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[ 第 1 回 ] 日曜日の朝
♪♫♭♮♯♪♫♭❈❈❈ <登場人物> ❈❈❈♪♫♭♮♯♪♫♭
【おうちの人たち】~蔵川家~
僕(小2)……ちいちゃん
これといって才能はないが、長男だから何かと優遇されている
幸せ者
弟(小2)……みいちゃん
僕よりちょっぴり気弱だけど、理数系に強く、感受性も豊か。
とっても可愛い顔をしているからみんなに好かれている。
姉(小5)……お姉ちゃん
近所ではメジラと呼ばれ恐れられている乱暴者。
姉御肌で体育会系。茜ちゃんとも呼ばれている。
従姉妹(小6)…セイちゃん
事情があってうちで預かっているけど、清楚で上品、頭もいい。
僕はマリア様みたいに思っている。清美お姉さん。
お父さん(質屋店主)
東洋哲学と書道が生きがい。お金にならない事ばかりしている
道楽者。お母さんには頭が上がらない。
お母さん(お父さんの奥さん)
怒ると信じられないほど怖いけど、普段は優しい一家の大黒柱
おばあちゃん(お父さんのお母さん)
近所におじいちゃんと住んでいる。お姉ちゃんにはなぜかやた
ら厳しい。メジラお姉ちゃんの天敵。お灸マニア。
ハナさん(お手伝いさん)
家事がまったくできないお母さんに代って我が家の主婦をして
いるおばあちゃん
♪♫♭♮♯♪♫♭♪♫♭♮♯♪♫♭♪♫♭♮♯♪♫♭♪♫♭♮
❈❈❈❈❈❈❈❈❈ [ 第 1 回 ] ❈❈❈❈❈❈❈❈❈
❈❈❈❈❈ 日曜日の朝 ❈❈❈❈❈
倉川家の朝は早い。平日は僕たちを学校へ送り出さなきゃなら
ないから戦場のように忙しいんだ。
のんびりしているのはお父さんだけ。彼の仕事は幼い僕たち
(双子)の子守りだけなのだが、それも義務ではないらしく寝床
から起きてこないことも多かった。
逆の見方をすれば、彼はこの家で相手にされていなかったとも
言えるのだ。
悪い人ではないよ。ぼく達にとっては……
よく抱っこしてもらったし色んな処へ連れて行ってもらった。
自転車の乗り方やお習字の書き方を最初に教えてくれたのもこの
人なんだ。
ただ、生来の怠け者でね、働かない人だったんだ。
普段はお習字をやってるか本を読んでるね。そうそう天井から
床まで届くような大きな和紙(大幅って言ったっけ)に書いたの
を部屋中に何本も掛けて、お友達と批評しあったり、近所にある
お寺の住職と禅問答みたいなわけの分からない会話をして笑って
たりもする。
要するに変人だったんだ。
もちろん婿養子なんかじゃないよ。江戸時代から続く倉川家の
れっきとした嫡男。名義上は店主だし、お店(質屋)番もするん
だけど、子どもの僕らからみても熱心じゃなかった。
ある日、クレームにやってきた人がお父さんを前に長々訴えた
あげく……
「あんたじゃ話にならん、店主を出しなさい、店主を……」
と言ったのを覚えてる。
きっと、お父さんはアルバイト店員ぐらいにしか見えなかった
んだろうね。
でも、無理もないって感じなんだ。(^ニ^)
そんなお店の実質的な経営者はお母さん。
だから、普段はとっても忙しく働いていたんだ。
自慢じゃないけど、幼稚園へだって二人して路線バスに乗って
行ったんだ。忙しいお母さんは玄関先でいってらっしゃいするだけ。
今ねえ、幼稚園の子が親に手を引かれて通園してるのを見ると、
「甘ったれやがって」なんて思っちゃうんだよね。(`ε´)
そんなお母さんも日曜日は休む。
いや、お店は365日無休のお店なんだけど、日曜日、それも
午前中は滅多にお客さんがこないからね、お母さんものんびりし
てるんだ。
だいたい10時ごろまでは布団の中にいるよ。
で、ぼくたちはその両脇で寝ている。お母さんの左側が僕で、
右側がみいちゃん。
