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6/15 早苗お姉ちゃん(短編/読みきり小説)

6/15 早苗お姉ちゃん(短編/読みきり小説)

*)世の中で作者だけH小説だと思っている小説。(*´~`*)

 僕の兄弟はター坊と呼ばれている僕と弟のアー坊、それに早苗
お姉ちゃんの三人。

 僕とアー坊は双子。お母さんとしては初めての男の子でよほど
嬉しかったんだろうね、舐めるようにして育てられた。おかげで
二人はとてもおとなしかったんだけど、三つ上の早苗お姉ちゃん
は、お母さんがきっと自分の子分にしたいと思って育てたんだろ
うね。もの凄い女傑だったんだ。

 とにかく入学早々の1年生の時、無礼なことを言った男の子を
全裸にして謝らせたという武勇伝の持ち主。退学寸前までいった
らしいけど、そのほかにも『本校始まって以来』という前置きの
つく出来事が沢山あって、僕たちが入学した時は、『あの子の弟
ってどんな子たちだろう』ってみんなから注目されたものだった。

 それが拍子抜けするほどおとなしかったから、逆にビックリ。
『あの姉弟、血の繋がりがないんじゃないか』なんて言われた。

 そんなお姉ちゃんだけど、学校の成績はさっぱりで、通知表の
中身は2と3以外の数字はたしか載ってなかったと思う。日舞や
お琴もお義理にやってはいたけど、とにかく不器用だからね、お
世辞にも上手ではなかった。

 要するにお母さんと同じ学生時代というわけ。(親子だからね、
仕方がないか)

 だけど、弟おもい(というより余計なお世話、はた迷惑なんだ
けど)でね、僕たちが低学年の頃は毎日というより、毎時間休み
時間になると僕たちの教室への見回りを欠かさなかった。
 そこで僕たちを虐めるような子がいたら、その子の胸倉を掴ん
で暴力的に注意をしてから自分のクラスへ帰っていくんだ。

 おかげで、恐怖の上級生ということで僕たちのクラスでも有名
だったよ。

 そんなお姉ちゃんだからね、学校でのお仕置きだって、1度や
2度なんて単位じゃなかった。ある日の午前中、バケツを持って
廊下に立たされているのを見かけたんだけど、午後になるとまた
同じ格好してた。
 よほど、ああいう格好が好きなんだろうなあって思ったね。

 学校でもそんな感じだったからね、家じゃもっと凄かった。
 そもそもお母さんってお姉ちゃんとは同じタイプの人。ともに
我が強くて+と+だから、いつも衝突しちゃうんだよ。

 普通はさあ、家に男の子と女の子がいたら、男の子の方が沢山
お仕置きされるっていうのが常識だよね。でも、うちは違うの。
この姉のおかげで、まったく立場が逆だったんだ。

 僕たちが1度お仕置きされる間にお姉ちゃんの方はもう3回も
4回もお仕置きされてたもん。しかも、これが超過激(お母さん
本人はそうは思ってないみたいだけど…)ときている。お尻叩き
には竹の物差しが当たり前だし、お灸や浣腸だって日常茶飯事だ
ったんだ。

 もちろん、お姉ちゃんは強い人だけどお母さんにかなうわけが
ないじゃない。何かあると仏間やかお父さんが書斎にしてる離れ
へ引っ張って行かれて、そこからお姉ちゃんの熊のいびきみたい
なもの凄い悲鳴がたびたび聞こえてたんだ。

 これはそんなある晩の出来事なんだ。

 僕はお姉ちゃんがお風呂からあがったかどうかを確かめようと
してお姉ちゃんの部屋へ行った。
 「お姉ちゃん、僕、お風呂はいるよ」
 そう言って、引き戸になっていた戸を開けたんだけどね。

 「………………」
 そこにお姉ちゃんがいた。ベッドの上で足の爪を切ってた。
 いや、それだけ言うと何でもないことのようだけど、問題は、
その姿。すっぽんぽんなんだよね。ショーツ1枚穿いてなかった。

 そもそもお母さんだって、お風呂上りはすっぽんぽんで居間に
やって来ては椅子にドカンとすわって、「ター坊、私のパンツ」
「アー坊、ジュース持ってきて」なんて言う人だから、これって
多分に母の影響なのかもしれないけど……

