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<A Fanciful Story>

           竜巻岬《7》

                      K.Mikami

【第二章:幼女の躾】(3)
《幼女から童女へ》


 アリスはリサと同じようにお仕置きを受ける覚悟をしていた。
しかし、昨晩は「今日はもう遅いから寝なさい」とハイネが言う
ので、『私は明日なのかあ』と思っていた。

 ところが、朝食がおわってもその気配がない。
 お祈り、食事、絵本の読み聞かせ、お散歩……いつもの日課が
いつものように繰り返されるだけなのだ。
 お昼近くになり、たまらずアリスの方から尋ねてみると……

 「ん、そうね、今回、あなたはいいわ。聞くところによると、
リサが強引にあなたを図書室へ引っ張っていったらしいし………
それに、私たちも部屋の鍵を掛忘れたり、おしゃべりに夢中にな
ってて部屋に戻るのが遅れたりしたから、あながち、あなたたち
だけの責任じゃないのよ」

 「でも、私たちが悪さをしなければハイネだって鞭で三ダース
もぶたれずにすんだんですもの。やっぱり私には罪があると思う
んです。もう覚悟はできてます。どんな罰でも受けます」

 アリスは勇気を振り絞って告白してみた。彼女としても、自ら
『罰を受けたい』などと申し出たのは、人生これが初めての経験
だったのである。

 「そう、そこまで言うのならお話するけど、実はペネロープ様
があなたのお仕置きを免除してくださったの。それにリサの受け
たお仕置きはとても厳しいものなのよ。せっかくペネロープ様が
免除してくださってるんだから、あなたは好意には甘えてた方が
いいわ」

 「でも、それじゃ嫌なんです。ハイネさんにも、リサさんにも
それじゃ悪いですし、何より私が仲間はずれにされたみたいで…」

 「そう、わかったわ。それならペネロープ様に話してみるけど、
あとで後悔しても知らないわよ」

 こうしてハイネはペネロープに相談に行ってみたが、その答え
はハイネにとってはむしろ意外なものだった。

 「そう、あの子そんなこと言ってるの。困ったわね」

 ペネロープはしばし考えてから、こう言ったのである。

 「ま、いいわ。…そんなにお仕置きして欲しいのなら、やって
あげましょう。その代わり、中途半端はだめよ。思いきり厳しく
してちょうだい。この際、そんな殉教者精神が何の美徳にもなら
ないことを教えておくことも大事なことかもしれないわね」

 こうしてアリスに対し幼女としては異例ともいえるお仕置きが
敢行されたのだった。

 「ねえ、もう一度聞くけど、本当にお仕置きしてほしいのね」

 お仕置き部屋にアリスを連れてきたハイネは、あらためて問い
ただす。

 「…………………」

 一方、確認を求められたアリスはこの期に及んで戸惑っていた。
というのも、そこはアリスが赤ちゃん時代、ハイネに折檻されて
いるところをペネロープに助けてもらった、あの思い出の部屋だ
からだ。

 「ペネロープ様がね、『そんな聞き分けのない子は逆にうんと
厳しいお仕置きが必要ね』っておっしゃってるの…………どう?
それでもやる?」

 「…………」

 「あなた、顔が青いわよ。大丈夫?……今さら後悔してない?」

 「…………」
 アリスにためらいの気持ちがないといえば嘘になる。
 しかし……

 「あなたはまだ幼女なんだもの『あれはもののはずみでした』
って、泣いて謝るっても恥ずかしいことではないのよ。幼女って
甘えるのが仕事だから……」

 「甘えるのが仕事…………」
 アリスは思わずハイネの言葉を鸚鵡返しにつぶやく。

 「前にも教えてあげたけど、もう忘れちゃったの?…だったら
それだけでもお仕置きね」
 ハイネは含み笑いで答え、こう続けるのだった。

 「いいこと、幼女の時期というのは、甘えてはお仕置きされ、
甘えてはお仕置きされ、を繰り返す時期なの。そのなかで自分の
居場所というか、心のよりどころを肌で感じて覚えていくの」

