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2/10 お母さんの赤ちゃん(馬鹿馬鹿しい話)

2/10 お母さんの赤ちゃん(馬鹿馬鹿しい話)

 「坊やは、お母さんの何だっけ?」

 お母さんにこう質問されたら、僕は必ず…
 「お母さんの赤ちゃん」
 と、答えた。

 というより、こう答えなければならなかった。
 なぜなら、お母さんがこの答えを望んでいたから……

 もちろん実際の歳が赤ん坊や幼児ならそれも可愛いだろうけど、
うちの親子関係では、たとえ息子が10歳を過ぎてもこの会話は
成立していた。

 いくつになろうと、お母さんにとっての僕は、可愛くて従順な
赤ちゃんでなければならないのだ。

 それは何も言葉だけではない。

 一緒にお風呂に入れば、頼みもしないのにお母さんが僕の体を
隅から隅まで丹念に洗ってくれるし……食事をすれば、僕が吐き
出したお肉を箸で摘んでお口に入れて噛み噛みした後、再び僕の
口の中へ入れてくれたりもする。

 お母さんって、家事はしないけど、こういう事だけはまめなん
だよ。

 この人、十二歳の時に実母が亡くなって、その後きた継母さん
とはうまくいかず、思春期は心を閉ざしていたから、心の発達が
十二歳で止まっている節があるんだ。お人形さん遊びをしていた
女の子がそのまま大人になっちゃったみたいな感じで……
 きっと、僕は彼女のお人形さんだったんだろうね。

 今の人の感覚なら、「おぇ~~」ってなもんだろうけど、僕は
それを恥ずかしいとか、汚いなんて思ったことは一度もなかった。

 もし僕がこれを嫌がってたら、二人の関係はもっと早くに終わ
っていたかもしれないけど……あいにく、僕の方もこんなことが
嫌じゃなかったもので、小学校時代はずっとこんな感じが続いた
んだ。

 これだけじゃないよ。僕は、お風呂で用を足したくてオマルを
お風呂場に持ち込んでいたし、口の中に入れられたスープをほん
の少し唇の周りに戻すなんてのも得意だった。

 いずれも、お母さんが、四つん這いになった僕のお尻を拭いて
くれたり、唇の周りについた食べ残しを舐めてくれたりするのを
期待してやってたんだ。

 「学校では、ちゃんと、おトイレ使えてるの?」
 「ちゃんとやってる」

 「給食の時、お口にミルクの残りがついていたらみっともない
わよ」
 「うん、大丈夫」

 『おいおい、僕を誰だと思ってるんだい。お母さんはお外では
散々僕のことを自慢してるじゃないか。その僕が、学校でそんな
無様なことするわけないだろう。これはあくまでここだけの事に
決まってるじゃないか。わかってるのかなあ』
 そんなことを頭の隅で思いながらも、僕はお母さんには可愛く
受け答えする。

 それが、僕たち親子の睦み事だからだ。

 当然だけど、夜は夜で一緒のお布団に寝るよ。
 僕はお母さんのオッパイを舐め舐め、頭を撫で撫でしてもらい
ながら、絵本を読んでもらったり、子守唄を聞いて寝るんだ。
 夜は、心も身体も完全に赤ちゃん仕様だったってわけ。

 「坊や、坊やはお母さんの赤ちゃんなの。だから、お母さんの
愛のお外には出られないのよ」

 「愛のお外?……それってお布団の外?」

 「場所じゃないわ。……お母さんのお言いつけを守っていれば、
たとえ地球の裏側にいてもあなたは私の愛の中だし、お母さんの
お言いつけが守れないなら、同じお布団で寝ていても、それは、
愛のお外なの。……わかった?」

 「ふ~~ん、僕、これからもずっと、お母さんのお言いつけを
守っていい子でいるよ」

 「そうなの。ありがとう。その言葉がお母さん一番嬉しいわ。
やっぱり、あなたは私の赤ちゃん。大事に育てた甲斐があったわ。
いつまでもお母さんの愛の中で幸せ幸せにしてましょうね」

 「うん大丈夫だよ、僕、お母さんの愛のお外には行かないから」

 いつも、だいたいこんな会話をしていた。

 一日が終わってお布団の中に入ると、毎日毎日同じ言葉の繰り
返し。たとえお仕置きのあった日でも、僕たち親子はこうやって
同じ会話を繰り返してたんだ。

 『馬鹿だろう』
 やってた小学生当時だって、僕、そう思ってたもん。

 でもね……こうやってると、不思議と今の幸せを実感できて、
心地よい眠りに着くことができたんだよ。

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tutomukurakawa

Author:tutomukurakawa
子供時代の『お仕置き』をめぐる
エッセーや小説、もろもろの雑文
を置いておくために創りました。
他に適当な分野がないので、
「R18」に置いてはいますが、
扇情的な表現は苦手なので、
そのむきで期待される方には
がっかりなブログだと思います。

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