻の山に張り付いていました。

 いえいえ、それだけじゃありません。私くらいの大物になると
仰向けのまま両足を高く上げさせられて、大淫唇や膣前庭にも…
とてもお友だちには見せられない格好で据えられます。

 実はここ、熱さはそれほどでもありませんでしたが、なにしろ
女の子にとってはシンボリックな場所ですから、一度据えられる
と、精神的にはかなり辛い思いを引きずることになるのでした。


 そんな菊江婆ちゃんのお仕置きを何とかやり過ごして、ほっと
しているときでした。お臍の下が今でも暖かく感じられますが、
『とにかくこれで帰れる』と思っていたのです。
 ところが……

 「おう、おう、そうじゃ忘れるところじゃった。早苗ちゃん、
あんた、お母さんの分も引き受けるって言うとったな。今日は、
あれもやらなきゃいかんな。そうじゃ花枝さん、今度はあんたが
やってみなさいな」

 菊江婆ちゃんは忘れてしまえばいい話を思い出したばかりか、
今度のお仕置きをお母さんにやらせようというのです。
 私はハンマーで後頭部をガーンと一撃された思いでした。

 「うっ、嘘でしょう。また、やるの?」
 私が思わず口走ると……

 「そうじゃ、お前ももう大きいんだし、二度くらいやられても
どうってことないじゃろ」
 菊江婆さんは軽く笑い飛ばしますが……


 『冗談じゃないわよ!!』
 私は言葉には出さなくても、その顔で菊江婆さんを睨みつけま
す。本当に、冗談じゃありませんでした。
 でも……

 「何じゃ、機嫌が悪いのう。お前言うたじゃないか、お母さん
の代わりにお仕置きを受けますって……今度がその分じゃよ……
それとも何か、ありゃ嘘じゃったか……しかし、だったらだった
で、嘘をついたお仕置きをせねばならんぞ……」
 菊江婆さんは、不機嫌な私を底意地の悪そうな笑いを浮かべて
見返します。

 「そんなこと言ったって……」
 私は口を尖らせますが、もうそれ以外抵抗できませんでした。
実際、中学生、高校生……いえ小学生でも高学年になれば二回目
というのもそう珍しいことではなかったのです。

 「花枝さん、まずは艾をしっかり固めて円錐形にすることじゃ。
塊になりにくいときは唾をつけてなじませなさい。安い艾は塊に
なりにくいから、銭を惜しまず高いものを買うてくることじゃ」

 「はい……やっぱり、高い物の方が熱いんでしょうか?」

 「逆じゃ。艾は安い物の方が熱い。しかも、火ぶくれなんかに
なりやすくて、将来灸痕が大きくなるから避けた方がいいんじゃ」

 「そうなんですか」

 「お灸で折檻する時は、ちょこっとでいいんじゃよ。ま、この
くらいのお転婆になると、ちょこっとじゃ物足りんかもしれんが
な」

 「えっ!……」
 いきなり菊江婆さんの視線がこっちへ飛びましたからびっくり
です。

 「お宅の下のチビちゃんたちなら……まずはしっかり抱いて、
……おお、そうじゃ、早苗ちゃん、ちょっとおいで……」

 私がわけも分からず傍によると……菊江婆さんは一瞬の早業で
私を膝の上に抱きかかえます。
 それって、とても老人とは思えない瞬発力そして怪力でした。

 「こうして、逃げられないようにしたら、できるだけ怖い顔を
作って散々脅したあげく、最後に小指の先ほどの小さな艾を……
こうやって乗っけたら……」

 『あっ、……だめ』
 私はせっかく穿いたパンツを再びずり下げられると、無防備な
お臍の下にまたもや艾を乗せられてしまいます。
 その実に手馴れたこと。私だって身体はそこそこ大きいのに、
まるで抵抗できませんでした。

 しかも今度は、お母さんが身を乗り出して私のお股を覗き込み
ますから、最悪です。思わず横を向いてしまいました。
 実際、それくらいしか抵抗の手段がなかったのです。
 もちろん、そんなの関係なく菊江婆さんの講義は進みます。

 「このくらいの艾はな、こうして火をつけたら……」

 『いやあ、やめてえ~~』
 菊江ばあさんの膝の上で拘束され、どうにもならないまま目の
前の艾に火がつきます。

 「赤くなった艾の頭が、ほれ、黒くなったら……」

 『あっ、痛い』
 その瞬間、針で刺したような痛みが走ります。

 お灸を据えられたことのない人はお灸って熱いものだと思って
るようですが感覚的には熱いは通り越してむしろ痛いものでした。

 「こうしてな、指の腹でもみ消してしまうんじゃ。これで十分。
くれぐれも子どもが熱がらないからといって、ほおっておいちゃ
いかんよ。火傷が大きくなるからな」

 「はい」

 「子どもは親が頼りじゃ。特にお前さんとこのように親との間
にちゃんとした絆のある子どもは、『我慢しろよ』と言われたら
言われた通り必死に我慢する。親が子どもの顔色を見て『ああ、
まだ大丈夫だろう』ぐらいに思ってると、思わぬ火ぶくれを起こ
して火傷の痕が大きくなるからな。子どもの顔色は見ずに、親が
判断するんじゃ」
 
 「はい、わかりました。とにかく、艾の火が見えなくなったら
すぐに消すんですね」
 お母さんは菊江婆さんのレクチャーをいつになく真剣に聞いて
います。

 この時代、親が自分の子供にお灸をすえることはべつに珍しい
ことではありませんが、うちのお母さんは不器用な人ですから、
これまで自分で子供にお灸をすえるのをずっとためらっていま
した。
 でも、この真剣さを見ていると嫌な予感が働きます。

 「そうじゃ、……ただ、わしがこの子の尻ぺたに据えたような
大きい物は火が見えなくなってもほんの少し待たんと効果がでん
けどな……今のお前さんはまだ小さいのだけにしといて、悪さが
過ぎるようなら、またここに連れて来なさい」

 「はい、そうします」

 「よし、それじゃあ少し練習してみようじゃないか。……ほれ、
わしと同じように抱いてみなさい」
 菊江婆さんは私をお母さんに手渡します。

 「えっ!?…どういうこと?…練習って、またお灸すえるの?」
 私はたまらずお母さんに問いただしましたが答えたのは菊江婆
さんからでした。

 「お前もまだもの足りんじゃろう。ちょうどええ機会じゃから
もう少しやってもらいなさい。今度は母御前(ごぜ)じゃからな、
わしよりもっと楽しいはずじゃ」

 『楽しいって何よ!』
 私は菊江婆さんのこの悪魔的な言葉の意味が理解できませんで
したが、とにかく絶望的な状況にあることは確かで、正直、反論
する気にもなれなかったのです。
 すると……

 「おお、素直になったな。それがええ。……世の中、何もお灸
だけがお仕置きじゃないが、こうやって、母親に抱かれてされる
お仕置きは親子の絆が深まるんじゃ……今のお前には、まだまだ
分からんじゃろうがな、大人になると自分をお仕置きしてくれた
人が妙に懐かしくなるもんなんじゃ」

 「馬鹿なこと言わないでよ、けだもの」
 私は正座するお母さんに羽交い絞めにされたまま思わず感情を
むき出しにして言ってしまいます。
 ま、こんなだからいつもお仕置きが絶えないわけなんですが…

 たちまち、お母さんが私のほっぺを思いっきり抓りました。
 「何言ってるの。いったい誰に向ってお口きいてるの!」

 「痛い、たいたい……」

 「まあ、よい。責めなさんな。分からんのがむしろ道理じゃて。
お前さんはまだ世間に出たことがない。かかさんの愛の中から、
指一本出たことはないんじゃからな」

 菊江婆さんの謎の言葉が終わると、いよいよお母さんのお仕置
き練習が始まります。

 理不尽この上ないモルモット扱いですが、私はお母さんの子供、
受忍するしかありませんでした。


 お母さんが正座する膝の上に寝そべって私は自分のビーナス丘
を眺めます。早い子はすでに発毛している子もいましたが、私の
そこはまだすべすべのままでした。

 そこへ唾で湿り気をくわえた艾が一つまた一つと置かれていき
ます。
 「何よ、一つずつやるんじゃないの?」
 私が不満そうに言うと…
 「練習よ、練習」
 ってあしらわれてしまいます。

 そして、恐れていた通り、その三つの小山にお線香の火が一気
に移されたのです。
 お母さんを止める暇なんてありませんでした。

 「いやあ~~~熱い、熱い、熱い、熱い、熱い、熱い、何する
のよお、取って、取って、取って」
 私は両足を必死にバタつかせて抗議します。

 二度目のお灸は熱がより体の中まで入りますから芯から熱いの
です。でも、もしこれが菊江婆さんなら、私はもっとおとなしく
していたことでしょう。
 そんなこと、菊江婆さんは百も承知のようでした。

 「おう、おう、甘えてからに……まだ、まだ、子供じゃのお。
……それでは、その子供の場所にもう一つ、据えてみようかのう」

 菊江婆さんはそう言うと私の両足を持ち上げて、くの字に折り
曲げます。最後は、両耳の辺りに足先が着いて、お母さんの顔が
目の前にクローズアップして現れます。
 当然、私の女の子は他の人たちからは丸見え、外の風が涼しく
当たるのを感じていました。

 「花枝さん、今度はここに据えてみなさい」
 菊江婆さんが私の微妙な場所に触れます。

 『いやっ……やめてよ、変態ババア!!』

 「えっ!……でも……」
 菊江婆さん言われたお母さんもさすがにここは戸惑います。
 でも……

 「大丈夫、心配せんでもこの子の足はわしと鈴子さんで押さえ
とるから暴れたりはせんよ。ここは心棒いうてな、じゃじゃ馬、
お転婆を大人しくさせるには大事な急所なんじゃ。覚えて帰って
損はないぞ」

 菊江婆さんに言われると、お母さんはすぐに心変わりしたみた
いでした。

 「いやあ、そんなのいや」
 私はお母さんの心変わりを察知して、慌てて身体をくねらせて
抵抗したのですが、大きくなったと言っても私の身体は華奢で、
お母さんのお腹に納まっていましたから抜け出せません。

 「大丈夫よ、早苗ちゃん。そこは私も子供の頃据えられたけど、
そんなに熱くないわ」

 お母さんは、私の目の前で艾に唾をつけ、それを私のオ*コに
乗せていきます。
 右左一つずつ。煙が狼煙のように立ち上ったのが見えます。
 そして、すぐに……

 「ひぃ~~~~~いや~~~~~いや~~~~~」

 そんなに熱くないなんて誰が言ったんでしょうか、私にとって
は卒倒する程の熱さです。その熱さはお股の中に留まらず、背骨
を伝って脳天まで達し、顎はガタガタ、手も足もしばらく震えが
止まりませんでした。

 「花枝さん、ようやった。女の子は心棒を通してからが一人前
じゃからな、この子もちっと大人しくなるはずじゃ」

 菊江婆さんは自画自賛、ご満悦でしたが……
 その菊江婆さん、私にはこんなことを言います。

 「どうした、熱かったか?……それはな、かかさんからされた
からじゃ。わしがやったら、緊張して熱さもさほど感じんがな。
相手がかかさんなら、嫌なら嫌とものは言えるし甘えられるから
ついつい気が緩んで同じことをされてもより熱いと感じてしまう
もんなんじゃ。逆にどうしてもやらなゃいかんという踏ん張りは、
わしなんかより、かかさんに言われた方が数倍頑張れるぞ。……
だから親子なんじゃ。……よし、最後は尾てい骨にもう一つじゃ。
今度のはどこより一番熱いからな。しっかりと歯を喰いしばって
耐えるんじゃぞ」

 菊江婆さんはそう言うと、正座した膝に座布団を乗せて、私を
うつ伏せにすると、お尻の割れ目が始まる場所を大きく広げます。
 ついさっきのお灸でもヒーヒー言った場所です。ここでも艾を
置いたのはお母さん、お線香で火をつけたのもお母さんでした。

 だからという訳でもないのでしょうが、その時のお灸の熱いの
なんのって……

 「ひぃ~~~~~~~~~~~」
 こんな時はただ必死に我慢するだけ。悲鳴すら出ませんでした。

 そして、それが終わった時、私は敷かれた座布団が濡れている
ことに気づきます。
 
 『えっ?これって、私のオモラシ?』
 私は思わず我と我目を疑いましたが、ほかに濡れる原因なんて
ありませんから、やっぱり紛れもない事実でした。

 ただ、それを見ても菊江婆さんはにこやかな笑顔を見せるだけ。
お母さんも仕方がないといった顔で着替えを手伝うだけだったの
です。


 良い意味で、まだ子供だった私。でも、お灸の据え方を覚えた
お母さんはからちょくちょく裸にされてはお灸を据えられること
になります。
 この時も……

 「まだまだお漏らしするような子は、これでしっかり良い事と
悪い事をお勉強しましょうね」

 お母さんは楽しそうにこう言って、もう一度艾を締め固めては
尾てい骨のあたりを押し開いたままにして、その艾を乗せると、
お線香で火をつけます。

 「ひぃ~~~~~~~~~~~」

 私はこの瞬間に限らず、中学生になっても、高校生になっても、
そのお線香の火の下で生唾を飲み込み、脂汗を流し、手足をバタ
つかせて、お母さんのお仕置きに耐えることになるのでした。


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6/19 早苗お姉ちゃん/お父さんのお仕置き(H編)

6/19 早苗お姉ちゃん/お父さんのお仕置き(H編)

