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第10章 カレンの秘密(1)

            << カレンのミサ曲 >>

 ************<登場人物>**********

<お話の主人公>
トーマス・ブラウン<Thomas Braun>
……音楽評論家。多くの演奏会を成功させる名プロデューサー。
ラルフ・モーガン<Ralph Morgan >
……先生の助手。腕のよくない調律師でもある。
カレン・アンダーソン<Karen Anderson>
……内戦に巻き込まれて父と離ればなれになった少女。

(先生の<ブラウン>家の人たち)ウォーヴィランという山の中
の田舎町。カレニア山荘

<カレニア山荘の使用人>
ニーナ・スミス<Nina>
……先生の家の庭師。初老の婦人。とても上品。でも本当は校長
先生で、子供たちにはちょっと怖い存在でもある。
ベス<Elizabeth= Berger>
……先生の家の子守。先生から子供たちへの懲罰権を得ている。
ダニー<Denny>
……下男(?)カレニア山荘の補修や力仕事をしている。
アンナ<Anna>
……カレニア山荘で長年女中をしている。
グラハム<Graham>
……カレンの前のピアニスト

<カレニア山荘の里子たち>

リサ<Lisa >
……(2歳)まだオムツの取れない赤ちゃん。
サリー<Sally>
……(4歳)人懐っこい女の子。
パティー<Patty>
……(6歳)おとなしいよい子、寂しがり屋。
マリア<Maria >
……(8歳)品の良いお嬢さんタイプ
キャシー<Kathy>
……(10歳)他の子のお仕置きを見たがる。
アンドレア/アン<Andrea=Braun>
……(14歳)夢多き乙女。夢想癖がやや気になる。
(注)アンは本来アンナの愛称だから女中のアンナと混同しそうだ
が、ブラウン先生がアンドレアのことをいつも『アン』『アン』
と呼ぶことから、カレニア山荘ではそれが通り名になっている。


ロベルト<Robert>または ~ロバート~
……(13歳)端整な顔立ちの少年
フレデリック<Friderick>本来、愛称はフリーデルだが、
ここではもっぱらリックで通っている。
……(11歳)やんちゃな悪戯っ子。
リチャード<Richard>たまにチャドと呼ばれることも……
……(12歳)ポエムや絵画が好きな心優しい子。

<先生たち>
ヒギンズ先生<.Higgins>
……子供たちの家庭教師。普段は穏和だが、怒ると恐い。
コールドウェル先生<Caldwell>
……音楽の先生。ピアノの他、フルートなどもこなす。
シーハン先生<Sheehan>
……子供たちの国語とギリシャ語の先生。
アンカー先生<Anker>
……絵の先生。
エッカート先生<Eckert>
……数学の先生
マルセル先生<Marcel>
……家庭科の先生

<ブラウン先生のお友達>
ラックスマン教授<Laxman>
……白髪の紳士。ロシア系。アンハルト家に身を寄せている。
ビーアマン先生<Biermann>
……獣医なので先生とは呼ばれているが、もとはカレニア山荘で
子供達のお仕置き係をしていた。今は町のカフェの店主。
アンハルト伯爵婦人
……戦争で息子を亡くした盲目の公爵婦人
フリードリヒ・フォン=ベール
……ルドルフ・フォン=ベールの弟
ホフマン博士<Hoffmann>
……時々酔っ払うが気のいい紳士

<ライバル>
ハンス=バーテン<Hans=Barten>
……アンのライバル、かなりのイケメン。
サンドラ=アモン<Sandra=Amon>
……12歳の少女ピアニスト。高い技術を持つが感性に乏しい。
最初の師匠はカール・マクミランという青年。継母と父
(アルフレッド=アモン)の三人家族。今はカレニア山荘の住人。
フランソワーズ・シャルダン<Françoise=Chardin>
……カレンが、昔、メイドをしていたサンダースワイン創業者、
サー・アランの一人娘。家では男名前のフランソワを通していた。
最初の師匠はナターシャ・スコルビッチ先生。現在は親元を離れ、
パルム音楽院の学生になっている。

