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第2回

❅❅❅❅❅❅<< 兼 平 啓 介 >>編❅❅❅❅❅❅

***②************************

 「こんにちは」
 軽い挨拶をしてきたのは女の子の父親の方だった。目があった
から仕方がないという事でもあろうか、しかし、その表情に悪び
れた様子はない。

 「こんにちは。いや、ちょっと通りがかったんですがお嬢さん、
大変ですね」

 むしろ私の方がばつが悪そうに答える。何だかいけないものを
覗き見してしまった、そんな雰囲気になってしまうのだ。
 特に昨今はこんな体罰が他人の目にふれられる処で行われるの
は希だからなおのことだ。

 「ここではあまりお見かけしませんけど……ひょっとして……
兼平先生ですか?」
 いきなり自分の名前を呼ばれて背筋に冷たいものが走った。

 「……」

 「違ったらごめんなさい。テレビでお見かけした兼平啓介先生
にどことなく似ておいでだったものですから」

 「……」
 私は凍り付いたままの笑顔で応じる。もとより、一般の人から
先生などと呼ばれる身分ではない。ただ以前に数回テレビ番組に
呼ばれて「子供の体罰有用論」などというのをぶってしまった事
があり、どうやら、彼はそれで覚えていたようだった。

 「そう言えば、安藤さんが今度有名人を雇い入れるかも…なん
て言ってましたけど、ひょっとして先生のことですかねえ?」

 「そこはピノチオって言いますか?」
 「ええ、安藤さんの哲学でしてね。『子供はみんなピノチオ。
怠け者で恩知らずな小心者』って言うのが彼の口癖なんです。…
…それで、ご自分が引き継いだ小学校も『ピノチオ小学校』って
改名なさったんですよ」

 「そうですか。では、ひょっとしたらそうなのかも知れません
ね。私は…べつに有名人じゃありませんけど」

 「ご謙遜、ご謙遜。先生は私たちの世界では充分有名人ですよ。
ほら、ブログなんかもけっこう人気があるじゃありませんか」

 「そうですか、アクセスしてくれる人がそんなに多いとも思い
ませんが……」

 「そんなことありませんよ。先生のお仕置き体験談やロマンチ
ックな小説を、私いつも読ませて戴いてます。今はこんな時代で、
我々は肩身が狭いですけど、決して間違ったことをしているとは
思ってませんから」

 「ここには子供のお仕置きを肯定するような人が多いんですか」

 「ええ」含み笑顔でお仕置き中の娘をちらりと眺めてから……
というより、多くの人がそのためにここへ引っ越してきたと言っ
た方がいいかもしれませんね」

 父親はそれまで母親に任せていた娘の乗馬を手伝いに行く。

 少女は裸にはなっているが年齢を考えるとそれほど深刻な罰に
は思えなかった。ところが、このあと父親がびっくりするような
事を娘に命じたのである。

 「おしっこをしなさい。やりたいんだろう。いつまで我慢して
いてもおトイレは許してはあげないよ」

 「えっ!」
 私は、はしなくも思わず内心の喜びを押さえきれず顔の表情が
緩んでしまった。

 たしかに、気がつけば彼女はそれらしい素振りでいる。
 まだ赤ちゃんに毛の生えた程度とはいえそこは女の子だから、
やはり私の存在が気になるのだろう。親ならいざ知らず他人には
そんな姿は見せられないといった様子だったのだ。

 「どうしたんだい、おしっこできないのかい」
 少し強い調子で父親に言われて幼い顔が動揺しているのがわか
る。

 「ここでオシッコさせるんですか?」
 「ええ、我が家のお仕置きなんです。軽くお浣腸してますから、
もうそろそろ我慢できなくなるとおもうんですが、この子はなか
なか強情で……」

 「厳しいですね、何をやったんですか?」

 私の問いに上品そうな母親が答えた。
 「学校でテストの時間にお友だちとおしゃべりしてたんで先生
に注意されたのに途中でふてくされてしまって………連絡帳にも
お仕置きしてくださいって書いてあったものですから……」
 
 「こんなお仕置きはよくあるんですか?」

 「あまり大きくなった子にはしませんけど、この村のエリア内
だけでなら中一までは素っ裸で庭に出してもいいことになってる
んです。学校でも同じ罰がありますから」

 「そりゃあ大変だ」
 私はのけぞりそうになって答える。

 「ここは変質者のたぐいは入り込みませんからね、心おきなく
羞恥罰が可能なんです。広場や公園に行くとたいてい一人や二人
お仕置きで晒し台に捕まってる子がいますよ」

 「さらし…台…ですか……」

 「ええ、ピロリーという、首と手首を二枚の板に挟ませるやつ
です。よくヨーロッパ中世の刑具として図鑑に載ってますよ」
 父親は少しおどけて挟まれている姿を再現して見せた。

 「ああ、分かります」
 私も同じように真似てみた。

 「そう、それ。ここでは子供のお仕置き用にとして学校や公園、
図書館なんかにも設置してあるんです」

 「親が使うんですか?」

 「もちろんそうしたケースが多いですが、子供の躾というのは
村全体の問題ですからその子の親でなくとも悪いことをしている
子どもを見つけたら誰でもその台を使うことができるんです」

 「効果がありますか?」
 「もちろん、もちろん。特に女の子には羞恥罰というのが一番
効果がありますからね。どの親御さんもそこは躊躇しないんです」

 「でも、中には『見苦しい』なんて方もいらっしゃるじゃあり
ませんか?」

 「ここでは子どもへのお仕置きや折檻でご近所とのトラブルに
なることはまずありません。他人の子をお仕置きできると言って
も、あくまで子どもを愛していることが絶対の条件ですから……
そこを踏みはず事はないんです」

 「入村条件みたいなものがあるんですか?」

 「一律にこの条件をクリアすればというのはありませんけど、
そのあたりは村長さんの判断にみんな任せてあります」

 「伯爵さんのことですね」

 「伯爵の眼力は確かですよ。おかげで、みなさん信用できる方
たちばかりなんです。何よりここに暮らす人たちはお互い生まれ
育ちや教養が似通ってますから、その意味でもここは過ごしやす
いんです」

 『私を雇いたい』だなんて酔狂なことを言っているから変だな
とは思っていたが、どうやら狙いはこのあたりにあるようで……
正直、うれしさ半分ながら私の心はこの時はまだ困惑していた。

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このブログについて

tutomukurakawa

Author:tutomukurakawa
子供時代の『お仕置き』をめぐる
エッセーや小説、もろもろの雑文
を置いておくために創りました。
他に適当な分野がないので、
「R18」に置いてはいますが、
扇情的な表現は苦手なので、
そのむきで期待される方には
がっかりなブログだと思います。

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