2ntブログ

Entries

真紅の薔薇の蒼いトゲ <2>

         真紅の薔薇の蒼いトゲ<2>

********** オムツの洗濯 *********

 自己紹介では新入生全員が舞台でお漏らしをしました。
 でも、これはやむを得ないことであり、学校としても予定通り
なのです。

 だって穿いたオムツに粗相するまでずっと先輩達の質問攻めに
会うわけですから、最初からどんなに頑張ってみても無駄なわけ
です。

 要は、『上級生には絶対服従しなければなりませんよ』という
寮の規則を悟らせるのがこの会の目的だったんですから。
 実際、新入生の中にはその趣旨を知っている子もいました。

 ならば、そんな子は敵の計略の裏をかいてさっさとお漏らしを
してしまいそうなものですが、そうはいきませんでした。

 これまで散々美しいものと醜いものとを使い分けて育てられて
きた私たちにしてみたら、その垣根をいきなり取っ払えと言われ
てもそれは簡単なことじゃなかったんです。

 誰だって無駄と分かっていても、結局は限界まで我慢すること
になります。
 中には、『ピアノを習っていました』なんて余計な事を言った
ばっかりに演奏途中で力尽きた子もいましたが、大半は、椅子に
座って泣くことになるのでした。

 女の子の世界って、見られてる表の世界へのこだわりは相当な
ものですが、ひとたび楽屋に回ってみると、こんなものなんです。
 ハレンチなことも平気でしますし汚いことにも驚くほど無頓着。
ねたみ、嫉妬、権力欲だって男性には負けませんから、女の花園
を生き抜くには大変な努力が必要なんです。

 実は、こうした女の悪癖を最も強く受けるのが1年生でした。

 ニーナ女学院の1年生(新入生)が奴隷だという事実は、生徒
先生を問わずここにいるすべての人が知っていることなのですが、
残念ながらSNSなどなかった時代、その情報は学園の外にまで
あまり広がってはいませんでした。

 多くの子が厳かな入学式のあと寮に帰ってこの自己紹介の席で
その事に気づくことになります。

 昼間出会うニーナ女学院の生徒たちは、とってもおしとやか。
先生方も声を荒げたりなさいませんから、学園全体がとても静か
なんです。一番大きな声は小鳥のさえずりでしょうか。
 掃除が行き届いていてどこを見ても塵一つ落ちていない校内は
まさに女の園と呼ぶにふさわしい場所だったんです。

 つまり入学希望者はそんな昼間の顔だけみてここに決めるわけ
ですから、誰もが『私の判断に間違いはない』と確信するに違い
ありませんでした。

 ところが、若き淑女(ヤングレディー)たちの夜はまったく逆。
 そこはハレンチと狂乱が支配するソドムとゴモラの世界。
 清楚や品位などといった言葉は、常に制服と一緒にハンガーに
掛けられたままになっていたみたいでした。

 いえ、決して寄宿舎に秩序がないわけではありませんよ。
 寮にも伝統的な揺るぎない秩序は存在します。
 でも、それは民主的でないというだけのことでした。

 昼間の学校が園長先生を頂点にいただいたした縦社会であるに
対し、寄宿舎は『女王陛下』と呼ばれる最上級生の寮長を頂点と
する厳格な身分社会。

 どこが違うかと言うと、昼間は厳しくとも法による支配ですが、
夜は身分がものを言います。
 そこに規則や法が入り込む余地はありませんでした。

 上の身分にある者は下の者に対して合理的な理由なしに何でも
できます。体罰を与えることはもちろん、お気に入りの子を一晩
泊めて愛することも……逆に、気に入らなければどんなな虐めも、
それは望みのままなのです。

 対する一年生(新入生)は、ここでは最下級の身分ですから、
上級生からどんなに理不尽なことをされても、ただただ耐え忍ぶ
しかありません。

 彼女たちが寮内で命令できるのは食堂の調理場で飼われていた
猫のタマくらいでしょうか。とにかく、一年間は忍従の日々です。

 そんな中世的な秩序の中で生まれたのがこの自己紹介の儀式。

 でも、上級生にしてみたら、これはささやかなおもてなし。
 本当のお楽しみは、むしろこれからだったのです。


 自己紹介をして、特技を披露して……オムツの中をずっしりと
重くして……短い時間の会はひとまず終了しましたが、上級生に
とって新入生は一年ぶりのご馳走なわけですから、これで開放と
なるわけがありませんでした。

 饗宴はまだまだ続きます。

 新入生たちの次なる任務は、裏庭に出て自分の汚したオムツを
脱ぐこと。
いえ、オムツだけじゃありません。そこで着ていた服はすべて
脱がなければなりませんでした。つまり全裸になることでした。

 「さあ、どうしたの?さっさとなさい?」
 「ほら、上級生のお言いつけはどんな事でも絶対に守るという
マリア様の前での宣誓を忘れたのかしら?」
 「上級生に従うのはあなたたちの義務なの。さあ、早くして」

 時は夜。冷たい風が通り抜ける裏庭に明かりはなく、不断なら
そこはすでに真っ暗なはずでしたが、親切な上級生たちが今日に
限って四方八方からライトがあたるようにしてくれています。

 もし裸になったら、誰の顔かも、誰のお尻かも、割れ目だって
しっかり見える明るさです。
 要するにスポットライトを浴びて、新入生だけのストリップが
始まるのでした。

