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§6

 §6

私は絶望と安堵感と虚無感が入り混じる不思議な気持ちの中でお臍の
下の汚れを原口のおじさまの手にゆだねます。それは同時にお父様の身
に万が一の事が起こった時に、後見人代表として原口のおじさまを私が
選んだということにもなるのでした。
 もちろん、事実は原口のおじさまが私の難儀を見かねて名乗り出てく
ださったわけですが、そんなことはこの時はどうでもよかったのです。
 「(終わったあ~~~~)」
 大勢の大人たちの前で素っ裸で、しかもうんちまみれの体を晒して、
でも思うことはただそれだけだったのです。
 私は女王様とママそれに原口のおじさまに連れられてお風呂場へ向か
います。そこで汚れた下半身を綺麗に洗うためです。
 私をシャワーのある場所に立たせると、ママと女王様が代わる代わる
私のお股にの中に手を入れてはその指の腹で私の汚れた部分を取り除き
ます。
 最後は原口のおじさまの手が入ってきましたが、両手を万歳したまま
で立っていなければならず、もちろん悲鳴を上げることなどできません
でした。
 おじさまはバックから手を入れて後ろの穴だけでなく前の小さな突起
にまで触れてきます。私はそのたび腰が砕けて中腰になりましたが……
 「だめよ、しっかり立ってなきゃ。これからあなたの後見人になって
いただく方なのよ。このくらいのことも耐えられないのかって笑われる
わよ」
 「もう少しで終わるから、我慢してなさい。あなたのようにそう何度
も何度も腰をひいたら失礼よ」
 ママや女王様にそんな事を言われながら何度も襲い来る蜂に私はただ
ただ耐えるしかありませんでした。
 やがて長いお風呂の時間が終わって、私には体操着が与えられます。
 私はてっきり試練は終わったものだと思い込んでしまいましたが……
体操着姿で七人のおじさまやお父様が待つ会場へ戻るとそこにおばば様
がいらしたのでビックリ。もう、その場で気絶したい心境だったのです。
 「おう、戻ったか。原口先生からは可愛がってもらったか?これから
お世話になる方じゃからな、粗相があってはならんよ」
 おばば様は子供たちがお灸のお仕置きを受ける時は必ず現れます。幼
い子にとってはまさに疫病神。私も道端でおばば様を見つけると思わず
物陰に身を隠してしまうほどでした。
 そんな私もすでに13才。慣れもあり身体も大きくなった今では発狂
するほどの悲鳴は上げずにすむようになっていましたが、それがほかの
お仕置きに比べても恐ろしい儀式であることに変わりはありませんでし
た。
 日本庭園の見える和室に舞台を移し、ほかのおじさまたちが床の間を
背にしてお茶を楽しむなか、私は縁側で正座したママのお膝にお臍をつ
けてうつ伏せに……
 ちょうどお尻だけが一段高くなった姿勢で女王様からブルマーとショ
ーツを一緒に引き下ろされてしまいます。
 「(いやあ!)」
 一瞬にして私の顔が真っ赤になるのがわかります。不思議なことです
がそれはとても恥ずかしくて、むしろ今までやられていたお浣腸の方が
まだましなくらいでした。
 ここでもアルコールによる消毒は欠かせません。
 ほんの一瞬、お尻の皮膚が熱を奪われるだけのことなのに、それだけ
で全身の毛穴が開き、産毛が逆立ち、鳥肌がたち、頭のてっぺんまで電
気が走ります。
 そうしておいて、おばば様はやおらもぐさをお尻のお山の定位置に乗
せると、事前に呼び寄せていたおじさま二人にお線香を握らせて艾に火
をつけさせるのでした。
 ところが、そのお灸の熱いこと。今までもお仕置きで数回経験してい
ましたがこれはやはり特別だったのです。
 「(ひぃ~~~)」
 もう少しで歯が折れるか、悲鳴をあげるところでした。
 「どうじゃ、少しは応えたか。最後じゃからな、ようく思い出に残る
ようにしてやるからな」
 おばば様の意地悪そうな声が耳元に木霊します。
 逃げ出せるものならこのまま逃げ出したいくらいでした。
 「よしよし、よう逃げださんじゃったな」
 私の気持ちを見透かしたようにおばば様は頭を撫でます。もちろん、
すえられるお灸はまだこれからたくさん残っています。でも私は思わず
たった二つのお灸で涙を流してしまったのでした。
 今度は仰向けにされてお臍の下に三つ。ここはその後うっそうとした
茂みで覆われますから、灸痕と呼ばれる火傷の痕も隠れます。そのため
でしょうか、どの子も他の箇所より大きなお灸をすえられていました。
 ただそれにしても……
 「えっ!」
 私はママのお膝に頭を乗せてもらっていますからその様子が自分の目
で確かめられるのですが、乗せられた艾は普段の倍はありそうに大きな
ものだったのです。
 「(そんなのいやよ!)」
 今さら逃げ出す勇気もない私はせめてもの腰を振ってみます。
 すると、おばば様が……
 「どうした?怖いか?」不敵な笑いを浮かべて「体も大きゅうなった
んじゃからいつまでも鑿のウンチみたいなもんじゃ、いつ終わったかも
