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第4章 / 登場人物 & §1

  カレンのミサ曲


************<登場人物>**********

(お話の主人公)
先生/トーマス・ブラウン
……音楽評論家。多くの演奏会を成功させる名プロデューサー。
ラルフ・モーガン……
……先生の助手。腕のよくない調律師でもある。
カレン・アンダーソン……
……内戦に巻き込まれて父と離ればなれになった少女。

(アラン男爵の家の人々)
サー・アラン……
……広大な葡萄園とワイン醸造所を持つ人の良い男爵。
フランソワ……
……サー・アランの娘。内気な娘だがカレンには敵愾心を持つ。
ナターシャ・スコルビッチ
……フランソワのピアノの先生。あまり容姿を気にしない。
その他……
……お屋敷の女中頭(マーサ)メイドの教育係(スージー)等

(先生の<ブラウン>家の人たち)ウォーヴィランという山の中
の田舎町。カレニア山荘
ニーナ・スミス
……先生の家の庭師。初老の婦人。とても上品
ベス
……先生の家の子守。先生から子供たちへの懲罰権を得ている。
パティー
……先生の里子(6歳)おとなしいよい子、寂しがり屋
キャシー
……先生の里子(10歳)他の子のお仕置きを見たがる
アン
……先生の里子(14歳)夢多き乙女。夢想癖がやや気になる。
ヒギンズ先生
……子供たちの家庭教師。普段は穏和だが、怒ると恐い。
ダニー
……下男(?)カレニア山荘の補修や力仕事をしている。
コールドウェル先生
……音楽の先生。ピアノの他、フルートなどもこなす。
シーハン先生
……子供たちの国語とギリシャ語の先生。
グラハム
……カレンの前のピアニスト

****************************

第四章
  子供たちのおしおき


§1

 そこはカレンにとって見知らぬ不安な土地だったが、そこに
吹く風が、何かとても心地よく感じられるのも事実だった。

 これは理屈をつけて説明できることではない。少女の直感と
でも言おうか、そこに暮らす人の穏やかな表情や軟らかな物腰が
カレンを安心させたのかも知れなかった。

 「やあ、ニーナ。紹介するよ。先生が今度新しく連れてきた娘(こ)」

 ラルフがバラの剪定に余念のないストローハットのニーナに声
を掛ける。

 「ああ、さっき先生と一緒だった娘さんだね。名前は、なんて
言うんだい」

 その顔は陽に焼けて女性としてなら真っ黒だったが、ストロー
ハットの奥からは屈託のない笑顔が躍り出る。

 「カレン……カレン・アンダーソンです」
 少し緊張気味に、はにかむように……でも、その初々しさが
ニーナにも好感が持てた。

 「私はニーナ・スミス。ここのお庭を先生から任されてるの。
あなたは先生から何か言いつかってるの?」

 「言いつかってるって……私はただ、……」

 「ただ、……何?」

 「ただ、……夜、ピアノを弾いてくれないないかって……」

 「まあ、あなたピアニストなの!」
 言外に『まだ若いのに…』という言葉が隠れている。
 今までカレンと同じ仕事をしていた人たちは、みんなお年寄り。
10代のピアニストを先生が指名するのは珍しかったのだ。

 「いえ、そうじゃありません。だから、それは……私にも……
何が何だか……」

 「ラルフ、どういうこと?……この子のピアノ?…聞いたこと
あるんでしょう!?」

 「どうって、言われても……ただ、先生は気に入ってるみたい
ですね。寝間で眠り薬代わりに聞きたいって言ってますから…」

 「それじゃあ間違いないわ。うちの先生は、心が安らぐ一流の
ピアノ弾きしかここには連れてこないの。凄いじゃない。あなた、
先生の眼鏡にかなったのね。私もそのうち聞かせてもらうわ」

 ニーナはこう言ってカレンを褒めちぎったが、同時に、ラルフ
へこうも耳打ちしたのだった。

 「ねえ、この子もひょっとして孤児かい?」

 「……」
 ラルフが首を縦にすると……

 「やっぱり……大丈夫かい?」
 ニーナは何だか納得したような顔になった後、少し心配そうに
聞き返す。

 「先生にその気はないと思いますよ。もう16ですから」

 「分からないよ、こればかりはね」

 カレンは未だ手つかずの生娘だった。サー・アランの館でメイ
ドをやっていたと言っても、それは草深い田舎でのこと。周囲を
信心深い人たちに囲まれていた当時は、人々の噂になるような事
は起こりにくい。身を焦がすような恋にも出会わぬまま、カレン
は、今、こうして16歳を春を先生の処で迎えている。男の下心
などは知るよしもなかった。

 ただ、そのことは別にしても、今しがた見てきた事は、やはり
少女には気になる出来事だった。
 そこで、ニーナと別れ、ふたたびラルフと二人きりになった時
を狙って尋ねてみたのである。

 「キャシーって、いつもああして先生から怒られてるんですか?」

 「いつもってわけじゃないけど、他の子と比べたら、多いかも
しれないね」

 「やっぱり」

 「先生に言わせると、『それはその子が望むから…』ってこと
らしいけどね」
 バラの庭を歩くうち二人は子供たちの遊具が揃った公園のよう
な処へと来ていた。

*********************(1)****
母と子(エミール・ムニエル)
母と子(エミール・ムニエル)
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tutomukurakawa

Author:tutomukurakawa
子供時代の『お仕置き』をめぐる
エッセーや小説、もろもろの雑文
を置いておくために創りました。
他に適当な分野がないので、
「R18」に置いてはいますが、
扇情的な表現は苦手なので、
そのむきで期待される方には
がっかりなブログだと思います。

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