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<実録>お仕置きとしてのお灸 ~ 追記 ~

<追記>
 kkさんnaoさんコメントいただきありがとうございました。

 実は、僕、偉そうなこと言ってますが、お灸を自分で経験した事が
ほとんどありません。過去に母から一度だけ手の甲に据えられた事が
ありましたが、大半は『そんなことしてるとまたお灸すえるわよ!』
という脅しだけで仏間に引っ張っていかれて艾とお線香が用意される
と、そのあとはお説教だけというのがごく普通のパターンでした。
 熱い経験はたった一度ですが、それでもお線香に火がつけられると、
その立ち上る香りに今でも緊張します。
 しかもこのお線香の香り、メーカーによって香りに違いがあります
からメーカー指定です。私の場合最王手のN社じゃいけなくてK社の
あの香りでしかこの緊張感は得られません。
 『この場所、この香りの時、ものすごく熱いことされた』
 私の脳はその時の雰囲気を香りで覚えています。
 そういえば、この世界の重鎮Q太さんはかつてこの緊張する香りが
自分の場合はマッチすった時の残り香だっておっしゃってましたっけ。
 いずれにしても幼児体験というのは怖いものだと感じます。
 一罰百戒ということなんでしょうか、僕の家だけでなく他の家でも
お灸のお仕置きはそうそう頻繁に行われるわけではなく普段は脅しで
止めてしまうのが普通だったみたいです。
 ですから実際にお灸のお仕置きをやっているところへ出くわすのは
かなり低い確率のはずなのですが、人間、念ずれば通ずってことなん
でしょうね、だんだん鼻がきくようになります。
 当時、私の嗅覚は世間の人が『そんなの絶対ウソだあ~~』と叫ぶ
レベルでした。我が子の嘘に敏感な母親の勘と似ていていかに本人が
否定しようとも見抜いてしまうところがあるんですよ。
 もちろん、だからといって……
 『僕は、君がお仕置きされてる様子を見るのが大好きなんだ』
 なんて言えませんからね、冷静に素知らぬふりで過ごしていました。
 俗にいう『むっつりスケベ』というやつです。
 それでもまだ幼いころは親たちが気を許してくれていてよかったの
ですが、いくらオープンで牧歌的な時代とはいえ一定の年齢を超える
と、親だって警戒します。加えて肝心のお灸そのものが世間で下火と
なりましたから、気が付けば実際の現場を見る機会なんて滅多になく
なっていました。
 というわけで、青春期は心の奥に秘めるだけでおとなしくしていま
したが……ある失恋を期に心の充足感を求めて昔の思い出話が復活。
 現実の世界から虚構の世界へとフィールドも変化します。
 最初の頃は自分の心にフィットするものはないかと街の書店を徘徊
する日々でしたが、あまりに狭い範囲の趣味なのでぴったりくるもの
がなかなか見つからなくて……それで、最終的には自分で書いてみる
ことになったんです。
 ただこの小説、困ったことに書き始めると頭の中ではあっという間
に完結してしまいます。外に発信させる目的ならそれでも完結させる
べく努力もしますが、ブログと言っても私の場合はもともと自己満足
ですから、『今回は面白い夢がみれたなあ~~』と思えばそれでOK。
それ以上続ける意欲がなくなっちゃいます。
 つまり私の小説が書きだしだけなのはそういう理由なんです。

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<実録>お仕置きとしてのお灸 ~ ケース3 ~

<実録>お仕置きとしてのお灸

<ケース3>

 私の家には内風呂がありましたから、普段はその風呂を使っていた
のですが、内風呂はどうしても狭いので窮屈。そこで月に2、3度、
お風呂屋さんを利用することがありました。
 何しろ大きなお風呂場は解放感がありますし、ここにはいろんな人
が訪れますから人間観察という意味でも楽しみでした。あ、もちろん
風呂上がりのコーヒー牛乳も格別でしたよ。
 そんなお風呂で出会ったのですが、おっそろしく灸痕のでかい人が
いました。背骨を挟んで二列に並んだお灸痕は圧巻で、そうですねえ、
直径が今の五百円玉くらいあったように思います。
 入れ墨じゃありませんけど、正直、怖かったです。
 『誰なんだろう?』
 と思っていると、連れの子供を見てわかりました。
 その子、私の家の近所にあった乾物屋さんの男の子だったのです。
 あ、私、今、思わず男の子なんて言いましたけど、実際は彼の方が
二つ三つ年上。しかもその彼の背中にもすでに立派な灸痕が備わって
いました。
 実はこれ、お仕置きでできたのではなくあくまで病気予防というか
施術。昔は…(といっても戦後のことですよ)国民皆保険がなかった
ので治療費が高額。庶民は病気が重くならないと病院へは行きません
でした。
 でも、庶民だって病気はしますし病気は治したい。痛みは取りたい
ですよね。そこでその代わりとなったのがお灸だったんです。誰かに
習ったツボの位置をたよりに薬局から艾を手に入れて自分なりに施術
していたみたいです。
 ただ、医者が出す新薬と違ってそんなに劇的には効きませんから、
何度も据え直すことになります。すると、長い間には火傷も成長して
五百円玉になるみたいでした。
 もちろん誰もがそんな大きな灸痕を残していたわけではありません
が、少なくとも体に良い事をしているという自覚はありましたから、
子供のお仕置きにはちょうどよいと考えたのでしょう。
 弘法大師以来の長い伝統(=お灸は弘法大師が広めたという俗説が
あるんです)もありますし、多少火傷の痕が残っても親の方の罪悪感
はほとんどゼロに近かったんじゃないでしょうか。
 というわけで、昔の子供は治療とは別にお仕置きとしてお灸をすえ
られた経験が少なからずあったみたいです。
 ちなみに、お灸は関西圏では『やいと』と呼ばれ、関東よりむしろ
盛んでした。とりわけ中国地方の山間部では子供が二歳になると親が
専門家の処へ連れて行って灸点を下ろしてもらっていた、という話を
聞いたことがあります。こうした処では病気になってもすぐに医者の
手配がままなりませんから日頃は民間療法だけが頼り。お灸はそんな
地域で暮らす人々にとってはいくつもある民間治療の大事な柱の一つ
だったみたいです。
 とはいえケロイド状の皮膚を背中に晒して大人にならなければなら
ないのは、さぞや辛いだろうなあと思っていましたから当人に尋ねて
みますと、まったくといっていいほど気にしている様子がありません
でした。
 『生まれた時に貧乏人の家か金持ちの家かは選べないし自分の場合
はこんな家に生まれたからこうなっただけ。顔かたちと同じだよ』
 と、淡々としたもの。多少、彼を憐れんでいたところがあった私は
恥ずかしい思いでした。
 幸不幸は結局のところ主観的な判断。親が子供と真摯に向き合って
育てていれば子供はそんな親との絆を大切にするでしょうし、恨みを
持つこともないはずです。
 よく『お仕置きすると子供の心が傷つく、それが連鎖する』と言う
人がいますが、私は、子供の心が傷つくことをあれこれ恐れるより、
それをどうやって癒してあげられるか、それが親の責任だと思います。
だって、心が傷つかずに大人になる子供はいないでしょうし、いたら
その子は大きなハンディを背負って社会に旅立つことになります。
 心の傷は確かにそれだけ見ればマイナスですが、治してしまえば、
それが人を成長させ、他人に対しても優しく接することができる能力
になります。ですから親が真に子供の成長や幸福を願って接する限り、
それがどんなお仕置きであっても私は必ずしも罪悪ではないと思って
いるのです。

