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<第一章> 小暮男爵 §19 / 社子春たちのお仕置き /

小暮男爵/第一章

<<目次>>
§1 旅立ち         * §11 二人のお仕置き②
§2 お仕置き誓約書   * §12 ランチタイムの話題
§3 赤ちゃん卒業?   * §13 お父様の来校
§4 勉強椅子       * §14 お仕置き部屋への侵入
§5 朝のお浣腸     * §15 お股へのお灸
§6 朝の出来事     * §16 瑞穂お姉様のお仕置き
§7 登校          * §17 明君のお仕置き
§8 桃源郷にて      * §18 天使たちのドッヂボール
§9 桃源郷からの帰還 * §19 社子春たちのお仕置き
§10二人のお仕置き① * §20 六年生へのお仕置き


***<< §19 >>*/社子春たちのお仕置き/**

 体育が終わると、次は今日最後の授業、社会科です。

 私たちの社会科はちょっと変わっていてマイクロバスに乗って
街や野山や港、時には山奥のダムなんかまで足を伸ばして授業が
行われます。要するに社会科見学なんですがその頻度が他の学校
に比べてとても多いのでした。

 そのため本来教室でやるような講義は、道中のマイクロバスの
中で済まして現地ではその後提出させられるレポートの情報収集。
帰りのバスの中では今日のまとめみたいな講義もありましたが、
大半は先生と一緒に歌を歌ったりお友だちとのおしゃべりしたり
と、まるでピクニック気分です。……かなりユニークでしょう。

 先週は二時間を使って街のコンビナートを見てまわり、教科書
にはない『公害』のことを知りました。
 実はこれ、公害の発生源を沢山持っているお父様たちにとって
はあまり語ってほしくないことなんだそうですが、大事なことだ
からと倉持先生が教えてくださったんです。

 それをおとといレポートにまとめて発表会をしたばかりです。
 ですから、今日は何をするのかな?と思っていたら……
 ま、予想はしてましたけど、単元テストでした。

 私たちの学校は一般の学校のように教科書の内容を先生が教室
で授業することが少なくて、特に理科や社会は大半が宿題として
家でやってこなければなりません。

 それで、そのことに不満を言うと……
 「そんなのたいして時間のかからないことだもの。家でやって、
学校でもやってたら時間の無駄でしょう。学校は学校でしかでき
ないことをやりましょうよ」
 倉持先生にはあっけらかんとそう言われてしまいます。

 ならば、教科書の内容は覚えなくてもいいのかというと……
 学校では教えないくせに、教科書の各単元ごとにテストはやる
んですよ。これが……。

 先生が教えない内容をテストだけするなんて手抜きもいいとこ。
理不尽だと思いませんか。でも、うちの学校ではこれが当たり前
なんです。

 おまけにこのテスト、80点未満だとお仕置きなんてことも。
 もっと理不尽なわけです。

 テストがあることはその子の家庭教師にもちゃんと伝えてあり
ますから、前日の夜はどの家庭でも家庭教師が試験範囲の単元を
子どもに勉強させることになります。

 このため、この単元テストで不合格点を取ってお仕置きされた
なんて話もあまり聞きませんが……それでも、そこは分別のない
小学生のこと。家庭教師と諍いを起こして匙を投げられたなんて
ことになると不合格ってこともあります。

 こうした場合、目上の人への反抗と不勉強というダブルパンチ
ですからね、学校でのお仕置きも土曜日の午後に居残りさせられ
たり日曜日に呼び出されたりしてトラウマになるほど相当きつい
ことをされます。
 
 当時、こうした居残りや日曜日の呼び出しを、『特別反省会』
と呼んでいましたが、実質的には『特別お仕置き会』です。

 私は、在学中に三度この会に呼ばれる憂き目に遭いましたが、
二度目、三度目は園長室のドアノブを握る手がぶるぶると震えて
うまく回せなかったいくらい怖いかったです。

 この会では周囲に他の子供たちがいませんし、先生方も心を鬼
にして取り組みますから、子ども相手でも情け容赦がありません。
 ですから、いくらおしゃべりな私でもこの時の顛末をお友だち
に事後報告する気にはなれませんでした。


