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第9章 新しい仲間(1)

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第9章のタイトルを「新しい仲間」に
変更します。
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<< カレンのミサ曲 >>

************<登場人物>**********

<お話の主人公>
トーマス・ブラウン
……音楽評論家。多くの演奏会を成功させる名プロデューサー。
ラルフ・モーガン<Ralph Morgan >
……先生の助手。腕のよくない調律師でもある。
カレン・アンダーソン<Karen Anderson>
……内戦に巻き込まれて父と離ればなれになった少女。

(先生の<ブラウン>家の人たち)ウォーヴィランという山の中
の田舎町。カレニア山荘

<カレニア山荘の使用人>
ニーナ・スミス<Nina>
……先生の家の庭師。初老の婦人。とても上品。でも本当は校長
先生で、子供たちにはちょっと怖い存在でもある。
ベス・バーガー<Elizabeth Berger>
……先生の家の子守。先生から子供たちへの懲罰権を得ている。
ダニー<Denny>
……下男(?)カレニア山荘の補修や力仕事をしている。
アンナ<Anna>
……カレニア山荘で長年女中をしている。
グラハム<Graham>
……カレンの前のピアニスト

<カレニア山荘の里子たち>
リサ<Lisa >
……(2歳)まだオムツの取れない赤ちゃん。
サリー<Sally>
……(4歳)人懐っこい女の子。
パティー<Patty>
……(6歳)おとなしいよい子、寂しがり屋。
マリア<Maria >
……(8歳)品の良いお嬢さんタイプ
キャシー<Kathy>
……(10歳)他の子のお仕置きを見たがる。
アン<Andrea>(注)アンはアニー、アンナの愛称だが、先生が、
アンドレアをアンと呼ぶからそれが通り名に……
……(14歳)夢多き乙女。夢想癖がやや気になる。
ロベルト<Robert>または ~ロバート~
……(13歳)端整な顔立ちの少年
フレデリック<Friderick>本来、愛称はフリーデルだが、
ここではもっぱらリックで通っている。
……(11歳)やんちゃな悪戯っ子。
リチャード<Richard>たまにチャドと呼ばれることも……
……(12歳)ポエムや絵画が好きな心優しい子。

<先生たち>
ヒギンズ先生<.Higgins>
……子供たちの家庭教師。普段は穏和だが、怒ると恐い。
コールドウェル先生<Caldwell>
……音楽の先生。ピアノの他、フルートなどもこなす。
シーハン先生<Sheehan>
……子供たちの国語とギリシャ語の先生。
アンカー先生<Anker>
……絵の先生。
エッカート先生<Eckert>
……数学の先生
マルセル先生<Marcel>
……家庭科の先生

<ブラウン先生のお友達>
ラックスマン教授<Laxman>
……白髪の紳士。ロシア系。アンハルト家に身を寄せている。
ビーアマン先生<Biermann>
……獣医なので先生とは呼ばれているが、もとはカレニア山荘で
子供達のお仕置き係をしていた。今は町のカフェの店主。
アンハルト伯爵婦人
……戦争で息子を亡くした盲目の公爵婦人
フリードリヒ・フォン=ベール
……ルドルフ・フォン=ベールの弟
ホフマン博士<Hoffmann>
……時々酔っ払うが気のいい紳士

<ライバル>
ハンス=バーテン<Hans=Barten>
……アンのライバル、かなりのイケメン。
サンドラ=アモン<Sandra=Amon>
……12歳の少女ピアニスト。高い技術を持つがブラウン先生の
好みではない。師匠はカール・マクミランという青年。継母

<幻のピアニスト>
セルゲイ=リヒテル(ルドルフ・フォン=ベール)
……カレンにとっては絵の先生だが、実はピアノも習っていた。

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第9章 新しい仲間

§1 カレンの学校生活/新しい仲間

 カレニア山荘は裏庭を挟んで寄宿舎付きの学校を併設していた。
日本でなら小1から小4に該当する初等学校と小5から中3まで
の中等学校。

 ブラウン先生がよく『チビちゃん』と呼ぶのはこの初等学校に
通う子のことだ。もっともカレニア山荘では、この二つの学校に
はっきりした区別はなく、廊下に白い線が引いてあるだけで建物
も共通だった。

