2ntブログ

Entries

〘 第 1 回 〙 亀山愛育院

          亀山物語
                     合沢啓治(著)

<作品について>
 「亀山からの手紙」の原本みたいな作品です。
 昔の作品なので、SMチックで過激な場面も多々ありますが、
本人はあくまで「お仕置き小説」だと思って書いています。
 お仕置き場面でさかんに登場する『お灸』は作者が古狸だから。
現代人には馴染みのない分野で、理解は難しいかもしれませんが、
あくまで参考資料として置いておきます。

〘 第 1 回 〙 亀山愛育院
***************************

<主な登場人物>

私(合沢啓治)/亀山愛育院の孤児。由美子の弟。

小島先生   /私の家庭教師であり、実質的には僕のママ。

大石胤子   /亀山村の村長さん。(三代目)女王様。

榊原 美里  /同級生の恋人。片想い。

森下景子先生 /由美子お姉様の家庭教師(ママ)であり、
       /かつ、学校では担任の先生でもある。

合沢由美子  /私をリンチにかけたお姉様の一人。私の姉。

小川静子   /泣き虫。リンチ四人組の一人。

桐山香織   /おっちょこちょいで早とちり。四人組の一人。
       途中でお灸をすえられそうになる。

安西遥香   /優等生だが、今回の事件に関与。四人組の一人。
途中でお漏らしをしてオムツ替えをさせられる。

美代子と彰子 /今回私のリンチには加わらなかったお姉様。

 お義父様  /亀山の子供たちは誰もがお義父様の子供として
(合沢徹)   /その家で家庭教師(ママ)と一緒に暮らしている。

 お義母様  /お義父様の奥さん。元々はお義父様のお付き合い
(合沢早苗)  /で亀山に来たのだが、今は子供たちにも優しい。

桐山高志 /幼稚園児(5歳)。由美子のお友達、香織の弟。 

 大原先生/高志君のママ。

 おばば様/亀山のお灸担当係。子供たちの実母を知る老婆。

****************************
****<1>*********************

 私は生まれて間もなく亀山愛育院という処に預けられ、そこで
15の歳まで生活しました。母は、当時売れっ子芸者だったそう
ですが、許されぬ間柄の子を産んでしまったために自分では育て
られず噂で聞いた亀山を訪ねたんだそうです。

 ここのシステムはすでに他の人達が何度も説明していますから
あえて説明は省きますが、母(実母)もその例外ではありません。
おばばによって身体中にお灸がすえられ、それと引き替えに私は
ここへ預けられたのでした。

 もちろん私はそんな事は露ほども知りません。私の記憶に残る
最初の風景は合沢邸の美しい庭の緑。そこに向かって突き進んで
行くところでした。途中で身体がふわりっと浮いて景色が家の中
へと大きく変わりましたから、おそらくその瞬間ママ(小島先生)
が私を抱き上げたのでしょう。

 亀山の家庭はどこもそうでしょうが私たちの家庭教師は(小島)
先生ではなくてママなのです。ミルクやオムツの世話はもちろん
箸の使い方から着替えの仕方もすべて彼女に教わりました。

 何より、赤ん坊の頃の私は四六時中彼女のそばで暮らしていま
したから、恐らく昨今見受けられる保育園に預けて働くお母さん
方より私の方がママと一緒にいた時間がずっと長かったと思いま
す。

 もちろん彼女にも教師としての仕事がありましたが、ご存じの
ように亀山の先生方は預かった赤ん坊と同伴で出勤して、授業も
その子と一緒に教室で授業をやってしまうというお土地柄でした
から、私も生まれてすぐに学校へ通うことになります。

 教室には大きなメリーゴーランドがつり下げられ、時折、お姉
さんたちの笑い声が聞こえてきます。私が泣けば、授業は中断。
オムツ替えの時などはお姉さんたちが手伝ってくれたりしました。

 実にのどかなものです。もちろんこんな光景、私だけのもので
はありません。ここでは誰もがこうして育つものですから、他の
教室にはまた別の赤ちゃんがいました。

 ただ、私は男の子でしたから、それなりに人気がありました。
よく用もないのに他のクラスからもお姉さんたちがやってきて、
ミルクを飲ませたがります。見かねたママが「この子にミルクを
与えないように」というおふれを出したほどでした。

 女社会の亀山にあって男の子というのはよく言えばアイドル、
悪く見ればオモチャでした。女の子たちはことあるごとに、私を
おままごとのゲストとして招き入れ、私の身体をあちこちいじり
まわしては事あるごとに裸にしたがったのです。

 世間ではお医者さんごっこというと、男の子の邪心がからむ、
Hな遊びのようですが、ここではむしろ、男の子の方が女の子の
お道具になっていました。彼女たちは、お医者さんの治療だと称
して、私のお尻に円柱形の積み木を押し入れたり、洗濯ばさみで
おちんちんを挟んだりしたのです。

 もちろんそんなところをママに見つかれば大目玉ですが、何度
注意されても結構しつこくやってきました。(^^ゞ

 事ほどさようにここでは男の子の力は弱く、私の他にも男の子
は数人いましたが、いずれも幼い頃から女の子に圧倒されてしま
って世間で見かけるような荒々しい子というのはいませんでした。

 そのせいでしょうか、何かの原因で男女に諍いがあったとして
も怒られるのはたいてい女の子。お仕置きも女の子に対して特に
厳しくて、巷ならそこまでは……と思うような過激なお仕置きも
しばしばでした。

 学校では毎日のように少女達の悲鳴が聞こえてきますし、校庭
にはピロリーと呼ばれる晒し台なんかもあって気候がよい日には
誰かしらがそこに引っ掛かっていました。

 この備え付けの枷は、首と両方の手首を一枚の大きな板で固定
するもので、厚い板は存在感がありますから幼い子などはここへ
連れてこられただけで泣いたりします。罰を受ける時は、通常、
着衣のままですが、たまに、ショーツだけが許されていてそこに
跪くことも。さらに、おいたが過ぎれば、その最後の布きれさえ
剥ぎ取られることだって……そう、すっぽんぽんのさらし者です。

 正確に言うと、直射日光を遮る帽子と足下を冷やさないための
靴下だけは身につけてますけど、そりゃあ、恥ずかしいですよ、
そんな時は……

 まさに幼児虐待。こんなことされたらさぞや心の傷はいかばり
かと、今の親御さんなら心配なさるでしょうね。でも、意外にも
本人たちは罰が終わるとケロッとしていました。

 それは物心ついて以来、裸にならなきゃならない罰がここでは
他にも色々あったからで、親や教師だけじゃなく司祭様や現役を
退いた老女たちも、公園で少女たちの不埒な素行を見つければ、
その場で公園に設置してあるピロリーに少女たちを繋ぐことがで
きたのです。

 そう、亀山という処は少女たちの裸を見たいなら街をぶらつき
さえすればそれでよかったんです。教育には直接携わっていない
大人でもちゃんとした理由があれば少女のお尻をむき出しにして
平手で叩くことぐらいはできましたから、少女たち(もちろん、
少年も同じですが)にとって大人は最初から怖い存在だったわけ
です。

 ならば、子供たちは日々大人の影に怯えて暮らしていたのかと
いうと、それも違っていました。

 街の住人たちは子供たちをことのほか気にかけていましたし、
事あるごとにその小さな身体を抱きたがりました。ママや先生達
からも『誰であれ大人たちからの愛を拒絶してはならない』と、
口を酸っぱくして教えられていましたから、子供たちはごく自然
に大人たちからの愛撫を受け入れて暮らすようになります。

 『知らないおじさんに着いて行っちゃダメよ』
 世間でいう親の金言はここではまったくあてはまりませんで
した。

 自分を抱いてくれる。オモチャを買ってくれる。一緒に遊んで
くれる。知らないことを教えてくれる。それは大人たちが子ども
たちに対してごく自然にやってくれる事であり、見知らぬ大人の
背中で顔見知りの子供が眠っていたとしても誰からも咎められる
ことはありませんでした。

 そんな濃密な社会のためでしょうか、子どもたちは大人たちを
疑いません。

 仮にこの街で出会う見知らぬ大人が、戯れに「裸になりなさい」
と命じたしましょう。それでも、ここの子どもたちなら誰一人逆
らわないはずです。

 えっ、信じられませんか?でも本当のことなんです。それほど
までに子供たちは大人に対しては絶対服従でした。(^^ゞ

 もちろん、大人たちにもしっかりとした分別がありますから、
いくら子供が自由になると言っても邪な心を抱いて一線を越える
ような事はありません。揺るぎない理性と深い愛のもと、大人は
子どもに対して強い権限を持っていました。

 一見ハレンチに見える子供へのお仕置きも、そんな分け隔ての
ない愛に支えられて成り立っていました。

 市井の人ですらそんな状態ですから、ママ(=家庭教師)は、
お義父様から預かった子どもたちに対して実の母親以上に献身的
でした。

 それは時としてうっとうしいと思えるほどの過干渉でしたが、
いざ自分が親になってみると『自分はそこまではできないな』と
実感してしまいます。そのくらい彼女は私を愛していましたし、
兄弟も分け隔てなく愛していました。

 そのせいでしょうか、私はママから幾度となく厳しいお仕置き
を受け入れましたが、それを恨んだ事は一度もありませんでした。
 ママと僕の距離はそれほどまでに近くて、何か不都合なことが
起きても『ママだから』という理由だけで心が簡単に許してしま
うのです。

 要するに、みんな超マザコンというわけです。

 彼女は、僕の体重が重くなりすぎてどうしても膝の上には乗れ
なくなるまで、私を抱いて勉強をみてくれましたし、事あるごと
に抱きしめ、頬ずりしてくれます。おかげで、添い寝には体重が
かかりませんから、これは小学校高学年になっても毎晩でした。

 私も私で、赤ちゃんの時からの習慣でしたから、そんな濃厚な
スキンシップが当たり前のように思っていました。当然、恥ずか
しいなんて感じたことは一度もありません。

 ただ、中学二年生の頃になると私の方がママを女として感じる
ようになってしまい、一時距離を置くようになっていたのですが、
そんな時もママの方は相変わらずで「今日は一緒に寝ましょう」
なんて平気で言います。どうやら、私の体が男となっていっても
抵抗感はないようでした。