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<実録>お仕置きとしてのお灸 ~ ケース2 ~

<実録>お仕置きとしてのお灸

<ケース2>
 ケース1は中一の子でしたが、これ以上年齢が上の子がお灸をすえ
られてるところは見たことがありません。
 何しろ銭湯の女湯に小五の男の子が混じっていても誰も注意しない
時代ですからね、今からみればいろんな意味で自由な時代でしたが、
それなりに親にも分別がありますから、それから先はさすがにヤバい
と考えて用心していたのでしょう。
 ただ、そうやって上はダメでも下の年齢はというと、これにはほと
んど制限がありませんでした。ですから幼稚園児のお仕置きヤイトと
いうのは結構見物させていただきました。
 そんな中で、今でも一番鮮明に覚えているのは、やはり恵美ちゃん
事件でしょうかね……
 頃は五月、これもケース1と同じように友達と遊んでいるさなか、
きっかけは偶然だったんです。
 当時、近所に木造アパートがあったんですが、そこの裏庭は子ども
たちの格好の遊び場になっていました。
 道路でチャンバラやってて親たちから『危ない』と言われこちらへ
移ってきた直後です。
 幼い子のけたたましい鳴き声がしますから、男の子ばかり四五人が
そこへ行ってみると、震源地はアパート一階の窓。そこの窓は低くて
小二のガキでも容易によじ登れるくらいの高さでしたから、さっそく
みんなチャレンジします。僕もその一人でした。
 すると、そこにはちょっぴり衝撃的な光景が……
 よじ登ったはいいが最初は全員何も言いませんでした。
 「あら、いっぱい来たのね」
 最初に口をきいたのはその子のお母さん。何でも看護婦さんなんだ
そうですが、お父さんはいません。母一人子一人の母子家庭だったの
です。
 その一人娘の恵美ちゃんはこの時四、五歳ぐらいでしたか、普段は
とっても明るい子で、この庭でも近所のお姉さんたちと一緒に遊んで
いましたからよく知っています。
 でも、その時の様子はちょっと異常だったのです。
 仰向け大の字でお母さんに押さえつけられ下半身素っ裸でしたから。
 当然、可愛いワレメなんかもばっちり見えていますが、お母さんは
それを気にしている様子はありませんでした。
 そればかりか……
 「これから、恵美ちゃん、おいたをたくさんしたから、お灸をすえ
られるのよ。あなたたちも悪戯ばっかりしているとどうなるかわかる
から、見ていきなさいな」
 と、娘のお仕置きを見ていくよう僕たちに勧めたのです。
 お母さんの手には、この時すでに火のついたお線香が……
 「いやあ~~~ごめんなさいするから~~~」
 恵美ちゃんは僕たちがやってくる前からも必死の懇願を繰り返して
いましたが……
 「だめよ、恵美、ごめんなさいは聞き飽きました。あなたにはもう
一度アッツイのをしないとわからないんだから……さあ、いつまでも
ギャーギャー泣かないの。いつまでそうやって泣いてても今度という
今度は許しませんからね」
 お母さんは完全にやる気ですから、悪ガキたちにとってもそりゃあ
ショックでした。
 実際、悪ガキたちのほとんどにお灸の経験がありますから、それが
いかに熱いか実感があります。
 所詮は他人事と冷ややかに見てもいられませんでした。
 そして、小さなヴィーナス丘(恥丘)に、これまた小さな艾が乗せ
られ、脅しじゃないことが始まります。
 「ぎゃあ~~~~」
 火が回ると恵美ちゃんのボルテージがさらに一段とヒートアップ。
 「………………」
 その間、悪ガキたちの中からは誰一人声がでませんでした。
 それって、他人の不幸を面白がってというんじゃありません。鬼気
迫るお母さんの迫力に見入ってた、そんな感じだったのです。
 すえられたのは自分じゃないし、艾だって小さくて、お線香の頭と
たいした違いがありません。火をつけたらすぐ終わってしまう程度の
ものなんですが、それでも幼い子たちにしてみたら地獄の断末魔って
感じで、あれで六つもすえられちゃいましたか、終わると恵美ちゃん
はぐったりです。
 普段ならここぞとばかり囃し立てたりする悪ガキたちなんですが、
この時ばかりは固唾をのんで見守って最後まで声が出ませんでした。
もともと仲の良い親子ですからね、その意味でもショックだったんで
しょう。
 今、親がやったら児童相談所ですかね。(笑)
 でも……
 この時は招かれざるお客の乱入で思わぬ公開処刑となりましたが、
普段の生活でも親たちは、人の目のない処を選んで子供を連れ込み、
子供が泣こうがわめこうがいっこうにお構いなしにお仕置き、なんて
こと、珍しくなかったんです。
 べつに恵美ちゃんちだけが特別ということではありませんでした。
 『あそこは子供を甘やかし過ぎてる』なんて批判されてる我が家に
おいてさえ、そんなことが何度もありましたから。
 親だって人間ですからね、積もり積もったうっぷんがその瞬間一気
に子供へ向く時だって、そりゃあありますけど、昔はお仕置きという
親がガス抜きするための大義名分がありましたからね、逆に、あまり
大きな事件には発展しなかったみたいです。
 今は核家族の時代(私は周囲の人たちとの関係が希薄なので孤家族
と呼んでいますが)親身になって相談できる人にも恵まれてませんし、
何より今の人は全ての事に対して生真面目にものを考え過ぎるような
気がして…それがかえって親子の溝を深めているように感じるんです。
 『子供は大人のおもちゃ。でも、おもちゃだからこそ愛されもする
し、育ててももらえる。これが何一つとっても逐一議論しなきゃなら
ない難しい相手だったとしたら、あなたはその子を愛せますか?』
 こんなこと言うと、今の世の中、白い目で見る人も多いでしょうが、
これは親の本音だと思いますよ。
 愛されて育つ子供は、お仕置きの理由づけに多少の無理があっても
親についていきます。逆に、どんな立派な理屈で説得されても、親が
自説に酔っているだけなら、子供の心は空虚なままでしょう。
 お仕置きの効果は親が怒っていたという事実だけ。理屈なんてない
のかもしれませんが、沸騰しているやかんにほんのちょっと指を触れ
させて『これは熱いんだよ』と実感させる。
 お仕置きの役割は、こういうことだと思うんです。

