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α201

α201


 ~~始めに~~

α201はアンドロメダ星雲の片隅にある小さな惑星。
 もともと宇宙海賊として名をはせた一族だが、ある時、Y染色体の
異常が起こって男性の比率が低下。海賊稼業ができなくなった。
 その後は、女性が主体となり、まじめな性格と高い知能を武器に、
インテリゲンチャとしてよその星に出向いては外貨を稼いでいる。
 そんな女の都に住む彼女たちだが男っ気がまったくない訳ではない。
もちろん生殖用に必要なのだが、それ以外にも主だった役職は男性が
勤めるというバイキング時代からの伝統が守られ、実務はほとんどを
女性が担当するようになった今でも、主要ポストは男たちにまかせて
いる。
 家庭にあってもそれは同じで、父親が家長を勤めるというしきたり
は変わっていなかった。
 ただ、何しろ男性が少なくなった社会。なり手がいないという事も
ある。そういう時は、かつては同族で今は星を離れている者の子孫を
見つけ出し高額な給与をエサに呼び戻すという方法が取られていた。
 これはそんな高い給与につられてやってきた一人の男の話である。
 宇宙人の話だが恰好はそのまま地球人。生活や文化も日本に近くて
ハチャメチャな設定だけど……(笑)……、ま、そんな些細なことは
あまり気に留めずにご覧ください。


 ~~物語~~

 「 α201は白鳥座の一等星デネブの惑星の一つで昔は宇宙海賊の
基地として恐れられていた星だったれど、今は平和よ。別名『女の都』
なんて呼ばれてるわ」

 「女の都?」

 「そう、男性がいないわけじゃないんだけど、数百年前、Y染色体
に異常が起きてまともな男性が生まれにくくなくなったの。今では、
その比率およそ100対1くらいって聞いてるわ」

 「じゃあ、女性の天下なんだ。男は隅に追いやられてますね」

 「ま、実務は確かにそうね。土木工事から軍事まで力仕事もすべて
女性が主役だから……ただ、もともと、海賊って呼ばれていたくらい
だから男社会の文化でしょう。男性に対するリスペクトを忘れたわけ
じゃないの」

 「例えば?」

 「名誉職ではあるけど、組織の長はたいてい男性が努めているわ。
内閣総理大臣から国会議長、県知事、学校も大半が男性が校長先生よ」

 「でも、それって、要するに女性の言いなりに動く操り人形なんで
しょう?」

 「ま、そう言ってしまうと身もふたもないけど……ただ、あなたの
行く処には、まだ男性の役割があるから安心して……」

 「私の行く処って……たしか、懲戒所ですよね」

 「そう、子供がお仕置きのために送られてくる施設のことよ。その
昔は感化院なんて呼ばれていたみたいだけど、要するに各家庭で手を
焼くお転婆さんたちがここに集められて、頭を冷やしてもらうために
つくられたの。……あなたにはうってつけのお仕事よ」

 「私が女の子たちに罰を与えるんですか?」

 「いえ、いえ、それはよほどの時だけ。大半は女の子たちが受ける
お仕置きをただ見ていればいいの。女の子って同じお仕置きでも同性
に見られるのと異性に見られるのではショックが大きく違うから……
ここでは男性が是非とも必要なのよ」

 「じゃあ、ひょっとして……その……お尻というか……性器なんか
も……」

 「当然ね。だってそれが目的だもの……下は四五才から上は18才
までの少女の大事な場所がばっちり拝めるわよ」

 「……えっ……大丈夫かなあ……」

 「大丈夫って何が?……大丈夫よ、精神鑑定もバッチリやったし、
あなたがこれ位で羽目を外さない人だってことも調べがついてるもの。
……でなきゃ私も推薦できないわ。いいから、いいから、バッチリと
楽しんでくればいいのよ。だって、あなた、3度のごはんよりあれが
好きなんでしょ」

 「………………」
 私は顔を赤らめるより仕方がなかった。



********************************

 α201は女の都と呼ばれるだけあって美しい星だった。私は彼ら
が昔は海賊をやっていたと聞いていたからどんなに荒々しい所だろう
と思っていてたが、宇宙船が発着する空港はもとより街のどこを見て
もゴミ一つ落ちていないし、公共トイレもホテルのパウダールームか
と見まがうばかりの豪華さだ。

 「美しい街ですね」
 私は空港に迎えに来た婦人の案内で車に乗ると、まるで童話の国の
ような街の様子を見てつぶやく。

 すると、彼女の答えはこうだった。
 「みなさん、そうおっしゃいます。きっと、多くの方が海賊の星と
聞いて、もっと粗野なイメージを持たれるんでしょうね。……でも、
こう言っては何ですが、海賊はあくまでこの星で行われていたわけで
ありませんから……」

 「そうですね」

 「むしろ、その時代からここはずっと美しい街並みだったんです。
何しろ、海賊というのは長期出張が多いでしょう。街を管理していた
の女性たちで、汚す暇がありませんわ」

 「…………」
 運転する彼女が笑い私もつられて笑う。

 「海賊というのは出稼ぎ仕事ですから、星の治世は昔から女の仕事。
世間の人は男性が生まれにくくなったので世の中が激変したと思ってる
みたいですけど、私たちに言わせればここは昔から女の都なんですよ。
政治、経済、教育、この星で起こるほとんどの事を取り仕切ってるのは
実は昔から女性なんです」

 「なるほど、見ると聞くとでは大違いというわけですか……さぞかし
優美な処なんでしょうね」

 「……優美?……さあ、それはどうですか……何しろ女性は男性に
比べてわがまま勝手なところがありますから……ほおっておくとすぐ
統制が取れない状態になってしまうんです。ですから、男性と同じ事
をしようとすると、規則や規律はむしろ男性以上に厳しくしておかな
ければならないんです。ですから、ここを見学されたほとんどの方が
それを見て『意外だ』っておっしゃいます」

 彼女の言葉通り、ここでの生活はむしろ男には真似ができないほど
厳しいものだったのである。

 「……で、私は、ここで何を期待されているのでしょうか。私には
恥ずかしながらこれと言って特技というのもありませんけど……」

 「いいんです。そんなことは……一般的な常識さえもっていてくだ
されば……あなたのお仕事は一応司祭補佐といったところですが……
べつに宗教的な知識はおいおい学んでいただけばよいことですから、
そこは気になさる必要はありません。大事なことは毎日のように女の
子がお仕置きを受けます。それをにやついたりせずしっかり見ていて
くだされば、それが一番の仕事なんです。簡単でしょう?」

 彼女の説明は星を出る時もここへ送られた宇宙船の中でも聞いた話
なのだが、どうも要領を得ない。
 しかし、私の仕事はなるほど、こうとしか説明のしようのない仕事
だったのである。

 

********************************
 
空港から市街地に入ってくると、どこも一区画が500坪はあろうか
という一戸建ての建物が並んでいる。広い芝にはブランコやシーソーが
置かれていて、そこだけでちょっとした街の公園といった雰囲気だ。

 「超がつきそうな高級住宅街ですね」

 こう言うと運転の彼女は……
 「でも、どの家にも子供が20人はいますからね、一歩、家の中に
入ってごらんなさい、四六時中雌猫の金切声を聞いてなきゃならない
から、そんな優雅な生活でもありませんよ」

 「20人?」

 「そう、もっと子だくさんの家庭もあるけど、いずれにしても血筋
は関係ないの。バイキングの父親ってのは生きてる時は英雄でもいつ
死ぬかわからないでしょう。だから、子供は血筋に関係なくみんなで
育てるというのがこの星の流儀なのよ」

 「なるほど、だから一軒一軒の家が広いのか」

 「そういうこと。単に御飯を食べさせるだけなら学校の寮みたいな
ところでもいいんでしょうけど、それだと愛情を知らない粗野な子が
多くなって街が荒廃してしまうでしょう。それで家庭は残そうという
ことになったの」

