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思い出の形・愛の形 

<コメント>
 相変わらず、『子供の話』です。
 いつまでたっても大人になのきれないので、
 普段はこんな話ばかりかいているのです。

**********************


         思い出の形・愛の形


                        K.Mikami
< 前編 >

 もう今から三十年余りも前のことです。もともと一人旅が好き
だった私は小学校三年生の時初めてブルトレに乗って花の東京へ
やってきました。

 受入先は伯母の家。書道大会への出場という大義名分も、一応、
あるにはありましたが、主な目的は東京見物。いつもガミガミと
口うるさい母親から逃れてルンルン気分でした。東京タワーに、
地下鉄、後楽園遊園地や山の手線。特に地下鉄や山の手線は感激
しました。田舎には地下を走る鉄道も環状線もありませんから。
 山手線などは、伯母に無理を言って一周回ってもらったほどで
した。とにかく、見るもの聞くものすべてが興奮の連続だったの
を覚えています。

 来て数日は毎日がサンデー。毎日がパラダイスのばら色の日々
でした。ところが、それが次第に気詰まりを覚えるようになって
いきます。せっかくの旅行がちょっぴりつまらないものになって
きたのです。

 原因は伯母さんの一人娘。つまり、私とは従兄弟の関係にある
香織さんの存在でした。

 彼女、春休みだというのに毎日精出してまして、まるで学期中
のように分刻みのスケジュールをこなして勉強しているのです。
習い事もいくつか抱えているうえに、家事まで手伝ってます。

 そんな絵にかいたようなよい子を横目に見ながら同年代の私が
遊び歩けるでしょうか。気が付くと、私は伯母の家では独り浮い
た存在になっていました。

 ですから、仕方なく、本当に仕方なく、彼女と一緒に勉強机に
向かうことになったのです。とはいえ勉強の道具など何も持って
きていませんから、すべて香織さんから借りて、午前中だけでも
勉強するふりをしていたのです。

 するとそれまでお義理にしか口をきいてくれなかった香織さん
が、自ら学校のことや家庭のことなどを色々話してくれるように
なったのです。二人は急速に親しくなり、香織さんは母親におね
だりして、映画やお芝居、人形劇なんかにも私を誘うようになり
ます。

 また、伯母さんもいつもにこにこしていて香織さんのおねだり
もやさしく聞いてくれていました。

 うちの母親のように、
 「またテレビ見てる。宿題すんだの。明日はテストでしょう。
この間みたいに徹夜になってもしりませんよ」
 などと目をつり上げることなんか一度もありません。

 私はいつしか、ここではうちで起こるような悲劇、つまり『お
仕置き』なんてないんだろうなあ、と思うようになっていました。

 ところが、そんなある日。もうあと数日で、僕は田舎に帰ると
いう日に事件は起きたのでした。

 その日、伯母さんの付き添いで人形劇を見た香織さんは、何か
とても浮き浮きしていました。きっといま見た劇に感動したので
しょう。デパートに入っても、今、見た人形を探すのだと言って
おもちゃ売り場を離れようとしませんし、踊り場では即興の踊り
を披露してお婆さんを突き倒してしまうし、食堂では誰も聞いて
いない感動を延々まくしたてるしで三人の中で独り浮いた存在に
なっていたのです。

 でも、伯母さんはいつも通りににこやかですし、決して怒って
いたわけではありませんでした。そして、これから東急に乗って
伯母さんのお宅へ帰ろうとする時です。

 渋谷駅近くで用事を思い出した伯母さんは「ここにいて頂戴ね。
すぐ戻るから」と言ってその場を離れました。

 ところが、五分たっても伯母さんは戻ってきません。すると、
香織さんが、するするとその場を離れるじゃありませんか。
 恐くなった私がついて行こうとすると、「あなたはそこにいて」
と言い残して行ってしまったのです。

 それからさらに 五分後、今度は伯母さんが帰ってきました。

 「あら、香織は?」
 当然そう尋ねられましたが、私も答えようがありません。
  「困ったわね」
 僕と伯母さんはしばしあたりを見回しました。

 すると、五十米ほど離れていたでしょうか。ショーウイドーを
覗き込んでいる香織さんの小さな姿が見付かったのです。

 伯母さんと私は早速、香織さんの処へ出かけていきます。

 私たちに気づいた香織さんは少しがっかりした様子でしたが、
それほど悪びれた様子も見せませんでした。

 「さあ、香織、帰りますよ」

 伯母さんは香織さんの肩を抱き、私はその少し前を歩いて駅の
方へ向かい始めたその時でした。

 「さあ、帰ったらお仕置きね」

 私にはちゃんとそう聞こえました。でも、きっと聞き間違いだ
ろうと思っていました。何しろ伯母さんはそれまで怒った様子が
何一つないのですから……
 おまけに香織さんまで……

