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早苗お姉ちゃん/番外編

      早苗お姉ちゃん/番外編 

*)お灸の小説。それも私には珍しく大人のお尻にお灸をすえる
話です。ただ、私の作品ですからね、興奮できるお話にはなって
いません。(^o^ゞ


 お灸の味を覚えた母は、それ以後何かと言うと、お灸でのお仕
置きを仕掛けてきました。
 中学から高校にかけての私はかちかち山のタヌキ扱い。

 もちろん正当な理由のある時もありますが、多くは女性独特の
気まぐれ。『何となく私を虐めたくなったから……』などという
信じられない理由が大半だったのです。
 そう、お仕置きに名を借りた虐待だったんです。

 本当は、弟たちにも厳しいお仕置きをして『ストレス解消』と
いきたいところでしょうが、あちらは男の子。小学生といっても
高学年くらいになると押さえつけるだけでも一苦労です。
 まして彼ら、父からたっぷり入れ知恵されて育ってますから、
議論なんかしたらすでに負けてしまいます。
 そんなこんなで、ストレスの解消先はもっぱら私が引き受ける
ことになるのでした。

 おかげで、私の身体はいたるところ灸痕だらけ。『これじゃあ
結婚できない』と真剣に悩みました。
 そこで、そんな母とは断固別れるべく大学は東京へ。
 偏差値なんて関係ありません。とにかく自宅から通えるところ
はすべてNGでした。

 望みが叶い東京での生活は気ままな一人暮らし。学生寮でした
が親元を離れた寂しさなんて微塵もありませんでした。頭が悪い
ので勉強はしませんでしたが今にして思えば楽しいことばかりの
四年間でした。

 当然、そのまま東京での就職を考えましたが、親の反対にあい、
田舎に戻り地元の銀行に就職。ただし、何だかんだ理屈をこねて、
実家に戻ることだけはしませんでした。
 もうこれ以上お灸をすえられるのはごめんだったのです。

 いくら大人になったといっても、母は依然として怖い人でした
から、離れているにこしたことはありませんでした。

 そのうち、ある人と縁あって結婚。私の家は母が情のきつい人、
父が少しだらしのない人でしたから、そうでない人……つまり、
性格が穏やかで仕事に真面目に取り組む人が望みでした。

 結果、『よし、この人』と結論が出て結婚したのです。

 確かに、最初は毎日がバラ色の日々。甘い生活、美味しい生活
だったのです。彼は、いつも私をやさしく気遣ってくれますし、
お給料もちゃんとちゃんと入ってきます。もちろん、私の灸痕の
ことをからかったりもしません。それは『不幸な事故』とよんで
くれていました。

 そうなんです。何の不足も問題もない、申し分ない新婚生活の
はずだったんですが……でも、そのうち『何かが違う?』『何か
が足りない?』と思うようになったのでした。

 『何が理想と違うのか』『何がこの生活に足りないのか』それ
が分からないうちに、私の心はストレスを抱え込んで蝕んでいき
ます。

 そんな私の異変に最初に気づいたのは離れて暮らす母でした。
 彼女は電話口の私の声だけでその変化に気づくのです。

 母は私に『菊江婆さんに相談してみたら』と忠告します。
 当時、こんな場合にまず相談するのは、人生経験の豊かな人。
今のように『精神科の先生に…』なんてのはよほど深刻な場合に
限られていました。

 私は、『子供の頃じゃあるまいし、今さら、あの婆さんに何が
分かるっていうのよ』と、断り続けましたが、とうとう折れて、
再び鍼灸院の玄関を入ります。

 子供の頃、母に連れられ、心臓が飛び出す思いで座布団の上に
座っていた待合室は、十数年の時を経ているのに昔と変わらない
姿で残っていました。まるでその時代にタイムスリップしたよう
です。

 「倉田さん、……倉田さん、いらっしゃいますか」
 そうそう、待合室の私たちを呼びに来る串田のお姉さんだけは
随分と貫禄がついたようでしたが……

 私と母は、やはり昔と変わらない中庭を通って、奥の離れへと
やってきます。

 「倉田でございます」
 障子の前の廊下で正座する母。
 「おう、倉田さんか、お入り」
 菊江婆さんのだみ声までが、幼い頃のビデオを見ているよう…
不思議と恐怖や不安はありませんでした。