 もちろん、怪しい関係なんて一度もありませんよ。(^_^;)

 そんなべたべたスキンシップは昔からのこの街の伝統のような
ものでした。男の子も女の子も、家庭だけでなく、学校でも教会
でも、町中至る所で子供たちは大人たちから事あるごとに抱かれ
続けます。

 それは、『どんな時でも子供を見つけたら抱き上げなさい』が
街の掟だったからです。
 街には子供たちには直接関わらない庭師さんや大工さん、魚屋
さんや八百屋さんなんて職業の人たちも沢山いましたが、女王様
から『それもあなた方の仕事』ということで雇われていました。

 おかげで街の誰もがとりたてて用もないのに子供たちを見つけ
ると挨拶代わりに抱き上げます。ただ、それは当の子供たちにと
っては心地よいことばかりではありませんでした。

 髭がもじゃもじゃな人や体臭のある人なんかがいますから。

 でも、それをあからさまに『嫌』と拒否することもできません。
子供の方は子供の方で、大人に抱いてもらうことが義務みたいに
なっていたからなのです。露骨にイヤイヤをすれば最悪お仕置き
だってされかねませんから、それなりに気を使います。

 まあ挨拶と思えば我慢できますから私はそう思っていつも作り
笑顔で耐えていました。

 あっ、そんなこと誰が決めたのか?ですか(^^ゞ

 それは亀山の村長さんです。この孤児の町を造った初代の女王
様、大石胤子さんが……
 『本当の母親がいない孤児だからこそ、実の母親以上のスキン
シップが必要なんです』
 と言って決めたみたいです。
 偉い人なんですが、女性なんでみんな女王様なんて呼んでいる
んですよ。

 今の村長さんは三代目。代々一族の女性がその地位を受け継い
でいて、ママや先生、司祭様やお義父様なんていう大人たちも、
彼女にはだけは頭が上がりません。何しろ『女王様』というのは、
大人たちの行いを見ていて、『この人は不適格』と判断すれば、
どんな人でも辞めさせることができるんですから大変な権力者
です。

 普段はみんなに尊敬され威張っているお義父様でさえ女王様が
「不適格」と言えばここを出ていかなければなりませんでした。
もちろん子どもたちとの力の差は月とすっぽん以上なわけですが、
私たち子どもにはとても優しい人でした。

 そんな人ですから、大人たちから理不尽な仕打ちを受けると、
女王様の処へ駆け込む子もいました。大人たちの方が正しければ
女王様にこっぴどく叱られることもありますがクリスタルパレス
(女王様の住まい)に行けばたいてい味方になってくれました。

 といって私が女王様を頼ったことは滅多にありませんでした。
そんな必要がないほどママと私は良好な関係にありましたから。
 恐らく実の親子でもここまではと思うくらいママは私を抱いて
育ててくれたのです。小学校3、4年生までは赤ちゃんが離乳食
をほおばるようにママの差し出すスプーンで食事をしていました
し、お風呂でも身体は自分では洗いません。おちんちんも含め、
身体はすべてママが洗うものだったのです。
 そう、大変な甘えん坊さんだったわけです。

 ただ、これは私が男の子だったからかもしれません。とにかく
亀山は女の子がメインの社会。男の子はお客さんみたいなもので、
勉強さえある程度できるなら他のことはあまり強く強制されませ
んでした。

 結果、ママは私を可能な限り赤ちゃんとして扱い、私もまた、
女ばかりの社会の中にあって毒気を抜かれてしまったのか男の子
らしい猛々しさはどこにもありませんでした。

 あれは小学四年生の初夏でしたか、上級学校(小学四年生から
中学三年生までの学校)に進学したばかりの私はクラスメイトの
美里という子に気があって、事あるごとにからかっていたのです
が、そのうち彼女の機嫌を損ねてしまい、反対に上級生の女の子
たちから吊し上げられてしまったのです。

 ところが泣きはらした私の顔を見て今度はママが怒りだします。
私の腕をむんずと掴かむと気乗りしない私を引きずるようにして
学校に乗り込んでいきました。

 私は争い事は嫌いですから、ママに思いとどまるようにお願い
したのですが、無駄でした。

 放課後の静かな学校に吹き荒れたママ台風によって、職員室は
大荒れ。結局、翌日に私が上級生のクラスに行って首実検をする
はめになったのです。

 「どの子にやられたの?」

 教室へ現れた私とママを見て当の上級生たちも戦々恐々の様子
で、その青ざめた表情は幼い私にさえわかるほどでした。

 ママは頑張ります。担任はもとよりその子たちのママに直談判。
必要ならその子たちのお義父様にも手紙を書いて、私を泣かせた
女の子たちが二度と私にちょっかいを出さないように厳しい懲罰
を与えて欲しいと迫ったのでした。

 こんな場合、世間では……
 『そうは言っても相手は女の子ですから』
 なんて割を食うのは力の強い男の子と相場が決まっているよう
ですが、ここではまったく逆です。私の方にちょっとぐらい非が
あっても罰せられるのは決まって女の子の方だったのです。
 まして、今回は年下の男の子を集団でリンチにかけたわけです
から事は重大です。

 そんなわけで担任の森下先生が下した結論は『土曜日の午後、
修道院の裏庭で特別反省会を開きます』というものでした。

 特別反省会というのは名前は反省会ですが要するにお仕置きを
公開でやりますということでした。ごく幼い頃ならいざ知らず、
このくらいの歳の女の子になると恥をかかされることには敏感
です。単にぶったり叩かれたりすること以上に辛い事になります。

 そのためそうたびたび行われるものではありませんが、犯した
罪が特に重い場合は、お仕置きに関わりのないクラスメートにも
お仕置きを見せて戒めにすることがありました。

 ただ、その場合でも、異性の参加を認めるというのは希でした
から、私が被害者という立場でそこに立ち会ったのは、この時の
ママの怒りがいかに強かったかという証明でもありました。

 『あとで復讐されたらいやだもん。もう帰りたいなあ』

 そんなことを思い続けながら私は舞台の袖で公開処刑の様子を
観察していました。
 以下はその記録です。

 あっ、本日はこれまでですか。(^o^ゞ
 では、続きは次回といたしましょう。m(__)m

***************************

〘 第 2 回 〙 「特別反省会」開幕

          亀山物語
                     合沢啓治(著)
〘 第 2 回 〙 「特別反省会」開幕
***************************

<主な登場人物>


私(合沢啓治)/亀山愛育院の孤児。由美子の弟。

小島先生   /私の家庭教師であり、実質的には僕のママ。

大石胤子   /亀山村の村長さん。(三代目)女王様。

榊原 美里  /同級生の恋人。片想い。

森下景子先生 /由美子お姉様の家庭教師(ママ)であり、
       /かつ、学校では担任の先生でもある。

合沢由美子  /私をリンチにかけたお姉様の一人。私の姉。

小川静子   /泣き虫。リンチ四人組の一人。

桐山香織   /おっちょこちょいで早とちり。四人組の一人。
       途中でお灸をすえられそうになる。

安西遥香   /優等生だが、今回の事件に関与。四人組の一人。
途中でお漏らしをしてオムツ替えをさせられる。

美代子と彰子 /今回私のリンチには加わらなかったお姉様。

 お義父様  /亀山の子供たちは誰もがお義父様の子供として
(合沢徹)   /その家で家庭教師(ママ)と一緒に暮らしている。

 お義母様  /お義父様の奥さん。元々はお義父様のお付き合い
(合沢早苗)  /で亀山に来たのだが、今は子供たちにも優しい。

桐山高志 /幼稚園児(5歳)。由美子のお友達、香織の弟。 

 大原先生/高志君のママ。

 おばば様/亀山のお灸担当係。子供たちの実母を知る老婆。

****************************
****<2>*********************

 舞台となったのは修道院の裏庭。ここは礼拝堂の裏口から続く
通路を50mほど行った先にあって俗世と聖域を分ける緩衝地帯
みたいな処でした。木の柵で仕切られてますが、昼間はシスター
だけでなく子供たちや街の人たちも自由に立入ることができます。

 ただその先が修道院の建物で行き止まりになっていますから、
あえてここを訪れようという人以外、普段ほとんど人の出入りは
ありません。目立たず声も届きにくいこの場所は、修道院のシス
ターたちの協力も得やすいことから子供たちをお仕置きする場所
としてよく使われていました。

 そんな庭はシスターたちによって丹精された草花が一年中咲き
乱れています。ちょうどこの時期は赤やピンク、黄色などの薔薇
があたり一面満開でした。天気もよく、少し汗ばむくらいの気温
をさわやかな五月の風がさましてくれます。

 公開処刑にはまたとない好条件です。もしこれが寒い時期だっ
たり、雨がふっていたりしたら仕方なく物置だった地下の納戸を
使うことになりますが、あそこだと少女たちの悲鳴が冷たい壁に
反響して悲惨さを必要以上に増幅してしまいますし、汚物の臭い
も篭りますからお義父様たちが眉をひそめてその大権を使い早々
と娘たちを許してしまう恐れがありました。

 えっ?『許されるならラッキーなんじゃないか』ですって……
(^^ゞ

 たしかにその瞬間は……
 でも、たいてい物足りなさを感じる先生たちによって、その後、
子供たちはよりキツいお仕置きを受けるはめになります。
 実際、子どもをお仕置きする口実なんてどこにでも転がってい
ますから。

 女の世界というのは、罪の重さと罰の重さが必ずしも比例しま
せん。大事なことは罰を与える側の溜飲をいかに下げさせるかと
いうこと。それが実現しないうちはお仕置きが終わらないのです。
お父義様がせっかく許してくれても子供たちにとっては実質的な
困難がまだまだ続くことになるのでした。

 ところでこの日は最初から舞台にはデンと大きなベビーベッド
が四つも並んでいました。

 その横には罪を問われたお姉様たちがそれぞれママたちに肩を
抱かれるようにして立っています。もし、この時ママがお姉様を
抱いていなければ、ひょっとして卒倒したり失禁したりする子が
いたかもしれません。

