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§1

<ブルマー事件>

§1

 それは私が小学五年生の二学期に起きました。
 私たちの学校は幼稚園から小学校、中学校まで同じ敷地にあります。
街外れにあって亀山に住む子供たちしか通いませんから一クラスは12
名前後。運動場はテニスコートぐらしかありません。ただ車寄せのある
趣のあるレンガ造り二階建ての建物は大きく立派で、前庭、中庭、裏庭
と三つあるお庭にも四季それぞれに色んな草花が咲き乱れています。
 外見だけ見ると学校というよりどこかの邸宅のような造り見えるかも
しれませんが私たちにとってはこれが学校でした。
 一緒なのは建物だけではありません。先生方も小中学校はもちろん、
幼稚園までもこなすオールマイティーなのです。なかには、一時限目が
中学の先生、二時限目は小学校、午後からは幼稚園で子供たちとお遊戯
なんてスーパーウーマンもいらっしゃいました。
 そんなわけで生徒たちはもちろん、どの先生方とも超がつくほど親密
で、おまけに先生は必ずどの子かのママというわけですから、良いこと
悪いこと、すべてはママに筒抜け。学校で起こったことはどんな些細な
ことでも隠し事なんてできませんでした。
 おまけに、教室の後ろには中二階席というのがあって元気なお父様や
退職して今は養老院たお住まいの先生方、それに心配事のある娘を抱え
たママなんかが授業の合間を縫って見学に訪れます。
 私も授業中に隣の子とおしゃべりしていたら紙くずを丸めたボールが
頭の上に落ちてきますから『誰よ!こんな悪戯するの!』ってあたりを
見回したら、ママが中二階から睨んでた、なんて事がよくありました。
 こんな話をすると、『わあ~息が詰まりそうな学校生活ですね』なんて
同情されますが、私たちは他の世界を知りませんからそれを窮屈と感じ
たことはありませんでした。
 むしろ、幼い頃は学校にいてもママやお父様がわりに近い処にいます
から、見つけるといつも抱きつきに行っていました。これも普通の環境
なら「あなた、ここは学校なのよ。甘えるんじゃないの」なんて言って
叱られるところでしょうが、亀山というのは、もともとお父様たちが私
たち子供を思う存分抱きたくて造った街ですから、それもありませんで
した。
 いつでもどこでも大人たちへの抱きつきOK。というより大人たちに
両手を広げられたらそこへ飛び込まなければならなかったのです。亀山
で『抱かれる』というのは子供とっては特権というより、むしろ義務の
ようなものだったのです。
 ですから逆に子供たちは抱かれたい大人たちを選べません。体臭がす
るからからとか、顔が醜いからなんて理由で大人たちの愛撫を拒否する
ことはできませんでした。それは幼い頃はある種苦痛でもありましたが、
それも慣れが解決します。ある程度年齢がいくと嫌いな大人でもお愛想
で笑えるようになるのでした。
 そして大人たちにうまく抱かれればプレゼントへの期待も膨らみます。
亀山にはそもそもおもちゃ屋さんとか駄菓子屋さんなんてものがありま
せん。お金をもらっても使う処がありませんでした。ですから欲しい物
は何でも大人たちからの現物支給。大人たちに抱かれて喜ばせてそれを
ゲットする術を次第に身につけていくことになるのでした。
 こうした生活が亀山では実に13歳まで続くのです。本物の赤ちゃん
の時から大人の身体に近づく13の歳まで私たちはお父様の抱き天使、
無垢な赤ちゃん役を演じ続けなければなりませんでした。
 このためでしょう、大人たちは外の情報をほとんど与えてくれません