 ただ、この時お姉ちゃんは怒った。

 「何じろじろ見てるのよ!恥ずかしいでしょう!」
 って言うんだ。

 『そう思うなら何か着ろよ』
 とは思ったけど、女の子っていうのは男が当たり前と思ってる
ことが当たり前じゃないから困る。

 とにかく、枕が飛んできて怖かったからその場を離れた。

 その後、久しぶりにアーちゃんと二人だけのお風呂。その日、
お母さんは踊りの発表会の会場を借りて流通品の出張販売をして
いたから留守。代わりに子守の初子お姉ちゃんが僕たちの身体を
洗ってくれることになってたんだ。
 ちなみに僕たち二人は、初子お姉ちゃんの前でもフルチンだけ
ど、べつに恥ずかしいなんて思ったことは一度もなかったよ。

 お姉ちゃんだって、四年生までは僕たちと一緒のお風呂だった
はずなのに最近は自分一人でお風呂に入るようになって、五年生
の今は自意識過剰ぎみなんだ。
 
 さて、お風呂から上がったら、我が家では普通はお勉強時間。
だけど今日はお母さんがいないから適当に宿題だけやってパス。

 こんな天国時間は久しぶりだから、お祝いに二人でサイダーを
空けて飲んだ。あては食器棚の一番上に乗っかってる泉屋のクッ
キー。毎日こんなに自由だといいんだけど、こんなのは月に1回
あるかどうか、子供って大人のあてがいぶちで生活しなきゃいけ
ないから辛いんだよね。

 お腹に甘いものが入ってルンルン気分になった僕たちは、お父
さんの処へ。
 この人、お母さんみたいにこれといって面白い人じゃないけど、
一応家族だし……何より行けば邪険にはされない。必ずお膝に抱
っこかお背中のんのしてよしよししてくれるんだ。

 こういうのって世間じゃ子煩悩って言うのかもしれないけど、
ただ、この人話題には乏しかった。何しろ趣味が書道と東洋哲学
の研究っていうんだもの、暗いんだよ。

 僕たち幼いからね、お父さんのお話に興味なんてなかったけど、
それでもお付き合い程度には聞いてあげてたんだ。すると、観客
がいるのが嬉しいんだろうね、さらに熱心に語り始めるんだ。

 だけど、幼い頭脳にそんなの面白いわけないじゃないか。だから、
子守唄代わりに聞き流して、あとはお膝の上でネンネしてたんだ。

 その日だってそんな予定で出かけて行ったんだけど……ただ、
その日は僕たちがお父さんの懐で寝こむ前に来客があった。

 「あっ、お姉ちゃん」
 僕たちにとってそれは何でもないこと。だって、お姉ちゃんが
お父さんの部屋を訪れたからって問題ないことだもん。ただ、お
姉ちゃんにしてみたら、僕たちの存在は予想外という顔だった。

 『余計なのがいた』
 露骨にそんな顔だったんだ。

 「どうしたんだ?」

 お父さんが問いかけると、お姉ちゃんは満面の笑みで僕らの処
へやって来て、お父さんの首っ玉に抱きつく。

 『何かある?』
 子供の勘で、そう思ったね。
 お姉ちゃんがこんな風にデレデレっとしてる時は、何か魂胆が
あるに決まってるんだ。

 案の定、お姉ちゃんはお父さんの目の前で連絡帳を取り出した。
 そして、さらに甘い声を出してお父さんに迫る。
 「ねえ、ここにハンコ押して欲しいんだけど……」

 完全に色仕掛け。いや、子供だから子ども仕掛けかな。

 お姉ちゃんが差し出した連絡帳には学校でその日何があったか
が詳しく書いてあるの。もちろん、よい行いも書いてあるけど、
お姉ちゃんが問題にしているのは、当然悪い方の行い。
 なかには、『お家でも相応の罰をお願いします』なんて露骨に
書かれたりするんだ。
 子どもにとっちゃたまらないよね。

 そんな連絡帳、普段だったらお母さんがチェックするんだけど、
今日はあいにく不在。もちろんそんな時でも、お母さんがおめか
しする鏡台なんかに放り投げとけば、明日の朝学校へ行く頃まで
には、お母さんがハンコを押してランドセルに入れといてくれる
んだけど……どうやらお姉ちゃんとしては、そうしたくない理由
があったみたいなんだ。