 生徒はブラウン先生の里子たちのほか、村の子供たち、へき地
から来て寄宿舎住まいの子、町から通う子などさまざま。ただし、
生徒数は全校合せても五十人足らずとこじんまりしていた。一学
年一クラスで4人から6人といったところだ。

 ブラウン先生が理事長を務める私塾といった感じの所帯だが、
これでも国から認可を受けた正規の私立学校だったのである。

 そんなこともあって、専任の先生は少なく、多くの教師が他の
学校との掛け持ち。ここには週に一二度顔を出すだけだった。

 先日、アンとカレンがお仕置きされた際、ブラウン先生がわざ
わざその席に学校の教師達を招いたのも……
 『ブラウン氏は伯爵に関わったというだけで娘二人を折檻した』
 という事実をアルバイトの先生方を通じて街中に広めてほしか
ったからなのだ。

 そんななか、ここに住んで専属の教師として教鞭をとっている
のは、アンの師匠で音楽担当のコールドウェル先生。国語とギリ
シャ語のシーハン先生。美術のアンカー先生。数学のエッカート
先生。それに家庭科のマルセル先生ぐらいなものだった。

 あっ、そうそう、一人忘れていた。

 いつも庭弄りばかりしているニーナ・スミスが、実はこの学校
の校長先生だったりするのだが、これもいわば便宜上の処置で、
実質的な彼女の仕事は子供たちのお仕置き係り。それがない時は
ひたすら庭弄りの日々だった。

 そんな学校にカレンは通い始めていた。

 同じ歳の子はすでにこの学校を卒業して、全寮制の実科学校に
編入している。そこで大学入学資格を得て大学へ行く算段になっ
ていたのだが、彼女の場合、音楽ばかりか他の教科も怪しかった
ので、ブラウン先生としては、ここ二年ほどかけて教養をつませ、
それから送り出そうという目論を立てていたのである。

 だから、学校に通っていると言っても彼女の場合は特例だから
常にマンツーマンの授業。脇見なんて絶対にできなかった。

 そんなことをしたらどうなるか。

 1960年代のヨーロッパでは、そんな些細なことでさえ鞭の
対象だったのである。

 席から立って先生の前で両手をさし出し、両手のひらに伝わる
籐鞭の衝撃を我慢しなければならない。もちろん、痛いからって
手をひっこめるなんてご法度だった。

 もし、そんなことをしたら、今度はお尻へ……なんてことにも
なりなかねない。

 たとえ、カレンみたいにマンツーマンじゃなくても、昔の学校
というのは、今のように『さあ、みんなで楽しくやりましょう』
って雰囲気じゃなかった。

 授業は常に真剣勝負。お互い隙を見せてはいけないのだ。もし、
先生が隙を見せたら、教室はすぐに手がつけられないように混乱
するし、生徒が隙を見せたら、鞭でぶたれる。

 チビちゃんたちだってそこは同じで年齢は関係ない。もちろん
先生も幼い子にはそれなりの手加減はするものの、一年を通して
一度も鞭をもらわないなんて可哀想な子はどこにもいなかった。
今の人は鞭を刑罰と思っているみたいだが、当時はこれも立派な
愛情表現。親や教師から鞭を受けないというのは愛されていない
のも同様だったのだ。

 学校や教師に鞭はつきもの。台所にお鍋があるのと同じくらい
当たり前だと、親や教師だけでなく子供を持たない一般の人たち
でさえそう思っていた時代、学校で子供の悲鳴が響いても驚く人
は誰もいなかったのである。

 『また、キャシーね。今度は何やらかしたのかしら?』
 カレンは女の子の悲鳴を聞いて廊下に出てみる。

 彼女はこの学校にいる最年長の生徒ということで規律風紀委員
を任されていた。

 こう言うともっともらしく聞こえるが、要するに、やる仕事は
子供たちのお仕置き補助係。悪いことをしている子を見つけては
先生に密告したり、先生のやっているお仕置きをサポートしたり
する係のことだ。早い話、みんなの嫌われ者の係だった。