 もじもじしていると、役付きの上級生たちが次々に心無い言葉
を投げかけます。

 「さあ、早くなさい。風邪ひくわよ」
 「まさか、その姿でベッドに入るつもりじゃないでしょうね」
 「あ~、まさかその姿で部屋に戻るつもりじゃないでしょうね。
嫌よそんなの。ここは上級生と下級生が同室なんだよ。あんたの
うんちの臭いを嗅ぎながらなんて寝られやしないじゃないの」
 「そうそう、女の子でしょ、自分で汚した物は自分でしっかり
洗ってね」

 規律委員、風紀委員、生活委員……
 おろおろする新入生たちを尻目にきりっとしまった顔のお姉様
たちは、冷たい視線で見下ろします。

 と、ここで一人の新入生が口を開きました。
 「あのう……これは何ですか?……ここにオムツを入れてどう
するんですか?」

 ヒナ子ちゃんでした。
 彼女は目の前に置かれた盥やその中にある洗濯板がわからない
みたいで……周囲の上級生たちも思わず失笑です。

 私もそうでしたが、私たちは自分の下着を洗濯したことが一度
もなかったのです。
 そうした仕事はこれまでお手伝いさんとか女中さんと呼ばれる
人たちの仕事でしたから。
 でも、ここではそれも私たちの仕事に加わります。

 ちなみに、これは読者さんが分からないかも知れないので付け
加えますけど、当時は紙おむつというものがまだありませんから、
赤ちゃん用のオムツは古い浴衣の生地を短冊状に裂いて作るのが
一般的でした。

 これは紙おむつのように使い捨てではありませんから、どこの
家庭でも洗濯して何度でも使い回します。
 当然、その洗濯も当時はお母さんの仕事だったのです。

 「あら、あなた、盥を知らないの?」
 「そうね、今は電気洗濯機があるものね」
 「ここにもそれはあるけど、あいにくそれって共用なのよ」
 「そんなのを洗濯機で洗ったら機械の中にあなたたちのうんち
が残っちゃうでしょう。そんなの誰だって嫌じゃない。だから、
自分で汚したオムツは自分で洗ってちょうだいね」

 「あのにう~これから?……私が?……これ、洗うんですか?」
 ヒナ子ちゃんが怪訝そうに口走ると……

 「あらあらご不満かしら?でも、ここではあいにく女中さんも
お手伝いさんもいないの。オムツだけじゃないわよ。これからは
下着だって自分の分は自分で洗うのがここの習慣なのよ」

 私たちはその家にあって望まれて生まれたわけではありません。
むしろ厄介者です。でも、実家は大半が俗福な環境でしたから、
自分の下着も洗濯は下女まかせ、自分で自分の下着を洗う習慣は
これまでありませんでした。

 ですから、ヒナちゃんだけでなくこれを自分で洗えと上級生に
言われた時は裸になれと言われた時以上にショックだったんです。

 「そんなことできません。こんな、ばっちいもの」
 敬子ちゃんは上級生にもおくせず主張します。

 でも、ここはそれが許される場所ではありませんでした。

 「呆れた……ばっちいですって……あなた、これはあなたの身
から出たものなのよ。自分の責任で処理するのが、当たり前じゃ
なくて?」
 「そうそう、あなたたち、もう小学生じゃないのよ。自分の事
は自分で処理しなくちゃ」

 私は思わず……
 『何言ってるの!この原因作ったの先輩の方じゃないですか!』
 って口走りそうになりましたが、寸でのところで飲み込みます。

 規律委員や風紀委員、生活委員といった強面で眼光鋭い上級生
たちの鋭い視線に気後れしたのかもしれません。

 それに、気がつけば……
 「!!!!」

 見学者は役付きの上級生だけではありませんでした。
 今は寮の窓という窓が開いていてそこに多くの人影が見えます。
恐らくほとんどの上級生が私たちの裸を楽しみにしていたに違い
ありませんでした。

 それが分かると、なおのこと口を閉ざすより仕方がありません。

 ま、同性のそれもまだまだ未発達の裸を見ても上級生の感情が
高ぶることはないでしょうが、他人が困っている様子や恥ずかし
さに震える様子は純粋に見世物として楽しめます。
 ここではこの手の催物に参加しない人の方がむしろ変人でした。

 それだけここでは生徒の連帯意識が強いということでしょうか。

 そういえば、一般的に新入生の寝起きする場所は同学年だけの
大部屋と相場が決まっています。ところが、ここでは中三高二の
先輩たちと一緒の三人部屋で暮らすことになります。

 新入生は同室になる二人先輩にいつも監視されながら小間使い
などもしながら学校の勉強や寮のしきたりなどを教わります。

 この時も大義名分は同室の先輩に盥を使ってのお洗濯を習うと
いうもの。決して、いじめではありませんでした。

 私を指導してくださった一人目は中三の香山理沙先輩。
 一見すると冷たく頭が良さそうで取っ付きにくい感じにも見え
ますが、長い髪を自然にかき上げる姿はチャーミングで、中学生
とは思えないほど大人びていて憧れてしまいます。

 その香山先輩に、私は入寮前のガイダンスで教わったとおり、
まず膝まづいて、まだ貧弱な胸の前で両手を組むと……
 「よろしくお願いします」
 と、ご挨拶。

 この仰々しいご挨拶をここでは何万回としなければなりません
でした。

 素っ裸でこのご挨拶はちょっと世間じゃ考えられないところで
しょうけど、ここではこれも常識。
 女の子同士、何のわだかまりも持っていないことを示すには、
これが最も簡単な方法なのだそうです。 