どうでもいことだけど、僕がチイちゃんと呼ばれてるのは裾子
で小さいから。弟がみいちゃんなのは、彼がいつも母親の右側に
いるからで名前とは関係ないんだ。
また、話がそれちゃったけど……(^^ゞ
いえね、お母さんがいつまで寝ていたって構わないんだけど、
お母さんって人は僕たちにも一緒に寝てろって強制するんだよ。
つまり、本当は僕たちもう起きたいのに布団から出さしてくれ
ないんだ。
「ほら、お布団から出ないの。まだ、ネンネの時間よ。日曜日
ぐらいゆっくりでいいでしょう」
常に自分本位な彼女は、家族の誰もがお腹がすいているという
現実には目もくれないんだよね。
だから、「お腹がすいた」なんて言って見るんだけど……
「そんなに急がないの。まだ、お店が開いてないわ」
彼女はそう言ってぼくを再び自分の懐の中に抱き入れるんだ。
ちなみに、平日は、お手伝いのハナさんがいるから朝ごはんを
作ってくれるだけど、日曜日は、そのハナおばあちゃんもお休み
だからね、なおのこと、お母さんはゆっくりしているんだ。
たとえこちらにやる仕事がなくても他人が目の前で働いてるの
に布団の中には居にくいんだってさ。
というわけで、そのぐうたら朝寝坊に付き合わされる僕たちは
仕方がないからたいていお母さんのおっぱいで遊んでる。
小二の子にしてはちょっと幼いけど、お母さんのオッパイの先
をぷにぷにしたり、舐めたり、しゃぶったりの独り遊び。
でも、おかあさんがそれに文句を言うことはないんだ。
時にはミイちゃんも参加して二人で馬乗りになってやってみる
んだけど、この人、全然堪えないんだ。( ̄O ̄)Zzz
むしろ……
「おっぱい欲しいの?いいわよ、でも、でないわよ」
なんて言っちゃう人なんだから。
えっ、そんなことして楽しいか?
ん~~微妙だね。そりゃあ小二ってまだ赤ちゃんに近いからね、
そんな事してても強い違和感があるわけじゃないだ。ミルクなん
か出なくてもお母さんのおっぱいは楽しいよ。ただ、うちのお母
さんってAカップなんだ。仰向けに寝るといよいよおっぱいって
呼べるようなものはなくて先っちょだけなんだよ。( ̄q ̄)
そこで下の方を探検に行くと……
「そこはダメよ」
って言われちゃうんだ。
そこで、その日は仕方なくミイちゃんはメジラの方へ行った。
メジラはミイちゃんを抱くようにいつもお母さんの右側で寝て
いるからね、寝返りを打てば抱き合えるくらい近いところにいる
んだ。
一方、僕はセイちゃん(清美お姉さん)の方へ行ってみる。
お姉さんはこの中では唯一の中学生で従兄弟。そのせいだろう
か、僕たちのお母さんとはちょぴり距離がある。
他人の家でご飯を食べさせてもらっているという負い目がある
のか日頃からとても慎みぶかく、また清楚にしていた。
ここにこうやって寝るのもすでに中一なら拒否してもよさそう
なもんだけど、『僕ら兄弟の面倒をみてほしい』というお母さん
の大義名分を受け入れてここで寝ているんだ。
健気だろう。(・。・)
お姉ちゃんは自分の部屋もふかふかのベッドもお家の中にちゃ
ん用意してあるんだよ。一緒にざこ寝しなくてもいいのに、それ
でも、ここで僕らと一緒に寝ているんだ。
お母さん、ああ見えて結構寂しがりやなんだよ。
「おねえちゃま」
僕はお母さんにさえあまり使わない幼児語で声を掛ける。
すると、お姉さんはは優しく抱き入れてくれるのだ。(*^_^*)
健気だろう。(・。・)
僕は嬉しいけど……☆ヽ(∇⌒*)よろしぅ♪
これがメジラなら、鼻の先でおっぱいを突いてみたり、よだれ
を垂らしたりですぐに姉弟ケンカになるんだけど、僕も清美お姉
ちゃまの前ではそんなことはしなかった。
お行儀よく寝袋代わりにそこで体を丸めて寝るだけ。清楚で、
品のよい子の場合はこちらもそれで十分だったんだ。
