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6/24 早苗お姉ちゃん/子ども懲戒所(編)

6/24 早苗お姉ちゃん/子ども懲戒所(編)

*)お灸の小説です。

 私たちの町には、『子ども懲戒所』という看板の掛かった家が
いくつもありました。
 今の常識では考えられないでしょうが、親が我が子のお仕置き
を依頼する家のことです。

 学校帰りに、行儀作法を習ったり縫い物を習ったりする名目で
通う塾感覚のものから、一週間位お泊りさせて、本格的にその家
の主人に躾直してもらう合宿形式のものまで形態は様々でしたが、
共通しているのがお仕置き。

 普通の塾では月謝を頂いている手前、そこの先生が生徒に手を
あげることなんて滅多にありませんが、それがここでは自由なの
です。むしろ親自身が我が子をどう叱ってよいかわからないから
ここに預ける……そんなケースがほとんどでした。

 当然、その家からは毎日のように子どもの悲鳴が聞こえますが、
もちろん、『この家で虐待が行われていますよ』なんて通報する
人は誰もいませんし、その子が逆に悪くなったという評判も聞き
ませんでした。
 主人は大半が子育てのベテランでしたから親も安心して預けて
いました。

 そんな懲戒所の一つに鍼灸院を営んでいる菊江お婆さんがいま
した。

 お婆さんの診療所は、古い日本家屋で雨が降ると雨漏りがする
ありさまでしたが、腕は確かとみえて、昼下がりから夕方にかけ
お客さんの絶えることがありません。

 待合室には大人のお客さんもいますが、多くは子ども。それも
大半がお仕置きやいとが目的で親に連れてこられた子供たちです。

 ですから、待合室は恐怖におののく子どもたちの悲鳴で大混乱
と思いきや、そこは意外なほど静かでした。

 『騒ぐ子、泣く子は治療の前にまずお灸』
 が徹底していたからです。

 泣き声が診療室に届くと、院長である菊江婆さんが飛んできて、
訳も聞かず男の子も女の子もお尻を捲られてお灸をすえられる事
になります。……その間わずかに1分。あっという間の出来事で
した。

 ですから、ここが初めての子は別として、治療院の中で泣く子
はいませんでした。
 それがどんな結果をもたらすかを、大半の子は自分の体で学習
していたからなのです。

 子供たちにとってはお外が勝負というわけです。あらん限りの
大声を出し……哀れみを込めた眼差しで親にすがり付いて泣き…
…身体を持ち上げようとすれば重心を後ろにして抵抗します。
 そりゃあ必死でした。

 でも、その有り余るエネルギーは治療院のドアを入る前に使い
果たされるのが通常でした。親にすれば、嫌がる子どもの両手を
鷲づかみにして、無理やりにでも建物の中へ入れてしまえば勝ち
だったのです。
 あとは菊江婆さんが何とかしてくれますから。

 そんな敗者ばかりの待合室へ、私も足を踏み入れます。
 理由は前に述べたとおり、清史君の弟さんに石を投げたこと。
 大人の世界で言う暴行傷害罪というわけでした。

 『なによ、頭から血が出たといったってほんのちょっとでしょ。
なのに、なんでそのくらいのことで、どうしてお灸なのよ!!』
 私は思います。本当は待合室にいる全部の人に聞こえるくらい
大きな声を張り上げたい気分でした。

 でも、私もすでに11才。幼い子のように親との戦いに無駄な
エネルギーを使う歳でもありません。入口のドアは自分で開け、
畳敷きの待合室では親の分まで座布団を出してきてそこでおとな
しくしています。
 そこはまわりのチビたちとは違うお姉さんの貫禄でした。

 すると顔見知りのおばさんが……
 「あら、早苗ちゃんじゃないの。今日はどうしたの?」

 おばさんは私に尋ねます。でも、それには母が答えました。
 「大したことじゃないわ。お友だちと喧嘩して、腹立ち紛れに
石を投げたらその子の弟さんにあたってしまって……」