*)最後の1/3くらいにスパンキングと浣腸の
お仕置きシーンがあります。


 「ターちゃん、アーちゃん、今日はちょっとお姉ちゃんとお話
したいことがあるから、二人はこのへんでお部屋へ帰りなさい」

 「えっ、まだいいでしょう。せっかく遊びに来てあげたのに…」
 「お母さんが帰ってくるまでここに一緒にいちゃいけないの」

 「いいから今日は帰りなさい。お前たちの日課表ではもう寝る
時間が過ぎてるんだよ」

 「お姉ちゃんはいいの?」

 「五年生のお姉ちゃんは、普段だって寝る時間がお前たちより
1時間遅いじゃないか」

 「あ~あ、せっかく面白いところだったのに……」
 アー坊は残念そう……
 「ねえ、僕たち、お姉ちゃんのお仕置き見れないの?」
 ター坊はお父さんがまだ一言も私をお仕置きするなんて言って
ないのに勝手にそう決め付けています。

 この時代、親からのお仕置きなんてどこの家でも日常茶飯事。
おかげで、子供の方も賢くなってしまい、親のちょっとした言葉
遣いや態度の変化には敏感に反応します。

 特にこの二人の弟たちは小2のくせにとってもませていました
から、年長の私より感度のよいアンテナを持っていました。
 おかげで、言われた私の方がかえって愕然とします。

 『えっ!!!???まさか……嘘でしょう』
 これがお母さんなら驚きませんが、まさかお父さんがお仕置き
するだなんて……
 『この子たちの早とちりよね……』
 心の中はそれからしばらく……
 『まさか!?』『まさか!?』『まさか!?』『まさか!?』
 ばかりでした。

 とうとう、お父さんが二人の弟たちを部屋から出します。

 二人は最後までお父さんのおそばにいたがりましたが、それは
お父さんと一緒にいたいからというより、私のお仕置きを見たか
ったからなのです。


 部屋にお父さん二人きりになり、呆然とする私に向って、お父
さんは両手を広げお膝を叩いて私を呼びます。
 「おいで……」

 「はい」
 答えは簡単でした。考えた時間は2、3秒。すぐにお父さんの
お膝に乗ります。そこはまるっきり飼い犬と同じでした。

 飼い犬や幼い弟たちと違い私はもう5年生、お父さんのお膝の
上ではしゃぎ回る歳ではありませんが、それでも二人きりの場所
ならこんなこともまだまだ嫌いではありませんでした。

 「よしよし、良い子だ良い子だ」
 私は頭を撫でられ頬ずりをされます。お父さんの手は大きくて、
すでに私のお尻をカバーしていますが、それも問題ありませんで
した。だって、私はお父さんが好きでしたから……

 そんな私の態度を見て、これは大丈夫だと思ったのでしょうね。
お父さんは、大事な話を始めます。

 「清史君との喧嘩は、相手が最初に石を投げたんだね?」
 「そうだよ、だからあいつの方が、絶対に悪いのよ」
 「でも、その後、すぐに早苗ちゃんも同じように石を投げたん
だろう?」
 「えっ……それは……まあ……」
 「それが清史君じゃなくて、たまたまそばにいた弟さんに当た
っちゃった?」
 「……う……うん。だって、あいつ、あんなとこにいるから…」
 「それで、頭から血が出た弟さんをかばって清史君は保健室に
連れて行ったんだね?」
 「……う……うん」
 「早苗ちゃんは一緒に着いていかなかったのかい?」
 「それは……授業が始まっちゃったから……お兄ちゃんが一緒
だったし……いいかなあって思って……」
 「それって、早苗ちゃんが投げた石で、罪のない弟さんに怪我
させたのに、何もしなかったってことなのかな?人に向って石を
投げるなんて危ないことだよね?」
 「……(それって、やっぱりそういう事になっちゃうのかな)
……」私は思います。女番長だなんて呼ばれている私は他の子に
比べ規範意識に乏しいところがありました。

 「さっき、お父さんに言ったよね。清史君には謝ったって……
弟さんにも、ちゃんと謝ったのかな?」
 「それは…………」
 「ん?どうして謝らなかったの?」
 「だって社会科の森田先生、授業に遅れてくるとすごく怖くて、
お仕置きするかもしれないの……」
 「それは仕方がないだろう。もともと君が悪いんだもん。理由
を話せば先生はわかってくれるよ。早苗ちゃんがやったのはね、
『自分にとって具合が悪くなったから、私、逃げました』って事
なんだよ。……違うかい?」
 「ごめんなさい」
 「私に謝ってもしかたがない。清史君の弟さんに会って、直接
謝らなきゃ……今度の日曜日、お父さんとお母さんと三人で清史
君の処へ謝りに行こう……ね」

 「うん」
 私は小さく頷きます。話はここまでと思っていました。
 ところが……

 「そのあと、ちょうど良い機会だから、おタネ婆さんのところ
へ寄ってお灸をもらってこよう。いいね」

 「えええええ!!!!!!(どうしてそうなるのよ)」
 私はその瞬間、目が点になります。冗談ぬきに金槌で後頭部を
一撃された気分でした。そのくらいのショックだったんです。

 おタネ婆さんは個人で鍼灸院をやっていましたが、その傍ら、
言うことをきかない子どものお仕置きヤイトも手がけていました。
 その強烈な熱さは私だって体験済みです。

 今なら問題でしょうが、当時は家庭でのお灸のお仕置きはそん
なに珍しいことではありませんから、こんなのもありだったんです。
 おタネ婆さんは我が家以外にも十数件お得意様を持っていて、
親の注文に応じて悪さをした子に熱いお灸を据えます。
 プロですからね、痕が残りにくく、それでいてとっても熱いを
すえてくれると親たちからは評判でした。

 この時も……
 下半身を裸にされて、お臍の下といわず、お尻の山といわず、
ありとあらゆる場所にお灸を据えられた時の思い出がフラッシュ
バックします。

 「いやよ、そんなの、もう、あそこへは行きたくない」
 私はお父さんに言われただけでさっそくべそをかいていました。

 「お母さんの話だと、最近の早苗は、男の子との喧嘩が多くて
困りますってことだったけど……そうなのかい?」

 「えっ……」
 私は口をつぐみます。実際、お母さんはからはこんな喧嘩の事
で何度もお仕置きされていましたが、だからと言ってお父さんに
『そうなの。最近は向って来る男の子が増えてこっちも困ってる
のよ』とは言えませんでした。

 「実はね、お母さんから、最近、喧嘩ばかりしてしょうがない
から、私の方からお仕置きしてくれませんかって言われてるんだ
けどね。どうだろう?」

 「……(どうだろうって言われても)……」
 私はここまで来て、やっと自分の身に危険が迫っていることに
気づきます。
 まったくお馬鹿な話ですが、お父さんのお膝に上がる時までは
まったくその事に気づいていませんでした。

 『お父さんのお膝に乗りたい』『恥ずかしい』『でも、誰も見て
ないから』
 実は、お父さんのお膝に乗る時、私が考えていたのはこれだけ。
先の事まで見通せなかったのです。

 理由は簡単。お父さんが好きだったから。こんなことが人生で
何回かあります。私は好きな人の前に立つと、どうやら後先考え
られなくなる性格のようでした。
 でも、そうやっていつも痛い目にあうんですが……

 「ちょっと……おトイレ」
 私は身体をずらそうとしましたが、お父さんは何も言わずに、
私を抱きしめます。今度はお父さんのお膝に私が馬乗りになり、
お互い顔を見合わせるようにしてまた抱きあいます。

 『おトイレなんて嘘なんだろう』
 本来ならこんな言葉が入るのかもしれません。
 けれど、こんな時、親子に言葉なんていりませんでした。

 お父さんやお母さんって、不思議なくらい子どもの嘘を見破り
ます。それって、子どもといつも真剣に向き合っているからでし
ょうか。愛しているからでしょうか。いずれにしても、お父さん
に抱かれている今、心にも身体にも私には何の自由もありません
でした。

 でも、自由のないこの時間が、実はとっても幸せな時間だった
りもしますから、私は抱かれ続けます。

 お父さんは続けます。
 「学校の成績も、もう少し上げないといけないな。……お前は
女の子だから、学業の方はトップクラスという必要はないんだが、
……それでもクラスでは真ん中くらいにはいないとな。……今度、
私が家庭教師をしてあげるよ。たっぷりのお仕置き付きで……」

 「あっ……」
 子どもだから、お仕置きって言われると反射的に逃げ出そうと
します。でも、お父さんはそんな私が数ミリ身体を離しただけで、
ぎゅぎゅぎゅっとずごい力で私を締め上げてまたもとの姿勢に…
いえ、結果的には前よりさらに密着してお父さんと私は抱き合う
ことになるのでした。

 「いいかい」
 お父さんの同意を求める言葉が耳元でします。
 「うん(仕方ないか)」
 私はこう答えるしかありませんでした。

 そこでもう一度身体をずらすと、再び抱きしめられます。
 「もう飽きたかい?ごめんね。最後はお手玉のことだけど……」
 お父さんは言いにくそうに切り出します。

 「自分の宿題をお友だちにやってもらうことはてけないことだ
って……それはわかってるよね?」

 「はい」
 私は心細く答えます。
 もちろん、それが悪いことなのは私だってわかっていました。
 でも、女の子ってこういう事が好きなんです。自分でやろうと
すればできないことはないのに、とにかく、他人にやってもらい
たいんです。

 自分で独りでやるより、そうやってお友だちにやってもらった
方が楽しいんです。
 お友だちから自分が認められたというか……お友だちから愛さ
れてるっていうか……そんな幸福感みたいなものがわくんです。

 逆もありますよ。お友だちを手伝うというのは、自分がその子
の保護者にでもなった気分。自分が偉くなった気がして、それは
それでまた嬉しいんです。

 とにかく一番つまらないのは自分一人でもくもくと宿題をやる
ことでした。

 とはいえ、世間はそんな女の子の心情をまったく理解してくれ
ません。もとは少女だったはずの女の先生でさえ、そんなことを
すれば怒ります。
 まして、お父さんに『女の子の気持を理解してよ~~』なんて
訴えてみても、無駄に決まっていました。

 諦めのなかで、私はお父さんのお説教を聞きます。

 「宿題は自分でやらなきゃ意味がないだろう。それってテスト
をカンニングしてるのと同じ事なんだよ」
 
 すると、思わず知らず……
 「あ~あ」
 あくびをかみ殺すようにして声が出てしまいました。

 「!!!!」
 「……(ヤバッ!!!)」
 お父さんと目があった私は『ヤバイ!』と心の中で叫び、慌て
て顔を元に戻したんですが……すでに手遅れでした。

 「お父さんのお説教は眠いかね?」
 「(いえ)……」
 私は『いいえ』と言ったつもりでしたが、どうやら声にはなら
なかったみたい。……おまけに鳩が豆鉄砲をくらったような顔が
お父さんには不真面目と映ったようで、これがいけませんでした。

 「お説教だけじゃ寝てしまうようなら、もっと別の方法を考え
ないといけないね」

 後で聞いたのですが、お父さんはこの瞬間まで小五にもなった
娘をお仕置きする事にためらいがあったそうなんです。
 ですが、偶然とはいえ私が変な顔をお父さんに見せてしまった
ために、その背中を押してしまいます。

 「さあ、パンツを脱いでこのテーブールに仰向けになるんだ」

 お父さんの声がどこか遠くで聞こえます。
 もちろん、何を言ったか私は理解していましたが、その時の私
は、それを理解したくありませんでした。

 「聞こえないのか!」

 二度目の低い声で、私はパンツを脱ぐとテーブルに上ります。
 本当はスリッパでぶたれてもいいからうつ伏せでいたかったの
です。
 『仰向け』『仰向け』『仰向け』『仰向け』『仰向け』
 その言葉だけが頭の中を回っています。

 ただ、いくら普段はお仕置きがないといっても女の子にとって
お父さんは大男です。身体が大きくて、力が強くて…抵抗しても、
とてもかないそうにありません。
 三回目の低い声を聞く勇気はありませんでした。

 私は我が家のしきたりに従ってテーブルの上で両足を上げます。
女の子の形が丸見えになるポーズは、実はお母さんの前ではよく
やらされます。あせもやかぶれ、何よりオナニーの兆候がないか
確かめるためです。ただそれがお父さんとなると、それはやはり
格別な恥ずかしさでした。

 「ねえ、もういいでしょう」
 私は何回となくお父さんに早くやるよう催促しますが……

 「まだ、待ちなさい」
 お父さんは、丁寧に丁寧に私の股間を覗きこむのです。

 それだけじゃありません。私の大事な処を幾度となく指で触れ
て回ります。
 
 「あっ……ああ……ふう~……あっ……あっ……いやあ~~」
 それってくすぐったいやら、恥ずかしいやら、たまらず大きな
声を上げますが、だからといってお父さんの仕事が早まることは
ありませんでした。

 大淫唇、淫核、小淫唇、尿道口、膣前庭、ヴァギナ、肛門……
とにかく穴という穴は何でも調べられます。

 「ほら、もう少しだから待ってなさい」
 これってスケベオヤジがやってるように見えますが、お父さん
のおっとりとした性格のためなのです。

 いずれにしてもこんな姿を長々しているのは私だってイヤです
から、思わずお父さんの頭の上に足を下ろしてしまいます。
 お父さんの頭の天辺に踵キックです。

 「……ほら、何をするんだ」
 当然、お父さんはいい顔はしませんでした。

 「だって、恥ずかしいんだもん」
 不満を言うと……

 「生意気言うんじゃない、まだ子供のくせに……」
 お父さんは怒ります。

 今の五年生は、もっと大人に近い扱いを受けてるようですが、
私たちの時代の五年生はまったくの子供扱い。特に、オムツ替え
までした親にしてみれば、赤ちゃんだった時代がついこのあいだ
のように感じられて、大人と言うよりむしろ赤ちゃんの方に近い
存在だったのです。

