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3/9 サマースクール(午前中~2~)

3/9 サマースクール(午前中~2~)

*)僕の好きなプリズンもの。でも、Hはちょっぴりです。

 私はもたもたしているオマルを尻目にピアノへ向います。
 さっきの授業中、思いついたメロディーを忘れないうちに五線
紙に書き留めなければなりませんでした。

 「まあまあ、今日はお二人でいらしたのね。それならもう一つ
カップが必要ね」

 いつも上品な身なりのおばさん、つまり、おじちゃんの奥さん
がオマルを気遣ってそんなことを言ったみたいですが、こちらは
それどころではありません。

 今度は、授業中に思い浮かんだ詩のフレーズをメモ用紙に書き
留めます。
 お茶はそれからでした。

 でも、それだけやると、今度は次の授業の為に教室へ戻らなけ
ればなません。

 実にせわしない休み時間です。

 こんなことを夏休みになるたびにここへ来て繰り返していた訳
です。
 でも、このせわしなさが私には逆に心地よかったのでした。

 「あんたって、変わってるわね」
 教室に戻る道々オマルが尋ねますが……

 「そうなの?…私、なまじ立派な勉強部屋で、時間がたっぷり
あって、『さあどうぞ』って言われると、何も浮かばないのよ。
何か別の事をしているついでの方が面白いものができるわ」

 「ここの先生たち、このこと知ってるの?」

 「もし、知らなかったら、馬鹿ね」

 「しっ!聞こえるわよ」
 オマルが慌てて私の口を押さえてくれましたが……

 「大丈夫よ。真面目にやってるGの子たちに申し訳ないけど、
私も規則にしたがってやってるだけだから……今は問題ないわ」

 「『今は……』っことは昔は叱られたの?」

 「小学生の頃はね。……みんなの前でパンツの上からお尻叩か
れた。……『伯爵様のおうちに勝手に入り込んではいけません』
ってね」

 「それでも、やめなかったんだ」

 「だって、最初に『お入りなさい』って言ってくれたの伯爵様
だもん。……だから伯爵様に泣きついたら、とりなしてくれて…
…いったん家に帰されて、お父さんからこっぴどく叱られたけど
……最後は、『学校の規則内で行動するなら』という条件付きで
今のサボテンハウスに出入りすることを許してもらったの」

 「じゃあ、チッチは特別扱いなんだ」

 「特別扱いというより黙認ってことじゃないかな。今日の様子
じゃ斉田先生はまだ私がなぜGにいるのか、わかってないみたい
だし……」

 「それじゃあ、差し止められることだってあるんじゃないの?」

 「そうかなあ……でも、たぶん大丈夫よ。……ここの先生方は
みんなやさしい人ばっかりだもん」

 「それって、先生が優しいんじゃなくて、あなたが優しくして
しまうのよ」

 「えっ、それどういうこと?」

 「そうよ、絶対そう。……あなたって、そんな不思議な魔力を
持ってるもの」

 「魔力?」

 「魔力よ。女の魔力。だって、まったく同じことをしてるのに、
私はこっぴどく叱られて、あなたには『今度から気をつけなさい』
って笑って注意する先生が何人もいたもの」

 「馬鹿ねえ、そんなの偶然よ」
 私は思いっきりオマルの肩を叩きます。

 「偶然じゃないわよ。差別よ。差別。可愛い子差別だわ」

 「何、急にひがんでるのよ?」

 「悪いかしら?ええ、ひがんでるわ。ひがんで当然でしょう。
こんなお話、聞かされたら、馬鹿馬鹿しくて、私みたいなブスは
やってられないわよ」

 「そうかなあ……」

 「そうよ、絶対にそう……」

 ここで2時限目が始まりました。


**************************

 2時限目のテスト。
 今度はお互い競争です。

 9時34分30秒。
 答案を書き上げます。

 9時35分00秒。
 答案を提出して教室を出ます。

 9時35分30秒
 校舎を出て、そこからは猛ダッシュ。

 9時37分30秒
 サボテンハウス到着

 一人でやっている時もそんな感じでしたが……二人になると、
なおさら運動会のゲームのようです。
 最後は窓から入るところまで競争になっていました。

 「楽しい」
 「今度は負けないからね」
 二人は荒い息をつきながらソファーに腰を下ろします。

 「あっ、忘れた」
 「何を?」
 「教室で浮かんだメロディー。あんたと競争したおかげて忘れ
ちゃったじゃない」
 「やったあ~勝った勝った。じゃあ、今度は私が弾いてあげる
からね、聞いときなさいよ」
 オマルは得意げにピアノに向かいました。