でした。もともと外界と隔絶したこの地ですが、貴重な情報源であるテ
レビは一日に一時間半だけ。それもすべて検閲済みのビデオでしか見る
ことができません。本も内容にHなものがある時は子供向けの物でさえ
見ることを許されなかったのです。
 ただ、そうは言っても歳がいけばそういつまでも純粋無垢な赤ちゃん
というわけにはいきません。ここの子供たちの多くは女の子ですから、
できるだけママやお義父様に気に入られたいと思ってがんばりますが、
それでも11歳くらいになるとそれまで押さえつけていた自我が頭をも
たげ始めます。私たちの場合はそれがブルマーでした。
 当時、私たちは学校の制服や発表会で着るユニホーム、日々の私服も
すべて亀山出身のデザイナー三人がわざわざ亀山を訪れて作ってくれて
いました。ですから、どの子もとってもお洒落さんだったのです。
 ところが、体操着だけはいつまでも同じ白のジャージにブルマー姿。
私たちが仮縫いなんかで学校を訪れるこれらのOGに「ねえねえ体操着
はもっとカラフルなのにしてよ。今どきブルマーなんてださいの穿いて
るのうちぐらいよ」っておねだりしてもこれだけは頑として聞き入れて
くれなかったのです。
 そこで、私たちは思い切って先生に嘆願書を出したのです。「ブルマー
をショートパンツに替えてください」ってね……
 ところが、嘆願書を見せると……
 「これは何!ショートパンツですって!まだ嘴の黄色いひよこのくせ
して何言ってるの。ブルマースは我が校の伝統あるユニホームなのよ。
それに何よりあなたたちのお父様方がお気に入りのスポーツウェアなの。
あなた方が自分たちのご都合で変えることのできるものではないの」
 なんて頭ごなしに園長先生に言われたものだから……
 「だって、あんなの時代遅れでかっこ悪いし……」
 「誰も穿きはたくないって……」
 「そう、オムツ穿いてるみたいでいやなんです」
 「あんなの時代錯誤ですよ」
 「そう、私、こんな姿じゃ恥ずかしくて……」
 なんて、口々に言ったら……
 「恥ずかしい?……お黙りなさい!生意気言うんじゃありませんよ。
あなたたち、いったい誰のおかげでこうやって暮らしていけると思って
るの。お父様に愛していただけてるからでしょう。そのお父様がブルマ
ー姿のあなたたちの運動する姿を見たいとおっしゃっるならそうすれば
いいだけのことじゃありませんか。あなたたちのお姉さまたちもこの姿
で体育をやってきたのよ。どうしてあなたたちだけが恥ずかしいの?」
 私たちはそれを言われると弱いのです。
 でも、何事によらず流行のファッションに身を包みたいと思うのは女
の性(さが)みたいなものですから……
 「だったら、お父様たち全員の承諾をいただいたら許可してください
ますか?」
 私がだめもとで粘ってみたら、あっさり……
 「いいですよ。ここにあなた方のお父様からの承諾書を持ってきたら
あなたたちの望みが叶うようにしてあげましょう」
 園長先生は自信たっぷりにこうおっしゃったのです。
 で、私たちは、一瞬顔を見合わせ、飛び上がって喜びます。
 誰の心の中も『私のお父様は私のことを他の子より可愛がってるんだ
から承諾書なんてチョロイものよ』という思いがあったのです。
 ところが……
 「えっ!どうしてだめなの?ねえ、お父様は時代の流れに逆らうの?
一生のお願い。ねえ~~承諾書にサインして……してくれたら、何でも
言うこときくから……」
 私がどんなに猫なで声で甘えて頼んでも……
 「困ったねえ、私はお前のブルマー姿が見たいんだよ。それはいけな
いことなのかい?」
 お父様は膝に乗せた私の頭を撫でながら11歳の少女の色仕掛け(?)
