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          夏のタイムマシン

                      K .Mikami

 期末試験が終わった日の放課後、校門の脇に型式の古いサニー
が止まっていました。

 『どこかで見たことのあるような』と思っていると……

 「お嬢様、お帰りですか」

 窓が開いて顔を出したのは父でした。父はさっそく私を乗せて
ドライブに出発します。
 どういう風の吹きまわしかと思い、

 「どこへ行くの」

 と尋ねてみましたが、それには答えません。
 ただ…

 「久しぶりにタイムマシンに乗ってみたくなってね」

 と、ぽつり独言のように呟きます。
 普段は車庫に眠っているこのポンコツのどこがタイムマシンだ
というのでしょうか。
 怪訝な顔の私に、次はちょっと複雑な質問でした。

 「おまえ、今でも生まれた家が見たいか?」

 実は、運転している父は私の実父ではなく、三歳の時から私を
育ててくれた養父だったのです。

 「そりゃあ………」

 私は言葉を濁します。
 思春期に入った私は、最近、実父がまだ生きていると知って、
逢いに行きたくて仕方がありませんでした。

 でも母はそれには反対。というより、実父の消息は知らないの
一点張りでだったのです。
それが養父の方から尋ねられて………

 「………………」

 どう答えていいのか分からず車窓を眺めていると、父が話題を
変えます。

 「叔母さんの処、まだ通ってるの」

 でも、これも触れてほしくない話題でした

 ***************************

 「ぐえぇ、………うおぉ………あぁぁ」

 私の学校では喫煙が見つかると中庭にある噴水へ連れて行かれ
て口の中を洗わされます。
それも二三人のシスターに体を押さえつけられたまま、石鹸の
ついたタオルを指ごと口の中にねじ入れられて…

 「おえっ……うおっ………ぐえっ……」

 よほど入ってきた指に噛みついてやろうかと思いますが、それ
も後の祟りを考えると……

 「あぁぁ………ぐえぇ、………おえっ……うおぉ……あぁぁ」

 となると、あとは、ただただこんな感じで十分間、嗚咽を繰り
返すしかありませんでした。

 これ、一見ユーモラスに見えますけど、過去にはお漏らしした
子だっているほど苦しい体罰なのです。

 やっと終わって、園長室に戻ってくると、母が私を引き取りに
来ていました。平身低頭する母を見ていると、たかが煙草ぐらい
で、みっともないと思いますが、学園長に…

 「我校の品位を守るためには停学や退学も選択の一つです」

 なんて脅されたら、それもやむお得ないのかもしれません。
 いずれにしても、これで改心したのは、私よりもむしろ母の方
でした。

 「今日はここへ寄るわよ」

 その母が私を連れて帰る途中に立ち寄ったのが叔母の経営する
鍼灸院でした。

 「いやよ!私、もう子供じゃないのよ」

 だだをこねる私に母は切り札をきります。

 「そう、だったらお義父様にやっていただきましょう」

 我が家の場合は、これで一件落着でした。

 結局は鍼灸院の奥にある小部屋で私は再び悲鳴を上げることに
なります。
 叔母さんは正規の治療の他に、親に頼まれれば『お仕置やいと』
も手がけていました。

 「そう、あなたそんな悪さをするようになったの。それじゃあ、
お仕置やいとも仕方がないわね」

 『お仕置やいと』は治療ではありません。
 熱いと感じる処、安全な処ならどこでもおかまいなしにすえて
いきます。

 「あっ熱~い、いやいや、もうやめて~」

 大人二人によってショーツが剥ぎとられ、お尻のお山やお臍の
下の三角デルタはもちろん、蟻の戸渡りや膣前庭なんていうきわ
どい処までも、次から次に熱い火の粉が降ってきます。
 およそ水着で隠せる処ならどこでも灸点でした。

