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第9章 新しい仲間(2)

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第9章のタイトルを「新しい仲間」に
変更します
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第9章 新しい仲間

§2 サンドラの産声

 サンドラがカレニア山荘で暮らすことが決まると、もうその夜
が父との別れだった。

 継母とは異なりサンドラにとっては実の父親、別れが辛くない
はずがない。
 彼女はブラウン先生の居間で、しばらくは、人目もはばからず
父親に甘えていた。

 しかし、夜遅くだったにも関わらず父親は娘を残して山を降り
てしまう。
 『一夜明ければ、決心が鈍るかもしれない』
 彼は、幼い娘が必死になって掴み取った新たな道を閉ざしたく
なった。

 その温もりが消えぬ間だったから、サンドラにとってブラウン
先生の言葉はショックだったのかもしれない。

 「カレン、サンドラ。二人は今日お仕置きを受けましたから、
私と寝てくださいね」

 ブラウン先生にしてみたら、たんにこの家のしきたりを伝えた
だけ。伝達事項なのだろうが、12歳の少女にしてみると……

 「寝るって……誰と?」
 サンドラはまるで独り言のようにカレンに尋ねた。

 「当然、お父様よ。あなただって、今日からはブラウン先生が
お父様なんだもん。先生と一緒に寝るのよ」

 「いつもそうしてるの?」

 「いつもじゃないわ、当番の日とお仕置きされた日の夜だけよ」

 「一緒のベッドでじゃないわよね」

 「もちろんそうよ。その日は素っ裸でお父様と一緒のベッドよ」

 「……!……」
 サンドラは思わず息を呑む。
 そして、恐る恐る……

 「私もそうしなきゃいけないの?」

 「そりゃそうよ、そういうしきたりだもの」

 「それって、平気?」

 「平気って?何が?」

 「つまり……その……」

 「今は平気よ。最初は、お父様も裸だったし、驚いたけど……
今は平気よ」

 二人の会話にブラウン先生が割り込む。

 「どうしたんですか?」

 「いえ、サンドラが……お父様と一緒のお布団には抵抗がある
みたいで……」
 カレンが説明すると……

 「困りましたねえ。私としてはカレンの時と同じようにパンツ
くらい穿いてもいいですけど、あなたの方はすっぽんぽんでない
と困るんです」

 ブラウン先生に見つめられ困惑するサンドラに、カレンが……
 「大丈夫よ。先生は何もしないから……」

 「う、うん……」
 とは言ったものの、サンドラの不安が解消されたわけではない。

 「どうしたんですか?私が何か変なことをするとでも思ってる
んですか?随分、失敬な話ですね。大丈夫ですよ。もし、そんな
ことしていたら、ここは孤児院じゃなくて乳児院になってます」
 ブラウン先生の中途半端な冗談も、勿論、問題の解決にはなら
なかった。

 お尻叩きのあんな激しい痛みにだって耐えたサンドラだったが、
今は信じられないほどおどおどしていた。

 「困りましたねえ、父上はすでに帰ってしまわれたし……でも、
今ならまだ、追いつくかもしれませんね。馬車を手配しましょう」

 ブラウン先生が、わざと動いてみせる。
 すると……

 「大丈夫です」サンドラの大きな声。
 でも続いて、囁くように……
 「わたし……できますから」

 やはり、サンドラはどうしてもここで暮らしたかった。だから、
このハードルも何とかしなければならなかったのである。

 「そうですか」
 ブラウン先生はサンドラからの予期した通りの答えを聞いた後、
しばし考えてから、こう命じたのだった。

 「サンドラ、だったら、ここで全ての衣装を脱ぎなさい。……
下着も全てです」

 厳としたブラウン先生の……いや、お父様の声に、サンドラは
選択の余地を奪われる。

 彼女は、アンと一緒に暮らしたいからここを選んだのだろう。
ブラウン先生は関係ない。だから、彼女にとってブラウン先生は
赤の他人の男性。そんな男性の前で思春期の少女が裸になること
がどんなに辛いことか……
 でも、そんなことは百も承知で、先生もまたサンドラに向って
裸になるよう命じたのだった。