 『恥ずかしい』なんて主張してきても……
 『何言ってるんだ!ついこの間までオムツしてたくせに』
 なんてよく言われたものなんです。

 両足を元の位置に戻されせると……
 「いいから、しばらくそうしてなさい。すぐに戻るから……」
 お父さんは突然そう言って部屋を出ます。

 『えっ、いきなり何よ!』
 とは思いましたが、仕方がありません。お父さんが戻って来る
まではパンツも穿かないお尻を天井に向けて、両足の間からぼん
やりと天井の蛍光灯を見てました。

 もちろん部屋には私だけしかいませんから、お父さんがいない
間は両足を下ろしていてもよさそうなものですが、ずるしてまた
叱られたくありませんから、ずっと、馬鹿みたいな格好で待って
いました。


 すると、お父さんはすぐに帰っては来たのですが……

 『どういうことよ!』
 私は急に自分の姿が恥ずかしくなります。

 というのはお父さんが子守の初子さんを伴っていたからでした。
 お父さんはともかく初子さんにこんな姿見られたくありません
から、さっそく足を下ろします。
 けれども……

 「どうして、足を下ろすんだ。そのままでいなさいって言った
だろう」
 お父さんに怒鳴られてしまいました。

 「は~~~い」
 お父さんの命令で私はテーブルに着いた足を再び持ち上げよう
としましたが、思うにまかせません。
 理由は簡単、死ぬほど恥ずかしいからでした。

 もちろん、お父さんというのは異性だし大人だし、恥ずかしい
ですけど、弟たちがお母さんをマリア様のように敬うのと同じで、
私にとってもお父さんというのは恥ずかしさを越えて別格の存在。

 つまり、初子さんとは違うのでした。

 「しょうのないやつだ。恥ずかしいのか!?」
 お父さんが吐き捨てるように言います。
 
 「……」私は頷くしかありませんでした。

 私は絶対に足は上げないつもりで両手で膝を抱いて身をかがめ
ます。
 でも、それ以上の抵抗もできません。

 「しょうのないやつだ。お前も一人前に恥ずかしくなったか」
 お父さんはこう言うと、連れて来た初子さんをいったん部屋の
外へ出してから、再び、私の足をあげさせます。

 もうその時は、これ以上の抵抗はできませんでした。

 「何だか、ここが赤くなってるな。今は、メンソレータムだけ
塗っておとくから、後でお母さんに看てもらいなさい」

 お父さんはくすぐったい場所に軟膏を塗ります。
 とたんに、スーっという感触がします。

 「あっ……熱い……いやあ~~くすぐったい」
 それって、むずがゆいような、切ないような、不思議な快感で
した。時間にして僅か数秒のお父さんの指の感覚が、たまらない
ほど愛おしいのです。

 無意識とはいえ、自分の手以外で性の快楽を感じたのはこれが
人生初めて。お父さんが薬のキャップを閉める頃には『もっと、
やってえ~』と心の底で願っていたほどだったのです。


 『でも、よかった。お薬だけで……』
 私は、薬の治療が終わると、勝手によい方へ解釈したのですが、
だったら、なぜ初子さんを呼んできたのか、私の頭からはその事
が欠落していたのでした。

 「初ちゃん、もういいよ」
 お父さんが部屋の扉を開けて初子さんを呼びます。

 『何だろう?』
 と思っていると今度は部屋の奥で椅子に腰掛けて膝を叩きます。

 「えっ!!!」
 私の全身に電気が走りました。
 だって、それって『これからお尻叩きます』ってことですから。
子どもだったら身の毛のよだつ光景。『夢なら醒めて』って願う
出来事でした。

 「おいで」
 お父さんの声にも、しばらくはその場に立ち竦んで足が一歩も
前へ進めませんでした。

 「ん!?」
 振り返ると初子さん。怯える私の両肩を初子さんの両手が鷲づ
かみにしています。

 「仕方がないだろう。最近の早苗はおいたが過ぎてお母さんの
手には余るみたいだからね。連絡帳でも、担任の桜井先生が心配
なさってるみたいだし…『やらなきゃいけないものはどんな事が
あってもやりとげて…ダメと言われたらやらない。我慢するもの
は我慢する』子どもとして当たり前の事がちゃんとできるように
ならないと、この先早苗ちゃんが苦労すると思ってね。はっきり
教えてあげることにしたんだ」

 「お・し・り・に……」
 恐々私が尋ねると、答えは明快でした。

 「そう、お尻に……言葉で言って足りるならそんな事はしない
けど、それでは足りないってお母さんも桜井先生も、そして私も
……みんな思ってるの……嫌かい?」

 「…………」
 こうお父さんに言われて私は首を小さく振ります。お仕置きが
好きな子なんてどこにもいませんから……でも……

 「だったら、ここを出てよその家の子になるかい?」

 「…………」
 こう言われると、もっと大きく首を振ります。

 「それじゃあ、決まりだ」

 家を追い出されるなんてこと、子どもには想像もつかないほど
の恐怖でしたから、道は最初から一つしかありませんでした。

 私は初子さんに肩を押されて、お父さんの処へ行きます。
 でも、そこでお父さんのお膝にうつ伏せになってからは、もう
覚悟は決まっていました。

 『とにかく必死に我慢しなくちゃ』
 それだけだったのです。

 「宿題を友だちに頼んではいけません。わかってるね(ピシャ)」

 「はい」

 「お勉強もっと頑張らなきゃ。このままじゃ、ター坊やアー坊
に抜かされちゃうぞ(ピシャ)」

 「そんなあ」

 「そんなあじゃない。本当だ。あの子たちは頭もいいし、素直
だから飲み込みも早いんだ。お前はもっと頑張らなきゃ(ピシャ)」

 「は~い」

 「お母さんが最近早苗は素直じゃないって言ってるよ(ピシャ)」

 「昔からよ。お母さん、私が嫌いなんだもん」

 「ほら、またそんなこと言って(ピシャ!)」

 「いやあ、痛い」

 最初はこんな感じでした。お父さんのお尻叩きは、お母さんと
違って最初の二つ三つから「痛い!」って悲鳴をあげるほどでは
ありません。
 ドスン、ドスンって、一発一発が重くて身体全体が突き上がる
感じがしますが、七つ八つまでは雑談ができました。

 ただ、いつまでも鼻歌交じりというわけにはいきません。
 10回を超える頃から次第に蓄積した痛みが辛くなり、それが
お尻だけでなく全身を覆って息も苦しくなります。

 脂汗が流れ、逃げ出そうにも動かせるのは手足だけ。大きな腕
で腰のあたりが完全にロックされていますからお尻はぴくりとも
しません。
 お母さんのスパンキングなら『お尻が痛い痛い』と言いながら
も身体全体少しは動かせるのに、お父さんに捕まるとそれができ
ないんです。

 がっちりと絡め取られた身体は、何より抵抗しようという気力
を失わせます。

 「あっ、だめえ」

 「何がダメだ。お仕置きは始まったばかりだぞ(ピシャ)」

 「あっ、あっ、いやあ、いやあ」

 「イヤじゃない!(ピシャ)」

 「だめえ、タンマ、タンマ……」

 「タンマなんてないよ。ようくお父さんの痛みをかみ締めるん
だ(ピシャ)」

 「いやあ、助けて~え。もうしません。もうしませんから~~」

 「ほらほら、そんなに簡単に音をあげないの。女番長が泣くぞ。
(ピシャ)」

 「いやあ~~~やめて~~~死んじゃう、死んじゃう」

 「そんな大きな声を上げて……ター坊たちに聞こえちゃうぞ。
(ピシャ)」

 「聞こえていい。聞こえていいから助けに来て~~」

 「しょうがないなあ、じゃあ、今度からちゃんと勉強するかい?
(ピシャ)」

 「します、します、ごめんなさい」

 「ごめんなさいはいいけど、どうも、お前のは嘘くさいなあ。
本当かい?(ピシャ)」

 「ほんとう、ほんとう、ほんとうだからもうぶたないで」

 「お友だちに宿題なんか頼まないね。本当だね。分かったね。
(ピシャ)」

 「頼みません、頼みません、頼みません、絶対、絶対、絶対」

 「よし、それじゃあ、平手のお尻叩きはこれくらいにしようか。
……だけど、お前も、もうそこそこ身体も大きいし平手じゃ限界
だな。そろそろ鞭でのお仕置きも覚えておいた方がいいだろう。
どのみち中学生になれば経験することなんだから」

 私の目の前に亡霊のような火の玉が飛びます。強いショックを
受けると、人間、見ている景色のどれとも焦点があわず、周りの
景色がまるで幽霊のようにゆらゆらと揺れて見えるんだそうです。
 『そんなの嘘でしょう』
 私は卒倒しそうでした。

 そりゃあ、お母さんにだって竹の物差しでお尻を叩かれたこと
はありましたが、それはまだお尻を平手で叩かない代わりにやる
お遊びみたいなもの。

 でも、今はたっぷりお尻が出来上がった後なのです。
 しかも、近所の子の話では、中学で行われる鞭打ちではお漏ら
しする子もいるとか……

 そんなこんなが頭をよぎるうち、私はもう無意識にお父さんの
胸の中に抱きついていました。
 甘えたと言った方がいいかもしれません。
 女の子はこんな時、甘えて急場を凌ごうとします。

 すると……
 「しょうがないなあ、女の子はすぐこれだ」
 お父さんは、不満そうでしたが、自ら抱きついてきた私の頭を
なでなで、胸の中で涙を拭かせてくれました。

 「よし、よし、わかったわかった。鞭は今回やめてあげよう。
でも、お仕置きはまだ続けるよ。やるときは徹底してやらないと、
効果がないからね」
 お父さんはこう言うと、首だけであたりを見回し、初子さんを
探して、強烈な言葉を言い放ちます。

 「初子ちゃん、悪いけど、お浣腸の準備してくれないか。この
子に赤ちゃんやらすから……」

 それは、私の目の前で再び火の玉が揺れた瞬間でした。
 『やめてよ、赤ちゃんなんていやだよ』
 私は気が遠くなりそうでした。いえ、正確にはそう願っていた
だけということでしょうか。
 いずれにしても、私は焦点の合わない目であたりの風景を見る
ことになります。

 『赤ちゃん』というのは我が家独自のお仕置きで、お浣腸され
オムツをされ、そこにウンチをすることを強制される罰。つまり、
『お前は子どもですらない、まだ赤ちゃんなのよ』というわけ。
弟たちの年齢(小2)ごろまでは私もやられていました。

 「だめ、行っちゃ」
 私は初子さんが部屋を出て行く瞬間思わず声をかけましたが、
私の声を初子さんがきくはずもありません。
 そのうち……

 「どうしたんだ?いいじゃないか、連絡帳を見るともう3日も
ウンチためてるみたいだし、ちょうどいいだろう」
 お父さんの声が頭の上から降ってきます。

 『冗談やめてよ。私、もう11歳なのよ。5つ6つの幼稚園児
と一緒にしないでよ。……ここは地獄なの。……お父さんは鬼よ。
悪魔たせわ。こんなの夢よね、醒めて、早く醒めてよ!!!』

 本来ならまだまだお尻が痛いはずですが、それも忘れて、お父
さんには言えない本音が頭の中を駆け巡ります。
 本当は声に出して訴えたいのですが、そんな勇気は、さすがに
ありませんでした。

 これ以上お父さんを怒らしたら……そう思うと、昔、庭の物干
し竿に裸で縛られた記憶が蘇ります。……もちろん、そんなこと
絶対にあってはなりません。
 仕方なく、私はお父さんの胸の中に頭をこすり付けて身の不運
を泣くことしかできませんでした。

 「ん?……どうした?……恥ずかしいか?お前くらいになると
恥ずかしいお仕置きが一番こたえるみたいだな」
 お父さんに言われて一段と襟を持つ手に力が入ります。我が家
では痛い悲しいだけじゃなく恥ずかしいというお仕置きも決して
少なくありませんでした。


 「これでよろしいでしょうか」

 そう言って初子さんが持ってきたのはお母さんが弟たちの為に
よく使うお浣腸のセット。
 ガラス製のピストン式浣腸器やグリセリンを入れた茶色の硝子
壜。バスタオル、実際に使うイチヂク浣腸器、もちろんオムツも
オムツカバーも特注のものがあらかじめ用意されていました。

 「さあ、準備が出来たら始めようか。チビたちの場合は暴れる
と危ないからイチヂクを使うけど、お前はもう大きいから、その
心配はないだろう。これでやるよ。いいね」

 お父さんは大きな注射器のような硝子の浣腸器を手にします。
 でも、不思議と驚きはしませんでした。その時は『もうどうに
でもなれ』という心境だったのです。
 要するに開き直りです。

 そうなってみると、先ほどまであんなにお股の中を見られるの
を嫌がっていたのに、それもどうでもよくなってしまいます。

 さっきと同じようにテーブルの上に仰向けになると、自ら両足
を高く上げます。私の大事な処は全部全開。今度は、初子さんに
だって見られていますが、でも、不思議と何の感情も沸いてきま
せんでした。

 ただ……
 悲しいとか恥ずかしいという感情は抜きに涙だけがこぼれます。

 「じゃあいくからね、じっとしてるんだよ」
 お父さんは、そんな私のお尻の穴に硝子の突起をつき立てます。

 「あっ……」
 異物の進入に、思わず、お尻が栓をします。

 「ほら、お尻の穴に力をいれない!」
 お父さんに言われていったん力を抜きますが、突起が当たった
瞬間、また無意識に閉じてしまいます。

 「ほら、また……あんまりイヤイヤしてるとお灸をすえてから
にするよ」

 「はい、ごめんなさい」
 私は、お灸という言葉に敏感に反応します。当時、お灸は親の
お仕置きの最終兵器。私もやられてヒーヒー言った経験がありま
す。それに後押しされて……

