2ntブログ

Entries

第9章 新しい仲間(3)

*********************
<お断り>
第9章のタイトルを「新しい仲間」に
変更しました。 
§3と§4にはスパンキング、お仕置きの場面が
ありません。ご了承ください。
*********************


第9章 カレンの秘密

§3 赤ちゃん生活(1)

 ブラウン先生はサンドラをお姫様だっこすると、食堂へ向う。

 「ほら、ここへ座ろうね」
 自分が座るいつもの席へ腰を下ろすと……

 「熱つつかな……大丈夫かな……」
 アンナから蒸しタオルを受け取り、サンドラの顔を丁寧に拭き
取っていく。

 「わあ、綺麗になったよ」
 先生は常に赤ちゃん言葉で仕事をしている。

 一方、サンドラにとってそのタオルはやや熱かったが我慢した。
 昨日のお仕置きの影響か、お父様が怖く感じられ萎縮した感じ
の顔が磨かれていく。

 「わあ、いい笑顔ですね。気持よかったですか」
 ブラウン先生は物心ついた子にはこれほど積極的に言葉をかけ
ないが、赤ん坊に対してはいつもこうだった。

 『赤ん坊に言葉を惜しんではいけません。赤ん坊は話せなくて
も聞く事はできます。それに、自分に対して誰が優しくて、誰が
冷たいかは抱かれているだけでもわかるんです。優しい人からの
言葉には、当然耳をそばだて、より多くの知識を得ようとします。
それが情緒の安定にも繋がり、より複雑な思考回路を可能にする
んです。天才を育てたいなら、一日中赤ん坊に語りかけてやれば
いいんです。簡単なことですよ』

 これがブラウン先生の自論だった。
 だから、先生は赤ん坊を抱くと、とたんに饒舌になる。それは、
12歳のサンドラだって同じ。
 もっとも本物の場合は、この食堂でも裸にして体中を拭き取る
のだが、さすがにそれはしなかった。

 やがて、子供たちが朝の挨拶に現れる。

 「おはようございます。お父様」

 「おう、キャシー。おはよう。……ほら、見てご覧。今日から
一緒に暮らすサンドラだ。可愛いだろう」

 お父様は胸にうだかれたサンドラを紹介するが……

 「!?!」
 キャシーは、その大きな赤ん坊に目を白黒。

 「サンドラ。この子はキャシーと言ってね。ちょっぴりお転婆
さんだけど、とても心の素直ないい子なんだよ。今10歳だから、
赤ちゃんが終わったら。お前にとっては妹になる子だから、その
時は優しくしてあげるんだよ」
 ブラウン先生はサンドラをあやしながらキャシーを紹介した。

 でも、当のサンドラは、今、目の前にいる妹に対してどんな顔
をしたらいいのかがわからない。
 いや、サンドラだけではない。自分より年上の赤ちゃんを紹介
されたキャシーにしてもそれは同じで、二人の子どもの間には、
奇妙な空気感が漂っていたのである。

 「キャシー、君から自己紹介だ」
 お父様に促されて、キャシーはそれなりに愛想笑いを浮かべる。

 「キャシー・マクラーレン。10歳です。よろしく」
 珍しく神妙な面持ちのキャシーは恐々握手を求めたが、相手の
手が袖から出ないのでベビー服の上から握手した。

 「私、サンドラ=アモン。よろしく」
 一方、サンドラは少し投げやりな挨拶。

 こんな格好をさせられての自己紹介だなんて、聞いたことない
から、笑顔でいられるはずもないのだろうが……

 「サンドラ、女の子にとってお愛想はとっても大事な武器です。
たとえ、お腹の中は違っていても外へ向けての顔はちゃんと別に
持っていないと……ピアノの芸だけで自分の身が守れるだなんて
思っていたら大間違いです。……そんなこともできないとなると、
また、昨夜と同じレッスンが必要になりますけど………あなた、
その必要がありますか?」

 ブラウン先生は彼女のお尻を小さく叩きながらその耳元で囁く。

 あからさまな脅しに屈するのは、彼女のポリシーに反するが、
サンドラの脳裏には昨日のスパンキングがまだフラッシュバック
しているので、仕方なく、ぎこちない笑顔を作ってみる。

 それは泣き笑いのみょうちくりんな顔だったが、ブラウン先生
はそれでも十分満足した様子だった。

 「私があなたを抱いてる時は、出来る限り笑う努力をなさい。
泣きたい時は首を反対にして私の胸の中で泣けばいいでしょう。
簡単なことです。赤ちゃんなんですから難しいことは何もありま
せん」
 ブラウン先生はサンドラの頭を撫でながら優しくつぶやく。

