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12/24 マー坊のお母さん

12/24 マー坊のお母さん

 小学校時代、僕の友だちに、みんなから『マー坊』『マー坊』
って、まるで自分の弟みたいに呼ばれている男の子がいました。
みんなクラスメートですから歳は同じはずなんですが、とにかく
彼、可愛い顔してるですよ。気立てはいいですしね、まるで天使
みたいな子で、クラスでは女の子たちのアイドルだったんです。

 対する僕は……顔はまずいし、性格は歪んでるし……おまけに
人付き合いが悪いから友だちいないという三重苦でした。

 つまり、二人の境遇はあまりに違っていたわけなんですが……
ただ、一箇所だけ共通していたのが学校の成績。おかげで、僕は
彼と親しく口をきくことができたのです。

 1、2学期、いつも僕の方がほんのちょっぴり彼をリードして
いますから、彼のお母さんが心配して「勉ちゃんを見習いなさい」
なんて言うんですけど、実際は3学期に行われる総ざらえの学年
末試験では、僕は一度も彼に勝ったことがありませんでした。
 要するに彼の方が優秀なんです。

 ただ、似通った成績の子ということで、僕は彼のお母さんから
よく自宅へ招待されていました。

 「僕んちはお百姓さんだよ」
 彼がそう言いますから、ぼくは単純にそう思っていましたが、
彼の言う『お百姓さん』というのは、戦前は駅まで他人の土地を
通らずに行けるほど広い田んぼを所有していて……おじいさんは
衆議院議員だったという家のことだったのです。

 戦後は農地解放の影響で戦前ほどの勢いがなくなったとはいえ、
いまだにマー坊はその田舎の名士でした。
 ですから、彼の下りるバス停の名前は『御庄屋前』。そこまで
乗って来たバスの車内でも、そのあと道ですれ違った人たちから
も、「坊ちゃんお帰りなさい」「坊ちゃん今日はもうお帰りかい」
って知らないおじさんおばさんが声を掛けてきます。
 そう、彼はそもそも家にいる時からアイドルだったのです。

 そんな地元のアイドルに連れられて行った先は、当然のごとく
広くて大きくて立派な家でした。
 でも、僕がここで最も驚いたのはそんな田舎の邸宅ではありま
せんで、応対に出るマー坊のお母さんのことだったのです。

 いつも親切で、穏やかで、慈愛に満ちた優しいその目はまるで
マリア様に見つめられているようでした。もちろん誰に話掛ける
時でも声を荒げることなんてまったくありません。
 それに、何時行っても、庭にも部屋にも御屋敷じゅうどこにも
塵一つ落ちていませんし、出てくるおやつは手作りで……それが
とっても美味しいんです。

 子供ながらに『この人が僕のお母さんだったらいいのに』って
『こんな人がお母さんだからマー坊は天使でいられるんだ』って
いつも思っていました。

 それに比べて家の母親ときたら……
 自分では何一つ家事ができないくせに、僕がちょっと失敗する
とすぐに怒鳴るし、誰はばかる事なくあくびはするし、おならは
するし、家の中ではお股だって平気で掻きますからね。
 およそ『清楚』という言葉からは縁遠い人でした。

 あれは3年生の二学期の終業式の日、ちょうどクリスマスイヴ
の日で、マー坊のお母さんが校門近くでマー坊を待っていました。

 本当は二人で帰るつもりだったんでしょうが、たまたま、僕が
一緒にそこにいますから……

 「ちょうどよかったわ。今日の夜、マーちゃん、お出かけしな
ければならないところができたの。それで、クリスマスはお昼に
すませたいと思ってるんだけど、勉ちゃん一緒にお付き合いして
くれないかしら……」

 「えっ!?これから?」

 「大丈夫よ。お母様には私の方からご連絡さしあげるから心配
しないで……」

 こう言われて、僕は急遽マー坊のクリスマスパーティーに招待
されたのでした。

 そこで出されたお母さん手作りのケーキの美味しかったこと。
 お店で買うものと、見た目も味も何一つ遜色ありませんでした。
 当時、田舎でこんな本格的なケーキを手作りできるお母さんは
他にいなかったと思いますよ。

 そんな、お母さんですからね。マー坊は僕の家で行われている
ような野蛮なお仕置きとは縁のない子だと思っていたんです。
 ところが、ある日、ひょんなことからポロリと彼が漏らしたん
ですよ。

 「そんなことないよ。うちのお母さんだって、竹のものさしで
お尻をぶったり、お灸だってすえられたことあるんだから……」

 すると、僕の頭の中で無数の鐘が鳴って……

 マー坊、ごめんね。
 僕、その晩、オナニーをしてしまったんだ。
 マー坊がやられてるのを想像して……
 僕がマー坊のお母さんの子供になって……

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tutomukurakawa

Author:tutomukurakawa
子供時代の『お仕置き』をめぐる
エッセーや小説、もろもろの雑文
を置いておくために創りました。
他に適当な分野がないので、
「R18」に置いてはいますが、
扇情的な表現は苦手なので、
そのむきで期待される方には
がっかりなブログだと思います。

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