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(1/9)      営業所(2)

(1/9)      営業所(2)

 私は見栄っ張りな母親のせいで幼稚園時代からバスや電車での
通学を余儀なくされていたが、それがその後の人生にプラスになっ
たかというと、惰性非才のためかそんな形跡は微塵もなく母親の
野望は単なるお金の無駄遣いに終わってしまう。

 ただその時代、私にとっては電車やバスに乗っていられる時間が
一日の中で最も楽しい時間だったから、将来はバスの車掌(当時は
電車と同じようにバスにも車掌さんが乗っていた)で暮らしたいと
心密かに考えていた。

 だからその日のために(?)とバスでの帰り道、終点近くになっ
て乗客が少なくなると、運転手さんや車掌さんにバスの構造や勤務
時間なんかをしきりに聞いてまわっては勉強していたのだ。言って
みればこれだけが母がお金と労力をかけて私に与えてくれた部分だ
った。

 もう小学校にあがる頃になると、営業所の諸君とはツーカーで、
詰め所に入りしな、「何だ、お前は…」なんて新米の車掌に吠えら
れると、こっちが睨み返したものである。
 だから、営業所に停まっているバスの運転席にデンと腰を下ろし
てクラクションを鳴らしてみるなんてことは一度や二度のことでは
なかった。

 そこで見た運転席の光景は今でも忘れないが、どんな高価なオモ
チャより輝いていた。

物のない時代のことだからね、当時のバスというのはどこか壊れ
てもすぐにその製造メーカーの部品が手に入るわけではないんだ。
あちらこちらから部品をかき集めては修理しているんだ。おかげで、
各計器類や確認ランプ、方向指示器やワイパーなんかが、元々
製造したメーカーに関係なく、芸術的にくっついていた。

 不様という大人の見方もあるだろうが、少年の目にはこれが実に
ユニークに映ってね、もうそこに座っただけで心は宇宙飛行士気分
だったのである。゜+.ヽ(≧▽≦)ノ.+゜

 おまけに、ある運転手さんなど営業所の敷地内だけとはいえ私を
膝の上に乗せてバスを動かしてくれたのだからこれはもうサービス
のしすぎかもしれない。\(゚▽゚)/

 もっともその後、彼が見返りを要求してきたので、それには快く
応じることにした。

 『え!?どういうことかって?』(*^_^*)

 つまり彼は僕の家(質屋)のお得意さんでね、最近、質物を高く
評価してくれないから、もっと高く貸すよう、お父さんに進言して
欲しいと言うんだ。

 男同士の約束だもん、効果があったかどうか疑問だけど、約束
は守ったよ。(^ニ^)


運転席 <FC>
注)写真は記事とは無関係です。

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tutomukurakawa

Author:tutomukurakawa
子供時代の『お仕置き』をめぐる
エッセーや小説、もろもろの雑文
を置いておくために創りました。
他に適当な分野がないので、
「R18」に置いてはいますが、
扇情的な表現は苦手なので、
そのむきで期待される方には
がっかりなブログだと思います。

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