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第10話 ①

<第10話> ①
 その週末、私は河村氏の私邸に招かれた。二週間ほど前、真里ちゃん
のお股にお灸がすえられたあの舞台では本来の催し物が開かれ、ピアノ
やフルート、バイオリン、ハープなどの演奏、バレイや日舞、古典文学
の朗読なんてものまである。
 私が子供だった頃と出し物に大きな変化はないが、腕は僕らの頃とは
段違いだ。
 なるほど、これなら僕のピアノを聞いて真里が「下手ねえ~」と言う
はずである。
 僕らの頃はまだ指導法が未熟だったせいかこんなに上手な子はいなか
った。
 「どうですか、先生も一曲お手本を示されては?」
 「いや、もうピアノを外れてから二十年近く経ちますからね。今さら
恥はかきたくありませんよ」
 「そうそう、恥と言えば…真里のお仕置きに行ってきましたよ。結局、
あれは真里が虐められたんじゃなくて、女の子たちが桃色遊技をしたと
いうことでお仕置きになったんですが、いやあ~~ひどいもんでした」
 「ひどい?どんな風に?」
 「あなたに説明を受けたでしょう。壁から突き出している狭いベット。
あれに寝かされてメントールの入った薬剤をたっぷり股の間に塗り込ま
れるんです。私もそれなりに覚悟はしていったんですが、想像以上でね、
辛かったです」
 「悲鳴が上がったでしょう」
 「ええ、それがどの子も…もの凄いんですから。あれ、もの凄く痛い
んでしょうね」
 「私は男なんで…あれは、されたことがないんです。ただ、友だちに
聞いた話では『焼け火箸をそこに押しつけられたぐらいショックだった』
って言ってました」
 「でしょうね、そのくらいの轟音でしたもの。とにかく、少女が人目
もはばからずこんな凄まじい悲鳴を上げるのかってくらいのものだった
んですから……さすがに私もその場に居たたまれませんでしたよ」
 「でも、あれ、その場限りなんですよ」
 「と、言いますと……」
 「だから、ものの一二分でまるで何事もなかったようになっちゃうで
すよ」
 「そう言えばそうか、彼女たち、その後鞭のお仕置きももらったんだ
けど……その時は、もうそんな素振りは見せなかったなあ……」
 「でしょう、あれ、元々傷薬ですからね、染みても害はないんです。
ただ、あれ…後でかゆくなるみたいでしてねえ、寝る時オナニーなんか
しないように貞操帯を着けて帰すのが普通なんですよ」
 「なるほど……」
 河合氏は私に相槌をうつとさっそく真里を捜し始めた。
 そして……
 「真里、こっちへ来なさい」
  彼は真里を自分の目の前に立たせると何も言わずそのスカートを捲り
上げたのである。
 「…………わかった。もう行っていいよ」
 ほんの数秒、スカートの中を確認しただけで彼はスカートを下ろす。
 「なるほど、貞操帯ってショーツの上から穿く物だったんだ」
 「トイレへ行く時なんかは人を頼まないとどうにもならないから結構
辛いんですよ。ま、こちらの方がよほどお仕置きとして辛いかもしれま
せんね」
 「どうして?」
 「一週間くらいあの姿なんです」
 「一週間も……」
 「僕らの頃は『この方がおしとやかになるから』ってよく大人たちに
やらされてましたよ」
 「ここは保守的な街ですからね」
 「いえ、これでも若干変化はしてきてるんです。僕らの前の世代は、
おねしょもお仕置きの対象だったくらいですからね。『今は、おねしょは
お仕置きの対象になりません』って話したら、先輩達にはたいそう羨ま
しがられましたよ」
 「そうかもしれませんね。僕なんか巷の育ちですけど、おねしょのお
仕置きにお灸をすえられたなんて話、よく聞きましたから………あれ、
当時は本人の自覚の問題で、『起きる意思が弱いからおねしょするんだ』
なんて言われてたみたいですね」
 「今はオナニーも解禁されてるそうじゃないですか」
 「ええ、完全にではないそうですが、何でもかんでもお仕置きって事