 いえ、オーバーではなく本当に……。

 この時のお仕置きは普段から体罰には慣れっこのお姉様たちに
しても全身の震えが止まらないほど厳しいものだったのです。
 ですから、こんな時頼りになるのは、やはり赤ちゃんの時以来
ずっと寝起きを共にしてきたママだけ。それは私にしてもお姉様
たちにしても同じことでした。

 「いやよ、こんなの。ごめんなさいするから許してもらって…」
 風に乗ってお姉様の泣き言が舞台袖の私の耳にも届きます。

 でも、ママの答は厳しいものでした。
 「仕方がないでしょう。あなたが蒔いた種なんだから。………
私だってあなたとのお付き合いはごめんだわ。だいたい下級生の
…それも男の子を全裸にしちゃうなんて呆れてものが言えないわ」

 「全裸じゃないわ、下だけよ。オムツ穿かせようって由美子が
言うもんだから………由美子が悪いのよ」
 「でも、あなただって手伝ったんでしょう」

 「それは、そうだけど……」
 「だったら同じじゃないの。そういうのを集団リンチっていう
の」

 「そんな恐ろしいことしてないわよ。ちょっとからかっただけ
だもん」
 「からかった?……おや、おや、いい歳をしてお浣腸までして
おいて……今さら森下先生(担任)に何を訴えるつもり?」

 「それは……」
 「そんなハレンチなことしておいて、今更助けてくださいなん
て言ってもそんな子に誰も助け船なんか出さないわ。ママだって
ごめんよ」

 「え~~」
 「何が、え~よ。そんなこと当たり前でしょう。私が小島先生
をなだめるのにどれだけ苦労したと思ってるの。…それよりも、
これからのお仕置きをちゃんと受けることね」

 「え~~」
 「そうすれば、あなたは元のエリート天使に戻れるわ。何より
お義父様はね、誰よりもあなたを愛しておられるの。その愛は、
しっかり受けなきゃ損でしょう」

 「私、お義父様の天使になんかにならなくていいわ」
 「どうして?…あなた忘れたの。ここはお義父様の天使だけが
暮らすことを許された御國なのよ。天使でない子どもはそもそも
いらないの。すれっからしの子に用はないの。そんな子はここを
放り出されるわ。それこそすっぽんぽんでね」

 「…(それでもいい)………」
 本当はそう言い放ちたいところですが、この時のママの言葉は
重かったと思います。実際、大人たちに反抗して全裸で放り出さ
れた先輩をつい先ごろ私も見たことがありました。
 いえ、それだけならまだいいのですが、二週間後、一旦は別の
孤児院に行ったその先輩が再び全裸で私たちの前に現れたのです。
先生方に許しを乞うために……。
 あんな惨めなこと、そりゃあ誰だってしたくはありませんから
ね……

 ママは娘の耳元で強い調子で囁きます。
 「いいこと、ここではあなたはお義父様の天使でなければ生き
ていけないの。それは良い悪い、好き嫌いは関係ないことなのよ」

 現実はママの言う通りでした。食べるもの、着るもの、文房具、
オモチャ、確かにここには中流家庭にあるものは何でもあります。
けれどそれらはお義父様からの愛を失えば一瞬にして消え去る物
ばかりでした。

 そのお義父様たちはというと、娘たちのそれぞれのベッドを前
にして藤椅子を並べ、すでに着席しておいででした。
 四人それぞれにお嬢様が違いますからここには四人のお義父様
がいらっしゃいます。
 それぞれのお父様たちはご自分の娘が罪に怯える様子をご覧に
なりながら他のお義父様たちと何やら談笑しておいででした。

 このお義父様方は亀山を下りればその世界で知らぬ人がいない
ほどの有名人ばかり。すでに功なり名を遂げた人たちが人生最後
の楽しみとして選んだのがこの亀山だったのです。

 ですから、いずれも年齢的にはお爺さま世代なのですが、これ
までエネルギッシュな人生を送ってこられたせいか、皆様お歳の
割にはお若い方ばかりでした。

 もっとも、お義父様は資金の提供だけでなくお義父様としての
お仕事もありますから、あまりにも老けこんでしまったら女王様
から引退勧告を受けてしまいます。好きな子どもたちを抱き続け
るためにも老け込んではいられませんでした。

 そんなお義父様のお仕事。まあそれが生き甲斐でもあるのです
が、それはひたすら自ら引き取った娘を愛し続けること。笑顔の
娘を膝の上に抱き上げ、頬ずりして、頭を撫でてご飯をスプーン
で口元まで運んだりします。まるで幼児にでも接するような愛情
表現をここでは13歳の娘にも行いますが、娘の方がそれを拒否
することはできませんでした。

 と同時に、子供たちが何か悪さをした時はそのお仕置きを手伝
わなければなりません。お義父様のなかには、娘のお仕置きには
あまり積極的でない方もいらっしゃいましたが、女王様とのお約
束ですから知らんぷりもできません。特に、こんな重大な事件が
あった時はお義父様としての威厳を保つためにも、愛する娘に、
ちゃんとしたケジメ、つまり、恥をかかさなければなりません。
 その手始めが、今まさに始まろうとしていたのでした。

 「さあ、みなさん、準備できましたか」
 四人の生徒をご自分の足下に集めて明るい声が響きます。声の
主は森下先生。タイトスカートを穿きモデルのようなスレンダー
な体つきはこんな山深い里には不似合いな都会的な香りが漂って
いる生徒に人気の先生です。

 この時、先生は象徴的な意味で乗馬鞭を手にしていましたが、
これで生徒たちのお尻を叩くということではありませんでした。

 「乙女の祈りを……」

 女の子たちは憧れの先生の指示に従い、跪いて両手を胸の前に
組んで目を閉じます。
 この姿勢は『乙女の祈り』と呼ばれ、亀山では子供たちが大人
たちから何かにつけて求められるポーズでした。神様へのお祈り
はもちろん、お義父様への朝夕のご挨拶や司祭様への懺悔の時、
先生からあらたまった内容のお話しを聞く時やこんなお仕置きを
いただく時もすべてこのポーズで始まります。

 もちろん乙女ではありませんが男の子も同じでした。(^^ゞ

 このポーズは子供たちが目上の人に恭順の姿勢を示す為に取る
ポーズでしたから、このポーズをとって怒る大人はまずいません。
ですから、大人たちに叱られそうになると、慌ててこのポーズを
とることが多く、結果許されることも多かったのでこのポーズを
取ると今でもなぜかほっとしたりします。

 私も亀山にいた頃は一日に何回となくこの姿勢になりました。

 「あなたたちは罪を犯しました。それがとても許されないほど
大きな罪であることは承知していますね。どんなことをしたの?」

 「啓治君をお医者さんごっこに誘いました」
 か細い声で答えます。

 「あなたたちには何か理由があったようですが、この学校では
理由のいかんを問わずいじめは認めていません。……由美子さん。
それは承知しているわね」

 「はい、先生」

 「そこで、あなたたちは啓治君に何をしたの?」

 「何をって………………」
 言い渋る由美子さんに先生が話を続けます。

 「全裸にしたんでしょう」

 「全裸って……おむつを履き替えさせただけです」

 「それだけ?お浣腸はしなかったの?」

 「…………」
 一同はうつむいたまま黙ってしまいます。だってこの四人は、
嫌がる私を押さえ込んで保健室からくすねたイチジク浣腸を入れ
たんですから……でも、こんな悪戯、ここではそう珍しい事では
ありませんでした。女の子というのは自分達にはない物をもって
いる男の子が羨ましいのか、自分たちより幼い子をターゲットに
してHな遊びを繰り返していました。巷では男の子がやりそうな
危ない遊びを、ここでは女の子たちが平気な顔でやってのけるの
です。

 「小島先生にお聞きした時は呆れたわ。13歳にもなった子が
こんな危ないおままごとをやるなんて……小島先生でなくても、
放ってはおけないわね」

 と、その時でした。

 「ねえ、もっと幼い子ならいいのかしら」

 森下先生のお説教を観客席で聞いていた彰子が隣の子の耳元で
ささやきます。もちろん、小さな声でしたが……

 「彰子さん、何ですって!」
 森下先生の声が急に厳しくなります。

 『普段からおしゃべりで、一言多い彰子さんがまたよけいな事
を……』
 その場にいる子供たちはみんな同じ思いでした。

 もちろん、睨まれた彰子さんは黙ってうつむいてしまいます。

 ちなみに、この時の観客は、お義父様たちや私を除けばクラス
メイトの彰子さんと照子さんの二人だけ。クラスメート七人のう
ち四人が関係者でしたから公開処刑なんて言っても、全校生徒の
前でとか、街の広場で繰り広げられるハレンチな刑罰とは違って
内容はごく内輪のお仕置き会だったのです。

 とはいえ、年頃の女の子にとってそれほど親しくない人の前で
恥ずかしい思いをするわけですから、それはぶたれて痛いのとは
まったく違ったショックです。いくら、天真爛漫に育てられたと
言っても他のお家のお義父様に自分の恥ずかしい姿を見られるの
は耐え難いことに違いありませんでした。そんなわけで、こんな
場合も女の子たちは恐れを込めて特別反省会のことを公開処刑と
呼んでいたのでした。

 「男の子は女の子以上に心が純粋で傷つきやすいものです。…
…わかるでしょう?」

 これはあくまで亀山の理屈です。でも、ここの男の子に関して
言えば、確かにそんな感じでした。私を含め少数派である男の子
たちは借りてきた猫みたいに怖い女の子たちの言いなりになって
いましたから。

 でも、女の子たちの考えは違っていたようで……
 『男の子が純粋?傷つきやすい?何言ってるの……男の子って
いうのは、粗野で不潔で怠け者なだけじゃない』
 お姉様の心の中には先生とは別の考えが渦巻いています。

 「…だいたい、そんな繊細な男の子を女の子がもて遊ぶなんて
許されないことです。お義父様たちの天使にあるまじきことです。
こんなことを繰り返すようなら、この楽園(亀山)からの追放も
ありますよ」