 「私は、あなたがどうしても私の娘になりたいというから準備
したんですよ。お仕置きのあった夜は私と裸でベッドを共にする
あなたにも教えておいて我が家のしきたりですよ。上の空で聞い
ていたんですかね」
 ブラウン先生に責められるとサンドラは下を向いてしまう。

 「………私の家の娘たちは全員それができるから我が家の娘で
いられるんです。あなただけそれができない。やらなくてもいい
なんてことにはなりませんよ」
 再び凛とした声が部屋に響く。

 ブラウン先生の言葉は世の中ではともかく、この屋根の下では
正論だった。
 だから、サンドラも反論できないのだ。

 何も言えない彼女は、この時立ったまま泣き出した。大粒の涙
をこぼし、気がつけば声を震わせて泣いている。

 「えっ……どうしたの?」
 突然のことが、カレンの目には意外に映る。

 これまで、勇気と向こう気とはったりと…とにかく色んなもの
が、ない交ぜになった行動力で、周囲の大人たちを驚かし続けて
きた彼女が、初めてみせた普通の少女としての姿だった。

 しかし、そんな彼女にブラウン先生は同情しなかった。
 正確には、同情する素振りを見せなかった。

 「カレン、その子を裸にしなさい」

 「えっ!」

 「あなたは、学校では規律風紀委員。ここでは一番年長の娘で
しょう。そのくらいは手伝いなさい」

 「あっ……はい」
 カレンは戸惑いつつもお父様の命令に従う。
 そして、サンドラのブラウスのボタンにそっと手を触れてみた。
 『ひょっとしたら、私の手をはねつけるんじゃないかしら』
 そんなことを思いながら……

 すると、サンドラへお父様の更なる強い言葉が飛ぶのである。

 「あなたは、今、私の娘なんですよ。アルフレッド=アモン氏
の娘ではないのです。それが嫌なら、今すぐこの家を出て行きな
さい」

 強い意志には強い言葉。目には目、歯には歯ということだろう
か。不思議な事に泣き虫サンドラの心の中にあった氷塊が一瞬に
して解けていく。

 彼女はカレンの手を借りず自ら服を脱ぎだしたのである。

 そして、一糸纏わぬ姿になったサンドラをブラウン先生は自ら
の膝の上に呼び寄せた。

 「めそめそ泣くなんて失礼ですよ」
 「……パン……」
 「そもそも子供が親を信頼しないでどうしますか」
 「……パン……」
 「ベッドで一緒に抱き合ったからって……」
 「……パン……」
 「何が起こるっていうんですか」
 「……パン……」
 「あなた、そんな信用できない親の処へ来たんですか?」
 「……パン……」
 「私は人買いじゃありませんよ」
 「……パン……」
 「まったく……何かあるんじゃないかなんて……」
 「……パン……」
 「そんな不純な事、考えること自体、無礼千万な恥知らずです」
 「……パン……」

 スナップをほんのちょっぴり利かせた平手がサンドラのお尻を
捕らえ、その破裂音が高い天井に木霊した。
 すでに、ベスとカレンによって十分すぎるほど暖められていた
お尻が痛くないはずがないが、サンドラはお父様のお小言を歯を
食いしばって耐え続けたのである。

 すると、ここでブラウン先生の声のトーンが変わる。
 「痛いですか?だったら、泣きなさい。それが自然でしょう。
あなた、痛いんでしょう。もう、ゲームは終わったんですよ」

 こう優しく言われて、サンドラは頭を撫でられた。
 ところが、次の瞬間……

 「パン!!!」

 それは男の一撃。女性たちとは比べ物にならないほど強い衝撃
だったから、思わず……
 「いやあ~~~」

 息継ぐ暇もなく次が……
 「パン!!!」
 「ごめんなさ~~~い」
 サンドラは必死に両足をバタつかせる。

 「パン!!!」
 「もうしませんから~~~いやあ、いやあ、もうしないで~」
 サンドラが山荘へ来てお尻をぶたれて初めて泣いた声だった。

 「けっこう、けっこう、元気な産声でしたよ。それが当たり前
です。お尻をぶたれたら泣く。ごめんなさいを言う。それが子供
の当たり前です。これからは、その当たり前を私の前でしてくだ
さいね」