 悲鳴で飛び出したのも、先生に腕を引っ張られてお仕置き部屋
へ連行される子が恐怖のあまり悲鳴を上げていやいやをすること
はよくあることで、そんなことかと思って廊下へ出てみたのだ。
 もし想像した通りなら、役目上、先生と一緒にキャシーをお仕
置き部屋へと連れて行かなければならなかった。

 ところが……
 声の主だと思ったキャシーが平然とこちらへ歩いてくるのだ。

 面食らったカレンはキャシーに尋ねた。
 「ねえ、誰の声?」

 すると、キャシーは…
 「知らないわ。知らない子よ。何だかお母さんに抵抗してるわ」

 事情の分からないカレンはその悲鳴の場所へ行ってみることに
……ところが……
 『どういうことよ。どうしてあなたがここにいるのよ』

 カレンが見たのは、アンが3位になった演奏会から一緒に帰っ
てきたサンドラだった。
 サンドラは継母から両手を引っ張られてどこかへ連れて行かれ
そうになっていたが、それに必死に抵抗していたのである。

 「いいでしょう、私がどこで暮らしたって……どうせあんたは
私がどっかにいなくればそれでいいんだから、ちょうどいいじゃ
ない」

 「馬鹿言わないでちょうだい。お父様に相談もなく、こんな処
にあなたを置いて帰れますか、いい恥さらしだわ」

 カレンはそんな親子の会話を聞いたが、揉め事のさらに先で、
ニーナ・スミスがカレンに向って首を振るので、この時はその場
を離れたのである。

 『どういうことよ。彼女、私たちの学校に来るつもりなの?』

 カレンは大人の話に立ち入れないのは承知していたが、知合い
のことでもあり、にわかにとっても心配になったのだった。

 そこで、その夜、お父様にそのことを尋ねてみると……

 「その件ですか……私も困ってるんですよ。サンドラから数回
私宛に手紙が来ましてね。こちらの様子を見てみたいというもん
ですから、軽い気持で遊びに来なさいと言ってしまったんです」

 「それで、ここに来てたんですか」

 「お母さまを連れてね。おまけに、あちこち見て回ったあげく
いきなりお母さまに向って、『入学手続きをしろ』ですからね。
ニーナが驚いてましたよ」

 「それで、もめてたんですね」

 「あちらのお宅は良家。家(うち)のような孤児院みたいな学校
への入学を向こうのお母さまが賛成するはずもありませんから」

 「うちは孤児院なんですか?」

 「あれ、あなた、今まで知らなかったんですか?これはまた、
随分と幸せな人だ」
 ブラウン先生は笑った。というより吹いたといった感じで笑顔
を作ったのである。

 「この家に住む子供たち。みんな身寄りのない子ばかりですよ。
あなたにしたところでそうでしょう。寄宿舎にいる子供達も親元
に事情があって預かってる子が大半なんです。そりゃあ、村人の
子供達や町からも何人かやってきますが、半数以上は寄る辺なき
身の上の子供達なんです」

 「それで……」
 カレンは、これまで周囲の子供たちがみな幸せそうにしている
から、肝心なことを忘れていたのである。

 「おまけに彼女、ここを母親に音楽学校だって説明したらしい
んですが、ここは別に音楽学校ではありません。たしかに、私が
こんな仕事をしているので、子供たちに楽器は習わせていますが、
別にプロにするつもりはありません。アンの場合はたまたま才能
に恵まれていたので、特別なんです」

 「それって……わたしも……」
 カレンが恐る恐る尋ねてみると……

 「もちろん、あなただってプロを目指す必要はありませんよ。
今、やっているピアノの教本だって、あなたの花嫁資金の一部に
なればと思ってやってるだけなんですから。女の子は何と言って
も花嫁さんが目標でしょう。男の子は好きな仕事に着くのが一番
幸せな道です」

