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12/30 人生最初の家出

12/30 人生最初の家出

 ある日、僕は家出を決意する。
 お父さんが食べたお菓子を僕が勝手に食べたって言われて頭に
きたからだ。ほっぺ抓られたのも痛かった。

 僕はお母さんに「僕、家出する」と高らかに宣言したのだ。

 ところが、お母さんは……
 「あら、そうなの……それじゃ、下着の準備しなきゃいけない
わね。お菓子もあった方がいいわね。ビスケット持って行く?」
 と言うので、下着とお菓子を通園バッグに詰めてもらった。
 普段は幼稚園で食べるお弁当が入っているバックだ。

 で……これで準備は整ったのだが……

 「あら、どうしたの?行かないの?」

 お母さんはアイロンかけながらこう言うんだけど……

 「う………………うん」

 まだ、もじもじしてたら……

 「早くしないとお外寒くなるわよ」

 「そうなの?」

 「……それで……どこに行くつもりなの?」

 「う~~~~ん、どこでもいい」

 「どこでもいいの?」

 「どこでもいいけど…………ママと一緒……」

 「ママと一緒じゃいやなんでしょ?……」

 「違う」

 「???……」
 お母さんはしばらく意味が分からなかったけど、そのうち……

 「あら、あなた、お母さんと一緒に家出するつもりなの?」
 さすがに察しがいい。

 「うん」

 「……そうなの……だったら、仕方ないわね……」

 お母さんは一つだけため息をついたけど、アイロンをやめて、
僕と一緒にお外へ出た。

 で……
 近くの公園にやって来て……
 そこのブランコに揺られながら、二人でビスケットを食べた。

 すると、近所のおばさんが……
 「まあ、勉ちゃん、今日はお母さんと一緒にお散歩かしら……」
 って言うもんだから……

 「家出……」
 って答えたら……

 「お母さんと一緒に家出したの?」
 って変な顔で笑ってた。

 で……
 お母さんの抱っこでビスケットは食べたけど……
 「ビスケットじゃお腹一杯にならないわね。おうちでご飯食べ
ようか?」
 って、言うから……

 「うん」
 って、小さな声でご返事したら、お母さんがおんぶしてくれた。

 一緒に家に帰って……
 一緒にご飯食べて、
 一緒にお風呂に入って、
 一緒のお布団で寝たら……

 「坊やは、まだ、お母さんの愛の中でしか生きられないの」
 「うん」
 「お仕置きイヤイヤでも、ここが一番いいのよ」
 「うん」
 「お外の風はまだ冷たいの。勉ちゃん独りじゃ風邪ひいちゃう
わ……わかった?」

 「う……うん」
 そう言ってお母さんのオッパイの中でネンネ。

 でも……
 この時、お母さんのオッパイを力一杯握ってたから……
 朝、お母さんのオッパイに痣ができちゃってて……

 「あ~あ、痣になってる」
 お母さんは、最初、困り顔だったけど……

 「『痣のつくほど抓っておくれ、それを惚気(のろけ)の種に
する』か……」

 お母さんが独り言のように言うと、お父さんが……

 「『痣のつくほど抓ってみたが、色が黒くてわからない』って
のもあるよ」
 って言うんだ。

 「それ、どういう意味?」

 「ん?……ぼくのにぎにぎじゃ仕方ないわねってことよ」
 って、お母さんは笑って許してくれた。

 僕の最初の家出は、父兄同伴だったんだ。
 
********************  

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tutomukurakawa

Author:tutomukurakawa
子供時代の『お仕置き』をめぐる
エッセーや小説、もろもろの雑文
を置いておくために創りました。
他に適当な分野がないので、
「R18」に置いてはいますが、
扇情的な表現は苦手なので、
そのむきで期待される方には
がっかりなブログだと思います。

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