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§5 <天使の庭で>

§5 <天使の庭で>

 朝、子どもたちが学校へ行くと屋敷はとたんに静かになる。勿論、
そこで一息ついて自分の用事を済ますこともできるのだが、私は子
どもたちからは一足遅れてよく学校へ行った。普通、父兄が学校へ
行くというのは、父兄会や学芸会、運動会、卒業式といった行事の
ある時に限られるものだが亀山の学校はとってもアットホームで、
お父様やお母様がいつ顔を出しても嫌がらない。
 むしろ歓迎してくれると言ってよかった。その証拠に子どもたち
が学ぶ教室の後ろには中二階があり、父兄席として確保されたその
場所から誰もが授業の様子を見学できるのである。
 それだけではない。休み時間には教室へ下りていってうちの子を
抱いたり請われて宿題を教えることだってある。そんなことをやっ
ていると他の家の子ども達もせがむから他の子も抱くはめになる。
 ちょっとした人気者になった気分でそれはそれは楽しかった。
 もし、巷で見知らぬ男がいきなり自分の身体を抱こうとすれば、
泣き叫ぶか大人の手を払い除けて拒否するのが普通の反応だろう。
 しかし、ここではそんな子どもの姿は見た事がない。むしろそれ
が誰であれ、大人が抱きたいと両手を差し伸べさえすれば、まるで
手なずけられた子犬のようにものの見事にその人の胸の中へすっぽ
りと収まってみせたのである。
 子ども達は物心つく頃から目にする大人すべての胸に抱かれて
育つ。誰もが優しく接してくれる楽園では中に一人ぐらい見知らぬ
顔が混じっていても警戒しないのかもしれない。
 ただ、子どもたちにとっては私の膝の上だけが目的ではないよう
で、頭も首も背中も腰もとにかく私の身体の全てが彼らの遊び道具
だった。 それは老人にはちょっぴり大変なのだ。
 だから、お年を召してそんな事には耐えられないと学校へはあま
り足を運ばれなくなったお父様もいらっしゃるにはいらっしゃるの
だが、私だけではない、見ているとほとんどのお父様やお母様がご
自分の身体を子どもたちに自由に使わせる事で若い精気を存分に取
り込んでおられるようだった。
 そんなわけで始業の鐘が鳴り始めると私たちは子ども達との別れ
が名残惜しくてならなかったのである。

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tutomukurakawa

Author:tutomukurakawa
子供時代の『お仕置き』をめぐる
エッセーや小説、もろもろの雑文
を置いておくために創りました。
他に適当な分野がないので、
「R18」に置いてはいますが、
扇情的な表現は苦手なので、
そのむきで期待される方には
がっかりなブログだと思います。

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