 「あっ……(くるな、くるな、いやいやいや)」
 心持とは反対に私はやっと肛門を開けて待つことができたので
した。

 二回に分けて全部で60㏄。五年生の女の子にしてはけっこう
な量でしたが……
 『はじめからおトイレを許すつもりはない』
 そんなお父さんの決意の表れでした。

 オムツをあてられてからは泣き通しでした。
 「いやあ、いやあ、ごめんなさい、もうしませんもうしません、
オムツいや、ごめんなさい、おトイレでする、だめ、オムツいや」

 そんなことを言ってたみたいです。(みたいですというのは、
私自身その時のことは覚えていないのです。パニックでしたから)

 「だめだよ、今日は許さないからね、必死にお父さんのお膝で
我慢するんだ。もしすぐに出したら、それはそれでお灸だからね」

 ここでもお灸が登場します。お灸は、実際にすえられた回数は
少なくてもその強烈な思い出から脅し文句には最適だったのです。

 「いやあ、お灸いやあ、お灸しないでねごめんなさい、だめえ、
出ちゃう、早く、早く、もう出ちゃうから……」
 私は必死にお父さんの襟を握り占めて耐え続けます。

 「よし、もういいよ」

 やがてお父さんにそう言われましたが……
 今度は『はいそうですか』とは簡単に応じられません。

 プライド、矜持、誇り……
 いえ、いえ、そんな格好のいいものじゃないんです。それまで
にしみついた生活習慣が、オムツへのウンチを拒否していたんだ
と思います。
 もう、真っ赤な顔をして、全身痙攣を起こしたようにして耐え
ていました。

 でも、そういつまでも耐えられるものではありません。何しろ
お父さんは最初からオムツ替えをするつもりでいるのですから、
おトイレを許してもらえる見込みはありませんでした。

 忍従の時間が10分を超え、お父さんが私のお腹をさすり始め
ます。

 「いやあ~~~~」
 ……その時が来ると、頭の中は真っ白になります。

 オムツに重みが加わり、お股はべちょべちょ。浣腸液でウンチ
が薄まっているとはいえ匂いだって漏れます。五年生にもなって
これ以上の醜態はありませんでした。

 放心状態のなか、でも、お父さんは淡々と私のオムツを替えて
いきます。そういえば、うちの両親はこんなお仕置きを考えつく
くらいですから、子どものウンチには寛容でした。

たとえお漏らししても……
 『あなた、どうしてこんなにだらしがないの!』
 と言っては叱りませんでした。

 むしろ、オムツ替えが終わると、まるで本当の赤ちゃんのよう
にして抱いてあやしてくれます。
 その時の私も、お父さんに替えてもらったオムツを穿いてお膝
の上で甘えます。

 もうその時は本当に幼児に戻った気分でした。

 「明日からしばらくは何かあるたびにお仕置きお仕置きの日々
だから覚悟しとくんだな。だけど、お父さんもずっと一緒だよ。
応援してあげるから、頑張ろうね。……それが、必ず早苗ちゃん
の将来に役にたつんだから……」

 「うん」
 私はそう言ってお父さんの胸の中に顔を隠します。

 思えばこんなにも厳しい言葉を言われたのに、私は素直な心で
『うん』と言います。
 それって親子だからなんでしょうか、それともオムツを穿いた
せいでしょうか、いつになく素直な自分が何だかとっても不思議
で、私はお父さんのお胸の中で思わず笑ってしまったのでした。

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6/15 早苗お姉ちゃん(短編/読みきり小説)

6/15 早苗お姉ちゃん(短編/読みきり小説)

*)世の中で作者だけH小説だと思っている小説。(*´~`*)

 僕の兄弟はター坊と呼ばれている僕と弟のアー坊、それに早苗
お姉ちゃんの三人。

 僕とアー坊は双子。お母さんとしては初めての男の子でよほど
嬉しかったんだろうね、舐めるようにして育てられた。おかげで
二人はとてもおとなしかったんだけど、三つ上の早苗お姉ちゃん
は、お母さんがきっと自分の子分にしたいと思って育てたんだろ
うね。もの凄い女傑だったんだ。

 とにかく入学早々の1年生の時、無礼なことを言った男の子を
全裸にして謝らせたという武勇伝の持ち主。退学寸前までいった
らしいけど、そのほかにも『本校始まって以来』という前置きの
つく出来事が沢山あって、僕たちが入学した時は、『あの子の弟
ってどんな子たちだろう』ってみんなから注目されたものだった。

 それが拍子抜けするほどおとなしかったから、逆にビックリ。
『あの姉弟、血の繋がりがないんじゃないか』なんて言われた。

 そんなお姉ちゃんだけど、学校の成績はさっぱりで、通知表の
中身は2と3以外の数字はたしか載ってなかったと思う。日舞や
お琴もお義理にやってはいたけど、とにかく不器用だからね、お
世辞にも上手ではなかった。

 要するにお母さんと同じ学生時代というわけ。(親子だからね、
仕方がないか)

 だけど、弟おもい(というより余計なお世話、はた迷惑なんだ
けど)でね、僕たちが低学年の頃は毎日というより、毎時間休み
時間になると僕たちの教室への見回りを欠かさなかった。
 そこで僕たちを虐めるような子がいたら、その子の胸倉を掴ん
で暴力的に注意をしてから自分のクラスへ帰っていくんだ。

 おかげで、恐怖の上級生ということで僕たちのクラスでも有名
だったよ。

 そんなお姉ちゃんだからね、学校でのお仕置きだって、1度や
2度なんて単位じゃなかった。ある日の午前中、バケツを持って
廊下に立たされているのを見かけたんだけど、午後になるとまた
同じ格好してた。
 よほど、ああいう格好が好きなんだろうなあって思ったね。

 学校でもそんな感じだったからね、家じゃもっと凄かった。
 そもそもお母さんってお姉ちゃんとは同じタイプの人。ともに
我が強くて+と+だから、いつも衝突しちゃうんだよ。

 普通はさあ、家に男の子と女の子がいたら、男の子の方が沢山
お仕置きされるっていうのが常識だよね。でも、うちは違うの。
この姉のおかげで、まったく立場が逆だったんだ。

 僕たちが1度お仕置きされる間にお姉ちゃんの方はもう3回も
4回もお仕置きされてたもん。しかも、これが超過激(お母さん
本人はそうは思ってないみたいだけど…)ときている。お尻叩き
には竹の物差しが当たり前だし、お灸や浣腸だって日常茶飯事だ
ったんだ。

 もちろん、お姉ちゃんは強い人だけどお母さんにかなうわけが
ないじゃない。何かあると仏間やかお父さんが書斎にしてる離れ
へ引っ張って行かれて、そこからお姉ちゃんの熊のいびきみたい
なもの凄い悲鳴がたびたび聞こえてたんだ。

 これはそんなある晩の出来事なんだ。

 僕はお姉ちゃんがお風呂からあがったかどうかを確かめようと
してお姉ちゃんの部屋へ行った。
 「お姉ちゃん、僕、お風呂はいるよ」
 そう言って、引き戸になっていた戸を開けたんだけどね。

 「………………」
 そこにお姉ちゃんがいた。ベッドの上で足の爪を切ってた。
 いや、それだけ言うと何でもないことのようだけど、問題は、
その姿。すっぽんぽんなんだよね。ショーツ1枚穿いてなかった。

 そもそもお母さんだって、お風呂上りはすっぽんぽんで居間に
やって来ては椅子にドカンとすわって、「ター坊、私のパンツ」
「アー坊、ジュース持ってきて」なんて言う人だから、これって
多分に母の影響なのかもしれないけど……

 ただ、この時お姉ちゃんは怒った。

 「何じろじろ見てるのよ!恥ずかしいでしょう!」
 って言うんだ。

 『そう思うなら何か着ろよ』
 とは思ったけど、女の子っていうのは男が当たり前と思ってる
ことが当たり前じゃないから困る。

 とにかく、枕が飛んできて怖かったからその場を離れた。

 その後、久しぶりにアーちゃんと二人だけのお風呂。その日、
お母さんは踊りの発表会の会場を借りて流通品の出張販売をして
いたから留守。代わりに子守の初子お姉ちゃんが僕たちの身体を
洗ってくれることになってたんだ。
 ちなみに僕たち二人は、初子お姉ちゃんの前でもフルチンだけ
ど、べつに恥ずかしいなんて思ったことは一度もなかったよ。

 お姉ちゃんだって、四年生までは僕たちと一緒のお風呂だった
はずなのに最近は自分一人でお風呂に入るようになって、五年生
の今は自意識過剰ぎみなんだ。
 
 さて、お風呂から上がったら、我が家では普通はお勉強時間。
だけど今日はお母さんがいないから適当に宿題だけやってパス。

 こんな天国時間は久しぶりだから、お祝いに二人でサイダーを
空けて飲んだ。あては食器棚の一番上に乗っかってる泉屋のクッ
キー。毎日こんなに自由だといいんだけど、こんなのは月に1回
あるかどうか、子供って大人のあてがいぶちで生活しなきゃいけ
ないから辛いんだよね。

 お腹に甘いものが入ってルンルン気分になった僕たちは、お父
さんの処へ。
 この人、お母さんみたいにこれといって面白い人じゃないけど、
一応家族だし……何より行けば邪険にはされない。必ずお膝に抱
っこかお背中のんのしてよしよししてくれるんだ。

 こういうのって世間じゃ子煩悩って言うのかもしれないけど、
ただ、この人話題には乏しかった。何しろ趣味が書道と東洋哲学
の研究っていうんだもの、暗いんだよ。

 僕たち幼いからね、お父さんのお話に興味なんてなかったけど、
それでもお付き合い程度には聞いてあげてたんだ。すると、観客
がいるのが嬉しいんだろうね、さらに熱心に語り始めるんだ。

 だけど、幼い頭脳にそんなの面白いわけないじゃないか。だから、
子守唄代わりに聞き流して、あとはお膝の上でネンネしてたんだ。

 その日だってそんな予定で出かけて行ったんだけど……ただ、
その日は僕たちがお父さんの懐で寝こむ前に来客があった。

 「あっ、お姉ちゃん」
 僕たちにとってそれは何でもないこと。だって、お姉ちゃんが
お父さんの部屋を訪れたからって問題ないことだもん。ただ、お
姉ちゃんにしてみたら、僕たちの存在は予想外という顔だった。

 『余計なのがいた』
 露骨にそんな顔だったんだ。

 「どうしたんだ?」

 お父さんが問いかけると、お姉ちゃんは満面の笑みで僕らの処
へやって来て、お父さんの首っ玉に抱きつく。

 『何かある?』
 子供の勘で、そう思ったね。
 お姉ちゃんがこんな風にデレデレっとしてる時は、何か魂胆が
あるに決まってるんだ。

 案の定、お姉ちゃんはお父さんの目の前で連絡帳を取り出した。
 そして、さらに甘い声を出してお父さんに迫る。
 「ねえ、ここにハンコ押して欲しいんだけど……」

 完全に色仕掛け。いや、子供だから子ども仕掛けかな。

 お姉ちゃんが差し出した連絡帳には学校でその日何があったか
が詳しく書いてあるの。もちろん、よい行いも書いてあるけど、
お姉ちゃんが問題にしているのは、当然悪い方の行い。
 なかには、『お家でも相応の罰をお願いします』なんて露骨に
書かれたりするんだ。
 子どもにとっちゃたまらないよね。

 そんな連絡帳、普段だったらお母さんがチェックするんだけど、
今日はあいにく不在。もちろんそんな時でも、お母さんがおめか
しする鏡台なんかに放り投げとけば、明日の朝学校へ行く頃まで
には、お母さんがハンコを押してランドセルに入れといてくれる
んだけど……どうやらお姉ちゃんとしては、そうしたくない理由
があったみたいなんだ。

 理由は簡単。今日は学校でうまくいかなかった。……このまま
連絡帳をお母さんに見せたら、叱られる……いや、お仕置きされ
かねない。……そこで、そんな心配のないお父さんの処へ持って
きた。
 そんなところだ。

 お父さんはお母さんに比べてグンと優しいからね。それに期待
したんだと思うよ。

 ところが、この日のお父さんは連絡帳を隅々まで読みかえしは
するものの、なかなかハンを押してくれなかった。

 「…………」

 気を揉むお姉ちゃんを尻目にお父さんは連絡帳を読み終えた後
もゆったりと構えてたんだ。
 僕の経験則なんだけどね、こういう時のお父さんって、本当は
機嫌の悪い時が多いんだよ。

 だからこの時はこれからどうしようか考えてたんじゃないかな。
 お姉ちゃんにも、しばらく時間を置いてからこう言ったんだ。

 「喧嘩したお友だち……清史君とは仲直りできたのかい?」

 「うん」
 お姉ちゃんは生返事した。

 きっと、お姉ちゃんだって『まずいなあ』って思ってたはずだ。
 だって、普段のお父さんなら何も言わずハンコを押してくれる
もん。……なのに、これじゃあお母さんと同じ。

 実を言うと、僕もお母さんじゃ叱られると思ってお父さんの処
へ連絡帳を持っていったことがあるんだ。

 ただね、その時はあえて忙しそうにしてる時を狙うの。すぐに
ハンコがもらえて『やったあ!』と思ったことが何度もあった。
 ところが、お姉ちゃんは大雑把な人だからそんな細かなこと、
気にしないんだろうね。
 いずれにしても世の中そんなにうまくはいかないみたいなんだ。