じゃないみたいです。合沢さんの時代は違ってましたか?」
 「ええ、違ってましたね。特に女の子は絶対のタブーで…見つかると、
必ずと言っていいほどフルハウスなんです」
 「男の子はいいんですか?」
 「いえ、男の子だってダメはダメなんですが、見つかってもやりすぎ
には注意しましょうぐらいで、無罪放免になっちゃいますからね、女の
子たちには不公平だってよく責められましたよ。
 「どうしてなんでしょうね。その落差は?」
 「一つは身体の構造上女の子の方がばい菌が入りやすく炎症を起こし
やすいって問題があるのと、やはり大きいのはオナニーをするような子
は淫乱で純真じゃないっていうお父様方の先入観に配慮したんだと思い
ますね」
 「そりゃあ、あるだろうね、自分の事は差し置いて勝手な話だけど、
やっぱり添い寝してくれる子は性のことなど知らないうぶな子であって
欲しいもの」
 「そういえば、真里ちゃんは先生にお返しになったみたいですね」
 「ああ、本当はこのままずっとそばに置いておきたかったんだけど、
どうやらそうもいかないみたいだからここは分別をつけて手放したんだ。
……ただ、他の子たちもとっても良い子でね。別に、寂しい思いはして
ないよ。とにかくこんないい子たちを育ててくれた先生方には感謝感謝
だ。……そうだ、今夜は泊まっていくといい。当番の子が添い寝してく
れるんだが、妻が里帰りしていないものだから、四人じゃ多すぎるんだ」
 「わかりました」
 「でも、奥さんがよくここへの移住を承知なさいましたね。…実は、
奥さんの反対で断念される方が結構多いんですよ」
 「うちだって同じさ。渋々着いてきた。『何で今さら見ず知らずの子供
の面倒をみなきゃならないの!?』ってね。女にとっちゃ子供の世話は
仕事であって趣味にはならないみたいなんだ。…でも、怒って帰った訳
じゃないよ。その逆。ここで暮らすうちに本格的に移り住んでもいいと
言い出してそのため荷物を取りに帰ったんだ」
 「じゃあご機嫌が直ったんだ」
 「そういうこと。最初は不安だったんだろうが、里子を持つといって
も、こちらの仕事は抱いてあやすだけみたいなものだし、しかもみんな
上品で従順に躾てあるだろう。毎日孫を抱いてるみたいで彼女としても
楽しいんだよ」
 私はこうして河村氏の家で子供たちとの一拍を経験することになった
のである。
 夕食は大広間。当番の子だけがお父様たちと同席できるのは私の頃と
同じルールだ。ただ違う点もいくつかある。まずはBGM。僕たちの頃
も頭上には妙なるメロディーが流れていたがそれは大半がクラシックで、
私のようにピアノの練習が苦手な子はたまたま自分の課題曲がかかると
ご飯が不味くて仕方がなかった。それが今では、正々堂々ビートルズや
カーペンターズが流れているんだから驚きだ。私たちの時代は過ぎ去り
今はこれがクラシックなのかもしれない。
 次に食事の内容。僕らの頃はママと一緒の下座とお父様たちの上座で
は明らかに食事の内容が異なっていた。お酒なんかは当然にしてもお料
理そのものが上座の方がはるかに豪華なのだ。だから当番の日は、普段
食べられないものが食べられるのでわくわくしたものなのなだ。それが
今では上座下座関係なく同じ料理がでてくる。
 『おいおい、これでは当番の日の楽しみが一つ減ってしまうな』
 と思ったが、これも時代の流れなのだろう。料理そのものも…
 『こんなものチビには贅沢だ』
 というしろもの。食品関係で成功した先輩達がこぞって色んな食材を
提供するので仕方がないといえば仕方がないのだがそれだけ日本という
国が豊かになったということでもあるのだろう。
 ただ、食事風景そのものは昔のままだった。上座ではお父様お母様が
愛児を膝の上に乗せてスプーンで口の中へと運び入れているし、下座で
もママが幼い子を抱いて同じ様な格好で食事させている。もう少しだけ
大きくなった子には14歳以上の子がママの代わりをしている。これも
昔のままだ。
 私には楽しく懐かしい光景だが、こんな光景を見たら巷の人たちには
