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〘 第 2 回 〙 「特別反省会」開幕

          亀山物語
                     合沢啓治(著)
〘 第 2 回 〙 「特別反省会」開幕
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<主な登場人物>


私(合沢啓治)/亀山愛育院の孤児。由美子の弟。

小島先生   /私の家庭教師であり、実質的には僕のママ。

大石胤子   /亀山村の村長さん。(三代目)女王様。

榊原 美里  /同級生の恋人。片想い。

森下景子先生 /由美子お姉様の家庭教師(ママ)であり、
       /かつ、学校では担任の先生でもある。

合沢由美子  /私をリンチにかけたお姉様の一人。私の姉。

小川静子   /泣き虫。リンチ四人組の一人。

桐山香織   /おっちょこちょいで早とちり。四人組の一人。
       途中でお灸をすえられそうになる。

安西遥香   /優等生だが、今回の事件に関与。四人組の一人。
途中でお漏らしをしてオムツ替えをさせられる。

美代子と彰子 /今回私のリンチには加わらなかったお姉様。

 お義父様  /亀山の子供たちは誰もがお義父様の子供として
(合沢徹)   /その家で家庭教師(ママ)と一緒に暮らしている。

 お義母様  /お義父様の奥さん。元々はお義父様のお付き合い
(合沢早苗)  /で亀山に来たのだが、今は子供たちにも優しい。

桐山高志 /幼稚園児(5歳)。由美子のお友達、香織の弟。 

 大原先生/高志君のママ。

 おばば様/亀山のお灸担当係。子供たちの実母を知る老婆。

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****<2>*********************

 舞台となったのは修道院の裏庭。ここは礼拝堂の裏口から続く
通路を50mほど行った先にあって俗世と聖域を分ける緩衝地帯
みたいな処でした。木の柵で仕切られてますが、昼間はシスター
だけでなく子供たちや街の人たちも自由に立入ることができます。

 ただその先が修道院の建物で行き止まりになっていますから、
あえてここを訪れようという人以外、普段ほとんど人の出入りは
ありません。目立たず声も届きにくいこの場所は、修道院のシス
ターたちの協力も得やすいことから子供たちをお仕置きする場所
としてよく使われていました。

 そんな庭はシスターたちによって丹精された草花が一年中咲き
乱れています。ちょうどこの時期は赤やピンク、黄色などの薔薇
があたり一面満開でした。天気もよく、少し汗ばむくらいの気温
をさわやかな五月の風がさましてくれます。

 公開処刑にはまたとない好条件です。もしこれが寒い時期だっ
たり、雨がふっていたりしたら仕方なく物置だった地下の納戸を
使うことになりますが、あそこだと少女たちの悲鳴が冷たい壁に
反響して悲惨さを必要以上に増幅してしまいますし、汚物の臭い
も篭りますからお義父様たちが眉をひそめてその大権を使い早々
と娘たちを許してしまう恐れがありました。

 えっ?『許されるならラッキーなんじゃないか』ですって……
(^^ゞ

 たしかにその瞬間は……
 でも、たいてい物足りなさを感じる先生たちによって、その後、
子供たちはよりキツいお仕置きを受けるはめになります。
 実際、子どもをお仕置きする口実なんてどこにでも転がってい
ますから。

 女の世界というのは、罪の重さと罰の重さが必ずしも比例しま
せん。大事なことは罰を与える側の溜飲をいかに下げさせるかと
いうこと。それが実現しないうちはお仕置きが終わらないのです。
お父義様がせっかく許してくれても子供たちにとっては実質的な
困難がまだまだ続くことになるのでした。

 ところでこの日は最初から舞台にはデンと大きなベビーベッド
が四つも並んでいました。

 その横には罪を問われたお姉様たちがそれぞれママたちに肩を
抱かれるようにして立っています。もし、この時ママがお姉様を
抱いていなければ、ひょっとして卒倒したり失禁したりする子が
いたかもしれません。

 いえ、オーバーではなく本当に……。

 この時のお仕置きは普段から体罰には慣れっこのお姉様たちに
しても全身の震えが止まらないほど厳しいものだったのです。
 ですから、こんな時頼りになるのは、やはり赤ちゃんの時以来
ずっと寝起きを共にしてきたママだけ。それは私にしてもお姉様
たちにしても同じことでした。