 「まあ、大変じゃない……その子、大丈夫だったの?」

 「幸い、怪我は大したことなかったんだけど、この子ったら、
怖くなってその場から逃げたらしいのよ。癇癪起こして石投げて
相手に怪我させたあげくその場から逃げるなんて……まったく、
いい恥さらしだわ」

 「ははあ~ん。それで、ばあちゃんの処でお灸になったのね」

 「もっと幼い時ならそれも仕方ないかと思うけど……この子も
少しずつ大人に近づいてるし……このへんで、ガツンというのを
やって目を覚まさせようと思って……」

 「あらら、そりゃあ大変だ。災難だったわね」
 おばさんは悪戯っぽく笑います。
 それを横目で見ながら、私は悔しい思いをしていました。

 『何よ、楽しそうに……嫌な女』
 私はそうは思いましたが、今はそれを口に出すことはしません
でした。この上トラブルを起こしては、この先どんなお仕置きが
待っているかしれません。ここは自重するしかなかったのです。


 そうこうするうち、さっきこの待合室を出て行った中学生位の
お姉さんが戻って来ました。
 目に一杯涙を浮かべ、お母さんが支えていなければ一歩も歩け
ないんじゃないかと思うほど憔悴しきっています。声を掛けるの
さえもはばかられるほどでした。

 『あ~あ、私もああなるのかなあ~』
 明日はわが身という光景に正座していてる私の子宮がキュンと
しぼむのがわかります。と同時に、オシッコがほんのちょっぴり
漏れます。

 『というと、次は私じゃないかしら』
 と思っていると、案の定……

 「倉田さん。倉田早苗さん。いらっしゃいますか?………あっ、
どうぞ診察室へお越しください」

 まだ若い助手のお姉さんに呼ばれて、お母さんと二人長い廊下
を歩きます。菊江婆さんの診察室は小さな悲鳴ぐらいなら待合室
にまで届かないように中庭を挟んだ離れになっていました。


 「倉田でございます。よろしくお願いします」
 お母さんが廊下に正座して障子に向って声をかけます。

 「おう、倉田さんか、入りなさい」
 もう聞きなれてしまったしわがれ声。その声だけで背筋に氷水
を流し込まれる思いでした。


 診察室は今のようにベッドじゃありません。畳敷きの純和室。
薄い布団が一枚敷いてあるだけの簡素な部屋です。
 ただあの強烈なお線香の匂いだけが鼻を衝きます。
 私はそれを嗅いだだけでもう卒倒しそうでした。

 二人は部屋の奥へ進むと、割烹着姿の菊江婆さんの前に正座で
すわり頭をさげます。

 『あ~あ、いよいよ死刑執行かあ~~』
 下げた頭で思うことはそれだけでした。

 「どうなさった?どうせ、また、相変わらずの事件じゃろう」
 菊江婆さんが訳知り顔で言うと……

 「お恥ずかしいのですが、その通りでして……実はこの子が、
また男の子と喧嘩をしまして……」
 お母さんはこう前置きして、私の罪を語り始めます。

 正直、聞いてる私ももううんざりでした。
 『そもそも女の子が喧嘩してどこが悪いの!』
 と思って聞いていました。

 お母さんが話し終えると菊江婆さんは綺麗な白髪をかき上げ、
一つため息をつきます。

 「おおかた、そんところじゃろうと思った。前にも言うたがな、
花枝さん。この子のそんな性格はあんたから来とるもんなんじゃ。
赤ん坊の時からずっと一緒で、同じ女の同士で生理も一緒。そり
ゃあどうしたって娘は母親の性格に似るもんじゃ。……というて
あんたも、あのご亭主じゃ、これからだってずっと商売していか
なきゃならんだろうし、そりゃあ女々しくてはやっていけんわな
……難しいところじゃな」