 ブラウン先生はここまで言ってカレンの顔に気づいた。

 「あれ、浮かない顔になりましたね。いいんですよ、私がこう
言ったからって……音楽の仕事がしたければ、それはそれで援助
しますよ」

 ブラウン先生はこう言ってから、カレンの瞳を刺すように見つ
め、こう続けるのだった。

 「ただし、『自分がピアノで有名になれば、実の母親が会いに
きてくれるんじゃないか』なんて考えで始めるのならやめなさい。
……サンドラにはこう言ってあげたんです」

 「…………」
 カレンは自分の心を先生に射抜かれた気がしてハッとなった。

 「音楽のプロというのは、そんなに甘い世界じゃありません。
才能があって、努力した人でも必ずしも成功するとは限らない。
執念も運も必要な世界なんです。まだ見ぬお母様を探すだけなら、
別の事業で成功して、たくさんの探偵を雇う方がまだ近道ですよ。
ってね」

 「…………」
 ブラウン先生の忠告はサンドラだけでなく自分にも向けられた
メッセージだと、カレンははっきり理解したのだった。

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 そんなことがあったから、サンドラの件は当然白紙になったと
カレンは思っていた。

 ところが二週間ほどした夜のこと。屋根裏部屋で勉強していた
カレンはいきなりベスから呼び出しを受けた。

 「お父様からお呼び出しよ」

 「えっ!?……」
 カレンが驚くと……

 「あなた、何か悪いことしたんじゃないの?……私も呼ばれて
るもの……」

 ベスに言われて、カレンの胸は高まる。そこで、道々考えたが、
お父様から叱られる心当たりもない。
 でも、やっぱり不安だった。

 書斎の前まで来ると、いつもは開いてる扉が閉じられている。
 その扉を前にしてカレンは心臓が飛び出る思いだったのである。

 今の人は家長の強い家に育っていないので、その感覚がわから
ないだろうが、当時は、たとえ16の娘でも、父親がお仕置きと
決めれば、理由のいかんに関わらずそれに逆らうことはできない
というのが家のルール。

 そんなわけで、カレンがびくつきながら書斎へ入っていくと…。

 「ああ、お二人、待ってましたよ」
 ブラウン先生のいつに変わらぬ声。

 あたりを見回すと、サンドラがいる。もちろん、これだけでも
驚きだが、そこにはもう一人、人品卑しからぬ感じの中年紳士が
席を占めていたのである。

 「ベス、カレン、紹介します。こちらはサンドラのお父さん、
アルフレッド=アモンさんです」

 ブラウン先生の言葉を受けて、紳士はソファから立ち上がり、
ベスと…そしてカレンと握手を交わす。

 「アルフレッド=アモンといいます」
 「ベス・バーガーです」
 「カレン、アンダーソンです」

 ごく自然な挨拶だけだと思いきや、ロマンスグレーのこの紳士
は、この時二人がまだ知らない事を付け加えたのである。

 「お二人とも思う存分やっていただいてかまいませんよ。……
手加減の必要はありませんからね」

 この言葉がカレンには謎として残ったのである。

 「実は、こちらのお嬢さんが、ここにいるお父様の意向に反して、
カレニア山荘に移り住んで、学校にも行きたいと言ってきかない
んですよ。そこで、見学だけじゃなく、ここのしきたりについて
も学んでいただこうと思いましてね。それでお二人をお呼びした
わけなんです」

 ブラウン先生はこう言ってベスとカレンに事の次第を説明した。

 『しきたり…って何よ。それってお仕置きのことじゃないの。
私たちにサンドラをお仕置きしろっていうの?』

 カレンは思った。そして、その結論は正しかったのである。

 気がつくとベスはカレン以上に飲み込みが早いようで、すでに、
何時もお尻叩きの時に使っているピアノ椅子に腰を下ろしている。

 「先生、その子の罪状は何なんです。私だって、何の罪もない
子を叩くってわけにはいきませんから……」

 「おう、やってくれますか」
 先生はしてやったりといった笑顔。

 「罪状はもちろんありますよ。ご尊父に対する命令違反です。
子供にとってお父様に背くことは重罪ですからね。お尻叩き……
50回くらいは当然でしょうか。……でも、今回は30回で止め
てください。残り20回は、カレンにやってもらいますから」