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<実録>お仕置きとしてのお灸 ~ケース1~

      <実録>お仕置きとしてのお灸

 <ケース1>

 被害者は中一の女の子(今はもう70歳くらいになっているはず)
 僕はその子の弟と外で遊んでいたが、何らかの事情でその子の家で
遊ぶことになった。
 つまり、その子にとっては『ただいま』というわけだ。
 ところが、家に上がり込むなり、どうもそこにはただならぬ気配が。
 ぶっちゃけ、その子のお姉さんが正座させられていて、どうやら
お母さんから叱られている様子。
 僕はお姉さんのしょげかえった様子から直感的に『これはお仕置き
の前だな』と思った。(終わったあとなら、もっと疲れた顔になって
いるからだ)
 こういう場合、世間の親たちの常識的な判断は、『あなたたち、
もう一度、お外で遊んでらっしゃい』となるのが普通だった。
 だって、いくら幼いといっても僕たち男の子だからだ。
 ところだが、その時は違っていた。
 「いらっしゃい」という声とともにそのままお母さんがその子の手
を引き、隣の部屋へと移っていったのだ。
 ここで襖を閉めてしまえば、僕にとっても事はそんなに大きな事件
とはならないはずだった。何度も言っているが当時の親の常識では、
お灸は残虐非道な折檻ではなく、あくまで子どものためを思ってやる
お仕置きなのだから別に隠れてやっていたわけではない。胸を張って
やっているのだ。
 だから、女の子だってそこは必ずしも例外とはならないわけで……。
 人目をはばかりつつも灸痕の目立たない場所を選んでやっていた。
 だから、お母さんが移った隣の部屋でお仕置きとしてのお灸がすえ
られていたとしても、それは事件ではない。
 ただ、問題は、僕たちが遊ぶ部屋から退去した後、故意か偶然か、
二つの部屋を仕切る襖がいくらか開いているということだった。
 結果、僕たちが遊んでいる部屋からも隣の部屋の様子が垣間見える
わけで……たぶん、わざとそうしたんだと思う。
 つまり、お母さんの思いは公開処刑。
 ちなみに、小三当時の僕には性欲というものがまだなく、お姉さん
の白い背中にお灸が二列で据えられていくのを見ていても、それは、
たんに『かわいそう』と思うだけだった。
 だから、この時唯一鮮明に覚えているのは、お姉さんが当初ピンク
のブラをしていたことぐらいだろうか。
 ただ、このピンクのブラこそがこの日のお仕置きの原因だったのだ。
……その事実は後で知ることになる。
 今の子たちにすれば『女子がブラをして当たり前じゃん』と思うん
だろうけど、僕が子供だった頃(だから半世紀以上前のことだけど)
僕の田舎では誰もが当然にブラを身につけられるわけではなかった。
 発育状態が今より遅いということもあるとは思うけど、乳バンドを
許されるのは体育の授業の時だけ。それも許可がいるから実際に使用
しているのは胸の発育がいいごく少数の子だけ。
 胸の揺れを抑える純粋な実用品だったのだ。
 しかしそこは背伸びしたいお年頃。自分を美しく見せることに余念
のない女子たちにはそれが大人への扉に見えたのかもしれない。
 ある日、誰かがその掟を破って自分の胸には分不相応なブラをして
登校すると、その後わずか数日で我も我もとそれに続くようになり、
学校中の女子トイレは極狭個室のファッション会場になってしまった。
 ジュニアブラなんて結構なものがまだなかった時代。多くの子が、
その時身につけていたのは母か姉さんのサイズ。そりゃ目立ちます。
ちなみに、うちの田舎では、なし崩し的に中3ぐらいになるとそれは
OKなんですが中1ではまだ早いというのが先生たちの判断でした。
 結果、授業中も服を着ていてもわかる巨乳の子が続出するわけで…
………ついに事件が発覚。
 お母さんも、学校からの連絡帳で自分のブラが娘に無断借用されて
いたことを知ることになります。
 どうやらこの時のお母さんの怒りはこの無断借用ブラジャー事件が
きっかけだったみたいです。

***********************

やさしいお仕置き <第3回>

基本的にノンHなお話ですがこの回だけスパンキングの場面が
あります


********** 第 3 回 **********

 「さてと、先生の方からも何かやって欲しいということだから、
チー子、今日はお仕置きもするよ。覚悟しときなさいね」

 お父さんが諭すように言うと……
 「…………」
 チー子は静かに頷く。

 そりゃあ子供にとって、お仕置きが大好きだなんて子はいない
わけで誰だってその場から逃げたいところ、反抗したいところだ
が、実際の処、寄る辺なき身の上の彼らにそれはできなかった。

 ましてや良家の子女なんて呼ばれる子どもたちの場合は、親に
大声を上げて反論したり、抵抗したりする子は稀で、親が望めば
自らパンツを脱いでお尻を差し出す子だって珍しくはない。

 というのも、そうした家庭では親が子供をお仕置きする際なぜ
こうなったかをきちんと説明するし、子供の言い分だって聞く。
子どもの側にしても、親が自分に度外れたことはしないだろうと
いう信頼関係もあるから、庶民の家で行われるお仕置きのように
そこが修羅場になることはめったになかった。まるで台本のある
お芝居でも見ているかのように、とてもスムーズに行われるのが
普通だったのである。

 チー子もまた世間的にはそんな良家の子女の一員だったから、
お父さんがたとえどんな罰を言い渡したとしても、静かにそれを
受け入れてきた。

 もちろんそこには、それが義務だからということもあるのだが、
お仕置きの後は、お父さんが必ず優しくしてくれるという女の子
らしい読みもまた含まれていたのである。

 普段のチー子はお父さんとは仲良し。甘えん坊だったのだ。

 「いいかい、チー子。ペーパーテストというのはね、班単位で
成果をもちよるお勉強とは違うんだ。子供たち一人一人が、今、
どこまで理解できてるかを知るために必要な先生のお仕事なんだ。
だから、あくまで自分一人でやらなきゃ意味がないんだ。そこの
ところわかるよね?」

 「うん、先生も同じことおっしゃってたから」

 「そうだろう。うちも三年生の終わり頃からは世間一般の授業
のやり方に戻っていくから、先生からもそうしたこと何回も注意
を受けてきたはずだよね」

 「う……うん」
 元気のない返事。
 チー子だってこれがいけないことだとは百も承知していたのだ。

 「なのに、なぜそれを無視してお友達に答えを教えちゃったの
かな……」
 豊お父さんはそう言ってチー子の顔を両手で挟み付けると覗き
込むようにおでことおでこをぶつけてくる。

 「…………」
 お父さんは特別怖い顔をしていたわけではなかったが、チー子
にとってそれはとても怖かった。

 そして、一拍置いてから……
 「……お仕置きも仕方がないよね」

 お父さんの最後通牒だ。
 でも、チー子は最後の抵抗を試みる。

 「チー子だって、お父さんの言ってることはわかっていたよ。
だけど、家庭科って、みんながそれほど大事に思ってないみたい
だし……」
 これはチー子にとって人生初の試みだった。

 勿論、過去にも言い争いたい思いはあったのだが、これまでは
先生やお父さんに見つめられると、もうそれだけで何も言えなく
なってしまい、ただただごめんなさいって顔を作ってやり過ごし
ていたのである。

 「家庭科は大事じゃないって誰が言ったの?」

 「だって、お母さんが、主要四教科さえできたら大丈夫だって」

 「…………(また、余計なことを)…………」
 それを聞いたお父さんは苦虫を噛み潰したような顔になる。

 さらに……
 「家庭科は大事なお勉強だよ。特に女の子はちゃんとできない
とお嫁に行った先で困るもの」
 と、当時としてはごく常識的なことを言うと……

 「大丈夫、大丈夫、私もお姉様みたいに結婚しないで働くから。
キャリアウーマンになってビトンのスーツを着て丸の内を歩くの」
 チー子の顔が明るく変わる。

 「でも、結婚しないと寂しくないかい?」
 豊氏が尋ねると……

 「だって、お父さんがいるもん。寂しくなんてないわよ」

 「なんだ、私をあてにしてるのか……」
 豊氏も思わず苦笑いになった。
 そして……
 「だけどね、私はチー子より長生きはできないと思うよ」
 と続けると……

 「それも大丈夫よ。お姉様が言ってたけど、寂しい時はツバメ
を飼うから大丈夫なんだって……」

 「…………(あの、バカ!!)…………」
 お父さんは思わず遥の方を向く。
 もちろん、機嫌のいい顔ではなかった。

 でも、気を取り直してこう尋ねてみると……
 「チー子、チー子はツバメを知ってるの?」

 「もちろん、知ってるわよ。理科で習ったもん。家の納屋にも
毎年春になるとやって来るじゃない」

 チー子の屈託のない笑顔にお父さんもほんのちょっぴり笑顔に
なった。

 「仲好しなのはとてもいいこと。お友だちを助けてあげるのも
とても立派なことだけど、これは、先生にとっても大事なお仕事
なんだから、邪魔してはいけなかったよね」

 「はい」

 チー子の学校では入学から三年生頃までは書き取りと計算問題
はこれでもかってぐらいしつこく反復練習させるけど、その他の
勉強では班単位で成果をもちよるグループ学習が主体。個々人を
ターゲットにした成果テストをあまりやってこなかった。
 勉強は競争するものではなく教えあうものだったのである。