 「おう、おう、早苗ちゃんかいな。久しぶりやなあ。結婚式に
およばれして以来じゃな。……こっちへおいで」

 迎えてくれた菊江婆さんは少しお歳をめしたでしょうか。でも、
何より変わったのは部屋の中。畳敷きだった部屋が板張りになり、
ベッドが置かれ、何やら怪しげな機械もあります。まるで病院の
診察室のよう。新しい女性のお弟子さん(助手さん)の顔も見え
ます。

 でも、今日はここではありませんでした。
 その施術室の奥が、菊江婆さんが一服するプライベートルーム
になっていて、そこも洋間でソファが置いてありました。
 私たちはそこへ通されます。

 「どうした?…元気にやっとるか?……あのご亭主はやさしい
じゃろう。結婚式で見かけたが、なるほど育ちの良さそうな顔を
しとった」

 「はい」
 私は手拍子に『はい』と言って笑顔になりますが、海千山千の
菊江婆さんにそんな営業笑いが通用するはずもありませんでした。

 「…………」
 微妙な間があったあと、菊江婆さんは大胆に切り出します。

 「どうじゃ、ちゃんと夜は可愛がってもらっとるのか?」

 ドキッとする質問。でも、気を取り直して……
 「はい……」
 か細い声で答えます。

 実際、私は主人から夜も愛されていましたからそれ自体嘘では
ありませんでしたが……
 しかし、私の顔を穴のあくほど覗き込んだ菊江婆さんはこんな
ことを言います。

 「やってはもらっているが、物足りぬということじゃな」

 「そんなあ……」
 思わず嬌声が出ましたが、それはある意味、図星でした。

 「要するに、今が幸せ過ぎるのよ」

 「(どういうこと!?)」
 意外な答えに目が点になります。

 「あの家のご内儀ともなればお前は何もせんでも暮らせるはず
じゃ。しかも、あの旦那は見るからに紳士じゃからな、ことの他
優しかろう。……そうじゃろう?」

 「………………」
 同意を求められましたが答えませんでした。

 「そんな幸せ過ぎる場所というのは……人間、かえって苦痛な
もんじゃ。……『過ぎたるは及ばざるが如し』と言うてな。ちと
高望みし過ぎたかな」

 「……(何言ってるの?)」
 私は笑顔で語る菊江婆さんの言葉に戸惑いを覚えます。
 だって、幸せがどんなに積み重なっても不幸になるなんてこと
ないと思ってましたから……

 「スポーツなんてのもそうじゃろ。プロになった人を除けば、
あんなことをしてみても何の得にもならんはずじゃが、苦労して
得たものがあるというだけで、人は困難に立ち向かう勇気と自信
が得られる。……おなごかてそうなんじゃぞ。…おなかを痛めて
死ぬ思いをして産んだ子じゃから愛着もひとしおなんじゃ。……
わかるか?」

 「……は、はい、少しは……」

 「人は、空気のように無条件で手に入れられるものには愛着が
わかんもんじゃ。お金に不自由しないで育つと幸せなように思う
かもしれんが、そんな奴に限って、お金のありがたみが分からん
から親の財産を平気で食いつぶす。親に溺愛された子もそうじゃ。
そんな子はろくに親から折檻されたことがないから、親の愛情が
どれほど貴重かがわからない。お金や愛情をただ与えさえすれば
人が育つとでも思ったら大きな間違いじゃ。お金や愛情は、その
値打ちまでも伝えて、初めてその子の役にたったと言えるんじゃ。
折檻というのは、それだけ見ると悲劇じゃがな、親の愛情と表裏
一体じゃからな、なければそれにこしたことはない、というほど
単純なものじゃないんじゃよ」

 「そうなんですか……」

 「その点、お前は、そのかかさんにしっかり躾けてもらっとる
からな、苦労なく何でも得られる今の生活にはどうしても違和感
を感じてしまうのよ。貧乏性、苦労人の性じゃな」

 「でも、それって、やっぱりまずいことですよね」

 「確かにな、郷に入りては郷に従えというからな。……ただ、
そんな場合でも擬似的にそれを作り出すことはできるぞ」

 「どういうことでしょう」
 ここまできてやっと母が口を開いた。

 「簡単じゃ、SMじゃよ」

 何気に飛びたした菊江婆さんの言葉に母と娘は固まります。
 いまでこそ、SMと聞いても驚く人は少数でしょうが、当時は
『SMイコール変態。変態イコール精神異常者』と思われていた
時代でした。