 「あなたもここの御出身なんですか」

 「そうよ。留学時代を覗けばここで生まれてここで育った」

 「子供時代はこんな家で……楽しかったですか?」

 「さあ、どうかしらね。今にして思えばそうかもしれないけど……
実際の子供時代は大変だったわ」

 「そうなんですか?こうして見ると豊かそうに見えるけど……」

 「あなたは海賊の家に生まれてないから分らないでしょうけど……
海賊って男たちが長期出張してるでしょう。だからもその隙を狙って
よく強盗がやって来るの。それを撃退しなきゃならないから女たちも
普段から軍事訓練に明け暮れてるの。当然、子供たちもそこは同じ。
今はあくまでお仕置きとしてなんだけど、昔は盗賊に攻め込まれても
動揺しないための訓練としてやってた側面もあるのよ」

 「お仕置きが訓練?」

 「そう、女の子は裸にされると精神的に弱くなるからそうなっても
耐えられるように日頃から裸でいることを体現させておくの」

 「過酷な暮らしだったんですね」

 「そうでもないわよ。男たちが出航すれば残っているのはほとんど
女と老人、幼児ばかりだけど、私たちだってアンドロメダ連邦政府の
一員でしょう。監視体制もバッチリだから非道なことをすればすぐに
ばれて大変なことになるからお宝は取ってもそんなに非人間的なこと
まではしないの。……ん?……そこはうちらも同じか( ̄∇ ̄;)」

 「アマゾネス?」

 ( ̄∇ ̄;)ハッハッハたしかにそう呼ぶ人もいたわね。男たちが
留守の間はその時代でも政治、経済、教育……全て女たちの天下よ。
だからね、そこは今と変わらないから、男に頼れなくなった今でも、
急に困ってるってわけじゃないのよ」

 「強いんですね」

 「男に頼れなくなった後も何度か盗賊が来たけど、全て追っ払った
んだから……私たち一人一人の力はないけど団結力では負けないの。
……幼い頃からきつい体罰で責め立てられることが多い社会だけどね、
でも、それが訓練にもなってるってわけ……」

 「…………」

 「何見てるの。……ああ、あれか……他の星じゃ、あんなのあまり
見ないものね。珍しいでしょう。でも、ここだとあんなの毎日だって
見れるわよ」

 運転手氏は笑う。その笑顔が日常の風景だと言っているようだった。

 「ちょっどいいわ、覗いて行きましょう」

 「いいんですか……」

 「もちろんよ。ここは教会の裏庭にあたる場所だからあなたの職場
の一つでもあるんだし……むしろ見学していくべきだわ」

 そこは古めかしい石造りの建物が日陰をつくる中庭。
 おりしも小学生高学年くらいの女の子たちが十数人ほどで一段高く
なった舞台を取り囲んでいる。

 まるでこれからこの狭い舞台で人形劇でも始まるのかといった風で
どの子の顔も楽しげだ。

 「…………」

 しかし、その舞台上を見てみると……それは世間一般の常識として
楽しい雰囲気のする光景ではなかったのだ。

 というのも、舞台上では同世代の女の子が二人、ラックと呼ばれる
鞭打ち台にうつぶせになって縛り付けられ、すでにスカートはめくり
あげられ、ショーツは引き下ろされ、普段は大事に隠されているはず
の可愛いたプッシーさえも丸裸になっている状態だった。

 いくら、子供とはいえ、これはないだろうと思う姿勢でいるわけだ
が、見学している同年輩の子供たちはと見てやるとこれが悲壮感とか
憐憫の情なんてものは微塵もない様子だった。
 『私たちは面白いサーカスを見学に来た』
 そんな感じに見えたのである。

 ところが車を降りた私たちが舞台に近づくとそれに気が付いた子供
たちから顔色が変わっていく。
 楽しそうだったその顔が一瞬にして青ざめ怯えた表情へと変化した。

 『緊張させてしまったか』
 という動揺が私の心に影をさす。

 「まあまあ、これは新しい司祭様でらっしゃいますね。……お早い
御着きで感謝申し上げますわ」

 壇上にいたシスターが私に語りかける。
 私は正直困ってしまった。
 確かに私の任務は司祭に違いないのだが、私はそもそもこれまでの
人生で入信などしたことがないのだ。
 ただ、職安で仕事を見つけていたとき教師の仕事をしたことがある
という理由だけで採用されたにすぎなかったのである。

 「大変申し訳ありません。私はまだこの星に来たばかりで、何が何
やらまったくわからないことだらけなのです。よろしければいくつか
教えていただけますか」

 私は舞台上で革紐鞭を持つシスターに向かって正直に尋ねてみた。

 「そうですか、無理もありませんわ。この星の習慣は一風変わって
いますから。何でしょう。何でもお答えしますよ」

 「そもそもここは教会でしょうか」

 「広い意味で教会と言えばそうかもしれません。修道院の敷地内に
ある礼拝堂の一区画で子供たちが学校で習う勉強の補習をしています」

 「塾?」

 「まあ、そうなりますからしら。この星では親や教師のほか私たち
も子供たちの面倒を見ているのです」

 「で、これは?」
 私が恥ずかしい恰好でいる二人の少女に視線を移すと……

 「お仕置きですわ。さっき教室でひそひそ話をしていたので連れて
きたんです」

 「かなり厳しいんですね」
 私が苦笑いして尋ねると……

 「この程度、この星では序の口なんですよ。男性からは厳しく映る
かもしれませんけど、女同士でやるぶんには大したことはしてないん
です」

 「でも、ここにも少数とはいえ男性が生活しているんでしょう?」

 「ええ、だからお分かりでしょう。……みんなの顔が変わったの。
……この台に縛られてる二人の心はもっと変わったはずですよ」

 私は赤面して……
 「いや、これれは失礼しました。では、さっそく退散します」
 慌てて踵をかえそうとしたが……

 「いえ、いえ、それは困ります。あなたをこの星にお呼びしたのは
こうしたお仕置きを見ていて欲しいからなのです。……ご存じの事と
思いますが、この星には男性が少ないので大半が女性同士。女同士の
世界ではどんなに厳しい罰を与えても効果があまりないのです」

 「つまり……その……私が男性であるという事に意味がある?」

 「女性同士では羞恥心もなく、体罰もインフレを起こして、身体が
持ちませんわ。そこで男性のお力をというか、その目をお借りしたい
のです」

 「なるほど、ということは男なら誰でもいいというわけですか」
 皮肉を言うと即座に否定してきた。

 「いえ、いえ。とんでもありませんわ。分別や教養は十分にないと
子供たちにしめしが付きませんから、そのあたりは人選も慎重に行い
ますの。決して誰でもよいというわけではありません。職安の方にも
そのあたりは十分に信頼できる人をと頼んでありますのよ」

 「なるほど、わかりました」
 私は自分の置かれた立場を思いやり心の中で思わず笑ってしまった
が、さりとて今さら尻尾を巻いて帰るにはこの星はあまりに遠かった
ので、しばらくはここに厄介になろうと決めたのだった。

 その後、二人の罪人はその可愛らしいプッシーが外気に十分当たる
までに剝きだされ、革ベルトの一撃一撃がしっかりと噛み締められる
ようにタオルを猿轡にして、脳天まで響く鞭の衝撃を受けていた。

 何だがとても残酷な光景に見えるが、ここの子供たちは幼い頃から
こうやって生活してきたのだろう、高らかに鞭音が響く最中にあって
も取り乱した様子を見せなかった。

 むしろ終わったあと、二人が軽く衣服を整えてシスター先生の前に
膝まづき懺悔や今のお仕置きに対する感謝の言葉まで述べるに至って
は、絶望に打ちひしがれているというより、まるで恍惚として先生に
すがりつき、甘えているようにさえ見えたのである。

 「まるで、甘えてるみたいだ」
 そこで運転手氏に正直に感想を述べてみると……

 「さすがは元先生。鋭い指摘です。……実際、甘えてるんですよ。
男性にはちょっと想像できないかもしれませんけど、女の子は相手が
好きな人ならぶたれていても撫でられれても、そこに大きな差はない
んです。好きな先生がいればわざとお仕置きされるように画策する子
だって少なくないんですよ」