 『何て楽しいんでしょう。やっぱり友だちがいるっていい事ね』
 こんなに心が浮き浮きしたのは久しぶりでした。

 2時限目の休み時間は、おばちゃんが入れたお茶をいただいて
おじちゃんともおしゃべりしながらゆっくり過ごします。

 本当は『おじちゃん』とか『おばちゃん』なんて言っちゃいけ
ない人たちです。何しろ世が世なら伯爵に伯爵夫人なんですから。

 でも、小4の私が物欲しそうに窓辺から中の様子を窺っている
とおじちゃんが抱っこして部屋の中へいれてくれました。
 その時よんだ『おじちゃん』『おばちゃん』の呼び名が今でも
続いていたのです。

 私だって、そうそう子供じゃありませんから、途中で気づいて
『伯爵様』だなんて呼んでみたこともありましたが……
 「伯爵なんて戦前までの話さ。今はおじちゃんでいいんだよ」
 って優しく頭を撫でてくれました。

 おじちゃんにとって大事なことは呼び名じゃなくて、子供たち
をこうして膝の上に抱き上げてあやすことだったんです。私との
関係が続いたのも、私がそうしたことを嫌がらないからでした。

 おじちゃんは知る人ぞ知るロリコンコレクター。昔は青髭伯爵
だなんて呼ばれていたそうです。
 ですから、奥のコレクションルームには今でも子供たちの絵や
写真が山のようあります。

 もし、そのことを知ったら、今までは無関心でいてくれたパパ
も、この学校から私を連れ戻してしまったかもしれません。

 でも、私はおじちゃんが好きです。小4の時から抱かれ続けて
きたからでしょうか。ちょっぴりHなことをされても、今でも、
そのお膝に乗ることに何のためらいもありません。むしろ、おじ
ちゃんの膝の上にいると心が安らぐのです。
 おじちゃんの膝の上にいると、何だか幼い日に戻った気がして、
あくびなんかしちゃいます。たとえその手が私のスカートの中を
這いずり回っていたとしても、全然OKでした。

 私はこの時もおじちゃんのお膝の上を狙っていましたが、さす
がに今は高校生、オマルがそばにいたので諦めました。
 そのオマルが、突然、素っ頓狂な声を上げます。

 「『千賀文庫』??…何よこれ、あなた、自分専用の書棚まで
あるじゃないの」

 「ああ、それのことね。おじちゃんが読め読めって毎年買って
くるから増えちゃったのよ」

 「ふうん……どんな本読んでるの?」
 彼女は本棚を物色し始めます。
 「ライ麦(ライ麦畑で捕まえて)、ノン束(アルジャーノンに
花束を)、草の葉…ホイットマンか………マンガもあるじゃない。
萩尾、竹宮、山岸……これって、あなたの趣味?」

 「おじちゃんの趣味よ。おじちゃんが私をお膝に乗せて読んで
くれるの」

 こう言うと、オマルは一瞬考え、変な顔をしてこちらを振り向
きましたが、私は真実を述べたまで……でも、笑って答えます。

 「さあ、もう帰らなきゃ。3時限目が始まるわ」


***************************

 3次限目のテストも、二人とも五分を切るタイムで仕上げると
教室の外へ。さすがに三回目は、斉田先生の「あなた方、見直さ
なくていいの?」という声もなくなったみたいでした。
 呆れてはいましたが……

 いずれにしろ、私たちは伯爵様のサボテンハウスに直行です。

 すると、そこには可愛い先客が来ていました。
 8歳の男の子、伯爵様のお孫さんにあたる譲治君です。

 「お姉ちゃん」
 彼は、私が身をかがめて窓から顔を出すなり私の顔に抱きつき
ます。

 「こらこら、悪戯しないの。お姉ちゃんの頭はボールじゃない
のよ」

 私がここへ最初にやってきた時はまだ完全に赤ちゃんでしたが、
物心がつくと、私になつき、いつもピアノをせがみます。
 仕方がないので、膝の上に乗せて童謡を中心に弾いてあげると
とっても喜ぶので、私もいつしか本当の弟のような気分で可愛が
っていました。

