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第4章 / §5

第4章
  子供たちのおしおき


§5

 短ソックスだけを残し素っ裸になったアンは、コールドウェル
先生の指示で、今までカレンがいた部屋の片隅で膝まづいたまま
両手を頭の後ろに回している。

 一方、カレンはというと、今までアンが弾いていたピアノに…

 「あなた、弾いて御覧なさいな」

 コールドウェル先生からいきなりそう命じられたのである。

 「弾くって……何を……」

 「何でもいいの。あなたが好きな曲を弾けばいいわ」

 「(そんなこと言われても……)」
 カレンはピアノを前に当惑するが……やがて、自然に手が動き
だす。

 「……………………………………………………………………」

 二分ほど弾いて、カレンははにかんだ笑顔を見せる。
 それが彼女の終わりのサインだった。

 すると、コールドウェル先生が……
 「これはあなたが作った曲なの?」

 「ええ、即興です」

 「じゃあ、今、作ったの?」

 「そうです。思いつきです。何か弾かなきゃいけないみたいで
したから。…私、正規にピアノなんて習わなかったから、皆さん
が知ってるような曲は何も弾けないんです」

 「そう、……」
 コールドウェル先生はカレンに対して何やら含んだような笑い
を見せると、その視線をアンにも向けて……

 「そうなんだって、アン。あなたとは大違いね」

 「……」
 アンは何も答えない。

 しかし、カレンにしてみればコールドウェル先生の仕打ちは、
自分を笑いものにするためにやっているとしか思えなかったので
その時は辛かった。

 「今度は、あなた、弾いてみなさいな」

 コールドウェル先生はアンに命じる。

 すると、裸のまま、アンがやってくる。そのあまりに鋭い視線
にカレンはおののいた。
 そして、弾(はじ)かれるようにピアノを離れると、もといた
部屋の隅へと戻る。

 そこで、カレンはアンの幻想即興曲を聴くのである。

 「(すごい!)」

 カレンは初めてピアノに心を揺さぶられた。
 それは、もちろん卓越した技巧の賜物ではあるのだが、何より
カレンへの挑戦だった。
 だからこそ、目の前に迫った発表会の課題曲ではなく、自分の
最も好きな、最も得意な曲を素っ裸でぶつけてきたのである。

 「………………」

 ただ、そんな思いをカレンが感じていたかというと……

 「(凄いなあ、スコルビッチ先生のピアノもよかったけど……
これには凄みがあるもの。私のピアノなんかとは格違いね)」

 カレンはアンのピアノに圧倒されて、ただただ感心するばかり
だったのである。

 と、その時、ドアのノックが聞こえる。
 約束の男が1分たがわず帰ってきたのだ。

 「ラルフです。カレンを迎えに来ました」

 コールドウェル先生は、思わずアンに演奏を中止させて、服を
着せようかと動いたが、アンの背中がそれを拒否していることを
悟ると、入り口付近に衝立を立てて、カレンと一緒に入り口へと
向かうのだった。

 「やあ、カレン。迎えに来たよ」

 ラルフの声にカレンはピアノの方を振り返ろうとするが……

 「助かったわ、カレン、あなたのおかげよ。……また、いつか
あなたのピアノを聞かせてね」
 コールドウェル先生は、そう言うと、後ろを振り返ろうとする
カレンの背中を押してドアの外へと押し出すのだった。

 再び、二人きりになって、ラルフが尋ねる。

 「何があったんだい?コールドウェル先生のところで、何だか
とっても焦ってたみたいだけど……」

 「……えっ?……」
 カレンは思わず言葉に詰まる。そして……

 「何って……私がピアノを弾いて……アンがピアノを弾いたの」

 「それだけ?」

 「……えっ?……ええ、それだけよ」

 彼女はアンが裸になってピアノを弾いていたとは言わなかった。
それは言う必要がないと思ったからだった。

 「ふ~~ん、僕は、コールドウェル先生のことだからね。アン
にお仕置きしたのかと思ったよ。だから、僕が邪魔だったんじゃ
ないかと思ったんだ」

 「お仕置き?」

 「あの先生ねえ、よく自分の生徒のお尻を叩くことがあるんだ。
厳しい人なんだよ」

 「あら、そうなの。でも、それはなかったわ」

 「そうか、今日はなかったんだ。発表会前だからね。……アン
を動揺させたくなかったんだろう」

 「…………」

 「で、君は何を弾いたの?」

 「……えっ?」
 カレンは裸のアンが無心でピアノに向かっていた姿を思い出し
ていたから、ラルフの言葉に思わず驚く。

 「どうしたの?」

 「別に何でもないわ。コールドウェル先生が、何でもいいって
おっしゃったからデタラメ弾いただけ」

 「そうか、デタラメか。……でも、君のデタラメは美しいから
ね。コールドウェル先生も驚いたんじゃないか」

 「そんなことないわよ。私が弾いてる時も厳しい顔してたもの」

 「そうか、残念だったね」

 「いいの。それは……だって、私のピアノはどの道、道楽だけ
ど、世の中にはこれで身を立てようとしてる人が、いっぱい、い
っぱい練習してるんですもの。私がそこで一緒になって比べられ
るはずがないわ」

 「まあ、そう言うと身も蓋もないけど……コールドウェル先生
なら、カレンの音楽的なセンスは分かると思ったんだけどなあ」

 「ありがとう、ラルフ。それって、褒め言葉よね。ありがとう。
あなたがやっと私を褒めてくれたわ。今日はお祝いしなくちゃ」

 「何の?」

 「だから、あなたが私を認めてくれたお祝いよ」

 「オーバーだなあ、そんなことでお祝いだ何て……」

 「だって、それでも、私にとっては大事な出来事なんですもの」
 カレンは青空に向かって明るく笑うのだった。

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愛しの小鳥(ブグロー)
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              第四章はここまでです。
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tutomukurakawa

Author:tutomukurakawa
子供時代の『お仕置き』をめぐる
エッセーや小説、もろもろの雑文
を置いておくために創りました。
他に適当な分野がないので、
「R18」に置いてはいますが、
扇情的な表現は苦手なので、
そのむきで期待される方には
がっかりなブログだと思います。

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