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第8章 愛の谷間で(2)

第8章 愛の谷間で

§2 フレデリックのお仕置き


 とある夜のこと、ブラウン先生の寝室では男の子のお仕置きが
行われていた。

 罪人は坊ちゃん刈りでソバカス顔のフレデリック。どうやら、
おやつとして食料倉庫にストックしてあったベーグルとマフィン
を摘み食いしたというのが罪状らしい。
 カレンが部屋に入ってきた時には、ベスに背中から羽交い絞め
にされ、ブラウン先生からは、石けんの着いたタオルで口の中を
掃除させられているところだった。

 「あっわ、あっっ、うっっっ……げえっっっ」

 苦しい息の下、吐き気を伴ってとても辛そうで見ていられない
が、昔から子どもが嘘をついたりすると親がよくやるお仕置きで、
これだけとってみれば、ブラウン家のオリジナルというわけでは
ない。

 「よろしい、これでお口のなかは何とか綺麗になりましたね」
 こう言うと、ブラウン先生はそれまでの難しい顔をあらため、
入ってきたカレンを笑顔で迎える。

 「あっ、カレン、待ってましたよ。この腕白小僧のお仕置きを
手伝ってください」

 カレンは先生の言葉に小さな衝撃をおぼえた。
 たしかに、今までだってお姉さんとして妹たちのお仕置きにも
参加していたカレンだが、男の子を扱ったことは一度もなかった
のである。

 「えっ!」

 狼狽して、顔を赤らめるカレンにブラウン先生は……

 「大丈夫、大丈夫、フレデリックはまだ子どもです。それに、
あなただって、将来、男の子を持つ可能性もあるわけだし、慣れ
ておくにこしたことはありませんよ」

 お父様に説得されて、カレンはフレデリックのお仕置きに参加
することになったのだ。

 「さあ、お待たせしましたね。準備ができましたよ。リック、
お腹の中に溜め込んだものを全部出してしまいましょうか」

 先生にこう言われて、フレデリックは及び腰になる。

 「お父様、お……お、浣腸するの?」
 思わず、フレデリックの声が震える。

 「そうですよ。口の中は綺麗になりましたがね、いったん飲み
込んでしまっただものはお尻から出すしかないでしょう」

 「そんなこと言っても……だいいち、出しても……そんなもの、
もう食べられませんし……」

 フレデリックはしどろもどろ。照れ隠しに、ほんのちょっぴり
笑みを浮かべると、ブラウン先生の顔が急に険しくなって……

 「当たり前です!何を考えてるんですか!馬鹿ですね、あなた」
 大声になった。

 「あなたが泥棒したものをそのままあなたのお腹の中に入れて
おくわけにはいかないでしょう。……だから、出すんです」

 「……その分は、あしたのおやつを抜いてもいいですから……」
 フレデリックは父親の剣幕に怯えながらも小声で最後の抵抗を
試みた。
 しかし……

 「あなた、わかっていませんね。あなたが摘み食いするたびに
何度も言ってきたことですよ。……いいですか、ここは山の中の
一軒家なんです。町の中のように食料がなくなったからといって
すぐに買いにはいけない場所にあるんですよ。だから、一週間分
きっちり必要な分を買い込んでストックしてあるんです。それを、
みんなが勝手に食べたらどうなりますか?他の人たちはひもじい
思いをすることになるんですよ」

 「オーバーだなあ。マフィン三つくらいで……まだ、いっぱい
あったのに……まったく…お父様はケチなんだから……」
 フレデリックは下を向き、口を尖らせて、小声でぼやいた。

