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「お菓子の家」編 ~1~

♔♕♖♗♘♙♚ 「お菓子の家」編 ~1~ ♔♕♖♗♘♙♚

 アンナはグリムの森にお母さんと住んでいました。今年11歳に
なる女の子はとても活発で勇気があります。ですから、森の動物や
精霊たちからはとても人気があったのですが、まともな……いえ、
自分たちを『まともな人種』と信じる大人たちにとってはちょっと
困ったちゃんでもありました。

 昨日も牧師様の処へ行って教会や牧師館のお掃除をお手伝いした
まではよかったのですが感動した牧師様が何でも部屋にある好きな
物を一つだけあげようというから、小さなマリア様の像をいただく
ことにしました。

 ところが、疲れたアンナはそれをお股の中に入れたまま牧師様の
ベッドでお昼寝してしまいます。

 夕方になり牧師様がアンナを起こそうとシーツを払いのけると…

 「!!!」

 そこには、マリア様の像を自分のお股の中に差し入れて爆睡する
アンナの姿が……

 牧師様は卒倒しかけましたが、冷静になってアンナにわけを尋ね
ます。
 すると…

 「だって、いつも抱いてる熊のピーちゃん(ぬいぐるみ)抱くと
両手が塞がっちゃうでしょう。仕方がなかったのよ」
 という答え。

 「だったらベッドから出せば良いじゃないか!?」
 と言うと…

 「だって牧師様の気が変わって『返せ!』なんて言われたら嫌だ
もん』パンツの中の方が安全だわ」
 アンナはあっけらかんとして答えます。彼女、アクティブで物怖
じしない処は良いのですが、頭はちょっと回らない子でした。

 結局アンナは先週脱いだばかりのAという刺繍の入った赤い頭巾
を再び被らなければなりませんでした。

 「あなた、また、牧師様からお仕置きを受けたの?」
 赤いずきんを被って帰宅したアンナにママは呆れて尋ねます。

 「ん?……うん、一週間だって」
 「こんどは何をやらかしたの?」
 しかし、その理由を聞いた時にはあまりにバカバカしくてもう声
にもなりませんでした。

 こんな按配でアンナはいつもAが刺繍された赤いずきんを被って
います。おかげで、みんなから『あかずきんちゃん』『あかずきん
ちゃん』と呼ばれるようになっていたのでした。

 次の日、あかずきんちゃんはママにお使いを頼まれます。
 「おばあちゃんのお家にこのビスケットを届けてちょうだい」

 「え~~~いやだあ~~~だって、あんな処まで行ったら帰って
来るまで一週間もかかるじゃない。今日は、マーガレットとお花を
積みに行く約束があるし、明日は妖精さんたちのパーティーにおよ
ばれされてるのよ。明々後日は王女様の誕生会。ものすごく沢山の
ご馳走が出るんだから」

 口を尖らせて抗議するアンナにママは…
 「何言ってるの。おばあちゃんは今、風邪をこじらせてベッドで
寝込んでるの。あなたに会いたがってるわ。……だいいち、あなた、
そのずきんを被っておよばれに行くつもりじゃないでしょうね」

 「だって、しょうがないじゃない。牧師様が一週間はこれを脱い
じゃいけないって…牧師様が悪いのよ」

 「何言ってるの、あなたが悪いんでしょう。ママはそんな恥ずか
しい子をパーティーに出すつもりはありませんからね。今回はおば
あちゃんの処へいってらっしゃい」

 「いやよ。だいたい、みんなだってそうよ。私の赤ずきん姿なん
てもう見慣れちゃってるわ」

 「あっ、そう。どうしてもいやなら、たっぷりお仕置きをしてあ
げるから、その後ここを出て行きなさい。お言いつけを守らない娘
なんてママの子じゃないからどこへでも行っちゃいなさい。そうだ、
おばあちゃんの家の近くに住むオオカミさんから、私、頼まれてた
わ。養女になる子を探して欲しいんだって………ちょうどいいわ。
あなたならあげてもいいわね」

 『(何言ってるのよ)』
 赤ずきんちゃんはママを睨みました。
 『どうせまた脅かしに決まってるわ』
 そうは思うのですが確たる自信もありません。11歳のアンナは
まだ純真な子供でしたからママの指示には逆らえませんでした。