 ハイネはアリスを膝の上に抱くと頭を撫で始める。
 最初は抵抗のあったアリスだが今ではすっかり慣れてハイネに
身を任せている。

 「ペネロープ様の考えではね、自殺する人の多くは帰るべき心
の拠り所がないからすぐに自暴自棄になるんだって、そしてそれ
は、しっかりした幼女時代を送っていない事に原因があるんです
って……だから、ここでは、しっかり甘えさせて、しっかりお仕
置きさせて、それが両方しっかりできるようにならないと幼女は
卒業できないのよ」

 「………………」

 「あなた、迷ってるんでしょう。だったら、私がもう一度ペネ
ロープ様に申し上げて……」

 ハイネが助け船を出すと、それにははっきりと首を横に振った
のである。

 「じゃあ、いいのね」

 「はい。私が決めたことですから」
**********
 最後はきっぱりとそう言い切ったのだった。

 「そう、わかったわ。では、これに着替えなさい」

 ハイネはアリスに着替えを手渡す。それは白いニットのシャツ
と黒いブルマース。

 「ここでは汚れてもいいようにそれを着るの。……着替えたら
こっちへ来て」

 アリスが着替えている間、ハイネは処置台で浣腸の準備をする。
ゴムの水枕みたいな容器に石鹸水を入れているのを横目で見なが
ら、それでもなぜかアリスの心は落ち着いていた。

 無理やり何かをやらされるのと自らすすんでやることの違いと
言ってしまえばそれまでだが、お仕置きするハイネの側にしても
これまでのような情熱が感じられないことをアリスは女の直感で
感じ取っていたのかもしれない。

 「さあ、ブルマーを脱いだら両足を高くあげて………そうよ、
赤ちゃんがおむつを替える時のあのポーズよ」

 「え?お浣腸って横向きに寝てやるものじゃないんですか」

 「おや、あなたよく知ってるわね。確かにお医者様ではそうよ。
でも、これはお仕置きのためのお浣腸だから、女の子がもっとも
恥ずかしがるポーズでわざと取らせるの」

 やがて肛門にガラスの管が突き立てられるとクリップが外れて
大量の溶液が波打つように体の中へと入ってくる。
 それはこれまでのピストン式の浣腸器のように途切れることが
ないため、まるで浣腸液に溺れているようで、いったいあとどれ
くらい体の中に入ってくるのだろうという不安もあった。

 「……(あっ、いや)……」

 アリスは、声こそ出さないものの、その想定外の量の多さに、
思わず身体を捻る。このままでは、ひょっとして石鹸液が口から
溢れ出すんじゃないか、そんな妄想さえ頭をよぎったほどなのだ。

 「いやあ、止めて」

 とうとう耐え切れず、思わず叫ぶが、もとよりハイネがそれを
許すはずがない。
 代わりに……

 「大丈夫よ。ゆっくり深呼吸をすればもっと楽に入るわ。ほら、
ほら、お尻の力を抜くのよ。これはそんなに力を入れなくても漏
れたりしないものなのよ」

 アリスはハイネに励まされ続けてようやく一リットルもの溶液
をお腹の中に貯め込んだが、大変なのはこれからだった。

 少しでも体を動かせばお腹の石鹸水も一緒に動く。まるで盥を
お腹の中に入れて歩いているみたいなのだ。

 「あ~あ~」

 グリセリンのような激しい便意こそないが、それでもちょっと
した衝撃で、あたりは水風船に針を刺したようなことになりかね
ない。

 「はあ~はあ~」

 二枚の板を渡した簡単なトイレに膝をついてまたがるだけでも、
ハイネの肩を借りての大仕事だったのである。

 「さあ、いいこと。ここで三十分、我慢するのよ」

 「(えっ!三十分ですって……)」

 ハイネはアリスの両手を皮手錠で拘束しながら、『そんなこと、
あなたなら簡単よ』と言わんばかりだが、万歳をさせられている
アリスにしてみたら、『それは絶対に無理』と確信がもてるほど
の長い時間だったのである。