 「はい、お父様」

 サンドラは鼻水をすすり上げながら答えたが、ブラウン先生は
満足だった。

 「はい、いい声です。あなたは私との賭けに勝って、私の娘に
なったんですから、これからは、お尻を叩かれても、我慢しては
いけません。たくさん、たくさん、ごめんなさいを言って泣いて
ください。それがあなたにとっても、とっても楽なこと。幸せな
ことなんですよ」

 「パン!!!」
 「いやあ~~~ごめんなさ~~~い」

 「パン!!!」
 「もうしませ~~ん」

 「パン!!!」
 「いい子になりますから~~~」

 「パン!!!」
 「あ~~ん、痛い、痛い、痛い」

 「よう~く、覚えておきなさい。これが、お父様の痛みです。
女の人たちとは痛みが違うでしょう。これがあなたを愛している
お父様の痛みですよ」

 「パン!!!」
 「あ~ん、痛い、痛い、痛い、わかりました。ごめんなさい」

 「パン!!!」
 「あ~~ん、もうしないで、ぶたないで……」

 「パン!!!」
 「いい子になります。いい子になりますから~~~」

*************************

 カレニア山荘で最初の産声をあげたサンドラは、ベスが持って
きたタオルケットに全身をすっぽり包まれ、お父様に抱きかかえ
られて部屋を出る。
 そして、そのままお父様の寝室へ。

 肌触りの良いタオル地に素肌をさらし、大きな枕に頭を埋める
と、それまでの疲れが一気に出たのだろう、カレンと先生が見守
るなか、すやすやと寝息を立てた。

 先生は、しばらくサンドラの寝顔を飽きずに見ていたのだが、
そのうち、カレンに向ってこんなことを言うのである。

 「この子は、『自由になりたい』『自由になりたい』とうわごと
のよう言って家に来ました。きっと、自由は幸せとイコールだと
思っているのでしょう。でもね、カレン。『自由』というのは、
野たれ死ぬのも自由という意味なんです。決して『幸福』と同じ
意味ではないんです。それが証拠に、赤ん坊は母親に全ての自由
を取上げられています。何一つ自由がありません。でも、そんな
彼はこの世の中で誰よりも幸せな場所にいるのですよ。だって、
何もできないのに何をやっても喜ばれる人って大人にはいません
もの。この子には、まずそんな体験をさせてやりたいんです」

