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女の子だって大変なんですから  

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当時よくやられていたお仕置きはお尻叩きと浣腸とお灸。男の子
と女の子で多少その扱いに違いがあるものの女の子だから免除と
いうものはなかった。
女の子もお尻を叩かれお灸を据えられ、お浣腸を我慢しなければ
お仕置きは終わらなかったのだ。取りたてて特別扱いはなかった
ように思うが強いて差があるとすれば女の子のお仕置きは非公開
が原則ということ。特に小学生でも高学年になると、親や教師も
男の子の目だけは気にしていたようだ。
実際十才を過ぎる頃になると女の子のお仕置きを目にする機会は
めっきり減ってしまった。そこで僕は、世間は女の子に甘いんだ
とばかり思っていたのだが、事実は逆で、むしろ、女の子の方が
お仕置きの機会が多くて、男の子以上にきついことをされること
だってたくさんあったのだ。
もちろんお仕置きと一括りにいっても、注意程度の軽いものから
それこそ折檻と呼べるような激しいものまで様々。太ももをつね
られたり、おやつを抜かれたりお小言だって必要以上に長ければ
それだって子どもにとっては立派なお仕置きなのだ。それを数に
加えると、むしろ女の子の方が大変だったように思う。
もちろんそんなもんは適当に受け流せばいいじゃないかとお思い
かもしれないが、男の子女の子に限らず虫の居所が悪い時という
のがあるわけで、そんな時は親や教師が期待する受け答えができ
ないことがある。時に相手を怒らせてしまうことだってあるのだ。
問題はこんなの時で、これが男の子なら仕方ないかですまされる
ことが、女の子だとこじれてしまうことが多くて、当然だけど、
きついお仕置きに発展してしまうことも。
こうなった時、実は女の子のお仕置きが男の子以上になるケース
が多いみたいだ。
ただ残念なことにこれを直接見る機会は男の子にはあまり無いの
だが、ただ、その子の妹あたりから情報は漏れ伝わりる。恐らく
口止めされていたんだろうが、元々おしゃべりは女の子の呼吸と
やら。おしゃべりできないのが苦しいみたいなので口を割らせる
と、これが事細かに説明してくれました。
そこで語られる内容は女の子特有の脚色はあるにせよ、えっそれ
本当!?って聞き返したくなるほどのものでした。
浣腸ありお灸ありスパンキングはもちろんのこと晒し者にされた
りお気に入りの服を焼かれたり、教科書までやかれちゃった子も
います。そのえげつなさは男の子以上。男の子の罰ってたいてい
お尻叩きだけですからその種類の多さには舌をまくほどだったの
です。

駿 と 由梨絵 の 物語 <第2話>

駿由梨絵物語

 < 第 2 話 >

 『毎日お尻を赤くして』という言葉を由梨絵が聞いていたわけ
ではないが、事実は保護者(伯爵)の言うとおりになった。

 その日の放課後。
 お仕置き台と呼ばれる園長室の机にうつ伏せになった由梨絵は
大きく両足を広げてパンツはすでに剥ぎ取られている。

 今、由梨絵のパンツは、鞭の痛みに驚いてよだれを垂らしても
机が汚れないように彼女の顎の下に敷いてある。

 先生がしっかり検査したから、どうやら汚れはないみたいだが、
自分の物とはいえ舐められるほどの至近距離にパンツがあるのは
由梨絵にとっても悲しかった。

 『恥ずかしいなあ、どうしてパンツまで脱がなきゃならないの
さあ』

 涼しいお尻が先生から丸見えなのは仕方がないとしても、両方
の太股までが開かれているから、今はその中までも丸見えなのだ。
 外の風が、スーっと女の子の大事な場所にまで入り込んで来て、
そのたびに背筋がゾクゾクっとする。