 そして、それがひと段落すると、今度はキャシーに向って……
 「キャシー、そこにオートミールがあるでしょう」

 「ええ、あるわよ。このボールに入ってるやつでしょう」

 「それをスプーンでひと匙すくって、ここにいるサンドラの口
に運んでください。できますか?」

 「いいわよ」

 キャシーはスプーンで一杯だけオートミルをすくうと、お父様
の処へやってくる。
 そして、その指示通り、最初はイヤイヤしていたサンドラの口
の中へそれをねじ入れたのだった。

 もちろん、それを拒否すればどうなるかをお父様から聞いた後
に、口を開いたのだが……

 「もう一つやってあげようか」
 キャシーは親切心からそう言ったが……

 「好意はありがたいけどね、この子はこれから、兄弟だけじゃ
なく、ここで暮らす全ての人たちからの祝福を受けなければなら
ないからね。一人二杯ずつは無理なんだよ」

 そんな会話を続ける三人の後ろには、すでに、ロベルトが……
その後ろにはリチャードが……さらにその後ろにはマリアが……
お父様への朝の挨拶を済ましてしまおうと並んでいたのだった。

 当然、サンドラはこれらの子供たち全員から挨拶を受けなけれ
ばならなかったし、スプーン一杯のオートミールを、どの子から
も口にいれてもらわなければならない。

 いや、それだけではない。ここで働いている女性たち、アンナ
やベス、ニーナなどからも……男性たち、ラルフやダニーからも、
スプーンがやって来たから、最後はお腹がだぼだぼになって息苦
しかった。

 『まったく、もう、どうして私がこんなことしなきゃならない
のよ。私はとうに赤ちゃんを卒業してるのよ。こんなことされる
くらいなら、お尻をぶたれてた方がまだましよ』

 サンドラは思う。
 もちろんそれは思っただけで、声にはだしていないのだが……
ブラウン先生は、それをそっくり声に出してしゃべってしまった
のである。

 「まったく、もう、どうして私がこんなことしなきゃならない
のよ。私はとうに赤ちゃんを卒業してるのよ。こんなことされる
くらいなら、お尻をぶたれてた方がまだましよ。……って、そう
思ってるでしょう」

 「……!……」
 心を見抜かれたサンドラは、当然、『ドキッ』だ。

 それを見透かすようにブラウン先生は続ける。
 「いやあね、こんなはずじゃなかったわ。自分の血が繋がって
いないから私に意地悪してるのかしら。ここって青髭の館だわ。
さっさと逃げ出さなきゃ。……ってところでしょうかねえ。……
ねえ、サンドラ、違いますか?」

 「…………」
 サンドラは黙っていた。
 まさか、『あってます』とは言えなかったからだ。
 ただ……

 『どうして、このオヤジは私の心が分かるんくだろう?』
 とは思ったのである。

 「いいですか、昨夜までだったら、『どうぞお帰りください』
でしたよね。でも、昨日、あなたの父上と正式に契約を交わしま
したからね。もう、今は、あなたがここを出ることは許されない
んです。……わかるでしょう。そこは……」

 「はい、」
 小さな声が先生の耳に届く。

 「でも、私はあなたを虐めてるつもりはありませんよ。むしろ、
あなたがせっかく持っているテクニックをいかしたいんですよ。
ピアニストとしてね」

 「えっ!?それはおかしいわ。だって、私、今でもピアニスト
でしょう」

 「いいえ、それは違います。あなたがピアニストなら、この間
見た日本チームだって、サッカーチームです。……今のあなたは、
教会で音楽には無縁の人たちを相手にピアノのパフォーマンスを
しているだけなんです」

 「そんなことないわ。その人たちは私が何を弾いても拍手して
くれるんだから」

 「ええ、そりゃそうでしょうね。だって、その人たちはあなた
の指さばきを見て、驚き、まるでサーカスや手品を見るのと同じ
感覚で拍手を送るんですから。そもそも曲目なんて、何でもいい
はずなんです」