<幻のピアニスト>
セルゲイ=リヒテル(ルドルフ・フォン=ベール)
……アフリカ時代の知人。カレンにとっては絵の先生だが、実は
ピアノも習っていた。

*****************************

第10章 カレンの秘密

§1 薔薇の誘い(1)

 ベスは台所仕事を終えて自分の部屋へ戻るところだった。
 大人の彼女でも、もう十分、寝る時間になっているというのに
食堂に小さな影がうごめいている。

 「誰なの?」
 そう言って電気をつけると、そこにいたのはサンドラだった。

 「…………」
 彼女は挨拶の代わりにと小さく微笑んで返した。

 「どうしたの?こんな時間に……」
 ベスがそう言って近づくと、

 「別に…何でもないわ。おしっこタイムよ」
 そっけなく答える。

 ベスはその態度からだいたいのあらましを推察して……
 「先生のお浣腸、受けたんだ」
 と尋ねてみたが……

 「…………」
 サンドラは答えなかった。

 でも……
 「まだ、お腹が渋ってるの?」
 こう問われると、素直に……

 「まだ、少し……」
 とだけ答えて、また黙ってしまう。

 「大丈夫よ。それは明日までは持ち越さないから……」
 こう励まされて、ほんの少し顎を引いてみせる。

 「いやだった?」
 こう問われても、やはり反応は同じ。

 「でも、あなたは偉いわ。その歳で分別がつけられるんだから」
 こう言われると……

 「だって、あなた、そう言ったじゃない。お父様の希望を叶え
るのは娘の義務なんだって……。だから、やったの。私だって、
お父様を困らせたくはないもの」

 「で、どうだった?お父様が嫌いになった?」

 「わからないわ。……何であんなことしなきゃならないのかも
……」
 サンドラはゆっくりと首を横に振る。

 「それは、お父様があなたを好きだからよ。男性は好きな娘の
すべてを把握したいの」

 「だって、汚いでしょう……うんちなんて……」

 「綺麗、汚いはその人との人間関係で決まることよ。他人同士
ならどんなに親しくてもそれはないけど、身内は、そこから一歩
踏み込んだところにあるから、それを遠慮する関係でいたくない
のよ」

 「そう言えば、先生。あの夜、パパに『私の娘として育てても
よいならお預かりします』ってしつこく確認してたわ」

 サンドラはその夜はたいして重要ではないと思われた出来事を
思い出していた。

 「そうか、このことだったのね」

 「先生は自分の子でなきゃ家におかないし育てないの。だから、
あなたもミスター・ブラウンを『先生』と言っちゃいけないわ」

 「あっ、そうね、『お父様』だったわ」

 「お父様は、あなたのすべてを明るみに出して支配したいの」

 「どうして?」

 「どうしてって……あなたはまだ年端も行かない娘だから……
愛する娘だからよ」

 「年端も行かないって、私はもう12歳なのよ。赤ちゃんじゃ
ないわ。お人形じゃないのよ」
 サンドラが口を尖らすと、それを見てベスが笑う。

 「でもね、私たちから見ると、あなたはもう12歳じゃないわ。
『まだ、12歳』よ。赤ちゃんは卒業してるかもしれないけど、
それはついこの間のこと。お父様から見ればお人形と変わらない
くらい頼りない存在だわ」