 ブラウン先生はベスに事情を説明すると例によってにこやかに
笑う。
 さらにはサンドラを自分の前に立たせると、その両肩を鷲づか
みにして……

 「いいですか、痛かったらすぐにお手々でお尻に蓋をしなさい。
それで、すぐにお父様の処へ帰れますからね」
 こう注意したのである。

 しかしサンドラは強い視線でブラウン先生の微笑みを跳ね返す。
 彼女はそうなることを望んでいなかったからだ。

 サンドラは先生の前で一つ頷くと、自らベスの膝に横たわる。

 『覚悟はできてる』
 そんな感じだった。

 一方、ベスは最後に、実父であるアモン氏に軽く会釈する。
 すると、彼もまたそれを見て小さく頷き、笑顔を返した。

 こうして、サンドラにとってはカレニア山荘で受ける初めての
お仕置きが始まったのである。

 「さあ、いくよ」

 ベスはうつ伏せになった少女に一声かけ、スカートを捲り上げ
ようとした。ところが……

 「ベス、今日は向きが違いますよ」
 ブラウン先生が注意する。
 「私ではなく、この子のお父様の方を向けなさい」

 「あっ、そうでしたね」
 ベスはさっそく軌道修正。アモン氏にとって娘のお尻が正面に
くるよう身体の向きを変えると……

 「(あっ)……」

 今度は何も言わず、サンドラがその事に焦って身体を硬くする
のを楽しむかのようにスカートを一気に捲り白い綿のショーツを
ポンポンと小気味よく叩き始めた。

 サンドラは、もうそれだけで十分に、
 「(恥ずかしい)……」
 と思ったが、もちろん、これはほんの序の口。

 10回くらい叩いたところで……
 「(いや!!、やめてょ!!)」
 思わず声が出そうになる。
 身体をよじって確認したくなったが、それもベスに阻まれて…

 「(あっ、いやあ……)」

 苦しそうな光景を見て、ブラウン先生が……
 「どうしました。恥ずかしいですか?ここではごく普通のこと
なんですよ。あなたのお家ではお仕置きのとき、必ずショーツが
お尻の上にあったんですか?それは残念でしたね。いいんですよ。
無理なんかしなくても……『ごめんなさい』をすれば、今すぐ、
大好きなお父様とお家へ帰れるんですからそれがなによりです。
そうなさいな」

 しかし、こう言われて、サンドラはまた身体を元に戻す。

 結局は、ショーツを剥ぎ取られても我慢するしかなかったので
ある。

 「さあ、少しだけお化粧しましょうかね。……あなたには赤い
ほお紅なんかがお似合いよ」
 ベスにこう言われて、ふたたび、むき出しのお尻を叩かれ始め
たサンドラだったが、その痛いのなんのって……

 「(ひいっ)」
 「(いやぁ)」
 「(だめえ~)」
 そりまでとは違い、一発、一発が、いずれも脳天に響くのだ。

 「(もう、いやあ~~~)」
 「(ごめんなさい)」
 「(いやだあ~~許してょ~~)」
 それは単にショーツを取り払われたからだけじゃない。ベスが
それ以降は手首のスナップを効かせ始めたからだった。

 「(ああああ、死う~~)」
 「(お尻、……お尻がない)」
 感覚が麻痺したサンドラは、一瞬自分のお尻の所在さえ分から
なくなった。

 それでも、彼女はブラウン先生との約束を守って声を立てない。
ただ、その代償として……

 「あらあら」
 ベスの顔が呆れ顔になる。

 お尻への痛みを少しで逃がそうと、無意識に大きく足を開いて
バタつかせるもんだから大事な処が丸見えになっているのだ。

 「(おやおや、まだまだ子供ね)」
 ベスは心の中でつぶやきながら……
 「さあ、それじゃあ、仕上げに掛かりましょうか」
 ベスはそう言ってスカートのポケットから手持ちのハンカチを
取り出そうとした。
 ところが……