には反応しませんでした。
 「(えっ、いい子にしてたら何でもしてあげるよって言ったのに………
私のこんな簡単な望みを叶えてくれないの?)」
 お父様は私を特別に愛してくれていたと思っていたのに、それがそう
でもないとわかって正直ショックでした。
 おまけに遠くで二人の会話を聞いていたママまでもが……
 「何言ってるの。体操着は学校で決まってるものでしょう。そんなの
簡単に変更できるわけないじゃない」
 だめを押してきます。
 ただ、お父様はこうもおっしゃったのでした。
 「お前がどうしてもブルマーを穿きたくないなら、他のお父様の承諾
も取らないとね。これは私の一存で決められる事じゃないから……もし、
他のお父様たちの多くがそれに賛成だとおっしゃるなら私はそれに反対
するつもりはないよ」
 つまり、多数決には従うというわけです。でも、翌日学校に承諾書を
持ってこれたのは12名中たった2名でした。
 どの子も『我こそはお父様の一番の愛児』と思っていたみたいですが、
どうやら当てが外れたみたいでした。
 ま、ここでやめておけばみんな無事ですんだのですが、女の子という
のは時として意地になって無謀なことをやらかします。この時もそうで
した。
 既成事実を作ってしまおうというわけです。
 ワープロで打った承諾書の文言の下に、自分たちでお父様のサインを
真似て署名し、普段お父様たちが返却されたテストを確かに見ましたよ
という証につくハンコを勝手に持ち出して押してしまったのです。
 そう、思いついたのは承諾書の偽造でした。
 その偽造書類は結局11枚集まりました。ところが私だけはその印鑑
がどこにあるのかわかりません。そこでお父様にお友達が作った11枚
の承諾書を見せて……
 「ねえ、他のお父様はみんな承諾してくださったの。だから、お父様
も…いいでしょう」
 また、お膝の上でお色気作戦です。
 すると……
 「………………」
 お父様はしばらくの間かき集めたその承諾書をじっとご覧になってい
ましたが、そのうち…ふっと、笑顔になって……
 「仕方ないな……承諾書を書くとするか」
 とおっしゃったのです。そして、私をお膝からおろすと書斎へ……
 私は、当然、心の中でガッツポーズ。
 『渋々だって嫌々だって書いてくれればいいのよ』
 なんて生意気なことを思っていました。
 数分後、書斎から戻ったお父様の手には封書が一通握られています。
表書きには『承諾書』とありますから、当然これはブルマーを変更して
もよいというお墨付きに違いないと思うじゃないですか。ですから……
 「これは中を見ずに園長先生にお渡しするんだよ」
 と言われた時もさして疑いをもっていませんでした。
 『とにかくこれで準備は整った』
 そう思ったのです。
 私たち12名は2枚の承諾書と9枚の偽造承諾書、それに封を切って
いない承諾書1枚を携えて園長室に乗り込むとショートパンツへの変更
を迫ります。
 すると、最初いぶかしげにその書面を眺めていた園長先生も、やがて
昨夜のお父様と同じような笑顔になります。
 そして…最後に私が提出した封書を開封して中を確認すると、思いっ
きりほほの筋肉を緩めてお笑いになったのでした。
 「わかりました。でも、もう少しお待ちなさい。こちらにも準備とい
うものがありますから」
 そうおっしゃって私たちを一旦部屋から出されたのです。
 「やったやった、大成功」
 「さすが、茜。あったまいい~~」
 「ちょっちょっと頭を働かせばこんなものよ」
 私は友達の手前、一緒にはしゃいでいましたが、これは女の勘という
のでしょうか、お父様といい、今の園長先生といい、その笑顔にどうも
違和感を感じて仕方がありませんでした。
 そして、次の週末。
 私たち12人は園長先生に呼ばれます。それは他のお友だちにすれば
成功を確信する言葉でした。
 「これから、あなたたちには新しい体操着を朝比奈さんの処へ取りに
行ってもらいます。何分、最初のことで身体にフィットするかわかりま
せんからお姉様の処で試着させてもらいますからお行儀良くするのです
よ」
 園長先生にこんなことを言われて送り出されました。
 本来、篭の鳥の私たちはあまり亀山の外に出る機会がありません。で
すから他のお友だちは、マイクロバスに乗って山を下りることができる
というだけで大はしゃぎでした。
 ただ、私はというと園長先生に会う前に行われた健康診断の方が気に
なっていました。普段は外出許可の出る日に健康診断なんてしないから
です。