 おかげでお友だち同士の仲はとてもよいのだが、どんな時でも
教えっこするのに抵抗がなくて、テスト中でさえお友だちから、
『ねえ、ここ見せてよ』なんてせがまれることがしばしばで……
チー子はそれを断りきれなかったのである。

 「本来テストというのは一人一人でやらなければならないもの
だから、たとえお友だちに見せてって頼まれてもそこはちやんと
断らなきゃいけなかったんだ」

 「ごめんなさい」

 「チー子だって4年生からは何度も先生から注意されてるはず
だよ。お友だちと教えっこしながら問題を解いちゃいけないって
……知ってるよね」

 「はい」

 「お父さんのお家では、いけないことと知っててやったのなら
お仕置きは免れないってお約束だったけど、わかってるかい?」

 「……はい……ごめんなさい」
 チー子は下を向いたまま泣き始める。

 男というのは、女の子にこうして泣かれると実に弱かった。
 自分自身が簡単に泣かないからよほどのことが起きたと感じて
しまうのかもしれない。だからこんな時の父親はすぐにお仕置き
にいかないで話を一旦そらしてしまう。

 「さてと、隆志。お前だったらこんな時はどうするつもりだ?
こんな時はチー子の為にどんな事をすべきだと思う?…叱るか?
ぶつか?なだめるか?」

 「えっ!!僕が答えるの?いや、僕はまだ子供を持ったことが
ないし……」

 「何を言ってるんだ。お前だってそう遠くない将来、結婚して
子供を授かるだろう。そんな時どんな基準で子供にお仕置きする
のかを決めておかなきゃ。子供を育ててこそ一人前の男だ」

 「いやあ~そんなこと急に言われても……ただ僕自身はあまり
子どもを叱りたくないから、お仕置きもしたくないんだ。チー子
だって、そんなに悪気があったわけじゃないみたいだし、今回は
許してあげていいんじゃないのかなあ」

 「お前は随分と寛容だな。そりゃあ、私だってチー子の泣き声
なんて聞きたくはないさ。だけど、人間、いくら理屈で分かって
いても誘惑に負ける事だってあるだろう。みんなが理屈どおりに
動けるなら警察官や刑務所はいらないはずだよ」

 「それはそうだけど、警察や刑務所があっても犯罪はなくなら
ないと思うけどなあ……実際、二度三度と刑務所に入る人はいる
わけだし……」

 「もちろんさうだ。お仕置きしたからってそれでみんなが罪を
犯さなくなるわけじゃない。だけど、お仕置きを受けた子が次に
罪を犯そうとする時ささやかながらも心にプレッシャーを受ける
ことになるから、私はまったくやらないよりはましだと思ってる
んだ。お前は幼い頃から確かに良い子だったけど、まったく経験
がないわけじゃないだろう?」

 「そりゃあ……まあ……お尻叩きだって、浣腸だって、お灸も
すえられたことがありますけど、でも、今は僕らが育った頃とは
時代が違いますから。今の親は、お仕置きによる成果よりそんな
ことして子供の心が傷つくかないかをいつも心配してますよ」

 「心的外傷ってやつか。ま、確かにわからないわけではない。
特に、生まれて間もない赤ん坊を平気で保育園に放り投げ入れる
ような昨今の親にしてみたら、人間関係がしっかりと構築されて
ないからそりゃあ何をするにも心配なのかもしれないが、お前は
どうなんだ。私や母さんからお仕置きされて……それでその後の
人生に何か困った事があったのか?」

 「困ったことって!?……別にそういうことは……」

 「あるわけがないと思うよ。私だって『虐待だ』なんて言って
後ろ指を指されるようなことをしてきたつもりはないから。……
それに子供たちとは、これまでも多くの犠牲を払って信頼関係を
築いてきた。もちろん、それはお母さんも同じだけど、せっかく
築き上げた信頼関係を壊すような事はしてこなかったつもりだ。
お仕置きが必要だと思うときだって、相手の年齢や体格、それに
どれほどストレスに耐えられるかなどを色々と慮って決めてきた。
そうやって愛情深く育てきたからこそ私がこうして声を掛けたら
今日だって集まってくれたんじゃないのか。……そこ違うか?」

 「それは……」
 隆志は口ごもり、
 「……(相変わらず親父は理屈っぽい)……」
 と思うのだった。

 「そもそも心に傷を受けずに大人になる子なんて一人もいない
よ。わんぱく小僧の擦り傷切り傷と同じで、あって当たり前の事
だもん。大事なことは傷つくことを心配するんじゃなくてついて
しまった傷をどうやって深手にしないか修復させるかその環境を
整備し子供に生きていくための知恵を授ける事が親の仕事なんだ」

 「私は?」

 チー子が尋ねると豊氏は……
 「大人になってみればわかる」

 「えっ、それだけ?」

 「そう、それだけ。そもそも人生経験のない子供に親の有難み
なんてわからんよ。うぶな心を現実社会から隔離してあれも与え
これも与えして育ててみても、やがてその子は現実社会の北風に
晒される場所で生きていかなければならない。その時になって、
温室で育った心がどれほど危ういか……ぶたれた叩かれたと騒ぐ
よりその方がよほど心配だよ」

 「じゃあ、姉ちゃんみたいに裸にひん剥いてお灸を据えたり、
お尻が真っ赤になるまでひっぱたいた方がいいってことかい?」

 「広志!!お前はまたそんな極端なことを言って話を茶化す。
そうじゃない。私の話をちゃんと聞きなさい」

 「聞きなさいって……だって事実じゃないか。僕ら兄弟、正座
させられて姉さんのお仕置き散々見せられたもん」

 「ほら、お前が変な事を言うからチー子が怯えてるじゃないか。
……大丈夫だよ、チー子。たしかにお姉ちゃんにそういうことを
したのは事実だけど、それは色々あってそうなっただけだから。
今のチー子にはまだそんな必要はないんだから。安心していいよ」
 豊はまるで子猫を抱きしめるようにチー子を抱きしめている。

 「だったら、今回は百行清書ぐらいで勘弁してあげたら……」
 当の遥が答える。

 遥はちょうど父が事業を始めたばかりの忙しい頃に生まれた子
で、教師である母親共々細々としたことにまで手が届かなかった。
 自由放任と言えば聞こえがいいが、要するに、放し飼いで育て
られていたのである。

 このため成績は上がらず、男の子たちを引き連れて悪戯ばかり
する日々。学校からの呼び出しだって一度や二度ではなかった。
 そのたびごとに両親は家で何かしらお仕置きをしていたのだが、
やがてそれもたびたびとなるとインフレを起こす。

 最初は女の子だからという思いで手加減していた両親も段々に
過激になっていき、小学校も高学年になる頃には、弟たち前でも
ストリップを披露しなければならなくなっていたのである。

 「もちろん、学校には何かしら提出しなければならないから、
それはそれでいいんだが……ただ、その他にも何か心に刻むもの
が必要じゃないかと思って、それでお前たちに相談してるんだ」

 「お灸でいいんじゃない。脳天に突き抜けるような熱いやつ」
 それは女性の声だった。ただ、声の主は遥ではない。

 「なんだ、お母さんいたのか。顔を見せないからどうしたのか
と思ってたよ」

 「主婦は今の時間、夕食の支度で忙しいの。あなたたちこそ、
今まで何やってたの?さっさと片付けてちょうだい。私は何でも
いいのよ。お尻叩きでも、お灸でも……要はこの子が『ギャッ』
という目にあって、それで目が覚めればそれでいいんだから」