 「あっ、ベス、ちょっと、待ってください」
 ブラウン先生が慌ててベスを止める。

 そこでカレンは、思わず……
 『よかった、やめるのね』
 と思ったのだが……

 しかし、現実は……

 「今日はお客様ですからね。これを使ってください」
 先生は、自らの汚れていないまっさらのハンカチを取り出して
ベスに渡しただけだった。

 ベスは先生の真似をした笑顔でそれを受け取ると、サンドラの
鼻をつまんで口の中へねじ入れる。

 「うんんんんんん」
 これで、声を出そうにも出なくなったわけだが……

 「これで、声はでませんけど、逃げ出したくなったらいつでも
お膝を飛びのきなさい。……それで、すぐに終了です」

 先生は最後まで意地悪な助言をして元の席へと戻っていくが、
サンドラは自らの姿勢を崩さない。
 意地なのか、信念なのかはわからない。ひょっとしたら、引っ
込みがつかなくなっているだけかもしれない。しかし、ガッツの
ある子だということだけはブラウン先生も認めないわけにはいか
なかった。

 そして、最後の仕上げ……

 「ピシャ」
 甲高い音が高い天井まで響く。

 「うっっっっっ」
 猿轡を噛まされているので声は出ないが、身体は正直だから、
最初の衝撃では今までの二倍以上も可愛いお尻がベスの膝の上で
ジャンプする。

 もちろん、サンドラだって『逃げようか』と思わないわけでは
ない。
 しかし、今さっき彼女が動いたおかげで、逃げようにも大女の
丸太のような太い腕がニシキヘビのように絡んで、少女の身体を
膝の上から逃がしてくれないのである。

 「(いやあ、死ぬ、死ぬ、)」
 サンドラは心の中で叫ぶ。
 そうしているうち、次の一撃がやってきた。

 「ピシャ」
 また、甲高い音が天井まで響く。

 「うっっっっっ」
 今度は最初より身体の動きは小さくなったが、その分、意識が
ぼやける。
 気が遠くなりそうだった。

 『このまま、気が遠くなってしまえばいいのに』

 サンドラは期待したが、すぐにその期待も裏切られる。
 気付け薬代わりに次の一撃がまたすぐにやってくるのだ。

 「ピシャ」
 「うっっっっ」
 声は出さなくても涙と鼻水はすでに止まらなくなっていた。
 全身に電気が走るようなその痛みは、天井へ響くその音と一緒
に自分も昇天しそうに思えたのである。

 「さあ、私の分は終わりましたよ」

 こうして、きっちり30回。サンドラは地獄の責め苦を耐え抜
き、その身体は父親の胸の中に下げ渡される。

 当然、父親は……
 「もう、いいだろう。帰ろう」
 と、言ったのだが……彼女はガンとして首を縦にはしなかった。

 他の子なら泣き喚いていてもおかしくないこの状況で、彼女は
抱きしめられた父親の胸の中からその瞳でファイティングポーズ
を取るのである。

 それは、ブラウン先生には頼もしく見え、カレンには恐ろしく
見える瞳だった。

 「いいでしょう。やりましょう。……カレン、今度はあなたの
番ですよ」

 ブラウン先生に名指しされて、むしろ怯えているのはカレンの
方だった。
 だから、カレンはサンドラを膝の上に乗せると、いったん父親
によって戻されていたショーツの上から叩こうとする。

 「カレン、あなた、そうでしたか!?ちゃんと教えたとおり、
作法通りにしなさい」

 「ごめんなさい」
 サンドラに膝の上でしっかりとしがみつかれ、ブラウン先生に
も注意されて、びくつくカレン。
 もう、最初から、どちらがお仕置きを受けているのかわからな
かった。

 そんななか、勇気を振り絞ってカレンはサンドラのショーツを
剥ぎ取る。
 手荒くやったつもりはなかったが、傷ついたお尻にショーツの
布が擦れて痛いのかサンドラが身体をねじると、思わずカレンの
方から「ごめんなさい」という声になった。

 ブラウン家のスパンキングでお仕置きを受ける側の最後は過酷
だ。とりわけ、女の子には辛い時間だった。
 単に、蓄積した痛みが大きくなって……ということだけでなく
その瞬間はショーツを剥ぎ取られたうえに、両足を大きく開いて
罰を受けなければならなかったからだ。

 当然、女の子の大事な処は、足をバタつかせなくてもお父様に
丸見えだが、サンドラはそのこともすでに躊躇しなくなっていた。
 頭を床近くまで下げ、お尻だけがカレンの膝に乗っかるように
すると、ベスがその両足を大きく開いても何の抵抗も示さなかっ
たのである。