 「でも、こんな姿、友達に見られたら、私は次の日から学校に行け
ませんよ」

 素朴な疑問をぶつけると、運転手氏は失笑する。
 「女の子のこと、まだよくお分かりになってないみたいですね」

 「……?……」

 「ここではたとえ裸になったとしても周囲がほとんど女の子ばかり。
着いてるもの、着いてないものがみんな同じですから。……それに、
お友だちからも悲劇のヒロインとして同情してもらえますしね。……
それもまた女性にとっては気分のいいことなんですよ……」

 「…?…少しくらいお尻が痛くても我慢できるってことですか?」

 「さっきの計算違いはあなたが現れたことかな……でも、それも、
多勢に無勢……数で圧倒的に優っている時は羞恥心も吹っ飛ぶんです」

 「そうか、ここは女の世界。異端者は私、というわけか」

 「女って男性がいるから女性らしくふるまおうとするのであって、
女って女性だけでいる時は男性以上に破廉恥が平気なんです。でも、
それでは社会の収拾がつかないからあなたは必要とされてるってわけ
……お分かりですか?」

 「やはり男の視線って幼い子でも気にするんでしょうね」

 「そりゃあもちろん。女性って男性以上に異性を気にしますから。
…………(少し間をおいてから)…………でも、それすらも、しばらく
したら慣れちゃいます。純粋な恥じらいなんて持ってるのは14、5
まででしょうか。17、8にもなればそれは人生の戦略、処世術です。
本心はストリッパーも顔負けの度胸の良さなんですよ」
 運転手氏は可愛く笑ってみせた。

 「そうなんですか。……でも、17、8にもなったらそもそも滅多
にお仕置きというのもないでしょうから」

 私がつぶやくと即座に返事が返ってきた。
 「ありますよ。18が19であっても、……親も教師も司祭様も…
…ここではみんなの前でお尻をむき出しにして叩くんです」

 「えっ?!だってハイティーンの子ってもう大人じゃないですか」

 「それはあくまでこの星のお外の出来事。ここでは二十歳未満の子
はすべて子供扱いです。胸が膨らみ、腰がくびれて、毛がはえても、
そんなのここでは関係ありませんわ。二十歳になる前日までは親も、
教師も、牧師さんも、とにかく権限のある大人は監督下にあるその子
を1分以内に裸にひん剥いて鞭打つことができるんです」

 「えっ?!そんな大きな子まで……」

 「男性は女がどんな時でも慎み深い存在と思ってるみたいですけど
女は男性が知らないだけで心の奥底から本当に自由人なんですから。
だから逆に、年齢、身分、権力、あらゆる力できっちきっちに縛って
おかないと、あっと言う間に組織が崩壊してしまうんです」

 「逆に厳しい規律や戒律が男性以上に必要というわけですか?」

 「そういうことです。男性の軍隊では、星が一つ違えば主人と奴隷
ほどに立場が違うとお聞きましたけど、それはここでも同じ。二十歳
の誕生日を迎えるまでは子供はみんな大人の奴隷なんです」

 「奴隷って……文句はでないんですか?」

 「陰ではいろいろ言ってるでしょうけど……でもそれは先輩たちが
一度は通った道……誰でも同じですから、そうなると文句を言わない
んです」

 「…………」
 私は、正直、声がでなかった。

 「それに何より女性は体力で男性に劣ります。ですから外からの敵
には常に集団で立ち向かわないと生きていけない。だから一度決めた
規則を安易に変更させないし、規律も男性社会以上に完璧でないと、
組織がすぐに崩壊してしまうんです」

 「そういえば、海賊の留守を狙って海賊がやって来るって言ってま
したっけ……ここでは女の子も立派なソルジャーなんだ」

 「そういうことです。……さて、おしゃべりしている間に着きました」

 「ここが教会ですか?」

 「いえ、そうじゃありません。ここはあくまであなたの自宅です」

 「自宅って……まるでみたい宮殿じゃないですか。いいんですか、
こんな豪華な社宅、私が独り占めして……」

 「いえ、一人じゃありません、奥さんもいますし、召使もいます。
何より、子供が二十人ですから、そう考えるとここもそんなに大きな
家ではないと思いますけど」

 「…………」
 私はこの瞬間まで妻の存在や子供が二十人もいるなんて知らされて
いなかったから一瞬にして目が点になったのだが……。

 「契約書、ございますけど……今一度、読んでみますか?」

 彼女がそう言って差し出した契約書には確かに、『子供は十五人から
二十五人を養育し、妻とのセックスは双方の合意ある時にのみ合法と
する』という文言が虫眼鏡が必要なくらい小さな文字で書いてあった。

 「…………」
 私は思わず苦笑する。意にはそわない内容だが中身をよく読まない
私にも責任があると感じたからなのだ。

 「オッケー、オッケー……ところで、みなさんこんな立派な建物に
住んでいられるんですか?」

 「立派かどうかは人の主観ですからわかりませんけど、この星では
このくらいは庶民の標準的なものですわ。同居人は、子供二十人の他、
奥さんに、メイドも数名おりますから、どうしてもこの位のサイズの
家が必要になるんです」

 「やっぱり、海賊って儲かる商売だったんですね」

 「…………」
 口を滑らした私を車を降りた運転手が睨みつけるので私はしまった
と思ったが後の祭りだった。

 「私たちは初めから略奪行為をしていたわけじゃありません。交易
の交渉がうまくいかない時、そういうこともあったというだけですわ。
だって、あなた方だって軍事力に差があるのをいいことにあちこちに
植民地を開き、現地の人を奴隷として使役していた過去があるじゃあ
ありませんか。私たちは一過性ですけど、何世代にも渡り奴隷貿易を
してきた方のほうが上品だったとは思いませんことよ」

 あまりに毅然とした彼女の態度に私は頭をかくしかなかった。
 たしかに、我々だって何世代にも渡って奴隷を使ってきたのだから
我々の方がよほど罪深いとも言えるのだ。

 「これはこれは旦那様、ご帰還感謝いたします」

 音楽ホールかと見まがうよな玄関に立つと上品な中年婦人が恭しく
挨拶してくれた。
 
 「この方は?」
 勝手のわからなない私が運転手氏に尋ねると……

 「あなたの奥様ですよ」
 という答えが……

 何とも奇妙な空気が流れた。

 「ご存じとは思いますが、ここでの家族には血縁はまったくありま
せん。子供たちはPC処理によって受精した遺伝子的に優秀な子たち
ばかりですし、この奥様もあくまで子育てをするための共同管理者と
いったところです」

 「それぞれ夫と妻、お父さん、お母さんというビジネスパートナー
というわけですか」

 「そういうことです」

 運転手は答えたが……
 「ただそんなに杓子定規に考えなくても日常生活はあなたが生まれ
育った血縁関係による家族とそんなに大差はありませんのよ」

 私の新しい奥さんが少しだけ私のショックを和らげてくれる。
 実際、一緒に暮らしてみた私の経験からすると、この星での生活は
それほどむなしいものではなかった。
 実の夫婦ではないとは言っても、お互いが合意すればSEXだって
自由なのだ。

 「では、居間へご案内いたします。まずは子供たちの挨拶を受けて
いただきますので……」

 そう言われて案内された居間はだだ広くて五十畳もありそうな処。
部屋のあちこちには大きな壺に入った沢山の花がいけられ、歓迎用の
紙飾りやミラーボールがまぶしく輝いていたりしたが、何より華やか
だったのは子供たち。下は本当の赤ん坊から上は二十歳前後の美少女
まで、おめかしした少女たちの集団にブスと呼べるような娘は一人も
いなかった。

 「いやはや、これは可愛い。……可愛い子ばかりだ」

 私が感嘆すると……
 「それはそうですわ。我が国自慢のPCが精子と卵子を吟味して、
容姿端麗、才能豊で健康に丈夫に育つであろうカップルを計算して、
掛け合わせ受精させた子供たちばかりですから」