 「変なの。ねえ、カレンお姉様も私と同じことやったの?」

 「カレンは、ここに来たとき、すでに大人だったから、先生も
さすがにそれはなさらなかったわ」

 「そうなの。私だけ子供扱い。カレンお姉様は大人扱いなのね」
 サンドはほっぺたを膨らまし……

 「そんなの変よ。たった4つしか違わないじゃない」
 すねて顔をテーブルに擦り付けた。

 すると、それを見たベスが、やはり笑ってしまっている。
 「あなたたちの年齢で4つも違ったら、大人なら40も違うわ」

 「でも、変よ。絶対変よ。不公平よ。……私の全部を覗きたい
だなんて……そんなことしたら……そんなことしたら、……私、
解けちゃうわ」

 すねた顔したサンドラの言葉の最後は弱々しい。
 そんな可哀想な子の頭を撫でながら、ベスはこう言って励ます
のだった。

 「解けちゃうか……そうかもしれないわね。女の子は、自分を
全部さらけ出しちゃったら、あとに何も残らないものね」

 「そうよ、だから私、この世から消えてなくなりそうだったわ」

 「もう少し大人になれば適当にあしらう事も必要でしょうけど
…………でもね、あなたの場合はまだ歳も若いし、お父様の前に
すべてをさらけ出しちゃった方が得よ。……たとえその時は何も
残らなくても、そこから、お父様があなたが身の立つようにして
くださるわ」

 「そんなことわかるの?」

 「ええ、先生って、そういう方だもの。滅茶苦茶厳しいところ
もあるけど、いい加減なことはなさらないの。あなたは、こんな
言い方嫌いでしょうけど、女の子は、結局のところ誰を頼るかの
人生だもの。今はブラウン先生を頼っていて損はないと思うわよ」

 「ふ~ん、あのお爺さん、そんなに信用されてるんだ」

 「あなたが知らないだけ。大人の世界では先生は偉い人なのよ。
…………でもね、それでもどうしてもだめだったら、その時は、
手伝ってあげるわ。ここから逃げるの………。前にも言ったけど、
私はどこまでもあなたの味方だから、安心して……」

 「今は、いいわ。もう、すんだことだし……それに、わたし、
今はまだここには残りたいの」
 サンドラがテーブルから顔を上げる。

 「アンのことね」

 「そう…それにカレンも……私、お姉様のピアノで感動したの。
他人のピアノを聴いて感動したなんて初めてだったわ。だから、
あの二人のピアノが聞けるなら、私はお父様の前で裸になっても
うんちしてもかまわないわ。だって、二人にはそれだけの価値が
あるもの」

 「すごい惚れ込みようね。わかったわ、だったら頑張りなさい。
そうだ、オートミールでも作ってあげようか?」

 「あっ、あれは、いいわ。あれ……初日で懲りたから……」
 サンドラは苦笑い。でも、明るい苦笑いだった。

 「じゃあ、紅茶入れてあげるね。それで寝なさい」
 ベスの言葉には頷く。

 二人の夜はこうしてふけていった。

************************

 一方、サンドラからその価値を認められたカレンはというと、
毎日、山のような宿題に振り回されていた。

 宿題といっても音楽でも数学でもない。無味乾燥な言葉羅列を
ただただ暗記してきて学校で発表するだけのこと。
 これに振り回されていたのである。

 当時の西洋では『ヴァージル』のアエネイスや『サアディー』
の果樹園などといった古典詩の一節や『シェークスピア』のよく
知られた言い回しなどを会話の中に織り込む事はその人の品性を
図る上で重要とされ、会話の中にこうした言葉が一切出てこない
ようでは、たとえ年齢を重ねても紳士淑女とは認められなかった。

 そこで、カレニア山荘の子供たちも男女を問わず古典詩は必須
科目であり一般教養。先生に指示された処を翌日までに暗唱して
こなければならない。これが子供たちが抱える宿題だったのだ。
 だから、カレンに限らずみんなギリシャ語(ラテン語)が大嫌い
だったのである。

 苦難はなにも学校だけではない。時にはお父様の前でもそれを
発表しなければならないのだ。

 特に週末の夜、お父様の前で『今週の課題曲は演奏できません』
『古典詩も暗唱してません』なんてことにでもなったら……
 他の兄弟(姉妹)が見ている前で、お父様に楽器の代わりに自分
のお尻を差し出し、お父様が叩く平手にあわせて朗読の代わりに
『ごめんなさい』を何度も叫ばなければならなかった。

 古典的な西洋の子供教育にあっては『暗記』と『鞭』は一体の
もので、共に基本中の基本。学校も家庭もそこに区別はなかった
のである。

 過去に棒暗記なんてしたことのなかったカレンは、最初の頃、
これができずにシーハン先生からの鞭を受けたことも一度や二度
ではなかったが、この時使用された鞭はトォーズではない。