 菊江婆さんは、そこまで言ってしばらく考えていましたが……
突然、突飛な事を言い出します。

 「どうやろ。今度は、あんたがお灸をすえてみる気はないか?」

 母と娘、まさに目が点になっていました。

 「そうやろう、娘をいくら折檻してみたところで、親が変わら
んのなら同じことじゃからな。娘が変わるためにはまず親である
あんたが変わらんとな。……どうじゃ、ここでわしのお灸を受け
るというのは…………嫌かい?」

 今度はお母さんが考える番でした。
 そりゃあそうでしょう。娘を折檻しようと思ってやって来たの
に、自分がお仕置きを受けるはめになるんですから……

 私はお母さんが菊江婆さんの申し出を簡単に断ると思っていま
した。『はははは、ご冗談を』ってな感じで……

 でも、お母さんは……
 「承知しました。私が受けます」

 『え!?……ええええ!!!』
 今度、驚いたのは私でした。そして困ったのも私だったのです。

 「ねえ、やめてよ。私がお灸すえられればいいんだから……」
 私は突然の展開に、心の中が罪悪感で一杯になります。

 「いいのよ、早苗ちゃん。菊江さんの言う通り私が変わらない
限り何も変わらないんだもの。今度は私がお仕置きを受けるわ」

 お母さんの健気な言葉に、私は頭から血の気が引いていくのが
はっきりわかりました。

 あまりの急展開に『ちょっと、ちょっと、待ってよ~』という
事態です。

 それでも、事は順調に行われていきました。
 お母さんは何のためらいもなく上着を脱ぐと、薄い布団の上に
寝そべってその時を待ちます。
 菊江婆さんも作り置いた艾をあらためて締め固め、据える分の
数を勘定します。お盆の上にはまるで機械で作ったように12個
の艾が綺麗に並んでいました。

 これを、ブラウスを捲りあげたお母さんの背中へと置いていく
わけですが……もちろんこれって特別なことをしているわけでは
ありません。
 ここは鍼灸院ですから、治療目的で背中にお灸をすえることは、
誰にでもごく普通に行うことでした。

 でも、子どもの私にはそれがとても残酷なシーンのように感じ
られるのです。
 自分は治療の為にお灸をされたことがなく、ここではお仕置き
やいとしか受けたことがないので、やいとは全て怖いものでした。
それに何より、この原因は自分にあるわけですから、心に棘が刺
さったように気詰まりです。

 やがて、お線香の火が艾に移される瞬間になって……
 「やめて、お母さんにそんなことしないで」
 
 私は、もうほとんど無意識に菊江婆さんの持つお線香を両手で
押さえていました。

 「あれあれ、どうしたことじゃ。これはお前さんとは関係ない
事なんじゃぞ」

 「……それは……」

 「……ん?どうした……それとも何か、お前はそれほどまでに
お母さんがお灸を据えられるのが嫌か?」

 菊江婆さんは子どもの私の手を払い除けると、あらためて私の
目を見て呆れます。

 すると、今度はお母さんが……
 「いいのよ、早苗ちゃん。これは菊江さんと私だけのことなん
だから……あなたには関係ないわ」

 お母さんはそう言いますが、幼い私にとってこの目の前の現実
を見過ごすことなどできません。

 「いい。私がお母さんの分までお仕置き受けるから……」
 思わず禁断の言葉が口をついて出ます。

 すると、それを聞いたとたん、待ってましたとばかりお母さん
が起き上がります。菊江婆さんも、そそくさと艾の乗ったお盆を
片付けます。

 まだ青ざめてる私を尻目に、菊江婆さんはお母さんにむかって
こう言うのでした。
 「あんた、ええ子を持ったねえ。下のチビ二人といい、この姉
ちゃんといい、あんたには過ぎもんじゃないか。………親子は、
やっぱりこうでなきゃ」