 「今まで叩いていたベスが家の懲罰係。今度叩く子が学校での
懲罰係です。うちは十分に愛情深く育てているつもりなので鞭の
出し惜しみもしませんし、辱めの罰もあります。しかしながら、
世に出た子供が間違いをしでかしたというケースは一件もありま
せんので、それが自慢です」

 カレンが最初の一撃を迷っている最中、ブラウン先生はアモン
氏に家と学校での生活を説明をし始める。

 しかし、これは当初、語るつもりなどなかった。
 サンドラが家に来ることなどありえないと思っていたからだ。

 それが、今……
 ブラウン先生の心に小さな変化が起こっていたのである。

 「カレン、始めなさい」

 ブラウン先生の声にスイッチを入れられたカレンは、サンドラ
のまだささやかに女性器を垣間見ながらお尻を叩き始める。

 与えられた回数は20回、最初はスナップを利かさずゆっくり
と始める。

 「……パン、……パン、……パン……」

 しかし、これだとあまりに緩すぎたのかサンドラが反応しない。

 『おかしいなあ、一度ぶたれてるから、軽くぶっても相当痛い
と思うんだけど……もう少し、強くやってみようかしら』

 今度もスナップはあまり利かさず、少し強めに叩いてみる。

 「……パン、……パン、……パン……」

 しかし、やはり結果は同じだった。

 『えっ、これでもだめなの。六年生の女の子だったらこれでも
十分泣き叫ぶのに……』

 カレンは仕方なく手首のスナップを利かせてぶってみた。

 「……パン、……パン、……パン……」

 ところが、それでもサンドラは平静を装っていたのである。

 『どうしてよ。どうして……これじゃあまるで私が手加減して
るみたいに見えちゃうわ』

 焦り、追い込まれていったのは、ぶってる側のカレンだった。
 彼女はいつしか我を忘れて目いっぱいの力でサンドラのお尻を
叩き始めていたのである。

 「カレン!、カレン!、やめなさい!」

 ベスに言われ、その手を捻り上げられなかったら、いったい、
いくつ叩いていただろうか。
 彼女は約束の20回を三つ四つ越えてからその手を止めたのだ。

 「ごめんなさい」
 我に返ったカレンはとたんに怖くなった。誰にではない。自分
に怖くなったのだ。

 『わたし、どうしちゃったのかしら』

 自問するカレン。しかし、彼女は気づいていなかった。ベスの
ような大女ならサンドラは膝の上に上半身を乗せることができる。
当然、顔の表情なども気にしやすいが、カレンのように小柄だと、
サンドラは頭を床近くまで下げないとバランスがとれない。表情
が読み取りにくい分、自分の平手が効いていないものとカレンは
誤解したのだった。

 それもこれも、サンドラの気迫がカレンの判断を誤らせたとも
言えるのである。

 事実サンドラもその時は必死だった。普通なら彼女だって悲鳴
をあげるような激痛をカレンの膝の上で必死にこらえていたのだ。
 だから、サンドラにしても、終わった後は半狂乱になって父親
の胸の中へ逃げ帰ったのだった。

 「カレン、こっちへ来なさい」

 ブラウン先生がカレンを呼ぶ。
 我を忘れてしまったカレンに対しても、先生は当然のようにお
仕置きだった。

 「ピシッ」「ピシッ」「ピシッ」「ピシッ」「ピシッ」「ピシッ」

 スカートを捲り上げられ、ショーツを下ろされ、両足を目一杯
開くように命じられて、12歳の少女と同じ姿勢でブラウン先生
の平手を十二回受けたのだった。

 カレンへのお仕置きが終わった後、ブラウン先生はサンドラの
処へやってくる。
 最初は彼女がどんなにここへ来たがっても、父親に談判して、
断るつもりだったが、今は受け入れる気でいる。
 そんなブラウン先生の心の変化を、アモン氏も承知していた。