 さて、それはともかく、授業が終われば、教室をお掃除して、
ホームルーム。それが終われば、また、あのポンコツリンカーン
に乗って帰るというのが普通の日課でした。

 最近は小学校でも部活が盛んだと聞いていますが、私の通って
いた頃の小学校は、学芸会や体育祭、文化祭など個別の催し物に
関する準備で居残ることはあっても部活での居残りはありません
でした。
 ただ、前に述べたように、お父様が半地下になったあの部屋で
個別に習い事をさせることがありましたから、その場合は、下校
時間がずれます。

 いずれにしても、下校する時は園長室に立ち寄って、園長先生
に『ごきげんよう(さようなら)』を言って帰るのがこの学校の
しきたりになっています。

 すると、園長先生もお別れに来た生徒をただ帰したりしません。
一人一人を抱きしめると……
 「今日の単元テスト100点だったそうね。がんばったわね。
もう、ここにお仕置きで呼ばれることはないわね」とか……
 「今日、主催者の方からご連絡があって、あなたが出品した絵
がまた入選したそうよ。これで三回連続かしらね」とか……
 「あなたお掃除がとっても上手なのね。あなたがお掃除すると、
教室が見違えるほど綺麗になるって牧田先生おっしゃってたわ」
 など……ネタは色々ですが、とにかく生徒が喜びそうなことを
見つけては褒めてくれるのでした。

 チビちゃんたちと上級生では掃除時間の関係で下校時間に微妙
なずれがありますし、何といってもここは全校生徒が50名程度、
の小規模な学校。他の学校なら一クラス分でしかありませんから、
こんな細やかな対応ができるのでした。

 ところが、そんな麗しいお別れの儀式がこの日に限ってはあり
ませんでした。
 
 下級生たちは順調に下校したのですが、上級生、それも五年生
と六年生のクラスが、ホームルームが終わった後も教室から出る
ことを許されなかったのです。

 こんな時は、誰からともなくヒソヒソ話が始まります。
 「ねえ、何かしら?」
 「良いことじゃないわよね、絶対」
 「叱られるってこと?」
 「たぶんね」
 
 「やだなあ、私たち何かしたっけ?」
 「何言ってるの。体育で広志君、むくれちゃったじゃないの」
 「だってあれは広志君が悪いんでしょう?私たち悪くないもの」

 「そうはいかないわよ。体育の授業を混乱させた連帯責任とか
言われるんじゃないの?」
 「レンタイセキニン?何よそれ。私たち関係ないでしょう!?」
 「そうでもないわよ。麗華ちゃんなんか、『ピルエットも回れ
ないのにあんた生意気よ』とかなんとか言わなかった?」
 「えっ!?あたし?……あたしなの?……だって、あれは……
みんな言ってたから……つい……」

 『ひょっとして、お仕置き?』
 そんな恐怖がふと女の子たちの頭をの中をよぎります。

 園長先生は滅多にお仕置きに参加なさいませんが……それは、
過去においてもゼロということではありませんでした。

 重苦しい空気が流れるなか、園長室に呼ばれていた小宮先生が
帰っていらっしゃいました。

 「え~と、今日これから習い事に行く予定の子はいますか?」

 先生は、最初私たちにそう尋ねて、私たちの中にそうした子が
いない事を確認します。

 「……それでは、そうした予定はないようですから……」
 私はこの瞬間、小宮先生がふっと寂しい顔をなさったようで、
気になりました。これって、根拠のない女の子の感なんですが、
私の感はたいてい当たってしまうのでした。

 「実は、園長先生があなたたちとお話がしたいそうですから、
これからみんなで園長室へまいります」

 先生は取り立てて何の説明もしません。その後は表情も変えず
私たちを園長室へ連れて行きます。
 でも、私は何か特別な事情があると睨んでいました。


 園長室、そこは日当たりの良い8畳ほどの洋室。厚いペルシャ
絨毯が敷かれ先生が執務するための大きな事務机がありますが、
そのほかの家具は、生徒を抱っこするためのソファや大きな花瓶、
それにクラシックな書棚くらいでしょうか、ちなみにその書棚の
引き出しには、良い子へのご褒美としてお菓子がストックされて
いました。

 {お菓子?}

 そう、お菓子です。駄菓子ですけど……私たち、駄菓子屋さん
に寄る機会がありませんから、その代わりなんです。お父様たち
が『これも経験だから』と始めたんだそうです。