 「はい、ありがとうございます」
 お母さんは恥ずかしそうに微笑みます。

 どうやら私、杜子春役をこの二人にやらされたみたいでした。
 でも、私がお母さんを助けずに傍観していたどうなっていたか、
…菊江婆さんのことです、とてつもないお仕置きで私を責めさい
なんでいたかもしれません。

 そう考えれば、事は私にとってもうまく運んだのかもしれませ
んが、だからといって私へのお仕置きがなくなったわけではあり
ませんでした。

 「あんた、お母さんの分までお仕置き受けるって言うてたな。
……なら、ここに来なさい」
 さっそく菊江婆さんが正座した自分の膝を叩きます。

 「…………はい」
 私が不承不承で進み出て……
 
 「お願いします」
 と正座したままお辞儀。

 「しっかり頑張りましょう」
 と言われたら……

 「お願いします」
 と言って菊江婆さんの膝にうつ伏せになります。

 右も左も分からない頃から続けている儀式を、ここでもう一度
やらなければなりませんでした。

 スカートがまくられ、ショーツが下ろされる間に、お母さんと
菊江婆さんの若い助手さんがそれぞれ両手と両足を押さえにかか
ります。

 「ふう」
 一つため息。
 こういうふうに拘束されるのって男の子はあまり好きじゃない
みたいですが、私は独りで頑張るより、この方がみんなから大事
にされているみたいで好きでした。

 やがてお尻のお山に艾が乗せられます。菊江ばあちゃんの唾で
お尻が一瞬冷たく感じられると、お尻だけでなく背筋までがぞく
ぞくっとして、その瞬間はまたオシッコを漏らしそうでした。

 「さあ、いくよ」
 菊江ばあちゃんの一言でお尻の山に火がつきます。

 艾が大きいですから火が回るまで30秒くらいでしょうか。
 火が回らなければ何ともありませんが、いったん火が皮膚へと
下りてくると、その熱いのなんのって……

 「いいいいいいいい」
 あまりに歯を食いしばって歯が折れそうなくらいですが、その
衝撃がやがて脳天にまで届き、手足の指先は放電したように痺れ
ます。
 責められてるのはお尻のお山だけなのに影響は全身に及ぶので
した。

 「いやいやいやいや、熱い、熱い、熱い、やめて、やめて」

 もちろんお尻へのお灸はこれが初めてではないんですが、やる
せない悲鳴は部屋中に響きます。

 私の両手は掴まる物を求めて畳の上を拭き掃除するようにジタ
バタ。あんよは苦し紛れにバタ足で畳をドタドタ。まるで金づち
の子がプールで必死にもがいているみたいな有様です。

 「こんなに大きな子がみっともない。静かに受けられないの!」

 お母さんには叱られますが、でも、こうでもしないと耐えられ
ないほどそれは塗炭の苦しみだったのです。

 お尻のお山へは幼稚園時代から何度も据えられてきましたから、
その痕は今でもはっきり残っています。

 おかげで随分と恥ずかしい思いもしましたが、当時の親たちは、
将来、自分の娘がTバックのような水着を着て、公衆の面前で、
自分のお尻を晒すだなんて、想像だにしていませんでしたから、
『こんなんじゃお嫁にいけない』と訴えても『いいの、いいの、
ここは他所様には見えない場所だもの、気にしなくていいのよ』
なんて嘯(うそぶ)いていました。

 そう、いくらお仕置きやいとと言ってもどこにでもすえていた
わけではないのです。それなりに娘の将来を気遣って人目につく
場所は避けていました。

 ですから、その場所は、当然、下半身が中心になります。
 
 お尻のお山に一つずつ据えられた後は、お尻の割れ目が始まる
尾てい骨に一つ。さらには仰向けにしてお臍の下、ビーナスの丘
と呼ばれる場所に三つ。ここらあたりにはほとんどの子が灸痕(
=お灸を据えた時の火傷の痕)を残していました。