「はい、お母さん」
 返事を返した香織さんも、ちっとも悲しそうではないのです。

 もし、うちでお母さんがお仕置きするなんて言ったら大変です。
そもそも、これからお仕置きしますなんて宣言してくれなくても
そのすごい形相で一目瞭然ですし、私もその場から逃げられれば
逃げて、しばらくは家に寄り付きませんから、そもそも我が家で
はこんな会話は成立しえないのです。

 そんなこともあって、実は、二人の会話を伯母さんの家に帰り
着く頃にはすっかり忘れていたのでした。

 ですから伯母さんに…

「健ちゃんも、もうすぐお家に帰ることだし、ここでのお勉強
がどのくらい進んだか、伯母さん、健ちゃんのお母さんにご報告
しなきゃいけないの。疲れてると思うけど、このテスト、やって
ちょうだいね」

 こう言われた時も…

『仕方ないなあ、伯母さん、うちのお母さんに頼まれたな』
 と、へんに納得してしまい、さしたる不審も抱きませんでした。

 ところが、
『何だこりゃあ』

 差し出されたテストに取り掛かってみると、何とそれは、どこ
の本屋さんでも売っている簡単なドリル形式のペイパーが三枚。
 確かにそこには制限時間二十分と書いてありますから、一時間
ということになるのでしょうが、正直言ってその時は、伯母さん
が僕を田舎者だと侮っていると憤慨しました。

 ですから、
 「終わってもここで待っててね。採点にいきますから」
 という言葉を無視。
 十七分で仕上げると、ろくに見直しもせず、早速、伯母さんを
探し始めたのです。

 「こんな問題に一時間もかかったなんてお母さんに報告された
ら僕だってお母さんからお仕置きだよ」

 ぶつくさ言いながら家中探し回りますが肝心の伯母さんの姿が
どこにも見当たりません。

 あちこち探すうち、普段は開いている渡り廊下の掛け金が下り
ていることに気づいたのです。

「この奥もあたってみるか」

 掛け金が下りているということは、入ってはいけない、または
入ってきて欲しくないという意思表示なのだということは九歳の
少年には通じません。

 私は内庭を取り巻く細い濡れ縁ずたいに奥へ奥へと分け入って
しまったのです。とにかく、一刻も早くテストが完了したことを
伯母さんに認めさせたい、それだけでした。

 すると一番奥の部屋で伯母さんの声がします。
 『やっと、みつかった』と思ったのもつかの間、伯母さんの声
が、いつもの明るい声とは違っています。どこか、陰にこもって
いて凄味さえ感じさせるのです。異様な気配を感じた私が、途中
からそうっと忍び足で近寄っていくと、声の内容は、香織さんに
対するお小言のようでした。

 カーテンの隙間からそっと覗くと、案の定そこには香織さんが
正座させられています。
 私はこの時になってやっと、伯母さんの「帰ったらお仕置きね」
という言葉が、私の聞き間違いではないことを知ったのでした。

 「あなた、先生から『四年生になると、お勉強がテンポアップ
しますから、何か一つでも習い事を整理した方がよろしいのでは
ないでしょうか』っておっしゃってくださった時に『そんなこと
ありません。習い事してても今の成績ぐらい維持できます』って
大見得切ったわよね。それって、できてるのかしら?予定通りに」

 「昨日も、ピアノの先生から、もう少し練習時間を増やしてく
ださいってお小言を頂戴したばかりよね」

「………」
 香織さんはうつむいたまま、何も答えません。

 私はこの時初めて香織さんがなぜ春休みにもかかわらず分刻み
のスケジュールに追われているのか知ったのでした。
 私も、いくつか習いごとを抱えてはいましたが、どれも親から
半ば強制されてのもので、やめさせてくれるなら、どれでも、即
やめていたでしょう。その点、香織さんは、自ら両立させたいと
いうのですから立派なものです。

 「健ちゃんが遊びに来たのは予定外だったかもしれないけど、
それにかこつけて、あなただって遊び歩いてない。健ちゃんが、
行きたいって言えば、あなたも一緒になって連れて行ってもらえ
ると思ってるんじゃなくて。そんなことでお勉強と習い事の両立
なんてできなくてよ。ピアノはやめてしまいましょう。べつに、
あなたはピアニストになるわけではないんだもの」

 「………」
 それまで静かに聞いていた香織さんの頭が激しく横に振られて
います。きっと泣いていたんじゃないでしょうか。私の所からは
後ろ姿しか見えませんでしたが、どこかそんな気がしたのです。

 「ピアノのお稽古に行くと、いろんな子に合えるのよ」

 彼女は私にそう言っていましたし、私も同感でした。習い事の
楽しみは、芸事が身につくということもありますが、それ以上に
学校では会えない友達ができることなのです。彼らは私に色んな
情報を提供してくれました。独楽の回し方、プラモデルの作り方、
買い食いなんてのもアフタースクールならではの楽しみなんです。