 「そう、怖い顔をしなさんな。サディスティクな思いも、マゾ
ヒティックな思いも、ごく普通に暮らす全ての人の心の中にある。
親が子を折檻するんだって、一応大義名分は掲げてやっていても、
サディスティックな楽しみとまったく無縁とは言えんじゃろう。
芸人がよく使うイジリというのもそれかもしれんな。……ただし、
どんな場合も相手を思う気持、愛情あっての戯れじゃがな」

 「私は何もそんなつもりは……ただ、この子の教育に……」
 母は反論しますが……

 「だから、そうやって『教育』『教育』と教育を隠れ蓑に使う
から、逆に子供に不信感を持たれるんじゃ。子どもは人生経験も
知識もまだないが、親が本心とは違う何かで自分を説得しようと
する時はそれを鋭敏に感じ取るものなんじゃ。……裃はいらんよ。
『好きなものは好き』『嫌いなものは嫌い』『そんな考えは自分の
信念に反する』そうはっきり言ってやれば、それでいいんじゃ。
あとは大人になった子どもが自分で判断する」

 「そうなんでしょうか」

 「そうなんでしょうかって……あんた、そうやって育ててきた
からこんな良い子ができたんじゃないかい。自信もってええこと
なんじゃぞ。……子供だってそうじゃ」
 菊江婆さんの視線が今度は私に向きます。

 「そりゃあ、折檻されれば心に傷はつくじゃろう。しかしな、
心を傷をつけずに大人になる者なんて、誰もおりゃせんのじゃ。
人は心に傷を受けながらもそれを治しながら大人になっていく。
強くなっていくんじゃ。人がばい菌だらけのこの世界でも元気に
生きていけるのは、親から受け継いだもの、自分で獲得したもの、
いずれであっても身体に諸々の免疫力があるから健康でいられる
んじゃ。親の折檻も同じよ。そこに愛情がある限り心の免疫力と
なって子供の心を支え続ける。折檻された子が成長してなお親を
思慕するのは、言われた事実が真理に副っていたからではないん
じゃぞ。その時、親が自分の心に寄り添ってくれていたからなん
じゃ。辛いお仕置きを追体験してマゾヒティクな感傷浸るなんて、
ろくに親から愛情を注がれた事のない者にしてみれば、それこそ
狂気の沙汰としか思えんかもしれんがな。その狂気は、愛情深く
育てられた子供なら誰もが持つ人間性の狂気、人間らしく生きて
きたという証なんじゃ」

 菊江婆さんはいつになく饒舌に自説を語ります。でもそれは、
この時代の風潮が自分の考えとは逆の方向に流れていっている事
への苛立ちでもあったのでした。

 「それって………また、ここでお灸をすえてもらいに来るって
ことでしょうか」
 恐る恐る尋ねてみますと……

 「馬鹿言っちゃいかんよ。そんなものは、今やわしの仕事でも、
おっかさんの仕事でもあるかいな」
 菊江婆さんは破顔一笑。
 「あんた、ご亭主がいるじゃないか。そんな事はご亭主の仕事
に決まっとろうが……」
 あとは高らかに笑うのでした。

 しかし、そう言っておきながら……
 「そうは言うても、とっ掛かりがないと、やりにくいじゃろう。
そこは協力してやらんと、いかんじゃろうなあ」
 菊江婆さんは、一段と大きなだみ声を張り上げます。
 それは、私と母だけに伝えるには不必要なほどの大声でした。

 「どうじゃ、久しぶりにお灸でもすえて帰るか。子供の頃とは
違ごうて、大きな艾にも耐えられるじゃろうし、立派なご亭主も
いて納まる処に納まったんじゃから、これからは尻っぺたの灸痕
も気にせんでよかろうしな……いずれにしても、据え甲斐がある
というもんじゃて……」

