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§5

§5
 「ちょっと待ってね。この子のお顔があんまり汚れてるから……」
 女王様はこう言って私の顔を拭いてくださいます。
 その時、しばしの間があって、あらためて周囲を眺めてみると、藤田、
朝比奈の二人のお姉さまが何やら微笑みながら小声で談笑している内容
が私の耳に入ります。
 「この子が首謀者なの?」
 「そうみたいよ。そもそもの言いだしっぺが彼女だし、お友達二人が
自分にはできないって言ったら、その二人分のサインも自分で作っちゃ
ったらしいわ」
 「へえ、なかなか可愛い顔してやり手じゃない。こんな子を持つと、
お父様も大変ね」
 「ところが、事件が発覚してしまうと、この子のお父様は園長先生や
女王様にまで穏便な処置を求めて出向いたそうよ」
 「男性はえてしてこんな子が好きなのよ」
 「どうして?」
 「だって、ちょっとぐらいやんちゃな方が張り合いがあるというか、
お仕置きに困らないでしょう」
 「なるほどね」
 私は二人の会話を聞いていて…
 『私、首謀者なんかじゃないもん。お友だちができないっていうから
助けてあげただけじゃないの。だいいち、お父様は私のお仕置きを見た
がってるみたいなこと言わないでよ。お父様は今まで何回もお仕置きさ
れそうになった私を助けてくださったのよ。私が姉妹の中で一番のお気
に入りなんだから』
 私は声を大にして言いたかったのですが、とうとうその勇気がでませ
んでした。
 私は、二人が大好きなお父様の悪口を言っているようで腹が立ちます。
 そして、腹が立ったまま樺山お姉さまの鞭を受けます。
 「パーン」
 すると不思議なことにその回はそれほど痛く感じませんでした。
 おかげで、感謝の言葉の方もさっぱり忘れてしまいます。
 「……………あっ、一つ、お姉さまお仕置きありがとうございました」
 これには当の樺山のお姉さまもあきれたご様子だったみたいです。
 「もういいわ。あなたとやってると先に進まないから、次のを最後に
しましょう。ようく、歯を食いしばりない」
 樺山のお姉さまはそう言うと、何と、私が脱いだショーツを口元へ…
 「口を開けて……」
 もちろん嫌でしたが、仕方なく開けた口の中へ私のショーツがねじ込
まれます。そうしておいて……
 「パーン!!!」
 最後の一打で私の身体全体に電気が走ります。手の指先、足の指先、
脳天が痺れて、そこから雷の電気が放電していったようでした。
 本物の目の玉が飛び出そうになるほどの衝撃というのも生まれて初め
て。オーバーに聞こえるかもしれませんが、ひょっとしたら今の衝撃で
身体がばらばらになったんじゃないかと思えるほどだったのです。
 「…………………………」
 おかげで暫くは放心状態。歯の根が合わずがたがたと震える口元を見
てお姉さまは処置なし、待っていられないと思われたのかもしれません。
私が感謝の言葉を言い出す前に……
 「もういいわ。これで六回ね。だけど次にやったら、これでは許して
もらえませんからね」
 樺山のお姉さまはこう言って許してくださったのでした。
 でも、これで終わりではありませんでした。もう一人、最後に藤田の
お姉さまが待っておられます。このお姉さまは私が寝そべったままお尻
をぶたれるのをよしとはしてくださいませんでした。
 「こちらへいらっしゃい」
 私は命じられるままにテーブルを降り、暖炉の前に立つと……
 「大丈夫?痛かったでしょう。カバちゃんは手加減というものを知ら
ないから困ったものだわ。だいたいこんな可憐なお嬢ちゃんにショーツ
で猿轡なんて品のないことしなくてもいいのにね」
 私はその時まだ下半身がすっぽんぽんでしたが、藤田のお姉さまのお
顔があまりに穏やかに見えたので、少しだけほっとしたのか笑顔を取り
戻します。
 「さあ、これを噛んで……」
 それはおしぼり大の硬いクッションで、よくアニメなどでみかける犬
が銜える骨の形、プリント柄も同じ骨の形でした。
 私は指示されるまま少し前かがみになって両手を膝の裏側で組み合わ
せます。
 恥ずかしい姿勢、窮屈な姿勢で私はお姉さまの鞭を待つことになるの
でした。
 「私のはすぐに終わりますからね。それに反省の言葉や感謝の言葉は