 お父様の言葉がカレンの心に残った。
 そして、その言葉のままのことが翌朝から起こったのである。

*************************

 翌朝、サンドラはすでに恥ずかしい裸ん坊ではなかった。
 昨夜、彼女が寝ているうちにブラウン先生とベスよって立派な
衣装を着せてもらっていたのである。

 「サンドラちゃん。おっきですか?」

 サンドラが目を覚ました時、そこに飛び込んできたのはお父様、
つまりブラウン先生の笑顔だった。

 彼女は、その顔に一瞬驚き……、昨夜のことを思い出し……、
納得してから、おっかなびっくりブラウン先生にご挨拶する。

 「お…おはようございます。お父様」

 昨日のお尻がまだ痛いが、今の問題はそういうことではない。

 「えっ!?」
 裸で寝たはずなのに、身体がやけに窮屈なのだ。

 「えっ?これって、パジャマ?」
 彼女は右手を見て思った。

 しかし、その右手はどこにも出口がない。自分の右手はすべて
衣装の中にくるまれていて、指先を外に出すことができないのだ。

 「……?……」
 それだけではない。腰回りやお尻回りの辺りがやけにもぞもぞ
とする。

 「(どういうこと?)」
 心の中で感じた疑問にブラウン先生が答える。

 「今日からしばらく間、あなたには赤ちゃんになってもらう事
にしました」

 「えっ?」
 サンドラは目が点になった。
 誰だっていきなりそんなこと言われたってわかるはずがない。
今の今、こうした格好をしている自分がわからないのだから。

 「すでに、あなたにはオムツがあてられています。お洋服も、
特注品です。アンナとベスが徹夜で縫ってくれましたから、……
感謝してくださいね」

 「えっ!?どういうことですか。説明してください」
 サンドラが語気荒く迫ると……

 「だから、あなたは、今、赤ちゃんの格好をしているわけです。
これからしばらくはその格好です」

 サンドラは慌てて自らの衣装を確認する。

 「えっ??………………」

 それは、タオル地で縫い上げられた特注のロンパース。
 上下一体になっているうえに両手が外に出ないから、いったん
着せられると自分で脱ぐことは絶対に不可能な拘束衣だった。
 しかも、この感触では中でオムツをしているみたいだ。

 と、ここで、サンドラはある事実に思い当たって愕然となった
のである。
 「……(ということは……えっ!!!!)」

 「あのう……わたしの穿いてるオムツって……誰が穿かせたん
ですか?」
 サンドラは、あまり気が進まなかったが、疑問をそのままにも
していられないから尋ねてみる。

 「私ですよ」
 ブラウン先生が、あっさり……

 「!!!!」
 サンドラにとって、それは最も聞きたくない答えだったに違い
ない。

 「ええ、私があなたに穿かせたんです。それがどうかしました
か?」

 すまし顔の先生に、サンドラの表情は、当然、硬かった。
 「!!!!」

 「驚くことはないでしょう。こうみえても、私は子だくさんの
お父さんですからね。他人に任せっぱなしじゃなく、多くの子供
たちのオムツを自分で替えてきましたから、もう、ベテランです。
大丈夫、きっちりはまっています。安心していいですよ」

 ブラウン先生は得意げだが、サンドラの関心は、もちろんそこ
ではなかった。

 「!!!!」

 「おや、どうかしました?顔色が悪いようですが?」

 とぼけた笑顔を挟んでブラウン先生は続ける。
 「……わかってますよ。……恥ずかしい思いをさせられたって
思ってるんでしょう。『私は赤ちゃんじゃない』ってね」

 こう言うと、サンドラは恨みがましく上目遣いにブラウン先生
を見つめるが……

 「……でも、仮に私がお医者様でそんな検査を命じたら………
あなたはどうしますか?」

 「えっ!?…………」

 「拒否しますか?……それとも、病気だから仕方ないですか?
……私だって、この先もあなたをずっと守り続けなければならな
いお父様という仕事をしているんですよ。お医者様と同じように
あなたに関する情報は何でも必要なんです」

 「………」
 サンドラは悲しげな目で下唇を噛んだまま押し黙ってしまう。

 「それについては、私も最初考えました。このまま、12歳の
少女としてスタートさせてあげるべきじゃないかってね。でも、
ここであなただけを特別扱いしたら、この先だって、お互い遠慮
が出ます。それって、やっぱりまずいと思ったんです。ですから、
あなたも他の子と同じように赤ちゃんから始めてほしいんですよ」

 「ずっと……」

 「いえいえ、あなたが私に心を開いて、すべてを受け入れてく
れるようになれば、それでいいんです。そうなれば、お互い今の
年齢で暮らせると思いますから……」

 「…………」

 「おや、おや、そんな悲しい顔しないで……私の見るところ、
あなたは頭のいい子だ。分別も決断力もありますからね。こちら
の期待にも、すぐ応えられるはずです。そんなに長い間にはなり
ませんよ」

 「どのくらい?」

 「そうですねえ、一週間くらいでしょうか」

 ブラウン先生の答えに、サンドラの心は、やはり……
 『そんなにかかるんだ』
 と思うのだった。


********************(2)****

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tutomukurakawa

Author:tutomukurakawa
子供時代の『お仕置き』をめぐる
エッセーや小説、もろもろの雑文
を置いておくために創りました。
他に適当な分野がないので、
「R18」に置いてはいますが、
扇情的な表現は苦手なので、
そのむきで期待される方には
がっかりなブログだと思います。

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