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銀河の果ての小さな物語 <第1章> §2

☤☤☤☤☤☤  銀河の果ての小さな物語  ☤☤☤☤☤☤

     ☤☤☤☤☤☤   <第1章>  ☤☤☤☤☤☤
            ~ バンビの赤ちゃん期 ~


§2 

 私が少しずつ記憶を頭の中に残せるようになって、つまり物心
がついて、私の目の前にいつも現れる人がお母さんと呼ばれる人
なんだと知れる頃になると、彼女はしきりに私を公園へ連れだし
家では文字を教え始めた。

 そして、二歳で文字を読み、三歳でそれが書けるようになると、
この人は、そのたびに大喜びして、公園に集まって来る人たちを
集めては、覚えたての芸を私に披露させたのである。

 誰にでもできることを、さも『この子にしかできない』と言わ
んばかりの物言いをされては、観衆も呆れて言葉もでなかったと
思うけど、そこは人のよい住民のこと、嫌な顔一つせず、この風
変わりな親子を褒めてくれていた。

 すると、私はともかく、このお母さんなる人物は、そのことが
いたく心地よいと見えて、
 「じゃあ、今度は英語を……」
 「算数も……」
 「ついでにピアノも……」
 なんて言い出す始末。こんな案配だから私が覚えなければなら
ないノルマは、あっという間に膨らんでいく。

 「さあ、始めますよ!」という声に、いやいやもたくさんした
のだが、いざとなると、まだ小さかった私をしっかりと膝の上に
抱きかかえ、鼻息一つを私の後頭部に吹きかけては、仕事に取り
かかってしまう。こうなると、体の小さな私は何一つ身動きが取
れなかった。

 目を開ければ書き取りと算数のドリル。手は、問題を解くこと
以外何もできないように両手ともしっかり上から包み込まれてい
るし、頭はおっぱいの谷間がしっかり挟みつけていし……後ろは
おろか横さえ向けない窮屈な場所。
 わずかに自由になる両足をばたつかせても、太くて大きな足に
は大して影響がなかった。

 こんな状態が長く続けば、幼児にとっては、お勉強というより
拷問に近かったのだが、それを支えたのはお母さんのお膝にのん
のしているという心地よさだった。
 あめ玉をしゃぶらされ、頭をなでられ、時には本物のおっぱい
まで舐めながら、時に、ほっぺたを強く引っ張られたり、恐い顔
で脅かされたことだって何度もある。

 たっぷり2時間、この苦行が終わると、ご婦人はさらに機嫌が
よくなるのである。

 で、それが何かの役にたったのかというと……(^_^;)

 彼女が公園へ行って、自分の鼻の高さを自慢すること以外には、
あまり益はなかった。一方、子どもの側からすれば……
 『お母さんはおっかない!とっても、とっても、おっかない!』
 という思いだけが他の子より強くなる。つまりは、マザコンに
なったというわけだ。
 おかげて、我が子の支配はぐっとしやすくなった。

 もっとも、子どものうちは別にマザコンであっても、それほど
不自由なことはなかった。
 お膝の上で元気にはしゃぎ、うまうまをスプーンでお口に入れ
てもらい、ちゃぷちゃぷお風呂で体を洗ってもらいながら湯船で
眠るなんてことは、子供にとってはなかなか気持ちのいいものだ
からだ。
 ついでにうんちまでしたら、これはさすがに叱られたが……

 マザコンじゃあ自分の好きなことができないっていう人もいる
けど、そもそも世の中に出てまだ間のない身では、何をして遊ぶ
のが一番楽しいのかさえ、まだ分からないままなのだ。

 前にやっていて楽しかった事やおもしろそうな事を見つけたら、
とにかく、
 「あれ!」
 って指を指せば、お母さんがお膳立てしてくれるからたいてい
それでOKだった。

 「どうしたの?あれしたいの?」
 ってお母さんが寄って来て、抱き上げる。
 どうにかすると、指さしたことより、この瞬間(=だっこ)の
方が一番楽しかったりするのだ。

 望みはもちろん叶わない事だってあるが、そんな時はたいてい、
頭をなでなで、お背中すりすり、抱っこよちよちの残念賞がつい
てきた。

 ただ、それでも満足できなくて、いやいやを続けると……
 一転、恐い顔になるから、その按配が難しい。もっとも、そん
な時もお母さんの腕を目一杯の力で握りしめて泣けば、そのうち
顔色は変わってくるのである。

 結果、お母さんの二の腕に大きな青あざがついても、それは、
子どもの私があまり心配する事ではなかった。
 この間も公園で……

 「この子ったら、泣きながら『ママ嫌い、ママ嫌い』って言っ
てるのに、腕だけはしっかり握ったままだから……ほら、見てよ、
こんな大きな痣になっちゃって……もう、やんちゃで困ったもん
だわ」

 笑いながら、私のつけた痣をしきりに自慢していた。
 お母さんという親は、実に不思議な生き物だ。
 少し、マゾっ気があるな、ありゃあ(^◇^;)

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tutomukurakawa

Author:tutomukurakawa
子供時代の『お仕置き』をめぐる
エッセーや小説、もろもろの雑文
を置いておくために創りました。
他に適当な分野がないので、
「R18」に置いてはいますが、
扇情的な表現は苦手なので、
そのむきで期待される方には
がっかりなブログだと思います。

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