2ntブログ

Entries

6/17 不思議な小説のわけ

6/17

        不思議な小説のわけ

 私の母は商売は好きでしたが、教養となると……(?)でした。
 一応、父は旧制中学、母も女学校は出ていますから無学とまで
はいえないでしょうが、父方母方とも、他の兄弟(伯父叔母)は
大学を出ていましたから、両親共に学歴や教養といったことには
コンプレックスを持っていました。

 ですから、自分の息子たちには高い教養をつけさそうとして、
幼い頃からあれやこれやと画策したわけです。

 でも、考えてみてください。お互い経済的な事情ならともかく、
純粋に学力がなくて大学に行けなかったお二人なんですよ。
 劣性遺伝を引き継ぐその息子が、優秀な頭脳を持って生まれて
くるわけがないじゃないですか。

 それでも、両親が東奔西走した結果、幼い頃だけはそれなりの
実績を残すことができました。
 (その後は、『十で神童、十五で才子、二十歳過ぎればただの
人』だったんですが……)

 でも、そうなってみると、ある問題が生じました。

 早々、まだ小学校も三年生だというのに、もう自分の教養では
着いていけない、教えきれなくなってしまったのです。

 当然、あとは家庭教師とか塾なんかに頼ることになるのですが、
生まれてこのかた、常に母親の懐で勉強してきた息子にとっては
未知の体験。これに慣れるまでに随分と時間がかかりました。

 ただ、我が家においては、こうした事に時間がかかったのは、
何も息子だけではありませんでした。

 母もまた空いた膝をもてあましていたようで、四年生、五年生
と年齢は高くなっていくのに、子どもへの対応は、むしろ幼児に
赤ん坊にと戻っていったのです。

 私自身は、当時それを強く意識したことはありませんでしたが、
今、振り返ってみると、たしかに思い当たることが多々あります。

 料理をスプーンで口元まで運んでもらったり、寝床に哺乳瓶が
復活したり、下痢気味だという理由だけでオムツを穿かされたり、
お風呂場では頼みもしないのに身体じゅうを洗ってくれますし、
二人だけなら会話も喃語(赤ちゃん言葉)ですませたりもします。

 およそ外では風間君タイプ(?)の僕の様子を見ていて、息子
が自分から離れていくように感じたのかもしれません。
 世間の親なら、そろそろ自立を考える歳なのに、うちではそれ
とはまったく逆のことが起きていたんです。

 もちろん、中学に上がる頃には、こんな極端な事はなくなって
いましたが、それでも精神的には母親の殻を脱し切れていません
でした。

 従兄弟と初詣に行った時の事です。

 「何、お願いしたしたの?」
 って訊かれたので、素直に…
 
 「お母さんが幸せになりますように」
 って言ったら……

 「正気か?…お前、まだ中学生じゃないなあ」
って、思いっきり笑われてしまいました。

 でも、この時はお母さんだって……
 「坊やたちが幸せになりますように」
 ってお祈りしているわけだし、それ以外のことをお祈りしたら
何だか悪いような気がして……。

 と、まあ、こんな感じの少年時代でしたからね。
 私の小説を読んだ人は、『何だこりゃ、訳の分からん不思議な
話を描く奴だ』ぐらいに思ってるんでしょうけど、僕にしてみる
と、たんに昔を懐かしんで、思い出を物語に焼き直してみただけ
なんです。

 勿論、これは自己満足。このブログも書庫でいいんですよ。

************************

コメント

コメントの投稿

コメント

管理者にだけ表示を許可する

Appendix

このブログについて

tutomukurakawa

Author:tutomukurakawa
子供時代の『お仕置き』をめぐる
エッセーや小説、もろもろの雑文
を置いておくために創りました。
他に適当な分野がないので、
「R18」に置いてはいますが、
扇情的な表現は苦手なので、
そのむきで期待される方には
がっかりなブログだと思います。

最新記事

カテゴリ

FC2カウンター

検索フォーム

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード

QR