 『思えばこの人が一番我が家の中で残酷なのかもしれない』
 チー子だけではないこの部屋の住人誰もがそう思った。

 実際、今日のような大事でも持ち込まない限り子供のお仕置き
は大半がこの母の仕事だったのである。

 「いいこと、チー子。これはあなたが単に悪さをしたっていう
次元の話じゃないの。お父様の親戚、私の方の身内、大学の先生、
校長先生、教頭先生、いろんな方たちの沽券に関わることなの。
一族の中にあなたみたいな子が一人いるだけで、他の方たちまで
あいつらは何か不正をやって今の地位についたんじゃないかって、
世間から白い目で見られてしまうの。あなたはまだ子どもだから、
そういう事がまだわからないでしょうけど、これはとても重要な
ことなのよ。だから、今日はお父様にお仕置きをお願いしてるの」

 「…………」
 チー子は母が放つもの凄いオーラというか威圧感に怯えて声が
出せないでいた。こんな状況で幼い少女にできることといったら、
申し訳程度に小さく頷くこと。これが精一杯だったのだ。

 そんなチー子にとって唯一の救いは父がしっかり膝の上で自分
を抱きしめていること。
 煙草の匂いがする父の膝は必ずしも心地よい場所ではなかった
が、こんな時は大切な避難所だったのだ。

 父の厚い胸の中に顔を埋めていたチー子。その頭の上を母の声
が通り過ぎて行く。
 こんな時はお父さんだけが頼りだ。

 「今のチー子に理屈をこねてみたってまだ分からないでしょう
から、こんな時は身体で覚えさせないと……お灸でいいから七つ
八つ適当な処にすえてくださればそれでいいんですから……」

 「そうは言っても……」
 覗き込む父親の顔に合わせてチー子は笑ってみせる。

 それはお仕置きされているというより甘えてるようにしか見え
なかった。

 そんな男どもの煮え切らない態度に母はさらに態度を硬化させる。
 「まったくもう、こんなに大勢いるのに何もたもたやってるの
……チー子だってそれなりに覚悟して来てるんだから、少々の事
では驚かないわ。隆志、あんた長男なんだからやりなさい」

 「えっ、僕が?」

 「そうよ、これだけ歳が離れてたらそのくらいできるでしょう。
遥、兄ちゃんがやりやすいようにこの子を裸にしてから膝の上に
抱いてしまいなさい」

 「そんなこと言われても……どうしたらいいか」

 「何、かまととぶってるの。あんたが小さい時はよくやられて
た例のお尻叩きをするだけよ。普通の子は大人一人で十分だけど
あんたの場合はものすごい力で抵抗するから、まずは裸にして、
私が押さえつけてるうちに、お父さんがあなたのお尻をしこたま
叩いてあげたでしょう。忘れたの?!」

 夫だけではない。大きくなった子供たちも、最後はここにいる
大人たち全員が叱られる始末だった。

 というのも、同性である母親にしてみると、父親に甘えてこの
場を逃げ切ろうとしている娘の気持がよくわかるからなのだ。

 『……でも、それではいけない。ここは心を鬼にしても厳しく
ダメなものはダメとはっきりわからせないと後々の為にならない』
 彼女はそう心の中で念じていたのである。

 「私、叔父様や叔母様にも御迷惑をかけたの?」
 父の胸の中からか細い声がする。

 「大丈夫だよ。チー子。うちの親戚たちはみなさん信用のある
方たちばかりだから、お前が少しぐらい粗相してもそれ程困った
事にはならないさ」

 「うん」
 父は娘をかばったが、チー子は再び泣き出してしまう。

 チー子は日頃から父に溺愛されていたが、それでもお仕置きと
なれば兄弟に区別はなかった。母から浣腸をかけられた段階で、
父から相当キツイことをされると覚悟を決めて書斎へ入ってきた
はずなのだ。

 とはいえそこはまだ11歳の女の子、大人たちから取り囲まれ
たら、そりゃあ怖くて仕方がなかった。
 チー子の身体は父の腕の中で小刻みに震えていたのである。

 「さあ、顔をあげて」
 椅子に座る父が自らの膝の上に乗せた娘の顔をみると、いつも
より硬い表情だった。

 『いきなりぶたれるんだろうか?』
 父と目と目があった瞬間、チー子の顔に戦慄が走る。

 そこへ下された罰は……
 「これからお尻のお山を開いて尾てい骨の上にお灸だ。いいね」

 「はい、お父様」
 父親から確認を求められたチー子は反射的にこう答える。

 もちろん『喜んで』というわけではない。それなりにショック
はあるけど躾に厳しい家にあってはお仕置きを言い渡される時、
子は親に反論なんてできない。
 この時、使える言葉はたった一つだけだった。

 『はい、お父様』
 だから後先考えず反射的にこう答えたのだ。

 しかし、そうなるとチー子はみんなの前でお尻をださなければ
ならない。痛いとか、熱いとか言う前に十歳を越える女の子には
それが何より辛いことのはずだが……

 チャイルドポルノなんて言葉のなかった時代、小学生は両親の
純粋なお人形。一緒にお風呂に入ることも裸のお尻を叩くことも
親なら当然の、ありふれた催事なのだ。
 そんな当然の事をする時に、親は子供の気持を察する必要など
なかったのである。

 さて……
 父はチー子をあらためて自分の膝に馬乗りに座り直させると、
その目を見ながらおでこをくっつけてこう切り出す。
 それはチー子にとっては意外な言葉だった。

 「松原先生のお話だと一学期の期末テストではチー子の成績が
クラスで一番伸びたそうだ」

 「へへへへ」
 思わず照れ笑い。

 「それともう一つ。先月、県展に応募した水彩画。あれが特選
だったみたいだぞ。内々に絵画教室の村田先生から連絡があった
んだ。おめでとう」

 予期せぬ父の言葉にチー子の頬が思わず緩む。
 「ホント!やったあ~~」

 少し弱弱しいが満面の笑み。身体が上下に揺れている。
 父親にしてみるとチー子はやはりこうでなければならなかった。

 「やった、やったあ、私、特選なんて初めてよ。あれもの凄く
時間かけて描いたの。広志お兄様が何度も何度もここをこうしろ、
そこを直せってうるさかかったんだから」

 父の膝の上で小躍りするチー子。どうやら、県展での特選受賞
が彼女にとってはことのほか嬉しいことのようだった。

 「なんだ、お前、手伝ってたのか?」

 「たまたまだよ。先生の教室覗いたら、面白い絵だったんで、
ひょっとしたらものになるかと思って……こいつ、意外に才能が
ありそうだし、美大にでもいれてやったら、ひょっとしてものに
なるかもよ」

 「そうか、県展特選先輩のお前が言うんだから間違いないかも
しれないな。チー子、お前、美大いくか?」

 父は、冗談とも本気ともつかない笑顔で水を向けたが、チー子
からは、これも予期せぬ意外な言葉が飛び出すのだった。

 「いや!!」

 「どうして?お父さんいいと思うよ。女流画家。お前は昔から
絵が上手で先生によく褒められてた。特選は今回が初めてだけど
入選・佳作の賞状なら今までだってたくさん取ってるし……努力
すればものになるんじゃないか」

 「そんなの関係ないの。私は、遥お姉様みたいに東京の大学を
出るの。カッコいいスーツを着て、キャリアウーマンのお仕事が
したいんだもん。そのためにはお兄様やお姉様たちみたいに主要
四教科はいつも5でなきゃさまにならないでしょう。図工や音楽、
家庭科なんてどうでもいい教科だもん。そこは勉強時間を削って、
主要四教科でまだ一度も取ったことがない5を取りたかったの。
だから、今度も家庭科はカンニングでごまかしたんだから……」