 私の挨拶に香山先輩はとても満足そうな笑顔で、下着を一組、
私の目の前に差し出します。

 すると……
 「あなた、素直ね。いい心がけだわ。さあ、これを着なさい」

 「いいんですか?」

 「いいの、いくら女の子同士でもそれでは私も恥ずかしいから
……いいこと、女の子は、目上の人を信じて素直にしてする子が
結局は一番得するようにできてるの。わすれないでね」

 香山先輩はそう言ってスリップを一枚差し出してくれました。
 先輩の意外な優しさに感激してしまいましたが、ただ、誰もが
先輩から下着をもらえるわけではありません。
 なかには、泣きじゃくってその場を動かなくなる子や衝動的に
その場から逃げ出してしまう子も……
 そんな子は依然として裸のままです。

 きっと、心がパニックになってしまったんでしょうね。
 いきなりこれですから、無理もありませんけど……

 「……ほらほら、泣いてても何も始まらないの。ここでは誰も
助けてはくれないんだから、自分で生きていくしかないのよ……
ほら、立って、立って……」
 彼女を指導する先輩が少しだけ落ち着きを取り戻した新入生を
立たせると……今度は……

 「両手を膝に着けて……そうそう、それでいいわよ……じっと
してなさい……(ピシッ)」
 その声が聞こえて振り返ると、上級生の革紐鞭が可愛いお尻に
炸裂したところでした。

 こんなもの、ここでは軽いご挨拶程度なんですけど……
 これを見てさらに驚いたのでしょうね、今度は別の子が、我を
忘れて逃げ出します。

 もちろん今日ここへ来たばかりの新入生が、ナチの強制収容所
みたいなこの場所から逃げ出せる訳がありません。

 いくら暗闇に向かって一直線に走ってみても行き着く先は寮を
取り囲むフェンスまで。
 頑張ってそこを抜けられたとしても学校を取り囲むフェンスは
5mもありますし、さらにその先も、有刺鉄線を載せたフェンス
が敷地全体を取り囲んでいます。

 ここは何重ものフェンスで取り囲まれた、さながら捕虜収容所
のようなありさまだったのです。

 一分後、逃げ出した新入生は規律委員の二人に両脇を抱えられ、
両足をバタバタさせながら元の場所に戻ってきました。
 本当はもっと駆けっこがしたかったんでしょうが、両足が地面
に着かないのではどうにもなりません。

 他の生徒達からもゲシュタポと呼ばれている二人の上級生から
解放された新入生は最後の抵抗をみせてその場にうずくまります
が……

 「ほらほら、手を焼かせないの。あなたが逃げられるわけない
んだから……ここはそんじょそこらの刑務所より警備が厳重なの。
へたに逃げ出すとドーベルマンに噛み殺されるわよ………ほら、
いつまでも泣いてないで立ってちょうだい……」

 上級生の忠告にも激しく頭を振るばかりでしたが……

 そのうち……
 「いいから、立つの!!!言うことをききなさい!!!」

 先生に強い言葉でどやされると、少しびびったんでしょうか、
思わず泣き止みます。
 それは彼女が本心から泣いていないことの証ですから、周囲の
視線はさらに厳しくなります。

 嘘泣きの涙は男性には通用しても、女性には通用しないもの。
ここで彼女の負けは確定したのでした。

 「あなたがどんなに頑張ったって、一度犯した罪は罰を受けて
精算するまで消えないし、ごねればごねるほど罰は重くなるわ。
しかも罰がどんなに重くなっても、うちには割引って制度はない
から、それも覚えときなさいね」

 「はい、ごめんなさい」
 蚊の泣くような声が夜の静寂を這って来て私の耳にも届きます。

「世間では言いつけを守れない子はお仕置きって決まってるの。
あなたのおうちはそうじゃなかったのかしら………さあ、後ろを
振り返らない。……両手を膝に着けて……お尻を上に上げる……
……なんだ、やればできるんじゃないの」

 上級生はせわしなくお仕置きの姿勢を取らせると、60センチ
くらいのよくしなる定規で脱走兵のお尻を……

(ピシッ)(ピシッ)(ピシッ)(ピシッ)(ピシッ)(ピシッ)」

 六回くらいでしょうか甲高い音が夜空に響いては暗闇に消えて
いきます。

 この手の鞭は私も受けましたが、どうにもならないというほど
痛いものではありません。
 ただ、気が動転してる子を反省させるにはこれで十分でした。

 先輩たちは私たちを言葉で諭すのではなく、どうしたら許して
もらえるかを下級生に考えさせます。
 つまり、自主的に謝らせ、自主的に罰を受けたいと申し出る様
に仕向けるのです。

 もちろん中には一筋縄ではいかない子だっていますが、そんな
子の為には一筋縄ではいかないお仕置きが容易されていて……。
 どちらが先に参るか、火を見るより明らかでした。

 この学校は厳然たる身分社会ですから、学年が一つでも違えば
扱いがまったく違います。おまけに先輩たちが新入生や下級生に
罰を与えたいと思えばそれも自由。誰の許可もいりませんでした。

 しかも反抗的な子と言っても、ろくな躾もなされていない庶民
のお転婆娘ではありません。いずれ劣らぬ名家の出身なわけです
から、家での躾だってそれなりにできています。
 できる我慢はしているのです。