 先生のお仕置きではいつもニットのパンツを穿かされて細身の
ケインで叩かれる。ケインは、本来男の子用の鞭で、威力が強い
ために女の子のカレンにはニットのパンツが許されていたのだ。
 とはいえ、机にうつ伏せになって先生の鞭を待つ間は、異常な
恐怖感で、たった一度だけだが、カレンはその場でお漏らしまで
したことがあった。

 「ピシッ」
 
 ぶたれると、全身に電気が走り脳天まで痺れる。
 五体がバラバラにされそうで、必死に机の角を握って耐えた。

 いずれにしても、サンドラのようにトォーズで裸のお尻を叩か
れたことはなく、恥ずかしさは免れている。そのあたりが、同じ
未就学児でも、カレンの場合は大人たちの扱いが違っていたので
ある。

 そんなカレンも、半年たった今は、学習のコツのようなものを
掴んだようで、気が緩んだ時以外は、鞭の恐怖を感じずに学校へ
行けるようになっていた。

 そんな学校生活にも余裕の出てきた頃、ブラウン先生が、突然、
カレンに意外な話を持ちかけるのである。

 「実は、カレン。今度、ラックスマン教授がボンで絵の個展を
開くそうなんですが、あなた、その会場でピアノを弾いてくれま
せんか。教授はどうしても、あなたでなきゃ会場の雰囲気にそぐ
わないって、だだをこねてましてね。困ってるんですよ」

 「私はかまいませんけど……よろしいんですか?」

 「『よろしい』とは?」

 「いえ……」
 カレンはそれ以上は差し出がましいことだっと思って口を閉じ
たのだが、ブラウン先生は大人だった。

 「察するに、あなたの言いたいことは……『ラックスマン教授は、
伯爵の庇護を受けている人。そんな処へ出かけて行って大丈夫な
のか』って、思ってるんでしょうか?」

 「…………」
 カレンは小さく頷く。

 「このあいだのお仕置きで懲りましたか」
 ブラウン先生は、怒るでもなく、笑うでもなく、複雑な表情を
カレンに投げかけた。

 「カレン、これは大人の話、ビジネスの話なのです。ですから、
過去の感情は一旦脇に置かなければならないのです」

 「ビジネス?」

 「そうです。これは、あなたにとっても私にとってもビジネス
なのです。あなたはこんな山の中にいて知らないでしょうけど、
あなたは、今や、街に出ればちょっとした有名人なんですよ」

 「……わたしが?……」
 カレンは鳩が豆鉄砲をくったような顔になる。
 そんな話、初めて聞いたからだ。

 「これは、言おう言おうと思って言いそびれてしまったんです
が……実は、以前あなたの名前で出したピアノ曲集。あれが、今、
巷で売れてましてね。あなたは、すでに家一軒くらいは建てられ
そうな印税を手にしているんです」

 「……?」
 戸惑うカレンに先生は続ける。

 「あなたは世間を知らないから、ひょっとしたら、それは自分
に才能があるんからだとか、単にラッキーだったからそうなった
なんて思うかもしれませんが、いずれも違います。才能があろう
となかろうと、そもそも無名の少女が自分の創った曲を本にした
ところで、そんなにたくさん売れるはずがないのです」

 「…………」

 「……では、なぜそんなに売れたのか、分かりますか?」

 「…………」
 カレンは首を横に振る。

 「事の発端はラックスマン教授でしてね。彼が講演のたびに、
あなたの曲を褒めましてね。本の購入を教育関係者に勧めて回っ
たんですよ。もともと音楽教育に影響力のある人だから、効果が
あったみたいですね。……おまけに、伯爵も大量に買い取って、
国内の図書館や学校に寄贈し始めましたから、たちまち、これが
世の中に広まって、今やピアノを習い始める小学生にとっては、
大事な教則本の一つとなったというわけです」

 「…………」
 ブラウン先生から説明を受けたカレンだったが、いきなりそん
なこと言われてもカレンには実感が沸かなかった。インターネッ
トはもとより、テレビだって放送を開始したばかりのこの時代、
カレニア山荘で暮らしているのは外国で暮らしているようなもの。
世情に明るくないのは致し方なかった。