いらないからとっても楽よ。……但し、暖炉の側を離れたり、しゃがみ
込んだりしたら鞭を追加しますからね。わかった?」
 「……」私は猿轡をしたまますでに真っ赤になっ顔を上げ下げします。
 「鞭のお仕置きは、その愛をしっかり謙虚に受け止めることが何より
大事だもの。無用の脅かしはいらないわ。ね、そうでしょう」
 お姉さまは私に同意を求めましたが、その答えを考えているうちに、
もう最初の衝撃がやってきます。
 「パーン」
 一瞬、目の前が真っ暗。全身に悪寒が走り鳥肌が立ちます。
 「(ひぃ~~~)」
 「パーン」
 その瞬間息が詰まります。酸欠状態で思わずその場にしゃがみ込もう
としましたが、すんでのところで思いとどまります。
 「パーン」
 前のめりになってあやうく暖炉まで歩いていきそうです。
 「パーン」
 今度は思いっきり伸び上がります。おかげで膝の後ろで組んで絡ませ
ていた両手が解けそうになります。
 「(ぎゃあ~~)」
 「パーン」
 「(死ぬぅぅぅ)」
 本当にそう思いました。
 「パーン」
「(あぁぁぁぁ)」
 最後の一撃は亀山の伝統にのっとって一番強烈です。その時は私自身
の身体が持ち上がったようにさえ感じたのです。
 私は生まれて初めて自分に子宮があるのを感じます。そしてそれが、
ぎゅーっと萎むのを感じたのでした。
 確かに、たった六回、それもリズムよく打ち据えられますから今まで
のお姉さまたちより早くは終わりはしましたが、でもそれが楽だったか
と言うと、答えはNO。
 私はその短い時間に失禁し、再びお姉さまの手を煩わせることになり
ますし、お仕置きが終わって藤田のお姉さまに抱かれた後も歯の根があ
いませんでした。
 こんなに長い時間葉の根が合わず震えていたのは初めてでした。
 「今日は楽しかった?……ん?そんなわけないか」藤田のお姉さまは
私を膝の上に抱き上げると、笑いながらご自分のおでこを私のおでこに
擦り付けます。
 「……でもね、時間がたって大人になったあとに振り返ると懐かしい
思い出になるはずよ」
 「どうして?私、こんな嫌な思い出、早く忘れたいわ」
 「忘れられないわ」
 「どうして?」
 「あなたをぶった人がみんなあなたを愛してるからよ。そしてあなた
も、その人たちに愛されてると感じているから……愛の思い出の中には
遊園地で遊んだ思い出なんかと同じようにお仕置きも忘れられない思い
出なの。…お仕置きは確かに辛い体験だけど、大人になってもう自分を
叱ってくれる人が誰もいなくなったとわかると、それはとっても寂しい
ことなのよ」
 「わからないわ、そんなこと。お仕置きは悪い子だけのものだもの。
よい子は受けないもの。ないにこしたことないじゃない」
 「お仕置きを受けずにいる子の方が幸せ?」
 「そりゃそうよ。当たり前じゃない。美郷ちゃんなんか、いつだって
良い子にしてるから滅多にお仕置きなんてされないんだもの。私なんか
羨ましくて仕方がないわ」
 「美郷ちゃん?……ああ、あの、おとなしいそうな子ね。あの子は、
確かにお仕置きを逃げてるわね。……でも、そんなこと子供にとっては
自慢にならないのよ。だってお仕置きを受けない代わりにあの子は多く
の愛も受け取り損ねてるもの。あなたが受けた多くのお仕置きはあなた
が得た計り知れないほど多くの体験と大人たちからの洪水のような愛の
証でもあるの。あなたは美郷ちゃんよりはるかに幸せ者よ」
 「それって皮肉?」
 「皮肉じゃないわ。あなたも大人になればその意味がわかるわ。全て
は愛の中での睦ごとだもの」
 「でも、私、お仕置きされると、とっても心が傷つくわ。死んじゃい
たい時だってあるんだから……」
 「そうなの?でも、あなた生きてるじゃない」
 「そりゃあ……」
 「大丈夫よ、痛い思い出も恥ずかしい思い出もそれはみんなあなたを
愛している人たちからのプレゼントだもの」
 「プレゼント?」私はそのあまりに意外な言葉に目を丸くしました。
 「……そんなのいらない」
 「あなたもいつかは社会に出て憎しみを持つ人や見ず知らずの人から
いわれのない暴力や辱めを受ける時が来るわ」
 「どうして?そんなのいやよ」
 「それは大人の社会が亀山のような楽園ではないから仕方のないこと
なの。でも、そんな時、お仕置きという名の免疫を持たないで社会に巣