 理由は簡単。今日は学校でうまくいかなかった。……このまま
連絡帳をお母さんに見せたら、叱られる……いや、お仕置きされ
かねない。……そこで、そんな心配のないお父さんの処へ持って
きた。
 そんなところだ。

 お父さんはお母さんに比べてグンと優しいからね。それに期待
したんだと思うよ。

 ところが、この日のお父さんは連絡帳を隅々まで読みかえしは
するものの、なかなかハンを押してくれなかった。

 「…………」

 気を揉むお姉ちゃんを尻目にお父さんは連絡帳を読み終えた後
もゆったりと構えてたんだ。
 僕の経験則なんだけどね、こういう時のお父さんって、本当は
機嫌の悪い時が多いんだよ。

 だからこの時はこれからどうしようか考えてたんじゃないかな。
 お姉ちゃんにも、しばらく時間を置いてからこう言ったんだ。

 「喧嘩したお友だち……清史君とは仲直りできたのかい?」

 「うん」
 お姉ちゃんは生返事した。

 きっと、お姉ちゃんだって『まずいなあ』って思ってたはずだ。
 だって、普段のお父さんなら何も言わずハンコを押してくれる
もん。……なのに、これじゃあお母さんと同じ。

 実を言うと、僕もお母さんじゃ叱られると思ってお父さんの処
へ連絡帳を持っていったことがあるんだ。

 ただね、その時はあえて忙しそうにしてる時を狙うの。すぐに
ハンコがもらえて『やったあ!』と思ったことが何度もあった。
 ところが、お姉ちゃんは大雑把な人だからそんな細かなこと、
気にしないんだろうね。
 いずれにしても世の中そんなにうまくはいかないみたいなんだ。

 「理科が60点……社会科は70点か……早苗ちゃんとしては
普通かもしれないけど、もう少し頑張らないといけないな。……
ところで、この家庭科の宿題はなぜ出たの?これを読むと、早苗
ちゃんにだけ特別に出された宿題みたいに書いてあるけど……」

 「それは…………」
 お姉ちゃんは口ごもる。本当は言いたくないって顔だった。
 たけど、お父さんにきかれたら仕方がなかったみたいなんだ。

 「家庭科の宿題、星野さんにやってもらったんだけど……それ
がばれちゃって……それで、新しい宿題出されちゃったの。……
お手玉を二つ縫ってらっしゃいって……」

 「なるほど、そういうことか……」

 「だいたい、加納って先生、陰険なのよ。私が提出したお手玉
だけを解いて『ここ、もう一度縫ってごらんなさい』だって……
クラス中の子が全員見てる前で、赤っ恥かかされたんだから……
だいたい星野さんも星野さんよ。私がお裁縫苦手なこと知ってる
んだから、もっと下手にやってくれればいいのに……」
 お姉ちゃんは身勝手な愚痴を饒舌に語ります。

 「でも、それって宿題をお友だちに頼む君は悪くないのかな?」
 お父さんが穏やかに尋ねると……

 「それは……」
 お姉ちゃんは口ごもってしまいました。

 お姉ちゃんにとっては、宿題もテストも自分で努力するより先
に誰かやってくれそう友だちを探す方が優先だったみたいです。
 女の子って、みんなこんな了見なのかなあ。うちのクラスでも
そんな女の子が結構いるんだよね。

 もちろん、これってお姉ちゃんが悪いんだけど、この人、何回
注意されてもお仕置きされてもこうしたことは懲りない人だった
んだ。おそらく他人を利用することこそがお姉ちゃんにとっては
人生哲学だったんだろうね。

 そんなお姉ちゃんにお父さんはある文字を書いて渡します。
 そこには学年が上のお姉ちゃんでもなかなか書けないような、
難しい字が並んでいました。

 「恃人不如自恃也。人を恃(たの)むは自ら恃(たの)むに如(し)
かず。他人を頼ることを考えるより、自分でやったことの方が、
多くの成果が得られるよ、ということ」

 「ふ~ん……こっちは?」

 「巧詐不如拙誠,惟誠可得人心。巧詐(こうさ)は拙誠(せつせ
い)に如(し)かず。人を煙に巻くような巧みな言い逃れよりも、
不器用な誠実さこそが人の心を打つもの。失敗も、正直にそれに
向き合うことが大事だよ、ということさ」
 (う~~ん、どっかの知事に聞かせたい(`ε´))