 「なるほど……どおりでみんな美しいはずだ。これはドレスのせい
ばかりではありませんね。でも、こんなに沢山お子さんを作ったら、
お母さまも大変ですね。……で、お父様は?」

 私が何気に頓珍漢な質問をすると、婦人は思わず噴き出して……
 「いやですわ。あなたがそうじゃありませんか」

 「……(笑)……」
 私は冷や汗。この期に及んでもまだ実感がなかった。

 そもそも、どの子も私が産んだんじゃありませんよ。私はあくまで
この子たちを育てるのが仕事。この子たちを産んだん女性はそれぞれ
に違いますし、そもそも誰の精子と卵子を掛け合わせたかもPC以外
知らないことなんです」

 「ここでは子供を産む人と育てる人を分けているのか」

 「そういう事。昔は胎児を試験管で育てた時代もあったそうですが、
無機質な子ばかり多くなって社会秩序が乱れ始めたので『女性は特別
な理由がない限り、三人の子を出産しなければならない』と定めたの
です。都合三年近く掛かりますから大変な義務ですけど、種族を保持
していくためには仕方がありません。ただその代わりその子を育てる
義務はありませんから、そこを私たちがやっているというわけです」

 「……」
 私は、文化の違いでやむを得ないとは思いつつも言葉を失った。
 曲解して考えれば、ここでは肉親は一切存在しない。巨大孤児院で
国民を育てているということのようだ。

 「この方がなまじ情を挟まない分、適格な教育ができるんです」

 「…………」
 私はカルチャーショックが抜けないままにしばしその場でぼんやり
していたのだが……

 「海賊稼業をしてきた私たちは常に賊に襲われる危険があります。
残酷な目にも何度もあってきました。そんな時、なまじ血の繋がりが
あると冷静な判断ができず、より大きな悲劇となる事を悟ったのです。
ですから最初から他人が他人を育てるシステムにあらためたんです」

 運転手氏が私の心を見透かすように説明すると、マダムもその後に
続く。

 「でも子供たちに愛情は必要ですから、寄宿舎というのではなく、
家庭という仕組みは残したんです。そして、虐待などが起きないよう
私たちを含め子供たちはグレイトマザーと呼ばれるAIPCの監視下
で暮らしているという訳です」

 「グレイトマザー?……AIPC?……ですか」

 「あなた、ここへ来る前に目の検査を受けませんでしたか?」

 「ええ、まあ……」

 「あれで、それ以降あなたの視界は全てPCに伝わることになり、
それが虐待行動と判断されれば、検察に通報が行くというわけです」

 「あれって、そんなことだったんですか…………」
 私は驚き顔を引きつらせる。
 「それって、トイレとかSEXも監視されているってことですよね」

 「ま、確かにそれはそうですけど、犯罪に関係しない限りそうした
情報はPCの中で封印されていますから、プライバシーが侵害される
ということはありません。大人の情報はあくまで育てる子どものため
りものですから」

 「では、私もそのAIPCの指示で父親を演じるわけですか?」

 「ええ、でも、そんなに窮屈なものではありませんよ。何でもかん
でもAIPCの指示で動くというのではなく。父親にも母親にも広く
裁量権が認められていますから、日常生活で起こる諸問題をお仕置き
という方法で解決することだってできます。大半は他の星でやってる
子育てとそんなに変わりありませんよ。……ただ目に余るものだけを
AIPCが直接脳に指示するだけです。その時はすぐにやめなければ
なりません」

 「それは、そのAIPCが私たちの行動を常に把握しているという
ことでしょうか?」

 「そう言うことです。私たちだけでなく子供たちもメイドたちも、
およそ子供にかかわる人たちは、24時間365日、どこへ行っても
AIPCに監視下にありますから、この職にある限り、逃れられない
のです」

 「トイレの時も?」

 「ええ、トイレの中も、ベッドでの秘め事も全てです。でも子供を
トイレで折檻でもしない限りそんな映像が表に出ることはありません
から。大人の私達はプライバシーが犯されるということはありません」

 「子供は?」

 「子供はべつですわ。こちらは未だ保護を受けている身ですから。
オナニーなんて悪戯をしていると、その血流、血圧、呼吸、心拍数等
からAIPCが察知して私たちに知らせてくれます。……どのような
お仕置きが適切かも教えてくれますよ」

 「プライバシーはなしですか(溜息)……ここは超のつく監視社会
なんですね」

 「そういうとおどろおどろしく聞こえますけど、あくまで子供たち
への虐待や危険を防ぐためですから慣れればそんなに住みにくい世界
でもありませんのよ………では、子供たちを一人ずつ紹介していきま
しょう」

 母親は幼い子、まだ赤ん坊という子から一人ずつ自己紹介せていく。

 「この子はハナ。まだ生後一年あまりですが、話せますよ」

 「おとうちゃ……ま、……こ、こ、こんにちわ……私はハナと……
言います。……どうぞ、可愛がってください」

 「一歳の子が話した!」
 まだ完全にろれつが回らないハナは抱か上げたニーナが口添えして
やれば次から次へとご挨拶の言葉を口にする。
 まだ、意味は分っていないだろうが、それにしても驚かざるを得な
かった。

 「この子は学者候補として遺伝子を組まれていますから割と物覚え
は早いんです」
 とは、母親の弁。

 学者、エンジニア、医者、音楽家…ありとあらゆる職種に対応した
遺伝子の形で社会に必要な分だけ将来適任の職業人が生まれてくる。
 それを管理するのも当然AIPCだった。

 ハナは最後に私へのプレゼントとしておしゃぶりを渡してくれた。
 「はい、お父様」
 これは父となった私へのプレゼントのようだ。

 自ら創作活動ができるようになれば、私を描いた絵画だったり刺繍
したハンカチだったり、自ら作曲したピアノ曲だったりする。

 これから先は順々に年かさの子の挨拶となるのだが、いずれも華麗
なドレスを着こみお化粧まで施している。
 どの子も可愛くて化粧の必要はないだろうと思ったが……。

 「ありがとう、ありがとう」
 私はそれしか言えなかった。

 何しろほぼ一歳刻みで兄弟姉妹がいるという大家族なのだ。あとが
つかえている。

 ただ、女の都と呼ばれる星だけあってその大半は女の子。男の子は
七歳のマーク君だけ。彼ももちろん一張羅といえるような華麗な衣装
での登場だったが、甘えん坊さんとみえて私のそばに寄るといきなり
抱き着いてきたのには驚いた。

 後でわかったことだが、貴重な男子はどうしても過保護になりがち
のようで、甘ったれ、わがまま、といったところは他の兄弟より多少
大目に見られているところがあった。

 で、総勢18名。これでも十分に大所帯。
 一通りこの広間にいる子供たちの挨拶もすんだのでこれでてっきり
終わったと思っていたのだが……

 最後に二人、これまでになく年かさのありそうな少女が辺りを窺う
ようにして入ってきた、。
 すると……

 「マリー、べス、こっちへいらっしゃい」
 目ざとく見つけて母親が二人を呼ぶ。

 歳の頃なら十七、八といったところだろうか。二人とも子供と呼ぶ
には体つきもほぼほぼ大人の体型で、よその星でならヤングレディー
という名称で呼ばれていることだろう。

 しかし、この星での立場はあくまで子供。ハナやマークと基本的に
同じで大人に準じたというものではなかったのである。

 「あなたたち、どこへ行っていたの?もう、お父様は到着なさって
いるのよ。私、言いましたよね。今日は夕方までには新しいお父様が
いらっしゃるから用が済んだらなるべく早く帰ってくるようにって」

 「…………」
 「…………」
 二人は押し黙ったまま。どうやら、私などよりもっと大事なことが
あったようだった。

 「どこへ行ってたの?こんなに遅くまで……」

 「……それは……」
 「……その…………マリーが花火大会があるって言うから、つい」

 「花火大会?知ってますよ。でも、そんな事より我が家にあっては
新しいお父様をお迎えするのが大切なことじゃなくて。……お父様は
この家の当主なのよ。ないがしろにしていいわけがないでしょう……
そうした大事なことは忘れちゃったのかしら?」