 「理科が60点……社会科は70点か……早苗ちゃんとしては
普通かもしれないけど、もう少し頑張らないといけないな。……
ところで、この家庭科の宿題はなぜ出たの?これを読むと、早苗
ちゃんにだけ特別に出された宿題みたいに書いてあるけど……」

 「それは…………」
 お姉ちゃんは口ごもる。本当は言いたくないって顔だった。
 たけど、お父さんにきかれたら仕方がなかったみたいなんだ。

 「家庭科の宿題、星野さんにやってもらったんだけど……それ
がばれちゃって……それで、新しい宿題出されちゃったの。……
お手玉を二つ縫ってらっしゃいって……」

 「なるほど、そういうことか……」

 「だいたい、加納って先生、陰険なのよ。私が提出したお手玉
だけを解いて『ここ、もう一度縫ってごらんなさい』だって……
クラス中の子が全員見てる前で、赤っ恥かかされたんだから……
だいたい星野さんも星野さんよ。私がお裁縫苦手なこと知ってる
んだから、もっと下手にやってくれればいいのに……」
 お姉ちゃんは身勝手な愚痴を饒舌に語ります。

 「でも、それって宿題をお友だちに頼む君は悪くないのかな?」
 お父さんが穏やかに尋ねると……

 「それは……」
 お姉ちゃんは口ごもってしまいました。

 お姉ちゃんにとっては、宿題もテストも自分で努力するより先
に誰かやってくれそう友だちを探す方が優先だったみたいです。
 女の子って、みんなこんな了見なのかなあ。うちのクラスでも
そんな女の子が結構いるんだよね。

 もちろん、これってお姉ちゃんが悪いんだけど、この人、何回
注意されてもお仕置きされてもこうしたことは懲りない人だった
んだ。おそらく他人を利用することこそがお姉ちゃんにとっては
人生哲学だったんだろうね。

 そんなお姉ちゃんにお父さんはある文字を書いて渡します。
 そこには学年が上のお姉ちゃんでもなかなか書けないような、
難しい字が並んでいました。

 「恃人不如自恃也。人を恃(たの)むは自ら恃(たの)むに如(し)
かず。他人を頼ることを考えるより、自分でやったことの方が、
多くの成果が得られるよ、ということ」

 「ふ~ん……こっちは?」

 「巧詐不如拙誠,惟誠可得人心。巧詐(こうさ)は拙誠(せつせ
い)に如(し)かず。人を煙に巻くような巧みな言い逃れよりも、
不器用な誠実さこそが人の心を打つもの。失敗も、正直にそれに
向き合うことが大事だよ、ということさ」
 (う~~ん、どっかの知事に聞かせたい(`ε´))

 「ふ~~ん」

 「どちらも、韓非子という人が言った言葉だ。早苗ちゃんには
まだ難しいだろうけど、今はこれを綺麗に清書して机の前の壁に
貼っておきなさい」

 「えっ、こんな難しい字書けないよ」

 「大丈夫、お父さんが教えてあげるから」

 早苗ちゃんはかなり不満そうでしたが、そうしないとハンコが
もらえないみたいなんで、渋々、この言葉を書き写します。

 いえ、こういった被害者は何も早苗ちゃんだけではありません
でした。
 お父さんは僕たちにも『孔子』『荘子』『老子』といった人たち
の言葉を覚えさせたんです。

 お父さんが僕たちに教えてくれたことは、それが学力の向上や
直接生活の役に立つようなものはありません。ですが、お父さん
のお膝の上で、子守唄代わりに色んな知識を聞かされていると、
不思議と心が穏やかになって、その言葉や知識がとても魅力的な
ものに思われるようになるのでした。

 お父さんは滅多に子供たちをぶったりしませんでしたが、でも、
稀にそうする時は『明主之所導制其臣者,二柄而已矣。二柄者,
刑德也』というのと、『遠水不救近火也』という言葉を中国語で
唱えていました。

 こちらは子供ですからね、そんなこと言われても分かるわけが
ありませんから、『へんてこな呪文だなあ』と思いながら聞いて
いたんですが……その断片が大人になっても記憶に残っていて、
……そこから本来の意味にまで辿り着いたんです。

 それはともかく、この時の早苗お姉ちゃんは不運にも……その
稀なケースに当たっちゃったみたいで……

 「いやあ~~~もうしないで~~~ごめんなさ~~~い………
ひぃ~~だめえ~~~壊れる、いやだあ。やめてえ~~いやあ、
いやあ~~…(ピシッ)…(ピシッ)…(ピシッ)…(ピシッ)
もうしないで~……お願い、何でもします、もうしませんから…
いやあ~~…(ピシッ)…(ピシッ)…(ピシッ)…(ピシッ)」

 僕らはお父さんに部屋を出されたあと、自分の部屋で二人して
お姉ちゃんの悲鳴を聞くことになります。
 ですから、その時も、お父さんはあの呪文唱えてたと思います。


 お仕置きが終わったら……
 頭なでなで、ほっぺすりすり、お背中トントン、お尻よちよち、
というのも必ずあったはずです。
 だって、それは我が家のお仕置きの伝統ですから。

 やがて、仕事から帰ってきたお母さんの声がすると、早苗お姉
ちゃんは玄関に飛んでいっていきなり抱きつきます。その後も、
何かにつけてお母さんにたっぷり甘えていました。

 『母娘なんだから当たり前?』
 いえいえ、我が家ではなかなか見られない光景なんです。

 そういえば、お父さんがこんなこと言ってましたっけ……
 「私があまり怒らないのは、私が怒ってしまうと、この家で、
お前たちの逃げ場がなくなってしまうからなんだ。子どもが何を
したにしろ、そこまで子どもを追い込んじゃいけないからね」

 お母さんと早苗お姉ちゃんって、普段は寄ると触ると喧嘩ばか
りしてるみたいですけどね。本当はとっても仲がいいんですよ。

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6/13 夜中に化けてて出ない男たち

6/13 夜中に化けてて出ない男たち

*)簡単なエッセイ

 昔、女性を評した言葉に……
 『ちやほやすれば付け上がり、怒ればふくれる、ぶてば泣く。
殺せば夜中に化けて出る』
 というのが落語にあったけど、僕は男だから『なるほど』って
納得してしまった。

 他にも……
 「君は何で算数が嫌いなの?」って幼い子に尋ねたら「だって
算数には人間が出てこないんですもの」というのがあった。

 これも、要するに数式や計算で先を見通すより、手じかにいる
人間を誑し込んだ方が、簡単に問題が解決できるという思いから
なのだろう。

 ことほどさように、女性というのは人との関わりで問題を解決
しようとする生き物なんだろう。だから、相手が敵でも悪魔でも
その関係をとにかく断ち切りたくないのだ。

 そんな女の子だから、どんな時だってお付き合いというものを
欠かさない。

 この『お仕置き』だってそうだ。
 男の場合、親や教師に理不尽なことをされると、すぐに怒って
その場の雰囲気を壊してしまうことが多いが、女の子はそんな時
でも割にすんなりと罰を受け入れてしまう。

 要するに、彼女たちにしてみればお仕置きだって相手とのお付
き合いの一つ。利用価値のありそうな相手に嫌われたくないから、
よほど深刻な内容でもない限り相手の顔を立てて承知してしまう
のだ。

 だから、さぞや先生は女性びいきなんだろうと思って……
 「男というは、勝手気ままに生きてるから困りものですね」
 って自虐的に言ったら……その先生……

 「だから男はよくぶたれるのさ。ぶてばそれなりに効果がある
ってわかってるから。『なにくそ』って思わない女性をぶっても
効果がないからね。だからぶたないだけ。べつにか弱いからだけ
じゃないんだよ」

 『う~~ん、そういうことだったのかあ』
 って、こちらも変に納得してしまった。


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6/11 女の都 ~16~

6/11 女の都 ~16~

*)本日、体調不良で筆が進まなかった。
 つまらないので無視してください。次回、また頑張ります。


 ケイトにとって夜の読み聞かせは、オナニーを指摘されて仕方
なくやり始めたことでしたが、妹たちのたくましい想像力に触れ
るうち、ケイト自身も夜のベッドが楽しくなります。

 ナンシーやエリザベスは自ら描いたイラストをはめ込みますし、
マリアやポーラは自分で作曲したメロディーをBGMに使います。
エレーナやローラにいたっては、想像力がたくまし過ぎて原作は
題名と固有名詞以外何も残っていませんでした。

 それでも楽しかったのは妹たちの感性が豊かだったから……

 『この子たちって、お勉強だけじゃなくて、芸術的なセンスも
相当なものだわ。やっぱり頭の良い子って何やらしても非凡なの
ね』

 感心しきりで付き合ううちに、ケイトはキーウッド先生が指摘
する男の子らしい受け止め方という意味が少しずつ分かってくる
のでした。

 「私、あの子たち見ていて思うんです。『この子たちって単純
に悲劇が嫌いなんじゃなくて、自分の力ではどうすることもでき
ない現実に耐えられないんじゃいか』って……女の子って色んな
ことに感情移入しますけど、それってあくまで『私』っていう殻
の中から見ているだけで、その問題に本気で同化なんてしません
もの。私は私、あなたはあなた、そんなこと当たり前なはずなの
に、あの子たちときたら、どんな些細な事にもその気持がすぐに
同化してしまうみたいで……だから悲しいお話に耐えられないん
じゃないかって思うんです」

 それをキーウッド先生にぶつけてみますと……

 「それがわかれば立派なものだわ。あなた明日から教師になれ
るわよ」

 「茶化さないでくださいよ」

 「茶化してなんかいないわよ。中学生とは思えない洞察力だわ。
……要するに男の子ってね、自分とは何の関係もないことにまで
純粋に自分の事として置き換えてしまうの。心がうぶなのよ」

 「だって、それは誰だって……」
 ケイトが思わず口走ると……

 「本当に?」
 キーウッド先生は疑わしそうにケイトの顔を覗く込みます。

 「えっ!?」

 「だってあなたが言ったのよ。女の子は自分の殻を破って同化
なんかしないって……」

 「あっ、それは……今はそうというだけで……幼い頃は……」
 ケイトは言葉に詰まります。

 「私たちは外からの情報と自分をはっきり分けて考える習慣が
ついてるけど、男の子ってね、年齢がいってもそれがあいまいな
子が多いの。常に自分が矢面に立ってるって気持でいるのかな。
だから、どんな事にも『自分が、自分が』ってことにこだわるで
しょう」

 「ええ、それは感じます。たとえそれが偶然でも、他人が助け
てくれたにしても、とにかくうまく事が運べば、めでたし、めで
たしでいいじゃないですか。みんなで『よかったね』って喜べば
いいと思うんですけど…それが、あの子たち駄目みたいなんです。
お友だちがせっかく解決策を教えてあげてるのに、とたんに真っ
赤な顔して怒り出すんです。……おかしいです。……そのあたり
ちょっと、変わってます」

 すると、キーウッド先生は笑い出します。
 ケイトにとってはそれってとっても意外な反応でした。

 「私、おかしなこと言いましたか?」

 「いいえ、あなたは女の子なんだし、それは真っ当な考えよ。
でも、男の子は違うの」

 「えっ?どういうことですか?」

 「『自分はこれができる。これができた』ってこと。それが、
あの子たちの値打ち。プライドなんですもの。女の子の場合は、
逆でしょう。たとえ、自分でそれができるにしても『人がやって
くれた。やってもらった』ってことが嬉しくないかしら……」

 「えっ!?……(それはそうですけど)でも、結果が同じって
ことは、それって単なる自己満足にすぎないってことじゃあ?」

 「そう、自己満足よ。大いなる自己満足。でも、それが私たち
には欠けてるの」

 「どういうことですか?」

 「人間の歴史は、いわば馬鹿げた自己満足が沢山集まって発展
してきたようなものなのよ。一つ一つは愚かな行為でもそれが山
と集まった中に未来の発展を約束するダイヤモンドが隠れている
ものなの。他人に同情してもパーフォーマンスだけで、自ら手を
差し伸べない。何をやるにしてもすべて他人がやってくれる事を
期待するというのでは社会は発展していかないわ」

 「……????それって……ひょっとしてオニオン星への批判
でしょうか?」

 「そう捉えてもらっても結構よ。この500年間オニオン星は
実質的に女だけでやってきた。それはそれで穏やかで平和な社会
だったかもしれないけど……でも、それでは進歩は止まったまま。
周りの星からも、置いてけぼりをくってるのが現実なの。だから、
もう一度、今、男の血を入れようとしているのよ」

 「男性が社会にいないと進歩しないってことですか?そんなの
おかしいです。この500年間、この星からだって色んな発明や
発見が出てますよ」

 「確かに小さな改良はいくつもあるけど、でも、他の星々にも
自慢できるような大きな発明や発見があったかしら?」

 「そういうのは……他の星から特許を買って……」
 ケイトの言葉は途中から弱々しくなってしまいます。

 「それってジリ貧ってことよね。決して良いことではないわ。
この星にも研究者はいるのよ。頭のよい子もたくさんいるわよ。
でも、何かにつけ人の目が気になる女の子たちにとって、結果や
成果は二の次になりがち。おざなりな意欲では競争に勝てないわ。
人の目を無視して、どうあってでも自分の夢を叶える、自分の力
で成功させるという強い信念は、やはり男性に比べれば、女性は
弱いものなの。だから、そうした風土を変えていく為にも、社会
の中で男性をもっと増やさなきゃって……上層部も思い始めてる
わけ」