 父親から質問はこれが何回目だろう。再度、父は娘に尋ねる。
 「ここへお世話になりたいかね?」

 答えはここでも……
 「……はい」
 だった。

 「ここでは、男女も年齢も関係ありません。私の庇護を受けて
いる限り、その子は我が家の子どもであり、我が家のしきたりの
対象です。今日はたまたま痛いお仕置きでしたが、ここでは恥ず
かしいお仕置きだって沢山あります」

 「どんな?」

 サンドラが尋ねるので、ブラウン先生はにこやかに……

 「お尻り丸出しで廊下や居間に立たせたり、浣腸だってします。
あなたのお父様は紳士だからそんなハレンチな罰はなさらないで
しょうけど……」

 ブラウン先生がこう言うとアモン氏も照れながら……

 「大丈夫です。それは私の家でもありますから…………ただ、
問題は……」

 「そう問題は、あなたが、私とは赤ちゃん以来のお付き合いで
ないということです。ここにいる子供たちはカレンを除きみんな
オムツのいる頃からのお付き合いです。ですから、私の前で裸に
なっても傍が思うほど深刻な羞恥心はありません。でも、あなた
の場合はすでに12歳。……今だって、死ぬほど恥ずかしかった
でしょう?」

 「……………」
 サンドラはしばし考えていたが、逆にこんな質問を返してくる。
 「どんな処で裸になるんですか?」

 「居間や書斎や食堂、家の中ならどこでも命じられた場所で裸
になるのが規則です」

 「家の中だけでいいんですね」

 ブラウン先生はサンドラの少し明るくなった声に胸を押される
思いがした。『この子は強い』と思ったのである。
 そこで、もう一押し、こうも言ってみたのである。

 「とにかく、ここへ来たら、私があなたのお父さんです。……
それがどういうことか分かりますか?」

 「…………」
 サンドラの口から答えが出てこないでいると……

 「あなたは私に対していつも丸裸で付き合わなければならない
ということです」

 「……!……」
 ショッキングな言葉にサンドラは思わず顔色を変えてのけぞる。

 「私は、自分の愛する子供たちの隠し事を一切認めていません。
ですから、あなたにもそれを求めます。あなたは、ここで暮らす
他の子供たちと同じ様に心のすべてを私に話さなければならない
し、体に起こったどんなささやかな変化も私に見せなければなら
ないのです。……私の言っている意味が分かりますか?」

 「……は、はい」
 サンドラの心もとない返事。しかし、大事ななことだから先生
は包み隠さず話した。

 「もし私に嘘をつくと、お仕置きより辛い折檻が待ってます。
身体だってそうです。体調の変化や喧嘩、いじめにあってないか
を見るため、絶えず子供たちを裸にします。お臍の下だって例外
じゃありませんよ。だって、私はあなたの父親なんですから…」

 「…………」
 サンドラは思わず唾を飲み込む。きっと、そこまでは予想して
いなかったのだろう。
 しかし、しばらく考えてから、彼女はこう言い返してきたので
ある。

 「大丈夫です。私、先生のところへお嫁に行ったと思うように
しますから……」

 これにはブラウン先生もまいったといった様子で吐息をつく。
そして、少しなげやりぎみに最後の質問をしたのである。

 「説明はこんなところですが、それでもあなたはここへ来たい
ですか?」

 「…………」
 サンドラが、やはり静かに頷いて、この話は決着したのだった。

 「やはり、娘さんの意思は固いようですね」

 「ご迷惑をかけますが、よろしくお願いします。養育費につい
ては、必要な額をおっしゃってください。銀行の方へ振り込みま
すから……」

 アモン氏はこう言って話しを進めたが、実の娘が家を出たいと
言い出したのだ、それもまだ12歳の娘が…思いはブラウン先生
と同じか、それ以上だったに違いなかった。

 こうして、カレニア山荘始まって以来、初めて、親のいる子が
ブラウン先生と同じ屋根の下で暮らし、同じベッドの中で寝起き
することになったのである。


******************(1)*****

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tutomukurakawa

Author:tutomukurakawa
子供時代の『お仕置き』をめぐる
エッセーや小説、もろもろの雑文
を置いておくために創りました。
他に適当な分野がないので、
「R18」に置いてはいますが、
扇情的な表現は苦手なので、
そのむきで期待される方には
がっかりなブログだと思います。

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