 「さあ、いきますよ」
 園長先生の声に再び背中がゾクゾク、頭がカーっと熱くなる。

 「ピシッ」

 そんな破滅的な緊張感のなか、最初の一撃がお尻に当たった。
 思わず、机の角を掴んでいた両手に力が入る。

 『うっ、痛あ~』
 涙が一滴。……でも、由梨絵は感傷に浸ってもいられなかった。

 「一つ、園長先生ありがとうございます」
 脳天まで達する痛みを堪えて、由梨絵は約束の言葉を口にする。

 ここでは園長先生からお仕置きの鞭をいただく時、数を数え、
一回ごとに『園長先生、ありがとうございます』とお礼を述べる
しきたりになっていたのだ。

 先生の持っている鞭はゴム製のパドル。
 相手が小学生の女の子ということもあって威力のある鞭は使わ
ない。しかもそんなに力いっぱい振り下ろしているわけでもない。
 ただ、大人の目からはママゴト遊びのようにさえ見える光景も
……

 「ごめんなさい、もうしません。ごめんなさい。もうしないで」

 二回目が振り下ろされるのを感じて由梨絵は慌てて懺悔した。
 たった1回ぶたれただけですでにべそをかいているのだ。

 こんな恥ずかしい格好で普段は優しい園長先生にぶたれている。
 もうそれだけで、女の子には泣くのに十分な理由があったのだ。

 ただ、お仕置きはお仕置き。一旦始めると園長先生も簡単には
妥協してくれない。

 「ほらほら、まだ11回も残ってるじゃないの。パンツを穿き
たかったら、さっさと泣き止みなさい。お臍の下が風邪ひくわよ」
 園長先生からの冷たい返事が返って来る。

 「はい……ごめんなさい」
 由梨絵は、か細い声でそれだけ。もうそれが精一杯だった。

 「さあ、いつまで泣いてるの。あなたがどんなに泣いてみても
約束が果たされるまでこのお仕置きは終わりにはなりませんよ。
お約束は12回ですよね。きっちり守ってもらいます」

 こんな時、園長先生はどんなに時間がかかっても、生徒が泣き
止むのを待ってからでないと、次の鞭を与えない。それは、罰を
受ける子が、今なぜ罰を受けているのかを理解しないままでは、
懲戒としての意味がないからだった。

 お仕置きの鞭は、喧嘩やリンチではないから、単に叩けばよい
のではない。子供を自分の犯した罪と向き合わせ、これがその為
の報いなんだということをしっかり頭の中でリンクさせる必要が
あったのである。

 「まだ鞭に慣れていないあなたにはちょっぴり可哀想だけど、
これも神様から与えられた試練だと思って頑張りなさい。いい、
女の子は何事にも耐えることで強くなるの」

 「はい、先生」
 由梨絵は蚊のなくような声で答える。

 「今は苦しいかもしれないけど乗り越えられない試練はないわ。
何よりここは神様から祝福された愛の園だもの。あなたに悪意を
持つ人なんてここには誰もいないのよ。この鞭だって、しっかり
耐えれば、その先にはきっと良いことが待ってるから……さあ、
頑張りましょう。いいですね」

 「…………」
 由梨絵は何か答えたかったのかもしれないが、今は鼻をすする
音だけがする。

 「女の子はね、男の子のように爆発的な力が発揮できないぶん、
どんな時も根気と我慢が大事なの。我慢で幸せを掴むの。だから、
我慢できない子は幸せにもなれないわ」

 先生に励まされ、由梨絵は鼻をすするのをやめて気を取り直す。

 こうして、やっと二つ目がやってくるのだった。

 「ピシッ」

 「ひぃ~~~」
 本当は上げてはいけない悲鳴。でも、由梨絵にしてみるとどう
しようもなかった。声になってしまうのだ。

 「二つ、園長先生ありがとうございます」

 「由梨絵ちゃん、我慢、我慢、我慢しなくちゃ……」
 園長先生の声は優しかったが、体中が小さく震える由梨絵に、
その優しい声が聞こえただろうか。

 「非力な女の子が自分の力で道を切り開くというのは、とても
とても大変なことなの。だから与えられた場所で一所懸命働いて、
そこを幸せな場所に変えていかなくちゃ。女の子にとってはそれ
が幸せの近道よ。でもその為には我慢、我慢、我慢しかないわね。
とにかく我慢を覚えなきゃ女の子は一人前になれないわ……さあ、
次ぎいきますよ。どう?落ち着いたかしら?」