 森下先生のお説教を聞いていた観客の一人美代子が隣の彰子に
耳打ちします。
 「亀山追放?結構じゃない。そうしてよ」
 すると今度は彰子が美代子に耳打ち。
 「でも、どうせまた連れ戻されるんでしょうけど」
 二人はお互いの顔を見合わせて、にこっと笑います。

 でも、それを見ていた森下先生はご不満のようでした。
 再び、語気を強めて…

 「あなたたち、私語は禁止したはずですよ。できないなら乙女
の祈りで見てなさい」

 とうとう、クラスメート全員が乙女の祈りをやることになりま
した。

 それに納得したのか森下先生はあらためて足下の四人に向かって
話を続けます。

 「最初は、全校生徒の前でトリプルをしてから追放しようかと
いうお話も出たんですよ」

 これは教師特有の嘘ですが、聞かされた方は、人生経験もまだ
少ないですから驚きます。
 その驚いた子羊たちの顔に満足して先生は話を進めました。

 「でも、幸いにしてあなた方のお義父様は心の広いお方ばかり
ですから、あまり果断な処置は望まれません。本来なら全校生徒
の前でお鞭やお浣腸、おやいとなどをしてもよかったのですが、
啓治君のお義父様も今回だけは特別に許してくださることになり
ましたので事は穏便に済ませたいと思います」

 『やったあ』
 生徒達の顔に思わず安堵の笑顔が……でも、一瞬でした。

 「けれど、何もしないというでは、あなた方の心に誤解が生じ
かねませんから。今日はお義父様方にもご協力いただいて純粋な
心を取り戻す訓練を行います。……いいですね………いいですね」

 森下先生は常に穏やかにお話しされていましたが、最後にきて
語気を強めます。つられて四人が……

 「はい、先生」
 と答えますが、もちろんこれも本心ではありませんでした。

 えっ?『純粋な心を取り戻す訓練』が何のことだか分からない。
(^_^;)

 確かに回りくどい表現ですものね。要するに『赤ちゃんの心を
取り戻すためのお仕置き』ということなんです。
 どの子も以前に何度か同じ様なお仕置きを受けていますから、
これからどんなことが起こるか、おおよそ想像がついていました。

 「それではそれぞれのお義父様の前に行ってご挨拶をなさい」

 森下先生に命じられた四人の乙女たちは先生の足下を離れると、
それぞれのお義父様のもとへ。

 子供たちを迎え入れるお義父様たちは、娘たちを『困った奴だ』
とは思っていられたかもしれませんが、どなたも一様に、笑って
おいででした。

 お姉さまたちはお義父様の足元まで来ると、その場に膝まづき
再び乙女のポーズをとります。

 「由美子は啓治君にとってもいけない悪戯をしてみんなを困ら
せてしまいました。……(えっと)」

 さっそくお義父様への反省の言葉を始めますが、それは大半が
カンニングの文章だったのです。

 こんな時、自分で言葉を選んで話せるほど亀山の女の子たちは
器用ではありませんでした。この子たちは、もの凄く綺麗な字を
書きますし縫い物も得意です。これは今の子たちより上でしょう。
でも、自分の意見を言うとなるとそれは今の子にはかないません。
ですから、こうした時には黒子(ママ)の助言は欠かせませんで
した。

 「(いいこと)……このままではお義父様の天使としてお仕え
できません」
 「このままではお義父様の天使としてお仕えできません。……
(それから)」

 「でも、由美子はこれからもお義父様にお仕えしたいんです」
 「でも、由美子はこれからもお義父様にお仕えしたいんです…」

 「ですから、どうぞいけない由美子の罪を精算させてください」
 「ですから……そのう、…どうぞ、いけない由美子の罪を精算
させてください」

 棒読みのセリフ、つかえるたびに耳元でママに囁いてもらって
の反省の言葉でしたが、由美子のお義父様はそれをにこにこした
顔で聞いておいででした。

 「いいかい、由美子。お前たちは昨日もおやつを公園に持ち出
して食べていたそうだな」

 「えっ……」

 いきなり場違いの詰問。由美子お姉様の顔が一瞬『マズい』と
いう顔になります。いえ、僕たちだってやってしまうのですが、
亀山は躾が厳しくて、おやつを外で勝手に食べてはいけない事に
なっていました。家の外でおやつを食べるのはピクニックのよう
な場合だけ。大人が認めない限り、おやつは家の中でテーブルの
あるところでなければだめなんです。

 「それにだ、先生のお話だと今週は宿題をやってこないことが
3回もあったそうだな」

 お義父様がちょっぴり渋い顔を作ります。本当は、どのくらい
困ったことだと思っているのかは定かでありませんが、普段笑顔
ばかりのお義父様にいきなりこんな顔をされたら……亀山の子は
誰だってドキッとします。

 「まだあるぞ、先週は、ピアノのお稽古をすっぽかして四人で
ピクニックに行ったそうじゃないか」

 「…………」
 由美子お姉様からは何一つ反論がありません。そりゃそうです。
だってすべて事実だから仕方がないのです。

 ピアノは課題曲を一週間練習してから先生の処へ行かなければ
ならないのですが、由美子お姉様はその練習時間がとれなくて、
先生の処へレッスンに行っても叱られるだけですから仮病を使っ
てしまったのでした。
 すると、そこへ同じように、バレイや日舞、フルートの練習を
さぼっていた他の三人が由美子お姉様の部屋へお見舞いにやって
来たのです。
 「なんだ、あんたたちもそうなの」
 意気投合した四人は体のあいた者同士、気分転換にピクニック
と洒落込んだのでした。

 「私は、おやつも宿題もピクニックの件も先生方から見せしめ
のお仕置きをやりたいからと許可を求められたが許可しなかった。
どうしてだかわかるかね」

 「…………」

 「そのくらいのことは自分で軌道修正できると思ったからだ。
由美子は賢い子だからな」

 「…………」
 「しかし、こう立て続けに色々やらかしたのでは先生の言い分
も認めてあげないとな」

 「…………」
 「お前ももう13歳だ。いくら赤ん坊と同じ身分と言っても、
少しぐらいの過ちでいちいち恥ずかしい思いをさせるのは可哀想
だと思ったんだが……やはり、私の考えが少し違っていたようだ」

 お義父様は小さくため息をついて、
 「今回は他のお父さんたちとも意見が合致したので、赤ちゃん
仕置きをすることにした。……いいね……いいね」

 「あっ……は、……はい」
 お義父様の再度の念押しに、お姉様は、『はい』と答えるのが
精一杯でした。

 「今日はお前のすべてをほかのお父さん方にも見てもらうこと
にした。そしてもう一度、自分がここで何者なのか自覚するんだ。
いいね」

 「は、はい」
 か細い声が私の耳にも届きました。

 今の子なら、たとえ屁理屈でも自分なりの反論をするところで
しょうが、赤ん坊として、お人形として、育てられた彼女たちは
とても心がうぶなのです。まだ、お義父様のような方に反論する
すべを知りません。ですから何を言われても「はい」という以外
に言葉はありませんでした。

 私は自分の場所から一番近い処にいた由美子お姉様たちの様子
を観察していましたが事情は他の三家族も同じだったみたいです。


****************************

〘 第 3 回 〙 お義父様のお尻叩き

          亀山物語
                     合沢啓治(著)
〘 第 3 回 〙 お義父様のお尻叩き
***************************

<主な登場人物>


私(合沢啓治)/亀山愛育院の孤児。由美子の弟。

小島先生   /私の家庭教師であり、実質的には僕のママ。

大石胤子   /亀山村の村長さん。(三代目)女王様。

榊原 美里  /同級生の恋人。片想い。

森下景子先生 /由美子お姉様の家庭教師(ママ)であり、
       /かつ、学校では担任の先生でもある。

合沢由美子  /私をリンチにかけたお姉様の一人。私の姉。

小川静子   /泣き虫。リンチ四人組の一人。

桐山香織   /おっちょこちょいで早とちり。四人組の一人。
       途中でお灸をすえられそうになる。

安西遥香   /優等生だが、今回の事件に関与。四人組の一人。
途中でお漏らしをしてオムツ替えをさせられる。

美代子と彰子 /今回私のリンチには加わらなかったお姉様。

 お義父様  /亀山の子供たちは誰もがお義父様の子供として
(合沢徹)   /その家で家庭教師(ママ)と一緒に暮らしている。

 お義母様  /お義父様の奥さん。元々はお義父様のお付き合い
(合沢早苗)  /で亀山に来たのだが、今は子供たちにも優しい。

桐山高志 /幼稚園児(5歳)。由美子のお友達、香織の弟。 

 大原先生/高志君のママ。

 おばば様/亀山のお灸担当係。子供たちの実母を知る老婆。

****************************
****<3>*********************

 と、そんな絶望的な宣告を受けてしょげかえっている由美子
お姉様の顔に一瞬赤みが射したようにみえました。

 「(えっ、何だろう?)」

 思う間もなく私の両肩が鷲づかみにされます。驚いた私が振り
返ると…

 「こんにちわ、啓ちゃん」

 「(お、お義母様!)」

 私を捕まえたのはお義母様でした。由美子お姉様はこのお義母
様に反応したのでした。

 お義母様はお義父様の奥さんです。お義父様ほど熱心ではあり
ませんが、お義父様と同じ様に私たち里子をとっても可愛がって
くださいます。特に、お仕置きなんかされそうな時は大人たちの
中で唯一私たちをかばってくださったことが何度もありました。

 そんなことからでしょう。
 「(ひょっとして今回も助け船をだしてくれるかもしれない)」
 お姉様はそう思ったに違いありません。

 お義母様は私に「あなたは帰りたければ帰ってもいいのよ」と
告げて、すでに膝小僧がガタガタと震えている由美子お姉様の処
へと向かいます。

 ひょっとしたら「(これで助かった)」と思ったのかもしれま
せん。私の目には、この時お姉様の頬がほんの一瞬緩んで笑顔に
なったように見えました。

 ところが……
 「先生、始めてくださって結構よ。今日は色々やることがある
からさっさと始めないと日が暮れますでしょう」

 お姉様の淡い期待は一瞬にして崩れ去ります。しかもそれだけ
ではありませんでした。

 「まったく、幼い子をハレンチな遊びに誘ったあげく怪我まで
させるなんて、きっとあなたの心には悪戯好きの小悪魔が入り込
んでしまっているのね。だったらそんなものは一刻も早く追い出
してしまわないと、あなたの将来にかかわるわ……あっ、お浣腸
の量は多めに加減してくださいね」