立ってしまったら……そんな子は弱いものなのよ」
 「美郷ちゃんは?」
 「彼女がどんなに良い子ぶってお仕置きを避けていても、そこは先生
方が工夫して彼女にもちゃんと愛のお仕置きを与えてくださるはずよ」
 「お仕置きって予防注射みたいなものなの?」
 「そうよ、だから亀山にはあなた達を愛さない人は誰一人として街に
入れてないの」
 「だから、子供の楽園って呼ばれるの?」
 「そういうこと。だいたい十歳を超えた子を街の真ん中で裸にできる
処なんて、日本国中探しても恐らくここだけのはずよ。それはあなた達
にとってはありがたくないことに思えるでしょうけど、それができるっ
てことが幸せなことなの」
 「…………」
 「普通の家庭でもその子を愛して育てたお父様やお母様ならその子を
裸にだってできるでしょうけど、それ以外の人が裸にしようとしたら、
その子は傷つくはずよ。でも、ここは山全体街全体がお父様やお母様の
働きをするように女王様によって創られだ特殊な場所なの」
 「特殊な場所?」
 「そうよ、ここではお父様方や先生方だけでなく、庭師のおじさんや
賄のおばちゃんに至るまでここに暮らす全員が子供愛することが義務に
なってるの。あなたたちだってお友だちを虐めたら厳しい罰を受けるで
しょう。あなたはこの街で自分を傷つける人に合ったことがある」
 「…………ん~~~ん」私はしばらく思いをめぐらしましたが、結局、
 「…先生はよくお仕置きするし、お友達は意地悪することもあるけど
……けど……」
 「けど、何?」
 「幸せでしょう。だって叱られたって、意地悪されたって、とにかく
近くにいる誰か大人の人に抱いてもらえばいいんですもの。これって、
世間では当たり前のことじゃないの。とてもとても幸せなことなのよ」
 「……うん、それはそうだけど……」
 「なたはこの街しか知らないからわからないでしょうけど、山を降り
ると、巷はそんなに子供好きの人ばかりが暮らしているわけではないの」
 藤田のお姉さまのお説教はまだまだ続きましたが、私の方はお膝の上
で眠くなってきていました。ですから、そのうちお説教を子守唄に半分
眠りかけていたのです。
 ところが、その半分閉じたまぶたが突如元に戻ります。
 。・゜・(/Д`)・゜・。うわぁぁぁぁん
 もう無意識でした。私はいきなりお姉さまの膝を飛び降りると一目散
に走りだします。そして懐かしいその大きな胸に抱きつくと、訳もなく
ただただ泣き続けるのでした。
 たしかに、お姉さまの言うとおりです。亀山の子供達は、悲しいこと、
嫌なこと、ご機嫌斜めな時、もちろんうれしい時だって、誰彼かまわず
近場の大人に抱きつきます。だって抱きつけば必ず抱き上げてくれます
から、どんなにむしゃくしゃしていてもこれ以上心持が悪くなることは
ありません。
 でも、それはここの習慣のようなもの、誰に抱かれてもみんな平等、
効果が同じということではありませんでした。
 当然、お父様やママは別格だったのです。
 その別格な人に抱かれて、私はしばしご満悦で過ごします。
 お友達が鞭でぶたれて悲鳴を上げているのを肴にお父様に身体の全て
を任せます。すると、お父様のことですからショートパンツ越しに当然
陰部にもその指先が立ち寄りますが、気にもなりませんでした。
 これもまた亀山の習慣なのですが、どのみち十日に一度のお当番の日
にはどの子も素っ裸になってお父様とベッドインしなければなりません
から、そこでは否応なしに体中を撫で回されるわけで、ショートパンツ
の上からなら何でもないことでした。
 もちろん、お父様は紳士ですから子供が嫌がればやめてくださいます。
ただ、私の方も物心ついた時からの習慣ですし、今さら、嫌がったり、
悲鳴を上げたり、なんてことはありませんでした。
 それでもなされるままに身を任せていると、最近は私の身体に微妙な
変化が訪れます。
 「(何だろう、この切ない気持ちは……あっ、ショーツが濡れている)」
 そんなことを思うようになっていました。でもそれが何なのか、性の
知識が一切封印されている亀山に育った私にはわかりませんでした。
 結局、その後他の子のお父様も現れて、私のお父様だけが特別に私を
気遣って会いにきてくれたのではないというのがわかって、ちょっぴり
ショックでしたが、でも、こうして抱かれていると『私だけのお父様』