 チー子は無意識のうちに自分の悪事を力説する。
 でも、それが周囲の大人たちの不興を買っていようとは、この
時まだチー子は気がついていなかったのである。

 チー子の演説が終わってしばらく、部屋の中がシーンと静まり
返ったままの時間が流れた。

 『えっ、コレって何だろう?』
 チー子は部屋の中の微妙な空気の変化を察知したが、その原因
がまさか自分にあろうとは最初思っていなかった。

 その答えを語ってくれたのは、やはりお父さんだったのだ。

 「な、チー子。お前はさっき『カンニングをしたのはこのまま
ではお友だちが試合に出られないからそれを助けてあげたんだ』
って胸を張っていなかったか?でも、今の話を聞く限り『それは
主要四教科に関するテスト勉強の時間を確保するためにやった』
ってことになってるよね。……さて、どちらが本当なのかな?」

 「(えっ?!、ヤバッ)」
 チー子は固まる。目が点というやつだ。

 「…………それは…………」
 自ら墓穴を掘ってしまったチー子はそれっきり言葉がでてこない。

 しばらく続いた重苦しい沈黙のあと、チー子にとっては事態が
さらに深刻化する。

 一時、夕飯の支度で席を外していた真理絵がお玉をもって再び
居間へと戻ってきた来たのだ。
 彼女は、右左に首を振ってあたりを見回したかと思うと……

 「あら、まだ終わってなかったの。まったく、いつまでこんな
子供相手に遊んでるの。さっさとやらなきゃ夕飯が冷めちゃうわ
よ」

 真理絵は下町で赤ひげ先生と慕われた開業医の娘。口は悪いが
山の手の人たちのような裏表のないところが気に入って豊が下町
へ日参。周囲大反対のなか、大恋愛で結ばれたカップルだった。

 そんな母の特技は人の心を読むこと。夫がついた小さな嘘まで
まるで見てきたように言い当てる人なのだ。
 そんな彼女にしてみたら、まだ人生経験が10年ほどしかない
少女の嘘などひと睨みしただけで剥がれ落ちる。

 だから男どもがここで長々と審理を続けてること自体、彼女に
してみたら納得がいかないことなのだ。彼女の生活観の中では、
子供を裁判するのにいかほども時間などかからない。

 まず子供の素振りを観察。次にその子の顔をひと睨みすれば、
もうそれで即決だったからだ。

 結果『これは悪いことをしているな』と睨んだら、本人が何と
弁明しようが、次の瞬間は、怖くて痛くて恥ずかしいお仕置きが
待っている。
 そして、そんな怖い人に睨まれたら、子供だって次からは自分
のついた嘘が顔にでてしまうだろう。

 おかげで豊が仕事から帰って玄関を開けると、まだ幼い子たち
が真っ赤なお尻で立たされてるなんて光景が何度もあった。

 もちろん、子供たちにとってもそれは大きなトラウマなわけで、
今は大人になっている子供たちでさえ、未だに母親が部屋に入って
来るだけで緊張するくらいだった。

 真理絵は、いちおう夫から事情を聞いたが、その顔は渋いまま。
右手を顔の前で振ってみせ、話にならないとでも言いたげに……

 「そうじゃないのよ。この子がカンニングを思い立ったのはね、
あくまで自分の為なの。ルンルンが見たかっただけよ」

 「ルンルン?……なんだルンルンって?」
 豊氏が尋ねると、広志が答えた。

 「花の子ルンルンとかいうアニメだよ」

 「マンガ?……まさか、マンガの為にカンニングしたのか?」

 「手っ取り早く言ってしまえばそういうことじゃないの。主要
四教科のようにいい点をとってもみんなが褒めてくれない家庭科
なんかはスルーしたかったってことだよ」

 「だって家庭科の勉強なんて30分もあったらできるだろう」

 「だからさあ、その30分がチー子には貴重なのさ。そもそも
父さんがいけないんだよ」

 「どういうことだ」

 「隙間なくびっしりと家での勉強時間を組むから……チー子は
まだ小学生。学者じゃないんだから息抜きも必要さ」
 とは隆志。

 「ルンルンみたいなマンガたいてい30分もしたら終わるわ。
あの子だってそこに穴はあけられないのよ」
 と、遥も続いた。

 「えっ、穴をあけられないのがマンガの方ってどういうことだ。
小学生だって生徒なんだから勉強するのは当たり前じゃないか。
マンガを見る時間が勉強より大事ってことか?」

 「だから、あなたは子供の気持が分からないって言うんですよ。
娯楽の少なかったあなたの子供時代は図鑑年鑑百科事典があれば
それでよかったかもしれないけど、今は時代が違うの」

 子供たちと接する時間の長い母はチー子がテレビアニメに夢中
になっているのをよく知っていたのである。

 「……でも、あんなもの一回二回見なくても……」

 「だって、そんなことしたら、明日学校へ行っても友だちとの
おしゃべりについていけないでしょう。あんな物も、こんな物も
ないの。アニメだって、あの子にとっては大切な生活時間の一部
なんだから」
 母はチー子を擁護する。

 「(ふう)呆れたやつだ。マンガを見たくてあけた穴の穴埋めに
カンニングとは……」
 父が開いた口が塞がらないといった様子でチー子の顔を見下ろ
す。抱かれたチー子も身の置き所がなさそうに小さくなっていた。

 「じゃあ、お友だちにお願いされたから仕方なしにってのは?
……あれは嘘か?」

 「いえ、それはそれで本当なんです。ただ、それはカンニング
ペーパーならぬカンニングデスクを作ってるのをチャコちゃんに
見られちゃって先生に黙ってる代わりに私にも答えを教えてって
頼まれたから仕方なくそうしただけのことなの。……そうよね、
チー子!」

 真理絵は最後、お腹に響くような声をだしてチー子を見つめる。
 すると、その瞬間までは、父の懐から逃走を試みていたチー子
が、今度は瞬時にして父の懐へと舞い戻ってしまう。
 まるで狐に出くわした子リスのような俊敏さだった。

 その様子がおかしかったのか周囲の大人たちは思わず苦笑いで、
場の空気が一瞬にしてなごむ。

 「チー子、お母さんがあんなこと言ってるけど、本当かい?」

 豊は娘の顔を覗きこんだが、チー子はしっかりと父の胸の中に
顔を埋めたまま動かない。ひたすら嵐が過ぎ去るのを待っている
ようだった。
 そこで、今度は母親に……

 「お前、この話は、先生からの連絡帳で知ったのか?」

 「いいえ、連絡帳にはあなたたちがチー子から聞かされた通り
のことが書いてあるだけよ」

 「じゃあ、何でそんなことわかるんだ。チー子から聞き出した
のか?」

 「そうじゃないけど、あの子と話してるとだいたい事の真相は
掴めるわ」

 「女の勘ってやつか」

 「女じゃなくて母親の勘よ。だけど、多分こういう事で間違い
ないはずだから。先生もチー子やあなたの事を慮ってこういう形
に収めてくださったんだい思うのよ」

 真理絵は鼻息も荒く自信たっぷりだった。

 「ずいぶん自信たっぷりだな」

 「そりゃそうですよ。私はあなたと違って子供たちと接してる
時間が長いですもの。その子の素振りを見て、抱いて話を聞いて
やれば、今、この子の話してる事が嘘かホントかぐらいはすぐに
分かりますよ。私、この子の母親なんですから」