 お義母様の穏やかな口調とは対照的に、厳しい眼差しが由美子
お姉様の胸をえぐります。

 「……」
 万事休すってことでしょうか。(^^ゞ

 でも、それでも今の事態が信じられないのかお姉様はしばらく
は狐に摘まれたような顔をしていました。

 「さあ、何してるの!あなた、スカートを上げなさい!」

 凛とした声が辺りに響きます。命じたのは、ママでもお義父様
でもありません。普段は一番温厚なお義母様でした。

 「は、はい」
 もちろん、亀山の子供たちは、目上の人たちの命令には絶対に
逆らったりはしませんから言われた通りにはしますが、お姉様の
手はとてもぎこちないものでした。

 もたもたしていると……
 「さあ、早くなさい。他の子たちはもう始めてるわよ」
 そう言ってお義母様はお姉様のスカートを自らまくり上げます。
そして……

 「よし、これでいいわ」
 裾が再び下がって来ないよう手早くピンで止めてしまいます。
これは本来ママがやるはずの仕事なのですが……

 「なかなか、いい格好ね」
 満足そうなお義母様。

 当然、お姉様の白いショーツが露わになりますが、そんなこと
に関心を示す人は誰もいません。

 「…………」
 由美子お姉様は鳩が豆鉄砲を食ったみたいに今度はお義父様を
見ていました。

 「さあ、ほら、何、ぼーっと突っ立てるの。まずはお義父様に
ご挨拶でしょう」
 お義母様に促されて…

 「お義父様、お仕置きをお願いします。再び天使のお仕事が…」
 そこまで言ってお義母様が嘴を挟みます。

 「不束(ふつつか)なが抜けましたよ。不束な私にお仕置きを
お願いしますでしょう」
 今日のお義母様はとことん意地悪です。お姉様がまるで目の敵
にされているみたいでした。

 「お義父様、不束な私にお仕置きをお願いします。神様、再び
お義父様のために天使としてのお仕事ができますように」

 由美子お姉様は、籐椅子に腰を下ろすお義父様の足下に跪いて
胸の前で両手を組み頭はうなだれてお仕置きを請います。それは
男性の目にはとても美しいものに映るみたいです。
 いえ、お義父様だけじゃありませんよ。当時十歳の僕の目にも
それは同じでした。

 「じゃあ、いいんだな」
 お義父様の落ち着いた声が合図でした。

 「……」
 お姉様が小さく頷くと、お義父様はお姉様を立たせて…

 「……」
 一瞬のうちにお姉様のショーツを足首まで引き下ろします。

 好奇心に駆られた私は、その瞬間を後ろで覗いていましたが、
お姉様はそんなことされても顔色一つ換えませんし、お義父様は
いつになく厳しいお顔でした。

 やがてママに促されるようにしてお姉様はお義父様の膝を被う
テーブルに俯せになろうとしました。このテーブルはお年寄りが
多いお義父様方が大きくなった子を抱く時にその子の体重が直接
かからなくて大変重宝する家具なのですが、お義父様は、あえて
そのテーブルをどけてご自分の膝を叩いてみせます。
 ここへ直接という合図でした。

 「よろしいのですか?」
 ママの心配に…
 「大丈夫だ。わしだって男だぞ」
 お義父様は笑ってお姉様を引き寄せます。

 もちろんお姉様の方は嫌も応もありません。なされるままに、
お義父様のお膝の上に横たわると、下唇を噛んで恥ずかしさにも
耐えていした。

 「この子だって木の上でぶたれるより人の膝の上でぶたれる方
が良いに決まってるじゃろう。女は特にそうなんじゃ……」

 お義父様はそう言いながらお姉様の白いショーツを足下からも
取り去ります。おまけに、両足を目一杯開かせたものですから、
普段は絶対他人には見せられない処まで十分に光が入って、お姉
様の御印が誰の目にも鮮やかに見えます。

 「(!!!!!)」

 そんなご自分の状況が分かったのでしょう。お姉様は、この頃
からしきりに後ろを気にするようになりますが、お姉様が両足を
閉じようとするたびにお義父様から太股をぴしゃりとやられます
からそれは叶いませんでした。

 ただ、私は当時十歳。それが見えたとしても興奮するような事
はなく……『変なもの』ぐらいにしか思っていませんでした。

 やがてその変なものをお日様に晒しながらお姉様へのお尻叩き
が始まります。

 「どうだ、久しぶりに私のお膝に乗った気分は?」
 お義父様はパンパンとお姉様のお尻を右手で叩き始めましたが、
それは決してキツい調子のものではなく、軽くゴミでもはたいて
いるくらいの強さ。お義父様の顔も笑っていました。

 だからお姉様だって最初はそんな深刻な顔はしていません。

 「いつの間にかずいぶんと由美子も大きくなったな。ついこの
間までオムツをして、ほ乳瓶をくわえて、私の膝でぴょんぴょん
飛び回っていたみたいだったが……」

 お義父様は昔話をしながらもお姉様のお尻を一定の速度と強さ
で叩き続けます。

 「あの頃は、何かにつけてお義父様の処へ行くんだってだだを
こねてましたわ」
 ママが言えば…

 「まあまあ、そんなのいつのお話しかしらねえ?忘れちゃいま
したよねえ」
 お義母様もお姉様を皮肉ります。

 そこでは、お姉様を除きまるで何事もなかったかのような笑顔
でした。

 でもそのうち由美子お姉様は亀さんのように手足を微妙にばた
つかせるようになります。

 それがしだいに大きくなって……

 「おいおい、少し静かにしなさい。最初からそんなに暴れたら
しまいに私の骨が折れてしまうよ」

 お義父様の軽口です。最初のうちは誰も由美子お姉様をキツく
問いつめたり叱ったりはしませんでした。

 大人達は世間話をしたり、むしろお姉様の利発で姉御肌の性格
を褒めたりします。これは他の子の場合も同じでした。

 お仕置きは子供たちにとっては辛い体験に違いありませんが、
同時に家族内での出来事ですから、その全ては必ず愛に包まれて
います。ですからお仕置き中も叱咤だけでなく、逆に励ましても
らったり特別に許してもらったりもできるわけです。

 そして何より、自分をぶったその手が夜は優しく自分を抱いて
くれることを子供たちは過去の体験で知っていますから、これを
虐待と呼ぶべきではないでしょう。

 とはいえ、お尻をぶたれてる最中はそんな悠長なことは言って
られません。始めの頃は何ともなかったお尻叩きも、ものの2分
とたたないうちに額には脂汗が浮かび始め、3分を越える頃から
は呼吸も荒くなってしきりに後ろを気にし始めるようになります。

 「(痛い!)」
 今は、恥ずかしいからではなく純粋に痛いからなのです。

 ですから、本当はお尻に手を回してお義父様の平手を防ぎたい
のですが、そんなこと許されてはいません。何よりママが右手を
しっかり押さえ込んでいますからそれは叶いませんでした。

 「いやあ、いやあ」
 その代わりと言ってはなんですが、無意識に声が漏れ始めます。

 「あらあら、はしたない声を出さないの。大きい子がみっとも
ないわ」
 お義母様に注意されても、こればかりはどうにもなりません。
むしろ蓄積し続けた軽い鈍痛は今や塗炭の苦しみとなってお姉様
を襲い始めます。

 「いやあ、ためえ~~、許して~~ごめんなさい、~~~もう
しませんから~~~~」
 声だけでなく必死に体をよじってお義父様のお膝から降りよう
と試みます。

 「さあ、さあ、暴れちゃだめよ。このくらいの痛みじゃ悪魔は
退散しないわ」
 ママと一緒になってお姉様の身体を押さえつけるのは聞き覚え
のあるシスターの声。

 由美子お姉様はいつの間にか現れた中年のシスターに体を完全
に押さえつけられていたのでした。おまけに……

 「はい、プレゼント」
 お義母様からはお口の中へハンカチのプレゼント。鼻をつまま
れ、苦しくなって開いた小さな口の中に、大きなハンカチがねじ
入れられます。

 「んんんんんんんんんん」

 もう、こうなると唯一自由になるのは両足の膝から下だけ。
 両方の足を必死にばたつかせて少しでもこの痛みから逃れよう
としましたが……

 「ようし、これから仕上げだぞ」
 お義父様のこの言葉と共に始まった少しだけ強めのスナップ……

 「ピシャ!」
 「んんんんんんん(いやあ~~~)」

 悶絶…>_<…ってこういうことでしょうか。
 最初の一撃だけでお姉様の両手足が硬直。まるで車に轢かれた
ヒキガエルみたいにお義父様の膝の上で水平になりました。

 ですから、ひょっとしたら今の一撃で失神したんじゃないかと
思ったほどなんです。

 「ピシャ!」
 「ヒィ~~~~」

 二発目で正気を取りもしたのか硬直した両手両足は元の位置に
戻りましたが、体中の血が沸騰して毛穴から吹き出したみたいに
全身が真っ赤です。そうお尻だけじゃなく全身が真っ赤になった
のです。

 そして三発目。
 「ピシャ!」
 「あっあああああ」
 お姉様は心の中で悶絶し無意識に入った渾身の力で胸を張り、
頭を上げて弓なりになります。

 僕は他の子のお仕置きにはあまり興味がありませんが、それで
もこんな姿を見たらやっぱり同情してしまいます。

 「ねえ、やめて」
 僕は思わずお義父様の腕を取ったのですが、周囲の大人たちは
そんな僕をにこやかに見つめるだけ。

 お義母様が…
 「大丈夫よ。お姉ちゃまはもう少しの辛抱だから…」
 こう言って僕をお義父様から引き離します。
 ただ、それでもお義父様はお姉様へのスパンキングをやめては
くださいませんでした。