 私は菊江婆さんのこの言葉は冗談だとばかり思っていました。
 ところが……

 「そうね、その方がいいかもしれないわね」
 母があっさりと賛成にまわります。

 すると若い助手のお姉さんまでもが、待ってましたとばかりに
ソファを片付け、薄い布団を敷き始めます。
 あまりと言えばあまりに手回しが良すぎました。

 「いや、やめて、私、今日はそんなつもりじゃ……」
 私は慌てて否定しますが……
 ここにいた全員が、私の言葉など聞く耳をもたないといった風
だったのです。

 手荒い歓迎会でした。

 薄い布団の上にうつ伏せにされると、その背中に四人もの大人
がのしかり、私はまるで車に轢かれたヒキガエルみたいに潰され
てしまいます。

 「いやあ、何?、何よ!、何よ!、何なのよ」

 母が右手を……左手は昔からここにいた串田さんが……両足は
若い助手さん……最後は、菊江婆さんの大きなお尻が腰の上に乗
っかると、もう息も出来ないほどでした。

 「いやあ~~、だから、やめてえ」
 あっという間の出来事。母から首根っこを押さえつけられる前、
一言叫ぶのがやっとでした。
 
 スカートを捲られ……
 ショーツを下ろされ……
 子供時代と同じ手順。でも、何も抵抗できませんでした。

 むき出しになったお尻に涼しい風が当たります。

 ただ……
 「……!?」

 それはこの場の熱せられた空気ではないようです。

 ドアが開き、誰かがこの部屋に入って来たような気配がします。

 「ほれ、見てみんしゃい。これは単なる傷ではないぞ。この子
が立派に更生しとる証じゃ」
 菊江婆さんは私のお灸の痕を摘み上げました。

 『誰?誰か他にいるの?』
 私は不信感を持ちますが、こう何人もの大人に押さえつけられ
てしまっては後ろを振り向くことはもちろん、身じろぎ一つ……
いえ、言葉を発することさえままなりませんでした。

 その人が声を出さない限り、私はそれが誰なのかを知るすべが
なかったのでした。

 「お前さんも、ここを責めてやることじゃ。ほれ、触ってみい」

 菊江婆さんに勧められてその人の指が私の灸痕に触れます。
すると……

 「(えっ!!男の人!?)」
 私は直感的にそう思います。
 もちろん、そうなら一大事でした。

 「喜ぶぞ。昔の粗相の痕じゃからな」

 「喜ぶって?……こんな辛い思い出なのに……」
 私はその時その人の声を初めて聞きました。そして全身の血が
凍りついたのでした。

 「そうじゃよ、お仕置きなんてものは、されてる時は地獄でも
それから時間が経って、今が幸せなら、その辛かった思い出も、
自分を彩る楽しい思い出の一部に過ぎんようになるんじゃ。……
お前さんは、今、この子を幸せにしとるんじゃろう?」

 「はい、そのつもりです」

 「だったら何も心配は要らぬ。この灸痕だって、他人様が心配
するほど本人は気にしとらんもんじゃ。だからここを責めてやれ
ばいいんじゃよ。『悪さする子にはお仕置きだぞう』と言うてな」

 「えっ?、あっ……はい」
 夫は気のない返事を返していました。

 「(ははははは)喜ぶぞう」

 「(何言ってるのよ、くそババア!!!)」
 私は母に押さえつけられた頭の中でそう思っていました。

 「だから、今日はあんたが火をつけてやるんじゃ」

 「(え~~~)」
 さすがに驚いて、私は全身に力をいれ、起き上がろうとようと
しましたが、無駄でした。
 いずれも女性ですが、四人もの大人たちにのしかかられ押さえ
つけられてるんです。私の身体は微動だにしませんでした。

 「大丈夫でしょうか、僕で……」

 「大丈夫も何も、あんたの仕事は、その手に持ったお線香を、
艾の頭に近づけるだけのことじゃ。そんなこと、こんな小さな子
どもでもするぞ。……ほれ、ほれ、お前も男じゃろうが、おなご
の一人や二人泣かせんでどうする。男がすたるぞ」

 菊江婆さんが励ますと、母までが……

 「恒夫さん、大丈夫ですよ。この子は、幼い時からたっぷりと
お灸で育ててますから、このくらいのことじゃあへこたれません。
すえちゃってください」

 馬鹿母までが調子に乗ります。
 気がつけば、若いお弟子さんも、昔からいる串田さんも、かす
かな笑い声を漏らしていました。

 私は、目も見えず、口も利けず、身体の自由がままにならない
状態でしたが、こんな時って、他の場所は敏感になっています。
耳でその場の空気感を読み、皮膚感覚だけでお尻に乗っけられた
艾の大きさを推測します。

 その皮膚感覚が叫ぶんです。
 「(馬鹿、本当にやめてよ。そんなに大きなのに火をつけたら
私のお尻に穴が空くじゃないの。何よ、これは何なの!みんなで
寄ってたかって……単なるリンチじゃないの。集団リンチだわ)」
 私は絶望のなか、身を固くします。
 というか、それより他、やることがありませんでした。