 それって、お父様に聞かせるつもりがあったのかどうかはわか
らないが、いずれにしても、聞こえてしまったら、ただではすま
なかったのである。

 「フレデリック、顔を上げてこっちを向きなさい。あなたも男
でしょう。言いたい事があるならはっきりいいなさい」

 「……………」

 「いいですか、たった三つのマフィンでも我が家の財産です。
あなたのものではありません。あなたのものなんて、この家には
何一つないんです。食べ物だけじゃありませんよ。あなたが、今、
着ている服、靴、帽子、勉強道具、おもちゃ……みんな私のもの
です。何なら、親子の縁は切りますから、素っ裸で今すぐこの家
を出て行きますか!!!」

 「………………」
 強い調子でお父様から言われると、さすがに、フレデリックも
次の言葉が出てこない。

 ブラウン先生は、大変子煩悩な人なので、里子みんなを愛して
いたし、子供たちがお腹をすかせたり、着るものや学用品、玩具
にいたるまで生活面で不自由することは何もなかった。

 ただそれと同時に、彼は子供たちがその事を『当然のこと』と
誤解してほしくなかった。里子であるという現実は忘れてほしく
なかったのである。

 ブラウン先生は、たとえお仕置きとしても、子供たちを全裸で
家の外へ追放するなんてことはしなかった。それが里子たちの心
を闇に追いやるからだ。

 しかし、お風呂に入る時やベッドで一緒に寝る時は、子供たち
を裸にしてはその身体をしきりに擦っていた。
 スケベ心からではない。血の繋がらない親子は何もしなければ
他人に戻ってしまう。濃厚なスキンシップはお互いの絆を確認し
あう為の大切な儀式なのだ。

 そして、それと矛盾するようだが、子供たちには里子である事
を忘れさせなかった。自分たちが無一物で、親に甘えては暮らせ
ない存在であることを忘れてほしくなかったのだ。
 彼が子供たちはよく裸にしたのも、今の自分の姿を、間接的に
分からせるためのものだったのである。

 フレデリックも、余計なことを一言を言ってしまったために、
あらためて自分が無一物である事を理解しなければならないはめ
になったのだ。


 ブラウン先生によって全裸にされたフレデリックは、お父様に
抱きしめられる。
 そして、その吐息がかかるほどの近い位置で……

 「あなたはこれからも私をお父様として慕ってくれますか?」
 「はい、お父様、私はお父様をお慕いします」

 「これからは私の言いつけに何でも従いますか?」
 「はい、お父様、これからはどんなお言いつけにも従います」

 「もし、言いつけに背いたらどんな罰でも受けますか?」
 「お言いつけに背いたらどんな罰でも受けます」

 フレデリックはカレンもかつて受けたブラウン家のしきたりを
受けさせられるのだ。

 もちろん、このやり取り。最初は子どもの側が必ずしも本心を
語っているとは限らない。むしろ嫌々言っている場合がほとんど。
しかし、こうしてやりとりしているうちに、自分の言った言葉が
しだいに本心になっていく不思議な魔力をもっていたのである。

 最初のご挨拶が終わると、場所を変えて浣腸。
 この浣腸、カレンのときも行われたので毎回誰にでも行われて
いるように思われるかもしれないが、そうではない。
 今回はつまみ食いの罰ということで採用されたようだった。

 それと、今回は石けん水ではなくお薬。スポイド式の使い捨て。
要するに日本で言うところのイチヂク浣腸だった。

 リックはソファから全裸のままお父様に抱っこされて背の低い
テーブルに移される。仰向けに寝て両足を高く上げさせられると、
その足が下がらないようにベスが足首を持って手助けしてくれる。