 「ふ~~ん」

 「どちらも、韓非子という人が言った言葉だ。早苗ちゃんには
まだ難しいだろうけど、今はこれを綺麗に清書して机の前の壁に
貼っておきなさい」

 「えっ、こんな難しい字書けないよ」

 「大丈夫、お父さんが教えてあげるから」

 早苗ちゃんはかなり不満そうでしたが、そうしないとハンコが
もらえないみたいなんで、渋々、この言葉を書き写します。

 いえ、こういった被害者は何も早苗ちゃんだけではありません
でした。
 お父さんは僕たちにも『孔子』『荘子』『老子』といった人たち
の言葉を覚えさせたんです。

 お父さんが僕たちに教えてくれたことは、それが学力の向上や
直接生活の役に立つようなものはありません。ですが、お父さん
のお膝の上で、子守唄代わりに色んな知識を聞かされていると、
不思議と心が穏やかになって、その言葉や知識がとても魅力的な
ものに思われるようになるのでした。

 お父さんは滅多に子供たちをぶったりしませんでしたが、でも、
稀にそうする時は『明主之所導制其臣者,二柄而已矣。二柄者,
刑德也』というのと、『遠水不救近火也』という言葉を中国語で
唱えていました。

 こちらは子供ですからね、そんなこと言われても分かるわけが
ありませんから、『へんてこな呪文だなあ』と思いながら聞いて
いたんですが……その断片が大人になっても記憶に残っていて、
……そこから本来の意味にまで辿り着いたんです。

 それはともかく、この時の早苗お姉ちゃんは不運にも……その
稀なケースに当たっちゃったみたいで……

 「いやあ~~~もうしないで~~~ごめんなさ~~~い………
ひぃ~~だめえ~~~壊れる、いやだあ。やめてえ~~いやあ、
いやあ~~…(ピシッ)…(ピシッ)…(ピシッ)…(ピシッ)
もうしないで~……お願い、何でもします、もうしませんから…
いやあ~~…(ピシッ)…(ピシッ)…(ピシッ)…(ピシッ)」

 僕らはお父さんに部屋を出されたあと、自分の部屋で二人して
お姉ちゃんの悲鳴を聞くことになります。
 ですから、その時も、お父さんはあの呪文唱えてたと思います。


 お仕置きが終わったら……
 頭なでなで、ほっぺすりすり、お背中トントン、お尻よちよち、
というのも必ずあったはずです。
 だって、それは我が家のお仕置きの伝統ですから。

 やがて、仕事から帰ってきたお母さんの声がすると、早苗お姉
ちゃんは玄関に飛んでいっていきなり抱きつきます。その後も、
何かにつけてお母さんにたっぷり甘えていました。

 『母娘なんだから当たり前?』
 いえいえ、我が家ではなかなか見られない光景なんです。

 そういえば、お父さんがこんなこと言ってましたっけ……
 「私があまり怒らないのは、私が怒ってしまうと、この家で、
お前たちの逃げ場がなくなってしまうからなんだ。子どもが何を
したにしろ、そこまで子どもを追い込んじゃいけないからね」

 お母さんと早苗お姉ちゃんって、普段は寄ると触ると喧嘩ばか
りしてるみたいですけどね。本当はとっても仲がいいんですよ。

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コメント

[C19] No title

久々のお仕置きを期待していましたが、(補足/蛇足)に 『えっ、お仕置きの具体的な描写がない?とあり、がっかりです。
『お姉ちゃんの熊のいびきみたいなもの凄い悲鳴がたびたび聞こえてたんだ。』どんなお仕置きだったのか書いて頂きたかった。



、お灸や浣腸だって日常茶飯事だったんだ。

 もちろん、お姉ちゃんは強い人だけどお母さんにかなうわけが
ないじゃない。何かあると仏間やかお父さんが書斎にしてる離れ



へ引っ張って行かれて、 これはそんなある晩の出来事なんだ。
  • 2016-06-15 14:24
  • 匿名
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このブログについて

tutomukurakawa

Author:tutomukurakawa
子供時代の『お仕置き』をめぐる
エッセーや小説、もろもろの雑文
を置いておくために創りました。
他に適当な分野がないので、
「R18」に置いてはいますが、
扇情的な表現は苦手なので、
そのむきで期待される方には
がっかりなブログだと思います。

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