という実感が持てますから、私は幸せなひと時を送ることができます。
 きっと、これは女王様の配慮なのでしょう。
 『どの子も幸せなままに、お仕置きを終えなければならない』
 これもまた亀山の習慣。どんなに罪深いことをしてどんなに厳しい罰
を受けた時でも最後は必ず大人の抱っこで終わることになっていました。
 もっとも思春期になると……
 「あんな奴に抱かれること自体が苦痛、こっちの方がよっぽどきつい
お仕置きだわ」
 そんな憎まれ口をお友達同士でぶちまけたことも珍しくありません。
ただ、幼い頃から誰もが顔見知りで、その誰にでも幾度となく抱かれて
育ちましたから、『好き』という言葉に濃淡はあるものの『この人は絶対
に無理』という人は、本当は、誰もいませんでした。
 むしろ今回、お山の外にいるお姉さまたちからお仕置きされたので、
そのことがよほど怖かったのかもしれません。
 それにしてはけっこう親しげだったですか。(^◇^;)
 幼児の時に習い覚えた習性というのは恐ろしいもので、亀山の子は、
どんな大人に抱かれてもその瞬間は反射的に笑顔になってしまいます。
それは『大人に可愛がられなくちゃいけない』という脅迫観念みたいな
ものをママや先生、されに司祭様たちから植え付けられて育つからで、
最初は嫌だなと思っても、結局は大人たちに丸め込まれてその愛を受け
入れてしまうようにできていました。
 私は抱っこされたまま帰路の車に乗り込み、亀山に着いた後もお父様
に負ぶさって家へと帰ってきます。
 私もこの時すでに11歳、幼い子とはいえませんから私を背負っての
山登りは大変だったと思いますが、お父様は存外ご機嫌なご様子でした。
 察するに、私が泣いて抱きついたのが功を奏したようでした。
 お父様たちがおっしゃってましたが、女、子供は着せて喜ばす楽しみ
と脱がして泣かす楽しみがあるのだそうで、今回は後者がお父様の琴線
に触れたようでした。
 やがて家にたどり着いたお父様を目にした女中さんたちは慌てて私を
引き離そうとしましたが、お父様がそれをさえぎりました。
 「いいから、私が運んでいく」
 お父様がそう言って家の中へ入っていきますから、結局女中さんたち
の仕事は私の靴を脱がせただけでした。
 居間に着いた私はさすがにソファへと下ろされましたが、その後もお
父様のサービスは続きます。
 それまで身に着けていたショートパンツの体操着を上下共、下着ごと
脱がされて普段着へと着替えさせてもらいます。
 「なんだ、恥ずかしいか?」
 ショーツを脱がされた瞬間、ほんのちょっとイヤイヤをしましたから
そう尋ねられましたが、私は即座に首を振ります。お父様が何をしても
私たちは嫌とは言えない立場だったからです。といって、どうにもなら
ないほどの恥ずかしさはまだないのですが……
 「あなた、何もそこまでなさらなくても……」
 そばにいたお母様が口ぞえしてくださってそれ以降はお母様に身を委
ねます。
 そのお母様がお尻にお薬を付けてくださいました。ちなみに、お母様
というのはお父様の奥様のこと。ですから私たちは当然お母様とお呼び
するのですが、お父様ほど積極的に私達と関わろうとする方は稀でした。
 きっと、ご主人が行くというので仕方なく移住してきた方がほとんど
だったのかもしれません。ただ、それで私たちが意地悪されたとか困っ
たということはありませんでした。
 私たちは赤ちゃんという身分ですから、普段から大人たち、とりわけ
ママからは日に何度も裸にされてその場にあった服へと着替えさせられ
ます。パジャマに始まり朝食用の服、部屋着、学校への通学服、お外で
遊ぶ為の普段着、夕食用の服、お父様の処へお泊りする時の服など用途
別に様々です。やはては生理の日のための入浴用下着というのまであり
ました。
 これらは一つには私をお父様に可愛く見せるための演出なのですが、
それだけではありません。万が一誰かに虐待を受けていたらそれを早め
に見つけ出して心の傷が深くならないうちに対処するためでした。
 ですからお着替えそのものは特別なことではないのですが、お父様が
じきじきに子供の着替えを手伝うなんて事は滅多にありませんでした。
 きっと泣いて懐に飛び込んだ私がとっても愛おしかったのでしょう。
 「おいで……ほら、おいで」