 でも、それでも我慢ができないほど、彼女たちは追い詰められ
ていたのでした。

 女の子はいつまでも裸の山猿ではいられません。
 我慢はしますが、それもある一線を越えると……それから先は
理性の歯止めが利きませんでした。

 そんな時、子供たちに冷静さを保たせるのが、この鞭だったの
です。

 あの子たちだって冷静になって周りを見渡していれば、そこに
お利口さんが何人もいますから、こうした時は本心とは別の事を
しなければならないと悟ります。
 この鞭はそのことに気づかせる鞭。忖度を覚えさせる鞭でした。

 寮では目上の人に対する礼儀や作法、文字や言葉づかいなどを
こうして実地に教わることになります。

 『痛い思いをしなければ子供はものを覚えない』
 とは、今でこそ虐待ですが、当時にあってはこちらの方が常識
だったのです。

 私は、この時は幸い鞭をもらいませんでしたが、それは、私が
思慮深かったからでも、悲しみを感じなかったからでも、その場
から逃げ出す勇気がなかったからでもありませんでした。

 あまりの環境の変化に気が動転してしまい、どうしてよいのか
頭の整理が追いつかず、頭の中が真っ白になっていただけのこと
だったのです。

 それが証拠に、本来なら私の仕事だったはずのオムツの洗濯を
先輩お二人が私に代わって今まさに洗ってくださっているのに、
私はただぼんやりと眺めていたのです。

 夢遊病者のようになっていた私の手を取って教えてくださった
のも、中三の香山理沙先輩とそのさらに上、高二の霧島遥先輩で
した。
 この二人が私と同室の先輩ということになります。

 お二人は私の汚したオムツを率先して洗ってくださいました。
 何度も何度も盥の水を取替え、洗濯板を使って洗います。
 何だか本当のお母さんみたいです。

 私は途中で自分の立場に気づいて恥ずかしい気持と申し訳ない
気持が入り混じり、何度も「ごめんなさい」を連発しましたが、
とうとう最後まで汚れたオムツを実際に洗ってくださったのは、
同室の先輩、香澄先輩と霧島先輩だったのです。

 「ごめんなさい、汚いことさせちゃって……」

 「そんなに恐縮することはないわ。慣れれば何でもないことよ。
ここでは他人のウンチを握らずに卒業する子なんて誰もいないの。
つまり、あなただって、いずれは、コレ、やることになるのよ」

 「えっ?」

 「ここでは育児の時間というのがあって、オムツ替えも課題の
一つになってるんだけど、ここには本物の赤ちゃんがいないから
同級生がそのお相手になるの」

 「……ペアってこと?……」
 この時は具体的なことが理解できずにボ~っとしていましたが。

 「そう、ペア。どういうことか、分かるでしょう?……えっ?
分からないの」
 そう言って香澄先輩が私の首筋で囁きます。

 「…………」
 正直、その場の様子を想像して、ぞっとしました。
 今の今ですもの、想像しやすかったのです。

 「あなただって巨大な赤ちゃんがやってしまったウンチべちょ
べちょりのオムツを取り替えさせられるし、あなた自身も、その
赤ちゃん役をやらされることになるわ」

 「……(そんな)」
 私は話を聞いただけで悲しくなります。

 「ちなみにあなた、お友だちのオムツを取り替えるのと自分が
赤ちゃんになるの、どっちがやってみたい?」

 「………………どっちも嫌です」
 私は思わず語気を強めて答えましたが……

 「残念ね、ここでは学校の授業だけでなく普段のお仕置きでも
これがあるの。悪さが過ぎる子は、お友だちを浣腸してあげて、
そのオムツを替えてあげるとか、逆に自分がお浣腸してもらって、
オムツを取り替えてもらうとか……または、その両方。とにかく
色んなパターンがあるわ」

 「私の父は……」
 そう言ったきり、私は次ぎの言葉が出てきませんでした。
 『私の父は』の次はいったい何を言おうとしたのでしょうか、
それさえ忘れてしまっていたのです。

 そんな私の心を見透かすように霧島先輩が……
 「ここは普通の寄宿舎学校とは違うの。入って来る子はみんな
名家のお嬢様ばかりだけど、みんな訳ありの子ばかりでしょう。
親の方も娘のことにあまり関心のない人が多くて、みんな規則で
お尻のお山に大きなお灸の痕をつけて卒業していく事になるんだ
けど、これまでそれを咎めた親御さんは一人もいなかったそうよ」

 「オキュウ?」

 「あら?そう、あなた、まだお灸を据えられた経験がないのね」

 「へえ~ほんと?それは幸せね。だったらこれは言わない方が
よかったかもしれませんね」

 「そうかもしれないわね……とにかく、いくら言っても悪さが
治らない子にはとってもよく効くお薬があるってことだけ覚えて
おけばいいわ」

 確かにそうです。お灸はそれほど強い効果がありましたから。
 でも、やられた方はそれ以上に大変だったのです。

****************************

真紅の薔薇の蒼いトゲ <1>

      真紅の薔薇の蒼いトゲ

 < 寄宿舎学校 >

 少女の人生は親しだい。
 もちろん、幸せな親子関係だって世の中たくさんあるでしょう
けど……私のように両親が離婚して、ある日、後妻がやってきて、
家の中に母さんの思い出がいつの間にかなくなってしまうと……
寄宿舎学校というのも一つの選択肢かなと……