 「いいえ」
 「そういうわけじゃないけど……」

 「とにかくお父様の着任早々こんな非礼は許されないから……これ
から二人にはお仕置きを受けてもらいます。

 「……!」
 「……!」
 その瞬間、二人の顔が真っ青になるのがわかった。

 そこで、一拍置いて……
 「私はべつに……」
 と言って身を乗り出してみたのだが……その際くだんの運転手氏に
耳打ちされる。

 「ご主人、……申し訳ありませんが、この星では子供のお仕置きは
母親の専権事項。奥様がこうして欲しいと申された時以外のお口出し
はご無用にお願いいたします」

 「……なるほど、そうでしたか」
 この星に来てまだ右も左も分らぬ身。こう言うしかなかった。

 その後、この二人は私のソファアに近づくと恭しくお辞儀をして、
「新しいお父様のご帰還に遅れてしまい申し訳ありませんでした」と
詫びてきた。

 その服装は他の子と違い普段着だったが、もちろんこちらはそんな
ことは何とも思ってはいない。鬼も十八番茶も出花とはいうが、その
顔は愁いを持ちつつも美しく『お父様』などと呼ばれてこちらの方が
緊張して赤面するくらいだった。

 他の子と同じようにマリーからは油絵、エリザベスからはゴブラン
織りのタペストリーが送られ、私はこれでてっきりこの件は一件落着
したと思った。
 ま、それが私の生まれ育った星では常識的だったからである。

 ただ、それが母親の次の言葉で撃ち砕かれる。

 「マリー。ベス。お父様のお許しが出ましたからこれからはお二人
ともお父様の子供としてここに住むことが許されます。でもその場合
は家のしきたりにしたがってお父様に非礼を働いた罰を受けなければ
なりません。分ってますね」

 「…………」
 「…………」
 母親の宣言直後、二人の顔から血の気が引いていくのがはっきりと
わかったから、これがとても深刻な事態なのだろうとすぐに分ったが
私にはそれを止めるすべがないこともすぐに理解できたのだった。

 「みなさん、これから規則を破ったお姉ちゃま達二人のお仕置きを
します。みなさんもこれは自分のことじゃないから関係ないなどとは
思わずしっかり見学しましょう」

 母親はこう言って子供たちを『お仕置き部屋』と称される部屋へと
移す。ニーナや家庭教師、メイドたちに促されて子供たちが大広間を
出る。
 血の繋がりがないとはいえ自分たちの姉がこれから酷い目にあうと
いうのだからさぞやショックなんだろうと心配したが……

 「…(笑)…」「……(笑)…」「……(笑)…」「…(笑)…」
 談笑しながら部屋を出ていく。あっけらかんとしているのだ。
 もちろん。その命令に誰一人逆らう者はなかった。

 恐らくこんな催しはこれが初めてというのではないのだろう。
 むしろ、ここでお仕置きを受けずに大人になるなんて不可能という
ことのようだった。

 そして……
 「さあ、ご主人もお願いします。あまり綺麗なものではありません
けど、これもご主人の義務に類することですらお願いいたします」

 メイドの一人に促されて私は席を立つ。
 できたら遠慮したい思いもあったが義務とまで言われれば席を立つ
しかなかったのである。

**************************

 お仕置き部屋はその名の通り子供をお仕置きするための部屋のこと。
この星の家庭では珍しいものではなく、寝室や食堂などと同じように
あって当たり前の場所だった。

 もちろん子供を懲戒する部屋は男中心の社会にもあるにはあるが、
それは大半が尻を叩くためのテーブルぽつんと置いてある簡素なもの。
それに比べこの星のお仕置き部屋は一見するとここが何をする場所か
一見して分らないほど凝った作りになっていた。

 大広間の三分の一ほどのスペースしかないその場所は、さらにその
半分が長椅子を使った観階段状の客席。残り半分がお仕置きを受ける
子の舞台となっている。

 私が到着した時、すでに観客席は埋まっていて、私の座る場所だけ
が空いていた。

 「さあ、ご主人、こちらへ」

 メイドの一人が私を呼び、恐らくは私のためであろう革張りの椅子
を勧める。
 ここは観客席に陣取る子供たちの中心。これから自分たちの仲間、
兄弟が悲惨な目に合うことになるのだから、さぞや私は快く思われて
以内のだろうと思っていたが、後頭部から聞こえるのは楽し気な談笑
ばかり。一応辺りを見回してみたものの……顔は青ざめ固唾をのんで
なんて子は、ここには誰もいなかった。

 「……?……」
 まるでサッカー場か野球場の観客席にいるみたいでこちらが呆気に
とられるほどみんな笑顔だったのである。

 そう、これから楽しい漫画映画でも始まるかのようにみんな心わく
わくの笑顔で舞台を見ていたのである。

 舞台の主役はもちろん先ほどの二人と母親。それに家庭教師らしき
女性がアシスタントとしてついていた。

 「では、始めます。服を脱いで」
 それは母親のそっけない号令で始まった。

 普通、17、8の娘にいきなり服を脱げなんて言えないもの。いや
言ってみたところで、たった一人とはいえ私という異性の混じる中で
それは無謀な要求に思えたのだが……

 「…………」
 二人は争うように服を脱いでいく。
 しかも下着を含めてあっという間、私は1分間ほどで全裸の少女を
目の当たりにすることになるのだった。

 「すごい、恥ずかしくないのかな?」
 思わず独り言をつぶやくと私の身の回りの世話をいいつかっている
らしきメイドが……

 「1分以内に命令を実行しないともっと恥ずかしい罰が追加される
からですわ。ここでは子供たちが19であってもマザーの命令は絶対
なんです」
 と、教えてくれた。

 「19でも子供扱いなんだ」

 「もちろんですよ。……二十歳になって大人認証試験に合格して、
それで初めて一人前の大人と認められるんです。それまで大人の命令
は絶対ですから。マザーに裸になれと命じられると、もうそれだけで
反論は許されないんです。1分以内に全裸で気を付けの姿勢をとらな
きゃそのあとどうなるか分りませんもの」

 「…………」
 私は二人が可哀そうになって思わず目を伏せたのだが……

 「いけません旦那様。目をそらさないでください。子供のお仕置き
を見学するのは父親としての大事なお務めですから……」

 「そうなのか……」
 右も左もわからない私はメイドの忠告に対してさえ従うほかない。
 すると……

 「あなたたち、先週の土曜日はちゃんと下草の手入れをしたの?」
 母親が二人に新たな難題を吹きかける。

 下草とはお臍の下の体毛。つまり陰毛のことで、彼女たちはすでに
ハイティーンだから備わっている。ただ、この星ではこれを自然な事
として許容してくれないところがあって、娘たちはこれが生えてくる
と週末は各自で綺麗に剃り上げなければならなかった。

 「あらあら、ずいぶんざらざらしてるわね」
 母親の鋭い眼光が二人の幼いハートを射貫く。

 その青ざめた顔はどうやらそれができていないと白状しているよう
だった。
 震えた顔からは嘘をつこうという気など起きない。そんな事をした
ら先に何が待っているか、その答えを彼女たちは若い身体に嫌という
ほど蓄えているからなのだろう。

 「ごめんなさい、やってません」
 「わたしもやってません」
 こう言う他はない。

 すると、母親は納得した顔でこう切り出す。
 「そう、それなら今回はそれをお父様にやっていただきましょう」

 「……(!)……」
 その瞬間、私の脳裏に電気が走る。青天の霹靂というのはこういう
事なのだろう。とにかくびっくりして目が点になった。

 「せっかく新しいお父様が見えたんですもの。幼い子と同じように
あなたたちも愛を授けてもらう権利があるわ。お父様が着任される日
も忘れて花火大会に出かけるようなあなた方の心の中には、きっと、
どうせこのお父様とは一、二年の短いお付き合いだからという思いが
あるのかもしれないけど、短い期間だからこそ濃密な関係になる事も
あるのよ。おむつの代わりにそのくらいのことはしてもらってもいい
んじゃなくて」