 ソファに腰を落ち着けたお父様は着替えが終わった私をまるで子犬の
ように呼び寄せます。そして、その全身をくまなく撫で回しながら今日
のお仕置きのことを、また根掘り葉掘り尋ねるのでした。
 それは現場でも散々話しましたからすでにネタ切れだったのですが、
お父様はそれを許してくださらなかったのです。
 実際、私のお父様に限らず亀山に住むお父様たちはみなさん尋常じゃ
ないほどの子供好きでした。ふよふよとした肌をお人形や縫いぐるみの
ようにして四六時中抱いていたいという思いがあったようでした。
 ですから、本来教育係であるママたちは私たちをお父様がお気に召す
ように育てようとします。
 従順で可憐で清楚、楽器が上手に弾けて、綺麗な字が書けて、時には
古典詩なんかもそらんじてみせて…と、そんな理想の少女に向けて育て
られます。
 もちろん子供ですから、失敗もあり、悪戯もあり、癇癪を起こしたり
もしますが、そうしてお仕置きされている光景もお父様は大好きだった
のです。
 そして、そんな泣き叫ぶ子を懐に入れてあやすのがまた大好きでした。
 悪趣味ですか?(^_^;
 ええ、でもお父様たちはそれが楽しみで私たちを育てているようなと
ころもあるので、仕方がないんです。それが暴走しないのはお父様たち
の身分や社会的信用がブレーキになっているのと、女王様が上手に手綱
さばきをしているからでした。
 そんなわけで、我が子がお仕置きされると聞きつけるやお父様たちは
カメラを持って現場に駆けつけます。そして八ミリか十六ミリのカメラ
が回っている隠し部屋に撮影班の人たちと一緒に入り幾枚ものスクープ
写真を撮り終えると意気揚々と引き上げるのでした。
 いえ、そんなことをしなくても亀山では子供たちへの厳しいお仕置き
はその大半がカメラの元で行われていたのです。
 そのため、その映像はその日のうちにお父様の手元へ渡り子供たちも
いつの日かお父様のお膝の上でそれを目にすることになります。
 『お仕置きされてる自分の映像を見るなんて、最低!!!』
 そうは思いますが、お父様が…
 「ほら、見てごらん」
 と囁けば目をつぶり続けることはできませんでした。
 それならばと……
 『要するに必要最小限のことだけ注意深くやってお仕置きを受けない
ようにすればいいんじゃない』
 なんて言って、用心深く用心深く生活してみようとする子もいますが、
それはあまりに困難な道でたいてい途中で挫折してしまいます。
 というのも、そんな我が子の異変に気づくと、ママの方が黙っていま
せんで、揚げ足を取るような形で我が子を他の子と同じお仕置きの列に
加えてしまうのです。
 子供の揚げ足なんていくらでも取れますから……(^◇^)
 そもそも亀山ではそんな消極的な子は誰からも好まれませんでした。
 「あなた、お仕置きも受けないような引っ込み思案でどうするの!!
そんなのちっとも偉くないのよ。どんなオイタをしても子供のうちは、
お仕置きさえ受ければすべてが帳消し。元の清らかな身体でお友達との
楽しい生活に戻れるんだから。こんな楽なことはないわ。そして、経験
であれ教訓であれオイタで得たものが必ずその後に残るの。そのことが
子供とってはとっても大切なことなのよ。あなたのように普段からオド
オドしていたら何も身につかないまま空っぽの大人になってしまうわ。
さあ勇気をもってお仕置きを受けてらっしゃしゃい」
 先生はこんなことを言ってお仕置きを逃げ回る子をいさめるのでした。
 世間の子にはこんなものはきっと求められないでしょうが、亀山では
『お仕置きを受ける勇気』というのも女の子とっての大事な資質だった
のです。

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このブログについて

tutomukurakawa

Author:tutomukurakawa
子供時代の『お仕置き』をめぐる
エッセーや小説、もろもろの雑文
を置いておくために創りました。
他に適当な分野がないので、
「R18」に置いてはいますが、
扇情的な表現は苦手なので、
そのむきで期待される方には
がっかりなブログだと思います。

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