そうこうしているうちに時計が10時を打つ。
その音を聞いてようやくお母さんが起き上がった。
まだ寝たりないが仕方がないといった寝ぼけ眼で布団を出ると、
箪笥の引出しを開けて中の財布を僕に向かって無造作に投げる。
中身は8歳の子が持つには大金だけど、彼女はそんなことを気
にするような人ではないんだ。
「チイちゃん、ミイちゃんとパン買ってきて」
「何でもいいの?」
「何でもいいよ。アンパンとクリームパンとジャムパンは五つ。
あとはあなたたちの好きなのでいいから」
頭をぼりぼりかきながら胡坐座り。めったに口にしないタバコ
をふかすことも……でも、こんなにお行儀の悪いお母さんを見る
のはこの時だけだ。
『あっ、お股もかいた』(◎-◎;)
ま、メジラの母親だから、地はこんなものなんだろうけど……
普段とりすましているのは田舎では名家とされる倉川家に嫁いだ
プレッシャーから居住まいを正しているのかもしれない。
ちなみにパンがいずれも菓子パンなのは、当時、田舎のパン屋
にはまだ惣菜パンというものがなかったから。もちろん食パンは
あったけどお母さんにとってはバターを塗るのさえ面倒だった
んだ。
当然コンビニ弁当なんてものもないよ。要するに安直にお腹に
入るものと言えば菓子パンくらいしかなかったんだ。(^◇^)
もちろん、世間一般では主婦と呼ばれる人たちが日曜日だって
忙しく働き家族の為に朝ごはんを作ってたよ。でも、我が家では
ハツおばあちゃんがお休みの日曜日はその仕事をする人がいない
からね、こうなるのだ。
お母さんができないのは何も炊事だけじゃないよ。
洗濯も、裁縫も、とにかく家事と名の付くものはまったくだめ
だったんだ。
「いくつ買ってくるの?」
「いくつでもいいから、早く行ってちょうだい。お母さんお腹
がすいてるの。けちけちしないでいっぱい買ってくるのよ。足ら
ないより余った方がいいんだから」
だいたいいつもこんなやり取りがあって、僕たち兄弟が朝食の
買出しに行かされるのが通例だった。
15分後、二人で抱えられるだけのパンを抱えて帰ってくると、
お父さんも起きて居間でお茶を飲んでいた。
正確に言うとお父さんはもっと早起きをしていてその間は自分
の趣味の時間を楽しんでいたのだ。
この人、怠け者だけどもの凄く立派なジェントルマンだからね、
「朝飯まだか」とかね「こんな菓子パンが食えるか」とか「お前
も女なんだから料理ぐらい勉強しろよ」なんて正論は一度も言わ
なかった。(^◇^)
台所の流しに山と積まれた汚れた食器類を背に、お父さんは
ぼく達が買ってくる菓子パンをみんなと一緒においしそうに食べ
るんだ。
で、それが終わると、いつもの朝の儀式、仏間に四人の子供達
を並べて般若心経を唱えるという、あれをやるんだ。
『日曜日ぐらい休めばいいのに』とぼく達は思っていたけど、
ずぼらなお母さんがこれだけは休まなかった。
で、その日もいつものように菓子パンを食べてから朝のお勤め。
お線香の煙で頭すりすりも終わったから『やれやれ、これで自由
の身』と思った瞬間だった。
「茜ちゃん、ここへお座りなさい。……たしか、あなたとは、
大事なお約束がありましたよね」
僕はその瞬間、偶然にもメジラの顔を見たけど、それは色黒の
彼女の顔でさえそれとわかるほど顔面蒼白だったんだ。
僕はかかわりを恐れてその場を立ち去ろうとしたんだけど……
「チイちゃん、今日はちょっと待って…ミイちゃんも、ここに
いてちょうだい。…あっ、それから、ごめんなさいね清美さん。
あなたにも手伝ってほしいの」
お母さんの声のトーン、物腰はさきほど僕に財布を投げた時と
はまったく違っていた。
ただならぬ気配。(@_@;)
子供だから細かなことはわからないけど、お母さんが何か重大
な決意をしてこの場に臨んでいるのは、8歳の頭でも容易に感じ