 東京に一人旅を思い立ったのも、実は東京から引っ越してきた
ピアノの友達の影響でした。
 その日のレッスンの前、先生に名前を呼ばれるまでのわずかな
時間。ちょうど病院の待合室で外来の患者さんたちがおしゃべり
をしている、あんな感じで、私たちは情報のキャッチボールを楽
しんでいたのでした。その短くとも貴重な時間を奪われたくない。
彼女もきっとそう思ったのでしょう。

 「いいわそれなら。あなたの楽しみを無理矢理奪っても勉強に
身が入らないでしょうし……。その代わり、もっときちっとした
生活をしてちょうだい。それから、感激屋のあなただから、浮き
浮きする気持ちはわかるけど今日のあなたは見ていられなかった
わ。玩具売り場では、まるで幼稚園児みたいな駄々をこねるし、
階段の踊り場では、お婆さんを突き倒すし、食堂に入ったときも
独りで金切り声を上げて騒いで……周りの人たちが何だろうって
見てたの気づかなかったの」

 健ちゃんがいたから遠慮したけど本当ならそれだけでもトイレ
へ引っ張っていってお仕置きしていたところよ。おまけに渋谷の
駅では泥のついた花壇に腰を下ろすわ、アランドロンのポスター
にキスするわ。あなた、いつからそんな破廉恥な娘になったの。
あなたはあの時、世田谷小学校の制服を着ていたのよ。大勢の人
が『あの子は世田谷の子だ』って見て通っているのよ。『世田谷
の子って、あんなことするのか』って思われたら、それはあなた
だけじゃない、お世話になっている学校全体の品位を、あなたが
汚したことになってしまうのよ」

 「だから制服なんて嫌いなんだ」
 思わず僕もつぶやきます。僕だって母や教師に同じようなこと
を言われ続けていましたから、自分の事でもないのにむっとして
しまったのです。

 『だいたい花壇に座ったっていっても、煉瓦の上で植木の上に
座った訳じゃないじゃないか。今日の香織ちゃんは、そりゃあ、
浮き浮きしてたけど、そんなに他の人に迷惑なんてかけてないぞ』

 僕は心の中で幾度も叫びましたが、恥ずかしながらその部屋へ
踊り込む勇気までは持ち合わせていませんでした。

 「ねえ、香織。世田谷小の子供らしく、もっとしゃきっとした
生活をするにはどうしたらいいかしらね」

 伯母さんは、その答えをあえて香織さんに求めたのです。こう
なると九歳の少女に逃げ道なんてありません。しばし沈黙のあと、
香織さんは重たい口を開きますが、それは、甘ったれて育った私
などには青天の霹靂にさえ思えるほどの信じられない言葉だった
のです。

 「お仕置きをお願いします。香織がもっと立派になるように、
お仕置きしてください」

 それは蚊のなくような小さな声でしたが、それにしても子供の
方からお仕置きをお願いするなんて、そんなの、田舎じゃ聞いた
ことがありません。私はあまりのことに、口を半開きにしたまま
茫然自失で事の成り行きを見守ることになったのでした。

 「そう、わかりました。本当は自分で自分を律する事ができれ
ば一番いいですけれど、あなたの年齢ではそれも難しいでしょう
から私がやってあげましょう。では、玉手箱を持ってらっしゃい」

 「はい、お母さん」

 香織さんは伯母さんが背にしていた仏壇の引出しから漆塗りの
文箱を取り出します。

 玉手箱とはきれいなネーミングですが、その中には、脱脂綿や
アルコール、無花果浣腸や艾といったこの家のお仕置きグッズが
入っていました。

 伯母さんは震える手で差し出されたその箱の中身を、一つ一つ
あらためます。それはたとえ箱の中身を全部使わなくてもそれを
香織さんに見せつけることで恐怖心をあおりお仕置きの実をあげ
られると考えたからなのでしょう。

 実際、
「ええっと、お浣腸は入っているわね。あなたも体がだんだん
大きくなるし、今度はもっと大きいものでなきゃ、効かないわね。
そうそう、そういえば幼稚園の時だったかしら、あなた、これを
水にすり替えたことがあったでしょう。あの時は、小さいくせに
なんて悪知恵がはたらくのかしらって、お母さん呆れたものよ。
………えっと艾は………あら、これ湿ってるわね。今度、天気の
いい日に干しておかなくちゃ。またいつ使うかしれないものね。
………アルコールは古くなってないわね。脱脂綿もちゃんとある
と………」

 こんな感じですから、全てをあらため終わる頃には、もうそれ
だけで香織さんは鳴咽を押さえきれなくなっていたのでした。

 「これでいいわ」

 玉手箱をあらためた伯母さんは、それまで敷いていた座布団を
二つ折りにして正座した膝の上に乗せると、その姿勢のまま香織
さんを待ち受けます。

 『さあ、いらっしゃい』というわけです。

 もうこうなったら香織さんもそこへ行くしかありません。
 ところが、意を決した香織さんが、膝を立てたまま伯母さんに
にじり寄り、座布団の上にうつぶせになろうとすると……