 「私は、最初からラックスマン教授や伯爵に『あの本を売って
ください』なんて頼んだ覚えはありません。すべては、あちらが
勝手にやったことなんです。でもね、カレン。大人の世界では、
たとえそうでも、そこまでやってもらった以上『それは、あなた
たちが勝手にやった事。こちらは関係ない』とは言えないのです。
……相手の好意にはこたえなければなりません。わかりますか?」

 「はい」
 カレンは小さな声で承諾したのである。

 こうして、カレンとブラウン先生はラックスマン教授の招待を
受けて、ボンへと飛び立った。

**************************

 空港のロビーへ降り立った二人。そこへラルフが迎えに来た。
普段の彼はカレニア山荘に腰を落ち着けることなく、文字どおり
ブラウン先生の手足となってヨーロッパじゅうを駆け回っていた。

 すでに70代半ばを越えた先生がカレニア山荘に腰を落ち着け
て子供たちと楽しく暮らせるのも、この人がいればこそなのだが、
ブラウン先生は相変わらず、この背の高いヌーには好意的な言葉
をかけなかった。

 「どうでした?空の旅は…」
 ラルフが笑顔を見せると……

 「どうということはありませんね。ヨーロッパは国は多くても
狭い処です。鉄道で十分ですよ。経費を無駄遣いをしてはいけま
せん」

 「だったらそれは大丈夫です。この航空券はラックスマン教授
からのプレゼントですから……」

 「ラックスマンさんからの……」
 ブラウン先生はしばし考えてから、一つ小さくため息をつく。
その合間にラルフはカレンにも挨拶した。

 「でも、カレン、本が売れてよかったですね。これで花嫁資金
はばっちりだ」

 「ありがとうございます。ラルフさん」
 カレンはラルフが嫌いではなかったから、ごく自然に挨拶する。

 「本当はね、ラジオで君の演奏を流したいという打診が3本も
あったんだけど、先生がみんな断るから……」

 「当たり前です。カレンの音は今のラジオの技術では拾えない
んです。カレンの音楽の真骨頂は消え行く音の計算にあるんです
よ。そんな微妙な余韻の操作は彼女にしかできない芸当なんです。
生のピアノでしか聞くことのできない音なんです」

 「そう言うもんですかね」

 「そんな放送を聴いた人はカレンのピアノを評判倒れのまがい
物だと思うでしょう。親としては、みすみす娘が信用を落とすと
分かっていることはさせられませんよ。そんなこと当たり前です。
……そうだ、そんなことより、君はなぜラックスマン氏なんかの
援助を受けたのかね?」

 「なぜって……それは手紙にも書いた通り、向こうから一方的
に……」

 「だったら、断ればいいじゃないか」

 「どうしてですか?カレンを売り出してくれって頼んだの先生
の方ですよ」

 「それはそうだが、それは私の名前を使って普通にやればいい
んだよ」

 「普通にって……?」

 「普通には、普通にさ。損が出なけりゃそれでいい。それより、
ラックスマン氏はアンハルト伯爵家とも繋がりの深い人物だから、
そんな人物に私は借りを作りたくないんだよ。きっと、やっかい
な事になるから」

 「いいじゃないですか、そんなに神経質にならなくても………
昔は昔、今は今ですよ」
 ラルフはすねたようにブラウン先生から視線を外すと、カレン
を探した。

 すると……

 彼女はその時、足を止めて、あるポスターの前で釘付けになっ
ていたのである。

 「お嬢様!」

 そこに張られていたのは新進気鋭の女性ピアニストの写真。
 フランソワーズ・シャルダンと書かれていた。


*******************(1)*****

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このブログについて

tutomukurakawa

Author:tutomukurakawa
子供時代の『お仕置き』をめぐる
エッセーや小説、もろもろの雑文
を置いておくために創りました。
他に適当な分野がないので、
「R18」に置いてはいますが、
扇情的な表現は苦手なので、
そのむきで期待される方には
がっかりなブログだと思います。

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