 「どうかした?……ひょっとして、自分でお仕置きを申し出た
こと後悔してない?」

 ハイネは意地悪く中腰になってアリスのブルマーを覗き込む。
 しかし……
 「………はあ……はあ…………あっ…………」

 大きく肩で息をつき、時折襲う大波に体をよじりあるいは伸び
上がるようにして、やっとの思いで恥ずかしい洪水を耐えている
アリスには、ハイネのそんな意地悪な質問にも、そもそも答える
余裕がなくなっていたのである。

 「あ~~もう、だめ」

 アリスは時々絶望を口にする。最初は七分後、その次は五分後、
さらには二、三分おきに「もう だめ」だった。
 しかし……

 「だめよ、まだまだ頑張りなさい。もしこんなに早く漏らした
ら、あんたの一番恥ずかしい処に焼きごてだからね」

 どんなに他のことに気を回す余裕がなくてもこの『焼きごて』
という言葉は強烈だった。

 「はあ、はあ、いやあ~~~……はあ、はあ、だめ~~~…」

 アリスの息が荒い。それでもハイネが「焼きごて」「焼きごて」
と威嚇し続けるたびに、アリスは緊張感を取り戻し、何とか持ち
こたえている。若さや羞恥心、幼い時の躾の厳しさなどもそれを
支えていたのかもしれない。それでも……

 「ああっ、!!!!」
 二十分近くになると、それまでにはなかった大きな声が出た。

 「ああっ!!!!!」
 とても、少女とは思えない低くて凄みのある声が部屋中に反響
する。
 さらに大きな波、重い波がアリスの小さく堅い堰を突き崩そう
としていたのだ。

 「ああっ!!、ああっ!!」という大声の間隔が次第に狭まり
……やがて………

 「だめ、だめ、だめ、いや、いや、いや、いや、いや、いや、」

 最後はそれだけ言ってぐったりとなった。

 大半のものが一気に吹き出した後で、ハイネはアリスの汚れた
ブルマーを脱がせる。

 「もう全部出しちゃいなさい。どうせここはトイレなんだから」

 ハイネは、汚物となったブルマーをアリスから貰い受けると、
そう吐き捨てて、さっとカーテンを引く。
 わずかな時間だが、アリスに密室を提供してくれるのはハイネ
のやさしさからくる心遣いだった。

 「どう、もうすんだ?」

 十分ほどアリスの好きにさせたハイネが再びカーテンを開ける。

 「さあ、いつまでもめそめそしてられないの。お仕置きはまだ
たくさん残ってるんだからね」

 彼女は備え付けのホースの蛇口をひねるとまだ拘束されたまま
のアリスの下半身を洗い始める。

 「さあ、もう終わったの。今のうちに全部出しちゃいなさい。
そんなもの身体に残しておいても何の得にもならないわよ」

 ハイネは水道ホースの先を絞って、水を勢いよくアリスのお尻
に噴射すると、自らの手で下腹をさすり、肛門をこじあけ、性器
までもを丹念に洗い清めたのだった。

 「ごめんなさいね。ハイネ。こんなことまでさせちゃって」

 「何をおっしゃいます王女様。これは私のお仕事よ。それに、
あなたへのお世話も、もうすぐ終わりみたいだし……これくらい
何でもありませんことよ」

 「もうすぐ終わりって」

 アリスが尋ねると

 「ペネロープ様があなたの童女への昇進を決断なさったみたい
なの」

 「でも、あなたは私とずっと一緒なんでしょう」

 「そうはいかないわ。今の私はあなたの子守りが仕事だけど、
あなたがここの生活に慣れて、自分のことを一通りできるように
なればお払い箱なの」

 「えっ、私から離れちゃうの?」

 「だって童女になるってそういうことだもの。……これからは
ペネロープ様が本当のお母さまよ」

 「え?もう、会えないの」

 「そんなこともないわ。あなたの先生としてなら、これからも
会う機会はあるはずよ。……でも、それはあくまで先生と生徒で
あって、こんなことまではしてあげられないわね」