わからんじゃろう。どのみちここを出て高校へ行ったらもっと大きな物
をすえてもらうことになるから今日はその予行演習じゃ」
 口の悪いおばば様はいつも人の嫌がることを言って子供を脅かします。
でも、高校に進学してまでお灸のお仕置きがあるなんて私はこの時初め
て知ったのでした。
 「さあ、恵子ちゃん、火をつけるからね、我慢してね」
 遠藤のおじさまが仰向けになった私のすぐ傍らに座ります。
 頭を撫でられると私はお約束の言葉を言わなければなりませんでした。
 「お願いします、おじさま」
 こうして物凄く熱い、というかお灸の場合は錐で揉まれるような痛み
なんですが、それを我慢すると、次は……
 「ありがとうございました」
 こういうご挨拶をしなければならなかったのです。お仕置きは愛情の
一部だから子供がお礼を言うのは当たり前という理屈でした。
 実際、亀山のお仕置きでは年齢や体格、体調などを考慮して先生方が
細かく手加減をしますから、泣きわめいたり暴れまわったりしてご挨拶
もできないなんてほど過酷なものは存在しませんでした。
 次は木村のおじさまが、三つ目は牧田のおじさまが担当です。
 頭を撫でてもらい優しく微笑んでから火がつきます。もちろんご挨拶
もちゃんとしました。
 両手をママと女王様に押さえられ寝ながらバンザイをするような姿勢
で私は火の山が次第に下へ沈んでいくのを見つめます。
 「いぃ~~~ひぃぃぃ」
 歯を食いしばってがんばりますが、その熱さは気絶しそうでした。
 最後は、なるべく火傷の痕が広がらないように、おばば様が指の腹で
小さなたき火を消してくれます。そして、それが終わるとご挨拶……
 ま、こんな姿のまま「ありがとうございます」なんてのも変でしょう
けど…でも、これが亀山のしきたりだったんです。
 「よくがんばった。えらいよ。えらい、えらい」
 「よい子だったねえ。もうすぐお姉ちゃまだもんな」
 お二人はお灸が終わってからも、口々に私を励まし、私の頭を撫でて
くださいます。
 『そんなに小さな子でもあるまいに、今さら13の子がそんな事され
ても嬉しくないだろう』
 と思われるかもしれませんが、亀山で暮らす子供たちは13になって
も赤ちゃんは赤ちゃん。亀山という無菌室の中で大人たちによって無垢
で純真に育てられましたから、褒められればその顔はほとんど反射的に
笑顔に変わるのでした。
 「木村のおじさま、牧田のおじさま、ありがとうございました」
 私が胸の前で手を組んでご挨拶するとお二人共とても穏やかな笑顔を
返してくださいます。
 「頑張るんだよ、自由はもうすぐそこにあるからね」
 木村のおじさまがおっしゃいます。実際、14という歳は私が初めて
自由を手にできる歳となるのでした。
 ただ、そのためにはまだまだ試練が残っていたのです。
 「(あっ!)」
 女王様の手でそれまでは太股に止まっていたブルーマーとショーツが
一気に剥ぎ取られます。そして、高々と両足が持ち上げられるとそれが
頭の上を通過して両耳の脇へと着地したのでした。
 「…………」
 ま、その姿を想像してみてください。巷で育った子なら絶叫している
んじゃないでしょうか。でも、亀山育ちの私にとってこのポーズはそれ
ほど凄いことではありませんでした。
 亀山の子供たちは、お仕置きで、あるいは健康診断と称して、少なく
とも月に一回は大人たちの前でこの姿勢をとらされるのです。ごく幼い
頃からママやお父様、学校の先生や司祭様、色んな大人たちに女の子と
しての自分をさらけ出していましたから、最近恥ずかしく感じるように
なったといっても、ことさら「恥ずかしいことしないで!」なんて騒ぐ
こともなかったのです。
 ちなみに、亀山の子は赤ちゃんでいる間はトイレへ行ってもウンチを
流せませんし、お尻を自分で拭くこともできません。お風呂へ行っても
服を脱がすのも、体を洗うのも、再び服を着せるのもすべて自分たちで
勝手にやってはいけなかったのです。そんな中唯一許されていたのは、
メンスの処理だけ。これだけが女を自覚できる貴重な体験だったのです。
ところが、当時の私はまだ子供で、この時期になると周囲の大人たちが
よそよそしく自分を避けるように思えて不満だったのです。
 私は、どんな時も大人たちから抱かれたい。いい子いい子して欲しい
と願っていたのです。もちろん抱かれていれば大人たちは私の微妙な処
へも手を伸ばしますし、ぐずればママからのお仕置きの危険もはらんで
います。でも、大人たちに囲まれて抱かれている時の方が、独りでいる
より数段楽しいのです。
 天使として大人たちの懐に抱かれ、妖精としてお庭を跳ね回っていた
私たちの義務は大人を疑わないこと、恥ずかしがらないことです。
 ですから……
 「お股のなかを見せてね」
 大人たちはたった一言断れば私たちのお股の中を何度でも心ゆくまで
見ることができたのです。
 というわけで、こんなあられのない姿でいてもそれが苦痛という事は
