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庄屋の奥様(11)

***** 庄屋の奥様 (11) *****

『…………………………』

私はローソクの明かりがすべて消され、真っ暗になった礼拝所を
見つめながら、そこに横たわる白い影を探しまわります。でも、
それはあまり意味のある行為ではありませんでした。あまりにも
浮世離れした光景に頭が混乱して、まずはその整理をつけたかっ
ただけだったのです。

『この一連のミサ自体はお芝居?でも、誰が?何の目的で?……
神父が首謀者?……いや、違うな。この劇の主役は奥様だった。
彼女がイニシアティブをとっていた。…………でも、なぜ?……
夫婦仲はよいと聞いていたのに?…それは外面だけの事なのか?
……庄屋様はこんなこと、ご存じなのだろうか?……知っていて
なおこんな事を許すことなんて、あるのだろうか?』

あれこれ考えるうちに、目が暗さになれて奥様の顔の位置までが
はっきりと分かるようになります。

私はいつしか屋根裏部屋を下りていました。そうっと足音を立て
ないように礼拝堂に入り込み、奥様が寝息をたてる敷物の前まで
やってきてしまったのです。

部屋は真っ暗。でも私の目の奥にはローソクの揺らめきに映し出
された奥様の痴態がフラッシュバックして頭を離れません。
あとは私の理性が関知するところではありませんでした。

****************************

その後のことは噂で聞いたことですが、奥様の御乱行は庄屋様の
知るところとなり、奥様は庄屋様からかなり手ひどい折檻を受け
たようです。でも、その時すでに奥様のお腹には赤ん坊があった
ために、夫婦別れはしなかったということでした。

私は十年後、再びあの礼拝堂の修理を任されます。

その作業の途中、三時のおやつを奥様が自ら持っていらっしゃい
ました。

「ごせいがでますね。あなたは10年前とちっとも変わらないわ」

「私はしがない左官職人ですから、変わり様がありませんけど、
奥様はあの時よりお美しくなられた」

「まあ、うれしいこと。あの時は新興宗教に入れあげてて、我を
忘れてたけど……」

 「では、もうあの神父様とは……」

 「今は、主人が教祖様ですわ。だからね、ここも改装したの。
教祖様に合わせて……」

見れば、かつての礼拝堂は近在のどこにもない立派なSMクラブ
に変身していました。

「女は自分を愛してくださる教祖様しだいで幸せにも不幸せにも
なるのよ」
奥様がそこまで言うと庭先で遊ぶ一人の少女に目を向けます。

「私は、あの子ができたから今の幸せがあるの。わかるでしょう」

私は意味深な目で見つめる奥様の視線を避けるように、幸せそう
な少女に視線を移します。

「あの子には、毎週、お灸と浣腸はかかさないの。物差しでお尻
を叩くのもしょっちゅうよ。女は愛される人のもとで耐える喜び
を知らないと幸せにはなれないわ」

「えっ!」
私は思わず奥様の顔をうかがい。そして、あらためて少女を見つ
め直します。

「でも、お嬢様は明るいですね」
調子を合わせてこう言うと、奥様は……
「そりゃそうよ。私はあの子を誰よりも愛してますからね。女の
幸せは自分を愛してくれる人がいるかどうか。そんな人がいれば、
その人の為には何でもしたいと思うのが女なのよ」

「それで厳しいお仕置きを……」

「あの子から愛と信頼を得ているから、私もあの子にお仕置きが
できるの。あの子だってお仕置きされても明るく振舞えてるの。
……母親としては、愛と信頼があるうちに、どんな人と出会って
も愛されるように娘を躾てやらなければならないわ」

「躾ですか……」

「そうよ、娘が幸せに暮らすために一番大事な躾なの。…………
そうだ、ちょっとこっちへ来てくださる?」

彼女は今気づいたように立ち上がりました。
そして、自慢のSMルームへと私を引っ張って行くと、その天井
を指さして……

「ね、あそこに大きな穴が空いてるでしょう」

「あっ、そうですね。塞ぎましょうか」
私はさも今、気づいたように応対します。

「いいの。あの穴は塞がないでね。私ね、あの穴から見られてる
と思うと、よけいに燃えちゃうたちなの。それに、また一晩だけ、
すてきな王子様が現れるかもしれないでしょう」

私はその言葉を聞いて10年まえと同じことがしたくなりました。

「………………」
でも、今回は体が動きません。

庄屋の奥様は奥様、私はしがない左官の職人。そんな当たり前の
事を、改装前からそこに祀られてるマリア様の像が、私にそっと
教えてくれたような気がしたのです。


****************<了>***(11)***

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tutomukurakawa

Author:tutomukurakawa
子供時代の『お仕置き』をめぐる
エッセーや小説、もろもろの雑文
を置いておくために創りました。
他に適当な分野がないので、
「R18」に置いてはいますが、
扇情的な表現は苦手なので、
そのむきで期待される方には
がっかりなブログだと思います。

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