 「おう、小悪魔が暴れ出したぞ。それ、もう一踏ん張りだ」
 こんなことを言ってお義父様は笑っていますし、取り囲む大人
たちも誰一人同情している様子はありませんでした。

 そして、第四弾が被弾します。

 「ピシャ!」
 「んんんんんんん(いやあ~~~)」

 再びエビぞり。

 「おや、まだそんなに元気があったのか。それじゃあもう一つ」
 と、さらに一発。

 「ピシャ!」
 「んんんんんんん(いやあ~~~)」

 何しろ、大人三人から完全に体を押さえつけられてのお尻叩き
ですからお姉様だってそうそうあらがう元気も残っていません。
エビぞりだって最初の一撃に比べればぐっと小さくなります。

 「由美子ちゃん、小悪魔なんかに負けなさんな」
 まるで運動会の応援のような声がとびます。

 そしてまた一発。
 「ピシャ!」
 「んんんんんんん(いやあ~~~)」
 お姉様はそのとてつもない痛みを自身の身体にため込んで耐え
続けます。

 エビぞりもなくなり、ただただお義父様のお膝にしがみついて
嵐の過ぎ去るのを待つのみ。今のお姉様にはもう、そうするしか
ありませんでした。

 それでもお義父様は続けます。というのも、ここからが本当の
お仕置きだったからです。

 「これでもか」
 そう言ってまた一発。
 「ピシャ!」
 「んんんんんんん(いやあ~~~)」

 頭はからっぽ。体中を電気だけが駆け抜けていきます。

 今まで何発当たったのか。僕は数えていませんしお姉様も数え
てなんかいなかったと思います。

 「ピシャ!」
 「んんんんんんん(いやあ~~~)」
 お姉様はもう何の抵抗もしません。お義父様の平手のすべてを
お尻から体の中に受け入れるだけでした。

 「さてと…どうやら、小悪魔は退散したみたいだな」

 お義父様はお姉様を膝の上から下ろすと、おどけたような笑み
を見せてから真顔に戻って…

 「わかったか、自分のしたことがどんなにいけないことだった
か」

 お姉様にそう言って諭します。ただ、由美子お姉様の耳にそれ
は届いていなかっかもしれません。お姉様は、その時はとっても
グロッキーでしたから。
 でも、それでも良かったんです。お義父様のお小言は真っ赤に
なったお尻から十分に由美子お姉様に伝わったはずですから。

 「あああああああん…もう~~~~だめえ~~~~~いやあ~」

 お姉様は、悲鳴とも嘆きともつかない、みょうちくりんな声で
しばらく泣いていましたが、よっぽど痛かったんでしょう、大量
のよだれを拭おうともせず、何度も何度も両手でお尻をさすって
いました。

 でも、そのうち自分を励ますように、変なうめき声をあげます。

 「う~~~~ややややややややや……いやよ、いやよ、いやよ、
なんでこんなに痛いのよ。最悪よ。最悪。ううう、もうしらない
から…………(えっ(◎-◎;)」

 結局お義父様からいただいた特別なのが12発。息もたえだえ
になったお姉様は、やっとの思いで起きあがることを決意したみ
たいだったんですが、その前向きな決心は、ある光景を目の当た
りにした時、一瞬にして消え去ります。


***************************

〘 第 4 回 〙 幼稚園児の乱入

          亀山物語
                     合沢啓治(著)
〘 第 4 回 〙 幼稚園児の乱入
***************************

<主な登場人物>


私(合沢啓治)/亀山愛育院の孤児。由美子の弟。

小島先生   /私の家庭教師であり、実質的には僕のママ。

大石胤子   /亀山村の村長さん。(三代目)女王様。

榊原 美里  /同級生の恋人。片想い。

森下景子先生 /由美子お姉様の家庭教師(ママ)であり、
       /かつ、学校では担任の先生でもある。

合沢由美子  /私をリンチにかけたお姉様の一人。私の姉。

小川静子   /泣き虫。リンチ四人組の一人。

桐山香織   /おっちょこちょいで早とちり。四人組の一人。
       途中でお灸をすえられそうになる。

安西遥香   /優等生だが、今回の事件に関与。四人組の一人。
途中でお漏らしをしてオムツ替えをさせられる。

美代子と彰子 /今回私のリンチには加わらなかったお姉様。

 お義父様  /亀山の子供たちは誰もがお義父様の子供として
(合沢徹)   /その家で家庭教師(ママ)と一緒に暮らしている。

 お義母様  /お義父様の奥さん。元々はお義父様のお付き合い
(合沢早苗)  /で亀山に来たのだが、今は子供たちにも優しい。

桐山高志 /幼稚園児(5歳)。由美子のお友達、香織の弟。 

 大原先生/高志君のママ。

 おばば様/亀山のお灸担当係。子供たちの実母を知る老婆。

****************************
****<4>*********************

 「…………(う、うそでしょう(○_○)」

 お姉様の口からはあの奇妙なうめき声や自分を励ますような声
が聞かれなくなり、しばらくはその場を動けませんでした。

 いくらその口がだらしなくて大量のよだれが垂れたとしても、
こんな海にはならないと気づいたのでしょう。
 お姉様はすでに失禁していました。それに、今気づいたのです。

 「まあ、まあ、あなた何てだらしないことしてるの。お義父様
のおズボンが台無しじゃないの……」

 ママとお義母様が慌てて懐からハンカチを取り出し、争うよう
に汚れたズボンのシミを拭おうとしますが、お義父様は泰然自若
としておいででした。

 「よい、よい、他の者ならともかく由美子のものなんだから…
…気にするな」
 こうおっしゃって由美子お姉様を再び自分の前に引き寄せ…

 「痛かったか?」
 とおたずねになったのでした。

 「はい、お義父様」
 泣きべそ声の由美子お姉様は恐る恐る答えますが、あろう事か、
お義父様のごつごつした右手がお姉様のお臍の下をすり抜けて、
ワレメ付近で何かを入念に調べているのが見えます。

 お義父様はこの時何のためにそんなことをしたのかおっしゃい
ませんでしたが、ひょっとしたら、今のスパンキングでお姉様が
何やら性的な興奮を覚えたんじゃないか、そんな事を心配された
のかもしれません。

 でも、大丈夫。その水はやはりお姉様のお小水だけだったよう
です。(^^ゞ

 お義父様はこのあと他の子と同じようにお姉様をベビーベッド
の前で跪かせると、両手を頭の後ろで組ませて、真っ赤になった
お尻を展示します。

 ずらりと並んだ四つの赤いお尻。それはここにいる誰もが見る
ことができる壮観な眺めでした。

 実はこの時、私もお義父様に肩車されて、一緒にお姉様たちの
熟れたお尻を観察して回ったのですが、それはとってもとっても
不思議な優越感で、この先この由美子お姉様に意地悪されたり、
虐められたりするたびにこの時のことを思い出すのでした。

 ところで、13歳という年齢は今日的には大人に足を踏み入れ
る年頃となるかもしれませんが、当時の亀山では……
 『それはまだほんの子供』
 『体だけが一足先に変化し始めているものの心は幼児と同じ』
 『小学生と同じ。だから親や教師の意思には絶対に従わせなけ
ればならない』
 と考えられていました。

 実際、孤児とは言っても亀山の子は何不自由ない暮らしぶりで
大人たち親の愛情にも恵まれて育ったお嬢様タイプの子ばかり
ですから、13歳になっても親や教師を疑うということを知りま
せん。
 むしろ成長して幼児の頃より分別がありますから、何を言われ
ても従順で「はい、お義父様」「はい、お義母様」「はい、先生」
でした。

 そのあまりの従順さに呆れて(私は男でしたから日頃そこまで
できません)彼女たちはこれ以外の言葉を忘れたんじゃないか、
と思ったほどだったのです。

 『その使い分けこそが女の才覚』と知るのは私が大人になって
からでした。(^^ゞ

 そんな従順なお姉様たちですから、お義父様たちに真っ赤っか
のお尻をこちらに向けて跪いていろと命じられれば、一時間でも
二時間でもそうしているでしょう。でも、それが恥ずかしくない
かと言われれば、そりゃあ恥ずかしいに決まっていました。

 ただ、ここに集っている人たちは私を除けばいずれも目上の人
たちばかり。しかも、いずれも親しい関係にある人たちばかりで
したから、それがお姉様たちとしては救いだったのです。

 ところが、そんな予定調和の内輪の会に、突如、思わぬ珍客が
舞い込んできます。

 何だか甲高い声が聞こえてきたかと思うと……
 幼稚園児のチビちゃんたちが、一斉に庭の中へと乱入してきま
した。

 「(えっ、何よこのチビ!)」
 お尻を出したままにしているお姉様たちの心配をよそにみんな
駆け足で思い思いの場所へと散らばります。
 もちろん、見れば面白い出し物をやっているわけですから、そ
こに人が集まらないわけがありません。

 この時も数人の女の子が前に回って由美子お姉様の困った顔を
覗き込みました。

 「この人、知ってる?」
 「由美子お姉様よ」
 「知ってるの?」
 「ご近所に住んでるの」
 「どうしてお尻出してるの?」
 「お仕置きだからでしょ」
 「お仕置きって……どんなおいたしたの?」
 「知らないわ」
 「ねえ、ねえ、お姉様、どうしてお尻出してるの?」

 幼い子供たちは無遠慮に色んなことを知りたがります。

 「さあ、さあ、みなさん、お姉様たちのお邪魔になるわ。離れ
なさい」
 チビちゃんたちの先生がやってきて、女の子たちを解散させま
したが、事態はそれだけでは収まりませんでした。