首を傾げるだろう。
 『この子達は一人で食事ができないのか?』
 『ひょっとして身障者なのか?』
 なんて思うかもしれない。もちろん、どちらもNoなのだが、これが
亀山の流儀なのだ。どんなに厳しいお仕置きの直後でも食事の時だけは
無礼講で、たっぷりママやお父様お母様に甘えることができた。そして、
何でもありの亀山のお仕置きだが、唯一、食事を抜く罰というのだけは
なかったのである。
 そんななか、私もせっかくなので先輩として応分の責任を取ることに
した。
 「安西真奈美です。よろしくお願いします」
 その子は椅子に座る私の足下でお約束の乙女の祈りを捧げる。
 「真奈美ちゃん、さあおいで」
 私はかつて何百回もやってもらったことを初めてしてみた。
 両脇を抱えて自分の膝の上に乗せるのだ。正直、この位の歳になると
脇の下が痛いのだが、彼女も亀山の子、そんな事はおくびにも出さない。
 「どれが食べたい?」
 必ず注文を聞いて料理をとりわけスプーンに乗せて「あ~ん」させる。
 「美味しいか?」
 「美味しい」
 「幸せか?」
 「幸せです」
 「そうか、そうか、それはよかった」
 約束通りのたわいのない問答。でもこの時初めて私は大人たちがこう
して子供を抱いて食事させることが嬉しいことなんだと知ったのである。
 というのも、これって子供の立場からすると必ずしも嬉しいことでは
ないからなのだ。
 それは、お膝の上と言っても色々あって必ずしも楽ちんなものばかり
ではないからだ。大人だから口臭体臭のする人もいるし、スプーンの扱
いが乱暴で口の中を怪我しそうになったことやどさくさに紛れて急所を
触ったりする人もいる。子供の立場からすると色々あるからだ。
 しかし、こうして初めて子供を抱いてみて、私はどうして大人たちが
こんなにも膝の上に子供たちを抱きたがるのかわかったような気がする。
 とにかく膝の上に子供を乗せると楽しいのだ。その弾む身体がまるで
私のかたくなになった心をマッサージして解きほぐしてくれているよう
な感じがするのである。
 だから…
 「ねえ、今度の誕生日にバービー人形のお家買って」
 なんて言われると、つい…
 「よし、いいよ」
 なんて、簡単に約束してしまうから不思議だ。
 だから、大人たちは『子供、子供』と低くみるのだが、実は大人の方
がよほど精神構造が単純なのかもしれないと思ったりもする。
 しかし、それで大人と子供、調和が取れているのかもしれない。
 私はまるで生まれた時から抱かれているような馴れ馴れしさで私の胸
にしがみついてくる真奈美を時間の許す限り抱きしめ続けた。
 もちろん、私の経験からしてもそれは真奈美にとって大変迷惑なこと
だったのかもしれないが……
 食事が終わると幼稚園さんたちはお風呂に入り寝床へ直行する。
 彼らはもう他にやるべきことがないからだ。たいていママと一緒にお
風呂へ入り、お父様の処へ行っておやすみのご挨拶。すると、お父様と
お母様は絵本を読んでくれ子守歌を歌ってくれてやがて寝かしつけられ
る事になるのだが、距離感の違いとでもいうか、子供にすればそんな時
でもママが近くにいないと泣いてしまうケースが多かった。遊んでいる
のは子供。遊ばれているのはお父様とお母様。そんな感じで8時を回る
頃には幼稚園児はネンネとなって、今度は小学校の低学年さんがやって
くる。

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tutomukurakawa

Author:tutomukurakawa
子供時代の『お仕置き』をめぐる
エッセーや小説、もろもろの雑文
を置いておくために創りました。
他に適当な分野がないので、
「R18」に置いてはいますが、
扇情的な表現は苦手なので、
そのむきで期待される方には
がっかりなブログだと思います。

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