 「…………」
 由梨絵は僅かに首を縦にする。

 「そう……だったら、次、いくわよ。歯を喰いしばって……」

 「ピシッ」

 「ひぃ~~~」
 三つ目。鞭に慣れない由梨絵にとっては一番痛みを感じる頃だ。

 「私、我慢なんかしたくない!!特待生にもなりたくない!!」
 由梨絵は思わず本音を口にするが……

 「だめよ、なりたくないと言っても、もう特待生になってるの。
今さら後戻りはできないわ。さっきも言ったでしょう。女の子は、
与えられた場所で努力するしかないの。我儘を言ったからって、
決して幸せにはならないものなのよ。……さあ、さあ、ちゃんと
数を数えて」

 「三つ、園長先生ありがとうございます」

 「よろしい、じゃあ、次ぎいきますよ。歯を喰いしばりなさい」

 「ピシッ」

 「いやあ~~~」
 思わず叫び声を上げる由梨絵。
 本当は規則違反だが、これが給費生として最初のお仕置きだと
いうこともあって園長先生からも大目に見てもらえたみたいだ。

 「四つ……」
 由梨絵は嗚咽し一つ鼻をすすってから続ける。
 「……園長先生ありがとうございます」

 「ピシッ」

 あとはもうただただ涙声だった。

 「五つ、園長先生ありがとうございます」

 園長先生が振るっているゴム製パドルというのは、その大半が
女の子や幼い子のためのもので、大きな音はするものの、大人に
叩かれてもそれほど酷い痛みにはならない。
 この鞭、慣れれば小学生でも耐えられる程度だった。もちろん、
何度かここへ来て、この鞭に慣れていればの話だが……

 先生の側にしても、失神するほど強い鞭ではお説教が頭に入ら
なくなるから困るのだ。
 なのに由梨絵が大仰に反応しているのは、彼女が人一倍怖がり
で臆病な性格だから。
 決して園長先生が由梨絵に特別残酷なことをしているわけでは
なかった。

 「ピシッ」

 「………………」
 必死に机にしがみ付く由梨絵。

 でも、もう悲鳴は上げなくなった。
 臆病な由梨絵もさすがに痛みに慣れてきたのである。

 勿論、こんな鞭でも本気でぶっていれば回数と共に痛みは増す。
でも、ここではそうはならなかった。ということは、園長先生の
鞭は、慣れることのできる程度の痛みということのようだ。

 「六つ、園長先生ありがとうございます」

 「ピシッ」

 「……『私は世界一不幸な少女だわ』…………」
 鞭の痛みに慣れてきた由梨絵は心の中で悲劇のヒロインを演じ
始める。女の子がよくやる夢想劇。そうやって、今ある現実から
心を逃避させ、鞭の痛みを少しでも紛らわせようとする常套手段
だ。

 すると、そんな事は百も承知の園長先生。今度は頃合いを見計
らい、由梨絵のお尻を軽く触れてチェックする。

 冷たく濡れた指が火照ったお尻に触れると、そのとたん……
 「冷たい!!」
 思わず由梨絵が叫んだ。

 氷水で冷やされた園長先生の指が触れたのだ。
 これで驚かない子はいなかった。
 由梨絵も、たちまち厳しい現実へと引き戻される。

 「はい、由梨絵ちゃん。オネンネしないの。今は反省の時間よ。
反省してちょうだい。先生のお尻叩きは『ただ寝そべっていれば
そのうち終わるでしょう』じゃないの。ちゃんと心を込めて一つ
一つのお鞭の痛みを受け止めなきゃお仕置きの意味がないわね。
いいこと、いいかげんな態度でいる子には鞭の数を増やしますよ」