 「痛い!」
 由美子お姉様が、突然、頭から右手を離してお尻に当てます。
 原因は男の子が打った銀玉鉄砲がお姉様のお尻に命中したから。

 「バキューン」「バキューン」「バキューン」「バキューン」

 反応があって嬉しかったのか男の子は次から次に小さな銀の玉
を乱射します。

たまらず小島のママが「やめなさい」と叫びましたが、今度は
そのママやお義母様、はてはお義父様にまで発砲する始末。手が
つけられないでいると……

 「ほら、人に向けて打っちゃいけないと言ってるでしょう」
 慌てて坊やからピストルを取り上げたのはその子のママ、大原
先生でした。実は彼、高志君と言いまして由美子お姉様のお友達
である香織さんの弟なんですが、やんちゃ坊主でみんな手を焼い
ていたみたいです。もっとも、この時彼はまだ五歳。可愛い盛り
ですから誰からも人気がありました。

 そんな事からでしょうか私を抱いていたお義父様が一つ提案を
します。

 「そんな言いつけを守れない子は裸になってお詫びしてもらわ
ないといけないな」

 こんな提案、巷ではまずないでしょうが、亀山では幼い子のお
仕置き(?)の一つとして一般的に行われていました。

 もちろん高志君に対しても、それは否応なしに行われます。

 ママによって素っ裸にされた彼は、私に代わってお義父様の膝
の上に……

 「ごめんなさい」
 は言えたのですが、お義父様は高志君をなかなか解放しません。

 いえ、実は真の目的はこちらにあったのです。お義父様は柔ら
かで張りのあるすべすべの肌をご自分のあらゆる処にこすりつ
けて、まるで石鹸で体中を洗っているかのように楽しみます。

 それはお義父様には快楽。高志君にとってはこれこそが何より
辛いお仕置きだったみたいでした。

 実は、亀山で厳しいお仕置きを受けるのは上級学校に入学する
9歳からで、幼稚園と小学校3年生までを受け入れる初級学校の
頃まではあまり厳しい体罰はありませんでした。

 この頃に厳しくし過ぎると、親や教師を恐れて子供の顔が暗く
なるというのがその理由で、思い起こせば確かにその通りです。
ですから幼い頃は悪戯しても怠けていても目の玉が飛び出るほど
何かをされたという記憶がありません。

 三つ子の魂百までもじゃありませんが、幼い頃厳しいお仕置き
を受けなかったせいで、私たちは『大人はみんないい人なんだ』
という思いが、自然と脳裏にすり込まれることになり、その後、
誰にお仕置を受けてもその人を恨むということがほとんどありま
せんでした。

 この時の由美子お姉様だって、『あいつら、こんなことさせや
がって』という恨み節はなかったと思います。ただただ、自分が
悪いと思っていたはずでした。

 とにかく『純真』『勤勉』『清楚』がお義父様に愛される条件
であり、みんなそれに向けて努力していたんです。
 本当ですよ。

 さて、話を戻しますが、由美子お姉様の受難はこれからが本番
になっていきます。

 お尻の火照りが幾分収まった頃、四人の女の子たちは着替えを
命じられます。今着ているのは学校の制服。これは汚れると困り
ますし、何より今ここに用意されているベビーベッドには似合い
ません。

 そこで用意されたのがタオル地で作られた赤ちゃん用のカバー
オール。もちろん、この子たちの身体のサイズに合わせて大きく
作ってあります。

 これはおおよそ着ぐるみみたいな衣装ですから、背中のファス
ナーを開ければ一人で着ることもできますが、後ろのファスナー
を閉められてしまうと自分一人では簡単に脱げません。おまけに
袖が袋地で両手が外に出ませんから、せっかくおトイレをする為
にお尻付近がボタンで開くようになっていても、独りではそこを
開けて自力で用を足すことはできませんでした。

 一度着てしまったら大人たちに全てを委ねなければならない。
そんな悲しい服だったのです。

 「さあ、さあ、ベッドに上がったら制服を脱いできちんと畳ん
でちょうだい。女の子なんですからね、脱ぎ散らかさないのよ。
今度はショーツも靴下も全部ぬいで着替えますからね。わかって
るわね」

 四人の女の子たちはこの拘束衣みたいなベビー服を素肌の上に
直接着せられます。つまり、一度はベッドですっぽんぽんになら
なければならないわけです。それって、今までだったら仕方ない
と思って諦めるところでしょうけど、チビちゃんたちやその引率
の先生の目があるこの場所では抵抗感がありました。

 「さあ、何してるの!さっさと脱ぎなさい!」

 どのママたちも、娘たちが何故ためらっているかは百も承知で
強い言葉を投げかけます。

 お姉様たちは渋々追い立てられるようにストリップ。おまけに
着替える直前にはまだ豊満とは言い難いその身体を気をつけさせ
てお義父様に見てもらわなければなりませんでした。

 それはもう見飽きるほど娘の裸に接しているお義父様にとって
は何気ない生活の一コマなのでしょうが、見られる側の娘たちに
してみれば、『これだって立派なお仕置きじゃないの』と感じて
しまう一瞬だったのです。

 「さあ、着替えが済んだらこれからお馬さんに乗りますよ」

 森下先生の号令で、女の子たちはベッドの脇に置かれた木馬へ
跨ります。これは底板が丸くたわんでいてそこだけ見れば幼児が
よく遊ぶ木馬に似ていますが、女の子たちが乗る部分には腰掛け
られるような鞍は付いておらず幅の狭い跳び箱のような処へ抱き
ついて俯せになります。前の低い位置に、突き出た棒があります
から、それを両手で掴むことで体を支えるようになっていました。

 ちょうど競輪選手が最後のコーナーを走ってくる時のような、
前のめりの、あんなポーズになります。

 ちょっと窮屈そうに見えますが、その姿勢そのものはそんなに
苦しいというほどではありません。あとはその姿勢を保ってさえ
いればそれでよかったのです。そして、静かにさえしていれば、
先生は満足でした。

 ただ、そんな簡単なことが、この場合、女の子たちにとっては
けっこう大変なことだったのです。

 「これからみなさんには、今回の過ちがどれほどのものだった
かをこのトォーズで実感してもらいます。難しいことは何もあり
ません。あなたたちは何もしないでいいのです。楽チンでしょう」

 お姉様たちは先生の皮肉に顔の筋肉を引きつらせています。

 「ただその際、一つだけお約束があります。決して悲鳴を上げ
たり、むやみに身体を揺すったりしてはいけません。あなた方は
もう幼い子ではないのです。体を揺すったり悲鳴をあげることで
痛みから逃げるのではなく、一発一発しっかりその痛みをお尻で
受け止めて自分たちの過ちを心に刻み反省しなければなりません。
……分かりましたね。…………あれ、ご返事は?」

 「はい、シスター」
 お尻を突き出した格好の四人は最後に語気を強めたシスターに
驚いて瞬時に返事を返します。その様子は理科の実験でひき蛙の
足に電流を流した時のようでした。

 「はい、よいご返事でした」

 シスターは始め四人を前にして話していましたが、最後は一人
一人を回り、その目の前に革ひも鞭のトォーズをかざして確認を
とります。

 「いいですね、由美子さん。あなたも来年は少女になるんです
もの。お仕置きも毅然とした態度で受けなければね」

 「はい、シスター」

 「静子さん、泣き虫は卒業できそう?少女試験の時は泣いてる
だけで不合格になることもあるのよ」

 「はい、シスター」

 「香織さん、あなたはおっちょこちょいと早とちりを治さない
とね。大人になって損をすることになるわ」

 「はい、シスター」
 「遥香さん、あなたはこの年齢にしては立派だけど、立派すぎ
るというのも考えものだわ。たまにはママやお義父様からめちゃ
くちゃにお仕置きしてもらって、心を解放してもらうというのも
大切よ。あなたはまだ若いんですもの。一人で何でもかんでも背
負い込まないようにしないといけないわ」

 「えっ?……あっ、はい、シスター」

***************************

〘 第 5 回 〙 お馬での鞭打ち

          亀山物語
                     合沢啓治(著)
〘 第 5 回 〙 お馬での鞭打ち
***************************

<主な登場人物>


私(合沢啓治)/亀山愛育院の孤児。由美子の弟。

小島先生   /私の家庭教師であり、実質的にはママ。

大石胤子   /亀山村の村長さん。(三代目)女王様。

榊原 美里  /同級生の恋人。片想い。

森下景子先生 /由美子お姉様の家庭教師(ママ)であり、
       /かつ、学校では担任の先生でもある。

合沢由美子  /私をリンチにかけたお姉様の一人。私の姉。

小川静子   /泣き虫。リンチ四人組の一人。

桐山香織   /おっちょこちょいで早とちり。四人組の一人。
       途中でお灸をすえられそうになる。

安西遥香   /優等生だが、今回の事件に関与。四人組の一人。
途中でお漏らしをしてオムツ替えをさせられる。

美代子と彰子 /今回私のリンチには加わらなかったお姉様。

 お義父様  /亀山の子供たちは誰もがお義父様の子供として
(合沢徹)   /その家で家庭教師(ママ)と一緒に暮らしている。

 お義母様  /お義父様の奥さん。元々はお義父様のお付き合い
(合沢早苗)  /で亀山に来たのだが、今は子供たちにも優しい。

桐山高志 /幼稚園児(5歳)。由美子のお友達、香織の弟。 

 大原先生/高志君のママ。

 おばば様/亀山のお灸担当係。子供たちの実母を知る老婆。

****************************
****<5>*********************

 四人へのお説教が終わると、今度はママたちがやって来て娘の
腰に着いているボタンを外します。四角い窓が大きく開いてお尻
がいきなり外気に触れますと、もうそれだけで女の子たちは悲鳴
を上げたい気分でした。でも、ここではそれを自分の心で必死に
押さえなければなりません。

 でも、それって不思議でしょう。ついさっきまですっぽんぽん
の身体をお義父様にお見せしたばかりなんです。それに比べれば
今回はお尻だけなんですから、もっと落ち着いてても良さそうな
ものなんですが……(^^ゞ

 でもそれには女の子ならではの理由があります。というのも、
普段トイレなどで秘め事のようにして自身がやっている行為を、
今は他人がやっているのです。その非日常的な違和感が女の子に
はたまらなく嫌なようでした。