 「…………」
 プライドをへし折られたサンドラはブスッとした顔になった。

 「赤ちゃんは大変ですね。自分の意に沿わないお話を無理やり
頭の上から聞かされるんですから……よいこ、よいこ」
 ブラウン先生は娘の頭を優しくなでた。

 「でもね、サンドラ。もう少し辛抱してお聞きなさい。あなた
はもちろんピアノが弾けますから、ピアニストではあるんです。
でもね、クラシックのピアノというのはおしゃべりも何もしない
で、ただ一曲ピアノを弾くだけで、万人を感動させなければなら
ないんです。本人が音楽に感動した事もないのに、それを物まね
しただけで他人が感動するでしょうか」

 サンドラは驚いてブラウン先生を見上げる。
 それは先生の言葉に感化されたわけじゃなくて……

 『何言ってるの。私だって感動したことぐらいあるわよ』
 という抗議だったのだ。

 「まあ、いいでしょう。そのうち私の言ってる意味がわかる日
が来ますから。今はまだ、私の言う通りにしていなさい。それが
あなたにとっても、痛い目にあわずにすむ方法ですよ」
 ブラウン先生は膝の上に抱いた大きな赤ちゃんのお尻を、軽く
軽く叩きながら諭した。

 でも、サンドラは悔しくて思わず心に浮かんだことを口走って
しまう。
 「…青髭じじい。何さ、私だって感動したことぐらいあるわよ」

 「お譲ちゃん、それ、聞こえてますよ」
 ブラウン先生は笑う。
 「そうですか。青髭じじいですか。私はそれでも結構ですよ」
 まるで、そんな罵声も計算していたかのように先生は余裕綽々
だった。


 やがて、そうした二人のもとへ、真打が登場する。

 「おう、アン、可愛い妹が、お待ちかねでしたよ」

 眠そうな目で、そこへやってきたアンだったが……
 「妹って………………えっ?!!!」
 さすがにこの光景を見て目が覚めたようだった。

 「………………どうしてあなたがここにいるのよ?」
 アンも昨夜のいきさつを知らないのだ。

 「だいいち、何なの?その格好は……」

 サンドラの顔が真っ赤になった。
 「…………」
 そして、思わずブラウン先生の胸の中へ顔を埋める。
 今はそこしか避難場所がなかったからだ。

 もちろん、誰にこう言われたって恥ずかしいだろうが、それが
アンだったからなおのことだった。サンドラはトイレにでも逃げ
込みたいほど身の置きどころがなかったのである。

 「あんた、お仕置き?」
 アンにいきなり言われてサンドラの顔がさらに赤くなるが……

 「そうじゃありませんよ。この子は今日からあなたの妹になる
んです」

 「い・も・う・と?」

 「そうですよ。今日から、私が預かることにしましたから…」

 「へえ~、あんた、ここの子になるつもりなの?信じられない。
物好きねえ。……そう、それでそんな赤ちゃんの格好なんかさせ
られてるんだ」

 アンは怯えるサンドラを上から目線で見下ろす。
 そして、その視線で十分に妹をいたぶってから……

 「ところで、部屋はどこにするの?……私の処は嫌よ。今でも
窮屈なのにこの子を受け入れる余裕なんてないわ」

 「ええ、だからカレンの処を考えてます。あそこならまだ余裕
があるでしょうから……」

 「ふうん、屋根裏部屋かあ。お嬢ちゃまには、ちょっと厳しい
かもしれないけど、仕方がないわね。そこしか空いてないから」

 「そんなことより、アン、これはみんなに頼んでいるんですが、
そこのオートミールをすくってこの子の口に入れてくれませんか」

 「オートミール?……ああ、これね。いいわよ。聖体拝領って
わけだ」
 アンは快くその仕事を引き受けたが、そのスプーンをサンドラ
の口元に届ける間にこんなことを言うのだ。

 「それにしても、あなたも、物好きねえ。あなたいいとこの子
なんでしょう。家にじっとしてればいいのに……ここはお父様の
独裁国家なの。自由はないし、逆らえばお仕置き。知ってて来た
のかしら?何か勘違いしたんじゃないの?」

 「アン、私はヒットラーじゃありませんよ」

 「ええ、それは知ってます。ヒットラーは女の子の裸にそれ程
執着心がなかったみたいですから……」

 「困りましたねえ。随分と今日は当たってきますけど、この子
に何か恨みでもあるんですか」

 「いいえ、ありません。…………………ほら、あ~~んして」
 アンはオートミルをすくったスプーンをサンドラの口の中へ。

 「よく覚えておきなさい。ここでは13歳までの女の子には、
羞恥心というものはないことなってるの。……だからそれまでは、
女の子の穴という穴はすべて調べられることになるわ。そんな事
も知って、ここに来たのかしら?」