 「私だって親じゃないか」
 豊氏がこう言って反論すると……

 「あなたは、夜、帰ってきて、子供たちを気まぐれに抱くだけ
じゃないですか。一緒にいる時間が全然違いますもの」

 『私だって今学期はチー子の世話でずいぶん大変な思いをした
んだがなあ』
 豊氏は思ったが、それは腹の中へ飲み込んでしまう。

 「いずれにしても、連絡帳に『ご家庭でも適切なご処置を…』
なんて書いてあるんだもの。何かしらして学校へやらないと先生
に申し訳ないわよ」

 真理絵は渋い顔で一つため息。そして、見下したように一言。
 「ホント、男の人たちって小娘の嘘に弱いんだから困ったもの
だわ」

 「そんなこと言ったって……」

 「ほら、チー子、いつまでお父様の胸の中に隠れてるの。出て
きなさい。お父様のお膝から降りるの。……さあ、早く!早く!」

 チー子はお父様の目を見て名残惜しそうだったが、膝から降り
ないわけにはいかなかった。

 そして……
 「この子のお仕置きは私がします。それでいいですね」

 業を煮やした真理絵の言葉に豊も同意せざる得なかった。

 確かに今日に限って言えば大事な事柄ということで父親が取り
仕切っているのだが、普段の子供たちはというと、母親と接する
機会の方がはるかに多い。
 当然、日常的な躾やお仕置きも、いつもは母親が中心になって
なされていたから、母親を怒らせたらどうなるか、それはチー子
が、否、チー子のお尻が一番よく知っていたのである。

 『あ~あ、お父様がよかったのに』
 チー子は思うが仕方がなかった。

 父親が抱きしめていた両手を緩めて膝の上にチー子を座らせる
と、真理絵がすぐに動く。
 チー子の手を引っ張って膝から下ろし部屋の隅まで連れて行く
のだ。

 「遥、手伝いなさい」
 と、いきなり長女の遥を呼びつける。

 「えっ、何?」
 事態の急転に心細い声を上げた遥だったが……
 自分だって経験済みのこと。母親から何を求められているかは
すぐにわかった。

 「何はないでしょう。この子のお尻をお仕置きするの。さあ、
スカートを上げて」

 「え!!……いやだあ!!! ああ~~~!!だめ~~~!!」
 もちろんそうした事はある程度予測してこの部屋に入ってきた
チー子だったが、このタイミングでという思いがあったのだろう。
部屋中響く大きな驚きの声だった。

 「何が『いや!』よ。我が家では悪いことをしたらお仕置き。
そんなの当たり前でしょうが。さあ、さっさと自分でスカートを
上げなさい。あんた、まだ小さいんだし、どこ見られたっていい
でしょう。たっぷり恥をかかせてあげるから」

 「えっ……だって、お兄様やお父様がまだいるし……」
 か細い声で訴えてみるが……

 「なんで?いてもいいでしょう。ここはお父様のお部屋なのよ。
お兄様たちもあなたとは血続きの兄弟なんだから、何も問題ない
はずよ」
 真理絵は涼しい顔。

 初潮前とはいえチー子はすでに11歳。恥ずかしい気持は十分
に分かっていたが、真理絵はあえてそれを許さなかったのである。

 『恥ずかしいのもお仕置きのうち』というのは母の常識。
 そしてそれは真理絵が娘時代を過ごした実家の常識でもあった。

 「遥、この子できないみたいだからやってあげて」

 この母の声に慌てて……
 「いやだあ~~~!!!」
 遥お姉ちゃんが迫ってきて……
 「あっ、だめえ~~!!!できます、できますからほっといて」

 でも、母を怒らせてしまったチー子がすばやく反応できたのは
声だけ。

 「……………………」
 しばらくお母様から猶予をもらったものの、やっぱり男性の目
が気になるらしく、スカートの裾を摘んだ手はとうとう最後まで
動かなかった。

 兄貴たちも、チー子と視線こそ合わさないものの、部屋を出る
という配慮まではしてくれないものだから……。

 「遥、パンツを脱がして」
 と、なる。

 母の大声に今度はチー子は身体が固まってしまう。

 「………………」
 どうにもならないまま、遥姉ちゃんからスカートを上げられ、
パンツも脱がされてしまうチー子。

 「バカ、早くしないからこうなるのよ。お母様怒らせちゃった
じゃない」
 遥は妹の世話をやきながら……バカにしたような、それでいて
哀れんでいるような目でチー子に注意する。

 チー子は姉が作業する間ずっと下唇を噛んで怖い顔をしていた
が、できたのはそれだけ。
 最後に、スカートの裾を上着の裾に安全ピンで留めて落ちない
ようにすると、小学生ストリップの完成だった。

 椅子に両手を乗せ、両足を開いて前かがみになると、大事な処
は丸見えだけど、それって仕方がなかった。
 だって、チー子だってうちで飼ってる愛犬チロとじゃれあう時
は仰向けにしてチロのおチンチンをよく見据えている。
 これと同じ関係だったのである。

 今は小学五年生の女の子といったらどこの家族も大人の入口と
認めてくれる年齢だろうが、当時の小5は純粋に子供としてしか
扱われない。もっと言えば赤ちゃんと同じなのだ。
 だから、その下半身が見えようが見えまいが、大人たちにして
みれば、赤ちゃんがオムツ換えしているといった程度の関心しか
ひかなかったのである。

 ま、大人がこんな意識だから、当の子供だって普段の生活では
自分は子供だから赤ちゃんの延長線上にいると思っているのだ。
 その証拠に、お風呂から上がってもスッポンポンのまま居間を
駆け回るなんて光景、庶民の家ではそう珍しいことではなかった。

 ただ、いくら家の中の出来事と言っても、それがお仕置きで裸
になるとなれば、やはり話は別で、チー子の方からお兄様たちと
視線を合わせようなんて思わない。そんな勇気もわかなかったの
である。

 『私は何て不幸な少女なのよ。夢なら今すぐ醒めて!!天国に
行かせてよ』
 チー子は目を閉じて必死に神様に祈った。せめても頭の中だけ
は今の現実を認めたくなかったのである。

 しかし、今のチー子には感傷に浸る余裕などない。夢の世界に
逃げ込ませてはくれないのだ。
 お臍から下が涼しくなった分、そよ風が軽くお尻をなでただけ
でも、夢はすぐに現実へと引き戻されてしまうのだった。

 「足を開いて……もっと……もっと……もっとよ!肩幅までは
開けるでしょう……もっとって言ってるのが聞こえないの!……
チー子!!言うことを聞きなさい!!」
 母の下知が叱責になり部屋中を飛ぶ。

 「はい、ごめんなさい」
 半泣きのチー子の声が兄弟たちの同情を誘う。

 「そう、それでいいわ。次は前かがみになるの。……もっと、
深く。もっと、もっと……もっとよ……わかってるでしょう!!
もたもたしないの!!……遥、前に回って身体を支えてやって」
 
 命令に従い遥がチー子の両肩を持って妹の体を前に倒し始める。
結果、チー子は遥に支えてもらわなければ体が倒れてしまうほど
上体を傾けることになるのだ。

 こんな姿勢だとお臍の下のさらにその奥まで外の空気が入って
来る。

 『恥ずかしい』
 バックに回り込めば大事な場所が丸見えになってるわけだから
そう思うのは無理ないが、言葉にするのはそれ以上に恥ずかしい
のだ。

 「恥ずかしい?だったら学校でも恥ずかしくない行いをなさい。
恥ずかしい行いをしたんだから恥ずかしい罰を受ける。これって
当たり前でしょう。何か文句があるの!!」

 チー子には真理絵の鼻息が荒く肩で息をしているのがわかった。
 こうなるとチー子に限らずお兄様やお姉様でも震える。

 というのも母からの幼児体験がたっぷりとお尻に染み込んでる
合沢家の子供たちは成人した今でも母の言いなりだったのだ。

 「ほら、泣かないの。めそめそしてるとお仕置きの鞭が増える
わよ。ほら、張って」
 遥の言葉がせめてもの励ましだった。

 「ピシッ」
 合沢家で使われている子供用の鞭は60センチ程の竹の物差し。

 「あっ」
 その最初の一撃がチー子のお尻をとらえると思わず声がでた。
 しかし、これは最初の衝撃で驚いたというだけのものであって
本当に痛いわけではない。

 その後……

 「ピシッ」

 「ピシッ」

 「ピシッ」

 はじめの数回程度はチー子でも声を上げずに耐えられる。
 というのも大人が本気になって鞭を振り下ろしたりしないから。
 母は相手が小学生ということもありかなり手加減しているのだ。