 私は母親の講釈を聞きながら、この星に父親という職業で来訪した
時、空港で二週間も足止めを食ったことを思い出していた。
 その時受けた数々のレクチャーの一つに風船にシェービングクリー
ムを載せてそれを剃り上げる訓練というがあったのを思い出したのだ。

 『あれって、これのことか』
 その時の風船の形を思い出して思わず苦笑する。

 「それは……」
 思わず声が出たが、その先の言葉は飲み込んでしまう。
 もちろん通常なら遠慮したいところだが、この星で『父親』という
職業に就き、これがその義務だと言われればやらないというわけには
いかなかった。

 二人はそれぞれ別のテーブルに縛り付けられて、まったく身動きの
できない状態の中、共に視線の定まらない表情で天上を見ている。
 顔面蒼白という言葉があるが、その顔はもう真っ白になっていた。

 「じゃあいくよ、動かないでね」
 二人が緊張しているのは当然だが、私はもっと緊張していた。
 本来なら少女の柔肌に触れてちょっぴり何か起きそうなものだが、
床屋でもない器用でもない私にそんな余裕はなかったのである。

 ただ、終わり際に……
 「この子たちは幸せですわ。若い男性に下のお世話を受けて……
女は男性の匂いを身につけているか否かで幸せ感が違いますから」
 という母親の言葉を聞く。

 「そうでしょか。私にはこの子たちが何度もシャワーで自分の身体
を洗う姿が想像できますよ」

 「それはそうでしょうしけど、何度洗ってもその匂いは落ちません。
いいえ。落ちないどころか歳と共にだんだん強くなります。そして、
ある時気づくんです。これが逆に女としての自信や勇気となっている
んだと……」

 「……ん?……それが、ひょっとしてこの星の血を引くとはいえ、
異邦人である私を受け入れる理由ですか?」

 「私たちの星ではY染色体が弱くなったために海賊をしていた時の
ような雄々しい男性は期待できません。そこで一旦は女性だけの社会
を創ってみましたが、結局、女性だけでは社会が成り立たないことを
悟って、もとの姿に戻したのです。ですからこの星では実務の大半は
女性が担っていますが、組織の要となる役職、例えば司祭様市長さん、
校長先生やもちろん家長もあなたでなければならないのです」

 「お飾りでも男性は必要ということですか?」
 皮肉めいて言うと……

 「そんなことはありませんわ。男性でなければならない仕事の出番
はたくさんありますもの」

 「これも?……その一つ?」

 「そういうことです。……ま、彼女たちがその意味を体感するには
もう少し時間がかかると思いますが……いずれにしても男性と女性は
お互い補いあって生活してこそ種族も維持できると悟ったということ
です。さあ、これで準備も整いましたし、これから本格的なお仕置き
になります」

 「これからなんですか?」
 思わず口を滑らせると……

 「ええ、ですからお仕置きです。……女性は男性の世界とは違って
女の子のお仕置きはたっぷりと時間を掛けて行いますの。……だって
それが何よりの愛情表現ですから……」

 「愛情表現?」

 「そうですよ。お仕置きは愛からくるもの。憎しみではありません
から。女の世界ではたとえその瞬間は不快でも時間を掛ければかけた
分だけその後の愛も深まるんです。ま、ご覧になっていてください。
フェミニストの方にするとちょっぴり刺激が強すぎるかもしれません
けど、決して現実から目をそらさないでくださいね。そんな事をした
ら、かえって女は傷つきますから」

 母親はそう言い残して仕事にとりかかった。

 「さあ、まず浣腸よ。シャワーの前で膝まづいて」
 母親はまだうすっらと涙が残る二人の瞳に命じる。

 この部屋の半分が階段状になった長椅子の観客席なのはすでに説明
したと思うが、もう半分は舞台になっていて壁際に三本のシャワーが
備えつけられている。

 その三室ある狭い個室に二人はそれぞれ入ると、やがて滝のように
降り注ぐであろう細かい穴の開いた蛇口の真下で膝まづく。そして、
自分たちの足首より若干高い位置に設置されたT字バーを両手で掴む
のだ。

 何の指示もなく行われる行為。その手慣れた仕草からこれが初めて
の体験ではないことがわかった。

 『これがここでの浣腸なのか』
 心の中だけで驚いていると……

 「さあ、足は閉じないの。何回言ったらわかるの。新しいお父様は
まだあなたたちの大事な部分をしっかりご覧になっていないんだから
この機会にちゃんと見ていただかなきゃ。あなたたちは今はまだ子供。
そこを隠す権利はないのよ」

 母親の強い口調が室内に響く。
 と、微かだがすすり泣く声が聞こえた。ハイティーンにもなっても
この姿。そりゃあ、当然の反応なのかもしれないが、気が付いて後ろ
を振り返ると、こちらはほぼ全員満面の笑みだった。
 まるでサーカスでも見学してるいるような楽しい笑顔ばかりなのだ。

 『この子たちだって当然、同じようなことをやられているはずなの
だが……子供というのは自分に関係ないことにはこうまで冷淡なのか』
 と、思ってしまった。

 やがて、天井とそう変わらない高さの棚に置かれたホーローびきの
小型バケツに浣腸液が入れられる。
 バケツからはゴム製の管が伸びていて途中にストッパー、先端は逆流
止めのふくらみがついている。
 もちろんお尻の穴に直結できるように十分な長さが確保されていた。

 「いいですか、では始めます。今回は色々無作法がありましたからね。
石鹸水ではなくグリセリンを使います」

 「え~」
 「いやあ~そんなの」
 思わず上がる二人の何とも悲し気な悲鳴。石鹸水とグリセリンでは
その効果に大きな違いがあるからだった。

 しかし、大人絶対のこの社会においてその方針が変更されることは
なかった。

 「あっ……」
 「いやっ……」
 その液体が身体の中に入ってきた時の二人の絶望的な吐息が室内
に流れる。

 恥ずかしい部分もお尻の谷間からはっきりとみえてはいるけれど、
二人がそれ以上の嬌声を上げることはなかった。
 むしろ、この時は後ろの観客席の方が大盛り上がりだったのである。

 『子供というのは自分の事以外ではこれほどまでに冷淡なのか』と
思うしかなかった。

 グリセリンがお腹の中に入ると、二人は肉屋につるされた肉の塊の
ように両手を丸木の棒に縛られたままつま先立ち、万歳をしたその姿
のまま身体を固定されてしまう。

 「…………」
 「…………」
 呻く声さえ出せない中にあって、足元には粗相した時のための盥が
……そのあとはひたすら我慢の時間だった。

 大人たちは手早く作業を行ったが……
 当然のことだが、グリセリンの効き目は石鹸水より遥かに早い。
 一分を待たずして、二人のお腹は耐え難いものになったようで。

 「ぁぁぁぁぁぁぁ」
 「ぁぁぁぁぁぁぁ」
 二人の声にならない声。

 が……
 「どうしたの?このくらいのことで変な声だして、お姉ちゃんたち、
こんなことも我慢できないなら妹たちに笑われるわよ。ほらしっかり
しなさい。……それとも、最近はお仕置きが少ないから我慢の仕方も
忘れちゃったのかしら?……ほら、しっかり肛門を閉じて!……ほら、
ほら身体だけはもうしっかり大人なんだから、妹たちの前でお漏らし
なんかしたらみっともないわよ」