 {ちょっと変じゃないですか?}

 変じゃないですよ。うちでは園長先生がご褒美としてお菓子や
オモチャを渡すのは日常の風景なんです。
 お父様がおっしゃるにはご褒美ってその物の価値以上に励みに
なりますから子供には大切なんだそうです。

 但し、それは家に帰りつくまで封を切ることができませんから、
結局、『買い食いの醍醐味を味わう』というのというところまで
はいきませんでした。

 幼い頃の私たちは朝夕二回必ず園長先生に抱かれ、下校時には
小さなお土産までもらって帰って来たというわけです。
 つまり、園長先生って、立場は校長先生でも私たちにとっては
おばあちゃんといった存在に近かったのかもしれません。

 一般の人たちから見れば学校の先生が何もそんなことまでって
思うかもしれませんが私たちには初めから親類縁者がいません。
甘えられる人がいないのです。そこで、家庭教師と担任の先生が
お母さんの代わりを、園長先生がお婆ちゃんの代わりをしてくれ
ていたのでした。

 もちろん、そう取り計らったのはお父様たち。
 この学校が同じ境遇の少人数の子供たちだけで構成されている
のも、ここが単に知識を学ぶ場だけでなく家庭としても機能する
ようにとの思惑があったからなのです。

 では、なぜ、そんな巨費を投じてまで私たちを優遇してくれた
のかというと、そこにはお父様たちなりの計算もあるのですが、
それについては小学生の私たちはまったく与り知らぬことでした。

 今は、とにかく全員が緊張して園長室へとやってきます。
 すると、ドアが閉まっていました。

 『どうして今日はドアが閉まってるんだろう?』
 嫌な感じです。また不安になります。

 えっ、園長室のドアが閉まっていて当たり前じゃないですか?

 いえ、違うんです。
 うちの場合、子どもたちがお別れの挨拶に立ち寄りますから、
どんなに寒い日でもこの時間はドアが必ず開いていたのです。
 それが閉まっているというのは、それだけでも、『何かある』
と思えるのでした。

 「小宮です。よろしいでしょうか?」
 小宮先生がノックすると……

 「小宮先生ね、どうぞ入ってらして……」
 という声がします。
 そこで、ぞろぞろと部屋の中へ入っていくと……
 「わあ、いらっしゃい。……みんな、一緒に来てくれたのね。
さあ、入ってちょうだい」

 私たちの前にいる園長先生はいつもと変わらない笑顔でした。

 園長先生が事務机に座り、小宮先生がその脇に立って、私たち
は園長先生の前に並びます。これが私たちの定位置。小宮先生に
手を引かれ園長室で叱られる時もこれが定位置でした。

 『何となく嫌な感じだなあ』
 と思っていると、全員が揃ったのを確認して園長先生がやおら
お話しを始めます。

 「実はね……このところの、あなたたちのクラスの様子が気に
なっていたの。それで記録を調べてみたら先々週は由美子ちゃん
と詩織ちゃんが大喧嘩してるし、先週は単元テストで合計7回も
不合格者が出たでしょう。それぞれ不合格を取った人は違うけど、
ああした業者テストは、ひねった難しい問題なんかないんだもの、
ちゃんと宿題さえやっていたら誰でもちゃんと100点が取れる
仕組みになってるのよ。それができないっていうことはちゃんと
宿題をやってこなかったからだわよね。……そうじゃなくて……
麗華ちゃん。……違うかしら……里香ちゃん……」

 園長先生の問いかけに二人は俯いてしまいます。

 「今週もあったでしょう。お掃除の時間に雑巾を投げ合って、
お隣りでまだ授業されていた牧田先生に叱られたの。……あれは、
誰だっけ?……それに、今日は美咲ちゃんと広志君がフェンスの
外へ突き抜けちゃうんだもの。これじゃあ小宮先生も心の休まる
暇がないわね」

 園長先生はこのほかにも色々とここしばらくの私たちの悪事や
怠け癖なんかを並べ立てます。
 私なんか疾の昔に忘れていることなのによく覚えているもんだ
と感心してしまいます。