 ハイネはアリスの股間に入れたタオルで彼女の大事な処をひと
なでする。

 「いや、やめてハイネ」

 アリスは困惑したが、久しぶりの笑顔も戻ったようだった。

****************************

 「次は懲罰台。……前に一度上がってるから要領は分かってる
わよね。今度も手足は固定してあげるけど猿轡はなしよ。どんな
に痛くても声を出さないようにしてね。でないと、鞭の数がまた
増えることになるから……わかった?」

 「わかりました。でも、…………はい、先生」

 アリスが小学生のようにちょっとおどけて手をあげる。
 すると、ハイネもそれに答えて。

 「なんですか。アリス・ペネロープさん」

 「このブルマー、また履くんですか?」

 「どうして?それはまだ使ってないから気持ち悪くないわよ」

 「いえ、そうじゃなくて。どうせ懲罰台の上ではまた脱ぐんで
しょう」

 「そうですよ。だから穿くの。ここは空調が効いてるから裸で
だってできるけど、それじゃ脱がされたって気持ちがなくなって、
恥ずかしさが半減してしまうもの。お仕置きは苦痛半分、恥ずか
しさ半分なのよ」

 「(なるほど、そういうことか……)」

 アリスは恥ずかしさの罰を受けるため、また新たなブルマーを
穿くと懲罰台に……

 「はい、いくわよ……………………………………………………」

 ハイネは柳の小枝を束ねた一本鞭を握って、そう宣言したが、
それっきり、なかなか最初の一撃をアリスのお尻にヒットさせな
かった。

 手にした鞭をわざとアリスの目の前で空なりさせたり、可愛い
お尻にこすりつけたりして、『痛いよ』『痛いよ』という恐怖感を
アリスに十分味合せてから、やおら強い一撃を放ったのである。

 「ピシッ」

 「(ひぃ~~~~)」
 籐鞭より一回り太い柳の枝鞭が、アリスのお尻にまとわりつく
ように赤い筋をつける。

 「はい、ふた~つ」

 「ビシッ」
 「(ひぃ~~~~)」

 柳の枝鞭の衝撃は、籐鞭に比べればいくらか小さいが、まるで
剃刀で切られたような鋭い痛みが残るのだ。

 「はい、み~っつ」

 「ピシッ」
 「(いゃゃぁぁぁ)」

 「はい、よ~っつ」

 「ピシッ」
 「(ぅぅぅぅぅぅ)」

 「はい、いつ~つ」

 「ピシッ」
「(ひぃぃ~~~)」
 ハイネは淡々と鞭を振るい、アリスの方も声を出さないという
約束事を必死に守った。

 「はい、む~っつ」

 「ピシッ」
 「(もうやめて~)」

 「はい、なな~つ」

 「ピシッ」
 「…キャ…」

 必死の我慢も七つ八つと重なる頃には限界にきていた。子犬が
いじめっ子に悪戯された時のような掠れた甲高い声が漏れる。

 「それ、や~っつ」

 「ピシッ」
 「…あぁ…」
 アリスはほとんど生理的に拘束された両手を振り解こうとする
が……

 「それ、ここのつ」

 「ピシッ」
 「痛い」

 この時初めて意味のある声が出ると、あとはもう感情を押さえ
きれなかった。

 「さあ、もう少しよ。それ、じゅっか~い」

 「ピシッ」
 「もう、やめて、ごめんなさい、ごめんなさい、もうしません」

 それはアリスの理性が言わせた言葉ではない。どうにも耐えら
れなくなった彼女の体が無意識に声を出させるのだ。

 「やめなさい。あんまり言うと本当に焼きごてが待ってるわよ」

 「それ、じゅういち」

 「ピシッ」
 「いやあ、だめえ~~死んじゃう、ごめんなさい、だめえ~~」

 それから先は、鞭がお尻に当たっているかどうかに関係なく、
「あわ、あわ、あわわ、わあわ」と声にならない声をあげ、まる
で幼児が泣き叫ぶようにわめきだした。

 「よしよし、よくがんばったわ。これが最後よ。じゅ~に~」

 「ピシッ」
 「いやあ~もういやあ~死んじゃう、ごめんなさい、だめ~」

 恐らくアリス自身も今自分が何を言っているのか、どんな姿で
ハイネに見られているのか、そんなことを思う余裕はなかったに
違いない。
 その清楚な顔は涙と汗とよだれでくちゃくちゃ、おかっぱ頭の
髪は脂汗にまみれてざんばらになっていた。