ありませんでした。ただ、体を海老のように曲げられ大きくお股を広げ
られて、それを固定するためママや女王様に体を押さえつけられている
のは苦痛ですし、やはりそこは女の子にとっては感じやすい処ですから
おばば様に艾を置かれると緊張します。
 「それではいくよ」
 「我慢するんだよ」
 ここの担当はお父様と原口のおじさまです。お二人は何だか申し訳な
いようにお線香の火を大陰唇に乗せられた艾に移します。
 ここはお父様と後見人になった原口のおじさま以外、担当することは
ありませんでした。
 「ひぃ~~~~~」
 火が回ると全身に震えがきます。そのくせ顔だけが真っ赤に火照って
熱いのです。まるで一瞬だけ自分がお尻から脳天めがけて槍で串刺しに
あったような、そんなショックでした。
 ただここで使う艾は本当に小さいものですから燃え尽きるまでほんの
一瞬の出来事。特別な処にすえられているから特別熱いということでも
ないのです。あくまで、熱くて痛くて大変だったのはお尻のお山にすえ
られるお灸。ここには大きなサイズの艾が置かれます。しかも二回目と
なると先ほどの傷も癒えていませんから痛みは倍化します。
 「(いやあ~~~ゆるしてえ~~~)」
 私はあまりのことに必死になってママと女王様のくびきから逃れよう
としました。しかも無意識のうちにお漏らしまで……
 でも、そのことに誰も大騒ぎしませんでした。そんな私の粗相を片付
けながらおばば様が諭します。
 「いいか、この灸痕はお前の誇りじゃ。恥ずかしがることじゃないぞ。
寄る辺なき身の上のお前らが何かに困った時、助けてくれる人もお前と
同じ灸痕をもっとるはずじゃからな。無傷でここを巣立ったら先輩たち
は誰もお前を助けんよ。ほら、もう少しじゃ」
 おばば様はゆっくりと噛んで含むように私に話しかけました。残念な
がらここにいる間はされは理解できませんでしたが、結果はおばば様の
言う通りでした。お尻のやけどは一般の人には不幸な傷にしか見えない
でしょうが、私たち亀山の出身者にとってはその傷があるから寄り添え
るのです。その子を仲間として迎え入れることができるのです。
 お尻の灸痕は単にそこを出てきたというだけでなくそこで自分たちと
同じ苦労をしてきた証としての大事な身分証だったのです。
 結局、私はお尻とお臍の下とお股の中に計7箇所、三回ずつお灸をす
えられました。おかげでお風呂に入ると今でもはっはりそれとわかる傷
が残っていますが、それを恥ずかしいと思ったことはありません。
 それが私たち亀山の紋章なのですから。
 ちなみにその灸痕は、おばば様があみ出した技法によって独特の文様
になっていますから、よくよく見れば誰でも一般の人のものとは違うと
わかるようになっていました。
 試練が終わった時、私は放心状態でした。かつてのお仕置きでもトリ
プルといってお尻たたきとお浣腸とお灸を一緒に受けたことはあります。
でも、こんな疲れたことはありませんでした。
 綿のように疲れた身体をおじさま方が代わる代わる抱いていくのがわ
かります。お人形のように抱かれるその瞬間はお愛想笑いさえできませ
んでした。でもその反面、ガラガラやでんでん太鼓を目の前で振っても
らうと、これまた不思議なくらい自然に笑えるのです。
 13才ともなればどんなに情報に乏しく育っても自分が女性であると
いう自覚が芽生えます。プライドや傲慢さが二つ合せになって身につき
ます。もう帰れない道ですが、この瞬間だけは純粋に人を信じその人の
腕の中で安らぐことができたような気がしました。普段ならちょっぴり
遠慮していまうおじさままでもがこの時ばかりは王子様だったのです。
 「普通親は良きにつけ悪しきにつけ傍目にはばかばかしいことを子供
にしてやる。それがあるから子は親を特別の存在として認識するのじゃ。
お前はててなし児じゃからな、親に戯れることができぬ。しかし、こう
いう形でなら『自分にも特別な存在の人がいる』と認識できるはずじゃ。
お仕置きは人の心を傷つけるなどと、ろくに人を愛したこともない馬鹿
学者どもがのたまわっておるがな、そもそも心に傷を受けずして人生を
まとっとうできる者などおらんよ。……そう、ここではわざと子供の心
に傷をつけておるんじゃ。しかし誰もがその子を愛しておれば誤った道
には進まんし、こんな他人同士でも絆は深まる。こんなことは有史以来
の人の道じゃて、それを否定するとは愚かなことよ」
 この日、おばば様は珍しく雄弁でした。

Appendix

このブログについて

tutomukurakawa

Author:tutomukurakawa
子供時代の『お仕置き』をめぐる
エッセーや小説、もろもろの雑文
を置いておくために創りました。
他に適当な分野がないので、
「R18」に置いてはいますが、
扇情的な表現は苦手なので、
そのむきで期待される方には
がっかりなブログだと思います。

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