「あら、お願いしますは言えないのかしら」
 伯母さんは落ち着き払った低い声で娘の不作法を一喝します。

 私は香織さんがかわいそうで、そして伯母さんが憎くて恐くて
なりませんでした。今なら別の感情もありましょうが、その時は
私自身が明日は我が身の立場ですからね、とても対岸の火事とは
思えなかったのです。

 「どんなに辛くても、耐え抜いてよい子になりますから………
お仕置きをお願いします」

 正座して、両手を畳に着けて、もちろん香織さんの本心は別の
処にあるのでしょうが、それにしてもよく躾たものだと、今さら
ながら感心してしまいます。

 その香織さんが、お母さんの膝の上にうつ伏せになって乗ると、
座布団の分だけお尻が浮いて短いスカートから白いパンツが覗け
るようになります。

 伯母さんはその白い綿の実のようなパンツを軽く軽く叩き始め
ました。それは一見すると、遊んでいるのか、冗談なのかと疑い
たくなるほどゆったりと軽くなんです。
 そして、今までお説教したことを、いちから再び諭し始めたの
でした。

 「朝は何時に起きるの」(パシッ)

 「六時です」

 「ちゃんと起きることができますか。約束できますか 」(パシッ)

 「はい、約束します」

 「次はなにをするの」(パシッ)

 「朝のお手伝いです」

 「その次は」(パシッ)

 「お食事してからお勉強」

 「お勉強は何時から」(パシッ)

 「七時半です」

 「ちゃんと始められますか」(パシッ)

 「あっ………大丈夫です。ちゃんとやります」

 「あら、もう痛がってるの。お仕置きはまだ始まった ばかりよ」
(パシッ)

 …………………………………………………………………

 あまりに長くなるので割愛しますが、伯母さんは、まず最初に
春休みの日課のおさらいを、平手によるスパンキングで確認して
いきます。
 確かに、その一つ一つはたいした威力じゃありませんが、塵も
積もれば何とやら、日課を一通り確認し終わる頃には、香織さん
は、しきりに体を捩るようになっていました。

 経験者語るじゃありませんが、こういうのって痛がゆいんです。
おまけに、ほてったお尻は小さな衝撃にも敏感に反応しますから
本当は声を出して訴えたいくらいなのですが、それを口にする事
はできません。彼女としては、せめても身体を捩ることで、その
ほてったお尻の熱をさましていたのでした。

 「日課は、まだ覚えていたみたいね。でも、本当にできるの?
さぼったりしない」(パシッ)

 「しません。いやっ」

 香織さんのいきなり大声。本当は出してはいけない声です。

 「なにがいやなの。二十キロもあるあなたを膝の上に乗せてる
私の方がもっといやですよ」

 伯母さんはこの時を待っていたかのように、これまで香織さん
のプライドを守ってきたパンツまでも太股へ下げました。

 「あっ、いや」

 恥ずかしさと痛みで、当然、空いている右手はお尻をかばいに
走ります。

 けれど……

「ほら、なにやってるの。邪魔でしょ」

 伯母さんは香織さんがかばった手を捩じり上げると、用意して
いた脱脂綿にアルコールを含ませて香織さんのお尻を丁寧に拭き
始めます。

 いったい何の儀式でしょうか。
 ほてったお尻の熱が急速に奪われた香織さんは、前にもまして
体を捩るようになります。おまけに、それは小高い山の部分だけ
ではなく、深く切れ込んだ谷間にまでも及びましたから。

「あっ、あっ、ぁぁぁぁぁ」

 切なくも狂おしい鳴咽が三メートル離れた僕の耳にもはっきり
と聞こえました。

 「香織、何うろたえてるの。これはお仕置きなのよ。……もう
四年生にもなろうという子がお仕置きひとつ静かに受けられない
なんて……恥ずかしい声を出さないの。みっともないわね」
伯母さんは香織さんを叱りつけるのです。

 そして、

 「さあ、これからが本番ですからね。歯を食いしばって、よう
く痛いのを味わいなさい。そして、怠けたくなったら今日の事を
思い出すの。……どうすればいいか、すぐに結論が出るはずよ。
……さあ、いいこと。……ピアノはやめませんね」

 「はい」

 蚊のなくような香織さんの声の後に強烈な一撃がやってきます。

 (ピシッ)

 それは今までのとはまったく違っていました。スナップのきい
た本格的なやつです。

「………」
 香織さんは、我慢して声こそあげませんでしたが、お尻や太股
だけじゃありません、それこそ全身の筋肉を収縮させて反り身に
なります。

 きっと無意識に立ち上がろうとしたんじゃないでしょうか。
 でも、もちろんそんなことが許されるはずがありません。
 その体は伯母さんががっちりと押え込んでいるのですから。
 そして、やっと落ち着いたと思った瞬間には、また伯母さんの
声が……