 園長先生は百戦錬磨。うつ伏せになった由梨絵のちょっとした
心の変化も敏感に感じ取ることができるのだ。

 「ごめんなさい、先生」

 「一つ、一つ心を込めて、ごめんなさいって気持でお鞭を受け
なきゃいけないの。特に女の子はそうしたごめんなさいの気持が
大事なのよ」

 「はい……」
 由梨絵は力なく答えるのだが、それが精一杯だった。

 「……はい、それじゃあ心を込めてもう一度『七つ、園長先生
ありがとうございます』からよ」

 「七つ、園長先生ありがとうございます」

 「ピシッ」

 「……『こんな処にいられないわよ。今夜、逃げ出そう』……」
 その瞬間、由梨絵は衝動的に家出を決意するが……

 「八つ、園長先生ありがとうございます」

 でも、それも実行できなかった。
 だって、物心ついてからずっと、おじ様のお家とこの学校しか
世間を知らない由梨絵。逃げだすとして、いったいどこに逃げる
のか、そこで何をするのか、辛いから逃げ出したいというだけで
今の彼女には何一つあてなどなかったのである。

 「ピシッ」

 「……『今日はお家に帰りたくない』……」
 家に帰れば、学校でぶたれたお尻をおじ様に見せなければなら
ない。それがおじ様とのお約束だった。

 「九つ、園長先生ありがとうございます」

 「ピシッ」

 「……『お家で、おじ様も怒ってるのかなあ』……」

 「十、園長先生ありがとうございます」

 「ピシッ」

 「……『まさか、お家でもお仕置き?嘘だよ、そんなのないよ』……」

 「十一、園長先生ありがとうございます」

 「ピシッ」

 「…………『今日の夕ご飯、何かなあ~』………」

 「十二、園長先生ありがとうございます」

 「はい、おしまい。よく頑張ったわ。……前にも言ったように
女の子は我慢が大事。これもよい訓練になったはずよ」

 由梨絵のお仕置きは園長先生のねぎらいの言葉で終わる。
 お尻はすでに真っ赤。まるで熟れたリンゴみたいだけど、でも、
とにかく最後まで耐えられて、ほっと一息だったのだ。

 ただ、これで由梨絵へのお仕置きがこれで完全に終わったわけ
でない。
 お仕置き台を降りた由梨絵は、園長先生の前に立つとパンツを
脱いだ姿で表と裏を丁寧にチェックされる。
 これは罰ではないかもしれないが、女の子にとってはまた別の
意味で辛い試練だった。

 検査されるのは真っ赤になったお尻やビーナス丘と呼ばれお臍
の下の割れ目。
 これが終わると、再び机の上に仰向けになって両足を高くあげ
なければならない。

 その筋の言葉でいう『ご開帳』というやつだ。

 「恥ずかしい?でも、ちょっとだけ我慢してね」

 園長先生は由梨絵の太股を広げると、その指を大淫唇にかけて
押し開く。普段なら誰にも見せない由梨絵の秘密がいとも簡単に
あらわになっていく。
 『女性だから……』『園長先生だから……』由梨絵はそう思う
しかなかった。

 「まあ、綺麗ね。……最近はここを悪戯する子が増えてるけど、
あなたの場合は悪戯による皺の乱れも色素沈着もないみたいだし、
これなら何の問題もないわ。きっとお父様がちゃんと躾てられる
のね」

 「お父様じゃありません。おじ様です」

 突然のダメ出しに園長先生は苦笑する。
 「そうそう、あなたの場合はおじ様ね。ごめんなさい。でも、
あなたのおじ様はあなたを実の娘と同じように愛されてるのよ。
この綺麗な女の子が、何よりの証拠だわ。女の子って、他人から
見られる処にだけは気を使うけど、こうして見えない処は無頓着。
誰かが注意してあげないと何もしないだらしのない子が多いわ。
実をいうと、こういうところでその子の育ちが分かるものなの。
……でも、あなたは合格。おじ様に感謝しなきゃいけないわ」