 菊江婆ちゃんはプロですから、ほんの数回程度しかここを訪れ
ない良い子ちゃんたちには灸痕が目立たないように最大限の努力
をしてくれていましたが、私の場合は、お仕置きやいとの常連で
したからとてもそんなんじゃ間に合いません。いくら婆ちゃんが
努力しても据えられるたびに灸痕は大きくなっていき、この頃で
はすでに1円玉くらいの灸痕がお尻の山に張り付いていました。

 いえいえ、それだけじゃありません。私くらいの大物になると
仰向けのまま両足を高く上げさせられて、大淫唇や膣前庭にも…
とてもお友だちには見せられない格好で据えられます。

 実はここ、熱さはそれほどでもありませんでしたが、なにしろ
女の子にとってはシンボリックな場所ですから、一度据えられる
と、精神的にはかなり辛い思いを引きずることになるのでした。


 そんな菊江婆ちゃんのお仕置きを何とかやり過ごして、ほっと
しているときでした。お臍の下が今でも暖かく感じられますが、
『とにかくこれで帰れる』と思っていたのです。
 ところが……

 「おう、おう、そうじゃ忘れるところじゃった。早苗ちゃん、
あんた、お母さんの分も引き受けるって言うとったな。今日は、
あれもやらなきゃいかんな。そうじゃ花枝さん、今度はあんたが
やってみなさいな」

 菊江婆ちゃんは忘れてしまえばいい話を思い出したばかりか、
今度のお仕置きをお母さんにやらせようというのです。
 私はハンマーで後頭部をガーンと一撃された思いでした。

 「うっ、嘘でしょう。また、やるの?」
 私が思わず口走ると……

 「そうじゃ、お前ももう大きいんだし、二度くらいやられても
どうってことないじゃろ」
 菊江婆さんは軽く笑い飛ばしますが……


 『冗談じゃないわよ!!』
 私は言葉には出さなくても、その顔で菊江婆さんを睨みつけま
す。本当に、冗談じゃありませんでした。
 でも……

 「何じゃ、機嫌が悪いのう。お前言うたじゃないか、お母さん
の代わりにお仕置きを受けますって……今度がその分じゃよ……
それとも何か、ありゃ嘘じゃったか……しかし、だったらだった
で、嘘をついたお仕置きをせねばならんぞ……」
 菊江婆さんは、不機嫌な私を底意地の悪そうな笑いを浮かべて
見返します。

 「そんなこと言ったって……」
 私は口を尖らせますが、もうそれ以外抵抗できませんでした。
実際、中学生、高校生……いえ小学生でも高学年になれば二回目
というのもそう珍しいことではなかったのです。

 「花枝さん、まずは艾をしっかり固めて円錐形にすることじゃ。
塊になりにくいときは唾をつけてなじませなさい。安い艾は塊に
なりにくいから、銭を惜しまず高いものを買うてくることじゃ」

 「はい……やっぱり、高い物の方が熱いんでしょうか?」

 「逆じゃ。艾は安い物の方が熱い。しかも、火ぶくれなんかに
なりやすくて、将来灸痕が大きくなるから避けた方がいいんじゃ」

 「そうなんですか」

 「お灸で折檻する時は、ちょこっとでいいんじゃよ。ま、この
くらいのお転婆になると、ちょこっとじゃ物足りんかもしれんが
な」

 「えっ!……」
 いきなり菊江婆さんの視線がこっちへ飛びましたからびっくり
です。

 「お宅の下のチビちゃんたちなら……まずはしっかり抱いて、
……おお、そうじゃ、早苗ちゃん、ちょっとおいで……」

 私がわけも分からず傍によると……菊江婆さんは一瞬の早業で
私を膝の上に抱きかかえます。
 それって、とても老人とは思えない瞬発力そして怪力でした。

 「こうして、逃げられないようにしたら、できるだけ怖い顔を
作って散々脅したあげく、最後に小指の先ほどの小さな艾を……
こうやって乗っけたら……」

 『あっ、……だめ』
 私はせっかく穿いたパンツを再びずり下げられると、無防備な
お臍の下にまたもや艾を乗せられてしまいます。
 その実に手馴れたこと。私だって身体はそこそこ大きいのに、
まるで抵抗できませんでした。

