2ntブログ

Entries

お灸ブームの火付け役 ~昔話~

お灸ブームの火付け役

 僕の家の近所に豆腐屋のお婆さんがいた。
 豆腐屋さんと言っても豆腐を製造販売しているわけではなく、
お店から商品を預かってリアカーで売り歩く委託販売だから日々
の稼ぎはしれたものだろうけど、このお婆さん、なぜかご近所の
おかみさん連中からはけっこう人気があった。

 気がつけば商売そっちのけで近所のおかみ連中と話し込んでる
なんてことも多々あった人なのだ。

 私の母なども、「あの人は、昔、遣り手だったから、やっぱり
話がうまいわ」などとよく感心していた。
 そこで僕は『このお婆さんがきっと商売上手なんだ』とばかり
思っていたのだが……

 これは僕の大いなる勘違いで、このお婆さん、決して豆腐屋の
商売に熱心ではなかった。そっちは老人一人、何とか食べていけ
ればそれでよかったのである。

 そもそもこの婆さん、はじめから豆腐屋だったわけではない。
私が生まれた頃は売春防止法施行前でご近所にあった遊郭も合法。
お婆さんはそこの『遣り手ばばあ』だったのだ。

 この『遣り手ばばあ』、道行く人の袖を引いては店の女の子を
紹介するのが仕事。今の言葉で言うならポン引きというところか。
もともとお女郎さんだった人が店に残って商売替えするケースが
多かったようだ。

 このお婆さん、うちの質店でも常連さんで……
 『店に上がりたいが軍資金が…』などと言って渋るお客さんの
コートなり腕時計なりを剥ぎ取るように持ってきてはお金にかえ
ていったそうだ。
 まさにお客の軍資金調達係りというわけだ。

 その遣り手の仕事は、何もお客さんを連れて来る営業だけでは
ない。
 昼間は店の掃除からお女郎さんの労務管理まで任されていて、
病気のケアや堕胎の手配、はては逃げ出したお女郎さんの折檻も
お婆さんの仕事だった。

 この時の折檻に、実はお灸も使われていて、このお婆さん、
いつの間にか、お仕置きとしてのお灸のオーソリティーになって
いたらしい。そして、『やり手』引退後はしきりにそれを近所の
おかみさん連中に吹聴していたのだ。

 すると、そんなお婆さんの経験談を聞いていたおかみさんたち
の間で、子供のお仕置きにお灸が一大ブームになったというわけ。
 つまり、私たちは大いに迷惑をしたというわけです。

 だから、昭和三十年代は日本国中でお灸のお仕置きが行われて
いて、みんな親からお灸を据えられていたなんて言ったらそれは
嘘です。その当時でも、お灸のお仕置きを受けた人はごく一部で
しょう。

 ただ、今に比べたらはるかにポピュラーなお仕置きだったのも
事実です。
 それまで何もなかった白い太股にある日突然お灸による火傷の
痕を見つけた時はびっくりしました。当時は、女の子だから絶対
にないとまでは言えないお仕置きだったのです。

************************

コメント

コメントの投稿

コメント

管理者にだけ表示を許可する

Appendix

このブログについて

tutomukurakawa

Author:tutomukurakawa
子供時代の『お仕置き』をめぐる
エッセーや小説、もろもろの雑文
を置いておくために創りました。
他に適当な分野がないので、
「R18」に置いてはいますが、
扇情的な表現は苦手なので、
そのむきで期待される方には
がっかりなブログだと思います。

最新記事

カテゴリ

FC2カウンター

検索フォーム

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード

QR