取ることができたんだ。
●○♪♫♭♯♪♫ (^o^)/~ Bye Bye ♭♯♪♫♭♯◆◇
【おうちの人たち】~蔵川家~
僕(小2)……ちいちゃん
これといって才能はないが、長男だから何かと優遇されている
幸せ者
弟(小2)……みいちゃん
僕よりちょっぴり気弱だけど、理数系に強く、感受性も豊か。
とっても可愛い顔をしているからみんなに好かれている。
姉(小5)……お姉ちゃん
近所ではメジラと呼ばれ恐れられている乱暴者。
姉御肌で体育会系。茜ちゃんとも呼ばれている。
従姉妹(小6)…セイちゃん
事情があってうちで預かっているけど、清楚で上品、頭もいい。
僕はマリア様みたいに思っている。清美お姉さん。
お父さん(質屋店主)
東洋哲学と書道が生きがい。お金にならない事ばかりしている
道楽者。お母さんには頭が上がらない。
お母さん(お父さんの奥さん)
怒ると信じられないほど怖いけど、普段は優しい一家の大黒柱
おばあちゃん(お父さんのお母さん)
近所におじいちゃんと住んでいる。お姉ちゃんにはなぜかやた
ら厳しい。メジラお姉ちゃんの天敵。お灸マニア。
ハナさん(お手伝いさん)
家事がまったくできないお母さんに代って我が家の主婦をして
いるおばあちゃん
♪♫♭♮♯♪♫♭♪♫♭♮♯♪♫♭♪♫♭♮♯♪♫♭♪♫♭♮
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倉川家の朝は早い。平日は僕たちを学校へ送り出さなきゃなら
ないから戦場のように忙しいんだ。
のんびりしているのはお父さんだけ。彼の仕事は幼い僕たち
(双子)の子守りだけなのだが、それも義務ではないらしく寝床
から起きてこないことも多かった。
逆の見方をすれば、彼はこの家で相手にされていなかったとも
言えるのだ。
悪い人ではないよ。ぼく達にとっては……
よく抱っこしてもらったし色んな処へ連れて行ってもらった。
自転車の乗り方やお習字の書き方を最初に教えてくれたのもこの
人なんだ。
ただ、生来の怠け者でね、働かない人だったんだ。
普段はお習字をやってるか本を読んでるね。そうそう天井から
床まで届くような大きな和紙(大幅って言ったっけ)に書いたの
を部屋中に何本も掛けて、お友達と批評しあったり、近所にある
お寺の住職と禅問答みたいなわけの分からない会話をして笑って
たりもする。
要するに変人だったんだ。
もちろん婿養子なんかじゃないよ。江戸時代から続く倉川家の
れっきとした嫡男。名義上は店主だし、お店(質屋)番もするん
だけど、子どもの僕らからみても熱心じゃなかった。
ある日、クレームにやってきた人がお父さんを前に長々訴えた
あげく……
「あんたじゃ話にならん、店主を出しなさい、店主を……」
と言ったのを覚えてる。
きっと、お父さんはアルバイト店員ぐらいにしか見えなかった
んだろうね。
でも、無理もないって感じなんだ。(^ニ^)
そんなお店の実質的な経営者はお母さん。
だから、普段はとっても忙しく働いていたんだ。
自慢じゃないけど、幼稚園へだって二人して路線バスに乗って
行ったんだ。忙しいお母さんは玄関先でいってらっしゃいするだけ。
今ねえ、幼稚園の子が親に手を引かれて通園してるのを見ると、
「甘ったれやがって」なんて思っちゃうんだよね。(`ε´)
そんなお母さんも日曜日は休む。
いや、お店は365日無休のお店なんだけど、日曜日、それも
午前中は滅多にお客さんがこないからね、お母さんものんびりし
てるんだ。
だいたい10時ごろまでは布団の中にいるよ。
で、ぼくたちはその両脇で寝ている。お母さんの左側が僕で、
右側がみいちゃん。
どうでもいことだけど、僕がチイちゃんと呼ばれてるのは裾子
で小さいから。弟がみいちゃんなのは、彼がいつも母親の右側に
