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12/20 嘘のようなホントのお話

12/20 嘘のようなホントのお話

 あれは小4の夏休み。僕はお父さんが運転するスバル360で
ある川の上流へやってきていた。目的地は遠縁にあたるおばさん
の家。
 僕はもちろん、お父さんもその家に行ったことがなくて、途中、
迷ってしまう。

 「おかしいなあ、この辺なんだけど……」
 橋の上に車を止めて地図を見ながらぼやくお父さんの声を背中
で聞きながら、僕は山間の景色を眺めていた。

 「おばさんち、ずいぶん、山の中にあるんだなあ」
 おばさんの住んでる集落は戸数30戸あまり、どこへ行くにも
山一つ越えなければならないという場所だった。
 僕の住んでいる処だって、都会の人から見れば田舎だろうけど、
そこと比べても断然田舎。僻地と言うべきかもしれない。

 だから逆に、空は抜けるように青いし、周囲一面緑の山々だし、
今、こうして僕が車窓から眺めている眼下の川だって泳ぐ魚の姿
がはっきり見えるほどだったのである。

 そんな中、僕と同じ位の年頃の男の子たちが水泳パンツを穿い
て泳いでいるのが見えた。いえ、それ自体は何気ない光景。この
時代、川で泳ぐことなんて珍しくなかったから。

 ところが、次の瞬間、僕は目を疑う光景に出くわすのである。

 女の子が数人でやってきて、やはり水着で泳ぎ始めようとした
のだが、そのうちの一人が私服を着ていて……
 「だって、うち、水着もってへんもん」
 と言うから、こっちは当然その子は不参加だと思ったのだ。

 ところが……
 「えっ!!!!!」

 「家に帰って持って来るのもじゃまくさいから、いいわ」
 そう言ったかと思うと、その場ですっぽんぽんになったのだ。

 「いいの?」

 心配する友だちに、彼女……
 「パンツ濡らすとおかあちゃんにまた怒られるから、いいよ」

 友だちのいる川の中へ一緒に飛び込んだのである。

 今から50年以上も前のこと、大人の貞操観念が違うように、
子供の羞恥心意識も今とは違っていた。そもそもHな情報なんて、
周囲に何もなかったから、今以上に女の子たちは心がオープンで、
性の芽生えも外からの情報ではなく自然に芽生えるものだったの
である。

 僕の学校でも、一応四年生頃から体育の着替えは男女別の部屋
で行われていたけど、男の子が入って来ても「キャー」という声
を上げる子なんて誰もいなかった。

 とはいえ、これは別格。
 『田舎は凄い』
 と思ったんだけど、その瞬間、車が発車してしまった。

 すると彼女、一瞬あっけにとられてこちらを見て立ち尽くして
いたが、慌ててしゃがみ込んでしまったから、それまでこちらに
気がついていなかったのだろう。

 それにしても、同世代の男の子だってすぐそばにいたわけだし、
彼らには見られても仕方がないと思っていなければできないはず
で、きっと集落中の子供達が幼い頃から兄弟同様の関係だったん
だろう。そこへ、滅多に現れないよそ者が現れてビックリという
わけだ。

 のどかな、のどかな、大昔のお話。
 今そこへ行っても裸の女の子はいませんので、あしからず……。

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tutomukurakawa

Author:tutomukurakawa
子供時代の『お仕置き』をめぐる
エッセーや小説、もろもろの雑文
を置いておくために創りました。
他に適当な分野がないので、
「R18」に置いてはいますが、
扇情的な表現は苦手なので、
そのむきで期待される方には
がっかりなブログだと思います。

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