 「はい、はい、おしまい。おしまい。……もう終わりましたよ。
そんなに痛かったの?」

 ハイネは鞭のお仕置きが終わると幼い子をあやすような優しい
口調に戻り、顔も笑っている。

 「仕方ないわね。あなた慣れてないのね。……きっと、あなた
のご両親はあなたを大事にし過ぎて鞭を与えたことがないのね。
一ダースぐらいの鞭くらいで取り乱すなんて、あなたの歳なら、
恥ずかしいことなのよ。……こんなの親が厳しければ小学生でも
耐えるわよ」

 アリスは、ハイネの言葉を、自分が泣きだしたからだとばかり
思っていたが……

 「あ!」

 懲罰台を下り、あらためてブルマーを穿こうとして、アリスは
初めてそこが濡れている事に気付いたのである。

 ハイネがまるで母親のような口調で叱る。
 「だから、さっき全部出しておきなさいって言ったでしょう。
仕方ないわね。さあ、さっさとこれに着替えて……」

 そんな有様だから、ペネロープが部屋へ入ってきたのも気付く
はずがなかったのである。

 「!?………………!!」

 アリスはどこかで嗅いだことのあるなつかしい匂いを感じとり、
辺りを見回して、そこで初めてペネロープがここにいるのを発見
するのである。

 「アリス!こっちへ来なさい!」

 その声は普段は温厚なペネロープがたまにみせる凄味の効いた
声だった。

 「はい、おかあさま」
 アリスとしては覚悟を決めるしかない。

 「そこに膝をついて両手を胸の前で組むのです」

 ペネロープはアリスに恭順を示すポーズを取らせると、静かに
語り始めた。

 「あなたのお仕置きを見ていました。お浣腸は途中でこぼすし、
鞭には声をたてるし、とても私の娘にふさわしいとは言えませんね。
本来なら幼女で修業した方がよいのかもしれませんが、今はリサを
救ってやらなければならないで、あなたを童女に引き上げることに
します」

 「お礼を言って」
 ハイネが耳元でささやくのでアリスは慌てて……

 「はい、ありがとうございます。お母さま」

 アリスはお礼を言ったが、でも、次にはこう切り返す。

 「でも、なぜリサさんと私が関係あるんですか」

 この言葉にあわてたハイネが…
 「アリス、やめなさい」
 と諭す。この城の幼女は目上の人から求められた時以外、自分
の意見を言えなかったのである。

 しかし、ペネロープはそれにはかまわずこう答えた。

 「幼女は養育係を張りつけておかなければならないので人手が
要るのです。あなたもいったんは童女にしますが、まだ荷が重い
と分かれば幼女に戻すかもしれません。それは覚悟しておいてね」

 「はい、お母さま」

 「よろしい、では、今日のぶざまなお仕置きを償いなさい」

 「はい、お母さま」

 アリスはハイネに教えられた通り、『はい、お母さま』を連発
したが、それはこれから自分の身に何が起こるかがわかっていた
からではない。
 たとえ何がどうなっているのか分からなくても、この城の幼女
は、こう言わなければならなかったのである。

 「では、そこに仰向けになって寝るのです」

 ペネロープは処置台に視線を移して指図する。

 「はい、お母さま」

 アリスが処置台で仰向けになる。
 もちろん、ペネロープの言葉に異論など唱えられない。
 後はハイネが手伝ってくれた。

 「気持ちをしっかり持つのよ」

 ハイネはアリスのブルマーを太ももまで引き下げると、腰枕を
使って剥出しになったアリスのお臍の下が寝ているアリスからも
よく見えるように腰の位置を調整し、さらに両手両足を処置台に
固定しようとした。