いるからで名前とは関係ないんだ。
また、話がそれちゃったけど……(^^ゞ
いえね、お母さんがいつまで寝ていたって構わないんだけど、
お母さんって人は僕たちにも一緒に寝てろって強制するんだよ。
つまり、本当は僕たちもう起きたいのに布団から出さしてくれ
ないんだ。
「ほら、お布団から出ないの。まだ、ネンネの時間よ。日曜日
ぐらいゆっくりでいいでしょう」
常に自分本位な彼女は、家族の誰もがお腹がすいているという
現実には目もくれないんだよね。
だから、「お腹がすいた」なんて言って見るんだけど……
「そんなに急がないの。まだ、お店が開いてないわ」
彼女はそう言ってぼくを再び自分の懐の中に抱き入れるんだ。
ちなみに、平日は、お手伝いのハナさんがいるから朝ごはんを
作ってくれるだけど、日曜日は、そのハナおばあちゃんもお休み
だからね、なおのこと、お母さんはゆっくりしているんだ。
たとえこちらにやる仕事がなくても他人が目の前で働いてるの
に布団の中には居にくいんだってさ。
というわけで、そのぐうたら朝寝坊に付き合わされる僕たちは
仕方がないからたいていお母さんのおっぱいで遊んでる。
小二の子にしてはちょっと幼いけど、お母さんのオッパイの先
をぷにぷにしたり、舐めたり、しゃぶったりの独り遊び。
でも、おかあさんがそれに文句を言うことはないんだ。
時にはミイちゃんも参加して二人で馬乗りになってやってみる
んだけど、この人、全然堪えないんだ。( ̄O ̄)Zzz
むしろ……
「おっぱい欲しいの?いいわよ、でも、でないわよ」
なんて言っちゃう人なんだから。
えっ、そんなことして楽しいか?
ん~~微妙だね。そりゃあ小二ってまだ赤ちゃんに近いからね、
そんな事してても強い違和感があるわけじゃないだ。ミルクなん
か出なくてもお母さんのおっぱいは楽しいよ。ただ、うちのお母
さんってAカップなんだ。仰向けに寝るといよいよおっぱいって
呼べるようなものはなくて先っちょだけなんだよ。( ̄q ̄)
そこで下の方を探検に行くと……
「そこはダメよ」
って言われちゃうんだ。
そこで、その日は仕方なくミイちゃんはメジラの方へ行った。
メジラはミイちゃんを抱くようにいつもお母さんの右側で寝て
いるからね、寝返りを打てば抱き合えるくらい近いところにいる
んだ。
一方、僕はセイちゃん(清美お姉さん)の方へ行ってみる。
お姉さんはこの中では唯一の中学生で従兄弟。そのせいだろう
か、僕たちのお母さんとはちょぴり距離がある。
他人の家でご飯を食べさせてもらっているという負い目がある
のか日頃からとても慎みぶかく、また清楚にしていた。
ここにこうやって寝るのもすでに中一なら拒否してもよさそう
なもんだけど、『僕ら兄弟の面倒をみてほしい』というお母さん
の大義名分を受け入れてここで寝ているんだ。
健気だろう。(・。・)
お姉ちゃんは自分の部屋もふかふかのベッドもお家の中にちゃ
ん用意してあるんだよ。一緒にざこ寝しなくてもいいのに、それ
でも、ここで僕らと一緒に寝ているんだ。
お母さん、ああ見えて結構寂しがりやなんだよ。
「おねえちゃま」
僕はお母さんにさえあまり使わない幼児語で声を掛ける。
すると、お姉さんはは優しく抱き入れてくれるのだ。(*^_^*)
健気だろう。(・。・)
僕は嬉しいけど……☆ヽ(∇⌒*)よろしぅ♪
これがメジラなら、鼻の先でおっぱいを突いてみたり、よだれ
を垂らしたりですぐに姉弟ケンカになるんだけど、僕も清美お姉
ちゃまの前ではそんなことはしなかった。
お行儀よく寝袋代わりにそこで体を丸めて寝るだけ。清楚で、
品のよい子の場合はこちらもそれで十分だったんだ。
そうこうしているうちに時計が10時を打つ。
その音を聞いてようやくお母さんが起き上がった。