 結局、六人のうちそこに登場しない子は一人もいませんでした。
 一言で言ってしまうと『あなたたち、たるんでるわよ』という
わけです。

 ただ、だからと言って、今回私たちがお尻の心配をする必要は
ありませんでした。
 というのは……

 「そこで、もう少しあなた方をしっかりと指導していただこう
と思って、今回は小宮先生に私のお仕置きを受けてもらうことに
したの」

 『ぎょっ!』
 みんなそれを聞いた時は驚きます。
 目が点になってしまいました。

 「そんなあ~~」
 由美子ちゃんだけが思わず声を上げますが、でも、気持は他の
五人も同じでした。

 『えっ、また?』
 でも、私、しばらくして思い出したんですよ。
 いえね、他の五人だって追々思い出すとは思うんですが。

 実は今から3年前、私たちが小2の頃です。同じようなことが
あったんです。

 『私たちのせいで小宮先生が園長先生からお仕置きされる』
 そう聞かされた時は幼いせいもあって今以上にショックでした。

 『どうしよう』『どうしよう』『どうしよう』『どうしよう』
 『どうしよう』『どうしよう』

 六人が六人とも同じ気持です。でも、女の子って、こんな時は
からっきし意気地がありません。
 『先生は助けたい。でも、自分はぶたれたくない』
 というわけです。

 そんな中、この時は麗華ちゃんがジャンヌダルクでした。

 彼女は園長先生に泣きながら、『私がお仕置きをうけますから、
小宮先生を許してください』と直訴したんです。

 すると、園長先生も小宮先生もふき出しちゃって……
 でも、二人とも、とても嬉しそうに笑っていました。

 麗華ちゃんは園長先生に抱っこされ泣き止むまであやされます。

 結局、その日、子どもたちは誰一人ぶたれませんでしたし小宮
先生も無事だったんですが、それって、残りの五人にしてみると
気持は複雑でした。

 『これって、先生方が私たちを試したんだろうか?……もし、
そうなら、麗華ちゃん以外の私たちって自分勝手で薄情な子ども
って見られちゃったんじゃないだろうか………』
 そんな疑念が頭の中から離れませんでした。

 今回だって事情は同じです。
 ですから『誰かが手を上げたら八方丸く収まるんじゃないか』
と思って、お互いの顔を見合わせるのですが……
 『ならば、私が……』なんて名乗り出る子はいません。

 前回、名乗り出てくれた麗華ちゃんも今回は下を向いてしまい
ます。

 小2から小5。その間に私たちも随分大人になっていました。
一時の感情に流されず多くの事が理性で判断できるようになって
いましたから。

 でも、それって裏を返せば、ずるくなってるってことなのかも
しれません。
 お互い顔を見合わせるだけで、いっこうにらちがあきませんで
した。

 そのうち、園長先生が……
 「……それでね、今日はあなたたちには小宮先生のお仕置きを
お手伝して欲しいと思ってここへ呼んだのよ。やっていただける
かしら?」

 ここでまた、私たち六人はお互いに顔を見合わせることになり
ます。

 しばしの沈黙のあと、詩織ちゃんが尋ねます。
 「私たち、何をすればいいんですか?」

 すると、園長先生は……
 「あら、詩織ちゃんやってくれるの?簡単なことよ。これから
私が小宮先生のお尻をこのおしゃもじみたいな形をしたパドルで
100回叩くから、あなたたちは先生が懲罰台から逃げ出さない
ように両手と両足をしっかり押さえてくれていればいいの。……
簡単でしょう」

 園長先生は笑っていますが、私たちにとって事はそう簡単では
ありませんでした。

 だって、小宮先生というのはこの学校に入学以来ずっと私たち
の担任の先生。うちはその先生が学校を辞めない限り、入学から
卒業までずっと同じクラスを受け持つ決まりになっていました。

 たしかにいつもラブラブだってわけじゃありません。反発して
口をきかなくなったこともありますし恥ずかしいお仕置きだって
一度や二度じゃありませんけど、それでも小宮先生は、私たちに
とっては学校でのお母さんなんです。

 そのお母さんが、目の前でお尻をぶたれようとしているのに、
それを手伝うなんて簡単に応じられることではありませんでした。

 とうとうと言うか、仕方なくというか、やけっぱちというか、
そのあたり明確な理由はありませんけど、私が口を開きます。
 何の因果かこの時私は学級委員をしていたのです。
 その責任が後押ししたみたいなものでした。

 「園長先生、私が代わりにお尻をぶたれたら小宮先生は許して
もらえますか」
 私の場合は、麗華ちゃんみたいに激情型ではありません。仕方
なく、本当に仕方なくですから声は絞り出すようにしかでません
でした。