 「いやよ、こんなの。ごめんなさいするから許してもらって…」
 風に乗ってお姉様の泣き言が舞台袖の私の耳にも届きます。

 でも、ママの答は厳しいものでした。
 「仕方がないでしょう。あなたが蒔いた種なんだから。………
私だってあなたとのお付き合いはごめんだわ。だいたい下級生の
…それも男の子を全裸にしちゃうなんて呆れてものが言えないわ」

 「全裸じゃないわ、下だけよ。オムツ穿かせようって由美子が
言うもんだから………由美子が悪いのよ」
 「でも、あなただって手伝ったんでしょう」

 「それは、そうだけど……」
 「だったら同じじゃないの。そういうのを集団リンチっていう
の」

 「そんな恐ろしいことしてないわよ。ちょっとからかっただけ
だもん」
 「からかった?……おや、おや、いい歳をしてお浣腸までして
おいて……今さら森下先生(担任)に何を訴えるつもり?」

 「それは……」
 「そんなハレンチなことしておいて、今更助けてくださいなん
て言ってもそんな子に誰も助け船なんか出さないわ。ママだって
ごめんよ」

 「え~~」
 「何が、え~よ。そんなこと当たり前でしょう。私が小島先生
をなだめるのにどれだけ苦労したと思ってるの。…それよりも、
これからのお仕置きをちゃんと受けることね」

 「え~~」
 「そうすれば、あなたは元のエリート天使に戻れるわ。何より
お義父様はね、誰よりもあなたを愛しておられるの。その愛は、
しっかり受けなきゃ損でしょう」

 「私、お義父様の天使になんかにならなくていいわ」
 「どうして?…あなた忘れたの。ここはお義父様の天使だけが
暮らすことを許された御國なのよ。天使でない子どもはそもそも
いらないの。すれっからしの子に用はないの。そんな子はここを
放り出されるわ。それこそすっぽんぽんでね」

 「…(それでもいい)………」
 本当はそう言い放ちたいところですが、この時のママの言葉は
重かったと思います。実際、大人たちに反抗して全裸で放り出さ
れた先輩をつい先ごろ私も見たことがありました。
 いえ、それだけならまだいいのですが、二週間後、一旦は別の
孤児院に行ったその先輩が再び全裸で私たちの前に現れたのです。
先生方に許しを乞うために……。
 あんな惨めなこと、そりゃあ誰だってしたくはありませんから
ね……

 ママは娘の耳元で強い調子で囁きます。
 「いいこと、ここではあなたはお義父様の天使でなければ生き
ていけないの。それは良い悪い、好き嫌いは関係ないことなのよ」

 現実はママの言う通りでした。食べるもの、着るもの、文房具、
オモチャ、確かにここには中流家庭にあるものは何でもあります。
けれどそれらはお義父様からの愛を失えば一瞬にして消え去る物
ばかりでした。

 そのお義父様たちはというと、娘たちのそれぞれのベッドを前
にして藤椅子を並べ、すでに着席しておいででした。
 四人それぞれにお嬢様が違いますからここには四人のお義父様
がいらっしゃいます。
 それぞれのお父様たちはご自分の娘が罪に怯える様子をご覧に
なりながら他のお義父様たちと何やら談笑しておいででした。

 このお義父様方は亀山を下りればその世界で知らぬ人がいない
ほどの有名人ばかり。すでに功なり名を遂げた人たちが人生最後
の楽しみとして選んだのがこの亀山だったのです。

 ですから、いずれも年齢的にはお爺さま世代なのですが、これ
までエネルギッシュな人生を送ってこられたせいか、皆様お歳の
割にはお若い方ばかりでした。

 もっとも、お義父様は資金の提供だけでなくお義父様としての
お仕事もありますから、あまりにも老けこんでしまったら女王様
から引退勧告を受けてしまいます。好きな子どもたちを抱き続け
るためにも老け込んではいられませんでした。

 そんなお義父様のお仕事。まあそれが生き甲斐でもあるのです
が、それはひたすら自ら引き取った娘を愛し続けること。笑顔の
娘を膝の上に抱き上げ、頬ずりして、頭を撫でてご飯をスプーン
で口元まで運んだりします。まるで幼児にでも接するような愛情
表現をここでは13歳の娘にも行いますが、娘の方がそれを拒否
することはできませんでした。