 しかも今度は、お母さんが身を乗り出して私のお股を覗き込み
ますから、最悪です。思わず横を向いてしまいました。
 実際、それくらいしか抵抗の手段がなかったのです。
 もちろん、そんなの関係なく菊江婆さんの講義は進みます。

 「このくらいの艾はな、こうして火をつけたら……」

 『いやあ、やめてえ~~』
 菊江ばあさんの膝の上で拘束され、どうにもならないまま目の
前の艾に火がつきます。

 「赤くなった艾の頭が、ほれ、黒くなったら……」

 『あっ、痛い』
 その瞬間、針で刺したような痛みが走ります。

 お灸を据えられたことのない人はお灸って熱いものだと思って
るようですが感覚的には熱いは通り越してむしろ痛いものでした。

 「こうしてな、指の腹でもみ消してしまうんじゃ。これで十分。
くれぐれも子どもが熱がらないからといって、ほおっておいちゃ
いかんよ。火傷が大きくなるからな」

 「はい」

 「子どもは親が頼りじゃ。特にお前さんとこのように親との間
にちゃんとした絆のある子どもは、『我慢しろよ』と言われたら
言われた通り必死に我慢する。親が子どもの顔色を見て『ああ、
まだ大丈夫だろう』ぐらいに思ってると、思わぬ火ぶくれを起こ
して火傷の痕が大きくなるからな。子どもの顔色は見ずに、親が
判断するんじゃ」
 
 「はい、わかりました。とにかく、艾の火が見えなくなったら
すぐに消すんですね」
 お母さんは菊江婆さんのレクチャーをいつになく真剣に聞いて
います。

 この時代、親が自分の子供にお灸をすえることはべつに珍しい
ことではありませんが、うちのお母さんは不器用な人ですから、
これまで自分で子供にお灸をすえるのをずっとためらっていま
した。
 でも、この真剣さを見ていると嫌な予感が働きます。

 「そうじゃ、……ただ、わしがこの子の尻ぺたに据えたような
大きい物は火が見えなくなってもほんの少し待たんと効果がでん
けどな……今のお前さんはまだ小さいのだけにしといて、悪さが
過ぎるようなら、またここに連れて来なさい」

 「はい、そうします」

 「よし、それじゃあ少し練習してみようじゃないか。……ほれ、
わしと同じように抱いてみなさい」
 菊江婆さんは私をお母さんに手渡します。

 「えっ!?…どういうこと?…練習って、またお灸すえるの?」
 私はたまらずお母さんに問いただしましたが答えたのは菊江婆
さんからでした。

 「お前もまだもの足りんじゃろう。ちょうどええ機会じゃから
もう少しやってもらいなさい。今度は母御前(ごぜ)じゃからな、
わしよりもっと楽しいはずじゃ」

 『楽しいって何よ!』
 私は菊江婆さんのこの悪魔的な言葉の意味が理解できませんで
したが、とにかく絶望的な状況にあることは確かで、正直、反論
する気にもなれなかったのです。
 すると……

 「おお、素直になったな。それがええ。……世の中、何もお灸
だけがお仕置きじゃないが、こうやって、母親に抱かれてされる
お仕置きは親子の絆が深まるんじゃ……今のお前には、まだまだ
分からんじゃろうがな、大人になると自分をお仕置きしてくれた
人が妙に懐かしくなるもんなんじゃ」

 「馬鹿なこと言わないでよ、けだもの」
 私は正座するお母さんに羽交い絞めにされたまま思わず感情を
むき出しにして言ってしまいます。
 ま、こんなだからいつもお仕置きが絶えないわけなんですが…