 そこで学校見学してみた。

 目指した学園は大きな森の中にある別世界。

 赤いレンガの校舎は時計台になっていて窓辺にたくさんの花が
飾られてる。美術室にはプロが描いたような油彩がいくつも掛け
られ音楽室からは天使の歌声が美しいハーモニーとなって流れて
くる。
 授業中の教室に響いているのは、授業を進める先生の声と生徒
たちが本の頁を捲る音だけ。
 中庭に出てあらためて校舎を見上げると、そこには中世のお城
がそそり立ち、ここが私の学び舎なんだと実感します。

 『天使の楽園』

 たまたま見かけた旅人にはそれはもうこの上なく美しかった
から、私、ここに決めたんだけど………

 でも、ここは楽園ではなかったの。
 ここは世間の人に注目される事は決してない学校。
 いえ、決して注目されてはいけない学校だったの。

 生徒はみんなそこのお家の厄介者。
 「目立たないで大人になってね」
 「迷惑をお家に持ち込まないでね」
 って言われて家から追い出された子どもたち。

 目立っちゃいけない子は勉強を沢山しちゃいけないの。
 偉い人になっちゃうと新聞や雑誌に名前が載るでしょう。
 音楽も、絵画も、有名にならない程度に頑張ってちょうだい。
 スポーツは一流にはならなくても対外試合があるから禁止。
 お外の子供たちと接触することが駄目だったから。

 だから、楽しみは自分たちで考えないといけない。
 さて、何がいいかしら……

 で、思いついたのが『お仕置き』

 そうだわ。規則をうんと厳しくして、椅子取りゲームの椅子が
取れなかった子を辱めてたくさん罰を与えるの。
 どうせ、まわりは女の子たちだけなんだもの。
 う~~~んと元気に……
 う~~~んとハレンチに……
 ……ね、いいアイディアでしょう。

 誰かが考えたってわけじゃないけど自然にこうなっちゃったの。
だって、こんな山奥で6年間も過ごすなんて思春期の少女達には
あまりに退屈なんですもの。

 このお話は、そんな私と同様に、外観の美しい姿形に惑わされ、
悪魔の城に迷い込んでしまった一人の少女の物語です。




 ****** ハレンチな夜会(自己紹介) ******

 「いやあ~~~もう、やめてえ~~~だめ~~~できちゃう」

 私は椅子に座らされるなり声を限りに叫びました。
 もう、恥も外聞もありません。
 客席で笑いこけてる上級生たちの視線だけでも痛くのにこんな
舞台の上でお漏らしだなんて、そりゃあ絶対にイヤでしたから。

 「ほらほら、何言ってるの。このくらいの事で騒がないのよ」
 後ろに立つ同室の先輩お姉様がさっそくたしなめます。

 「あなた、このくらいのことでお漏らしたら、卒業式の日まで
ずっと西村ババ子って呼ばれ続けるわよ。さあ、しっかりなさい。
無理だと思っても頑張っていればなんとかなるものよ」

 「そうそう、これは寮のしきたりなの。みんなやってきたこと
なんだからあなただけ出来ないってことないわ。我慢して……」

 「そうよ、我慢、我慢、女の子は何につけても我慢が大事なの。
……ほら、汗ふいてあげるから」

 私が座る椅子の後ろに立っている上級生2人は、新入生である
私のお世話係。
 だから、色々励ましてくれたんだけど……

 そもそも、先ほど控え室で起こった出来事がまだ私の心の中を
黒い雲で覆っています。

 いきなりお姉様たちからテーブルに仰向けに倒されて、タオル
を詰められ猿轡。
 無理やり身体を押さえつけられたあげく、スカートは捲られ、
ショーツは下ろされ、両足を高く上げさせられて……

 「静かにしなさい」
 だって……できるわけないでしょう!!!これじゃあ、まるで
ギャング団よ!!!強姦と同じじゃない!!!

 「ううううううう」

 身動きが完全にできなくなるとグリセリンというお薬をお尻の
穴から100㏄も入れられて……

 もうそれだけだって死ぬほど恥ずかしかったけど……
 オムツをはめられ、オールインワンの赤ちゃんの続き服を着せ
られて……

 気がついたら上級生全員が見学する舞台の上にいたの。

 スポットライトを浴びて、こちらは明るいけど、客席は真っ暗。
 暗闇に光るコウモリみたいな観客の目に怯えてたわ。
 『ここはどこ?』『私は誰?』って感じよ。

 並んだ椅子の一つに座らされて……

 「これから新入生に自己紹介してもらいます。新入生の人達は
どんな質問にも笑顔が大事よ。素直に答えてね。20分もすれば
終わるから、トイレはその後ね」
 って……何よ、それ!!!これ、どういうことよ!!!

 「ほら、新入生達、表情が硬いわよ。リラックス、リラックス」

 お姉様は簡単に言いますけど、私、20分はおろか、10分、
いえ5分だってもうもたないわ。こんなことされてもう絶対無理、
無理に決まってるでしょう。えっ、どうしたらいいのよ!!!
 だいいちこの服は続き服、自分じゃ絶対脱げないのよ!!!

 新入生を全員こんなハレンチな格好で舞台に並べて、どういう
つもりなの!!!これが新入生への歓迎会なの!!!