 「そうした特性をあの子たちが持っているってことなんですね」

 「そういうこと。あの子たちは私たちの祖先が持っていた男の
血を受け継ぐ女の子なの。……いえ、偉そうな事を言ってるけど、
私もあの子たちを育てていくなかで、『へえ~、男の子ってこう
なんだ』って驚かされたことが沢山あったわ。あなたが驚くのは
当然よ。……でも、どの子も普段は優しい女の子。それもわかる
わよね」

 「はい、先生。……つまり、男の子と女の子では、何に対して
プライドを持っているかが違うってことなんですね」

 「そういうこと。そのプライドを上手くくすぐってやるとね、
あの子たち、純粋な分だけ扱いやすいのよ。……何しろ、女の子
みたい自分という殻が強くないから、おだてに乗りやすいの」

 キーウッド先生は片目をつぶって、子供たちの秘密をケイトに
伝授したのでした。


***************************


 <寄宿舎>
担任の先生/キーウッド先生
子供たち /ナンシー。ポーラ。グロリア。エレーナ。
エリザベス。ローラ。マリア。
図書室長 /シスターサンドラ(お婆さん)
王子様たち/マイク。フランク。ケリー。

6/9 女の都 ~15~

6/9 女の都 ~15~

*)完全にノーマルな話なになっちゃいました。ごめんなさいね。


 ケイトはその日の夜、ポーラとエリザベスを担当して天蓋付き
の立派なベッドへ入ります。
 そこは子供たちのベッドとは比べ物にならないくらいふかふか
で広々としています。

 そこに本来二人の生徒が添い寝当番として先生の左右に就いて
眠るのですが、それでもまだ十分すぎるほどの余裕があります。

 「先生、こんなに広いと子供たち全員を呼べそうですね」

 ケイトが驚きのあまりこう言うと、先生の答えは簡単でした。
 「そういう時もあるのよ。雷が鳴ってる時は子どもたち全員が
このベッドで寝るの。…みんなお気に入りのぬいぐるみを持って
くるわ。でも、それ以外は独りで寝る習慣もつけないといけない
から……それで当番制なの」

 「私は何を……」

 「ポーラとエリザベスがそれぞれ読んでほしいお気に入りの本
を持ってくるから、それを読んであげればいいわ」

 「そうなんですか。でも、私、あまり難しい本は……」
 ケイトは学校での妹たちの実力を知っていますから不安になり
ます。でも先生は笑って……

 「大丈夫よ、心配しなくても……あの子たち、難しい本なんて
このベッドに持ち込んでこないもの。たいてい絵本だから……」

 「絵本って幼児が読む絵本ですか?」

 「そうよ、あの子たちの昼と夜は劇的に違うの。難しいことは
何も言わないから安心していいわ」

 ケイトは朝もキーウッド先生にそう言われたのですが、そこが
彼女にはわかりませんでした。
 自分より学業が優秀な彼女たちが今さら絵本なんか読みたがる
はずがないと考えていたのです。

 ところが……

 「ねえ、ご本読んでね」
 ケイトの袖を引くポーラの手には『エデンの花園』という絵本
が握られています。
 その後ろに立つエリザベスが握っているのも『二人の天使』と
いう女の都ではよく読まれている絵本でした。

 『高分子化学の基礎』なんて持ってこられたらどうしようなん
て怯えていたケイトは拍子抜けしてしまいます。
 正直、この二人が自分のことを馬鹿にしてわざとやっているの
かとさえ思いました。

 でも、それも違っていたのです。

 今日当番のナンシーもエレーナも先生に読んでもらおうと持っ
てきた本は『森のお姫様』と『水車小屋の小人たち』。いずれも
幼児たちには人気の絵本でした。

 『この子たち、こんな本を読んでもらって面白いのかしら……
そんな時代はとうに卒業してると思うんだけど……』
 ケイトはいぶかります。

 でも、ベッドに入った二人はケイトにぴったり寄り添うと絵本
を食い入るように見、ケイトの声に耳を傾けます。
 その仕草は幼児と何ら変わりありませんでした。

 『この子たちの頭の中ってどうなってるんだろう』
 そんな事を思いながら読み進めていくと、ケイトは不思議な事
に気づきました。

 『えっ!?この本、メーテルが死ぬシーンがないわ』

 一般の本では、主人公ナターシャの親友で花妖精のメーテルが
亡くなるシーンがあるはずなのですが、それがこの本にはないの
です。

 でも、その時は……
 『きっと街ではこんな展開の本も出てるのね』
 と軽い気持でした。

 ところが『二人の天使』を読み始めるとさらにその違いが際立
ちます。

 『何なの、これ!?』

 『二人の天使』は、本来神様の怒りに触れた二人の天使が苦労
に苦労を重ねて再びエデンで暮らせるようになるまでのお話なの
です。
 なのに、ケイトが今こうして読んでる本には、そんな苦労話が
一つも載っていません。

 エデンを追放されたはずの二人が落ち込むシーンなんてどこに
もなくて……むしろ、二人の天使は窮屈なエデンから解放されて
パッピーとばかりに世界旅行を楽しんでエデンに戻って来るので
す。話の筋が最初から最後までとてもハッピーなものに書き換え
られていたのでした。

 『これじゃあ、面白くないでしょう』

 ケイトは思うのですが、見れば二人はケイトに寄りかかるよう
にして、すやすやと寝てしまっています。
 その笑顔は幼児と同じ。幸せそのものの笑顔でした。


***********************

 ケイトは次の日の朝、食事の席でキーウッド先生に尋ねてみま
した。

 「昨夜読んだ絵本、随分と脚色してあったみたいなんですけど、
あれ、先生がなさったんですか?」

 「私が手を入れたのもあるけど、大半はこの子たちの希望なの。
この子たち心は半分男の子だから、女の子が大好きな不幸なお話
は苦手なのよ」

 「男の子って不幸なお話はだめなんですか?」

 「私も王子様たちを教育したことがあるからわかるんだけど、
男の子って、女の子のように不幸を楽しんだりしないの。男の子
ってね、何でも自分の力でやって最後は必ず成功させる。いつも
そんな夢ばかり追ってるの。『不幸だったけど偶然幸せになった』
『誰かが幸せにしてくれた』なんて物語は、男の子の心の中には
ないの。荒唐無稽でもいいから自分の力で無理やり幸せにしちゃ
わないと気がすまないのよ」

 「それで、ご都合主義というか、どんな不幸な状況もたちまち
幸せなお話になっちゃうんですね」

 「この先色んな困難を体験すれば、あの子たちが創るお話にも
深みが出てくるんでしょうけど、今は日常生活でも、やれば必ず
成功するように私たちも仕向けてる最中だから、なおのことなの。
この子たちにとっては、どんな不幸だってたちどころにパッピー
にならないと承知しないのよ」

 「…………」

 ケイトは女の子なので男の子の生理について詳しくはわかりま
せんが、男の子という生き物がお昼にみせる力強さと夜に見せる
繊細さの二面性を持っていることだけは何となく理解できたので
した。


*************************

 天蓋ベッド二日目。
 ケイトの担当はグロリアとローラでした。

 ケイトは昨晩と同じように物語を語り始めます。すると、最初
はおとなしく聞いていたローラでしたが、突然、ケイトから絵本
を奪い取ったのです。

 『えっ、何!?』 

 驚くケイトを尻目に、ローラが始めたのは物語の変更でした。

 彼女は奪い取った絵本を自分の好きなように変更します。
 文章を代え、イラストを差し替えます。
 電子絵本と呼ばれるこの種の本型タブレットならそんなことは
造作のないことだったのです。

 『これだったのね。どうりでどの本もオリジナルが大きく変更
されてると思ったわ』
 ケイトは苦笑いです。

 もちろんこのタブレット、巷でも使われていましたが、ただ、
世間の母親たちは娘がオリジナル版を勝手に修正することを認め
ていませんでした。
 物語の文章をいじったり挿絵を変更したりするのは親の権限。
子供にそんな勝手な真似はさせていなかったのです。

 それがここでは自由だったことにケイトは初めて気づいたので
した。

 ケイトはローラが物語りをどのように変化させるのか興味津々
で見ていました。

 すると、彼女……

 『えっ?…………』
 ケイトは困惑します。

 ローラが修正したのは、ハッピーなはずの主人公の家庭生活。
それが、厳しい母の態度によってお仕置きだらけの生活へと変更
されてしまったのでした。

 しかもそのお仕置きは常軌を逸しているほど厳しくて、まるで
SMです。
 これにはケイトも眉をひそめるしかありませんでした。

 「ねえ、ローラ、どうしてこんなふうにしちゃったの?もとの
ように幸せに暮らしましたでいいじゃない」

 ケイトが言うと普段はおとなしいローラが怒ります。

 「いいじゃないのさあ。ほっといてよ!私はこの方が好きなん
だから!あなたは私の気に入るように読めばいいのよ」

 その大声に、心配したキーウッド先生が、大きなベッドを這う
ようにやってきます。

 「どうしたの?そんな大声だして……」

 「あっ、先生、ローラが絵本を修正したんですが、それが…」
 ケイトはローラからからタブレットを取上げてキーウッド先生
に見せます。

 すると、先生はそれを一読……
 
 でも、慌てず騒がず……
 「随分過激になっちゃったわね。でも、いいわ。ローラちゃん
にはこの方がドキドキして楽しいんでしょうから……これはこれ
で素敵な作品よ。ケイトさん、あなたはグロリアを連れて向こう
で読み聞かせしてあげてて……私はここでせっかく書いたこの子
のご本を読んで聞かせるから……」

 こうして選手交代。
 ケイトはその夜グロリアを含む三人の子供のお母さんをしなけ
ればなりませんでした。


**************************

 翌朝、ケイトは子供たちが食事の席を立ったあと、再び先生に
尋ねます。

 「先生、昨日のローラ、おかしかったですよね」

 でも、キーウッド先生は笑っていました。
 「そうねえ………普段はおとなしそうにみえるあの子にだって
男の子の血は流れてるわけだし……あれはあれで仕方がないわ」

 「どういうことですか?」

 「男の子って、時々意味もなく形あるものを壊したくなる動物
なのよ。女の子はどんな悲劇的な物語を語っても、現実の生活が
幸せならそれを破壊したいなんて思わないけど、男の子は違うの。
たとえ今がどんなに幸せでも、それに満足しないの。今あるもの
を壊してでももっといいもの面白いもの作りたいのよ」

 「ん?????……」
 ケイトは女の子、先生の言っていることがまったく理解できま
せんでした。そこで……
 「その事と、ローラがあんな過激なお仕置きを書いた事と何か
関係あるんですか?」

 「ま、あなたの歳でこれを理解するのは難しいかもしれないわ
ね。でも、あるの。大ありよ。……あの子はね、今の自分を破壊
したがってるのよ。『おとなしくて、素直で、みんなに愛されて
る…とっても良い子』ってのが嫌なのよ」

 「えっ??どうして??」

 「女の子ならそれで十分かもしれないけど、男の子の血をひく
彼女はそれでは満足しないの。グロリアみたいに、毎日のように
お尻を叩かれてでも、自分も友だちの先頭でいたいのよ。でも、
今はまだ、何をやっていいのかわからないから、まずはめでたし
めでたしで終わる絵本の世界を崩してみて、そのヒントを得たか
ったんじゃないかしら」

 「じゃあ、グロリアなんか、あんなのお気に入りの世界なんで
しょうね」

 ケイトが得意げに言うとキーウッド先生はいぶかしげに彼女の
顔を覗き込みます。そして、首を振ってこう答えるのでした。

 「そうじゃないわ、グロリアみたいな子は実生活がSMみたい
なものだもの。そんな子の夜は予定調和の絵本でないといけない
の。あんなもの読み聞かせたら、とたんに気分を悪くするはずよ。
怒ってローラのお話をめちゃくちゃにしてしまうかもしれないわ」

 「えっ!そうなんですか?」

 「だから、グロリアには席を外させたの。人間は、夢の世界で
は普段の自分にはないものを求めたがるものなのよ」

 「ローラもいつかはグロリアみたいになるんでしょうか?」

 「それはわからないけど…昨日、あの子のクリトリスをそっと
触ってみたの。そしたら、びっくりするほど大きくなってたわ。
だから男の子らしく生きたいと強く願っていることだけは間違い
ないみたいね」

 「そんなことまで……」

 「ん?クリトリスのこと??だって、私はあの子のお母さん。
そんな事、何でもないわ。ただね、これまでの殻を破って生き方
を変えるというのは、夢を見るのとは比べものにならないくらい
大変なことですもの。もしローラが本気でそう思っているのなら、
グロリアみたいに少しお尻を叩いて応援してあげなきゃいけない
わね」

 「えっ!!……」
 ケイトは大きく目を見開きます。

 「だって、嵐の日には家の中で縫い物をして暮らす人もいれば、
あえて嵐の中に船出する人もいる。あの子がそれを望むのなら、
育て方も違うでしょう。それを援助してあげるのも母の勤めだわ。
何よりね、ああして物語の主人公に辛い体験をさせたがるのは、
自分もああいう風にされたいと思う裏返しでもあるのよ」

 「…………」
 過激な発言にケイトは言葉が詰まります。

 「あらあら、心配そうな顔?……でも、大丈夫よ。物語をいじ
ってるうちは何も起こらないから。人間、決意を行動に現す時は、
もう物語はいじらないの。……その時はその時で、また別の兆候
が現れるわ。エネルギーが物語に留まってる間は、まだまだ安心
なのよ」

 キーウッド先生はケイトにやさしく微笑むのでした。

***************************


 <寄宿舎>
担任の先生/キーウッド先生
子供たち /ナンシー。ポーラ。グロリア。エレーナ。
エリザベス。ローラ。マリア。
図書室長 /シスターサンドラ(お婆さん)
王子様たち/マイク。フランク。ケリー。

 

6/7 子ども妾(短編読みきり小説)