 お仕置きのあとは発育検査も兼ねていたのだ。

 「はい、おしまい。次回のテストはもう少し頑張りましょうね。
……もう、パンツを穿いていいわよ」
 園長先生からのお仕置きが、これでやっと終わった。

 園長先生は教育者としてよいことをしたと満面の笑みだったが、
由梨絵にしたら、こうした受難が毎日のように降りかかるのかと
思うと、そりゃあ暗澹たる思いだったのである。

 由梨絵は、もともと学業も中位。悪戯も人並みするし、女の子
らしい嘘だってつく、そのあたりごく普通の少女だった。決して
ほかの子の模範になるような品行方正の生徒という訳ではないの
だが、それが、いきなり給費生となって、彼女自身、世間の風が
急に強く吹き始めたと感じていたのである。

 とりわけ大変だったのは学業だった。

 もともと中くらいの成績でしかなかった子が、次の学期末まで
には上位一割の中にいなければならないというのだから、困った
ものである。

 「そんなの無理!!絶対に無理!!」
 由梨絵は何度も伯爵に懇願したが……

 「無理、無理って、やってみなければわからないじゃないか」
 と、聞き入れてもらえなかった。

 当然、勉強時間は増え、家での自由時間は減らされる。勿論、
頑張ってはいるが、もし、学校でのテストが90点以下ならば、
放課後は園長先生の部屋へ行き、今日のような『励ましの鞭』を
受けなければらない。

 ちなみに、これが一般生徒のだったら励ましの鞭は80点以下。
 ここでも給費生はやはり特別だったのである。

駿 と 由梨絵 の物語

    駿由梨絵物語

 < 第 1 回 >

 由梨絵は現在11歳、肩まで伸びた真っ黒なストレートヘアに
細く白い首筋、高すぎない鼻筋やふっくらほっぺが子どもらしく
愛くるしい顔をしている。わずかに膨らみかけた胸を覆っている
ジャンパースカートの裾を翻しながら、その日も長い廊下をスキ
ップしながらやって来る。それははた目にも快活な彼女の個性を
感じさせて清々しかった。

 「おじさま、何かご用?」
 由梨絵はいきなり分厚い木製ドアを押し開く。
 どうやら書斎に入る時、ノックは普段から不要のようだ。

 「おう、由梨絵か……」

 安藤伯爵は書棚から取り出した大判の書籍を立ち読みしていた
が、大きな鼈甲めがねをおでこに押し上げたままその瞳が明るい
声の方を向いた。

 「学校は終わったのかい?」

 「終わった。宿題も全部すんだよ」

 「それは凄いな、いつもそんな風にきちんとした生活態度なら
いつでも特待生になれるな」

 「無理よ、私がそんなの……私ってそんなに頭なんてよくない
もの」

 「そんなことはないさ。私の娘ならきっと学業も優秀なはずだ
よ」

 「えっ……」
 由梨絵は思わず絶句した。

 
由梨絵は伯爵の娘ではない。彼女との歳の差を思えば伯爵は祖父
に当たるかもしれない。いや、この二人、そもそも血縁者ですら
ないのだ。もちろんそんなことは、当人同士にあっては百も承知
していることだったから、普段は、『由梨絵』『おじ様』と呼び合
っていた。