 リックは、そんな恥ずかしい姿勢で、恥ずかしい処が丸見えの
場所に陣取ったお父様と、また、例のやりとりをしなければなら
ないのだ。

 「あなたはこれからも私をお父様として慕ってくれますか?」
 「はい、お父様。お父様をお慕いします」

 「これからは私の言いつけに何でも従いますか?」
 「はい、お父様、これからはどんなお言いつけにも従います」

 「もし、言いつけに背いたらどんな罰でも受けますか?」
 「お言いつけに背いたらどんな罰でも受けます」

 フレデリックは、もう条件反射のようにしてすらすらと答えた。
やけっぱちになったというべきかもしれない。そしてこの儀式が
すむと……

 「カレン、今回は、あなたがこのお薬をリックのお尻に入れて
あげなさい」

 こう言ってイチヂクを手渡すから、カレンもびっくり。
 まるで爆弾でも渡されたように恐々受け取ったもののどうして
よいか分からず立ちすくんでしまうのだった。

 そんな彼女をベスがサポートする。
 「簡単ですよ。先端のキャップを取って、それをこの子のお尻
の穴に挿すんです。そしたら、あとは膨らんでる処を手で潰せば
それでおしまい。誰にでもできますよ」

 「……あっ……はい……」

 「いつもはベスにやらすんですが、あなたも男の子のお尻の穴
がどこにあるかぐらいは知っておかないと、将来、子どもに浣腸
してあげる時もあるでしょうから、困るだろうと思いましてね」

 例の笑顔を見せるお父様の冗談は、カレンにとって心地のよい
ものではなかったが、その指示には従ったのだった。

 『ここね!』

 女の子と違い複雑な構造をしていない男の子のお尻の穴はすぐ
に見つかったものの、優しい力で突っついたくらいでは、リック
が肝心の門を開けてくれないのである。

 お姫様のカレンが、『そこを強引に…』とは出来ないでいると、
お父様が助けてくれる。

 「リック、それを受け入れないということはお父様たちの愛を
受けいれないということですよ。今までたてた誓いは嘘だったと
いうことです。そういうことですか?」

 お仕置きだから仕方がないが、お父様は冷徹だった。
 それに対してリックは……

 「違います」
 恥ずかしい格好のまま涙ながら訴える。

 もちろん、彼だってそれを受け入れなければならない事は百も
承知しているのだ。ただ、肛門にそれが当たると反射的に身体が
反応して門を閉じてしまう。
 彼としてもどうしようもなかったのである。

 そんな自分の身体を騙し騙しして、リックがようやくカレンの
イチヂクを受け入れると、すぐにイチヂクの膨らみが潰される。

 『やったあ』
 そんな死刑執行みたいなこと、カレンは嫌だった。
 もちろんカレンにしてみれば何の罪もないことなのだが、何だ
かちょっぴり罪悪感が残ったのである。

 自分のしたことがどういう結果を生むかが分かっていないと、
人は容易に残虐な方向へ舵を切る。ベスがカレンのお尻を叩いた
のはそのためでもあったのだ。


 リックの身体の中に入ったのはグリセリン60㏄。石けん水と
違って、量はぐんと少ないが、これでも11歳の子どもには必要
以上に多い量。つまり治療ではなくお仕置きの量だったのである。

 その効果は強烈で、すぐに現れる。

 イチヂクが抜き取られ、ベスによってまだオムツが当てられて
いる最中だというのに、リックの顔はすでに脂汗に光り、その頭
が左右に激しく振られているのがわかる。

 カレンはベスに代わってリックの足首を抑える係りに……
 そこで、リックの不安げな瞳とその可愛い一物がオムツの中に
隠れていくさまを見ていた。

 そして、準備がすべて整うと、リックは這ってお父様のもとへ。

 お薬は石けん水と比べれば効果は絶大で、彼はすでに立つこと
さえできないほど困窮していたのである。

 そして、例の問答が始まる。

 「あなたはこれからも私をお父様として慕ってくれますか?」
 「はい、お父様」
 「『お慕いします』とちゃんと言いなさい。あなたは、もう、
赤ちゃんではないのですよ。ちゃんと最後まで言いなさい」
 「はい、お父様、お慕いします」

 リックはお父様の指示に従い言い直したが、でもそのあとには
『だから、おトイレに行かせてください』って、言いたかったに
違いないとカレンは思った。女の子だったら、だめもとで言って
みるこんなことを男の子は言わないのだと思った。