6/7 子ども妾(短編読みきり小説)

*)*)一応、小説という事でお願いします。
あまりににプライベートなHの楽しみですから、一般の人には
理解不能というか、『引く』と思います。私のブログはただ思い
ついたことを書き留める落書き帳みたいなものですから、コレと
という定まった分野はありません。こんなものもありなんです。


 今は子供の人権に世間がうるさいので、表立って幼い子を性の
対象として囲うなんてできなくなりましたが、かつては洋の東西
を問わず、子供もまた大人と同じように性の対象でした。

 もちろん、若く健康な人にとっては必要のないことでしょうが、
性的能力が衰えた老人や事故などで性的な機能が失われた人たち。
さらには、社会的制約がきつかったり親の躾が厳し過ぎたりして
ノーマルな形での性の開花が十分にできなかった人たちなども、
成人女性より子供の方に価値を見出してきたようです。
 そのような話は随所で聞きました。

 例えば、モーツアルトは聖歌隊時代、とある高貴な女性の欲望
から去勢されそうになったとか。封建社会の中国では何百人もの
子供を性的な興味の為だけに養う金満家がいたとか。日本におい
ても、江戸時代、いえ明治の世になっても10才に満たない子供
と結婚した老人の話がたくさん残っています。

 こうした逸話は過去のものですが、過去こうした楽しみを求め
ていた人がいるということは、それが現代にあっても不思議では
ないわけで、私たち姉弟を育ててくれた養父母もまさにそうした
特殊な欲望を持つ人たちでした。

 孤児として施設で生活していた三歳の私がこの両親に引き取ら
れたのは1960年。今でこそたいそう開けてしまいましたが、
当時は寂しい森の中の一軒家。ベンツで幼稚園から帰ったあとは
友だちもなく、寝るまでずっと両親と一緒の生活でした。

 大きな屋敷にはお手伝いや子守のお姉さんもいましたが両親が
私から目を離すことはなく、お風呂も、食事も、寝る前の絵本も、
すべて両親の膝の上。
 特に日曜日は二人が一日中私のそばを離れませんでした。

 『朝起きてから再び絵本を読んでもらいながらベッド眠るまで、
いったい何回床や地面に足を着けただろうか?』
 そんなことを考えてしまうほど、両親は私を溺愛していました。

 彼らはお金持ちでリタイア生活。両親と呼ぶには少し歳を重ね
すぎてる気もしますが、もう現役でないぶん、私を愛する時間は
たっぷりとあります。

 積み木に木馬にブランコ、滑り台、お馬さんに肩車……仕事を
していた頃の怖い父や母を知らない私は、何かにつけて「おとう
ちゃま」「おかあちゃま」と言ってこの二人に甘えていました。
 この頃の私はこの二人の他に甘える人がなく、またそれで十分
だったのです。

 いえ正確には両親の方が私を玩具にして遊んでいたと言うべき
かもしれません。そのためにあちこちの施設を回り、私たち姉弟
を引き取ったのでしょうから。

 ただ、そんな両親も、たまに怖い顔をする時もあれば軽くお尻
を叩くこともあります。私も怖い顔に泣いたことがありました。
まったく躾をしなかったわけじゃないんです。

 ただ、これは例外中の例外、普段の生活では私が何をやっても
両親は甘甘でれでれ。よく、『食べちゃいたいくらい可愛い』と
表現しますが私もその部類だったのでしょう、おかあちゃまが、
私の身体を舐めない日は一日としてありませんでした。

 おかあちゃまの美食はお風呂上り。
 よく洗ったからだがバスタオルの上に仰向けにされると、僕は
まずほっぺたをすりすりされます。

 「ん?ほら、きもちいい」
 おかあちゃまは必ず耳元でこう尋ねます。

 次はおっぱいのの先を舐め舐め。
 「はははははは」
 「ん?気持いい?」

 続いてあんよの裏をこちょこちょ。
 「きゃゃゃゃゃ」

 お臍の穴も舐め舐め。
 「あ~~ん痛い」

 脇の下をこちょこちょ。
 「いやいやいやいや」
 「あら、くすぐったいの。いやなの?」
 「いやじゃない」

 おかあちゃまにはいつも笑顔で答えます。
 もし、本当にイヤなら、おかさちゃまはやりませんでした。
 でも、僕はやって欲しかったんです。やさしいおかあちゃまの
やさしい愛撫を愛されてる子がいやがるはずがありません。
 それがたとえオチンチンでも、事情は同じでした。

 「わあ~~可愛いオチンチン食べちゃおうかな」
 おかあちゃまはそう言って袋ごとパクリ。

 「……(わあ、わあ)…………」
 オチンチンがまるごとおかあちゃまの口の中に納まってる時の
快感って、一般の人には分からないと思いますが、それはそれは
気持の良いものなんです。
あの気持のよさはは表現しにくいのですが、不思議な安心感と
快感が一体になったえも言われぬ心地です。

 おかあちゃまはいったんオチンチンを出すと今度はオチンチン
の裏側、オチンチン袋の裏側あたりをぺろぺろし始めます。
 勿論、不快なんかじゃありません。おかあちゃまの舌がぺロリ
ぺロリと触れるたびに、嬉しくって身体がのけぞります。

 『あああああっっ……この切ない感じが嬉しい。おかちゃまの
赤ちゃんでよかった』
 そう思う瞬間でした。

 もちろん、フェラチオなんて言葉、当時は知りません。でも、
そんなこと問題じゃありません。好きな人に、今、こうして全身
をくすぐられ、舐められてることが楽しくて楽しくて痺れること
なのです。

 「ああああ、くすぐったい」

 「くすぐったいの?じゃあ、もうやめる?」

 「いや、まだやりたい」
 僕はおかあちゃまにおねだりします。

 恥ずかしいけど楽しいひと時。ずっとずっと続いて欲しいひと
時でした。

 『あっ、またぼくのオチンチンがおかあちゃまのお口に入った。
食べられちゃった。……でも、おかあちゃまに食べられたいな。
食べられておかあちゃまと一体になるの。そんなのいいかもしれ
ない』
 はては凄い妄想まで飛び出します。

 『あっ、オチンチンの皮剝かないで……あっ、先ちょに唾つけ
た……そこ痛いから……あっ、いや、ばっちいから……』

 「あっ、痛い……」

 「何、いやなの?」

 「んんん」僕はここでも首を読みに振ります。
 「……痛いけどいいの……もう一度やって……」
 結局はまたおかあちゃまにおねだり。

 僕はさんざん支離滅裂な事を言っては、おかあちゃまの愛撫を
楽しみます。
 きっとその瞬間は、ドーパミンがこれでもかってくらい大量に
出ていたと思います。

 だって、子供ながらにも『これって最高!!!』でしたから。


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6/5  女の都 ~14~

6/5  女の都 ~14~

*)この項にHな部分まったくありません(小説)

 ケイトにとっては何気ない朝が始まります。いつもと同じ日課、
いつもと同じ笑顔、自分としては何一つ変わらない一日でした。

 ただ一つ、ベッドの中でオナニーをしているという事を除いて
は……

 そんな日が3日目続いた朝のことです。いつものように子ども
たちが席を立って授業に向おうとしますから、ケイトも同じよう
に席を立とうとしますと、キーウッド先生が呼び止めました。

 「あっ、ちょっと待って……授業時間まではもう少しあるわ」

 「えっ……私に御用ですか?」

 「3日前、あなたに何があったのかやっと分かったの」

 「えっ?3日前……」
 ケイトはべつにとぼけたわけじゃありません。若い子にとって
3日も前の事なんて太古のお話ですから、急に言われても思い出
すのに骨が折れます。

 『えっ、まさか……』
 その日を思い出し、嫌な予感が頭をよぎりますが、そのまさか
でした。

 ケイトがあれこれ悩むうちに先生がお話を続けてくださいます。

 「あなた、王子様たちと遭遇したんですって…ラッキーだった
じゃない。なかなか会えるものじゃないのよ」

 『ああ、やっぱりそうなのね……でも、ということは……』
 ケイトの心に暗雲がたなびきます。

 「男の子を最初に見た感想は?どうだった?怖かった?」

 「ええ、少し……」

 「でも、今はもう別の感情が芽生えてるでしょう」

 「別の?」

 「あの方たちを受け入れたいと思う気持よ」

 「受け入れるだなんて……そんな大それたこと……」

 「もちろん、心の中での話よ。……単に『怖い、怖い』と思う
だけなら、オナニーはしないわ」

 「…………そ、そんなこと……」
 その瞬間、ケイトの顔が真っ赤になって俯きます。

 「あら、私が知らないとでも思ってたの……学校の椅子にさえ
ホルモンバランスを計る測定器が組み込まれるのに、寮のベッド
にそれがないわけないでしょう。毎日、チェックされてるわよ」

 「……(しまった)……」
 ケイトは当然そう思います。思いますから顔に出ます。

 「あら『しまった、今度からベッドはやめて床でやらなくちゃ』
って思った?……でも、すっぽんぽんの体だと床ではやりにくい
わね」
 キーウッド先生はケイトをからかいます。

 「それにね、そんな手間の掛かることしなくても、あのベッド
はそんな動きをするとカタカタと揺れるようになってるの。寝て
る子は忙しくてそんなこと気がつかないみたいだけど、天蓋付き
の私のベッドからでも、それははっきりわかるのよ」

 「……(えっ!)……」
 ケイトは自分の無知を恥じます。もう、顔は青ざめていました。

 「あらあら、驚ろかしちゃったみたいね。『私のプライバシー
は?!』って顔してるわね。でも、残念ながら修道院にはあなた
の望むようなプライバシーはないの。神の御前では、すべて包み
隠さずがテーゼだから。とりわけ、あなたのような子供の場合は
特にそうよ」

 「私、子供なんですか?」

 「あら、知らなかった、巷では14才になれば無条件で大人の
仲間入りができるみたいだけど、ここでは18才。それも試験に
通った者だけが一人前と認められるの。それまでは誰でもが子供
扱い」

 「……(そうだったわ、忘れてた)……」

 「子供のうちは、どんな手紙も開封されちゃうし、大人に反抗
的な態度をとったり嘘をつけたりすれば、即、お仕置き。便宜上
服は着てるけど、大人から『脱げ』と言われたらどこでも脱がな
きゃならない悲しい立場よ。オナニーだって、当然監視の対象。
そんな子供に、プライバシーなんてあるわけないでしょう」

 「はい、そうでした。忘れてました」
 ケイトは悲しそうに答えますが……

 「そんなに悲しそうな顔しないで、べつにあなたを困らすため
に呼んだんじゃないんだから……その代わりといったら何だけど、
あなたたちはこの大きな修道院という組織に守られてるの。ここ
で働くすべてのシスターに愛されてるの。何をやってもお仕置き
以外の責任をとらされることがないって、実は、とっても幸せな
ことなのよ」

 「そうなんですか」
 ケイトは気のない返事を返す。

 「今はまだ『大人たちからすべてを監視されてて、好き勝手に
振舞えないし、反抗するとお仕置きされて……これのどこが幸せ
なんだろう』って思うかもしれないけど、大人になると、それは
わかることなの」

 「…………」

 「ただ、誤解しないでね、私はあなたに一度や二度そんな事が
あってもそれは仕方がないことだと思ってるのよ。女の子だって
人間だもの、ストレスのはけ口は必要だわ。あなたが見た王子様
なんてね、1日に4回も5回もやってたんだから」

 「そっ…そんなに……できるんですかそんなにたくさん?」

 「男の子ってそういうものなの。衝動的というか直情的という
か、押さえがきかないのよ。でも、女の子はそうはいかないわ。
汚れた指が絡めば、ばい菌に感染することもあるし、伸びた爪で
怪我をすることもあるわ。ほら、一昨日、あなたに爪を切らせた
じゃない。あれはそのためなの」

 「……(あっ、あれ)……」
 ケイトは何気ない会話を思い出します。

 「女の子のオナニーってね、男の子と比べると感染のリスクが
高いのよ。それに何より女の子の場合はどうしてもやらなければ
納まらないというほどのものはないはずだし………二日に一度、
三日に一度くらいで我慢できないかしら」

 「…………」

 「そんな深刻な顔しなくても大丈夫。誰でもぶつかることだわ。
ただね、毎晩続けていると女の子の心と体は変化して、毎晩やら
なければ寝付けなくなってしまうの。そんな禁断症状が一番怖い
ことだわ。そうなると、貞操帯のお世話にならなくちゃいけなく
なっちゃうでしょう。さらに重症の子になると、貞操帯だけじゃ
すまなくて、しこたまお尻を鞭打って下の感覚を麻痺させてから
じゃないと眠れないなんて子もいるのよ」

 「毎日じゃなければ……」
 ケイトはつぶやきます。

 「そう、完全にやめてしまおうとするんじゃなくて、ストレス
の度合いに応じて自ら調整できるようになって欲しいのよ。それ
が大人になるってことだもの。できないあなたは、まだ子供って
ことよ」

 「…………」

 「いいわ、しばらくは私のベッドで寝てごらんなさい。まさか、
私のベッドの中で始めたりはしないでしょう。二日に一度か三日
に一度くらいあなたを私のベッドの添い寝当番にしてあげるから、
その時はチビちゃんたちに絵本でも読んで聞かせてあげて……」

 「絵本?」

 「そう、絵本。あの子たち、絵本の読み聞かせてやると喜ぶの
よ。前にも言ったけど、あの子たちって、知識はあるんだけど、
心は幼稚園児並なの。何かにつけて甘えたくて仕方がないのよ」

 「もし、それをしないと……?」

 「簡単よ。それを取上げると、とたんに強いストレスを感じて
勉強もしなくなるわ。彼らにとっての勉強は自分の為ではなく、
あくまで、私があの子たちへ注ぐ愛情の対価としてやってくれて
いるにすぎないんだから……」