 やがて、菊江婆さんが、艾の乗った私のお尻を抓るようにして
持ち上げると……

 「ほれ、ここじゃ。線香を当てて……」
 主人に指示します。

 そして、ほどなく……
 「ぎゃあ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~」

 私は布団を噛みながら、本来上げられるはずのなかった悲鳴を
上げます。もう、のっけから頭の中が真っ白でした。

 「おう、ちっとは堪えたか?……よしよし、では今度はこっち
のお山にしようかな」
 憎憎しい菊江婆さんの独り言が耳元でします。

 そして……
 「いやぁぁあ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~」
 母に押さえつけられている頭を激しく振り乱し、半狂乱になっ
て叫びます。

 『死ぬ、死ぬ、死ぬ………………』
 心の中だけの断末魔の悲鳴、夢に紛れ込こめないほどの強烈な
現実の痛み。……身体は七転八倒したいのに、あらん限りの声で
悲鳴を上げたいのに、それさえ出来ず、ただひたすら悪魔の火が
私のお尻を突き抜けて、子宮の宮へ到達するまで、私は、じっと
耐え忍んで待っていなければなりませんでした。

 そして、その悪魔の火が子宮に納まる頃になってまた次の火が
現れます。

 「(ぎゃあ~~~いやぁ~~だめえ~~死ぬ、死ぬ、死ぬ~)」
 串田さんに猿轡をされて声は出ませんが思いは今まで以上です。

 耐え難い苦痛をただ耐えるだけの時間。動かせない頭を無理に
動かそうとするもんですから、私の頭の中には血が一滴も残って
いませんでした。

 と、その時です。私は不思議な感覚に襲われます。
 『いやあ、身体が浮いてる』
 意識朦朧の私は、その瞬間、浮くはずのない身体が浮いている
と感じてしまうのでした。

 その瞬間に苦痛はありません。
 『このまま天国へ……』
 そう感じられるほどだったのです。

 ただそんなさなかでも、熱の悪魔は依然としてお尻をつき抜け
私の子宮を収縮させ続けています。

 そして、四番目の火がお尻に下りた時……
 「(ぎゃあ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~)」
 その苦難の悲鳴と一緒に、私はその身体の芯が濡れてることに
気づきます。
 
 『こんな苦痛の中で、どうしてよ!……こんなんで、楽しめる
わけないじゃない!!!』
 そうは思いましたが、でも感じてしまったのも事実でした。

 おっぱいが張り、子宮の奥の奥、切なさを司る女の神経が私の
身体をこれでもかというほど締め上げます。

 『あっ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~』
 長い余韻を持つ快感が噴出してきます。

 『あっ~いやあ~~何よ、~何なのよ、これ、止めてよ~~』

 結果、それは私の意志とは無関係に私の出口でピチャピチャと
卑猥な音をたて始めます。

 最後の四番目の火がお尻に下りた時はすでに放心状態でした、

 若さゆえの恥ずかしい液体を布団にべっちょりとつけても興奮
は納まらず、身体の芯がしばらくはヒクヒクと脈打ち続けます。

 『とうして、お灸を据えられただけでこうなるのよ』
 やけっぱちにこう思いましたが、でも起こっていることは事実
であり現実。隠しようがありません。

 誰に尋ねられても決してこうは答えませんが、正直に言うと、
それってやっぱり……『あ~~~気持よかったあ』でした。

 「感じたみたいじゃな。ならば、もうよかろう」
 やっと、菊江婆さんのお許しがでます。

 そして、衣装を調えた私に対して……
 「ほれ、恒夫さんのお膝に乗ってみんかい。今据えたばかりの
灸がこそばゆくて気持がいいぞ」

 もちろんそんな事、普段なら気恥ずかしくて容易にできません
が、こうまで完璧に押さえこまれてしまうと、何故かそんな命令
さえも素直に従えるのでした。

 菊江婆さんは誰もが日常生活に戻ってくつろいでいるのを確認
すると、その輪の中で再び話し始めます。

 「世の中では、浣腸遊びのことをウォータースポーツと呼ぶん
だそうな。さすれば、わしのこれはファイアースポーツじゃな」
 高らかに天井を向いて笑います。その笑顔に屈託など何もあり
ませんでした。