 たちまち、お母さんが私のほっぺを思いっきり抓りました。
 「何言ってるの。いったい誰に向ってお口きいてるの!」

 「痛い、たいたい……」

 「まあ、よい。責めなさんな。分からんのがむしろ道理じゃて。
お前さんはまだ世間に出たことがない。かかさんの愛の中から、
指一本出たことはないんじゃからな」

 菊江婆さんの謎の言葉が終わると、いよいよお母さんのお仕置
き練習が始まります。

 理不尽この上ないモルモット扱いですが、私はお母さんの子供、
受忍するしかありませんでした。


 お母さんが正座する膝の上に寝そべって私は自分のビーナス丘
を眺めます。早い子はすでに発毛している子もいましたが、私の
そこはまだすべすべのままでした。

 そこへ唾で湿り気をくわえた艾が一つまた一つと置かれていき
ます。
 「何よ、一つずつやるんじゃないの?」
 私が不満そうに言うと…
 「練習よ、練習」
 ってあしらわれてしまいます。

 そして、恐れていた通り、その三つの小山にお線香の火が一気
に移されたのです。
 お母さんを止める暇なんてありませんでした。

 「いやあ~~~熱い、熱い、熱い、熱い、熱い、熱い、何する
のよお、取って、取って、取って」
 私は両足を必死にバタつかせて抗議します。

 二度目のお灸は熱がより体の中まで入りますから芯から熱いの
です。でも、もしこれが菊江婆さんなら、私はもっとおとなしく
していたことでしょう。
 そんなこと、菊江婆さんは百も承知のようでした。

 「おう、おう、甘えてからに……まだ、まだ、子供じゃのお。
……それでは、その子供の場所にもう一つ、据えてみようかのう」

 菊江婆さんはそう言うと私の両足を持ち上げて、くの字に折り
曲げます。最後は、両耳の辺りに足先が着いて、お母さんの顔が
目の前にクローズアップして現れます。
 当然、私の女の子は他の人たちからは丸見え、外の風が涼しく
当たるのを感じていました。

 「花枝さん、今度はここに据えてみなさい」
 菊江婆さんが私の微妙な場所に触れます。

 『いやっ……やめてよ、変態ババア!!』

 「えっ!……でも……」
 菊江婆さん言われたお母さんもさすがにここは戸惑います。
 でも……

 「大丈夫、心配せんでもこの子の足はわしと鈴子さんで押さえ
とるから暴れたりはせんよ。ここは心棒いうてな、じゃじゃ馬、
お転婆を大人しくさせるには大事な急所なんじゃ。覚えて帰って
損はないぞ」

 菊江婆さんに言われると、お母さんはすぐに心変わりしたみた
いでした。

 「いやあ、そんなのいや」
 私はお母さんの心変わりを察知して、慌てて身体をくねらせて
抵抗したのですが、大きくなったと言っても私の身体は華奢で、
お母さんのお腹に納まっていましたから抜け出せません。

 「大丈夫よ、早苗ちゃん。そこは私も子供の頃据えられたけど、
そんなに熱くないわ」

 お母さんは、私の目の前で艾に唾をつけ、それを私のオ*コに
乗せていきます。
 右左一つずつ。煙が狼煙のように立ち上ったのが見えます。
 そして、すぐに……

 「ひぃ~~~~~いや~~~~~いや~~~~~」

 そんなに熱くないなんて誰が言ったんでしょうか、私にとって
は卒倒する程の熱さです。その熱さはお股の中に留まらず、背骨
を伝って脳天まで達し、顎はガタガタ、手も足もしばらく震えが
止まりませんでした。

