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バカボンちゃんのスクールライフ(5)

§5 バカボンちゃんのお勉強 

バカボンちゃんのスクールライフ(5)<小説/我楽多箱>

 バカボンちゃんを大人になってからしか知らない人には信じら
れないかもしれませんが、幼い頃のバカボンちゃんというのは、
手に負えないほどセカセカした子だったんです。

 今なら、AD/HD(注意欠陥/多動性障害)の疑いで病院に
行っていたかもしれません。
 実際、ボンちゃんのママは彼の奇行が気になって、幾度となく
大学病院を訪れています。

 でも、何度診察してもらっても異常はみつかりませんでした。

 先生曰く、
 「身体的には何の問題もありません。脳波もこれといって問題
ありませんね。強いてあげるなら、この子の脳波はすでに大人の
波形なんですが、それが何か災いになってるということではない
でしょう」

 つまり、当時の常識では『問題なし』でした。

 では、当時ママが何を問題にしていたかというと、それは彼の
勉強スタイルでした。

 とにかく5秒とじっとしていません。首を回して、肩を回して、
天井を見て、床を見て、壁を見て、腰を浮かしてドスンドスンと
尻餅をついていたかと思うとベッドにダイブ、抱き枕と戯れます。
 それだけじゃありません。突然、独り言を言い出したり、笑い
出したり、そんなことがしょっちゅうなんです。

 こんな姿を他人が見たら……そりゃあ……
 「こいつ、気がふれたか!?」
 と思うのはもっともなんです。
 とても勉強している姿にはみえませんから。

 ですから……
 『この子、気が変になったんじゃないかしら』
 バカボンちゃんのママは憔悴し、祈祷師まで呼んだことがあり
ました。

 でもね……
 バカボンちゃんに言わせると、
 『もともと赤ちゃん時代はこんな感じだったのにママは覚えて
ないの?ママがある時から、「さあ、お勉強しましょうね」って
膝の上に乗せるようになったから仕方なくおとなしくしてたけど。
それが元に戻っただけのことさ』
 となるのでした。

 もちろん、バカボンちゃんだって、これをやめようとした事は
何度もあったんですよ。

 特に東京で出会った同世代の女の子が電車の中でまるでお地蔵
さんのように微動だにせず本を読んでるのを見た時は感激。
 自分もやってみようと思ったんですけどね……

 5分と、もちませんでした。

 最初はその女の子と同じように、椅子に座って背筋を伸ばして
本を読んでいたのですが、こんな慣れないことしてると段々眠く
なってしまいます。

 いつの間にか、いつものように電車の床に胡坐をかいて座って
読んでいました。いや、それでも足りなくて、最後は床に仰向け
に寝そべって読んでました。
 (これって、ボンちゃんのいつもの読書スタイルなんです)

 都会の電車は混んでるからこんなことできないでしょうけど、
バカボンちゃんの暮らした田舎は電車もすいているので、こんな
ことが平気でできちゃうんです。
 (もちろん、先生に密告する人がいたら叱られますけど)

 そんなわけで、ママや先生には内緒でやってるんですが……
 当時、電車の床は木製で、そこに防腐剤としてワックスが塗っ
てあったものだから、寝っ転がると白いシャツについちゃって…

 「何なの!この油!」僅かに着いた油の匂いを嗅ぐママ。
 「電車の中で転んじゃって……」
 「嘘、おっしゃい!また、電車の中で寝転んで本を読んでたん
でしょう」
 バカボンちゃんのママはとっても勘が良くて怖かったです。

 (ははは)お話が飛んでしまいましたけど、とにかくバカボン
ちゃんのお勉強は一人マンザイ。とても奇妙奇天烈でシュールな
現代舞踏みたいなものがずっと続きますから終わると体力的にも
かなり疲れます。

 幸い覗かれたことがありませんでしたが、もし間違ってそんな
光景を目にしたら、お友だちは、ドン引き。おつき合いをやめて
しまうでしょうね。

 ただ、副産物として、作曲や詩や小説やイラストなんかも続々
と仕上がりました。
 バカボンちゃんのお勉強はそりゃあ非効率ですけど、何の脈絡
もない色んなものが、次から次に同時進行でできあがっちゃう、
不思議な作業場でもあったんです。

 ちなみに、バカボンちゃんはテストの時も、覚えた瞬間の五感
を蘇らせるために、小刻みに身体のあちこちを動かします。
 テスト中、よく指を折る仕草をしますからね。
 「おまえ、幼稚園児じゃないんだから計算くらい頭でしろよ」
 ってよく言われてました。

 『ホント、石のお地蔵さんみたいにしてお勉強のできる人は、
羨ましいなあ』
 って……バカボンちゃんは、よく私に愚痴ってましたっけ。
   

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tutomukurakawa

Author:tutomukurakawa
子供時代の『お仕置き』をめぐる
エッセーや小説、もろもろの雑文
を置いておくために創りました。
他に適当な分野がないので、
「R18」に置いてはいますが、
扇情的な表現は苦手なので、
そのむきで期待される方には
がっかりなブログだと思います。

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