 と同時に、子供たちが何か悪さをした時はそのお仕置きを手伝
わなければなりません。お義父様のなかには、娘のお仕置きには
あまり積極的でない方もいらっしゃいましたが、女王様とのお約
束ですから知らんぷりもできません。特に、こんな重大な事件が
あった時はお義父様としての威厳を保つためにも、愛する娘に、
ちゃんとしたケジメ、つまり、恥をかかさなければなりません。
 その手始めが、今まさに始まろうとしていたのでした。

 「さあ、みなさん、準備できましたか」
 四人の生徒をご自分の足下に集めて明るい声が響きます。声の
主は森下先生。タイトスカートを穿きモデルのようなスレンダー
な体つきはこんな山深い里には不似合いな都会的な香りが漂って
いる生徒に人気の先生です。

 この時、先生は象徴的な意味で乗馬鞭を手にしていましたが、
これで生徒たちのお尻を叩くということではありませんでした。

 「乙女の祈りを……」

 女の子たちは憧れの先生の指示に従い、跪いて両手を胸の前に
組んで目を閉じます。
 この姿勢は『乙女の祈り』と呼ばれ、亀山では子供たちが大人
たちから何かにつけて求められるポーズでした。神様へのお祈り
はもちろん、お義父様への朝夕のご挨拶や司祭様への懺悔の時、
先生からあらたまった内容のお話しを聞く時やこんなお仕置きを
いただく時もすべてこのポーズで始まります。

 もちろん乙女ではありませんが男の子も同じでした。(^^ゞ

 このポーズは子供たちが目上の人に恭順の姿勢を示す為に取る
ポーズでしたから、このポーズをとって怒る大人はまずいません。
ですから、大人たちに叱られそうになると、慌ててこのポーズを
とることが多く、結果許されることも多かったのでこのポーズを
取ると今でもなぜかほっとしたりします。

 私も亀山にいた頃は一日に何回となくこの姿勢になりました。

 「あなたたちは罪を犯しました。それがとても許されないほど
大きな罪であることは承知していますね。どんなことをしたの?」

 「啓治君をお医者さんごっこに誘いました」
 か細い声で答えます。

 「あなたたちには何か理由があったようですが、この学校では
理由のいかんを問わずいじめは認めていません。……由美子さん。
それは承知しているわね」

 「はい、先生」

 「そこで、あなたたちは啓治君に何をしたの?」

 「何をって………………」
 言い渋る由美子さんに先生が話を続けます。

 「全裸にしたんでしょう」

 「全裸って……おむつを履き替えさせただけです」

 「それだけ?お浣腸はしなかったの?」

 「…………」
 一同はうつむいたまま黙ってしまいます。だってこの四人は、
嫌がる私を押さえ込んで保健室からくすねたイチジク浣腸を入れ
たんですから……でも、こんな悪戯、ここではそう珍しい事では
ありませんでした。女の子というのは自分達にはない物をもって
いる男の子が羨ましいのか、自分たちより幼い子をターゲットに
してHな遊びを繰り返していました。巷では男の子がやりそうな
危ない遊びを、ここでは女の子たちが平気な顔でやってのけるの
です。

 「小島先生にお聞きした時は呆れたわ。13歳にもなった子が
こんな危ないおままごとをやるなんて……小島先生でなくても、
放ってはおけないわね」

 と、その時でした。

 「ねえ、もっと幼い子ならいいのかしら」

 森下先生のお説教を観客席で聞いていた彰子が隣の子の耳元で
ささやきます。もちろん、小さな声でしたが……

 「彰子さん、何ですって!」
 森下先生の声が急に厳しくなります。

 『普段からおしゃべりで、一言多い彰子さんがまたよけいな事
を……』
 その場にいる子供たちはみんな同じ思いでした。

 もちろん、睨まれた彰子さんは黙ってうつむいてしまいます。

 ちなみに、この時の観客は、お義父様たちや私を除けばクラス
メイトの彰子さんと照子さんの二人だけ。クラスメート七人のう
ち四人が関係者でしたから公開処刑なんて言っても、全校生徒の
前でとか、街の広場で繰り広げられるハレンチな刑罰とは違って
内容はごく内輪のお仕置き会だったのです。