 「人間は困難に打ち勝って何かをなすと、日常生活では得られ
ない興奮や快感を得ることができる。そこは、スポーツもSMも
同じなのじゃ。…しかもそれが、幼い日に受けた折檻と繋がって
いれば、高まるリビドーはさらに倍加する。イギリスの老紳士は
鞭で育てられているから鞭なのじゃが、この子はお灸で育てられ
てきたからお灸が一番効果がありますのじゃ」
 菊江婆さんは恒夫さんと視線を合わせる。
 「頼みますよ。恒夫さん。……おなごの幸せはなんと言うても
ご亭主しだいじゃからな」

 菊江婆さんに頼まれて、夫は気恥ずかしそうに……
 「はい」
 と返事を返します。

 母からも……
 「どうか、よろしくお願いします」

 「はい、ご心配をおかけしてすみませんでした」
 やはり、穏やかに返事を返します。

 その間も彼は私の頭を撫で続けていました。それって、まるで
夫婦と言うより親子といった感じでした。
 でも、そうされているのが、その時の私には幸せだったのです。

***************************

 その後、私たちが夫婦が、すぐに菊江婆さん直伝のファイアー
スポーツを始めたわけではありませんが、子供が生まれ、その子
に手がかからなくなり始めた頃、夫が決断して始めてしまいます。

 私のお尻には1円玉や10円玉ではなく、500円硬貨ほども
ある大きな大きな灸痕が残りましたが、今となっては、彼の他に
ハズバンドを持つ気もありませんから後悔もありません。

 毎日貞操帯を着け、週に一度はウンチを我慢する生活。
 夫は今でも優しくて私のオムツまでも替えてくれます。
 時に立場を変えて、夫が頑張ったりすることも……。
 他人様には到底見せられませんが、本当に幸せな日々なのです。

 「夫婦は綺麗事じゃないからな」
 帰りしな、玄関先で菊江婆さんに言われてことが、最近やっと
わかるようになりました。
 ですから、こうした夫婦和合に導いてくれた菊江婆さんには、
今さらながら本当に感謝しております。


**************************  

コメント

[C22] No title

お灸もよく分からない恒夫さんを嗾けて、早苗さんのお尻に大きなお灸を据えるという面白い発想に感心しました。
確かにお仕置きではありませんでしたが、お仕置き同様楽しく読ませていただきました。
  • 2016-07-10 09:05
  • 匿名
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  • 編集

[C23] Re: No title

> お灸もよく分からない恒夫さんを嗾けて、早苗さんのお尻に大きなお灸を据えるという面白い発想に感心しました。
> 確かにお仕置きではありませんでしたが、お仕置き同様楽しく読ませていただきました。

 まずは、読んでいただいたことに感謝します。
 お灸はそれをお仕置きとする文化が途絶えちゃってますから、
経験のない方に、私の下手な小説で共感していもらうのは困難で
しょうけど、当時は親がそんな残酷なことまで平気でやっていた
というお話です。

  • 2016-07-10 12:08
  • tutomukurakawa
  • URL
  • 編集

[C24] はじめまして!

はじめまして!
楽しく読ませていただいております!
質問なのですが、カレンのミサ曲の祭りの後に起こった諸々の3は現在掲載していらっしゃらないのでしょうか?
2のあと4になっておりまして、3が抜けておりましたので質問させていただきました!
もしあればぜひ読みたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします!

[C25] Re: はじめまして!

> はじめまして!
> 楽しく読ませていただいております!
> 質問なのですが、カレンのミサ曲の祭りの後に起こった諸々の3は現在掲載していらっしゃらないのでしょうか?
> 2のあと4になっておりまして、3が抜けておりましたので質問させていただきました!
> もしあればぜひ読みたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします!

『ゆい』さんご指摘ありがとうございます。
事情はわかりませんが、確かに§3は抜けていたので補填しておきました。
このブログは、イラストはないし、作者がただ思いついたことを小説形式
で描き散らかすだけというそっけないブログなのですが、気が向いたら、
またお立ち寄りくださいませ。
 
  • 2016-07-11 22:32
  • tutomukurakawa
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Author:tutomukurakawa
子供時代の『お仕置き』をめぐる
エッセーや小説、もろもろの雑文
を置いておくために創りました。
他に適当な分野がないので、
「R18」に置いてはいますが、
扇情的な表現は苦手なので、
そのむきで期待される方には
がっかりなブログだと思います。

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