 ところが……

 「ハイネ、その子を縛る必要はありません。この子はそんな事
をしなくても立派に耐えられます。ほら、ごらんなさい。ここ…」

 ペネロープは、今剥出しになったばかりのアリスの三角デルタ
を指差す。そこにはかなり近寄って見なければならないほどかす
かにだが、灸痕が残っているのだ。

 「あなたがたはお灸のことを『東洋の焼きごて』だなんて大仰
な呼び名で呼んでるけど、お浣腸もお鞭もまともに受けられない
この子だって、かつて何度か経験があるお灸なら声一つたてない
はずよ」

 ペネロープはさも自信ありげにハイネに呟くと古い灸点に三つ
四つ艾を乗せて一気に線香の火を近付けた。

 「…<え、まさか>……」

 アリスの驚きは当然だろう。
 しかし、そのまさかだったのである。

 「……<いや、どうしてペネロープ様がお灸なんて知ってるの
よ!!!>……<何よ、そんなにたくさん全部いっぺんに>……
<無理よ!嫌、やめてよ~私、そんなことされたことないのに>
……<あっ、いやあ~~>…<あっ熱い、痛い>…<ひ~~>…」

 アリスにとってそれは熱いというより、鋭い錐で揉み込まれる
ような強烈な痛みだった。
 ただペネロープの言う通り、彼女はこれには声をたてなかった
のである。

 「今度はうつぶせになって………」

 次はお尻のお山だった。

 「………<ああ、いや熱い、痛い>……<痛い、痛い、>……
<いやあ~~~もういや、やめてえ~~~何でお灸なのよ~~>」

 アリスは心の中で必死に懇願する。
 しかし、鞭の時のように取り乱すことはなかった。

 「さあ、もう一度仰向けに戻りますよ。今度はね、赤ちゃんが
おむつを替える時のポーズよ………」

 「…<ああん、そんな処すえられたことないのに>……<いや、
やめて、お嫁にいけない><ひい~熱い、痛い。いゃあつ~い>」

 結果に自信を持ったペネロープは、まるでハイネに見せつける
かのようにアリスにいろんなポーズを取らせ、さらに十数か所、
なかにはとても他人には言えない処までもお灸をすえたのだった。

 しかも、お灸に関してはペネロープの言った通り、鞭やお浣腸
とは異なり、どんなに責められても、アリスはついに一言も声を
出さなかったのである。

 「どう?私の言ったとおりでしょう。一ダースの鞭でさえお漏
らしするこの子がこんなに沢山お灸をすえても声一つ上げないで
耐えたでしょう。つまり、お仕置は慣れなの。この子は今の親に
甘やかされて育ったから、鞭や浣腸をされたことがないだけよ」

 ペネロープはハイネに薀蓄を述べると、今度はアリスに向って。

 「どう?アリス、久しぶりのお灸の味は?」

 「…………」

 「………昔のお母さんを思い出したかしら?」

 「…………」
 アリスは青ざめた顔でお義理に頷く。
 すると……

 「お灸は、昔、日本に旅行した時に向こうの母親がやっている
のを見て習ったんだけど、これまではあまり試す機会がなかった
の。ここの人たちは、もの凄く残酷なお仕置きだって言うんです
もの。そんなことないわよね?」

 「………………」
 本当は『はい、お母さまと言わなければならない。
 それは分かっていたが、アリスはとうとう言えなかった。

 「あなたの灸痕を見つけて、思い出して、やってみたんだけど、
ことのほかうまくいったわ。これからはあなた限定でこのお仕置
きをやってあげますね」

 「(そんなあ~~~)」
 泣き出しそうなアリス。あまりのことに反論も思いつかない。
 アリスはこの時とんでもないことの実験台にされたのである。


********************<了>*****

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このブログについて

tutomukurakawa

Author:tutomukurakawa
子供時代の『お仕置き』をめぐる
エッセーや小説、もろもろの雑文
を置いておくために創りました。
他に適当な分野がないので、
「R18」に置いてはいますが、
扇情的な表現は苦手なので、
そのむきで期待される方には
がっかりなブログだと思います。

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