 「…………」

 「どうしたの?そんな変な顔して……あなたに分からないのも
無理ないわ。私だってあの子たちの事はよく分からないんだもの。
何しろあの子たちはミューと呼ばれる新人類。どうやって育てる
かも分かってないの。それを今模索してる最中なのよ」

 ケイトは、こうしてその日の夜から、キーウッド先生の添い寝
当番をすることになるのでした。

**************************

 <寄宿舎>
担任の先生/キーウッド先生
子供たち /ナンシー。ポーラ。グロリア。エレーナ。
エリザベス。ローラ。マリア。
図書室長 /シスターサンドラ(お婆さん)
王子様たち/マイク。フランク。ケリー。

6/3 女の都 ~13~

6/3 女の都 ~13~

*)小説

 キーウッド先生の子供たちは食事が終わると、自分たちの教室
へと向います。その教室の空いたテーブルの一つに腰を下ろして
本人認証用のタブレットを指定の場所に差し立ててればそれで
OK、三面鏡になったディスプレイに先生が現れ教科書が映し出
されて授業が開始されます。

 持ち込んだタブレットにその子の全情報がインプットしてあり
ますから、教科書のようなものを持ち歩く必要はありません。
 子供たちが持ち歩くのは、自分で作成したA4サイズのノート
だけ。このノート、質感といい、簡単に鉛筆書きできるところと
いい、一見すると単なる紙のノートに見えますが、手でなぞれば
過去のどんなデータも浮かび上がらせることのできる便利な電子
手帳でした。

 図書室に置いてある本も大半がこの形式のノート。これを見れ
ば、その子の勉強の過程だって克明に知ることができますから、
教師にとっても優れもののアイテムでした。

 この日、ケイトは数学の授業についていけず、先生から1年前
の自分のノートを持ってくるように命じられます。先生としては、
そのあたりで何かを取り違えて覚えてしまったんじゃないか、と
疑ったからでした。

 そこで、ケイトは慌てて図書室に走りますが、図書室近くまで
来ると、部屋の中から耳慣れない声が聞こえていました。

 「何だよこれ、すっげえなあ」
 「ほんとにこんな事してたのか?」
 「俺もこんな時代に生まれたかったなあ?」

 『えっ?何なの?』
 それはまるでパイプオルガンが話しているように低い声でした。
女の子たちとは声のトーンが違うのです。

 訳が分からず、ケイトがドアをノックしますと……
 何やら慌てて何かを隠すような物音が……

 そして……
 「どうぞ」
 という声がしたので、ケイトは部屋の中へと入ってみました。

 すると、いきなり鼻につく匂いが彼女を襲います。
 『うっ!!何なの!?これ?』

 それは単なる人の体臭なのですが、ケイトにしてみると、それ
までに嗅いだことのない匂い。粗野で荒々しく動物を感じさせる
ものでした。

 『まるで熊の檻にいるみたいだわ。まさかこんな処に熊なんて
連れ込まないわよね』

 確かに熊はいませんでしたが、そこには三人の人間が……

 『えっ!!!?』

 出くわしたのはケイトより年上の若者三人。
 いえ、ケイトにしてみたらそれは『三人の人間』という言葉に
なるのかもしれません。
 だって彼女、この瞬間、生まれて初めて『男性』という生き物
を見たのですから……

 『何なの?この人たち?』
 ケイトは未知との遭遇に驚き、戸惑います。

 でも、それって単純に不快とか、不愉快というものではありま
せんでした。

 急に心臓が高鳴り始め、胸を締め付けられるような切ない想い
が体中を締め上げます。こんなことは初めて。顔が真っ赤に紅潮
していたこともこの時は自分ではわかりませんでした。

 『うそ……この人たちって……ひょっとして王子様たちなの?』

 ケイトはいずれも美形の顔立ちの青年たちを見て思います。
 というのも写真でなら彼らを見たことがあったからでした。

 「やあ、こんにちわ。……どうしたの?そんな変な顔して……
僕たち何か変かい?」
 一人の青年が声を掛けてきました。

 「いえ……」
 ケイトは答えますが……

 「フランク、変に決まってるじゃないか。ここは修道院、城の
中じゃないんだぜ」
 と、別の青年が……

 「そうか、この子、まだ中学生くらいだもんな、僕らを見るの
これが初めてってわけだ。よし、ならば僕からご挨拶を……」

 三人目の青年は最も積極的で、ケイトの足元まで歩いて来ると
そこに片膝をついて……
 「姫、どうかこの中から好きな者をお選びください」
 と挨拶します。

 『えっ!?』
 ケイトは意味が分からずまごつきます。何の戯言か彼女はまっ
たくわかりませんでした。

 でも、ケイトがこのまま成長し、20歳になったあかつきには
この三人のいずれかと初夜を迎えることになります。
 そうなった時には、あらかじめお見合いのパーティが催され、
ケイトは相手を選ばなければなりません。その時、彼女はきっと
こう言われることになるのでした。

 「姫、どうかこの中から好きな者をお選びください」
 と……

 オニオン星の女の子にとって王子様とお見合いは、一世一代の
晴れ姿。
 青年はその時の仕草を真似たのでしたが、それはケイトにとっ
てはまだ先の話、今のケイトは、いきなり現れた異性を前にその
ショックからまだ立ち直れないでいたのでした。

 「ねえ、君の名前は?」
 膝まづいていた男の子が立ち上がって尋ねます。

 「ケイトです」

 「いい名だね、聡明な女性に多い名前だ。僕はマイク……あの
にやけて笑ってる背の高いのがフランク……すまし顔で気取って
るのがケリーだ」

 「みなさん、男性なんですか?」
 ケイトが今さらながら素朴な疑問をぶつけてみますと……

 当然、答えは……
 「三人ともそうだよ。普段はお城に住んでるから王子様なんて
呼ばれてるけど……僕らのこと、知らない?」

 「えっ……」
 ケイトが言葉に詰まると、マイクの後ろから声が飛びます。

 「種馬って言ってやった方が、その子には分かりやすいかもな」

 その声を聞いて、マイクは自嘲的に笑いました。
 たしかに、王子様と言っても彼らの方が相手を選べるわけでは
ありません。求められた女性と子孫繁栄のために一夜を供にする
だけなのですから、種馬という表現も、まんざら間違ってはいま
せんでした。

 しかもこの種馬たち、いずれ劣らぬかなりの美形ときています
から、ケイトは彼ら三人が自分のそばにいるというだけで何だか
妊娠させられそうに感じてしまうのでした。

 「ねえ、君、知らないかなあ、ここに学校OBのノートがまだ
保管してあるって聞いたんだけど……」

 「えっ、王子様って、ここの卒業生なんですか?」

 「そうだよ、子供の頃はお城からここに通ってたんだ。周りが
女の子ばかりだろう、やれ挨拶がないの、靴が汚いの、シャツが
ズボンからはみ出てるの、廊下を走るな。とにかく規則ばっかり
うるさくて息が詰まりそうだったよ」

 「そうそう、やたら規則が多かった。でも、先生は優しかった
じゃないか。よく悪戯もしたけど、女の子みたいにあまりぶたれ
た。『男の子だから仕方がない』とか言われてね」

 「女の子の方がぶたれることが多かったんですか?」

 「そりゃそうさ。ここは本来女の子の世界だからね、良い意味
でも、悪い意味でも僕ら男の子は祭り上げられていたんだ」

 「今は、この学校に男の子はいませんよね?……見たことあり
ませんから」
 ケイトが尋ねると……

 「いないと思うよ。他の学校にはいるけど、ここにはいないん
じゃないかな」

 「男の子なんて学校にとっては邪魔な存在。迷惑だから持ち回
りにしてほしいって思ってるみたいだよ」

 「どうしてですか?」

 「だって先生がおっしゃってたけど、男の子がいると女の子は
勉強に身が入らなくなるし、オナニーも増えるからなんだってさ」

 「…………」
 ケイトは思わず心臓をえぐられる思いでした。
 彼女のオナニーは百合の世界。女の子だけで男の子は登場しま
せんが、それでもオナニーなんて言われると緊張してしまいます。

 「そうだ、君、本当に知らないかな、OBのノート。ケリーが
学校時代に書いた小説を見つけたいんだ」

 「小説って…そんなもの教科のノートに書いてたんですか?」

 「暇をみつけてちょくちょくね。その時は軽い気持だったから
まとまっていないんだけど、今度、同人誌をだすことになって、
その時のアイデアを入れてみたくなったんだ」

 「授業中に小説だなんて……そんなことしていいんですか?」

 「よくはないさ。でも、さっきも言ったろう。男の子ってね、
わりと自由なんだよ。悪戯やっても、オナニーがばれても、勉強
さえちゃんとやってたら、あとは大目に見てくれてたんだ」
 と、フランク。

 「もっとも、取材半分興味半分で女の子のお仕置きを覗こうと
して見つかった時は……あれは怖かったけどね」
 と、ケリー。

 マイクも…
 「あっ、シスターサンドラのことだろう。あの婆さん、怒り出
すと、前後の見境がなくなるもんなあ」
 と応じます。

 「顔、真っ赤にしてさあ、まさに烈火のごとくって感じだった
もの。で、結局、その時は鞭が36回。終わった時は、さすがに
お尻の形が元に戻らないんじゃないかって本気で心配したよ」

 「オーバーだなあ」

 「本当さあ。あの婆さん、子供相手にケイン振り回して本気で
ぶつんだから。児童虐待もいいとこさ。殺されるかと思った」
 
 「大丈夫、いくらケインでお尻ぶたれたって、死んだ奴なんて
いないから」

 「お前、やられたことないからわかないのさ」

 男の子たちの大きな身体からは声も自然と大きくなります。
 すると、その声に同調するように入口のドアが開きました。
 入って来たのはその噂の主、シスターサンドラでした。

 「随分と賑やかね。坊やたち、相変わらず元気だけはいいみた
いだけど、でも、ここは図書室なの。もっと静かになさい」

 「はい、先生」
 三人は苦笑いを浮かべながら恐縮します。
 三人はすでに青年。坊やなんて呼ばれる風貌ではありませんが、
ここに来れば少年の昔に戻れるみたいでした。

 「ケリー、あなたの小説見つかったわよ。昔、ノイマン先生が
抜書きしてまとめてくださってたみたいなの。面白かったって、
ご伝言いただいてるわ」

 喜ぶ男の子たちを見ながらケイトの未知との遭遇は終了します。

 「ケイト、御用が済んだらあなたは教室へ戻りなさい」
 シスターサンドラにこう言われてしまったからでした。

 でも、時間にして僅か10分足らずの出来事が、ケイトにして
みたら、映画10本分では足りない感動となって心に残ることに
なります。

 『あ~やだ、どうしたのかなあ、身体の芯が熱いわ』
 ケイトはそんな思いを胸に教室へと帰って行ったのでした。

**************************

 その日の夜から、ケイトはベッドの中で悶々とした時間を過ご
すことになります。

 昼間は忙しくて、夢を見る暇がありませんが、ベッドに入ると
不思議と三人の青年が大写しになって頭の中に浮かん出てくるの
です。

 でも、最初それは甘い恋物語なんかではありませんでした。

 熊のように大きな三人の青年が、自分の身体にのしかかろうと
するのを必死に振り払って逃げる映像ばかり。
 熊に襲われる恐怖のシーンばかりでした。

 そして、次の日の夜は、とうとう逃げ切れず自分が熊の餌食に
なってしまいます。

 『何なのよ、コレ!どうしてこんな夢見るの!』
 ケイトは嘆きます。

 でも、哀れな自分を嘆くうち、ケイトの心の中には新たな快感
が生まれるのでした。

 のしかかられる自分、食い尽くされる自分の身体が、死体では
なく火照って熱くそれが心地よいと感じられるのです。

 すると、いつしか自分を食い散らかしたはずの熊が自分のお腹
の中にいるのに気づきます。そこでうごめていているのです。
 それは今までに感じたことのない得体の知れない快感でした。

 『不思議、変な気持、麻薬ってこんな感じかなあ』
 切なさが、乳首を震わせ、あごを震わせ、両足の指を曲げさせ
ます。そして……

 『もう、一歩』
 そう思うとき、彼女の右手はお臍の下に滑り込んでいました。

 『ああ、だめ、もう我慢できない』
 その言葉を残してケイトの理性は消滅。

 若い体は小さな突起を立ち上がらせるのに時間なんてかかりま
せん。

 あとは百合の世界で遊んでいた時と同じ。
 エクソシストのようにベッドがカタカタと揺れ、行き着く処迄
行き着けば、後は睡魔がさらなる快楽へと彼女を運んでいきます。

 『あ~~私の王子様~~フランク、フランク、フランク、……
わたし、幸せよ~~』
 うわ言のような言葉で頭の中をフランクの顔で充満させます。

 彼女は枕に涙を落とし、その指の先に幸せを感じて、その夜は
ぐっすりと眠ることができたのでした。

***************************

<寄宿舎>
担任の先生/キーウッド先生
子供たち /ナンシー。ポーラ。グロリア。エレーナ。
エリザベス。ローラ。マリア。
図書室長 /シスターサンドラ(お婆さん)
王子様たち/マイク。フランク。ケリー。

Appendix

このブログについて

tutomukurakawa

Author:tutomukurakawa
子供時代の『お仕置き』をめぐる
エッセーや小説、もろもろの雑文
を置いておくために創りました。
他に適当な分野がないので、
「R18」に置いてはいますが、
扇情的な表現は苦手なので、
そのむきで期待される方には
がっかりなブログだと思います。

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