 見渡せば舞台には私と同じ格好の子ばかり。どうやら、みんな
私と同じ新入生みたいでした。

 とにかく、私、必死に我慢を続けていましたが、寄せては返す
波のような便意は次第に大きくなり、私の番が回ってきた時は、
座っていることさえやっとの状態。すでに気を失いそうになって
いました。

 朦朧とした意識の中で……
 「あら、西村さん、お顔が歪んでるわよ。笑って、笑って……
私たちニーナ女学院の生徒はどんな時でも笑顔で接しないといけ
ないって、ガイダンスで先生にご注意を受けだしょう。私たちも
それは何回も説明したわよね」

 いったい誰の言葉でしょうか、会場のどこからか声がします。

 『何言ってるのさあ!!!だって、だって、こんな時に笑える
わけがないでしょう!!!』
 私は心の中で怒鳴って泣いて正気を取り戻します。

 こんな絶体絶命のピンチでは、最初は自分の事で精一杯。
 誰が何を言っても分からなかったのですが、そのうち、ふいに
観客席の声が拾えたりします。

 もう、全身鳥肌。寒くもないのに全身ガタガタ震えててお腹が
これでもかあってくらい締め上げられてるし、ビュービューって
鳴りっぱなしのお腹の音は外に漏れてもおかしくないほどなの。

 『私、いつ爆発してもおかしくないんだから!!!』
 私、声を出して泣き叫びたかったけど、やがて、その気力すら
なくなっていました。

 「西村さん。笑顔で接するのに、だってもあさってもないの。
私たちはどんな時でも笑顔を絶やしちゃいけないのよ。それは、
お浣腸の後でも同じ。女の子はどんなに苦しくてもまるで何事も
なかったように振るわなきゃ。これはね、その最初の訓練よ」

 「心配しないで、たとえしくじっても特性のオムツがしっかり
受け止めてくれるからお外に漏れたりしないわ」

 「匂いはするけどね」
 会場にいた誰かのヤジにみんながドッと笑います。

 「西村さん、みんな育児や介護実習でこんなの慣れっこだから、
安心してお漏らししていいわよ」

 『えっ!?仁科先生?』
 お姉様たちの声に混じって観客席から一段低い大人の声が聞こ
えます。

 ってことは、これってお姉様達が勝手にやってるんじゃなくて
……これも学校行事の一つなの?

 「あら、ホント。西村さんお顔が歪んでるわね。笑顔、笑顔、
こんな時でも女の子は笑顔でなくちゃ」

 それは先生が私を励ましてくれているように聞こえましたから、
思わず……
 「はい、先生」

 なんて言ってしまったけど、今は事情が違うでしょう!!
 こんな時まで、そんなことできるわけないじゃない!!!

 「……あっ、それから、これは寮の歓迎会だけど、このあと、
学校の歓迎会もあるから、そちらも楽しみしていてね。そこでは
これまであなたが経験したことのないようなお仕置きをたくさん
体験できるから、これから先ここで暮らしていく上でもとっても
ためになるわよ」

 えっ!このほかにもこんな会があるの?
 お仕置きを体験するって???……まさか、冗談でしょう!!
 何で悪い事もしないのにお仕置きを体験しなきゃいけないのよ。

 もういやよ。これ何なの。こんな馬鹿げたことする学校なんて
世の中にあるわけがないわ。

 『これ夢よね。夢なんでしょう。早く醒めてよ』
 私は真剣に願ったけど……

 でも、これは悪夢じゃなかった。
 正真正銘、現実に起こっている出来事なの。

 すると……
 そんな私と同じ宿命を背負った子が、突然椅子から立ち上がり
ます。

 「あっ……合沢恭子です。私を先にやらせてください」

 私、もう、それだけで、その子を尊敬してしまうけど……。
 思えば、こうしておとなしく順番を待ってるより、思い切って
先にやっちゃった方が楽に決まっています。

 私の頭は混乱していて、そんな簡単なアイディアさえその時は
浮かんできませんでした。

 「小学校は東京の私立聖園小学校。特技は、四歳からピアノを
習っていますけど……」

 「あら、そうなの……きっとお上手なんでしょうね。そうだ、
ここにも舞台のそでにピアノがあるから、一曲弾いて頂ける?」

 「えっ……いえ……それは……ちょっと……」
 恭子ちゃんは私なんかがうらやむくらいしっかり受け答えして
ましたけど、ピアノを弾いて欲しいって先生から注文されると、
そこは躊躇します。

 そりゃそうです。簡単な受け答えならまだしも、ピアノを弾く
なんて神経を使う仕事、この状態では無理に決まってますから。
 上級生たちはそれがわかっていてあえてはやし立てるのでした。

 「どうしたの?椅子から立てないの?ピアノの処まで負ぶって
あげましょうか?」
 その声に呼応するように場内また大爆笑です。

 結局、恭子ちゃんはお守り役のお姉様に背負われて舞台の袖へ
移動したのですが、その袖から突然、お姉様の声が上がりました。

 「えっ!?もう漏らしたの?……呆れた、そんな根性なしじゃ、
この先、ここで暮らしてなんていけないわよ」
 わざと、みんなに知らせるような大きな声です。

 すると、客席の視線は一気にその子の方へ集まり、舞台のあち
こちから、それまで他の新入生に付き添ってお世話を焼いていた
お姉様たちまでもがその子のもとへ馳せ参じます。