 「では、お母さんとお約束したことを守ってピアノもお勉強も
家のお手伝いもやっていきますね」

 「はい」

 さすがの香織さんもこんな時は「はい」という言葉以外、何も
考えられないのでしょう。彼女の「はい」は、伯母さんの質問が
まだ終わっていないのに出た言葉でした。
 再び、峻烈な一撃がやってきます。

 (ピシッ)

「痛い」
 今度は声を上げずにはいられませんでした。本当は大声になる
はずだったのでしょうが、あまりの悲しみや絶望のために、その
声は擦れています。

 「女の子らしく、だらしのない生活はしない。分かってますね」

 「はい」

 (ピシッ)

 「いや、もうやめて」

 「本当にこたえているのかしら」

 「本当です」

 (ピシッ)

 「いやいや」
 香織さんは声だけでなく苦し紛れに頭を振ります。

 「今度約束破ったらどうするの?」

 「………」
 何でも言われるままに、「はい」という返事しか用意していな
かった香織さんは、しばし考えてしまいます。

 「どうするの」

 (ピシッ)

 「やめて、……ごめんなさい。お仕置きしてください。よい子
……良い子になるように、お仕置きをお願いします」

 「そう。でも、もうこんなに重くなった子を、私一人じゃ扱え
ないわね。今度はお父様にも手伝っていただくけど、それでいい
かしら」

 「………」

 「どうなの。ご返事は」
 ちょっぴりドスのきいた声。

 (ピシッ)

 「はい、お願いします」

 香織さんには最初からこの言葉しかありませんでした。
 『いいえ』とは言えないと分っていて、なお返事を渋ったのは、
やはり、力が強く異性であるお父さんのお仕置きは避けたかった
からに違いありません。

 結局、香織さんはいろんな約束をさせられたあげく、やっと、
スパンキングからは開放されましたが、その後もお小言は続き、
「今度、このような事があったら、浣腸やお灸も使いますからね」
と脅しまでかけられる始末。

 ただ、香織さんが再び正座して……

 「はい、分かりました」
 「今日はありがとうございました」

 と、伯母さんにご挨拶したあとは、その場の雰囲気も和らいで
いきます。

 伯母さんは正座した膝の上に、再び香織さんを呼び寄せると、
さながら幼児をあやすように目やにを取り、髪を撫でつけ、服を
整えて、娘が落ち着くのを待っていました。

 「(やれやれ一件落着だな)」
 私がそう思った瞬間のことです。

「!」

 伯母さんの目が私を見つめています。きっとカーテンの隅から
覗いているうちしだいに、知らず知らず、見やすい場所へと移動
してきたのでしょう。どんな馬鹿面さげて見ていたのかと思うと
今でも恥ずかしい気持ちでいっぱいになります。

 「あら大変、健ちゃんにテストをやらせてたわ。採点してあげ
なくちゃ」
 伯母さんは香織さんを私から隠すようにして小さな肩を抱くと
部屋を出て行きました。私もやっと伯母さんの呪縛から開放され
て一目散にその場を離れたのでした。

 「お待たせしちゃってごめんなさいね」
 伯母さんは、僕が部屋に戻って来てからほどなくやって来て、
さっそくテストの採点に取り掛かります。
 きっと、全てを知った上で僕が部屋に戻ったのを確認してから
入って来たのでしょう。まさに、大人の対応だったのです。

 『べつにそんなもの採点なんてしてくれなくていいよ』
 僕は心の中で呟きながら卓袱台で熱心に丸をつけてくれている
伯母さんを立ったまま尊大に見下ろしていました。

 と、その時、信じられないものが目に飛び込んできたのです。

 「(わっ、ヤバイ!)」

 最後の文章題で、小数点を打ち間違って計算しているではあり
ませんか。全身の血が凍り付き顔面蒼白。
 でも、今となっては後の祭りでした。

 伯母さんはその間違いを赤ペンで二三度叩くと青くなっている
僕の顔を確認してから同じような丸を一つ追加してくれましたが、
それで私のプライドが回復するはずもありません。

 「(何であんなことに。見直してりゃよかったなあ。こりゃあ、
お母さんに報告するかなあ。また怒られるぞう……『どうして、
あなたは、そういつもいつも注意力が散漫なの』って)」

 頭がパニックになっていた私は、しばらくはそんなつまらない
事ばかりを繰り返し頭の中で思い巡らしていたのです。

 ですから、
「ねえ、いつからあそこにいたの?あの濡れ縁は半分腐ってて
危ないのよ」

 「いつって………」

 「まいいわ。ねえ健ちゃん。あそこでおばさんと香織がやって
たことは白内(田舎のこと)に帰っても秘密にしておいて欲しい
の。約束できるかしら」

 「いいよ」
 私は伯母さんの要請をふたつ返事で請け合いましたが、それは
心に深く刻んで答えたのではなく、おざなりに返事を返しただけ
だったのです。


*****************(つづく)****



< 後編 >

 白内(郷里)に戻った私はまた普段の生活に戻っていました。

 小学校や近所でささやかれる私の評判は概して「ませたガキ」
とか「生意気な子」というものでしたが、それは、あくまで裃を
つけた表でのこと。実は家の中での私は大変な甘えん坊で片時も
母親のもとを離れようとしません。