 結局、ビスケットを一杯に詰めたバスケットを持って森の中へと
入っていきます。

 「えっ!何よこれ、ママの嘘つき。おばあちゃんにビスケットを
届けるだけじゃないじゃないの。まだこんなにたくさんのご用があ
るんじゃないの」

 赤ずきんちゃんはママからのメモを見て愕然とします。そこには
……
 『(追伸)それから魔法使いのお婆さんの家に寄っておばあさん
が修理をたのんでおいた箒を受け取って欲しいの。それから七人の
コビトさんの家によって、あなたの誕生日ケーキを注文してきてね。
大きさやデザインなんかはあなたが決めていいわよ。そうそうそれ
と、お義姉様のお城へ行って王女様、つまりあなたから見れば従兄
弟ね。その子たちをお仕置きなさるそうだからそれを見届けて来て
欲しいの。土曜日の午後っていうから、時間厳守で行ってよ』

 「何よ、お義姉様のお城ってシンデレラ城のことでしょう。だい
たい、シンデレラ王妃様とママが義姉妹ってのが信じられないわ」
 ぶつくさ言いながら赤ずきんちゃんは森の中を歩きます。普通、
人間社会では幼い子は森に入っちゃいけないというのがごく自然な
ルールでした。もし暗い森の中で道に迷ったら出てこれないからで
す。ですが、このグリムの森では赤い靴を履いている限り道に迷う
ことはありません。この靴さえ履いていればその子の意思とは関係
なしに勝手に足が動いて目的地まで連れて行ってくれるのでした。

 「げっ!!!」
 赤ずきんちゃんはメモの最後を見てさらにショックを受けます。
そこにはおばあちゃんの家へ行く前にイバラ姫様のお城へ立ち寄り
なさいと書いてあったのです。

 イバラ姫様は赤ずきんちゃんの大叔母さんにあたる人なんです
が、ここへ行く時は決まってお仕置きをもらいに行く時なんです。
大叔母さんは子供へのお仕置きが大好きで自分の子供たちだけで
は飽きたらず、近所の子供たちまでその母親に代わってお仕置き
するような……そんな人なのです。

 でも、今ではそんな評判が広がって、国の内外から母親たちが
泣き叫ぶ子供の手を引いてこの城へとやってくるようになっていま
した。

 「嫌だよ、あんな処。ママったら、私をだましたのね。まったく
あの女、陰険なんだから」

 赤ずきんちゃんはぼやきながら慌てて赤い靴を脱ごうとします
が、時すでに遅し。この靴は一旦履くと目的地に着くまでは決して
脱げない仕組みになっていました。

 「え~~~どうして脱げないのよお~~~」

 諦めた赤ずきんちゃんは一旦は歩みを止めてバックしようとしま
したが……

 「……どうして足を後ろにを向けられないのσ(`´メ∂」
 赤ずきんちゃんの靴は前へはすんなり進むのですが、踵を返して
バックしようとしてすると、靴が急に重くなって動かなくなるので
す。

 「ダメかあ~~」
 諦めるしかありませんでした。

 「何よ、もうこうなったら、絶対この場所を動かないからね。
だいたいどうして私の方からお仕置きされに出向かなきゃならない
のよ。変よ、絶対に変よ」
 赤ずきんちゃん、ストライキです。

 でも、それも無駄でした。
 「……あっ、やめてえ、~~~痛い、痛い、痛い痛いんだから」

 あまり長時間その場に留まっていると、どこからともなく柳の枝
をくわえたツバメが急降下してきて……

 「ピシッ」

 「痛い!」
 赤ずきんちゃんのお尻を鞭打ちます。

 「いやあん、やめてえ~~」
 どんなに逃げてもツバメは赤ずきんちゃんのお尻を正確に捉え続
けます。
 ですから、赤ずきんちゃん、もうこうなったらママのメモ通りに
森の道を進むしかありませんでした。


***************** <つづく> *****

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tutomukurakawa

Author:tutomukurakawa
子供時代の『お仕置き』をめぐる
エッセーや小説、もろもろの雑文
を置いておくために創りました。
他に適当な分野がないので、
「R18」に置いてはいますが、
扇情的な表現は苦手なので、
そのむきで期待される方には
がっかりなブログだと思います。

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