 一大事というわけでお手伝いに行くのですが、どの顔にも深刻
な様子はなくて、晴れやかな顔ばかり。お姉様たちの声は弾んで
いました。

 「まったく、最近の新入生は甘ったれてるわ。恥ずかしいって
感情がまだ育ってないんじゃないの、こんな処でお漏らしして。
今の親は子供のお仕置きに浣腸なんてしないのかしら」

 「しないわよ、最近の親は私たちの時代と違って過保護だもの」

 「ここでは、お浣腸なんてほんの挨拶代わりだっていうのに、
うちの子なんてすぐにピーピー泣いて、この先が思いやられるわ」

 「そうよね、ここではスパンキング一つとっても平手だけじゃ
なく、革鞭やケインもあるし、蝋燭やお灸だってあるんだから。
ホント、私もこんなことで大丈夫なのかって思っちゃうわ」

 「あら、あら、指導する方が今からぼやいてどうするの。……
大丈夫。すぐに慣れるわよ。慣れることに関しては、男の子より
女の子の方が上なの。みんな夏休みまでには慣れるわ。それに、
鍛え甲斐のあるくらいの方が、たっぷりと楽しめてよ」
 お姉様方の声に混ざって仁科先生の声も遠ざかっていきます。

 私、仁科先生の声を追ってその子の様子を見てみたかったけど、
今は私もそれどころじゃないし何より怖くて見られませんでした。

 「あらあら、やっちゃったみたいね」
 「確かにそうね。もう、ここまでぷ~~んと臭うわ」

 「あなた、お薬入れてからまだ10分しかたってないじゃない。
図体ばかり大きいくせに、ちょっとばかり節操がなさすぎるわよ。
これからは我慢って言葉をもっと具体的に教えてあげなきゃダメ
みたいね」

 「そんなに責めたら可哀想だわ。……仕方ないでしょう、まだ
慣れてないんだから。それより、この子に効くお薬が、他に何か
あったんじゃないかしら?」

 仁科先生が謎をかけると、客席のあちこちから……
 「お灸です」
 「熱いお灸です」
 「会陰へのお灸です」
 そして、それと同時に笑い声もまた巻き起こりました。

 『人のうんちなんてとっても汚いのに、どうしてみんなこんな
に笑えるのかしら?』
 素朴な疑問がわきます。

 いえ、その時はそれは不思議だったんですけどね……
 半年も立たないうちに私も同じ色に染まってしまいます。

 気がつけば、私だってみんなと一緒に笑えるようになっていま
した。

 誰だって自分の事は棚に上げて、やはり他人の不幸は楽しいん
です。

 お漏らししてしまった恭子ちゃんは、この後、お灸です。
 それも、お姉様方から身体を押さえつけられて……
 1ミリだって身体が動かないように縛り付けられて……
 女の子が一番熱がる会陰や膣前庭に……

 「いやあ~~~やめてえ~~~ごめんなさい、もうしないで!」

 今までとは明らかにトーンが違う悲鳴や叫びと共にお父様にも
見せたことのない場所を焼かれる断末魔のドタバタが会場に響き
渡ります。

 いえ、現場を見たわけじゃありません。
 でもわかるんです。私もかつてお母様からやられたことあり
ますから、その強烈な熱さが脳裏を離れていませんでした。

 身体を寸分の隙なく押さえられて、
 女の子の一番大事な処を全て晒して、
 猿轡までされます。
 何もされなくてももの凄く苦しい姿勢なんです。

 そして、火が回ると熱いのはそこだけじゃなくて、頭の天辺が
ジンジン。目がくらみ、息も絶え絶え……

 必死になって暴れてみますが、どうにもならないのです。

 『お願い、気絶させて~~』
 って叫びたくなるほどでした。

 お仕置きが終わって放心状態でいる私に、母は……
 「安心なさい。こんな場所に火傷の痕ができても誰も覗かない
から…………あら、ご不満なら、今回の件、あらためてお父様に
ご相談してみましょうか?」

 私はお父様の処へ連れて行かれるのだけは絶対に嫌でしたから、
首を激しく横に振ります。

 すると、それを見て勝ち誇ったように笑う母。
 私が、あえて全寮制の学校を選んだのはこの瞬間だったのです。

*************************

学校でのお漏らし

 < 学校でのお漏らし >

 小学生というのは身体がまだ完全に出来上がっていないみたい
だからやむを得ないのかもしれないけどうちでも二件だけあった。
 他にあったのかもしれないけど僕が承知しているのはこの二件
だけだ。

 一つは5年生のK君という男の子でうんちまでもらしちゃった
みたいだけど、直接その現場を見ていないのでコメントできない。
 あくまで保健室でその現場を見たという友だちからの情報。

 もう一件は3年生の女の子で、こちらは僕がからんでる。
 その子は、当時、僕の後ろに座ってた子。
 事の始まりは足元に一筋の水が流れてきたことに気づいたこと。
 少ない量じゃなかったな。結構な量だったのを覚えてる。

 当初はまさかそんなことが起きてるなんて思いもよらなかった
から何の水だが分からずただ不思議そうに眺めていただけだった
けど、そのうち後ろの子のすすり泣く声が聞こえて、振り返って
みたらその子が机に顔を伏せて泣いている。

 そこで担任の先生も事態の急変に気づいたんだろう。その子に
は何も言わず、ただ優しく抱き上げて保健室に連れて行った。

 しばらくして先生だけが教室に帰ってきて、その子の机の下を
自ら掃除して授業再開。
 もちろん、みんなは何があったか分かってたとは思うけど……
その事をネタにおしゃべりする子はいなかった。
 そして帰って来た先生からも事情説明はまったくなかったんだ。