 「あら、美咲ちゃんが代わりになるの。級長さんともなると、
色々と大変ね」
 園長先生は、苦りきった私の顔を微笑ましく観察しながらも、
どこかからかい半分です。
 もちろん、私のお腹の中などとっくにご存知でした。

 「せっかくだけど、その心配はいらないわ。だってあなたたち
はその時その時ですでにお仕置きを受けてるもの。『罰を受けた
ら、それでおしまい』それがここのルールでしょう。せっかく、
良い子に戻ってるのに、また罰を受ける必要なんてないわ。……
これは先生と小宮先生の問題なのよ」

 「……でも、それだと……小宮先生が可哀想だから……」
 歯切れの悪い言葉で反論してみると……

 「大丈夫よ。小宮先生は大人だもの。あなたたちに比べれば、
身体もしっかりしてらっしゃるから、こんなおばあちゃんの鞭で
音を上げることなんかないはずよ」
 園長先生は取りあってくれません。

 そればかりか……
 「小宮先生、あなた幸せ者ね。こんなやさしい生徒に囲まれて
……私を悪者にして……羨ましい限りだわ」
 こう言って茶化します。

 そして約束通り、小宮先生は普段なら子どもたちがうつ伏せに
なるはずの懲罰台(といってもそれは単なる古い机なんですが)
に身をかがめます。
 これを出してあるからさっきドアを閉めていたのでした。

 結局、私たちは園長先生の指示通り動くしかありませんでした。

 私が先生の右手を、由美子ちゃんが左手を握ります。後ろでは、
里香ちゃんが右足を、詩織ちゃんが左足を押さえます。
 そして、麗華ちゃんと広志君が捲りあげたフリルのスカートが
落ちてこないように持っている係りでした。

 実は、小宮先生、普段はタイトなスカートを穿いていることが
多いのですがこの日のことはあらかじめ決まっていたのでしょう。
突風に煽られたら捲れあがりそうなフリフリのスカートをはいて
いました。

 先生は大人ですから、さすがにパンツまで脱げとはおっしゃい
ませんが、それでも、薄いショーツ一枚では豊満なヒップライン
は隠せません。

 私たちは否応無しにそれを目にします。広志君は、頬をぽっと
赤くしたみたいでした。

 そんな広志君の脇に立つ園長先生は見上げるような巨人です。
これは園長先生の身体が単に大きいというだけでなく、私たちが
全員腰を落として低く身構えていますから、先生がそこに現れる
と、私たちからはまるで赤鬼が立っているように見えるのでした。

 園長先生は、決して怖い顔をしているわけではありませんが、
迫力は十分です。

 「さあ、みんなさんにご注意よ。しっかり聞いてちょうだいね。
いいこと、お仕置きの最中はみんなその場を動かないでください。
下手に動くとこのパドルが当たってしまって危ないですからね。
どうしても動きたい時は手を上げずに私に声をかけてちょうだい。
……いいですね。」
 園長先生はそう言って子供たちに注意を促したあと小宮先生に
対しても……

 「いいこと、あなたもそうよ。あなたが動くと、子どもたちに
危険が及びますからね、そこは十分に注意してちょうだい」
 小宮先生の耳元でこう囁いてから……。

 「さあ、いきますよ」
 園長先生はまず最初の一撃を振り下ろします。

 「パシッ」
 園長先生を振り下ろしたパドルが鈍い音を立てました。

 「一つ、園長先生、お仕置きありがとうございます」
 小宮先生はこう答えます。

 これは私たちの学校でのしきたりみたいなもので、園長室での
お尻叩きは、ぶたれるたびに一つ二つと数を数えていき、最後に
ありがとうございましたと付け加えます。

 もちろん、通常は子供が言うわけですが、先生の場合も例外は
認められていないみたいでした。

 いずれにしてもこれを延々百回もやるわけですから、それだけ
でも大変です。

 ただ、その一回一回にご挨拶をしなければならないお尻叩きは、
鞭の威力がそんなに強くありません。
 最初の頃は痛みの蓄積もありませんから、本当なら小宮先生も
鼻歌交じりのはずですが、教え子の手前、そして園長先生の手前
楽そうな顔もできませんでした。
 そこで真剣な面持ちで罰を受け続けます。