 「ピシッ」

 「ピシッ」

 「ピシッ」

 お仕置きと言っても最初の頃はままごとで遊んでいるようにも
見えた。実際、当時のおままごとにはお尻ぺんぺんだって入って
いたのだ。
 ただ、そうやって一打一打は弱くても母の鞭は正確にチー子の
お尻をとらえているから次第次第にお尻へ痛みが蓄積し始める。

 「ピシッ」

 「ピシッ」

 「ピシッ」

 7つ8つと重ねるうちに、チー子の両足は自然と地団駄を踏む
ようになる。

 「ピシッ」

 「ピシッ」

 「ピシッ」

 そして10を越えるあたりからは出したくないと思っても自然
と悲鳴が漏れ始めるようになるのだった。

 「ピシッ」
 「いやあ、やめてえ~~~」

 「ピシッ」
 「ごめんなさい、ごめんなさい」

 「ピシッ」
 「いやあ、痛い、痛い、だめだめ」

 こうした悲鳴はいったん声に出し始めるともう止まらない。
 最初は囁くように小さな声だが鞭の数が増えるごとにその声は
次第次第に大きく高くなっていく。

 これは母がチー子のお尻を強く叩き始めたからではない。叩く
力そのものは最初から一定なのだ。ただ温まったお尻というのは
ちょっとした刺激にも敏感になっているから、この頃になると、
誰もが地団太を踏み始め、お尻を振って痛みを逃がそうとする。
そして、頼まれもしないのに泣き言を言うようになるのだった。
 これは男の子女の子に関係なく仕方のないことだったのである。

 こうして子供が音を上げたと思える頃から母のお説教が始まる。
もちろん、お尻ぺんぺんは継続中だ。

 「ピシッ」
 「いやあ、だめ~~もうだめ~~やめてえ~~~」
 「やめてほしいのは、こちらの方よ。カンニングなんて絶対に
やめてちょうだい」

 「ピシッ」
 「もうしませんごめんなさい、もうしませんから~~~」
 「もちろん、もうしないでちょうだい。今度やったらこれでは
すみませんよ。お灸7つ」

 「えっ!!」

 「えっ、じゃないわよ。どこにすえられるかはわかってるわね」

 「はい、わかってます」

 「ものすご~~く熱くて、ものすご~~く恥ずかしいからいい
薬になるの。今日、予行演習でやってあげようか」

 「イヤ、ダメ!!しないで、お願い」

 「そう、だったら今日のところはやめておくけど、次は本当に
お灸ですからね」

 「はい、ごめんになさい」

 「ピシッ」
 「ぎゃあ~~~いやあ、痛いのだめ、痛いの嫌い、だめだめ」
 「痛いのは当たり前です。お仕置きしてるんですから。少しは
声を出さずに我慢できないの。堪え性がないんだから」

 合沢家のお仕置きではこんなやりとりがしばらく続くのだが、
母親はいったん始めてしまったお仕置きを悲鳴が上がったとか、
可哀想だからという理由ではやめてくれなかった。

 結局、許されるまでの36回、チー子はお尻を振り、地団太を
踏んで悲鳴を上げ続けた。

 相沢家のお尻叩きは、女の子でもお尻が真っ赤に腫れ上がり、
男の子では血が滲んだりもする。
 子供は可愛い性器をみんなに晒したうえに、けっこうしっかり
叩かれるわけだが、当時はこの程度のお仕置きを虐待と呼ぶ人は
いないのでお父様にしろお母様にしろ罪悪感はまったくなかった。

 実際、この鞭は翌朝まで痛みや傷が残ることはなかった。
 というのも、豊氏は自身も経験した本場イギリス仕込みの技を
真理絵にも伝授していたからで、そのことを自慢すらしていたの
である。

 「よし、いいでしょう。……遥、パンツ上げてやって」
 真理絵はチー子のお尻がどうなっているかを近くに寄ってしげ
しげと確認すると、納得した様子で遥にパンツを上げさせる。

 もちろん本来ならそんなことはチー子自身がやるべきことなの
だが、あいにくその時のチー子は、厳しいお仕置きで放心状態。
仕方なく遥に仕事を頼んだのだった。

 「いいことチー子、今度カンニングなんかやってごらんなさい
こんな程度のお仕置きじゃすまないからね、わかってる?」

 「……」
 チー子は小さくうなづく。本当は『はい』と言わなければなら
ないところだが、今のチー子にはそれすらできなかった。

 「今の痛みをよ~~くよ~~く覚えておきなさい。いいわね!」

 「はい、わかりました」
 べそをかいてチー子が答える。

 さすがにこれで終わりかと思いきや、母はここぞとばかりもう
ひと押し。このあたり女親はしつこいようだ。

 「次は鞭だけじゃないわよ。みんなを立ち合わせてお灸をすえ
てあげる。どこにすえるんだっけ?」
 真理絵はあえてチー子に尋ねる。

 「……尾てい骨」

 「そうお尻の谷間を開いて上の方の骨のでっぱりのあるところ
よね。ここは肉がない分、熱いのよ。一度すえられたことがある
からわかるわよね」」

 「…………」
 チー子は思わず唾を飲み込み喉をならす。

 「それから、どこにすえられるの?」

 「……お臍の下」

 「そうね、ここはどうせそのうち毛がはえてくるから大きめの
をすえておきましょうね。三つぐらい大丈夫だわね」

 「えっ!?」
 チー子の顔が思わず上がった。

 その顔に向かって、母の真理絵が……
 「もう一つどこだっけ?」

 「…………」
 すると、チー子の顔が真っ赤になる。

 「…………そう、わすれちゃったかな。お股の中にもすえるの。
会陰といって赤ちゃんの出てくる穴のすぐ近く」

 「……!!!……」
 再びチー子の顔があがった。

 「そんな心配しなくても大丈夫よ。ここはね、赤ちゃんがお外
に出にくい時はよくお医者さんが切開するところだから。でも、
とっても熱いから、今度はどんなおいたをしたか、よ~く覚えて
られる場所なの。それに大きなお灸をすえて火傷の跡が残っても
ここなら外からは見えないし、お仕置きにはうってつけだわ」

 「…………」

「あなたも幼い子じゃないんだし、脅しだけじゃないの。本当に
やりますからね。覚悟しときなさい!分かった?わかったの?!
…………ちょっと、分かったのなら返事をなさい!!!」
 母の声が段々に大きくなる。

 対するチー子は……

 「はい」
 蚊の鳴くようなか細い声が精一杯だった。

 「さあ、これでいいわ」
 最後は母も手伝ってチー子の身なりを整える。

 「さあ、お仕置きはこれでおしまい。ご飯にしましょう」
 母の一声で一応チー子へのお仕置きは終わりになったわけだが、
ただ、合沢家では、お仕置きが終わったあとにも世間ではあまり
やらない一風変わった儀式を子供たちに課していたのである。

Appendix

このブログについて

tutomukurakawa

Author:tutomukurakawa
子供時代の『お仕置き』をめぐる
エッセーや小説、もろもろの雑文
を置いておくために創りました。
他に適当な分野がないので、
「R18」に置いてはいますが、
扇情的な表現は苦手なので、
そのむきで期待される方には
がっかりなブログだと思います。

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