 母親が囃し立てると必死に我慢する二人だったが……
 それもほどなくして限界に……

 そのあたりはさすがに日頃からこうしたことをやっていて経験豊富
な母親のこと、ダメだと分るとすぐにシャワー室のドアを閉める。

 「いやあ~~」
 最後の断末魔の声とともに……
 「ビシャー、ビリビリ」

 ドアはすでに閉まっていたが、何が起こっていたたのかは誰の脳裏
にもその映像がはっきり映る。妹たちにしてもそれは幾度となく自ら
経験したことだった。

 母親がドアを閉めて十秒以内。まさに絶妙のタイミングに私は変に
感心してしまったくらいだ。

 「ほら、お股を開いて……汚れをちゃんと落とさないと恥ずかしい
でしょう……」

 「あっ、痛い」

 「ほら、そのくらいのこと我慢するの!」

 母親はただでさえ狭いシャワー室の中に入り込むと、盥にたまった
汚物を引き出し、大きくなった娘の陰部までを綺麗に洗ってしまう。
 もちろん、こうした事は戒めを解いて本人にやらせたり、メイドに
任せてもよいことなのだが、我が家の場合、母親はそれはしなかった。

 「…………」
 「…………」
 すっかり消沈した二人。恥ずかしいなんてことさえ忘れてシャワー
室をでてきた。

 もちろんそんなみじめな少女の姿を注視する趣味はないが、『郷に
入りては郷に従え』という諺通りここまで来ると大分こちらの度胸が
ついている。

 『さて、これで終わりか……』
 一息ついたが、イヤそうではない。
 私にはもう一仕事残っていたのである。

 母親が二人に耳打ちした瞬間、少女二人の顔が再び青くなったので
何やらよからぬ胸騒ぎがしたのだが、案の定だった。

 二人は革張り椅子に腰を下ろす私の前まで来て膝まづくと胸の前で
両手を組む。そして……

 「お父様、お臍の下にお灸のお仕置きをお願いします」
 というのた。

 「??????」
 当初、私は何のことか分らず当惑してしまった。
 そもそもこの時までお灸というものを知らなかったからのだ。

 すると、そばにいたメイドが私に耳打ちをする。

 「お灸というのは……ほら、あれです」

 彼女が指さす先。そこはお臍の下、割れ目の上。小高いマウンドに
なっている恥丘と呼ばれる場所。もっと言えばさっき私が彼女たちの
下草を刈った場所だった。

 そこに小さな火傷のような痕があるにはあるのは先ほどの下草刈り
で承知していたが、それを見てもその時は何のことだか分らなかった。

 そんな私を見ていて、母親が感じ取ったのだろう。
 『そうか、この人は異邦人だから、私たちの歴史は知らぬのか』
 ということで、懇切丁寧に説明してくれたのである。

 「これは子供のお仕置きの証。これを付けているのは子供だけです
からたとえ他の海賊から色々と略奪を受けるようなことがあっても、
この御印が目に入れば誰も襲ったりしません。そこで親は娘にあえて
この火傷をつけておく習慣があるのです」

 「なるほど、では、この星の人たちは全員この火傷を……」

 「いえ、これはあくまで子供の時代だけ。大人になると簡単な手術
で綺麗にしてしまいますから……これはあくまで子供の証ですわ」

 「でも、そんなに便利なおまじないなら、火傷をそのまましておく
人もいるんじゃないですか」

 「いえ、いえ、それはありませんよ。子供時代、散々折檻を受けて
暮らしてきた子供たちが今さら子供に見られたくはありませんから」

 「つまり、男に犯されるより子供に見られる方が嫌だと……」
 私が思わず小声で尋ねると……答えはイエス。

 「それってプライドの問題なんです。海賊というのは仲間の略奪は
しても命は取りませんし子供にも手を出しません。その不文律が固く
守られてきたから、今があるんです」

 「強いんですね」

 「色んな意味で強くないと男社会の海賊世界では生きていけません
から。……この星の女性は大人になるまで有無も言わさぬお仕置きで
鍛えられていますから、他の星の女性よりそのあたり芯の強い女性が
多いんです」

 『なるほど、さもありなん。……同じアンドロメダ域内といっても
色んな星、色んな文化があるというわけか』
 私は思わず心の中でつぶやく。

 さてそれはさておきここでも私はこの星の習慣に従うしかなかった。

 「さあ、もう一度お父様にお頼みしなさい」
 母親に促されて少女たちは約束の言葉を口にする。

 「お父様、お灸のお仕置きをお願いします」
 「お父様、お灸のお仕置きをお願いします」

 さっきの言葉のやり直しなわけだが、今回はそれだけではなかった。

 「どうか成長した私たちの身体も見てください」
 母親の口添えに、しかし、今度は素直に言葉が出てこない。

 「さあ、ちゃんとお願いして……」

 「…………」
 「…………」

 「どうしたの?それとも幼い子のようにおむつの方がいいのかしら?」
 母親に執拗に迫られるといかにもしかたなくといった感じで重い口が
開く。

 「どうか成長した私たちの身体も見てください」
 「どうか成長した私たちの身体も見てください」

 再びの輪唱。私は今でも十分に成長した姿を見ていると感じていた
が、どうやら彼女たちが言う身体とはこれだけではなかったのである。

 二人はさきほど私が陰毛を剃り上げた時と同じテーブルに仰向けに。
 厳重に革のベルトで固定されると、何一つ身動きのできない状態も
先ほどと同じだった。

 そのすべすべの平原に今までの火傷の痕より一回りさらに大きな艾
が乗せられる。もうこれだけで相当な緊張なんだろう。透き通るよう
な肌に赤みが差し、鳥肌が微妙に震えているのがわかる。まだ可愛い
という表現しか浮かばないおっぱいの先端が起立していた。

 そんな彼女たちの小山に乗せられた艾の先端が赤くなる。
 私が母親に持たされた線香で火をつけたのだ。

 ちょっぴり罪悪感があったが、もうここまできたら仕方がなかった。

 「あっ~~~~」
 「いやあ~~~」

 二人はあらん限りの力を振り絞ってもがいてみたが、荒い呼吸を
繰り返す以外どうすることもできなかったのである。

 ただ、これは置き土産と言ってよいのか、二人そろってちょっぴり
お漏らしを……

 「まったくだらしがないわね。さあ、自分の粗相は自分で掃除する
の……」
 母の叱責を聞きながらお漏らしの処理も自分たちでしなければなら
ない。

 いや、それだけではない。
 お漏らしの罰として今度はテーブルにうつぶせになり両足を開ける
だけ開いたところで固定される。
 もちろん後ろからとはいえ、大事な処が大きく開かれてしまうわけ
で、若い娘にとって恥ずかしくないわけがないのだが、それに母親が
何一つ気を止める様子はなかった。

 そして、その可愛らしいお尻の山が四つ、観客席からもよく見える
ように並べられて、一山当たり十二回もの痛みが二人を容赦なく襲う
ことになるのだった。

 「ピシっ」「ひい~」
 「ピシっ」「いやあ~」
 「ピシっ」「だめえ~」
 「ピシっ」「許して~」
 「ピシっ」「もうしませんから~」
 「ピシっ」「ほんとだからあ~」
 「ピシっ」「死んじゃう~」
 「ピシっ」「痛いよう~」
 もうハイティーンになってる女の子がテーブルの上で幼い子のよう
に泣き叫ぶ。

 「ピシっ」「ごめんなさい」
 「ピシっ」「ああ~いやいや~」
 「ピシっ」「壊れちゃう~」

 鞭打ちのためにしつらえられたらしい皮の平ベルトによる折檻は、
女の子相手とは思えないほどの厳しさだったから私などはあまり気分
の良いものではなかったが、後ろで見ていた観客席の妹たちの思いは
大盛り上がり。まるでピクニックにでも来ているような楽し気な笑い
声が聞こえてくる。

 『お前たち、お姉ちゃんたちが心配じゃないのか!』
 と、思わず言い返したくもなったが、そこは大人の理性。子供とは
そういうものなのだと納得するしかなかった。

 一通り二人のお尻を温めた母親は肩で一つ二つ息をつくと革紐鞭を
戸棚に収める。
 「いいわ、ではお父様にあなたたちの成長を見ていただきましょう」

 母の言葉は辛い鞭打ちがこれで終わるという意味では二人にとって
嬉しくもあっただろうが、それがまた、別の恐怖の始まりでもあった
わけで、疲労困憊した二人はテーブルからすぐには起き上がれなかっ
た。