 「花枝さん、ようやった。女の子は心棒を通してからが一人前
じゃからな、この子もちっと大人しくなるはずじゃ」

 菊江婆さんは自画自賛、ご満悦でしたが……
 その菊江婆さん、私にはこんなことを言います。

 「どうした、熱かったか?……それはな、かかさんからされた
からじゃ。わしがやったら、緊張して熱さもさほど感じんがな。
相手がかかさんなら、嫌なら嫌とものは言えるし甘えられるから
ついつい気が緩んで同じことをされてもより熱いと感じてしまう
もんなんじゃ。逆にどうしてもやらなゃいかんという踏ん張りは、
わしなんかより、かかさんに言われた方が数倍頑張れるぞ。……
だから親子なんじゃ。……よし、最後は尾てい骨にもう一つじゃ。
今度のはどこより一番熱いからな。しっかりと歯を喰いしばって
耐えるんじゃぞ」

 菊江婆さんはそう言うと、正座した膝に座布団を乗せて、私を
うつ伏せにすると、お尻の割れ目が始まる場所を大きく広げます。
 ついさっきのお灸でもヒーヒー言った場所です。ここでも艾を
置いたのはお母さん、お線香で火をつけたのもお母さんでした。

 だからという訳でもないのでしょうが、その時のお灸の熱いの
なんのって……

 「ひぃ~~~~~~~~~~~」
 こんな時はただ必死に我慢するだけ。悲鳴すら出ませんでした。

 そして、それが終わった時、私は敷かれた座布団が濡れている
ことに気づきます。
 
 『えっ?これって、私のオモラシ?』
 私は思わず我と我目を疑いましたが、ほかに濡れる原因なんて
ありませんから、やっぱり紛れもない事実でした。

 ただ、それを見ても菊江婆さんはにこやかな笑顔を見せるだけ。
お母さんも仕方がないといった顔で着替えを手伝うだけだったの
です。


 良い意味で、まだ子供だった私。でも、お灸の据え方を覚えた
お母さんはからちょくちょく裸にされてはお灸を据えられること
になります。
 この時も……

 「まだまだお漏らしするような子は、これでしっかり良い事と
悪い事をお勉強しましょうね」

 お母さんは楽しそうにこう言って、もう一度艾を締め固めては
尾てい骨のあたりを押し開いたままにして、その艾を乗せると、
お線香で火をつけます。

 「ひぃ~~~~~~~~~~~」

 私はこの瞬間に限らず、中学生になっても、高校生になっても、
そのお線香の火の下で生唾を飲み込み、脂汗を流し、手足をバタ
つかせて、お母さんのお仕置きに耐えることになるのでした。


***************************      

コメント

[C20] 面白い

懲戒所という設定良いですね。
母親がお仕置きされそうな時に少し思いましたが、悪いことをした大人がここでお尻丸出しでお灸のお仕置きされるというのも面白いのかもしれませんね。
  • 2016-07-02 21:00
  • まさし
  • URL
  • 編集

[C21] まさしさんありがとう

 まさしさんコメントありがとうございます。(*^_^*)
 まさしさんは読みが鋭いですね。驚きました。((^。^;)ノ
 実はこの小説、当初は親子どんぶり(今、この言葉は理解不能
かな?)で描こうとしてたんです。
 まず、お母さんが菊江婆さんからお仕置きを受けて、それから、
早苗ちゃんのお仕置きという手順だったんですが、そうすると、
子供の側のショックが大きすぎるような気がしてやめてしまった
んです。
 もちろん、そんな事、こんな小説で考慮することじゃないとは
わかっているんですが、歳を取ったせいか、そのあたりがどうも
変に分別くさいことばかり考えるようになってしまって……
 吹っ切れた感じの小説が描けないんです。_〆(・・ )♪
 ご容赦ください。m(._.)m

 
  • 2016-07-04 09:59
  • Tutomu Kurakawa
  • URL
  • 編集

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このブログについて

tutomukurakawa

Author:tutomukurakawa
子供時代の『お仕置き』をめぐる
エッセーや小説、もろもろの雑文
を置いておくために創りました。
他に適当な分野がないので、
「R18」に置いてはいますが、
扇情的な表現は苦手なので、
そのむきで期待される方には
がっかりなブログだと思います。

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