 宿題も母が居間にいれば居間で台所に立てば台所でやっていた
のです。お風呂も一緒なら、寝る布団まで母と一緒という始末。
たまさか私が自分の部屋のベッドで寝る時は……

「そんなに悪い子はお母さんのお布団には入れてあげられない
わね」

 こう言われて、渋々自分の寝床に潜り込むというあんばいです。
ですから、その生活は幼稚園児並。もとより、あんな立派な香織
さんなんかとは比べるべくもありません。その代わりといっては
何ですが、母とは四六時中何かおしゃべりしていました。

 今回、東京へ行った思い出話も、色々あったはずなのに二日と
かからずネタが尽きてしまったのです。

 『他に何か言い忘れたことないかなあ。……ん~~やっぱり、
残っているのはあれだけかあ。でも、あれは……』
 さすがの私も、あの話をするのにはちょっと勇気がいります。

 それは、伯母さんに口外しないと約束したこともありますが、
これに刺激されて、お母さんが香織さん並のお仕置きを私に強制
しやしないか。そのことが何より心配でした。

 『だけど、やっぱり聞いてみたい。……ええい、言っちゃえ』

 悩んだあげく、(いっても5分ほどですが)私は素朴な疑問を
母にぶつけます。
 私はミシンを踏む母の背に向かって、こう切り出したのです。

 「ねえ、お母さん。お母さんは、僕をお仕置きするとき、僕に
『お仕置きをお願いします』って言ってほしい?」

 「え、何のこと」
  母の戸惑いは当然です。

 ですから、結局は香織さんの家で起こったお仕置きの一部始終
を洗い浚い母親に話して聞かせることになったのでした。

 「そう、そんなことがあったの。姉さんとこは旧家だし、香織
ちゃんは女の子だからね」

 「旧家で女の子だと、お仕置きをお願いしますって言わなきゃ
いけないの?」

 「そういうわけじゃないけど。お仕置きってやる方も辛いのよ。
だから相手の気持ちを慮って嘘でもお願いしますって言ってくれ
れば、やる方も少しは気が楽になるでしょう。そんな思いやりの
気持ちを持ってほしいからそうしてるんじゃなくて……」

 「僕には絶対できないな。あんなこと」

 「どうして?」

 「だって恥ずかしいもの」

 「それは香織ちゃんだって同じじゃなくって。だいたいお仕置
なんて恥ずかしいものよ。……それはそうと、あなたよくその場
に立ち会えたわね。香織ちゃんにしてみれば、その方がよっぽど
恥ずかしかったでしょうに」

 「香織ちゃんには見つからなかった」

 「見つからなかったってどういうこと」

 「カーテンの陰から覗いてたから」

 「いやだあ、それじゃあのぞき見してたの。だめじゃないの、
そんなことしちゃ。誰にも見つからなかった?」

 「伯母さんには見つかっちゃった」

 「じゃあ怒られたでしょう」

 「べつに怒ったりしないよ。ただ、このことを白内に帰っても
誰にも言わないでねって」

 「言わないでって、あなた、私にお話してるじゃない」

 「だって、お母さんはいつも隠しごとはいけないって」

 「それとこれとは話が別でしょう。関係ありませんよ。あなた、
いつからそんな簡単に約束を破る子になったの」

  母の雲行きが怪しい。
 これはやばいなと感じたのですが、あまりの急展開に私は心の
準備が間に合いませんでした。母はいきなり私の襟首をつかむと
……

「お座り」
 と言って正座させます。
 このあたり私の扱いは飼い犬のコロと同じでした。

 「あなたは、自分のしていることが分ってるの。あなたは香織
ちゃんの恥ずかしい姿を覗き見したあげく伯母さんとの約束まで
破ってるのよ。お母さん、あなたがそんなにだらしのない子だと
は思わなかったわ。あなたのおしゃべりは生まれつきだけど……
この分じゃ、私が口止めしたことまでよそへ行ってしゃべってる
んでしょうね」

「えっ!?」

 私は、すぐに「そんなことはないよ」と言いたかったのですが、
まったく身に覚えがないわけでもないので、すぐには言葉が出て
きません。すると、母はそれみたことかと言葉を続けるのでした。

 「そう、やっぱり。ご近所で何かと、うちの噂がたつから変だ
変だと思ってたけど、原因はあなただったのね。そんな危ない子、
うちにおいとけないわね。……そうだ、あなた、景子伯母さんの
養子になりなさいな。あそこ男の子がほしいって言ってたから、
ちょうどいいわ。さっそく電話してあ げる」