 ただ、20回30回と進むうち、その顔にも変化が……。
 真剣な顔というより、苦痛に満ちた歪んだ顔になるのです。

 園長先生の振り下ろす鞭の勢いが変化したわけではありません。
一つ一つの衝撃は小さくてもそれが数を重ねるごとにお尻の奥に
痛みが蓄積されていきますから、重苦しい息が詰まるような鈍痛
が、徐々にひどくなっていくのでした。

 ですから最初は鼻歌まじりで応じられていても、この頃になる
と、お尻をさすりたくて仕方がなくなります。
 
 そして40回、50回ともなると、たとえ軽くぶたれていても
その衝撃は思いっきりぶたれたのと変わらなくなり……

 「あっ、いや」

 決して嬉しいことではないはずなのに思わずよがり声のような
ものが漏れるようになるのでした。

 つまり、こうなってからが、お尻叩きは本当のお仕置きでした。

 「あっ、いや、だめ」

 最初は三回に一回ぐらいで出ていたよがり声が、二回に一回と
なり、やがて60回を越えるあたりでは毎回聞こえるようになり
ます。

 でも、そうなると、私のハートもまたチクチクと痛むことに。
小宮先生の苦痛は、まだ耐えられる段階なのかもしれませんが、
その声を聞くだびに良心がチクチクします。
 先生へのお仕置きの原因が私たちにあることへの罪悪感でした。

 「あっ、あああああ」

 園長先生の鞭が小宮先生のお尻をとらえるたびに小さなうめき
声が私の耳元で反響します。
 私はそのたび『どうしよう』『どうしよう』とそればかり思う
ようになるのでした。

 そんな時です。
 「みんなも同じ姿勢のままでは大変でしょう。ちょっと、休憩
しましょうか」

 それまで一度も休まなかった園長先生が、ここで休憩を入れて
くださったのです。
 今までが70発。残りがちょうど30発というところでした。

 すると、ここで私が口を開きます。
 それって今考えても、『どうして私そんなことしたんだろう?』
と思うようなことなのですが……。

 「園長先生、小宮先生のお仕置き、私たちが代わってあげられ
ないでしょうか?」

 恐らく小宮先生の激しい息遣いに後先考えずに言ってしまった
んだと思います。おまけに……

 「残り30回を五人で分けて、一人6回で……」

 私は笑顔で園長先生と交渉します。
 もちろんお友だちに『こうしよう』だなん相談したことはあり
ません。全ては私の独断なのです。

 すると、園長先生、しばし思いをめぐらしているご様子でした
が、笑顔になって、まず、私以外の子供たちに尋ねます。

 「ねえ麗華ちゃん。学級委員さんがあんなことおっしゃってる
けど、あなたはそれでいいのかしら?」

 「えっ、それは……」
 麗華ちゃん、いきなりの質問に、当然のように戸惑います。

 でも、考えた末の答えは……
 「はい、大丈夫です」
 でした。

 園長先生は次々に子供たちに尋ねてまわります。
 もちろん、みんな思わぬ質問で最初はどぎまぎですが、やがて
出てくる答えはどの子もイエスでした。

 みんな私のわがままを受け入れてくれたんです。

 「そう、それじゃあ、そうしましょうか」
 園長先生は応じてくれますが、懲罰台から開放された小宮先生
の方がむしろ浮かない顔でした。

 「あなたたち、気持は嬉しいけど、やめなさい。園長先生の鞭
は痛いのよ」

 小宮先生はそうおっしゃいましたが、もうそれは覚悟の上です。
他の子の中には話の流れの中でやむを得ずお付き合いしてしまっ
たという子だっていたはずですが、私は小宮先生の苦しそうな息
に耐えられなくなっていたのでした。