 とはいえ、年頃の女の子にとってそれほど親しくない人の前で
恥ずかしい思いをするわけですから、それはぶたれて痛いのとは
まったく違ったショックです。いくら、天真爛漫に育てられたと
言っても他のお家のお義父様に自分の恥ずかしい姿を見られるの
は耐え難いことに違いありませんでした。そんなわけで、こんな
場合も女の子たちは恐れを込めて特別反省会のことを公開処刑と
呼んでいたのでした。

 「男の子は女の子以上に心が純粋で傷つきやすいものです。…
…わかるでしょう?」

 これはあくまで亀山の理屈です。でも、ここの男の子に関して
言えば、確かにそんな感じでした。私を含め少数派である男の子
たちは借りてきた猫みたいに怖い女の子たちの言いなりになって
いましたから。

 でも、女の子たちの考えは違っていたようで……
 『男の子が純粋?傷つきやすい?何言ってるの……男の子って
いうのは、粗野で不潔で怠け者なだけじゃない』
 お姉様の心の中には先生とは別の考えが渦巻いています。

 「…だいたい、そんな繊細な男の子を女の子がもて遊ぶなんて
許されないことです。お義父様たちの天使にあるまじきことです。
こんなことを繰り返すようなら、この楽園(亀山)からの追放も
ありますよ」

 森下先生のお説教を聞いていた観客の一人美代子が隣の彰子に
耳打ちします。
 「亀山追放?結構じゃない。そうしてよ」
 すると今度は彰子が美代子に耳打ち。
 「でも、どうせまた連れ戻されるんでしょうけど」
 二人はお互いの顔を見合わせて、にこっと笑います。

 でも、それを見ていた森下先生はご不満のようでした。
 再び、語気を強めて…

 「あなたたち、私語は禁止したはずですよ。できないなら乙女
の祈りで見てなさい」

 とうとう、クラスメート全員が乙女の祈りをやることになりま
した。

 それに納得したのか森下先生はあらためて足下の四人に向かって
話を続けます。

 「最初は、全校生徒の前でトリプルをしてから追放しようかと
いうお話も出たんですよ」

 これは教師特有の嘘ですが、聞かされた方は、人生経験もまだ
少ないですから驚きます。
 その驚いた子羊たちの顔に満足して先生は話を進めました。

 「でも、幸いにしてあなた方のお義父様は心の広いお方ばかり
ですから、あまり果断な処置は望まれません。本来なら全校生徒
の前でお鞭やお浣腸、おやいとなどをしてもよかったのですが、
啓治君のお義父様も今回だけは特別に許してくださることになり
ましたので事は穏便に済ませたいと思います」

 『やったあ』
 生徒達の顔に思わず安堵の笑顔が……でも、一瞬でした。

 「けれど、何もしないというでは、あなた方の心に誤解が生じ
かねませんから。今日はお義父様方にもご協力いただいて純粋な
心を取り戻す訓練を行います。……いいですね………いいですね」

 森下先生は常に穏やかにお話しされていましたが、最後にきて
語気を強めます。つられて四人が……

 「はい、先生」
 と答えますが、もちろんこれも本心ではありませんでした。

 えっ?『純粋な心を取り戻す訓練』が何のことだか分からない。
(^_^;)

 確かに回りくどい表現ですものね。要するに『赤ちゃんの心を
取り戻すためのお仕置き』ということなんです。
 どの子も以前に何度か同じ様なお仕置きを受けていますから、
これからどんなことが起こるか、おおよそ想像がついていました。

 「それではそれぞれのお義父様の前に行ってご挨拶をなさい」

 森下先生に命じられた四人の乙女たちは先生の足下を離れると、
それぞれのお義父様のもとへ。

 子供たちを迎え入れるお義父様たちは、娘たちを『困った奴だ』
とは思っていられたかもしれませんが、どなたも一様に、笑って
おいででした。

 お姉さまたちはお義父様の足元まで来ると、その場に膝まづき
再び乙女のポーズをとります。

 「由美子は啓治君にとってもいけない悪戯をしてみんなを困ら
せてしまいました。……(えっと)」

 さっそくお義父様への反省の言葉を始めますが、それは大半が
カンニングの文章だったのです。

 こんな時、自分で言葉を選んで話せるほど亀山の女の子たちは
器用ではありませんでした。この子たちは、もの凄く綺麗な字を
書きますし縫い物も得意です。これは今の子たちより上でしょう。
でも、自分の意見を言うとなるとそれは今の子にはかないません。
ですから、こうした時には黒子(ママ)の助言は欠かせませんで
した。