 母が立ち上がろうとしますから、私は慌ててしまいます。

「だめだよ」

 「なにが駄目なの。今なら新学期が始まったばかりだし、丁度
いいじゃないの。もっとも、あんたみたいなぐうたら坊主が香織
ちゃんちに行ったら毎日お仕置きでしょうから、毎日おサルさん
みたいなお尻をして学校へ行くことになるでしょうね。きっと、
評判になるわよ。田舎から赤いお尻のお猿さんが来たって……」

 「ぼくいやだよ。お母さんのところがいいもの」
  私はこの時すでに半べそをかいていました。

 九歳の少年にとって母親はまだまだ絶対的な存在だったのです。

 「私はいいのよ。あなたみたいに、口だけ達者な男の子より、
もっとおしとやかな女の子を養女に迎えるから……そう、それが
いいわ。女の子なら台所仕事ぐらい手伝ってくれるでしょうから、
何もしないあなたより、よっぽどましだわね」

 「だめ、電話しちゃ。伯母さんちなんか行きたくないだから。
お母さんの家にずっといるもん。お手伝いだってしてあげる」

 「してあげる?…結構よ。女の子ならさせていただきますって
言ってやってくれるもの。だって、あなた、いやなんでしょう。
私がお仕置きするとき、『お願いします』って言うの」

 「えっ……言えるよ。そのくらい」

 「じゃあ言ってごらんなさいな」

 「えっ……えっと、お仕置きをお願いします」

 「もう二度と覗き見はしませんって言ってからでしょう」

 「もう二度と覗き見はしません」

 「お約束は守りますもいるのよ」

 「お約束は守ります」

 「もう一度言ってみようか。二度と覗き見はしません。お約束
は必ず守ります。よい子になる為にお仕置きをお願いしますって」

 「えっ……そんな……」
 もうすっかり母のペースです。ほんの少し口篭もっただけでも
……

 「もう一度言ってごらん」

 「えっ、…また言うの?」

 「言いたくないのならいいわよ。伯母さんのところに電話して
あなたの荷物は明日にでも送ってしまいま すから」

 「そんなあ、言うよ。二度と覗き見はしません。お約束は守り
ます。よい子になるためにお仕置きをお願いします」

 「何だ、言えるじゃない」
 お母さんは勝ち誇ったような笑顔です。
 おまけに……

 「……そうかあ、そうやってお願いされたんなら……やらない
わけにはいかないわね」

  母はミシンの椅子に座り直すと膝を軽く叩いて私を待ちます。

 「えっ!」
 私は驚きましたが、もう諦めるしかありませんでした。

 母の膝にうつぶせになるのはどのくらいぶりでしょうか。
 以前は、身体が小さかったので、膝の上から見る光景が随分と
高く感じられましたが、今は手が床に着くくらい頭の位置が低く
なっています。ただ、火の出るほどの痛みだけは今でもはっきり
覚えていてその痛みの記憶が私の体をフリーザーにいれたお肉の
ようにこちこちにしていました。もう、半ズボンを脱がされても
何の反応も示しません。おそらくパンツまで脱がされたって何の
抵抗もしなかったでしょう。すべてはあの強烈な一撃を待ち構え
るために神経を集中していたのです。

 「さあ、いくわよ。ようく噛み締めなさいね」

 (パン)
 スナップの効いた強烈な一撃が、私の小高い丘に命中します。
それは母が私を押さえつけていなければ部屋の隅まで飛ばされる
ほどの勢いでした。

 伯母さんのように、始めはゆっくり軽くなんて母には通用しま
せん。始めから目一杯、それが母のやり方だったのです。

 「いいこと、覗き見は悪いことなの。分ってる?」
(パン)
「分ってるの!」
(パン)
「ご返事は!?」
(パン)

 「はい、わかりました」

 「伯母さんとの約束を破るのはもっと悪いことなの」
(パン)
「分ってますか?」
(パン)

「はい」

 「もう悪さはしませんか?」
(パン)

 「はい、しません」

 「本当に!?」
(パン)

 「本当です」

 「じゃあ、今度からお仕置きのときはお仕置きをお願いします
って言えるわね」
(パン)

 「え」

 「何がいったい「え」なの!」
(パン)

 この一撃はそれまでにも増して強烈でした。

 文字にすると、パンパンと書くだけで凄味が伝わらないと思い
ますが、なにしろ母は手加減というものを知らない人ですから、
一発一発がそれはそれは強烈だったんです。私はすでに荒い息を
ついていました。その息の根の奥からこう言うしかありませんで
した。

 「言います。お仕置きお願いしますって言います」

 「本当に?」
  (パン)

 「本当に約束します」

 「約束するのね」
  (パン)

 「約束します」

 ここまでくると母は満足したようでした。私を抱き上げ慎重に
自分の膝の上に乗せると、また何かされるんじゃないかと怯える
私の顔をタオルで丹念に拭いてから、おでことおでこを合わせ…