 ところが、私たちへの罰は、懲罰台ではありませんでした。

 私たちは、園長先生が執務する大きな事務机の前に一列に並ば
されます。

 そして、まず私から……

 「美咲ちゃん、スカートを上げて……」

 私がスカートを上げると、問答無用でショーツが引き下ろされ
ます。
 あっという間の出来事。恥ずかしいも、嫌も応もありませんで
した。

 「前かがみになるの。……そうよ、私にしっかりお尻を見せて
ちょうだい」
 お仕置きですから園長先生の声もいつもより厳しい声ですが、
仕方ありません。

 もう、そのあとは……
 「ピシッ、ピシッ、ピシッ、ピシッ、ピシッ、」
 立て続けに5回、パドルでお尻をぶたれました。

 「次は麗華ちゃんね。スカートを上げてちょうだい……あっ、
美咲ちゃん、あなたはまだスカートを下ろすの早いわよ」

 園長先生は私がスカートの裾を下ろすことを認めませんでした。

 「ピシッ、ピシッ、ピシッ、ピシッ、ピシッ、」
 
 麗華ちゃんもゴム製パドルでのお仕置きは同じです。
 そして、お仕置きのあと、スカートの裾をそのまま持ち上げて
いなければならないのも同じでした。

 「次、由美子ちゃん」

 こうして園長先生は次から次に子どもたちのお尻を叩いていき、
六人のお尻叩きが終わると、そこに下半身丸出しの六人が並ぶ事
になります。

 「どう?お尻は痛かった?」

 園長先生は私たちに尋ねますが……
 「………………」
 それに答える子はいませんでした。

 いえ、五回ぶたれましたけど、痛みはそれほどでもないのです。
ただ、この姿が悲しくて答える気にはなれないのです。

 女の子って気が小さくて猜疑心の強いところがありますからね、
『何だか、かえってまずいことしちゃったのかな』とか『まだ、
何かお仕置きされるのかなあ』とか思っちゃうんです。

 「お尻、あまり痛くなかったでしょう?少し遠慮したからよ。
あなたたちが、こんなにも強く小宮先生のことを慕ってるなんて
思わなかったからびっくりしたわ」

 「それって、よかったんですか?」
 由美子ちゃんが尋ねます。

 「もちろんよ。ごく幼い時と違ってある程度分別がついてから
そうした決断をするには相当な勇気が必要だわ。あなた方は偉い
なって思ったの。そんな社子春みたいな子、本気でぶてないもの。
ただね、あなたたちもいったんは小宮先生の罰を肩代わりすると
言ったんだから、その約束は最後まで果たさなければならないわ。
だから強くぶたれない代わりにしばらくそうやって立ってなさい」

 『え~~、そっちの方がきついよ~~』
 私は思いましたが、仕方がありません。

 女の子はこのあと引き上げたスカートの裾がピンで留められ、
男の子は半ズボンとパンツが足首まで引き下ろされて、それぞれ
恥ずかしい姿のまま10分ほど壁に向かって立たされます。

 今、こんなことやったらきっと警察沙汰でしょうけど、でも、
当時、私たちの学校ではこうしたこともそう珍しいことではあり
ませんでした。

 チャイルドポルノなんて言葉がまだ一般的ではなかった時代。
小学生の下半身なんて人畜無害と考えられていましたから、親や
教師が子どもを晒しものにして罰する見せしめ刑もそれはそれで
立派にお仕置きとして成立していたのです。

 もちろん、晒し者になってるこちらはとっても恥ずかしかった
わけですが、お仕置きという大義名分のもと、大人たちは子ども
の羞恥心にはとんと無頓着、というか無頓着を装っていました。

 むしろ、園長先生はこの姿を見て……
 「可愛いじゃないですか、小宮先生。この頃が無邪気で穢れが
なくて、それでいて扱いやすくて、一番いい時期ね。だから昔は、
新米教師が入ってくると、まずは4年生5年生の担任をやらせた
ものなのよ」

 「そうなんですか」

 「あなたは考えすぎなの。こんなに良い子たちが、あなたから
離れたり、裏切ったりするものですか」

 「ほんと、私もそう思いました」

 「こんな天使たちを直接指導できるなんて、羨ましくてよ」

 二人のこの会話が何を意味するのか、幼い私にはその時はまだ
よくわかりませんでしたが、今はわかります。
 どうやらこの催し、園長先生が小宮先生に自信を持たせようと
企画されたものだったみたいです。でもそう考えると、私もほん
のちょっぴりですがお手伝いできたみたいでした。


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このブログについて

tutomukurakawa

Author:tutomukurakawa
子供時代の『お仕置き』をめぐる
エッセーや小説、もろもろの雑文
を置いておくために創りました。
他に適当な分野がないので、
「R18」に置いてはいますが、
扇情的な表現は苦手なので、
そのむきで期待される方には
がっかりなブログだと思います。

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