 今日は真由美も一緒なので、彼女にもピアノをせがみました。

 夏休みだけの、それもせわしないお付き合いですが楽しい時間
でした。こんなアットホームなひとときなんて、実家に帰っても
どのみち得られませんから……

 私とオマルがアニメソングを一曲ずつ弾いたあと、私の膝の上
で興奮気味に跳ね回っていた譲治君が……
 「ぼくも……」
 と言って弾き始めます。

 流れた曲は『主よ、人の望みの喜びよ』

 それが、意外なほど美しかったのでオマルが……

 パッヘルベルの『カノン』をサービスします。

 すると、譲治君がオマルに……
 「お姉ちゃん、上手だね」
 なんて、おべんちゃらを言いますから、思わずライバル心に火
がついてしまって、私も……

 『きらきら星変奏曲』を……

 でも、これがいけませんでした。
 部屋の鳩時計が11時を知らせようと『ピッポウ』『ピッポウ』
って顔を出したのです。

 「!」
「!」

 二人は、一瞬顔を見合わせ……
 そして、脱兎のごとく窓の外へ……

 「やばい、やばい」
 「あんたが調子に乗るからでしょう」

 二人はいつもよりさらに全力で舞い戻ったのですが……
 間に合うはずがありませんでした。

 教室の入口にはすでに鍵が掛けられ……窓から覗くと、すでに
授業が始まっています。

 『やばいなあ』
 って思っていると、それに気づいた初老のシスターが入口の鍵
を開いて顔を出します。

 ばつの悪そうな二人。

 でも、シスターは冷静でした。

 「いらっしゃい」
 低い声で私たちを廊下の突き当たりにある部屋へと連行します。

 私は、もう先が読めていますから何も言いませんが、オマルは
ここのしきたりを知りませんから、尋ねてきます。

 「ねえ、どこへ行くの?」
 「お仕置き部屋よ」
 「お仕置き部屋?そんなのここにもあるの?」
 「あるわよ、ここはその為の学校なんだもん。ここのはうちの
お仕置き部屋より凄いんだから………授業に遅れたり、授業中に
おしゃべりしたり、友だちと喧嘩なんかすると、シスターに連れ
て行かれるの」
 「で、どうなるの?」
 「どうなるって、お仕置きされるに決まってるじゃない」
 「どんな?」
 「知らないわよ」

 と、ここまでは許してくれていたのですが……

 「二人ともうるさいわよ」
 シスターが振り返って、怖い顔をしますから、二人共しゅんと
なって俯いてしまいます。

 実際、私も、お仕置き部屋へ連れて行かれることは分かります
が、どんな罰になるかは分かりませんでした。

 突き当たりの部屋は、二重になったぶ厚い扉の先にありました。
 中の鞭音や女の子の悲鳴が外に漏れないためです。

 最初の扉を開けると、そこは六畳ほどの小部屋で薄暗く、明か
りはロウソクだけ。その炎に照らされてマリア様の像が高い場所
から微笑んでいます。

 子供たちはそれが小学生であれ、高校生であれ、この像の前で
膝まづいて、ある誓いを立てなければなりませんでした。

 「私は授業に遅れてしまいました。二度とこのような事がない
ように自分を厳しく律してまいります」
 「私は授業に遅れてしまいました。二度とこのような事がない
ように自分を厳しく律してまいります」

 桃園学園の生徒でいると、このくらいの言葉は誰でもすらっと
でてきます。というのも桃園の生徒は穢れた心を持たずピュアで
いることが勉強ができることより大事なことだったからです。
 そんなピュアな心を持ち続ける為に、お仕置きされるかどうか
は別にして、どんな細かな過ちもすべて親や教師に報告して懺悔
しなければなりません。
 懺悔は通知表に載らない必須科目みたいなものでした。