 アンは自分の入れたオートミルがまだサンドラの口の中にある
のかを確認するかのようにその紅潮したほっぺたを指でトントン
と叩いてみる。

 笑顔で叩くアンの指には一定のリズムがあって……
 『あなたしっかりしなさいよ』
 という意味も込められていた。
 そのくらいこの時のサンドラはぽ~っとしていたのである。

 「ところで、この子、いつまでお仕置きなの?」

 「だから、『お仕置きじゃありません』って言ってるでしょう」
 アンの問いにブラウン先生はむきになって答える。

 「だって、昔、あったじゃない。キャシーやリックにオムツを
穿かせた事。あれじゃないの?だって、これって赤ちゃんの格好
でしょう?」

 「そうですよ。でも、お仕置きでこうしているわけではないん
です。この子にも、他の子供たち同様、我が家の赤ちゃん生活を
体験してもらおうと思って……それでやっているんです」

 「赤ちゃん生活ねえ……」
 アンは不思議そうな顔をした。
 「私も、こんな風に抱いてもらったことがあったの?」

 「何言ってるんですか。もちろん、ありましたよ。私はあなた
を四六時中抱いて育てましたからね、あなたが子供たちの中でも
一番長く私に抱かれていたはずです」

 「覚えてないわ」

 「そりゃそうです。赤ちゃんの時だけですから。次はロベルト
が待ってましたし……あなただけというわけにはいきませんから。
…あなただって、リサやサリーを私が抱いていた時の記憶はある
はずですよ?」

 「そう言えば、アンナが言ってたわ。私たちがいるのにお父様
はよく赤ちゃんを抱くって……」

 「赤ちゃんというのは何一つ理屈はわからなくても自分を抱い
てくれている人の情報を収集してその人の行動パターンに添った
生き方をしようとするんです。これって動物の本能とうか、自然
の摂理です」

 「本当ですか?」
 アンはかなり懐疑的な顔をしたが……

 「本当ですよ。だから赤ん坊時代に幸せに抱かれたことがない
子供は、親を自分にとって特別な存在だとは認識しなくなります。
つまり、儀礼的なことには対応しても、なつかないんです。そう
なると、私だってお金を出して育てるのが苦痛になりますからね。
親子の関係がギクシャクするわけです」

 「私たちはみんな先生の血筋を引いてないもんね。先生も苦労
が耐えないわけだ」

 「何、ませたこと言ってるんですか。血筋は関係ありませんよ。
他人でも結果は同じなんですから。……いいんですか、日本には、
『三つ児の魂百までも』という言葉があって、彼らは、物心つく
までの育て方で赤ん坊の一生が決まってしまうとまで言っている
のです。……私は、最初これに懐疑的でしたが、今は違います。
それはね、あなたを育ててみてわかったんです。スキンシップが
いかに大事かってね。だから、その後の子供たちは赤ん坊の時、
極力私が抱くようにしたんです」

 「…………」
 アンは目をぱちくり。そんな話、これまで一度も聞いたことが
なかったからだ。むしろ今は自分に染み付いているお父様らしさ
みたいなものが、疎ましく感じられてならないのだ。だから……

 『この人、偉そうなこと言っても、私の心なんて何もわかって
ないじゃない』
 と思うのだった。

 しかし、その疎ましくてならないものが、実は生涯にわたって
自分を支配する現実を、アンはこの時まだ気づいていなかったの
である。

 「アンの時とは違い、この子はすでに12歳ですかね。今さら
赤ん坊に仕立てても手遅れかもしれませんけど、私は日本の諺に
チャレンジしたいんです。だって、このままでは彼女がせっかく
培った技能も、小学生を教えるピアノの先生ぐらいにしか、生か
せませんからね。それはとってももったいないことなんです」

 ブラウン先生は、今は観念しておとなしくしているサンドラの
頭を優しくなでた。


******************(3)*****

コメント

コメントの投稿

コメント

管理者にだけ表示を許可する

Appendix

このブログについて

tutomukurakawa

Author:tutomukurakawa
子供時代の『お仕置き』をめぐる
エッセーや小説、もろもろの雑文
を置いておくために創りました。
他に適当な分野がないので、
「R18」に置いてはいますが、
扇情的な表現は苦手なので、
そのむきで期待される方には
がっかりなブログだと思います。

最新記事

カテゴリ

FC2カウンター

検索フォーム

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード

QR