 『どうして健康診断なんかしたのかしら?…………まさか!?』
 でも、そのまさかだったのでした。
 バスは1時間ほどかけて朝比奈お姉様の別荘へとやってきます。
 ちなみにお姉様は『森のアリス』という子供服ブランドの社長さん。
私たちと同じ亀山出身で、主にローティーの子の制服や私服をデザイン
してもらっていました。
 そんな縁もあって、私たちが彼女の別荘を訪れるのも今回が初めてと
いうわけではありませんでした。私たちは過去にも新作発表会のモデル
として呼ばれたことが数回あって、そのたびに法外なギャランティーを
せしめていたのです。
 こんなことは他でも沢山あって亀山のOBやOGたちは私たち現役を
ことあるごとに呼んではお金を握らせてくれていました。それは、一旦
銀行に預けられ私たちが社会へ巣立つ時に渡されます。
 つまり亀山のOBやOGというのは単なる卒業生というだけではなく、
一種、現役世代の親代わりのようなところがあったのです。
 私たちが通された広い広い居間にはその親御さんたちがすでに三人も
ソファーに腰を下ろして待っておられたのでした。
 「あら、いらっしゃい」
 「元気にしてたあ」
 「この子たち五年生だっけ、最近の子は身体も大きいわね」
 このお三人さん、いずれもアパレル業界の方々で、樺山のお姉さまは
下着メーカーの『ホワイトスワン』朝比奈お姉さまは子供服メーカーの
『森のアリス』藤田お姉さまは『装美』というファション雑誌の編集長
をなさっています。
 もちろん一介の孤児にすぎない私たちから見ればみんな雲の上の存在
です。
 ちなみにここへ着てきた服や下着も元はといえばお姉さま方からいた
だいたもの。雑誌に取上げられた際にはちゃんとモデル料が自分の口座
に振り込まれていました。
 とはいえそこは子供のこと、親切されたからと言って三人にことさら
恩義を感じることもありませんでしたが、日頃から、ママや園長先生、
女王様からまでも日ごろから「くれぐれも粗相のないようにしなさい」
なんて言われていましたから、部屋に入って三人をいっぺんに見た時は
緊張してしまいました。
 「おかけなさい」
 どぎまぎする私たちに対して、朝比奈のお姉さまに言われましたが、
まずは床に膝まづいて両手を胸の前で合わせてご挨拶。亀山では室内で
大人の人たちにご挨拶する時は『乙女の祈り』と呼ばれるこのポーズを
とります。
 「本日はお招きにあずかり、ありがとうございます」
 12名の子が一斉にこれを始めましたから、大合唱になってしまいま
した。
 「はい、はい、わかったわ。いいからお座りなさい」
 朝比奈のお姉さまは、まず大きなソファーに子供たちを分散して座ら
せると、今度はおもむろに手を広げます。
 これは『私に抱きつきなさい』という大人側のサイン。こうされた時、
子供たちは何をさておいても飛び掛っていかなければなりません。逡巡
すれば無礼と思われますから、短い距離をもう条件反射で駆け寄ります。
 すると、12名もいる場所でのこと、他の子と朝比奈のお姉さまの目
の前でぶつかりそうになりました。
 結局、彩夏(さやか)ちゃんや春奈(はるな)ちゃんに譲ってもらい
私が最初にお姉さまに抱きつきます。
 「あなたはお名前は清美(きよみ)さんだったけ」
 「はい、そうです」
 「お父様は藤山様よね」
 「はい、そうです。お父様は藤山慶介です」
 「ママは?」
 「駒田春子先生です」
 私たちはこんな時、ママのことを先生と紹介します。家ではママです
が、それはあくまで内々での事。あくまで正式には家庭教師の駒田先生
なのですから。
 「そう、ママは春子先生なの。肌がつやつやしたなかなか美人の先生
よね。私のママはもうおばあちゃんだったからうらやましいわ」
 朝比奈のお姉さまは私を膝の上で抱き上げたまま私の頭を撫で背中を
さすり頬ずりをします。それは特別なことではなく大人たちが必ずやる
挨拶のようなもの。何しろ亀山では泣いても笑っても13歳までは全員
赤ちゃんという位置づけですから、挨拶も赤ちゃん並みというわけです。
 と、ここでお姉さまが、とある大きめの紙袋を取り出します。
 「これ、着て御覧なさい。あなたに似合うと思うわ」
 お姉さまがその中に手を入れて取り出したのは真新しい体操着。上着
はピンク、下はモスグリーンのパンツ。それは、私たちが待ちに待った
ユニホームだったのです。
 見ると、他の席でも樺山や藤田のお姉さまからも最初に抱かれた子が
おニューの体操着をいただいています。