 「いや、お嫁に行けなくなっちゃう」

 抵抗する私に母はこんな冷たい一言。

 「大丈夫よ。こんな処、誰にも見えないわ。…それともあなた、
旦那様以外の人にもこんな処を見せるつもりなの」

 以来、一週間。期末試験中にもかかわらず私は毎日この鍼灸院
へ、お仕置やいとの為にだけに通わなければならなくなったので
した。

***************************

 「叔母さんの処、まだ通ってるの」

 父の問いに私はずいぶん間をおいてから、
「いいえ」と気のない返事を返します。

 本当は、母との約束、今日まででした。

 「ねえ、お義父さんは本当に私が生まれた家を知ってるの?」

 私の質問に父はこう答えます。

 「行きたいのなら連れて行ってやる。ただし、私の言うことを
素直に聞くならば……だが……」

「……………………………行きたい……」

 私がぽつりと一言呟いて、その日の行く先が決まったのでした。

 アイマスクをさせられたま高速を乗り継いで二時間余り、着い
た所は何処にでもあるような田舎の風景。その寂しい竹藪の脇に
車を止めて…

 「これからあのお宅でトイレを借りるからこれを使うんだ」

 父がそう言って差し出したのはなんと無花果浣腸。

 「え!」私は思わず絶句します。
 そして、色々頭を巡らしてから…

 「そこが私の生まれた家なのね。……でも、どうしてトイレを
借りるまねなんか……私、そんなことまでして行きたくないわ」

 でも、そんな主張は通じませんでした。

 「無条件で私の指示に従う約束だぞ。いやならいい。帰ろう」

 父には珍しく、不機嫌になって、せっかく来た道を戻ってしま
います。

 きっと思うところがあったのでしょう。
 気まずい雰囲気が漂うなか…

 「ごめんなさいお父さん。やっぱり、私、やるわ。生まれた家
が見たいの」

 私が折れるしかありませんでした。父を怒らせてしまった事も
ありますが、次のチャンスがいつ来るか分からないという不安も
あったのです。

 「絶対に振り返らないでね」

 私は後ろの席で本当にお薬を使うつもりでしたが、羞恥心が先
にたって、うまくできません。
 そのうち、

 「もう、終わったか」

 父が尋ねてきますから思わず、

 「ええ」

 と言ってしまったのです。
 すると、車は猛スピードで発進します。

 五分後、二人はかやぶき屋根の大きな農家の前に来ていました。
父は急いで私を抱きかかえようとしますが、車外に出る寸前に、
その手がふいに止まります。

 「だから、駄目だと言ったろうが!」

 父のこんな凄い形相は見た事がありません。
いきなり私のスカートを捲ると、ショーツに手をかけます。

 「いやあん、今からやるから…待って」

 私の言い訳に…

 「駄目だ。もうこれはお仕置だから静かにするんだ」

 そう言って持っていた無花果浣腸を三つ、私のお尻に差し入れ
ます。

 『だめ、だめ』

 私は心の中では叫び続けましたが、声にはなりませんでした。
あまりの事、あまりの早業に、すっかり怯えきっていた私は父の
なすがままだったのです。

 「すみません、娘が急に腹痛を起こしてしまって……トイレを
貸してもらえませんか」

 駆け込んだ家のトイレから出てくるまで、
 私はほとんど放心状態でした。

 そんな大芝居までうって借りたトイレなのに、私が、長い用を
足して出てくると、父の態度はなぜか一変していました。
 父はその家の主人とおぼしき人となごやかに談笑しています。

 「お嬢さんですか」

 その人はスーツを着込み、日焼けした様子もありません。聞け
ば田畑は他人に貸してご自分はサラリーマンとのこと。おまけに
家の中まで色々と案内してくれます。

 そして、最後に書斎へと案内された時のこと、
 そこで起こった出来事は、私を再び茫然自失に追い込んだので
した。

 「こいつも最近生意気になりましてね。親には平気で嘘をつき
ますし、この間も煙草を悪戯しましてね。……どうです、あなた
からもこの子を叱ってやってくれませんか」

 父のこの言葉に何らかの含みがあることは私も感じ取っていま
した。……でも、まさか……

 「由香、ここへ来なさい」

 父の言葉に私は無防備に近寄ったのです。
 すると、いきなり幼子のように膝にうつ伏せにしてスカートを
捲り上げます。

 「いや、やめて。ごめんなさい」

 恥ずかしさのあまり気が動転してしまい、父の膝で暴れ回って
いた私にはわかりませんでしたが、この最中、大人二人の間では、
しばし無言のやりとりがあったようでした。

 「…………そうですか」
 
 ぼそっとした小さな声をきっかけに、私の体は父がやっていた
のと同じ姿勢のままでこの家の主人に預けられます。

 「いやあ、なにすんのよ。やめて、やめて……ごめんなさい。
お父さん助けて……」

 その紳士は、お義父さんと同じでした。制服のスカートを捲り、
ショーツを下ろして、私のお尻を叩き始めます。

 「パン、………パン、……パン、……パン……パン、…パン、
パン、パンパンパンパン」

 始めはゆっくりでしたが、それが段々に早くなっていき……、
しまいには耐えられないほどに。

 でも父はその紳士にとうとう一度も『やめろ』とは言いません
でした。

 そんな衝撃的なことがあった帰り道。説明を求める私に、父は
何も語りません。次の一言を除いて…

 「実のお父さんからお尻をぶたれることは、恐らくもう二度と
ないだろうから、その痛みをようく覚えておくんだ」

 アイマスクの下、涙が止まりませんでした。

*****************<了>********

        99/8/14

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tutomukurakawa

Author:tutomukurakawa
子供時代の『お仕置き』をめぐる
エッセーや小説、もろもろの雑文
を置いておくために創りました。
他に適当な分野がないので、
「R18」に置いてはいますが、
扇情的な表現は苦手なので、
そのむきで期待される方には
がっかりなブログだと思います。

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