 おまけに外の風がいきなり感じやすいお尻に当たりますから、
思わずそこで声をあげてしまったなんてことも……

 この時は幸いにもそれはクリアできましたが、次の瞬間、香織
さんが思わず声を上げてしまいます。

 「いやあ~~」

 彼女の悲鳴は庭じゅうどこにいても聞こえるほど大きなもので
した。
 勿論、この場で悲鳴なんかあげちゃいけないことは百も承知な
彼女ですが、アルコールを含ませた脱脂綿がお尻をなでた瞬間、
ほとんど生理的に声を上げてしまったのでした。

 もともと亀山では、お尻への鞭のお仕置き時などにアルコール
消毒する習慣がありますから香織さんだってそれを知らないわけ
ではないのですが、彼女の場合は、運悪くそこに最近すえられた
お灸の痕があって、脱脂綿でふき取る際かさぶたが取れ、他の人
にはない余計な刺激が加わったみたいでした。

 勿論、それが飛び上がるほどの痛みというわけではありません
が、緊張感がマックスなこんな時です。予期しない刺激を受ける
と、女の子は生理的反射的に声をあげてしまうもののようでした。

 でも、お仕置きのこの場面でそれは理由にはなりません。

 「なんですか!はしたない声をあげて」
 シスターが飛んできて叱ります。

 「ごめんなさい」
 もちろん、香織さんは謝りましたが、余計なことも言ってしま
ったのです。

 「実は私、三日前お尻にお灸をすえられてそこがしみたみたい
なんです」

 こう言うとシスターは…
 「あっそう、では、もう一度そこにお灸をすえましょう。三日
前に粗相をしておいて、今日もまたこんなお仕置きをいただいて
るなんて、他の子以上に特別な反省が必要な子だわね。……先生、
お灸の準備はおありでしたね。もう一度すえてあげてください」

 シスターはそこで一つ大きく息をつくと、「これまでにない位
大きいのがいいですわよ」とまで宣言したのでした。

 「いやあ、ごめんなさい。もうしませんから、お灸だけはしな
いで、お願い」

 香織さんはたまらずシスターに直訴しますが、シスターは聞く
耳もたずと言った顔で香織さんの顔を睨みつけるばかり、命じら
れたママもあきれ顔でさっさと準備にとりかかって香織さんへの
助け船は出してくれそうにありません。

 やがて再度アルコール消毒がなされ、ふき取られたお尻は熱を
奪われて香織さんの心も冷やしていきます。

 「(いやいやいやいや)」
 艾を乗せられる部分が軽くつまみ上げられると、まるで自分の
心臓がつまみ上げられたようでした。

 「(だめ~~~)」
 香織さんは心の中で叫びます。
 でも、つまみ上げられたお尻の上に艾が乗り、お線香の香りが
鼻をくすぐると、もう観念するしかありませんでした。

 そんな香織さんの様子は他の子たちにしても気になりますから、
不自由な身体をねじっておのおの事の成り行きを見ていました。
いえ、彼女たちだってお灸に関しては無傷ではありません。特に
お臍から下にはいくつものお灸の痕があります。当時にあっても、
女の子の場合は火傷の痕が残るという理由からお灸のお仕置きは
敬遠されがちでしたが、亀山の場合は、ある事情からどの子にも
広く行われていました。

 今日、お灸といえば、千年灸ぐらいしかすえたことがない人が
ほとんどで、その恐怖というのが今一つピンとこないでしょうが、
ここでいうお灸は艾を肌に直接乗せて焼くわけですから、煙草の
火を押しつける根性焼きと理屈は同じ。子供にとってその熱さは
半端じゃありませんでした。

 「はい、いくわよ。歯を食いしばりなさい」
 とはママの声。とうとう艾にお線香の火が移されましたが……

 「…………あっ!」
 艾の火が下りて直接肌を焼く寸前、ママは艾の火をもみ消して
しまいます。

 「さあ、もう良いでしょう」とはシスターの声。
 「今度変な声をあげたら本当にただではすみませんよ」はママ。
 どうやら二人とも最初から本当にお灸をすえるつもりはなかっ
たようでした。

 この脅かしが効いたのかトォーズによる鞭打ちは順調に進んで
いきます。

 「さて、誰を最初にしましょうか」
 シスターの声に四人全員の体に鳥肌が立ちます。

 こうした場合、最初に誰がやられるのか、次は誰の番なのか、
まったくわかりません。すべてはシスターの気まぐれなのです。

 自分の番になると、ママがアルコールをたっぷり染みこませた
脱脂綿でお尻を丁寧に拭いてくれますからそれで覚悟を決めます
が、そうなったらなったで、幼い頃悪さをするたびにお医者さん
から必要もないビタミン注射をされた記憶が呼び起こされてまた
鳥肌です。

 もちろんシスターが振り下ろすトォーズの鞭は一回一回がとて
も痛いで、もちろんこれが一番の災難ではあるのですが……

 「ぴしっ~~」
 乾いた、それでいて鈍い音が園内に響き渡ります。
 「(ひぃ~~~~いたい~~~~)

 「ほら、身体を動かさない」

 そんなこと言われても身体の方が勝手に反応してしまいます。
下の板が丸いのでちょっとでも身体を動かせば木馬は大きく揺れ
ます。そのたびに『約束を破った』『約束を破った』とみんなに
知らせているようでした。

 「ぴしっ~~」
 「(ひぃ~~~~やめてえ~~~~)
 心の中で必死に叫びます。

 「ほら、もう一つ」
 冷徹な声が頭から降り注いで……

 「ぴしっ~~」
 「(いやあ~~~だめえ~~~~~)
 話相手は今抱きついているお馬さんだけです。

 「ようく、その痛みを身体の中に染み込ませるの。わかった」
 シスターは男のような低い声で命じます。
 「…………」
 由美子お姉様は僅かに頭を縦にしたみたいですが、無言です。
本人としては「はい」という気持なんですが声がでませんでした。

 「ぴしっ~~」
 「(ああああ~~~死んじゃう~~~~)

 「よし、いいわね、その気持が大事なの。さあ、もう一つよ」
 シスターは何も言わない由美子お姉様の気持が鞭でぶたれてい
る姿だけでわかるようでした。

 「ぴしっ~~」
 「(~~~~~~~)

 私も経験者だからわかるのですが、本当に痛いと何も頭に浮か
ばなくなるんです。無の境地ってやつでしょうか。
 シスターはそんな由美子お姉様の様子をつぶさに観察してから
……
 「……どうやら、私の気持があなたにも通じたみたいね。では、
これで最後にしましょう」

 「ぴしっ~~」
 「(~~~~~~~)

 結局、六回で由美子お姉様はシスターに許してもらいましたが、
これは少ない方です。鞭の回数は人それぞれ。とにかくシスター
が「この子は反省したな」と感じるまではやめてくれませんから
長い子は12回ももらうことがありました。

 さて……
 最後の子の試練が終わる頃には四人みんなが泣いていました。
 こんな姿勢では身体を使って痛みを逃がせません。ですから、
女の子には泣くこと以外方法がありませんでした。

 ただ、遥香さんだけは無意識に身体が別の方法を試したみたい
でした。

 「なによ、遥香、あなた、またお漏らしなの」
 ママの困惑した声が遥香さんの顔を赤らめます。でも、これも
また仕方がないことでした。何しろ身体が勝手にやってしまった
ことなんですから……。

 とはいえ、遥香さんはせっかく着替えたベビー服を再び着替え
なければなりません。
 おまけに今度はみんなが見ている前で……

 素っ裸にされ、仰向けに寝かされるとお尻バンザイです。
 これは仰向けになった赤ちゃんがオムツを取り替える時に両足
を高く上げるあのポーズのこと。亀山では14歳になって、少女
試験に通らなければ『少女』とさえ認めてもらえませんでした。

 13歳の子はまだ赤ちゃん。たとえ胸が膨らみお臍の下に下草
が茂り始め初潮があったとしてもここでは『赤ちゃん』のまま。
 だからこんなに恥ずかしいポーズだって当然でした。

 まず蒸しタオルでお股を綺麗に拭き清められ、ベビーパウダー
が、これでもかというほどはたかれます。そこへ浴衣地で作った
オムツとビニールのオムツカバー。当時は、まだ紙製の使い捨て
オムツなんてものは一般的ではありませんでした。

 香織さんは顔を隠そうとしますが、ベビーベッドを取り巻いた
他の友だちがそれを許しません。香織が顔を隠そうとするたびに
執拗にその手を払いのけます。
 しかも同情するというのではなく…

 「ねえ、久しぶりに赤ちゃんになった気分はどう?」
 「久しぶりじゃないわ。三日前もオムツしてたもん」
 「えっ、そうなの。わあ良いこと聞いちゃった」
 「何よ、どうせ今日はあなた達だって穿くんでしょう」
 「そりゃあそうだけど……あなたの場合はわざとじゃない」
 「えっ、わざとなわけないでしょう」
 「だってあなた、今でも毎晩ママからオムツ換えしてもらって
るんでしょう」
 「変なこと言わないでよ」

 子どもというのは残酷で、自分に関わらないことには無頓着。
友だちの嫌がることも平気で言い放ちます。ですから、男の子で
あれ、女の子であれ、友だちでいるためにはそれに耐えなければ
なりませんでした。

 ただ、香織さんがママからのオムツ換えを『変なこと言わない
でよ』と否定しましたが、それは普段おすまししている香織さん
の見栄が言わせた言葉で、彼女に限らず、ここではかなり大きく
なってもママに甘えてわざとお漏らしする子が珍しくありません
でした。

 きっと、香織さんとしては『自分はそんなにだらしのない子供
じゃない。もう立派な少女なんだ』と言いたかったのでしょう。

 香織さんのオムツ替えが終わると他の三人にもオムツが与えられ
ます。次はいよいよお浣腸の時間でした。

****************************

Appendix

このブログについて

tutomukurakawa

Author:tutomukurakawa
子供時代の『お仕置き』をめぐる
エッセーや小説、もろもろの雑文
を置いておくために創りました。
他に適当な分野がないので、
「R18」に置いてはいますが、
扇情的な表現は苦手なので、
そのむきで期待される方には
がっかりなブログだと思います。

最新記事

カテゴリ

FC2カウンター

検索フォーム

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード

QR