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バカボンちゃんのスクールライフ(4)

§4 バス通園
 
バカボンちゃんのスクールライフ(4)<小説/我楽多箱>

 バカボンちゃんは、3歳からバス通園をしていた。当時だって
幼稚園のスクールバスがなかったわけではないが、そのバスは、
隣町までしか来てくれない。

 そこで、仕方なく通学定期を買って幼稚園へ通うことになった。

 もちろん近隣にだって幼稚園はあったが、気位の高いママさん
が、どうしても評判の高い幼稚園へ行かせたいと頑張ったのだ。

 つまり全てはママの我がままからきている。

 おかげで、乗り合いバスで通園するはめに……
 しかもこの母親、自分でそうやって決めておきながら、バス停
迄さえ見送りにこない。
 玄関先でいつも「いってらっしゃい」と言うだけ。
 身勝手このうえない人なのだ。

 それでも今なら大半がマイホームパパだから、父親のマイカー
に揺られて通園って事だろうが、バカボンちゃんのパパさんは、
こちらもママさんに負けず劣らず自分の世界優先の人だからね、
そんな手間のかかることはしないんだ。

 だから、仕方なく。どうしようもないから、バカボンちゃんは
3歳の時からバス通園をしていた。

 ただ、唯一の救いもあった。当人がそのことをそれほど苦痛と
感じていなかったんだ。

 当時は、3歳の子が定期券を持ってバスに乗るなんてとっても
珍しかったからね。
 バカボンちゃんは、通うバスの運転手さんや車掌さんたちから
とっても可愛がられていたんだ。

 とにかく、最初の頃はステップに両手を突いてバスの入り口を
登ってたくらいだからね……
 「ぼく、お母さんはいないの」
 なんて、よく聞かれたもんさ。

 でも、そのうちそれが評判になって、いつの間にか同じ営業所
管内では知らない人がいないくらいの有名人になってた。
まさに、小さなマスコット状態だった。

 これはもう時効だと思うから言ってしまうけど、当時は営業所
の中まで行って、方向指示幕(今は電光板だけど当時は布で手動)
のハンドルを回すのを手伝ったり、運転手さんのお膝に乗っけて
もらって敷地内を一周してもらったり、詰め所でお弁当のおかず
を分けてもらったり、お茶を飲んだりしたんだ。

 運転手さんも、車掌さんも、まるで自分の息子が来たみたいに
優しかったからね。
 バカボンちゃんにとっては大事な大人のお友だちだったんだ。

 だからね、バカボンちゃんは考えた。
 『そうだ、将来、大人になったら、バスの車掌さんになろう』
 (もちろん運転手さんでもよかったんだけど、当時は、あんな
大きなバスを動かす自信がなかったから、第一志望は車掌さん)

 これって幼い頃だけじゃないよ。かなり成長してからも本気で
そう思ってたんだ。

 そこで、小学校の作文にもそう書いたら、ママに怒られた。
 「あなたって子は、どうしてもっと立派な夢が書けないの!」
 だってさ。

 『バスの車掌さんになることは立派なことじゃないのか?……
だいたい、商売なんかやってる人はお客さんのいる前では楽しそ
うにしてるけど、帰ったとたん眉間に皺をよせて苦しそうな顔に
なるし、サラリーマンの人たちは、夕方とっても疲れた顔して帰
って来るだろう。それに比べたら、バスで働く人たちはとっても
楽しそうだもん』
 
 これがバカボンちゃんの主張。

 『大臣になって威張りたい?』『大学の先生になって尊敬され
たい?』『実業家になってお金持ちになりたい?』

 バカボンちゃんにとっては、そんなのどれも、
 『それって、何?』
 だった。

 バカボンちゃんにとって興味のあることは二つだけ。
 『それが楽しいこと』
 『終わったらすぐにお母さんの処へ帰れること』
 これ以外には何の興味もなかったんだ。

  

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tutomukurakawa

Author:tutomukurakawa
子供時代の『お仕置き』をめぐる
エッセーや小説、もろもろの雑文
を置いておくために創りました。
他に適当な分野がないので、
「R18」に置いてはいますが、
扇情的な表現は苦手なので、
そのむきで期待される方には
がっかりなブログだと思います。

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