 「(いいこと)……このままではお義父様の天使としてお仕え
できません」
 「このままではお義父様の天使としてお仕えできません。……
(それから)」

 「でも、由美子はこれからもお義父様にお仕えしたいんです」
 「でも、由美子はこれからもお義父様にお仕えしたいんです…」

 「ですから、どうぞいけない由美子の罪を精算させてください」
 「ですから……そのう、…どうぞ、いけない由美子の罪を精算
させてください」

 棒読みのセリフ、つかえるたびに耳元でママに囁いてもらって
の反省の言葉でしたが、由美子のお義父様はそれをにこにこした
顔で聞いておいででした。

 「いいかい、由美子。お前たちは昨日もおやつを公園に持ち出
して食べていたそうだな」

 「えっ……」

 いきなり場違いの詰問。由美子お姉様の顔が一瞬『マズい』と
いう顔になります。いえ、僕たちだってやってしまうのですが、
亀山は躾が厳しくて、おやつを外で勝手に食べてはいけない事に
なっていました。家の外でおやつを食べるのはピクニックのよう
な場合だけ。大人が認めない限り、おやつは家の中でテーブルの
あるところでなければだめなんです。

 「それにだ、先生のお話だと今週は宿題をやってこないことが
3回もあったそうだな」

 お義父様がちょっぴり渋い顔を作ります。本当は、どのくらい
困ったことだと思っているのかは定かでありませんが、普段笑顔
ばかりのお義父様にいきなりこんな顔をされたら……亀山の子は
誰だってドキッとします。

 「まだあるぞ、先週は、ピアノのお稽古をすっぽかして四人で
ピクニックに行ったそうじゃないか」

 「…………」
 由美子お姉様からは何一つ反論がありません。そりゃそうです。
だってすべて事実だから仕方がないのです。

 ピアノは課題曲を一週間練習してから先生の処へ行かなければ
ならないのですが、由美子お姉様はその練習時間がとれなくて、
先生の処へレッスンに行っても叱られるだけですから仮病を使っ
てしまったのでした。
 すると、そこへ同じように、バレイや日舞、フルートの練習を
さぼっていた他の三人が由美子お姉様の部屋へお見舞いにやって
来たのです。
 「なんだ、あんたたちもそうなの」
 意気投合した四人は体のあいた者同士、気分転換にピクニック
と洒落込んだのでした。

 「私は、おやつも宿題もピクニックの件も先生方から見せしめ
のお仕置きをやりたいからと許可を求められたが許可しなかった。
どうしてだかわかるかね」

 「…………」

 「そのくらいのことは自分で軌道修正できると思ったからだ。
由美子は賢い子だからな」

 「…………」
 「しかし、こう立て続けに色々やらかしたのでは先生の言い分
も認めてあげないとな」

 「…………」
 「お前ももう13歳だ。いくら赤ん坊と同じ身分と言っても、
少しぐらいの過ちでいちいち恥ずかしい思いをさせるのは可哀想
だと思ったんだが……やはり、私の考えが少し違っていたようだ」

 お義父様は小さくため息をついて、
 「今回は他のお父さんたちとも意見が合致したので、赤ちゃん
仕置きをすることにした。……いいね……いいね」

 「あっ……は、……はい」
 お義父様の再度の念押しに、お姉様は、『はい』と答えるのが
精一杯でした。

 「今日はお前のすべてをほかのお父さん方にも見てもらうこと
にした。そしてもう一度、自分がここで何者なのか自覚するんだ。
いいね」

 「は、はい」
 か細い声が私の耳にも届きました。

 今の子なら、たとえ屁理屈でも自分なりの反論をするところで
しょうが、赤ん坊として、お人形として、育てられた彼女たちは
とても心がうぶなのです。まだ、お義父様のような方に反論する
すべを知りません。ですから何を言われても「はい」という以外
に言葉はありませんでした。

 私は自分の場所から一番近い処にいた由美子お姉様たちの様子
を観察していましたが事情は他の三家族も同じだったみたいです。


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このブログについて

tutomukurakawa

Author:tutomukurakawa
子供時代の『お仕置き』をめぐる
エッセーや小説、もろもろの雑文
を置いておくために創りました。
他に適当な分野がないので、
「R18」に置いてはいますが、
扇情的な表現は苦手なので、
そのむきで期待される方には
がっかりなブログだと思います。

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