 「これからは私の言いつけに何でも従いますか?」
 「はい、お父様」
 「『これからはどんなお言いつけにも従います』でしょう」
 「これからはどんなお言いつけにも従います」

 「もし、言いつけに背いたらどんな罰でも受けますか?」
 「お言いつけに背いたらどんな罰でも受けます」

 全身に鳥肌が出て小刻みに震えている。まるで熱病にうなされ
た患者のように声が裏返り、かすれ、必死にお父様の身体に抱き
ついている。自分独りでいると粗相してしまいそうで怖いのだ。

 それはカレンにしてみれば、まるで自分のビデオテープを見せ
られているようだったのである。

 ただ、ここから先は少し違っていた。

 限界を感じたお父様は、リックを身体ごと抱き上げると、自ら
部屋を出て裏庭の茂みの中へ……
 リックはカレンたちとは異なりお父様のお膝の上で用を足した
のだ。

 そして、オムツが脱ぎ捨てられ、リックが部屋に戻ってきた時、
彼はお父様の背中に負ぶさっていたのである。

 お父様はソファに腰を下ろしてリックを大切そうに膝の上へと
抱き上げる。

 「お腹、まだ渋ってるか?」
 こう尋ねられて、リックは静かに頷く。

 たった、それだけのことだが、カレンは直感的に『お父様は、
これは、女の子にはなさらない愛だわ』と思ったのである。

 案の定、お父様はリックに対してお腹を洗う浣腸を自らやって
のける。

 11歳は子供と言っても体がけっこう大きい。しかし、そんな
こともブラウン先生には関係ないようで、彼は赤ちゃん言葉まで
使ってリックのご機嫌をとりながら真水でリックのお腹を洗い、
さっきのことでお尻に飛び散ったうんち汁までも綺麗に拭き上げ
てからカレンの前に立たせたのである。

 まだ、それほど大きくないといっても皮のかぶった立派な物を
目の当たりにしてカレンは驚くが今回はさすがに気絶しなかった。
 ただそれ以上に彼女を驚かせたのは、お父様の次の言葉だった
のである。

 「カレン、今日はこの子のお尻をぶってごらん。ちゃんとした
反省や後悔が胸の中に湧き起こった時にだけ出てくる新たな産声
が、この子の口から必ず出てくるから、それまではしっかり叩く
んだよ」

 お父様の言葉は持って回ったような表現だが、それって庶民の
言葉に翻訳すると『悲鳴をあげて、のた打ち回るまで、叩け!』
という事だ。

 いきなり刑吏の仕事を命じられて戸惑うカレンに、ベスがまた
優しくサポートする。

 「さあ、まずあなたが腰を下ろして、リックを招き入れない。
あなたの方がお姉さんだもの。そんな仕事もしなくちゃいけない
わ。……さあ、リック、いらっしゃい」

 ベスはフレデリックを手招きしたが、もちろん、今日お世話に
なるのはベスのお膝ではない。何だか心もとないカレンのお膝だ。

 「大丈夫よ。男の子だからって怖がることないわ。ここの子供
たちは、とってもよく仕付けてあるから、決して反抗的な態度は
とらないの。……ね、そうよね、リック?」

 ベスはすでにカレンの膝にうつ伏せになっているフレデリック
に尋ねたが、答えは返ってこなかった。
 でも、こうしておとなしく膝の上で過ごしていることが、そも
そもその何よりの答えだったのである。

 「叩き方は教えてあげたでしょう。最初はゆっくり軽くあまり
怯えさせないようにするの。……そうそう、そんなものでいいわ。
………………そうね、男の子だから、もう少し強くてもいいわよ」