まだ寝たりないが仕方がないといった寝ぼけ眼で布団を出ると、
箪笥の引出しを開けて中の財布を僕に向かって無造作に投げる。
中身は8歳の子が持つには大金だけど、彼女はそんなことを気
にするような人ではないんだ。
「チイちゃん、ミイちゃんとパン買ってきて」
「何でもいいの?」
「何でもいいよ。アンパンとクリームパンとジャムパンは五つ。
あとはあなたたちの好きなのでいいから」
頭をぼりぼりかきながら胡坐座り。めったに口にしないタバコ
をふかすことも……でも、こんなにお行儀の悪いお母さんを見る
のはこの時だけだ。
『あっ、お股もかいた』(◎-◎;)
ま、メジラの母親だから、地はこんなものなんだろうけど……
普段とりすましているのは田舎では名家とされる倉川家に嫁いだ
プレッシャーから居住まいを正しているのかもしれない。
ちなみにパンがいずれも菓子パンなのは、当時、田舎のパン屋
にはまだ惣菜パンというものがなかったから。もちろん食パンは
あったけどお母さんにとってはバターを塗るのさえ面倒だった
んだ。
当然コンビニ弁当なんてものもないよ。要するに安直にお腹に
入るものと言えば菓子パンくらいしかなかったんだ。(^◇^)
もちろん、世間一般では主婦と呼ばれる人たちが日曜日だって
忙しく働き家族の為に朝ごはんを作ってたよ。でも、我が家では
ハツおばあちゃんがお休みの日曜日はその仕事をする人がいない
からね、こうなるのだ。
お母さんができないのは何も炊事だけじゃないよ。
洗濯も、裁縫も、とにかく家事と名の付くものはまったくだめ
だったんだ。
「いくつ買ってくるの?」
「いくつでもいいから、早く行ってちょうだい。お母さんお腹
がすいてるの。けちけちしないでいっぱい買ってくるのよ。足ら
ないより余った方がいいんだから」
だいたいいつもこんなやり取りがあって、僕たち兄弟が朝食の
買出しに行かされるのが通例だった。
15分後、二人で抱えられるだけのパンを抱えて帰ってくると、
お父さんも起きて居間でお茶を飲んでいた。
正確に言うとお父さんはもっと早起きをしていてその間は自分
の趣味の時間を楽しんでいたのだ。
この人、怠け者だけどもの凄く立派なジェントルマンだからね、
「朝飯まだか」とかね「こんな菓子パンが食えるか」とか「お前
も女なんだから料理ぐらい勉強しろよ」なんて正論は一度も言わ
なかった。(^◇^)
台所の流しに山と積まれた汚れた食器類を背に、お父さんは
ぼく達が買ってくる菓子パンをみんなと一緒においしそうに食べ
るんだ。
で、それが終わると、いつもの朝の儀式、仏間に四人の子供達
を並べて般若心経を唱えるという、あれをやるんだ。
『日曜日ぐらい休めばいいのに』とぼく達は思っていたけど、
ずぼらなお母さんがこれだけは休まなかった。
で、その日もいつものように菓子パンを食べてから朝のお勤め。
お線香の煙で頭すりすりも終わったから『やれやれ、これで自由
の身』と思った瞬間だった。
「茜ちゃん、ここへお座りなさい。……たしか、あなたとは、
大事なお約束がありましたよね」
僕はその瞬間、偶然にもメジラの顔を見たけど、それは色黒の
彼女の顔でさえそれとわかるほど顔面蒼白だったんだ。
僕はかかわりを恐れてその場を立ち去ろうとしたんだけど……
「チイちゃん、今日はちょっと待って…ミイちゃんも、ここに
いてちょうだい。…あっ、それから、ごめんなさいね清美さん。
あなたにも手伝ってほしいの」
お母さんの声のトーン、物腰はさきほど僕に財布を投げた時と
はまったく違っていた。
ただならぬ気配。(@_@;)
子供だから細かなことはわからないけど、お母さんが何か重大
な決意をしてこの場に臨んでいるのは、8歳の頭でも容易に感じ
取ることができたんだ。
●○♪♫♭♯♪♫ (^o^)/~ Bye Bye ♭♯♪♫♭♯◆◇