 「座りなさい」
 伯爵は幼い娘に一人用ソファを勧めるが……。

 「いいわ、いらない。私、立ってるから……」

 「いいから、座りなさい。そうやって落ち着かない動きをして
いたら、まるでオシッコを我慢しているみたいで、こちらが落ち
着かないんだよ。

 「はい」
 由梨絵はその椅子にお尻からポンと弾むように腰を下ろした。

 一方、伯爵は読みかけの本を年季の入った本棚に戻すと……
 「さてっと……」
 由梨絵とは向かい合わせになる二人用のソファに、ゆっくりと
腰を下ろした。

 そこで銀の煙草入れから細身の洋もくを取り出して火をつけ、
それを一服二服くゆらせてから口を開いた。
 その間は彼は何も言わなかったのである。

 そして、

 「君はいつから、私の娘になったんだい?」

 「えっ……」
 その言葉は由梨絵の胸に衝き刺さる。
 それだけ言われただけで彼女には思い当たる節があったのだ。

 「別に、私はおじさまの娘というわけでは……」
 心苦しそうに弁明すると……。

 「そうなのか?……実は、今日、園長先生から『理事長先生は
制服の変更をお考えなのですか?』って質問されたよ」

 「…………」
 由梨絵は口を閉ざす。本当は何か言いたかったが、何を言って
も自分に不利になりそうで言葉にならなかったのだ。

 「僕は知らなかったよ。学校で君は僕の娘として見られている
みたいだね」

 「それは……」
 由梨絵は思わず顔を床に向けてしまう。

 「今さら、話すことでもないけど、君は僕の娘ではないんだ。
旅の途中、飯田という場所で身重の女性が苦しんでいたのを病院
に運んだのがきっかけで連れていた君を引き取ることになった。
恐らくは君のお母さんと妹になっただろう赤ちゃんは亡くなって
しまったけど、なついていた君を街の施設に入れるのは心苦しく
て……それでここに引き取ったんだ」

 「は……はい」
 由梨絵の返事は歯切れが悪い。
 彼女は何がどうなっているのかを理解してしまったようだった。

 「僕は君があまりに可愛いもんだから、本当の娘のようにあれ
もこれもと世話をやいてきた。でも、もし、本当のお父さんなり
血縁の方がここへ現れたら、君を引き渡さなきゃならないからね。
それで、あえて養女にもしなかったんだが、正式に僕の娘になり
たいのかね?」

 「………………」
 由梨絵はこの時はっきり言わなかったが、心の中の答えは常に
イエスだった。

 「君は、学校ではお友だちに僕をお父さんと紹介してるみたい
だね。……だったら、君は理事長の娘というわけだ。……そこで、
お友だちに頼まれた。お父さんを説得して、今の古臭い制服を、
もっと……そのなんだ……君たちの言葉言うところの………何て
いったか……そうそう、イケてるデザインにして欲しいって……」

 「それは……別に……私が、そう言ったわけじゃないけど……
そういう事になっちゃって……」
 由梨絵は顔を真っ赤にして答えた。

 「ま、無理もないか、現に君は僕の家から通ってるわけだから。
だけど、嘘はよくないな。そんなこと吹聴してると今度はもっと
困難なことを、アレもしてこれもやって欲しいって頼まれちゃう
よ」

 「……私は……別に、嘘なんかつくつもりは……」

 「でも、君が否定しなければ、嘘が嘘のまま独り歩きしちゃう
だろう?」

 「……はい」

 「そこでだ、園長先生に頼んで、これからは君のことを給費生
として扱うことにしたんだ」

 「キュウヒセイ?……」
 由梨絵は、使い慣れないその言葉に戸惑ったが……

 「君のクラスでは聡子ちゃんが、たしかそうじゃないか?」
 おじ様の言葉で意味が通じた。

 「えっ!!!給費生って特待生のことなの?」
 由梨絵は驚き、身体が硬直し、目が点になった。

 「そうだよ。昔はそう呼んでた。いいだろう。学費は免除され
てるし、日常生活に必要な物は何でも支給されるから、生活にも
困らない。お小遣いもちゃんと出るんだから気がねなしに使える。
何より、理事長の娘が給費生なわけないから、みんなに嘘をつか
ずにすむしね」

 伯爵はすました顔であっさりと言いのけたが、それは給費生に
おける陽の当たる部分だけのこと。実際の生活がとっても大変な
ことは小学生の由梨絵にもわかっていた。

 給費生というのは、家が貧しいけど学業が優秀なために学校が
学費免除で受け入れた生徒のことで、学費のほか学園生活で必要
な必要最小限の物は何でも支給してもらえる結構な立場ではある
のだが、その代わり、いわば学校の広告塔として模範生でいなけ
ればならなかった。