 ベスの懇切丁寧な指導で始めたお尻叩きだったが、フレデリッ
クがちょっぴり不満そうに身体をねじって顔をあげる。

 「そんなに頭の上でガチャガチャ言ってたら、集中できないよ。
こっちはこれから大変なんだからね」

 すると、そんなフレデリックの不満を聞きつけて今度はお父様
がやって来る。
 リックは慌ててもとの姿勢に戻ったが……

 「そうですか、集中できませんか。それならお手伝いしなきゃ
いけませんね。リック君、あなたはこれからも私をお父様として
慕い続けてくれますか?」
 「はい、お父様……あっ、お慕いします」
 「よろしいリック、あなたは私の可愛い子供です。これからも、
よい子でいるんですよ」
 「はい、お父様」
 
 「これからは私の言いつけに何でも従いますか?」
 「はい、お父様、これからはどんなお言いつけにも従います」

 「もし、言いつけに背いたらどんな罰でも受けますか?」
 「お言いつけに背いたらどんな罰でも受けます」

 また、例のバージョンがまた始まったわけだが、そうなると、
当然、外野は静かになるわけで、カレンは心置きなくお尻叩きに
集中できるのである。

 「さあ、そろそろ、スナップを効かせましょう。………………
そうそう、その調子よ。もっと強くていいわ。男の子なんだから、
もっと強くて大丈夫よ」

 「ピタッ」
 心地よいほど軽快な音が部屋を流れる。するとそれに反応して
リックが両足をバタつかせるから、カレンが思わず怖くなって、
平手を止めてしまうと……

 「だめよ、やめちゃあ。今がチャンスなの。今、畳み掛けるの」

 「ピタッ」
 「あっ……ああああ、痛い」
 それまで、お父様との問答を冷静に受け答えしていたフレデリ
ックの言葉が止まる。

 「どうしました?痛いですか?……痛いのは当たり前ですよ。
お仕置きですから……集中力が足りませんね。…もう一度新しく
誓いの言葉を言ってみますか」
 お父様は冷静だが、いったんオーバーヒートしたエンジンは、
簡単には冷めない。

 それどころか……
 「さあ、今が勝負時よ。もっとスナップを効かせて、間を詰め
てぶつの…………」

 カレンが少し戸惑っていると……

 「心を鬼にして畳み掛けるの。『この人、怖いな』って思われ
るのも私たちの仕事なのよ。でないと、なめられたら何にもなら
ないわ」

 「はい」

 カレンはベスに背中を押され、思いっきり叩き始める。
 おかげで……

 「もうしません。ごめんなさい。良い子になります。なります。
こめんなさい。もうつまみ食いしませんから……許して、許して」

 フレデリックは両足をバタつかせて上半身を左右に捻って必死
の形相になる。当然、先生との問答なんてやってる暇はなかった
が……

 「リック、痛がってばかりいないで答えなさい。あなたはこれ
からも私をお父様として慕ってくれますか?」
 「慕います。慕いますから、ごめんなさい」
 先生はこんな時でもフレデリックに答えを強要するのだった。

 「これからは私の言いつけに何でも従いますか?」
 「はい、お父様、ごめんなさい。ごめんなさい、もうしません」
 「ごめんなさい、ごめんなさいって私はあなたに謝れとは言っ
てませんよ。『これからはどんなお言いつけにも従いますか?』
って聞いているんです」
 先生はお仕置きの最中はどこまでも意地悪だ。

 「これからはどんなお言いつけにも従います。ごめんなさい。
(げほ、げほ、げげっっっ)」
 フレデリックは痰を喉につまらせてげほげほやった。
 涙と鼻水で顔がくちゃくちゃになっている。
 でも、カレンはベスの指示に従いリックへのお仕置きをやめな
い。

 『可哀想なフレデリック』
 お父様も、カレンも、ベスも、そう思う。
 でも、仕方がなかった。

 「もし、言いつけに背いたらどんな罰でも受けますか?」
 「お言いつけに背いたらどんな罰でも受けます。ごめんなさい」

 最後の質問を答え終えて……
 「いいでしょう、カレン、許しておあげなさい」
 先生の指示で、リックのお尻叩きはやっと終了したのだった。


 このあと、フレデリックはカレンにお風呂で身体を洗ってもら
い、素っ裸でお父様と同じベッドに入って一夜を過ごす。
 そして、ネグリジェ姿ではあったがカレンもまたフレデリック
の脇で添い寝したのである。