 ベテランシスターが二つ目の扉を押し開いて二人を奥の部屋へ
招き入れます。
 ここからが本当のお仕置き場、二人にとっては足のすくむ場所
でした。


***************************

3/8 初めてのお酒

3/8 初めてのお酒

*)思い出話

 その日は、父と一緒に質屋組合の寄り合いに参加していました。
寄り合いと言っても中身は日帰りの親睦会で、当時まだ幼稚園児
だった私もおまけで参加していました。

 温泉旅館に着くと、さっそく大きなお風呂で泳いで、長い廊下
を走り回って、お土産を売っているガラスケースに乗っかったり
とやりたい放題です。

 でも、そんな探検旅行が一段落すると、レジャーランドのよう
に遊具がありませんから、やることがなくなります。
 仕方なく元いた広間に戻ると、今度は一緒にバスでやってきた
はずの大人たちがいませんから、独り残っていたおじさんに……

 「お父さんは?」
 って、尋ねたら近くの名所をみんなで見に行ったとのこと。

 仕方なく、独りでお銚子を傾けているそのおじさんのおそばに
いることにしたのです。
 スルメや裂きイカなんかもらって、お酌なんかしながら……

 すると、そのうちそのおじさんがこんな事を言うのです。

 「坊や、お前も一杯やるか」
 ってね。

 もちろん、ぼくはそれまでお酒なんか一滴も飲んだことがあり
ませんでしたが、父が飲んでいるのは目にしていましたから興味
はあったんです。

 そこで……
 「うん」
 と言うと、おじさんが盃にほんのちょびっと注いでくれます。

 それは時間が経つと自然に乾いてしまうほどちょびっとだった
んですが、飲んでみました。

 『美味しい』
 正直、そう思いました。
 そしてそれまで知らないおじさんと二人きりだった部屋が急に
楽しい場所に思えるようになったのです。

 すると、そんなぼくの変化におじさんも気づいたんでしょうね。
 「おまえ、なかなかいける口じゃないか。よしもう一杯いくか」
 って、僕を膝の上に抱くと二杯目を注いでくれるんです。

 前の一杯が美味しかったぼくは二杯目もグイッとやってみます。

 『わあ~~~こんなに楽しい気分は初めてだ』

 盃二杯、それもほんのちょびっとの量だったんですが、何しろ
幼稚園児で小さな身体でしたからね、完全に酔っ払ってしまった
のでした。

 そして、三杯目、四杯目、……
 『わあ~~~天井が回ってる』
 ぼくはおじさんの膝に座ることさえできず、その場に倒れこみ
ます。
 天井は回っていますが、とてもいい気分でした。

 そうやって倒れてる私は、やがて、座敷に帰ってきた父に発見
されます。
 すると、こちらは気分がよく寝ていても、私を見つめる父の顔
は恐ろしく怖いものでした。

 『やばい、お酒飲んだから怒ってるんだ』

 すぐに、そう思いましたが、何しろ足腰が立ちませんからどう
にもなりません。
 ぼくはお仕置きを覚悟したんですが……
 父が僕にしたのは、温泉場へ連れて行って、頭を水で冷やして
脱衣場の畳の上に寝かせただけでした。

 その後のことは母から聞いたのですが、父は私にお酒を飲ませ
たおじさんの胸倉を掴んで……
 「どうして家の息子に酒なんか飲ませた。お前、俺に恨みでも
あるのか。もし死んだらどうするつもりだ」
 って怒鳴り散らしたそうです。

 一触即発、周りにいたみんなが止めなかったらきっと殴り合い
の喧嘩になっていたみたいです。
 喧嘩っ早い人ならともかく、普段とっても大人しい父ですから、
周囲の人たちが一様に『あの時は驚いた』って言ってました。

 それで、その旅行はその後父の懐に入れられて無事帰ってきた
わけですが、これには後日談がありまして……

 数日後、今度は父が私に……
 「お前もやってみるか?」
 って盃を勧めたんです。

 もちろん、量はほんのちょびっと。一杯だけですが……
 でも、やっぱり美味しかったです。

 おじさんと喧嘩までしたそんな事を、今になってなぜ僕に求め
たのかは謎ですが、父もまたおじさん同様、盃を飲み干す僕を懐
に抱いて満足そうでした。

*********************

Appendix

このブログについて

tutomukurakawa

Author:tutomukurakawa
子供時代の『お仕置き』をめぐる
エッセーや小説、もろもろの雑文
を置いておくために創りました。
他に適当な分野がないので、
「R18」に置いてはいますが、
扇情的な表現は苦手なので、
そのむきで期待される方には
がっかりなブログだと思います。

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