 そんな二人に投げかける母親の言葉は皮肉そのものだったのである。
 「さあ、あんよを上げて。……これからあなたたちがどれほど成長
したかを新しいお父様に見ていただきましょう。……ほらほら、早く
して……大丈夫よ今度は痛くも痒くもないから」

 その母の声に二人は動かざるを得ない。
 テーブルの上で仰向けに向き直ると大きくなった足重くなった足を
大儀そうに引き上げ、自らの両手で自らの太ももを支える。ちょうど
赤ちゃんがオムツを替えてもらう時に見せるポーズだ。

 「…………」
 「…………」
 無言の二人。
 もちろん、今、自分たちがしていることがどれほど恥ずかしいかは
百も承知しているが、この家の子供としてこれを拒否することはでき
なかった。

 そして、私もまたそれを拒否することができなかったのである。

 「…………」
 太ももを押し開いてくれたのは母親。そこにはまだ色素沈着のない
美しい桃の種が彼女たちの荒い呼吸と一緒に動いている。

 ことさらそれを眺めていたつもりもないが、母親はそんな私の心を
見透かしていたようだった。

 「綺麗でしょう。私たちの種族は色素沈着が起こる年齢が高いので
他の海賊たちの標的になりやすいんです。だから幼い頃からこうして
お灸をすえているんですわ……」

 母親は二人のお尻のお山につけられたお灸の痕を指さす。
 でも、ことはそれで終わらなかった。

 「……でも、ほら、御覧なさい。こんなに美しい肌をしているのに
こんな処にあちこち赤みが出て……きっと痒くて仕方がないてのね。
……ほら、こうやって、さらに押し開くと……ほら、襞が乱れてる。
これはよく二人で抱き合って、お互いで掻きっこしてるからこういう
ことになるのね。大方、花火大会に行ったというのも……実はこれが
目的ではないかと思ってますの」

 母親の笑いは言葉こそ丁寧だが、内容はえげつないもの。この二人
も若いのだから、そこはある程度仕方がないと考えたいところだが、
この星ではこうしたことも厳しいお仕置きの対象だったのである。

 「いや、二人ももう大人に近いんだし……」
 私は二人にとって助け舟を出すつもりだったが……
 「そうですわ。お父様は正しいことをおっしゃる。……だからこそ、
二人にはここでしっかりとした自覚を植えつけないと……今さら言葉
で言ってもらちがあかないから、厳しいお仕置きが必要ね。ここでも
やはり……お灸がいいんじゃないかしら」

 彼女はあっさり私の言葉を切り返すと、さっそく艾の準備に……

 『まさか』
 とは思ったが、標的はやはり二人の大事なものがしまってある洞の
中だった。

 老婆心ながら……
 「大丈夫なんですか?そんなことして……」

 「もちろん大丈夫よ。これがこのお二人さんにとって初めてという
わけでもないんだから……そうだ、また、お手伝いいただけます?」

 明るい笑顔で頼まれると、これはもう職業意識というべきか、拒否
はできなかなかったのである。

すえる場所はかなり特殊で、クリトリスの脇、会陰、肛門の下など
いずれも微妙なところばかりだが、当然ながら艾の大きさは、お臍の
下にさっきすえたものよりかなり小さかった。

 お線香から火が移ればあっと言う間の出来事だが……
 「あっ……んんん……ぃぃぃぃ」
 重苦しい息から察して二人のショックは小さくなかった気がする。

 「やっぱり、熱いですよね」
 そんな愚問を投げかけると母親が説明してくれた。

 「それはそうだけど、肉体的には大したショックはないの。むしろ、
女の子にとってはこんな処にまですえられたという精神的なショック
の方が大きくて長い間心に残るわ。お仕置きにとって大事なことは、
肉体を虐めることじゃなくて、長い間、戒めとして心の中に残すこと
なんですもの。これでいいのよ。……そうだ、すえる場所はお分かり
になったでしょうから、やっていただけます?」

 「私が?」

 「ええ、こうした事は男性の方が適任なんです。心に残りますから」
 母親はあっさり言うが……

 「でも、ショックが強すぎて……その……かえってまずくはありま
せんか?」
 疑問を投げかけると……

 「男性ってみなさんフェミニストなのね」
 母親は屈託なく笑い……
 「大丈夫ですよ。男性が心配なさるほど女性の体は軟(やわ)じゃ
ありませんから。特に、バイキングの血を引く私たちは伝統的に心も
強いんです。……でないと、海賊は生きていけませんから……」
 母親は再び笑った。

 複雑な心境だったが……
 「では、私が火をつけてもいいんですね」

 「もちろんですわ、ついでに艾も置いていただけると、この子たち
の記憶により鮮明に残りますから助かりますの……女の子は肌に触れ
られた記憶にとても敏感ですから、有意義なお仕置きとなりますわ」

 「あ~~やめて」
 「お願いやめてえ~~」

 お仕置き中は言葉を発してはいけないという約束を破って声がする。
彼女たちにとってはそれほどショックな出来事なのだろうが、母親は
満足した笑顔のまま。

 罪悪感は残るものの、私もやらざるを得なかった。

 「いやあ……だめえ~」
 「もうしないでえ~~」

 二人の少女は母親がまったく同じ事をした時にはあげなかった悲鳴
をあげる。
 何だか残酷で可哀そうにも思えるのだが、母親の思いは違っていた。

 「これで二人も大人になれますわ。今はショックが大きいかもしれ
ませんけど、これは私たちの通過儀礼のようなもの。今はどんなにか
ショックでも、いずれそれが生きる自信に繋がります。……男性には
お分かりいただけないと思いますけど、男の匂いを身につけることは
女にとっては世の中を生きるお守りなんです」

 「お守り?」

 「そうだ、もうついでですからこの二人に床入れをさせましょう」

 「床入れ?」

 「ほら、ここへ就職する時、子育て庁のお役人から指示ががあった
んじゃありません?夜は必ず子供二人を抱いて練るようにって……」

 「ええ、まあ……」

 「あれ、たいていは幼い子から始めるんですが、今日はもうついで
ですから、この子たちから抱いてください」

 「えっ!、この子たち?……いや、僕はあれは幼い子だけかって、
思ってましたけど……」

 「あら、うちのしきたりをご存じありません事?うちは赤ちゃんも
子供なら十九才と十一カ月の娘だってやっぱり子供なんですよ」

 「ええ、それはまあ、聞いてましたけど……」

 「うちでは十九の娘にだってお仕置きでおむつを穿かせますから、
二十歳を過ぎるまで扱いは何も変わらないんです。むしろこの子たち
は子供生活が長いのでしっかりとしたサービスができると思いますわ」

 「サービス?」

 「大人を喜ばせるサービスの事。女性が大人になる上で大切な技術
でもありますのよ。もちろん。娘相手に姦淫行為はできませんけど、
そのあたりはあなたの理性を信じていますから……」

 意味深な母親の言葉、実際、その夜は私が想像していた通りになる。
 二人が全裸で私の寝床に入り、ありとあらゆるサービスをしてくれ
るから、私は理性をとりとめるだけで精いっぱいだった。

 あとで、母親になんでこんなことをと尋ねると……
 「昔、仲間の海賊が攻めてきた時、大人になった女たちが身を守る
手段はこれしかなかったから、大人になる時は身につけておかなけれ
ばならない大切な技術なんです」
 いうのが答えだった。

 実際、この星で父親を職業としていた頃は年齢に関わらず子ども
たちから体中をすりすりされ、いたるところ舐められたが、慣れて
しまうと、それもまた楽しい思い出となったのである。

                     <第一話/終了>

Appendix

このブログについて

tutomukurakawa

Author:tutomukurakawa
子供時代の『お仕置き』をめぐる
エッセーや小説、もろもろの雑文
を置いておくために創りました。
他に適当な分野がないので、
「R18」に置いてはいますが、
扇情的な表現は苦手なので、
そのむきで期待される方には
がっかりなブログだと思います。

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