 まさに『やったあ~~』という気分です。ですから、それをお姉さま
から「着て御覧なさい」と言われたときも何のためらいもありませんで
した。
 ここは女子だけの世界。さっさと服を脱いで下着になると、着替えを
済ませ、お姉さまの膝は次の子に譲って、空いたソファーの上で思いっ
きり跳ね回っていました。
 ええ、五年生なんて知恵があるように見えてもまだまだほんの子ども
なんです。ですから、このあと自分たちがいかに子供であるかを思いっ
きり知ることになるのでした。
 子供たちが全員新しい体操着に着替えたのを見届けると朝比奈のお姉
さまが大きな封筒を取り出します。そこから白い紙が現れて……
 「谷口茜ちゃん……これ、お返ししておくわ。とっても綺麗なサイン
だったのでびっくりしたわ」
 「守山秀子ちゃん……あなたのお父様は、たしか元の法務大臣よね。
そのお子さんがこんなことしちゃお父様だってお嘆きになるわよ」
 「駒田清美さん……」私の番です。恐る恐る側によると見えてきたの
は私たちが園長先生に提出した体操着変更の承諾書でした。それを提出
したそれぞれの子に返していたのでした。
 「これはあなたが考えたの?……」
 「……えっ、…いえ……」私は返事に困りました。
 「たいした知恵者ね。でも、今はまだこんなことをすべきじゃないわ。
今はまだ赤ちゃんなんだから……お義父様やお義母様、ママや園長先生、
女王様たちのお膝にの上で甘えてなきゃ……そういうのは嫌?もう飽き
ちゅゃった?」
 「…………」
 「でも、それがあなた方の今のお仕事よ。背伸びしても良い事は何も
ないわ」
 「…………」
 このサイン、あなたたちが自分で書いたんでしょう?」
 「……!!!」
 私はいきなり背中を鉈で割られたような強烈なショックを受けます。
このサインはみんなが何度も何度もそれぞれのお父様のサインを真似て
書いたものでしたが、何度も練習しましたから、いわば自信作だったの
です。
 亀山を知らない人たちには『所詮小学生が大人のサインを真似ること
なんてできるはずがない』とお思いかもしれませんが、私たちは幼い頃
から一日何時間もペン習字をお稽古させられて育ちましたから、自分で
言うのも何ですが同年代の小学生と比べればかなり綺麗な字を書きます。
 お父様のサインを真似ることだって、それほど難しくないと踏んだの
ですが……
 「あまりにも綺麗な字だから、承諾書を見た時はあなたのはお父様も
園長先生も、一瞬、目を見張ったようよ。でも、筆圧も線の勢いが弱い
から、すぐに誰かが真似て書いたものだってわかったの」
 「………(そうか、それで二人ともあの時笑ったのね。もう、あの時
ばれてたんだ)」
 私は立ち尽くしたまま臍を噛みます。
 「それで、園長先生から『こういうものは受け取れませんから子供達
に返してください』って言付かったの。……それと、もう一つ。あなた
のお父様と駒田先生からは、それぞれお手紙をいただいたの。それが、
これよ」
 朝比奈お姉さまはそうい言って二通の封書を私に手渡します。それは
間違いなくお父様とママの筆跡でした。
 「(承諾書!!)」
 そこには奇しくも私が提出したのと同じ文字が書かれていました。
 「いいから、中を読んでごらんなさい」
 そう言われて中を見ると……
 『承諾書、朝比奈孝子様へ。親として娘(清美)には厳しいお仕置き
が必要だと信じております。いかなるお仕置きにも同意いたしますので、
どんなに泣き喚こうが決して手を緩めないでください。もし、反抗的な
態度でお困りの時はご連絡ください。こちらでさらに厳しい折檻をして
ご報告いたします。お手数かけて申し訳ありませんが、よろしくお願い
いたします。……清美への追伸。清美、歯を食いしばってしっかり耐え
なさい。そこであまり見苦しいようなまねをするようならお家でママに
改めて折檻をしてもらいます』

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tutomukurakawa

Author:tutomukurakawa
子供時代の『お仕置き』をめぐる
エッセーや小説、もろもろの雑文
を置いておくために創りました。
他に適当な分野がないので、
「R18」に置いてはいますが、
扇情的な表現は苦手なので、
そのむきで期待される方には
がっかりなブログだと思います。

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