 学業は成績上位の一割以内。これ以下になると退学させられる
規則になっている。それだけでない。素行や品性でも他の生徒の
模範になるように求められていたから、もし規則違反をして罰を
受ける時は一般の生徒の二倍三倍の罰を受けることがよくあった。

 おまけに、一般の生徒からは、あの子だけ優遇されてるという
やっかみや自分たちとは育ちが違うといった特権意識もあって、
よく虐めの対象にもなるから、居心地の悪さを感じる子も少なく
なかったのである。

 『茨の学園生活』
 頭にそんな言葉が浮かぶ。自分がそんな立場になっちゃう。
 これは由梨絵にしてみたら大変なショックだった。
 だから、恐る恐る伯爵にこう尋ねてみた。

 「これ、お仕置きなの?」

 すると、その不安そうな顔が気になったのだろう。伯爵は笑顔
で由梨絵を抱き上げる。
 「いいや、そうじゃないよ。生活はこれまでと変わらないよ。
お前は今まで通りここで生活していくし、今まで通り私に甘えて
いいんだよ。私もお前に不満は何もないもの。ただ、君が私の事
を誤解してはいけないと思ったからそうするだけさ」

 由梨絵はしばらく伯爵の膝の上で抱かれた。
 愛撫だった。

 でもそれは幼い頃からずっと毎日やってきたことと同じこと。
 伯爵はこれまで由梨絵を実の娘のように育ててきたから食事も
お風呂も音楽会やピクニックもすべて一緒の生活を送ってきた。
つまり由梨絵は娘同様だったのだ。

 だから『給費生になれ』だなんて由梨絵にとっては少なからず
ショックだったに違いない。

 そのショックをいくらか癒してもらってから部屋をでた由梨絵
だったが、その顔は来た時とは違ってうな垂れていたのである。

 さて、そんな由梨絵に代わって、今度は執事の牧田さんが伯爵
の書斎に入ってきた。

 「手続きは済んだか?」

 「はい、完了しました。でも、よろしいのですか」

 「何がだ?」

 「いえ、私はてっきり由梨絵お嬢様を養女になさるのかと……」

 「どうしてだ?ま、どうなるか分からんが今でもそのつもりだ
よ」

 「ならば何も特待生などになさらなくても……特待生ともなり
ますと、色々と……」

 「何だ、そのことか」
 伯爵はソファに腰を下ろして含み笑いをすると……
 「ただな、それならそれで由梨絵が私の家にふさわしい女性に
なってらなければならない。爵位はなくなっても六百年続く我が
家の一員になるのだから……しかし、あの子は特殊な事情で引き
取ったからそんな訓練をこれまで一度もしてこなかった。だから、
今回はその試練のようなものさ」

 「さようですか。それで安心いたしました」

 「安心したかね。お前はあの子が好きなようだな」

 「はい。由梨絵様がそばにいると心が和みます」

 「もともと不憫だから一時的に引き取ったが確かに優しい子だ。
顔がいいわけでもなく学業もスポーツもそこそこだが、あの子が
いると心が乾かない。だから私だって養女にとも思っているんだ。
ただし、これといって才能のない者は努力がいる」

 「たしかに……若い時の苦労は買ってでも、と申しますから」

 「そうだな。男の子ならもう少したってから鍛え始めるのだが、
女の子は成長が早い。むしろ、今が鍛え時なのだ。毎日のように
お尻を赤くして暮らすのも振り返ればいい思い出になるさ」

 伯爵は年代ものの赤ワインをグラスで一口。
 それは可愛い娘への祝杯だった。

Appendix

このブログについて

tutomukurakawa

Author:tutomukurakawa
子供時代の『お仕置き』をめぐる
エッセーや小説、もろもろの雑文
を置いておくために創りました。
他に適当な分野がないので、
「R18」に置いてはいますが、
扇情的な表現は苦手なので、
そのむきで期待される方には
がっかりなブログだと思います。

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