 「これでお母さんのよい子が戻ってきた。もう、おいたしちゃ
だめよ」

 物心ついた時から、最初のお仕置きの時から、これが我が家の
お仕置きの終わりを告げる儀式でした。

 「これであなたも香織ちゃんと同じになったわけだ。ついでに、
おしまいも『お仕置きありがとうございました』って言わしちゃ
おうかなあ」

 お母さんに悪戯っぽい笑顔でこう言われて、私は、ぽっと顔を
赤らめます。

 「いいこと健ちゃん、あなたがどんなに背伸びをしても私から
見ればあなたはまだ赤ちゃんの方に近いの。だから、もっときつ
いノルマを課して、もっと厳しい折檻で締め上げることだって、
やろうと思えばできるのよ。だけど、お母さんそれは望まないわ。
健ちゃんが今日一日のことを全部洗い浚いお話してくれる時間を
奪いたくないもの。それは香織ちゃんのお母さんだって同じよ。
お腹を痛めた子の悲しむ姿を見て喜ぶ母親なんてどこにもいない
はずだもん。ただ香織ちゃんの処は旧家だから、そこの娘さんと
して身につけなけばならない素養が、うちなんかより沢山あって、
それで大変なだけなの。あなた、香織ちゃんがお仕置きしますよ
って、お母さんに言われたのに平気だったって言ったでしょう。
あれはね、香織ちゃん自身、お母さんの様子を見ていて怒ってる
なあって随分前から知っていたはずなの。すでに覚悟があったの
よ。女の子っていうのはね、そんなことにとっても敏感なのよ」

 「だったら、やめればいいじゃないか」

 「それができないの。『これ以上やったらお仕置きになるなあ』
ってとわかっていても、どうしても自分の心を押さえられない時
があるのよ」

 「どうして」

 「どうしてかしらね。……それも、きっと香織ちゃんが女の子
だからかな……」

 「ふうん」

 「だけど、その香織ちゃんもあなたに覗かれることまでは覚悟
していなかったはずだから、このことは香織ちゃんはもちろん、
お友だちにも親戚の人にも誰にも言っちゃだめよ。あなただって
お尻を叩かれてるところお友だちに見られたくないでしょう」

 「分かった。もう誰にも言わない」

 私はこの約束を三十年間守ってきましたが、もうそろそろいい
でしょう。

 「ねえ、もうぼくを伯母さんの処へ養子に出したりしない」

 「当たり前じゃないの。そんなこと最初から考えてないわよ。
今日はちょっとからかってみただけ。神様からいただいた大事な
あなたを誰にも渡すもんですか。ただ、私もお姉さんみたいに、
『お仕置きをお願いします』とか『お仕置きありがとうございま
した』なんて言わすことができるかなあと思って試してみたの。
……大成功だったわ。ありがとう、健ちゃん。まだまだあなたは
私のかわいい赤ちゃんよ」

 まったくひどい話です。そんなことで私をはらはらさせたうえ
に一ダースもお尻をぶつんですから。

 しかし、そんな酷い人のパジャマをしっかり握り締めてでない
と寝つかれないのですから、やはり私の方がよほど困ったちゃん
なのでしょう。

*************************

 それから一ヶ月ほどたったある日、私は初夏の日差しを全身に
浴びてごろ寝していました。偶然、空いた時間をもてあますかの
ように畳の上を右にごろごろ左にごろごろ。その体と同じように
頭の中も、とりとめのない思いが浮かんでは消え、また浮かぶと
いうことの繰り返し。そんな時です。東京で起こった事件なども
ふと脳裏を掠めます。

 それは忘れたい思い出でした。大人になった今なら、小学生が
お尻をぶたれているのは対岸の火事で面白いかもしれませんが、
当時の私には明日は我が身となりかねない恐怖の思い出なのです。
ところがそんな思い出も、この五月の陽光の中に身を置いている
と不思議に何だか別の要素を含んで脳裏を流れていくのです。
 でも、それが何なのか幼い身にはわかりません。

 切なく悲しく、それでいて、何かわくわくするようなこの感情。
それがわからないままに、私は芋虫を続けていました。

 「!」
 と、気づけば、かすかに濡れているではありませんか。

 あわててパンツの中を確認すると、やはり……
 「!」

「あれ?オシッコ漏らしちゃった。恥ずかしいなあ」

 神経質な子は、病気になったんじゃないかと親に相談するそう
ですが、私はぐうたら坊主ですから、初めての射精も感想はそれ
だけでした。

 そして、あの切なさを今一度味わいたくて、ふたたび、五月の
強い日差しに身を任せたのです。

 夢想を続け芋虫を続け、しだいに夢路へと落ちていく心地よさ。
私の快楽はその後大いなる発展をとげますが、原点はここだった
ような気がするのです。


******************<了>****

                               99/ 3/07




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tutomukurakawa

Author:tutomukurakawa
子供時代の『お仕置き』をめぐる
エッセーや小説、もろもろの雑文
を置いておくために創りました。
他に適当な分野がないので、
「R18」に置いてはいますが、
扇情的な表現は苦手なので、
そのむきで期待される方には
がっかりなブログだと思います。

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