*************************

 翌朝、フレデリックは一足早くお父様の部屋を離れた。
 もちろん、昨晩何かあったわけではない。三人が同じベッドで
寝たというだけのこと。
 先生にしてみるとフレデリックはまだ子供、間違いなど起こり
えないと確信していたのである。

 ところが、カレンが何だか物思いにふけっている。
 そんなぼんやりしているカレンを気遣ってブラウン先生が声を
かけた。

 「どうかしたのかね。男の子と一緒じゃ心配で眠れなかったの
かな?」

 「そんなことはありませんけど……」

 「フレデリックも、ちゃんと罰を受けたんだから、少しは良い
想いもさせてやらんとな」

 カレンは先生の言葉にきょとんとした。だから正直に自分の心
を伝えてみたのである。

 「良い想いって……フレデリックが?」

 「そうですよ。男と生まれれば、理由のいかんを問わず女の子
の柔肌に触れながら眠る。こんな極楽はありませんよ」

 「だって自分のお尻をこっぴどく叩いた人が脇で寝てるなんて
……残酷じゃありませんか?」

 「そんなの関係ありませんよ。むしろ、自分が完全に押さえ込
まれちゃった相手ですからね。なおのことご機嫌だったはずです」

 「えっ!?」
 カレンはお父様の言っている意味がまったく理解できなかった。

 「あなたは女の子ですからね。男のことはわからないでしょうが、
単純なんですよ、男の気持って…自分より強くて、自分に優しい
人が好きになんです。だから、たいていの男は母親が大好きなん
です。……その人は人生で最初に出会う、自分より強くて自分に
優しい人ですから……」

 「それは女の子だって……」

 「ええ、同じことは女性も言えます。でも女性の場合は他にも
注文がうるさいでしょう。様子が良いとか、馬が合うとか、付き
合って得か損か…とかね。とにかく色んな事が気になるでしょう。
男にはそれがないんです。むしろ、そんなことを持ち出すと男は
不機嫌になります。要するにうぶなんですよ」

 「…………」
 カレンはお父様の話を黙って聞いていたが、『それって偏見だ』
と思った。男だろうと女だろうと、付き合うときにフィーリングや
損得を考えない人なんていないと思うからだ。

 『フレデリックは私を嫌ってる。だからさっさと出て行った』
 カレンはそう思ったのである。

 「まあ、まあ、見ててごらんなさい。あなたにお尻を叩かれ、
あなたに抱いてもらったフレデリックがあなたを嫌うはずがあり
ませんから……」

 「私、リックを抱いてなんかいません。……ここのしきたりに
従って一緒にそばにいただけです」

 カレンが珍しくむきになるのでブラウン先生は苦笑い。
 今さらながら、フレデリックと一緒にベッドを過ごしたことが
恥ずかしくなったのだった。

 『先生はリックと私を結婚させたいとでも思ってるのかしら!』
 そんな勘ぐりまで起こったのである。

 ところが、事実は先生の言う通りで、この後フレデリックは、
カレンをまるで『お姫様』のように慕い続けるのだ。

 力に対する純粋な畏敬の念と異性から受ける情愛への忠誠。

 男の子の心情など預かり知らぬカレンだが、彼女が白馬の騎士
を一人、手に入れたのは確かだった。


******************(2)****

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このブログについて

tutomukurakawa

Author:tutomukurakawa
子供時代の『お仕置き』をめぐる
エッセーや小説、もろもろの雑文
を置いておくために創りました。
他に適当な分野がないので、
「R18」に置いてはいますが、
扇情的な表現は苦手なので、
そのむきで期待される方には
がっかりなブログだと思います。

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