 僕の学校、わりに品がよくて、そんなことがあっても今でいう
いじめとか悪い噂が消えないといったことがなかったの。
 その点では彼女も救われたんじゃないかと思う。

 事件後、この事を噂している声を一度も聞いたことがないのは、
誇っていいことだと思うよ。僕はてっきりクラスじゅうの話題に
なってその子が傷つくんじゃないかって心配してたけど違ってた。

 誰もがあんまり何も言わないから、これはひょっとして本当に
知らないのかと思い、少し離れた席に座ってた友だちに「ねえ、
お漏らししたこと知ってる?」って言ったら「そんなこと言うな
よ、可哀想だろう」って即答されてしまった。

 日頃から親や教師に『自分がされたくないことは他人にしては
いけません』って言われてたから、みんなそれを守ってたんだ。
 こんなことが世間的には品がいいってことなのかもしれない。

 ついでに言うと、僕も一度だけふらふらになって下校した時が
あって、友だちと校門出る時からあやしかったんだけど、こんな
こと学校で話題になったら大変だと思って友だちの前では必死に
平静を装って我慢してた。

 やっと独りになれて、本当なら自宅へ猛ダッシュのはずだが、
それもできなくらい窮地だったんだ。間に合ったのか、間に合わ
なかったのか……家の敷居を越えた瞬間、お漏らしをしちゃった。

 どのケースもあくまで体調不良が原因で『蒼白き恋慕』に出て
くるような、お仕置きでそうなったというわけではないんだけど
そこは好き者の世界、妄想はこんな処から広がっていくわけです
よ。

 あっ、それでまた一つ思い出した。
 今回は尾篭な話ばかりで申し訳ないけど、うちの低学年当時の
担任、昼休み最初の授業にたびたび遅れてやってくる子供たちを
便所(トイレって感じの場所じゃない)まで引っ張って行くと、
そこの柱に縛り付けるなんてパフォーマンスを演じた事があった
わ。

 短い時間だったけど、当時の母校はまだ汲み取り式の時代。
 普段でもそこでは鼻をつまみながら用を足してたから、きっと
臭かったと思うよ。(笑)

 えっ、マジかって……もちろんマジですよ。そのくらいのこと
教師は平気でしてたもん。お仕置きというか、おふざけかな?
 このあたりは微妙な匙加減で子供たちを指導してたんだ。
 今はこれがないんだよなあ、あまりに形にはまり過ぎてる。

 いずれにしても当時は恵まれてたよ。
 親が教師を祀り上げてくれていたから、先生は無条件で権威を
獲得できたし、生徒と触れ合う時間的な余裕も今よりあったから
時間外で勉強をみてくれたり、休み時間には一緒にお外で遊んだ
りもした。
 授業以外でも教師と生徒が交流する時間がたくさんあったから
生徒と先生の心の距離が今よりぐんと近かったんだ。

 僕なんか先生の腰巾着だったから、担任の先生は学校にいる親
ぐらいに思ってて、こちらで勝手に気安くさせてもらってた。

 「お前はいったい何時になったら赤ちゃんを卒業するんだ」
 なんて、怖い顔でよく叱られてたけど……でも、卒業するまで
不思議によく抱いてもらってた記憶がある。

 僕みたいな子は特殊なんだろうけど、他のクラスメイトからも
『先生が嫌いだ』なんて声、聞いたことがなかったから人間関係
はうまくいってたんじゃないかなあ。

 自慢にならないかもしれないけど僕なんて五、六年生になって
も何かにつけて先生からお尻や太股を叩かれてた。

 僕はお調子者で授業をよく引っかきまわしてたし、いつも一言
多いタイプだったから、先生にしたら要注意人物、困ったちゃん
だったに違いないので、そこは仕方がなかった。

 でも、それは僕と先生がそれだけ親しいってことの裏返しでも
あるわけで、優しいハグも沢山してもらってたからね、出合った
先生の中で嫌いな人は一人もいなかった。

 ただ他と比べていくらか品のよい学校と言われていても所詮は
小学生だもの。僕の小学校でも生徒への体罰は公然とあったの。

 だって、理想はともかく、時間的な制約もある中で、いったん
羽目を外して混乱してしまった教室を、言葉だけで正常な状態に
戻せないでしょう。

 往復ビンタの音に驚いて騒音が止まったというのも見たことが
あるくらいだから。

 ただ権力者側についてた僕が言っても説得力がないだろうけど、
体罰と言っても、大半は笑って済まされる程度だったし、相手が
小学生ということで節度は守られていた。だから、これで師弟の
信頼関係が揺らぐことにはならなかったんじゃないのかなあ。

 今にして思うと……ってことなんだけど……
 『当時の先生は生徒にお仕置きができるほど良好な人間関係を
保って学級運営ができていた』
 ってことなんだと思う。

*********************

Appendix

このブログについて

tutomukurakawa

Author:tutomukurakawa
子供時代の『お仕置き』をめぐる
エッセーや小説、もろもろの雑文
を置いておくために創りました。
他に適当な分野がないので、
「R18」に置いてはいますが、
扇情的な表現は苦手なので、
そのむきで期待される方には
がっかりなブログだと思います。

最新記事

カテゴリ

FC2カウンター

検索フォーム

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード

QR